JP6931465B2 - 全固体電池用正極合材 - Google Patents
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Description
そこで、本発明の目的は、抵抗増加が抑制された、全固体電池用正極合材を提供することにある。
このような構成によれば、導電助剤は、トンネル効果により正極活物質に電子を供給する一方で、固体電解質には電子を供給しない。そのため、導電助剤と固体電解質との反応を抑制することができ、高抵抗物質の生成を抑制することができる。したがって、このような構成によれば、抵抗増加が抑制された、全固体電池用正極合材を提供することができる。
正極活物質と固体電解質との反応を抑制するために、正極活物質の表面に、イオン伝導性酸化物を含むコート層を設けてもよい。
正極活物質の形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状である。
正極活物質の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば0.5μm〜20μmであり、好ましくは1μm〜10μmである。なお、正極活物質の平均粒子径(D50)は、レーザ回折・散乱法により求めることができる。
本実施形態に係る正極合材中の正極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば30質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上90質量%以下である。
酸化物系固体電解質の典型例としては、一般式:LimAOn(ここでAは、B、C、Al、Si、P、S、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、またはWであり、mおよびnは正の実数である)で表されるものを挙げることができる。その具体例としては、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、LiAlO2、Li4SiO4、Li2SiO3、Li3PO4、Li2SO4、Li2TiO3、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、Li2ZrO3、LiNbO3、Li2MoO4、Li2WO4等が挙げられる。あるいは、Li2O−B2O3−P2O5系、Li2O−SiO2系、Li2O−B2O3系、Li2O−B2O3−ZnO系等のガラスまたはガラスセラミックス等も例示される。
より高いイオン伝導性を実現するという観点から、Li2Sとハロゲン化リチウム(例えばLiCl、LiBr、LiI)とから構成されるLi2Sベースの固溶体がより好ましい。その好適例として、LiBr−Li2S−P2S5、LiI−Li2S−P2S5、LiBr−LiI−Li2S−P2S5等が挙げられる。
固体電解質の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば0.5μm〜10μmであり、好ましくは1μm〜5μmである。なお、固体電解質の平均粒子径(D50)は、レーザ回折・散乱法により求めることができる。
導電助剤の形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状である。
導電助剤の平均一次粒子径は、特に限定されないが、例えば10nm以上200nm以下であり、好ましくは15nm以上100nm以下である。なお、導電助剤の平均一次粒子径は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて30個以上の一次粒子径を測定し、それらの算術平均として得られる値を採用することができる。
このような構成によれば、抵抗増加が抑制された、全固体電池用正極合材を提供することができる。その理由は以下の通りである。
図1に、従来の全固体電池用正極合材の構成を模式的に示す。図2に、本実施形態に係る全固体電池用正極合材の構成を模式的に示す。
図1に示すように、従来技術においては、導電助剤130は、正極活物質110に電子を供給する一方で、隣接する固体電解質へ120も電子を供給しようとする。そのため、導電助剤130と固体電解質120とが反応し、固体電解質120の表層部で分解が起こって高抵抗物質が生成する。
そこで、本実施形態においては、図2に示すように導電助剤30を、LiFのコート層32にて被覆する。LiFは誘電体であるため、5nm以下の薄膜である場合には、トンネル効果により隣接する物質に電子を受け渡すことができる。トンネル効果は、電子伝導性の高い物質同士の界面でのみ起こるため、正極活物質10と導電助剤30との界面、導電助剤30と別の導電助剤30との界面、導電助剤30と電極金属との界面でのみ、電子の受け渡しが行われ、導電助剤30と固体電解質20との界面では電子の受け渡しが行われない。したがって、導電助剤30に厚さが5nm以下のLiFのコート層32を形成することにより、選択的に電子パスを形成して固体電解質20への電子の供給を抑制し、これにより固体電解質20の分解を抑制することができる。
LiFのコート層は、好ましくはLiFのみからなるが、本発明の効果を阻害しない範囲内で、LiF以外の物質を含有していてもよい。
なお、LiFのコート層は、例えば、真空蒸着法により、導電助剤の表面に設けることができる。真空蒸着法によれば、LiFのコート層の厚さの制御も容易である。
本実施形態に係る正極合材中のバインダの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5質量%〜15質量%であり、好ましくは1質量%〜12質量%である。
例えば、正極活物質、導電助剤、および固体電解質を溶媒の存在下で混合して正極合材ペーストを作製し、当該正極合材ペーストをアルミニウム箔等の正極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じプレス処理を行う。このようにすれば、正極合材を、正極集電体上に正極合材層が設けられた正極の形態として用いることができる。
あるいは、例えば、正極活物質、導電助剤、および固体電解質を混合し、プレス処理した形態や、正極活物質、導電助剤、および固体電解質の混合物にボールミル処理等により物理的エネルギーを付与することにより、これらを複合化した形態等で用いることができる。
本実施形態に係る正極合材を用いて全固体電池を製造することにより、抵抗増加が抑制された全固体電池を得ることができる。全固体電池の製造は、公知方法に従い行うことができる。
全固体電池は、例えば、全固体リチウム電池である。
全固体電池は、正極と、負極と、固体電解質層とを有する。
正極は、正極集電体と、当該正極集電体上に設けられた正極合材層を有する。正極集電体としては、アルミニウム箔が好適に用いられる。正極合材層は、本実施形態に係る正極合材により構成される層である。
なお、負極として、金属リチウム、リチウム合金等から構成される金属負極を用いてもよい。
全固体電池は、正極、負極、および固体電解質層を収容するケースを備える。ケースは、ラミネートケース、アルミニウム製等の角型のケースなどであってよい。
また、全固体電池は、正極および負極にそれぞれ接続された正極端子および負極端子を備える。
アセチレンブラックを準備した。
このアセチレンブラックを粉末蒸着装置にセットした。LiFターゲットを用い、1×10−4Paの真空下0.01nm/secの蒸着速度で、アセチレンブラックにLiFを蒸着した。このようにして、導電助剤として、厚さが5nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックおよび厚さが30nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックを作製した。
また、一部のアセチレンブラックについては、リファレンス用の導電助剤として、蒸着を行わなかった。
LiS 55.9質量部、P2S5 95.5質量部、およびLiI 44.6質量部を、Ar雰囲気のグローブボックス中で、これらの合計が2.00gとなるように秤量した。これらをメノウ乳鉢に加え、15分間混合した。混合物を45mLのZrO2ポットに加え、ZrO2ボール(φ5mm、32g)を投入した後、ポットを密閉した。ポットを遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、550rpmで1時間のミリングおよび5分休止を1セットとする粉砕を40セット(すなわち、計40時間)行うことにより、混合物のメカニカルミリングを行った。その後、試料を解粉し、ペレット化したものを石英管に加え、真空封入した。昇温速度5℃/minで190℃まで昇温し、1時間保持後、自然冷却した。このようして、硫化物固体電解質を得た。
層状構造のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(日亜化学工業社製)と、上記の固体電解質と、上記の導電助剤とを体積比60:40:5で、分散媒としての脱水ヘプタン中に分散させ、超音波ホモジナイザーを用いて10分間撹拌した。得られた分散液を80℃のホットスラーラー上に置き、蒸発乾固させることにより正極合材を得た。なお、導電助剤として、厚さが5nmのLiFコート層を有するアセチレンブラック、厚さが30nmのLiFコート層を有するアセチレンブラック、および蒸着を行わなかった(即ち、LiFコート層無しの)アセチレンブラックを用いた。
上記の固体電解質130mgをセルに入れ、4tonで1分間プレスした。次いで、正極合材100mgをセルに入れ、3tonで1分間プレスした。固体電解質の、正極合材の配置されている面とは反対側の面にLi−In合金箔を設置した。これを集電体としてのSUSピンで挟み込んだ後、6Nトルクのボルトを用いて拘束した。評価用全固体電池は、厚さが5nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックを用いたもの、厚さが30nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックを用いたもの、LiFコート層無しのアセチレンブラックを用いたものの3種を作製した。
上記作製した各評価用全固体電池を、3.0Vから4.55Vの電圧範囲で1/10Cのレートでの充放電を3回繰り返すことによって、活性化処理を行った。
活性化したLiFコート層無しのアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池に対し、25℃の温度環境下で交流インピーダンス測定装置Solatron1260(ソーラトロン社製)を用いて、印加電圧10mV、測定周波数域0.01〜1MHzで交流インピーダンス測定を行い、反応抵抗を求めた。
次いで、活性化した各評価用全固体電池を4.55Vまで充電し、60℃で100時間保存した。その後、交流インピーダンス測定を行った。
図3に示されるように、LiFコート層無しのアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池では、保存後に反応抵抗が大きく増加した。これは、正極活物質と固体電解質との界面および導電助剤と固体電解質との界面に、抵抗物となる固体電解質の分解物が生成したためである。
LiFコート層の厚さが5nmであるアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池では、保存後の反応抵抗の増加は、わずかであり、その反応抵抗は、LiFコート層無しのアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池の反応抵抗に比べて、0.54倍の値となった。これは、導電助剤と固体電解質との界面で起こる分解反応がLiFコート層により抑制されており、正極活物質と固体電解質との界面でのみ、抵抗物となる固体電解質の分解物が生成したためである。
LiFコート層の厚さが30nmであるアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池では、保存後の反応抵抗が大きく増加した。これは、正極活物質と固体電解質との界面に、抵抗物となる固体電解質の分解物が生成し、また、正極活物質と導電助剤との間では、厚過ぎるLiFコート層によって導電パスが遮断されたためである。
20 固体電解質
30 導電助剤
32 LiFのコート層
Claims (1)
- 正極活物質と、固体電解質と、導電助剤とを含有する全固体電池用正極合材であって、
前記導電助剤は、LiFのコート層を有し、
前記コート層の厚さは、5nm以下である、
全固体電池用正極合材。
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