本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムの構成について図1乃至図5を用いて説明する。図1に示すように、このX線回折測定システムは、X線回折測定装置1、アーム式移動装置、高電圧電源75、コンピュータ装置70、先端検出センサ60及びベルトコンベアのように一定速度で移動する長尺状のステージStを有する移動機構から構成される。ステージStは平面で、移動方向がこの平面に平行であり、一定間隔で測定対象物OBが載置されている。よって、ステージStが移動すると、載置された測定対象物OBは移動して次々にX線回折測定装置1の直下に来る。そして、X線回折測定システムは、X線回折測定装置1の直下に来た測定対象物OBに対して先端から後端までX線を連続的に照射して、回折X線の強度分布に基づく特性値を測定し、それぞれの測定対象物OBごとに異常箇所を検出する検査を行う。なお、本実施形態では測定対象物OBは鉄製の平板とする。また、図1に示すようにステージStの移動方向をY方向とし、ステージStの平面の垂直方向をZ方向とし、Y方向とZ方向に垂直な方向をX方向とする。
図1に示すようにX線回折測定装置1は、筐体50内にX線を出射するX線管10、X線管10から出射されるX線を貫通孔を通過させることで断面径を調整するX線断面径調整機構、X線断面径調整機構を通過したX線を入射し集光するように出射するX線集光機構、可視のLED光を出射X線と同じ光軸で出射するLED光出射機構、測定対象物OBのX線照射点で発生する回折X線の強度を検出する複数のシンチレーションカウンター21、及びX線集光機構とシンチレーションカウンター21を取り付けた直方体状プレート20を収容している。また、筐体50内には、X線管10、シンチレーションカウンター21等に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1において筐体50外で2点鎖線で囲まれた各種回路は、筐体50内の2点鎖線内に納められている。なお、図1においては、回路基板、電線、固定具及び空冷ファン等は省略されている。また、筐体50の外壁の一部には、微小断面の可視のレーザ光を平行光で出射するレーザ出射器40が取り付けられている。
図1及び図2に示すように、筐体50は略直方体状に形成され、底面壁50a、前面壁50b、後面壁50c、上面壁50d、斜面壁50e及び側面壁50fを有する。底面壁50aにはX線集光機構である固定ブロック22とポリキャピラリ14を、先端から所定の長さだけ筐体50の外に出すための円形状の孔50a1が形成されている。後述するようにポリキャピラリ14から出射するX線は略1点に集光するX線であるが、該出射X線の光軸は、底面壁50a及び上面壁50dに略垂直であり、前面壁50b、後面壁50c及び側面壁50fに略平行である。また、側面壁50fの1つは回転部53を回転可能にしている回転台55に連結され、回転部53にはアーム式移動装置の先端アーム54が連結されている。回転部53は手動で回転台55に対して任意の回転角度にして固定することができるものであり、アーム式移動装置は複数のアームが関節で連結されていて先端の位置と姿勢を任意の状態で固定することができるものである。これにより、筐体50(X線回折測定装置1)は、ステージSt及び測定対象物OBに対する位置と姿勢を変化させることができる。
X線管10は長尺状に形成され、筐体50内の上部にて中心軸が底面壁50a、上面壁50d及び側面壁50fに平行になるよう筐体50に固定されており、高電圧電源75からの高電圧の供給を受け、X線制御回路30により制御されて、X線を出射口11から出射する。X線制御回路30は、後述するコンピュータ装置70を構成するコントローラ71によって制御され、コントローラ71から指令が入力するとX線管10から一定の強度のX線が出射されるように、X線管10に高電圧電源75から供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線管10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路30は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。これにより、X線管10は温度が一定に保たれる。
図3は、X線回折測定装置1におけるX線集光機構とシンチレーションカウンタ21の部分を拡大して示す部分断面図であるが、図3には、X線断面径調整機構及びLED光出射機構も含まれている。図3に示すように、X線管10の出射口11から出射されたX線は円盤状プレート45の方向に進むが、円盤状プレート45には貫通孔45aが形成されており、円盤状プレート45を適切な回転位置にすることで、X線はこの貫通孔45aを通過して固定ブロック22に形成された貫通孔22aに入射する。円盤状プレート45を上方向から見た図、別の表現をすると出射X線が進む方向にX線管10側から見た図が、図4である。図4に示すように円盤状プレート45には貫通孔45a1〜45a11が形成されており、貫通孔45a1〜45a11はそれぞれの孔径が異なっている。よって、円盤状プレート45を回転させ適切な回転位置で停止させることで、出射X線を指定した貫通孔45aを通過させて出射させることができる。これにより貫通孔45aを通過した出射X線の断面径は、貫通孔45aの孔径に相当する径になる。貫通孔45a1は孔径が最も大きく、貫通孔22aと同程度の孔径であり、貫通孔45a1を通過した出射X線が貫通孔22aに入射したときは円盤状プレート45を介さずに出射X線が貫通孔22aに入射した状態と同じになる。以下、貫通孔45a2から貫通孔45a11に行くに従い貫通孔45aを通過した出射X線の断面径は小さくなり、貫通孔22aの孔径より断面径が小さい出射X線が貫通孔22aに入射することになる。なお、図3における円盤状プレート45の回転位置は、出射X線の光軸上に貫通孔45aがなく、出射X線の光軸と光軸が等しいLED光を出射させる位置であり、この点は後述する。この回転位置から図4の矢印が示す方向に円盤状プレート45を回転させ、適切な回転位置で停止させると、出射X線の光軸と貫通孔45a1〜45a11のいずれかの中心軸を一致させることができる。
図3に示すように、円盤状プレート45の中心には円盤状プレート45の中心軸と回転軸が合うようにモータ46の出力軸46aが固定されており、モータ46が回転して停止することで、円盤状プレート45の回転位置を変化させることができる。モータ46にはエンコーダ46bが組み込まれており、エンコーダ46bが出力するパルス列信号とインデックス信号は、図1に示す回転角度検出回路37に入力する。回転角度検出回路37は、インデックス信号を入力すると回転角度を0にし、その後に入力するパルス列信号のパルス数をカウントすることで回転角度を検出し、検出した回転角度のデータをモータ制御回路36に出力する。モータ制御回路36はコントローラ71から回転角度の信号を入力すると、回転角度検出回路37から入力する回転角度がコントローラ71から入力した回転角度に等しくなるまでモータ46に駆動信号を出力する。この駆動信号はモータ46を低速回転させるものであり、駆動信号が停止するとその回転位置で円盤状プレート45は停止するようになる。コントローラ71のメモリには、貫通孔45a1〜45a11の中心軸が出射X線の光軸と一致するときの回転角度が記憶されている。さらに、貫通孔45a1〜45a11を出射X線が通過し、後述するようにポリキャピラリ14からX線が集光して出射したときのX線入射方向の範囲(筐体50を揺動させた場合の揺動角度に相当する角度の範囲)が貫通孔45a1〜45a11に対応させて(すなわち回転角度に対応させて)記憶されている。これにより、入力装置72から、11個あるX線入射方向の範囲(筐体50を揺動させた場合の揺動角度に相当する角度の範囲)を選定して入力すると、コントローラ71からモータ制御回路36に回転角度の信号が出力し、円盤状プレート45の回転位置は、出射X線の光軸が選定されたX線入射方向の範囲になる貫通孔45aの中心軸と一致する位置になる。
図3に示すように、固定ブロック22の貫通孔22aの先には貫通孔22aよりやや小さな孔径の貫通孔22bがあり、この貫通孔22bにはポリキャピラリ14が固定されている。円盤状プレート45の貫通孔45aを通過したX線は貫通孔22aに入射した後、ポリキャピラリ14に入射し、ポリキャピラリ14のそれぞれの細束管を進んで筐体50の外にあるポリキャピラリ14の出射口から出射する。ポリキャピラリ14のそれぞれの細束管はポリキャピラリ14の出射口付近では出射したX線が集束するような構成になっており、測定対象物OBに照射されるX線は、略1点で集光するように照射される。すなわち、測定対象物OBに所定範囲の入射方向からX線を照射することができる。そして、上述したように、入力装置72からの入力によりこのときのX線入射方向の範囲を調整することができる。
図3に示すように、固定ブロック22及びポリキャピラリ14は、直方体状プレート20の中心に、中心軸が直方体状プレート20の平面に略垂直になるよう固定されている。そして、直方体状プレート20の平面は筐体50の上面壁50d及び底面壁50aに平行に取り付けられているので、ポリキャピラリ14から出射し集光するX線は、その光軸が上面壁50d及び底面壁50aに垂直な状態で出射する。
図1乃至図3に示すように、直方体状プレート20は、固定ブロック22及びポリキャピラリ14の中心軸が直方体状プレート20の平面と交差する箇所(直方体状プレート20の中心と略同一)を中心にした所定の径の円周付近に、4つのシンチレーションカウンター21−1〜21−4を、中心軸が直方体状プレート20の平面と垂直になるよう取り付けている。4つのシンチレーションカウンター21−1〜21−4のX線入射面は直方体状プレート20の平面に平行な1つの平面内に含まれるようになっており、以後、この平面をX線検出平面という。図2に二点鎖線で示される円は、測定対象物OBのX線照射点からX線検出平面までの距離(以後、照射点−検出平面間距離という)が設定値であるとき、X線検出平面に形成される回折環の半径方向のX線強度がピークになる位置である。なお、図1及び図3においては、分かりやすくするため、4つのシンチレーションカウンター21−1〜21−4が重ならないように描いているが、シンチレーションカウンター21−1〜21−4の位置は図2に示すものが正式なものである。上述したように、ポリキャピラリ14から出射するX線は略1点で集光するが、この集光点からX線検出平面までの距離は、照射点−検出平面間距離の設定値であり、照射点−検出平面間距離が設定値になるよう、X線回折測定装置1(筐体50)の位置を調整すれば、X線照射点がX線の集光点になる。
シンチレーションカウンター21−1〜21−4は、入射したX線により発生する蛍光の強度を光電子増倍管により増幅し、該蛍光の強度に相当する強度の信号を出力するもので、一般的に用いられているものであり、X線入射面はある程度の大きさがある。図2から分かるように、4つのシンチレーションカウンター21−1〜21−4のX線入射面は、固定ブロック22及びポリキャピラリ14の中心軸(直方体状プレート20の中心軸)からの距離が異なっている。そして、シンチレーションカウンター21−1,21−4のX線入射面は、回折環の半径方向のX線強度がピークになる二点鎖線の円から外れているが、回折X線の強度を所定以上の強度で検出する。これは、測定対象物OBに照射されるX線は所定範囲の方向から入射するため、回折環の半径方向において、X線強度が所定以上になる範囲は広くなっているためである。すなわち、図2に示した二点鎖線の円の両側に回折X線の強度が所定以上になる範囲が広範囲で存在しており、シンチレーションカウンター21−1,21−4も回折X線の強度を所定以上の強度で検出する。
上述したように、X線回折測定装置1の筐体50は、位置と姿勢を任意にして固定することができるので、後述する位置と姿勢の調整を行うことで、照射点−検出平面間距離を設定値にし、測定対象物OBの表面に対する出射X線の光軸を垂直にすることができる。測定対象物OBの表面に対する出射X線の光軸を垂直にすると、回折環の半径方向における回折X線の強度分布は、回折環の円周位置(回転角度)によらず略一定になる。よって、シンチレーションカウンター21−1〜21−4の出射X線の光軸(固定ブロック22及びポリキャピラリ14の中心軸)からの距離(半径値)と、シンチレーションカウンター21−1〜21−4が検出した回折X線の強度との関係は、回折環の1つの円周位置における半径方向での関係と略同一とみなすことができる。すなわち、該半径値と回折X線の強度との関係は、シンチレーションカウンター21−1〜21−4を、回折環の1つの円周位置において半径方向に重ねて並べた場合と略同一の関係である。
図5は、横軸に出射X線の光軸からの距離(半径値)をとり、縦軸に回折X線強度をとり、シンチレーションカウンター21−1〜21−4が検出した回折X線強度をプロットしたグラフである。グラフの上にはシンチレーションカウンター21−1〜21−4のX線入射面を半径値に対応させて示し、回折環の半径方向における回折X線の強度分布を点線で示してある。(A)は出射X線が照射された箇所の表面硬さが小さい場合であり、(B)は出射X線が照射された箇所の表面硬さが大きい場合である。グラフの点線が示すよう、表面硬さが大きい箇所では回折X線の強度分布は広がる。そして、表面硬さが大きいほど、この強度分布の広がりは大きくなる。シンチレーションカウンター21−1〜21−4が検出する回折X線強度は、グラフにプロットした点が示すようX線入射面がある回折X線の強度分布曲線の平均値と見なすことができる。回折X線の強度分布の広がりを特性値で得るには、強度分布曲線の半価幅や積分幅といった値を計算すればよいが、4つのシンチレーションカウンター21−1〜21−4の値のみでは、すなわちグラフにプロットした点が4つでは半価幅や積分幅を計算することはできない。よって、シンチレーションカウンター21−1〜21−4が検出する回折X線強度を、X線入射面が配置された箇所の半径値の大きい順にA,D,B,Cとすると、{(D−A)+(B−C)}で計算される値を回折X線の強度分布の広がりを表す特性値とする。
図5の(A)と(B)における4つのプロットを比較すると分かるように、回折X線の強度分布が広がると(D−A)及び(B−C)の値は小さくなる。そして、これらの値は、回折X線の強度分布が広がるほど小さくなる。よって、{(D−A)+(B−C)}で計算される特性値は、回折X線の強度分布の広がりを表す特性値であり、出射X線の強度が一定になるようにし、許容値を定めれば、該特性値を許容値と比較することで異常箇所を検出することができる。また、該特性値の大きさから異常の程度を判定することもできる。なお、測定対象物OBの表面硬さが小さい方を異常とするか、大きい方を異常とするかは測定対象物OBにより異なる。すなわち、{(D−A)+(B−C)}で計算される特性値が許容値より大きい方を異常とするか、許容値より小さい方を異常とするかは測定対象物OBにより異なる。
シンチレーションカウンター21−1〜21−4は、入射したX線によりシンチレータで発生する蛍光を光電子増倍管により電子に変換して増幅し、増幅した電子による電気信号を出力するものであり、出力する電気信号の強度は入射したX線の強度に相当しているため、電気信号の強度としてX線強度を検出することができるものである。シンチレーションカウンター21−1〜21−4はSD信号取出回路31〜34と信号線がつながっており、シンチレーションカウンター21−1〜21−4が出力するX線強度に相当する電気信号は、SD信号取出回路31〜34に入力する。SD信号取出回路31〜34は入力する電気信号を積分回路等により平坦な信号に変換した後、AD変換器によりデジタルデータに変換して出力する回路であり、コントローラ71から作動開始の指令が入力するとAD変換器が作動し、X線強度に相当する電気信号の強度のデジタルデータがコントローラ71に入力する。そして、コントローラ71内にて{(D−A)+(B−C)}の計算が行われ、算出された値により異常の有無及び異常の程度が判定される。
シンチレーションカウンター21−1〜21−4が検出する回折X線強度に相当する値を用いて、上述した特性値を計算して判定を行うことができるためには、照射点−検出平面間距離が設定値にされ、測定対象物OBに対する出射X線の光軸が垂直にされている必要がある。言い換えると、図2及び図5に示すように、X線検出平面に形成される回折環の半径方向におけるX線強度分布曲線のピークが、シンチレーションカウンター21−2とシンチレーションカウンター21−4の中間位置にあり、該X線強度分布曲線が回折環のいずれの円周位置においても同等である必要がある。筐体50内にあるLED光出射機構と筐体50の斜面壁50eにあるレーザ出射器40は、この条件を満たすよう、X線回折測定装置1の筐体50の位置と姿勢を調整するために設けらたものである。
図3に示すように、LED光出射機構は、LED光源44、円盤状プレート45に取り付けられたハーフミラー12及び円盤状プレート45のハーフミラー12の反対側の面に取り付けられたフォトディテクタ13から構成される。ハーフミラー12の円盤状プレート45への取り付け位置は、図4に示すように、円盤状プレート45に貫通孔45bが形成されている円周位置の所定の回転角度の位置である。ハーフミラー12は円盤状プレート45の平面に水平に入射した光の略半分を反射して円盤状プレート45に垂直な光にするようになっているので、円盤状プレート45の回転位置が適切な位置になると、LED光源44が出射した可視のLED光の内、円盤状プレート45の平面に略平行な光路の光は、反射するとポリキャピラリ14に入射する。コントローラ71のメモリには、この回転位置の回転角度が記憶されており、入力装置72より指令が入力すると、コントローラ71は記憶されている該回転角度をモータ制御回路36に出力し、円盤状プレート45の回転位置は可視のLED光がポリキャピラリ14に入射する位置になる。ポリキャピラリ14に入射したLED光はX線と同様にすべての細束管を進んで出射するので、集光するとともに出射X線と同様の光軸を有する。なお、図3においては、わかりやすくするためLED光源44を固定する部材は除いているが、LED光源44は直方体状プレート20に固定されており、図1に示すようにLED駆動回路35から駆動信号が入力すると可視のLED光を出射する。LED駆動回路35は、入力装置72から位置、姿勢調整の指令を入力すると、コントローラ71から作動開始の指令が入力し、LED光源44がLED光を出射するための駆動信号を出力する。
図1及び図6に示すように、レーザ出射器40は、円筒状の枠体41にレーザ光源43を固定し、円筒状の枠体41の先端近傍にコリメーティングレンズ42を固定したものであり、レーザ光源43から出射されたレーザ光は、コリメーティングレンズ42で平行光になって出射される。レーザ光源43はレーザ駆動回路38から駆動信号が入力することでレーザ光を出射し、レーザ駆動回路38は、入力装置72から位置、姿勢調整の指令を入力すると、コントローラ71から作動開始の指令が入力し、レーザ光源43がレーザ光を出射するための駆動信号を出力する。レーザ出射器40は固定ブロック51内に固定され、固定ブロック51は筐体50の斜面壁50eに固定されることで、レーザ出射器40は筐体50と一体になっている。この固定位置は、レーザ出射器40から出射されるレーザ光の光軸が、出射X線が集光する点を通るようにされている。なお、図6はポリキャピラリ14から出射されたX線が集光する様子を誇張して示すとともに、集光点をレーザ光の光軸が通ることを示す図である。誇張して示すとは、固定ブロック22とポリキャピラリ14を、出射X線の光軸の垂直方向(Y方向)に拡大して示すということである。
上述したように、入力装置72から位置、姿勢調整の指令を入力すると、LED光源44からLED光が出射され、レーザ光源43からレーザ光を出射され、測定対象物OBには、ポリキャピラリ14で集光したLED光の照射点と平行光であるレーザ光の照射点が形成される。そして、LED光(X線)が集光する点をレーザ光の光軸は通っているので、2つの照射点が一致するようにX線回折測定装置1(筐体50)の位置を調整すれば、測定対象物OBの表面でX線を集光させることができる。そして、上述したように、このときの照射点−検出平面間距離は設定値になる。
また、図3及び図4に示すように、円盤状プレート45のハーフミラー12が取り付けられた面の反対側の面であって、ハーフミラー12が取り付けられた箇所にはフォトディテクタ13が取り付けられており、円盤状プレート45のハーフミラー12とフォトディテクタ13に挟まれた箇所には、貫通孔45a1と同程度の孔径の貫通孔45bが形成されている。ポリキャピラリ14を反対方向に進んだ光は、ポリキャピラリ14に入射したLED光と同じ光路で反対方向にハーフミラー12に入射し、半分の光が透過して貫通孔45aを通過し、フォトディテクタ13で受光される。ポリキャピラリ14を反対方向に光が進む場合は、測定対象物OBで発生するLED光の反射光の光路が入射したLED光と同じ場合であり、これは、出射X線の光軸が測定対象物OBに対して垂直になっている場合である。また、LED光は集光するので、照射点−検出平面間距離が設定値であるとき(測定対象物OBの表面にLED光が集光するとき)、出射X線の光軸が測定対象物OBに対して垂直であると、フォトディテクタ13で受光される光の強度は最大になる。よって、2つの照射点が一致するようにX線回折測定装置1(筐体50)の位置を調整した後、フォトディテクタ13で受光される光の強度が最大になるようX線回折測定装置1(筐体50)の位置と姿勢を調整すれば、照射点−検出平面間距離は設定値になり、測定対象物OBに対する出射X線の光軸は垂直になる。
フォトディテクタ13は、受光した光の強度に相当する強度の信号を光強度検出回路39に出力し、光強度検出回路39は、入力装置72から位置、姿勢調整の指令を入力すると、コントローラ71から作動開始の指令が入力し、入力する信号を増幅してその強度をAD変換器でデジタルデータにし、コントローラ71に出力する。コントローラ71は入力したデジタルデータを受光強度の値にして表示装置73にて表示するので、作業者は表示装置73に表示される受光強度を見ながらX線回折測定装置1(筐体50)の姿勢を調整することができる。
ステージStの側面の近傍には、測定対象物OBの先端および後端が出射X線が照射される位置になったことを検出するための端検出センサ60が取り付けられている。端検出センサ60はステージStの反対側の側面近傍にあるレーザ光の受光の有無により、測定対象物OBの先端および後端を検出するものであり、レーザ光を受光すると所定強度の信号を出力し、レーザ光の受光がないと信号の出力はないようになっている。端検出回路61は端検出センサ60と一体になっており、コントローラ71から作動指令が入力した後、端検出センサ60から入力する信号の強度が所定強度から0になると、「先端検出」を意味する信号をコントローラ71に出力し、0から所定強度になると「後端検出」を意味する信号をコントローラ71に出力する。なお、端検出センサ60が検出するライン(反対側にあるレーザ光の光軸)は、測定対象物OBの移動方向に対して出射X線の光軸よりやや後方にあり、後述するように、「先端検出」の信号が出力されたときは、予め設定された時間をおいてX線の出射と回折X線の強度の検出を行い、「後端検出」の信号が出力されたときは、即座にX線の出射と回折X線の強度の検出を停止するようになっている。これは、出射X線が測定対象物OBの先端及び後端の縁にかかった状態では正常な評価ができないため、この状態のときは評価を行わないようにするためである。
コンピュータ装置70は、コントローラ71、入力装置72及び表示装置73からなる。コントローラ71は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶されたプログラムを実行してX線回折測定装置1及び位置制御装置5の作動を制御するとともに、入力したデジタルデータを用いて演算を行い、合否判定及び異常程度の評価を行う。入力装置72は、コントローラ71に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作動指示などの入力のために利用される。表示装置73も、コントローラ71に接続されて、X線回折測定システムの各種の設定状況、作動状況及び検査結果などを表示する。
次に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、一定速度で移動する長尺状のステージStに載置された測定対象物OBを次々に検査する場合のX線回折測定システムの作動について説明する。なお、この説明においては、測定対象物OBの表面硬さが小さい方、すなわち、{(D−A)+(B−C)}で計算される特性値が許容値より大きい方を異常として説明する。まず、作業者はX線回折測定システムの電源を投入し、X線回折測定装置1の直下に測定対象物OBが来る状態にして、入力装置72から位置、姿勢調整の指令を入力する。これにより、測定対象物OB上にLED光の照射点とレーザ光の照射点が形成され、表示装置73にはLED光の反射光の受光強度が表示されるので、X線回折測定装置1(筐体50)の位置と姿勢を調整し、LED光の照射点とレーザ光の照射点が一致し、LED光の反射光の受光強度が最大になるようにする。これにより、X線回折測定装置1(筐体50)の位置と姿勢の調整が完了する。なお、前回の検査時と測定対象物OBの厚さが同一であり、X線回折測定装置1(筐体50)の位置と姿勢は変化していないことが明らかであれば、この位置と姿勢の調整は省略してよい。
次に作業者は、ステージStを移動させる装置を作動させ、入力装置72から検査開始を入力する。これにより、コントローラ71はインストールされている図7に示すフローのプログラムの実行をステップS1にて開始する。以下、図7に示すフローに沿って説明する。
まず、コントローラ71はステップS2にて、コントローラ71に内蔵されたクロックによる時間計測を開始し、ステップS3にて端検出回路61に作動開始の指令を出力する。これにより端検出回路61は、上述したように端検出センサ60からの信号により測定対象物OBの先端と後端を検出するごとに、「先端検出」及び「後端検出」を意味する信号をコントローラ71に出力する。次にコントローラ71はステップS4にて測定対象物OBを識別する番号であるmを「1」にし、ステップS5にて測定点を識別する番号であるnを「1」にする。そして、ステップS6にて端検出回路61から最初の測定対象物OBにおける「先端検出」の信号が入力するのをNoの判定を繰り返しながら待ち、入力するとYesと判定してステップS7へ行き、ステップS7にて計測時間をリセットして0にし、ステップS8にて予め設定した時間Tが経過するのをNoの判定を繰り返しながら待つ。これは、上述したように、端検出センサ60が検出するライン(反対側にあるレーザ光の光軸)は、測定対象物OBの移動方向に対して出射X線の光軸よりやや後方にあり、出射X線が測定対象物OBの縁にかかると正確な検査が行われないため、X線照射点が測定対象物OBの縁より微小距離だけ離れ、正確に検査を行うことができるまで待つためである。
コントローラ71は、時間Tが経過するとYesと判定してステップS9へ行き、ステップS9にてX線制御回路30に出射開始の指令を出力し、ステップS10にてSD信号取出回路31〜34にデータ出力開始の指令を出力する。これにより、X線回折測定装置1(筐体50)からX線が測定対象物OBに照射され、回折X線強度のデジタルデータがコントローラ71に入力する。次に、コントローラ71はステップS11にて、時間が(T+Δt)になるまでNoの判定を繰り返しながら待ち、時間が(T+Δt)になるとYesと判定してステップS12へ行き、ステップS12にてSD信号取出回路31〜34から入力している回折X線強度に相当する強度のデータI(n,m)をメモリに取り込む。取り込み時間は予め設定されており、この設定時間中にSD信号取出回路31〜34から入力しているデータはすべて取り込む。次にステップS13にて、取り込んだ回折X線強度のデータI(n,m)を平均し、上述した信号A,B,C,Dのそれぞれの強度値にし、{(D−A)+(B−C)}の計算から特性値V(n,m)を算出する。
次に、コントローラ71はステップS14にて、ステップS13で得た特性値V(n,m)が許容値L以下である場合はYesと判定してステップS16へ行き、許容値Lを超える場合はNoと判定してステップS15へ行き、特性値V(n,m)を異常箇所データとして別のメモリ領域に記憶した後、ステップS16へ行く。そして、コントローラ71はステップS16にて、端検出回路61から最初の測定対象物OBにおける「後端検出」の信号が入力したか判定するが、この段階では検査を開始したばかりであるのでNoと判定してステップS17へ行き、nをインクリメントしてステップS11に戻る。そして、ステップS11にて計測時間がT+n・Δt(この場合はT+2・Δt)になるまで待ち、計測時間がT+n・ΔtになるとYesと判定してステップS12へ行き、上述したステップS12乃至ステップS17の処理を行ってステップS12へ戻る。
このようにして計測時間がT+Δt,T+2・Δt,T+3・Δt・・・と、Δtづつ増えるごとに、特性値V(n,m)が取り込まれてそれぞれ合否判定が行われ、不合格(異常検出)の場合は、特性値V(n,m)が異常箇所データとして別のメモリ領域に記憶されていく。そして、端検出回路61から「後端検出」の信号が入力すると、ステップS16にてYesと判定してステップS18へ行き、ステップS18にてX線制御回路30に出射停止の指令を出力し、ステップS19にてSD信号取出回路31〜34に出力停止の指令を出力する。これにより、測定対象物OBへのX線照射は停止し、回折X線強度に相当するデータの出力は停止する。上述したように、端検出センサ60が検出するライン(反対側にあるレーザ光の光軸)は、測定対象物OBの移動方向に対して出射X線の光軸よりやや後方にあるため、端検出センサ60が後端を検出したときは、出射X線は測定対象物OBの後端の縁にかかっていない。よって、「後端検出」の信号が入力したときは、即座にX線照射とデータの出力を停止する。
次に、コントローラ71はステップS22にて、異常箇所データとして別のメモリ領域に記憶した特性値V(n,m)があるか判定し、ない場合はNoと判定してステップS25へ行き、「合格」の表示をm=1に対応する測定対象物OBの識別情報とともに表示装置73へ表示させる。また、別のメモリ領域に記憶した特性値V(n,m)がある場合は、Yesと判定してステップS23へ行き、「不合格」の表示をm=1に対応する測定対象物OBの識別情報とともに表示装置73へ表示させる。そして、ステップS24にて、記憶したデータのn、予め記憶されているステージStの移動速度F、時間Tおよび端検出センサ60が検出するラインから出射X線の光軸までの距離Bから、F・(T+n・Δt)−Bの計算を行い、異常箇所の測定対象物OBの先端からの距離を計算する。さらに、特性値V(n,m)から許容値Lを減算した大きさを、予め記憶されている異常度合のテーブルに当てはめて異常度合を定める。異常度合のテーブルは、特性値V(n,m)から許容値Lを減算した大きさ、および厚さH(n,m)の基準値Sからのずれ量を範囲ごとに分け、「微」,「小」,「中」,「大」,「特大」又は「1」,「2」,「3」,「4」,「5」というように異常度合を定めたものである。なお、特性値V(n,m)から許容値Lを減算した大きさをそのまま異常の度合いとしてもよい。そして、コントローラ71は、このように計算した異常箇所の先端からの距離と定めた異常の度合を表示装置73へ表示する。この表示において、数値での表示に加えて図で異常箇所と異常の度合を示す表示を行うと検査結果が分かりやすい。
次に、コントローラ71はステップS26にて、mをインクリメントしてステップS5に戻り、m=2の測定対象物OBに対して、上述したステップS5乃至ステップS25の処理を行う。そして、ステップS26にて、mをインクリメントしてステップS5に戻り、m=3の測定対象物OBに対して同様の処理を行う。このようにして、移動するステージStに載置されて次々に移動してくる測定対象物OBが検査され、検査結果が表示装置73に表示される。作業者は表示装置73に表示される結果を見て、不合格と判定された測定対象物OBをステージStから取り除き、それ以外の測定対象物OBと分別する。そして、検査する測定対象物OBがなくなり、作業者が入力装置72から検査停止の指令を入力すると、ステップS27にてYesと判定してステップS28へ行き、ステップS28にて端検出回路61へ作動停止の指令を出力し、内蔵されたクロックによる時間計測を停止する。次にステップS29にて、異常箇所データとして記憶した回折X線強度データV(n,m)を別のメモリ領域に移動して、次回の検査の際に使用するメモリ領域を空にし、ステップS30にてプログラムの実行を終了する。
このように、ステージStを移動させた後、入力装置72から検査開始の指令を入力すれば、コントローラ71がインストールされたプログラムを実行することで、ステージStに載置された測定対象物OBの検査が次々に行われ、検査結果が順に表示装置73に表示される。作業者は異常が検出された測定対象物OBの異常の原因を詳細に分析したいときは、該測定対象物OBをX線回折像を得るX線回折測定装置にセットして、異常箇所のX線回折像を測定すればよい。なお、コントローラ71に設定されている合否判定レベルLは、測定対象物OBに照射されるX線の強度が一定である必要がある。上述したように、X線制御回路30は、X線管10から一定の強度のX線が出射されるように、高電圧電源75からX線管10に供給される駆動電流及び駆動電圧を制御しているが、長期間が経過するとX線管10から出射されるX線の強度が変化する可能性がある。よって、定期的に標準の測定対象物OBを測定して特性値Vが許容範囲内にあることを確認する。そして、許容範囲外になったときは、X線回折測定装置1のメンテナンスを行うか、X線制御回路30の設定を変えて標準の測定対象物OBの特性値Vを許容範囲内にするか、又は許容値レベルLを変更する。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、対象とする測定対象物OBに向けてX線を出射するX線出射機構と、X線出射機構から出射されるX線が測定対象物OBに照射されたとき、測定対象物OBにて発生する回折X線の強度を検出する複数のシンチレーションカウンタ21であって、回折X線を入射する検出箇所が、X線出射機構から出射されるX線の光軸上の点を中心にしたX線の光軸に垂直な平面内における所定の円の円周位置付近になるとともに、中心からの距離がそれぞれ異なるように配置されている複数のシンチレーションカウンタ21と、それぞれのシンチレーションカウンタ21における検出箇所の中心からの距離の大小が記憶され、中心からの距離順にそれぞれのシンチレーションカウンタ21が検出した回折X線の強度を並べたときの強度変化が、所定の円の1つの円周位置における半径方向の回折X線の強度変化として、強度変化に基づく特性値を計算するコントローラ71の演算プログラムとを備えたX線回折測定システムにおいて、X線出射機構は、内部でX線を発生させて出射口よりX線を出射させるX線管10と、X線管10から出射したX線を入射し通過させて出射する多数の細束管の集合体であるポリキャピラリ14とを備え、ポリキャピラリ14は、多数の細束管から出射したX線が、所定の円の箇所における回折X線の強度がピークになる回折X線の発生点で集光するように、多数の細束管が構成されているようにしている。
これによれば、X線が集光する点がX線照射点とすべき点(所定の円の箇所における回折X線の強度がピークになる回折X線の発生点)となり、X線が集光する点を測定対象物OBの表面になるようにすれば、測定対象物OBにX線を所定範囲の入射方向から照射させて測定を行うことができる。これにより、X線回折測定装置1の筐体50を揺動させた場合と同じ効果を得ることができ、測定対象物OBの結晶粒が大きい場合でも、X線光軸を中心としたあらゆる半径方向における回折X線の強度分布曲線が、同程度の強度で正規分布をなすようになる。すなわち、表面硬さに基づく特性値の測定精度が悪くならないようにすることができる。また、X線が集光するので、X線の照射点の大きさ(測定点の大きさ)が従来と同程度で、X線管から出射するX線の強度が従来と同程度である場合は、X線を平行光にする際の損失がない分、従来よりも測定対象物OBに照射されるX線の強度は大きくなる。よって、発生する回折X線の強度は従来より大きくなり、測定時間をより短くすることができる。
また、上記実施形態においては、X線回折測定システムは、ポリキャピラリ14にX線が入射する近傍に配置された、複数のX線通過用の貫通孔45aが形成された円盤状プレート45であって、複数のX線通過用の貫通孔45aはそれぞれ異なった孔径である円盤状プレート45と、円盤状プレート45に形成された複数のX線通過用の貫通孔45aのいずれかがX線の光路上に配置するよう円盤状プレート45を回転させるモータ46、モータ制御回路36及び回転角度検出回路37からなる円盤状プレート移動機構とを備えている。
これによれば、円盤状プレート移動機構により円盤状プレート45を移動させれば、X線が通過する貫通孔45aが変わり、X線の断面径が変化する。そして、X線の断面径が変化すれば、X線が集光した箇所におけるX線入射方向の範囲(装置の筐体50を揺動させた場合の揺動角度に相当する角度の範囲)を変化させることができる。すなわち、円盤状プレート移動機構により円盤状プレート45を回転させてX線が通過する貫通孔45aを変えることで、X線入射方向の範囲を様々に設定することができる。また、貫通孔45aが形成されたプレートの移動機構を、円盤状プレート45を回転させる機構にすることで、プレートの移動機構をコンパクトで簡単な機構にすることができる。
また、上記実施形態においては、X線回折測定装置1は、X線管10からX線が出射されていない状態で、可視のLED光をポリキャピラリ14に入射させて出射させるLED光出射機構を備え、LED光出射機構は、LED光を出射するLED光源44と、円盤状プレート45の円周方向の一部に取り付けられたハーフミラー12であって、円盤状プレート移動機構による円盤状プレート45の移動によりハーフミラー12にLED光源44から出射されたLED光が入射するようになったとき、ポリキャピラリ14にLED光が入射するよう入射したLED光を反射させるハーフミラー12とを備えている。
これによれば、出射X線と同じ光軸で可視のLED光を出射することができるので、LED光の照射点を見ながらX線照射点(測定点)が意図した位置になるよう調整することができる。また、LED光も集光して照射されるので、LED光の照射点の大きさが最小となるよう測定対象物OBに対するX線回折測定装置1の位置を調整することで、X線が集光する点をX線の照射点(測定対象物OBの表面)にし、複数のシンチレーションカウンタ21の入射面近傍にある所定の円の箇所における回折X線の強度が、ピークになるようにすることができる。すなわち、照射点−検出平面間距離を設定値にすることができる。
また、上記実施形態においては、LED光出射機構から出射されるLED光とは別の光軸を有する可視で平行なレーザ光を出射するレーザ出射器40であって、レーザ光の光軸はポリキャピラリ14から出射されたX線が集光する点を通るようにされているレーザ出射器40を備えている。
これによれば、2つの照射点が合致するよう、測定対象物OBに対するX線回折測定装置1の位置を調整することで、X線が集光する点をX線の照射点(測定対象物OBの表面)にすることができる。
また、上記実施形態においては、ハーフミラー12の近傍に、ポリキャピラリ14のX線が入射する箇所からハーフミラー12に向かう方向の光を受光し、受光した光強度に相当する強度の信号を出力するフォトディテクタ13を備えている。
これによれば、フォトディテクタ13の出力信号の強度が最大になるように測定対象物OBに対する装置の姿勢を調整することで、測定対象物OBに照射されたLED光の反射光を、照射したLED光の進行方向の正反対の方向にしてポリキャピラリ14を反対方向に進むようにすることができる。すなわち、測定対象物OBに照射するX線の光軸を測定対象物OBの表面に対して垂直にすることができる。
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、可視光を出射する光源としてLED光源44を用いたが、可視光を出射するもので直方体状プレート20に固定可能な程度に小型のものであれば、どのような光源を用いてもよい。例えば、レーザ光源とコリメーティングレンズで略平行光にした可視光を、ハーフミラー12に入射させるようにしてもよい。また、レーザ光源に替えてSLD光源を用いてもよい。
また、上記実施形態においては、円盤状プレート45に形成する貫通孔45aは、図4に示すように等間隔の回転角度ごとに設けた。しかしながら、貫通孔45a以外の箇所でX線管10が出射したX線を遮蔽すればよいので、貫通孔45aを孔径が小さくなるほど隣の貫通孔45aとの間隔を狭めるようにしてもよい。これによれば、より多くの貫通孔45aを円盤状プレート45に設けることができ、X線入射方向の範囲の変化の間隔を小さくすることができる。
また、上記実施形態においては、貫通孔45aを円盤状プレート45に形成したが、複数の貫通孔45aの位置を変化させ、それぞれの貫通孔45aの中心軸を出射X線の光軸と一致させることができるならば、プレートの形状は円盤状でなくてもよい。プレートを回転させるならば扇状でもいいし、プレートを直線移動させるならば長方形状でもいい。また、装置の構造が複雑化してもかまわなければ、複数の貫通孔45aが形成されたプレートを移動させる替わりに、カメラの絞りのように貫通孔の径を変化させる機構を設けたプレートに、可視光を反射させるハーフミラー12を取り付け、このプレートを往復移動させるような構造にしてもよい。
また、上記実施形態においては、可視のLED光を反射させる光学部品にハーフミラー12を使用し、LED光の反射光を検出するフォトディテクタ13を設けたが、X線回折測定装置1の姿勢の調整を別の手段で行うならば、フォトディテクタ13を無くし、ハーフミラー12は三角状ミラーにしてもよい。該別の手段としては、水準器によりステージStの表面(測定対象物OBの表面)が水平になるよう調整しておき、水準器により筐体50の上面壁50dが水平になるようX線回折測定装置1の姿勢を調整する等がある。
また、上記実施形態においては、出射X線と同じ光軸で可視光を出射することができるよう、円盤状プレート45にハーフミラー12を取り付け、LED光をポリキャピラリ14に入射させる機能を設けたが、測定対象物OBの形状が1つに限定されており、ステージStとX線回折測定装置1の位置と姿勢の関係が固定されているならば、出射X線と同じ光軸で可視光を出射する機能は設けなくてもよい。この場合は、レーザ出射器40は設けず、円盤状プレート45は貫通孔45aだけを設ければよい。
また、上記実施形態においては、4つのシンチレーションカウンタ21−1〜21−4を図2に示すように直方体状プレート20に固定したが、4つのX線入射面を、固定ブロック22とポリキャピラリ14の中心軸からの距離が異なるようにすれば、配置における間隔の回転角度は任意の角度にしてよい。また、シンチレーションカウンタ21−1〜21−4のX線入射面を本実施形態より小さくしても回折X線の強度を精度よく検出することができるならば、シンチレーションカウンタ21−1〜21−4を任意の回転角度の位置で半径方向に1列に並べてもよい。
また、上記実施形態では、シンチレーションカウンタ21の個数を4つにしたが、半径方向における回折X線の強度変化に基づく特性値を計算することができるならば、シンチレーションカウンタ21の個数は3つでもよいし、5つ以上でもよい。例えば3つであれば、X線入射面の固定ブロック22とポリキャピラリ14の中心軸からの距離が大きい順にA,B,Cとすると、該特性値は(B−A−C)で計算される値を採用でき、例えば6つであれば、該距離が大きい順にA,B,C,D,E,Fとすると、該特性値は{(C−B−A)+(D−E−F)}で計算される値を採用できる。また、シンチレーションカウンタ21の個数をさらに増やしたときは、半価幅、積分値幅といった特性値を計算してもよい。
また、上記実施形態では、本発明を測定対象物OBが移動機構のステージSt上に載置され一定速度で移動する場合に適用したが、測定対象物OBがX線回折測定装置1に対して相対的に移動する場合であれば、どのような場合でも本発明は適用することができる。例えば、固定されたステージに測定対象物OBを載置し、X線回折測定装置1を測定対象物OBの表面と平行に移動させる場合でも本発明は適用することができる。また、本発明は測定対象物OBがX線回折測定装置1に対して相対的に移動する場合でなくても、測定対象物OBを次々に固定されたステージ上に載置し、それぞれの測定対象物OBの設定された箇所を検査する場合でも適用することができる。
また、上記実施形態では、測定対象物OBを特性値Vで評価するようにしたが、これ以外に取得した特性値Vと測定対象物OB上の位置から計算できるものにより評価を行ってもよい。例えば、位置に対する特性値Vの変化曲線から計算される平均値、最大値、最小値及び変動範囲により評価を行ってもよい。
また、上記実施形態では、回折X線の強度を検出するのにシンチレーションカウンター21を使用したが、X線の強度を精度よく高速で検出することができれば、どのようなX線検出センサを用いてもよい。
また、上記実施形態では、端検出センサ60はステージStの反対側から出射されているレーザ光の受光の有無により、測定対象物OBの先端および後端を検出するものにしたが、端検出センサ60は測定対象物OBの先端および後端を検出できれば、どのような作動原理のものでもよい。例えば、端検出センサ60を撮像機能のあるものにし、ステージStの反対側に輝点や特殊なマークを設けて、撮像画像から輝点や特殊なマークがなくなることや現れることで測定対象物OBの先端および後端を検出するものであってもよい。