しかしながら、特許文献1に記載された技術では、麹臭さは軽減できるものの、米麹由来の「えぐみ」については何ら検討されておらず、これは味覚に関するものであることから、食味への影響が麹臭さよりもむしろ大きい場合もある。
更に、乳酸菌で乳酸が多量に生成されるとpHが下がって酸味が強くなるため、米から溶出する遊離アミノ酸などの旨み成分に起因する甘酒特有の旨みとは、かけ離れた味になる。
加えて、発酵条件を細かく制御しないと、条件によっては糸を引くような高い粘性を示すこともあり、甘酒並の適度な食感を確保できない。
また、前述の「えぐみ」に対しては、米から溶出する旨み成分や、米の糖化による甘み成分により、「えぐみ」をマスキングし軽減させる対応が考えられるが、このうちの旨み成分については、米を多目に添加して旨み成分の量を増やすことにより、「えぐみ」を薄めてマスキングし軽減させることができる。
しかしながら、甘み成分については、米を適量添加して米をほとんど糖化させた状態では、適度な甘みを備えるものの、粘性が低すぎて飲食に好適なボリューム感が得られず、適度な食感を確保できない。ここで、ボリューム感とは、飲物や食べ物がのどを通るときに感じられる量感を意味する。しかも、米を過剰に添加すると、反応が進まずに糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく、逆に甘みが薄くなると共に、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化する。
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、甘酒の原料にサツマイモを加えて発酵させるだけの簡単な構成でありながら、米麹由来の「えぐみ」がなく、しかも、甘酒特有の旨みがあって、適度な甘みと食感も備えたイモ加工食品の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のイモ加工食品の製造方法は、米麹、米、加熱処理済みサツマイモに水を混合して撹拌する調合工程と、調合工程で得た食品原料を所定温度で所定時間かけて発酵させる発酵工程とを備えている。
そして、米麹、米、加熱処理済みサツマイモに水を混合して撹拌する調合工程を備えることによって、甘酒特有の旨みに加え、適度な甘みと食感を確保しつつ、米麹由来の「えぐみ」を解消した食品を発酵により製造可能な食品原料を準備することができる。すなわち、米麹、米、加熱処理済みサツマイモに水を混合した食品原料を次工程の発酵工程で発酵させると、従来の甘酒の原料である米麹と米とによる発酵が主として進行するため、甘酒特有の旨みが強く残留する。
しかも、もう一つの原料である加熱処理済みサツマイモは、デンプンの半分程度がβ―アミラーゼによって既に麦芽糖に糖化されると共に、ペクチンなどの食物繊維が多量に含まれていて粘性が高い。このため、米麹と米に加熱処理済みサツマイモを加えるだけで、米麹への米添加だけでは低下しがちな「甘み」と「粘性」を確実に補完することができる。
これにより、米や加熱処理済みサツマイモ中のデンプンの糖化と加熱処理済みサツマイモ中の麦芽糖とによる甘み成分や、米から溶出する旨み成分や、加熱処理済みサツマイモ特有の食味によって、「えぐみ」をマスキングして確実に解消できると共に、このうちの旨み成分に起因する甘酒特有の旨みも得ることができる。更に、加熱処理済みサツマイモの添加によって、米麹と米だけでは低すぎる粘性を高めたり、米の過剰添加によるデンプンや米粒の残留を防いで粘性の著しい上昇や粒状感を抑制したりして、飲食に好適なボリューム感のある適正な粘性と良好な舌触りとを確保し、適度な食感を得ることができる。
更に、調合工程で得た食品原料を所定温度で所定時間かけて発酵させる発酵工程を備えることによって、適度な甘みを食品に付与することができる。すなわち、米麹とは、蒸した米に麹菌を繁殖させたものであって、デンプンをブドウ糖に分解するα―アミラーゼなどの糖化酵素が多く含まれているため、米麹を米や加熱処理済みサツマイモに混合すると、米や加熱処理済みサツマイモ中に含まれるデンプンがブドウ糖に分解されて糖化が進むが、糖化酵素の活性は温度や時間に大きく左右されるため、発酵時の温度や時間を適正化することにより、糖化の程度を微調整することができる。
また、調合工程における加熱処理済みサツマイモが、焼成した焼成サツマイモであり、使用する米麹、米、焼成サツマイモは、重量比で、生米麹を乾燥した乾燥米麹1に対して、生米が0.4〜1.1、焼成サツマイモが0.8〜3.2の所定比率に設定するのが好ましい。
これは、生米が重量比で乾燥米麹1に対して0.4未満では、米が不足するため、米から溶出する旨み成分によって「えぐみ」をマスキングするマスキング効果が充分には発揮されず、「えぐみ」をほとんど解消できないからである。一方、生米が重量比で乾燥米麹1に対して1.1超えでは、米の旨み成分によるマスキング効果により「えぐみ」は解消されるものの、米の糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく逆に甘みが薄くなり、しかも、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化するからである。
更に、焼成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して0.8未満では、焼成サツマイモが不足するため、焼成サツマイモによる甘み成分や食味によるマスキング効果が充分に発揮されずに「えぐみ」の解消が困難であるからである。一方、焼成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して3.2超えでは、焼成サツマイモのマスキング効果による「えぐみ」の解消や甘みの形成には有効であるものの、粘性が異常に大きくなって、飲食に好適なボリューム感が得られないからである。
なお、以下の比率の設定においても、全て、乾燥米麹の重量を基準としているが、これは、乾燥米麹が、生米麹と異なり成分組成の経時変化がほとんどないため、高い調合精度が得られるからであって、この乾燥米麹と等価な量(例えば、重量比で乾燥米麹7に対して生米麹10)の生米麹、あるいは、この乾燥米麹にぬるま湯や水を加え放置して戻した生米麹を、乾燥米麹に替えて使用してもよい。
また、所定比率は、重量比で乾燥米麹1に対して、生米が0.9〜1.1、焼成サツマイモが1.8〜3.2に設定するのが更に好ましい。
これは、生米が重量比で乾燥米麹1に対して0.4から0.9未満までの間は、前述した重量比0.4未満の場合のように、米が不足して米の旨み成分によるマスキング効果が充分には発揮されずに「えぐみ」をほとんど解消できないといった程ではないが、溶出する甘み成分がやや少ないため、「えぐみ」が感じやすくなるからである。一方、生米が重量比で乾燥米麹1に対して1.1超えでは、前述と同様に、米の旨み成分によるマスキング効果により「えぐみ」は解消されるものの、糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく逆に甘みが薄くなり、しかも、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化するからである。
更に、焼成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して0.8から1.8未満までの間は、前述した0.8未満の場合のように、焼成サツマイモが不足して甘み成分や食味によるマスキング効果が充分に発揮されずに「えぐみ」の解消が困難になる程ではないが、甘み成分や食味がやや薄いため、「えぐみ」が感じやすくなるからである。一方、焼成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して3.2超えでは、前述と同様に、焼成サツマイモのマスキング効果による「えぐみ」の解消や甘みの形成には有効であるものの、粘性が異常に大きくなって、飲食に好適なボリューム感が得られないからである。
また、調合工程における加熱処理済みサツマイモが、蒸成した蒸成サツマイモであり、使用する米麹、米、蒸成サツマイモは、重量比で、生米麹を乾燥した乾燥米麹1に対して、生米が0.5〜1.0、蒸成サツマイモが1.0〜3.0の所定比率に設定するのが好ましい。
これは、生米が重量比で乾燥米麹1に対して0.5未満では、米が不足するため、米から溶出する旨み成分によって「えぐみ」をマスキングするマスキング効果が充分には発揮されず、「えぐみ」をほとんど解消できないからである。一方、生米が重量比で乾燥米麹1に対して1.0超えでは、米の旨み成分によるマスキング効果により「えぐみ」は解消されるものの、米の糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく逆に甘みが薄くなり、しかも、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化するからである。
更に、蒸成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して1.0未満では、蒸成サツマイモが不足するため、蒸成サツマイモによる甘み成分や食味によるマスキング効果が充分に発揮されずに「えぐみ」の解消が困難であるからである。一方、蒸成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して3.0超えでは、蒸成サツマイモのマスキング効果による「えぐみ」の解消や甘みの形成には有効であるものの、粘性が異常に大きくなって、飲食に好適なボリューム感が得られないからである。
なお、蒸成サツマイモは、前述の焼成サツマイモと加熱処理後の水分含有量が異なるため、好適なイモ加工食品を得るべく、乾燥米麹1に対する米および蒸成サツマイモの「所定比率」も異なる数値に設定している。
また、所定比率は、重量比で乾燥米麹1に対して、生米が0.7〜1.0、蒸成サツマイモが2.0〜3.0に設定するのが更に好ましい。
これは、生米が重量比で乾燥米麹1に対して0.5から0.7未満までの間は、前述した重量比0.5未満の場合のように、米が不足して米の旨み成分によるマスキング効果が充分には発揮されずに「えぐみ」をほとんど解消できないといった程ではないが、溶出する甘み成分がやや少ないため、「えぐみ」が感じやすくなるからである。一方、生米が重量比で乾燥米麹1に対して1.0超えでは、前述と同様に、米の旨み成分によるマスキング効果により「えぐみ」は解消されるものの、糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく逆に甘みが薄くなり、しかも、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化するからである。
更に、蒸成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して1.0から2.0未満までの間は、前述した1.0未満の場合のように、蒸成サツマイモが不足して甘み成分や食味によるマスキング効果が充分に発揮されずに「えぐみ」の解消が困難になる程ではないが、甘み成分や食味がやや薄いため、「えぐみ」が感じやすくなるからである。一方、蒸成サツマイモが重量比で乾燥米麹1に対して3.0超えでは、前述と同様に、蒸成サツマイモのマスキング効果による「えぐみ」の解消や甘みの形成には有効であるものの、粘性が異常に大きくなって、飲食に好適なボリューム感が得られないからである。
また、調合工程の前に、サツマイモを加熱処理する第1過程と、加熱処理済みサツマイモを潰してペースト状にする第2過程とを有する原料準備工程を備える場合は、第1過程によって、サツマイモのデンプンを糊化させて、雑菌を死滅させ、香味を向上させ、その後の発酵工程における米麹による酵素糖化の効率を向上させると共に、第2過程によって、次工程の調合工程において米麹と米に混合しやすい状態にすることができるため、イモ加工食品の生産性を大きく向上させることができる。
また、発酵工程では、50〜70℃の温度で10〜30時間かけて発酵させるのが好ましい。これは、温度が50℃未満では、食品原料が発酵中に腐敗しやすくなるからであり、一方、温度が70℃超えでは、米麹の糖化酵素が失活して糖化が不充分となって甘みが低減するからである。更に、時間が10時間未満では、糖化が不充分となって甘みが低減するからであり、一方、時間が30時間越えでは、米麹の糖化酵素が失活して糖化が進まなくなるからである。
また、発酵工程の後に、クエン酸を添加する調整工程を備える場合は、芋加工食品に適正量のクエン酸を添加することにより、味に適度な酸味を加えたり、酸性化してブドウ糖やアミノ酸などの加熱による褐変反応などに起因する退色を防止したりして、イモ加工食品の食品としての価値を一層高めることができる。
本発明に係わるイモ加工食品の製造方法は、甘酒の原料にサツマイモを加えて発酵させるだけの簡単な構成でありながら、米麹由来の「えぐみ」がなく、しかも甘酒特有の旨みがあって、適度な甘みと食感も備えたイモ加工食品を製造可能なものとなっている。
以下、イモ加工食品の製造方法に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
〔実施例1〕
まず、本発明を適用した食品製造方法1について、図1により説明する。
食品製造方法1は、図1(a)に示すように、米麹、米、焼成サツマイモを準備する原料準備工程S1と、準備した所定比率の原料に水を混合して撹拌する調合工程S2と、調合工程S2で得た食品原料を所定温度で所定時間かけて発酵させる発酵工程S3と、発酵工程S3の後に、クエン酸を添加する調整工程S4とを備えている。
このうちの原料準備工程S1においては、米麹、米、焼成サツマイモが準備される。原料の米麹に使用する麹菌としては、白麹菌、黄麹菌などがあり、その種類は特には限定されないが、本実施例では、γ−アミノ酪酸が多くて甘みに富む発酵食品を製造可能な黄米麹を準備する。例えば、この黄米麹の場合、黄麹菌の胞子を蒸米に接菌してから約35℃の温度で約40時間放置することにより、胞子が発芽して蒸米が麹菌の菌糸で覆われるようにして生成される。そして、米麹としては、生米麹を乾燥した乾燥米麹、例えば黄米麹の場合は乾燥黄麹を準備する。
米としては、生米を適量の水で炊いたもの、いわゆる米飯を準備する。
焼成サツマイモとしては、熱処理したサツマイモをペースト状にしたものを準備する。
詳しくは、サツマイモを洗浄し、不良部分を切除した後、このサツマイモをスチームオーブンに投入して、所定温度で所定時間かけて加熱処理する(第1過程S11)。例えば、50分間、品温が100℃となる条件で加熱するが、加熱条件としては、サツマイモのデンプンを糊化させて、雑菌を死滅させ、香味を向上させ、その後の発酵工程S3における米麹による酵素糖化の効率を向上させるものであれば、特に限定されるものではない。
続いて、加熱処理した焼成サツマイモは、放冷後にフルイ目1〜10mmを通過する程度に潰して裏ごしすることで、ペースト状にする(第2過程S12)。これにより、次工程の調合工程S2において、焼成サツマイモを乾燥米麹と米飯に混合しやすい状態にすることができるため、イモ加工食品の生産性を大きく向上させることができる。
また、調合工程S2においては、準備した前述の乾燥米麹にした米麹と、米飯にした米と、ペースト状の焼成サツマイモを、所定の比率でタンクに投入し、水も一緒に投入して、充分に撹拌する。なお、以下で示す米の重量とは、全て、水で炊く前の生米の状態での重量を意味する。
これにより、米麹、米、焼成サツマイモに水を混合した食品原料を、次工程の発酵工程S3で発酵させると、従来の甘酒の原料である米麹と米とによる発酵が主として進行するため、甘酒特有の旨みが強く残留し、しかも、もう一つの原料である焼成サツマイモは、デンプンの半分程度がβ―アミラーゼによって既に麦芽糖に糖化されると共に、ペクチンなどの食物繊維が多量に含まれていて粘性が高いため、米麹と米に焼成サツマイモを加えるだけで、米麹への米添加だけでは低下しがちな「甘み」と「粘性」を確実に補完することができる。
また、発酵工程S3においては、調合工程S2で得た食品原料を、タンク内で所定温度で所定時間かけて加熱して発酵させる。すると、黄米麹に多く含まれるα―アミラーゼなどの糖化酵素が、米やサツマイモに含まれるデンプンをブドウ糖に分解して糖化が進むが、この糖化酵素の活性は温度や時間に大きく左右されるため、発酵時の温度や時間を適正化することにより、糖化の程度を微調整することができ、適度な甘みを食品に付与可能となる。
そして、この発酵は、50〜70℃の温度で10〜30時間かけるのが好ましい。これは、温度が50℃未満では、食品原料が発酵中に腐敗しやすくなるからであり、一方、温度が70℃超えでは、米麹の糖化酵素が失活して糖化が不充分となって甘みが低減するからである。
更に、時間が10時間未満では、糖化が不充分となって甘みが低減するからであり、一方、時間が30時間越えでは、米麹の糖化酵素が失活して糖化が進まなくなるからである。
また、調整工程S4においては、所定の重量比のクエン酸を添加する。
例えば、0.2wt%程度のクエン酸を添加すると、発酵工程S3で得た発酵物の味に適度な酸味を加えることができる。更に、この発酵物のような、ブドウ糖などの還元糖とアミノ酸とが一緒になったものを加熱すると、褐色物質が発生する褐変反応が起こるが、この反応は中性〜塩基性の条件下で起こりやすいことから、このようなクエン酸添加により発酵物を酸性にして退色を防止することができる。このようにして、イモ加工食品の食品としての価値を一層高めることが可能となる。
次に、上述した食品製造方法1によって製造したイモ加工食品の各種の味に関する特性(以下、「食味特性」とする)に及ぼす各原料の配合比率の影響について、図1乃至図4により説明する。
[米麹、米、焼成サツマイモの準備(原料準備工程S1)]
本実施例においては、米麹には、乾燥黄麹(製品名:M−90L、徳島製麹株式会社製)を使用し、米は、水稲うるち米(品種名:ヒノヒカリ)の生米に水を加えて炊いた米飯を使用した。なお、この米の品種は、あくまで一例であって、いわゆるブレンド米でもよく、特に限定されるものではない。
そして、焼成サツマイモは、図1(b)に示すようにサツマイモ(品種:ムラサキマサリ)を前述の第1過程S11と第2過程S12によってペースト状にしたものを使用した。なお、サツマイモの品種は、ムラサキマサリ以外でもサツマイモであれば特に制限はなく、例えば、アンノウイモ、コガネセンガン、ベニサツマ、高系14号、アヤムラサキ、ジェイレッド、タマアカネ、シロサツマなどが挙げられる。
〔サンプルの製造(調合工程S2、発酵工程S3)〕
準備した乾燥黄麹、米飯、焼成サツマイモを所定の比率でタンクに投入し、所定量の水も一緒に投入して撹拌することにより、食品原料を調合した(調合工程S2)。
この際に添加する水の量は、全ての原料が100%糖化したときに、イモ加工食品のいずれのサンプルも、BRIX値で同じ糖濃度(以下、「目標糖度」とする)20%となるように設定した。なお、このBRIX値は、サンプルをろ紙(No2)でろ過し、そのろ液を糖度計(株式会社アタゴ製)で測定した。
例えば、原料中の糖質割合(分析値)が、乾燥黄麹では86.8wt%、米飯では36wt%、焼成サツマイモでは27.6wt%であり、各原料の配合重量(g)が、乾燥黄麹100g、米飯100g、焼成サツマイモ200gである場合、各原料の糖質は、乾燥黄麹は100×0.868=86.8g、米飯は100×0.36=36g、焼成サツマイモは200×0.276=55.2gとなって、糖質の合計は178gとなる。
この糖質178gが目標糖度20%に相当する場合のサンプルの総重量は、178÷0.2=890gとなり、この総重量890になるように水を添加すればよい。つまり、添加する水の重量は、890−(100+100+200)=490gとなる。
なお、目標糖度は、前述の如く、BRIX値で20%に設定したが、原料の種類やイモ加工食品に求められる食味に応じて、目標糖度の値や糖度の測定法そのものを変更しても良く、特にBRIX値20%に限定されるものではない。
続いて、調合した食品原料を、タンク内において60℃で18時間かけて加熱することにより、米飯やイモペーストに含まれるデンプンをブドウ糖に分解してイモ加工食品のサンプルを製造した(発酵工程S3)。
詳しくは、調合工程S2において、乾燥黄麹の配合量を100gと一定にした上で、生米としての配合量を無添加から200gまで変化し、焼成サツマイモの配合量も無添加から400gまで変化させることにより、後述する表1に示す、本発明食品のサンプルa−1〜a−6と、比較食品のサンプルb−1〜b−32を製造した。
〔試験方法〕
これらのサンプルa−1〜a−6、b−1〜b−32を対象とした、イモ加工食品の各種食味特性の評価試験方法について説明する。
本実施例では、各サンプルのえぐみ度A、糖化率S、粘度Vを測定した。
このうちのえぐみ度Aとは、前述したような米麹由来の「えぐみ」の程度を示す指標であって、五人の評価者の味覚による官能検査によって判定する。そして、えぐみ評価点1は「えぐみを全く感じない」、えぐみ評価点2は「えぐみを少し感じる」、えぐみ評価点3は「えぐみを感じる」、えぐみ評価点4は「えぐみを強く感じる」であって、五人の評価点の平均値をえぐみ度Aに設定した。
糖化率Sとは、甘みの程度を示す指標であって、目標糖度(本実施例ではBRIX値20%)に対する、実際に測定した測定BRIX値の割合(%)であって、例えば、測定BRIX値が19.5%であれば、糖化率Sは19.5÷20×100=97.5%となる。そして、この糖化率Sが小さいほど、糖化が不充分で甘みが低いといえる。
粘度Vとは、イモ加工食品がのどを通るときに感じられるボリューム感の程度を示す粘性の指標であって、粘度測定器によって測定すると共に、その単位はパスカル秒(Pa・s)を使用した。
そして、本発明のイモ加工食品に好適な各種食味特性(えぐみ、甘み、粘性)を官能検査で調査した結果、各種食味特性毎の合格域は、えぐみ度Aでは2以下、糖化率Sでは93%以上、粘度Vでは0.1〜0.5Pa・sにあることが判明した。
〔試験結果〕
表1には、以上のようにして製造したイモ加工食品の発明食品のサンプルa1〜a6と、比較食品のサンプルb1〜b32について、その配合量(配合比率)、各種食味特性(えぐみ、甘み、粘性)のそれぞれの指標となるえぐみ度A、糖化率S、粘度Vの測定結果、及び食味の総合評価(以下、単に「総合評価」とする)を示す。
この総合評価は、えぐみ度A、糖化率S、粘度Vの3つの因子の測定結果に基づいて判定した。そして、えぐみ解消を主目的とした本発明のイモ加工食品に好適な食味を官能検査で調査した結果、本発明のイモ加工食品に好適な適正範囲は、総合評価点で2以下にあることが判明した。
具体的には、表2に示すように、総合評価点1は、「えぐみ度Aが1以上1.5以下で合格、糖化率Sが93%以上で合格、粘度Vが0.1〜0.5Pa・sで合格の場合」、総合評価点2は、「えぐみ度Aが1.5越え2以下で合格、糖化率Sが93%以上で合格、粘度Vも0.1〜0.5Pa・sで合格の場合」、総合評価点3は、「えぐみ度Aは1以上2以下で合格であるものの、糖化率Sと粘度Vの少なくとも一方が不合格の場合」、総合評価点4は、「糖化率Sと粘度Vの合否は関係なく、えぐみ度Aが2超えで不合格の場合」と規定した。そして、後で説明する図4には、総合評価点1〜4のそれぞれに対応した記号◎、○、△、×を表示した。
1)米麹−米系について
表1に、焼成サツマイモは加えずに、乾燥黄麹100gに米飯のみを加えたサンプルb−10、14、15、19、23について、前述したえぐみ度A、糖化率S、粘度Vの測定結果を示す。
表1と図2において、えぐみ度A、糖化率Sとも、重量比で米麹に対する米の配合比率R1(=生米/乾燥黄麹)が増加するほど低下する一方、粘度Vは、逆に上昇する。そして、配合比率R1が1.25以上になると、えぐみ度Aは2以下まで低下して合格域に達するが、糖化率Sは93%未満となって逆に不合格となり、配合比率R1が1.5になると、糖化率Sに加え、粘度Vまでも0.5Pa・sを超えて不合格となる。
これは、米が増加すると、えぐみ度Aについては、米の糖化による甘み成分や米から溶出する旨み成分によるマスキング効果が発揮されて「えぐみ」が軽減されていくものの、米が過剰になると、糖化率Sについては、米の糖化が不充分となって逆に甘みが薄くなり、粘度Vについては、糖化せずに残った多量のデンプンによって著しく高くなるためと考えられる。
これにより、原料が、前述の如く黄麹菌を使用して生成される米麹である黄米麹と米だけでは、米麹由来の「えぐみ」がなく、しかも甘酒特有の旨みがあって、適度な甘みと食感を備えた食品の製造は困難であることが判明した。
2)米麹−焼成サツマイモ系について
同じ表1に、米飯は加えずに、乾燥黄麹100gに焼成サツマイモのみを加えたサンプルb−1〜5について、前述したえぐみ度A、糖化率S、粘度Vの測定結果を示す。
表1と図3において、えぐみ度A、糖化率Sとも、重量比で乾燥米麹に対する焼成サツマイモの配合比率R2(=焼成サツマイモ/乾燥黄麹)が増加するほど低下する一方、粘度Vは、逆に上昇する。そして、配合比率R2が3になると、えぐみ度Aは2以下まで低下して合格域に達し、糖化率Sも、93%以上あって依然合格域にあるが、粘度Vは、0.5Pa・sを超えて逆に不合格となる。
これは、焼成サツマイモが増加すると、えぐみ度Aについては、焼成サツマイモによる甘み成分や食味によるマスキング効果が発揮されて「えぐみ」が軽減され、糖化率Sについては、デンプンの半分程度が既に麦芽糖に糖化されていて甘みがそれほど低減しないものの、粘度Vについては、多量に含まれる食物繊維によって著しく高くなるためと考えられる。
これにより、原料が黄米麹と焼成サツマイモだけの場合は、米麹由来の「えぐみ」がなく、しかも甘酒特有の旨みがあって、適度な甘みと食感を備えた食品の製造は困難であることが判明した。
3)米麹−米−焼成サツマイモ系について
同じ表1には、前述した米麹−米系、米麹−焼成サツマイモ系とは異なり、乾燥黄麹100gに米飯と焼成サツマイモの両方を加えたサンプル(本発明食品のサンプルa−1〜6、比較食品のサンプルb−7〜9、11〜13、16〜18、20〜22、24〜27、29〜32)について、前述したえぐみ度A、糖化率S、粘度Vの測定結果を示す。
表1の全サンプルの総合評価をプロットした図4において、所定の配合比率R1と配合比率R2とによって規定される範囲内に、総合評価点が1(◎印)または2(○)のサンプルが存在していることがわかる。
詳しくは、米の配合比率R1が0.4〜1.1、焼成サツマイモの配合比率R2が0.8〜3.2で規定される適正範囲2内では、総合評価点が1または2となっている。
一方、適正範囲2を外れたサンプルについては評価点が低い結果となった。これは、配合比率R1が0.4未満では、米が不足するため、米から溶出する旨み成分によって「えぐみ」をマスキングするマスキング効果が充分には発揮されず、「えぐみ」をほとんど解消できないからである。また、配合比率R1が1.1超えでは、米の旨み成分によるマスキング効果により「えぐみ」は解消されるものの、米の糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく逆に甘みが薄くなり、しかも、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化するからである。
そして、配合比率R2が0.8未満では、焼成サツマイモが不足するため、焼成サツマイモによる甘み成分や食味によるマスキング効果が充分に発揮されずに「えぐみ」の解消が困難であるからである。一方、配合比率R2が3.2超えでは、焼成サツマイモのマスキング効果による「えぐみ」の解消や甘みの形成には有効であるものの、粘性が異常に大きくなって、飲食に好適なボリューム感が得られないからである。
更に、この適正範囲2内においては、米の配合比率R1が0.9〜1.1、焼成サツマイモの配合比率R2が1.8〜3.2で規定される適正範囲3内では、総合評価点が全て1となっている。
これは、配合比率R1が0.4から0.9未満までの間は、前述した重量比0.4未満の場合のように、米が不足して米の旨み成分によるマスキング効果が充分には発揮されずに「えぐみ」をほとんど解消できないといった程ではないが、溶出する甘み成分がやや少ないため、「えぐみ」が感じやすくなるからである。一方、配合比率R1が1.1超えでは、前述と同様に、米の旨み成分によるマスキング効果により「えぐみ」は解消されるものの、糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく逆に甘みが薄くなり、しかも、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化するからである。
そして、配合比率R2が0.8から1.8未満までの間は、前述した0.8未満の場合のように、焼成サツマイモが不足して甘み成分や食味によるマスキング効果が充分に発揮されずに「えぐみ」の解消が困難になる程ではないが、甘み成分や食味がやや薄いため、「えぐみ」が感じやすくなるからである。一方、配合比率R2が3.2超えでは、前述と同様に、焼成サツマイモのマスキング効果による「えぐみ」の解消や甘みの形成には有効であるものの、粘性が異常に大きくなって、飲食に好適なボリューム感が得られないからである。
これにより、黄米麹に米と焼成サツマイモを所定比率で混合して発酵させることで、甘酒特有の旨みに加え、適度な甘みと食感を確保しつつ、米麹由来の「えぐみ」を解消した食品を製造することができる。
〔実施例2〕
次に、本発明を適用した食品製造方法2について、図5により説明する。食品製造方法2は、図5(a)に示すように、米麹、米、蒸成サツマイモを準備する原料準備工程S1aと、準備した所定比率の原料に水を混合して撹拌する調合工程S2aと、調合工程S2aで得た食品原料を所定温度で所定時間かけて発酵させる発酵工程S3aと、発酵工程S3aの後に、クエン酸を添加する調整工程S4aとを備えている。なお、実施例1と共通する作用効果については、説明を省略する。
このうちの原料準備工程S1aにおいては、米麹、米、蒸成サツマイモが準備される。なお、米麹と米に関しては、実施例1と同様であって既述のため、説明を省略する。
蒸成サツマイモとしては,スチーマーや蒸し器(以下「スチーマー等」という)により熱処理したサツマイモをペースト状にしたものを準備する。詳しくは、サツマイモを洗浄し、不良部分を切除した後、このサツマイモをスチーマー等に投入して、所定時間で所定温度かけて加熱処理する(第1過程S11a)。
スチーマー等による加熱方法は、サツマイモを100℃以上の水蒸気により,例えば50分間、品温が90℃以上となる条件で蒸し上げるものであるが、加熱条件としては、サツマイモのデンプンを糊化させて、雑菌を死滅させ、その後の発酵工程S2−3における米麹による酵素糖化の条件を向上させるものであれば,特に限定されるものではない。
なお、前述の焼成サツマイモは、スチームオーブンや遠赤外焼成機等で焼き目がつく程の高温で加熱することから、焼成後に減少する水分量が多いが、蒸成サツマイモは、スチーマー等で焼成の場合よりも低温雰囲気下で加熱処理する(100〜110℃程度の加熱温度)ため、焼成サツマイモと比較して含有水分量が減少しにくい特徴がある。
加熱処理した蒸成サツマイモは、放冷後にフルイ目1〜10mmを通過する程度に潰して裏ごしすることで、ペースト状にする(第2過程S2−12)。続く調合工程S2−2では、乾燥米麹にした米麹と、米飯にした米と、ペースト状の蒸成サツマイモを、所定の比率でタンクに投入し、水も一緒に投入して、充分に撹拌する。
また、発酵工程S2−3においては、調合工程S2で得た食品原料を、タンク内において所定温度で所定時間かけて加熱して発酵させる。なお、この発酵は、実施例1の場合と同様に、50〜70℃の温度で10〜30時間かけるのが好ましい。そして、調整工程S2−4において、所定の重量比のクエン酸を添加する。
次に、前述した食品製造方法2によって製造したイモ加工食品の食味特性に及ぼす各原料の配合比率の影響について、図5乃至図7により説明する。
[米麹、米、焼成サツマイモの準備(原料準備工程S1a)]
本実施例においては、使用される米麹と米(乾燥黄麹と米飯)は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。また、蒸成サツマイモ(品種:ムラサキマサリ)は、実施例1と同様に、前述の第1過程S11aと第2過程S12aによってペースト状にしたものであるため、説明を省略する。
〔サンプルの製造(調合工程S2a、発酵工程S3a)〕
準備した乾燥黄麹、米飯、蒸成サツマイモを所定の比率でタンクに投入し、所定量の水も一緒に投入して撹拌することにより、食品原料を調合した(調合工程S2)。この際に添加する水の量も、全ての原料が100%糖化したときに、イモ加工食品のいずれのサンプルも、BRIX値で同じ糖濃度(以下、「目標糖度」とする)20%となるように設定した。
続いて、調合した食品原料を、タンク内において60℃で18時間かけて加熱することにより、米飯やイモペーストに含まれるデンプンをブドウ糖に分解してイモ加工食品のサンプルを製造した(発酵工程S3)。
詳しくは、調合工程S2において、乾燥黄麹の配合量を100gと一定にした上で、米飯の配合量を無添加(0g)から150gまで変化させ、蒸成サツマイモの配合量を50gから500gまで変化させることにより、後述する表3に示す、本発明食品のサンプルc−1〜c−9と、比較食品のサンプルd−1〜d−31を製造した。
〔試験方法〕
これらのサンプルa−1〜a−9、b−1〜b−31を対象とした、イモ加工食品の各種食味特性の評価試験方法について説明する。また、本実施例でも、各サンプルのえぐみ度A、糖化率S、粘度Vを測定した。なお、えぐみ度、糖化率、粘度の測定方法と評価方法については実施例1で述べた通りであるため、説明を省略する。
〔試験結果〕
表3には、以上のようにして製造したイモ加工食品の発明食品のサンプルa1〜a9と、比較食品のサンプルb1〜b31について、その配合量(配合比率)、各種食味特性(えぐみ、甘み、粘性)のそれぞれの指標となるえぐみ度A、糖化率S、粘度Vの測定結果、及び食味の総合評価(以下、単に「総合評価」とする)を示す。
この総合評価は、えぐみ度A、糖化率S、粘度Vの3つの因子の測定結果に基づいて判定した。なお、総合評価点の算定方法に関しては、前述の表2のものと共通するため、説明を省略する。また、「米麹−米系」の評価に関しては、実施例1で既に検証しているため、説明を省略する。
1)米麹−蒸成サツマイモ系について
同じ表3に、米飯は加えずに、乾燥黄麹100gに蒸成サツマイモのみを加えたサンプルb−1〜6について、前述したえぐみ度A、糖化率S、粘度Vの測定結果を示す。
表3と図6において、えぐみ度A、糖化率Sとも、重量比で乾燥米麹に対する蒸成サツマイモの配合比率R3(=蒸成サツマイモ/乾燥黄麹)が増加するほど低下する一方、粘度Vは、逆に上昇する。そして、配合比率R3が4になると、えぐみ度Aは2以下まで低下して合格域に達するが、糖化率Sは93%未満、粘度Vは0.5Pa・sを超え、逆に不合格となる。
これは、蒸成サツマイモが増加すると、えぐみ度Aについては、蒸成サツマイモによる甘み成分や食味によるマスキング効果が発揮されて「えぐみ」が軽減され、糖化率Sについては、デンプンの半分程度が既に麦芽糖に糖化されていて甘みがそれほど低減しないものの、粘度Vについては、多量に含まれる食物繊維によって著しく高くなるためと考えられる。つまり、原料が黄米麹と蒸成サツマイモだけの場合は、米麹由来の「えぐみ」がなく、しかも甘酒特有の旨みがあって、適度な甘みと食感を備えた食品の製造は困難であることが判明した。
2)米麹−米−蒸成サツマイモ系について
同じ表3には、前述した米麹−蒸成サツマイモ系とは異なり、乾燥黄麹100gに米飯と蒸成サツマイモの両方を加えたサンプル(本発明食品のサンプルa−1〜9、比較食品のサンプルb−7〜31)について、前述したえぐみ度A、糖化率S、粘度Vの測定結果を示す。
表3の全サンプルの総合評価をプロットした図7において、所定の配合比率R1と配合比率R3とによって規定される範囲内に、総合評価点が1(◎印)または2(○印)のサンプルが存在していることがわかる。
詳しくは、米の配合比率R1が0.5〜1.0、焼成サツマイモの配合比率R2が1.0〜3.0で規定される適正範囲2内では、総合評価点が1(◎印)または2(○印)となっている。更に、この適正範囲2内においては、米の配合比率R1が0.75〜1.0、蒸成サツマイモの配合比率R3が2.0〜3.0で規定される適正範囲3内では、総合評価点が全て1となっている。
一方、適正範囲2を外れたサンプルについては評価点が低い結果となった。これは、配合比率R1が0.5未満では、米が不足するため、米から溶出する旨み成分によって「えぐみ」をマスキングするマスキング効果が充分には発揮されず、「えぐみ」をほとんど解消できないからである。また、配合比率R1が1.0超えでは、米の旨み成分によるマスキング効果により「えぐみ」は解消されるものの、米の糖化が不充分となって所定の糖度に達することなく逆に甘みが薄くなり、しかも、糖化せずに残った多量のデンプンによって粘性が著しく高くなったり、残った米粒の粒状感が強くて舌触りが悪くなったりして、食感が著しく悪化するからである。
そして、配合比率R3が1.0未満では、蒸成サツマイモが不足するため、蒸成サツマイモによる甘み成分や食味によるマスキング効果が充分に発揮されずに「えぐみ」の解消が困難であるからである。一方、配合比率R2が3.0超えでは、焼成サツマイモのマスキング効果による「えぐみ」の解消や甘みの形成には有効であるものの、粘性が異常に大きくなって、飲食に好適なボリューム感が得られないからである。
これにより、黄米麹に米と蒸成サツマイモを所定比率で混合して発酵させることで、甘酒特有の旨みに加え、適度な甘みと食感を確保しつつ、米麹由来の「えぐみ」を解消した食品を製造することができる。
以上のように、本発明を適用したイモ加工食品の製造方法は、甘酒の原料にサツマイモを加えて発酵させるだけの簡単な構成でありながら、米麹由来の「えぐみ」がなく、しかも甘酒特有の旨みがあって、適度な甘みと食感も備えたイモ加工食品を製造可能なものとなっている。