以下、図面を参照しながら、本開示に係る画像形成装置について説明する。画像形成装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、及び複合機を含み、外部PCから入力された画像情報や原稿から読取った画像情報に基づいて、記録媒体として用いられるシートに画像を形成する。
(画像形成装置の概要)
本開示に係るシート搬送装置は、図1に示す電子写真方式のフルカラーレーザープリンタである画像形成装置1の一部を構成している。画像形成装置1は、一般事務用途以外の印刷に対応可能なPOD機であり、記録媒体として用紙及び封筒等の紙、光沢紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート(OHT)等のプラスチックフィルム、並びに布等の様々なシートを用いることができる。画像形成装置1の装置本体1Aには、シートSを収納する給送カセット51と、給送カセット51から給送されたシートSに画像を形成する画像形成エンジン10と、が収容されている。画像形成手段の一例である画像形成エンジン10は、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのトナー像を形成する4つの画像形成部PY,PM,PC,PKと、中間転写体である中間転写ベルト506と、を備えたタンデム型中間転写方式である。画像形成部PY〜PKは、それぞれ感光体である感光ドラム1Y,1M,1C,1Kを有する電子写真ユニットである。
画像形成部PY〜PKは、現像に用いるトナーの色が異なる以外は同様に構成されるため、イエローの画像形成部PYを例に画像形成部の構成及びトナー像の形成プロセス(画像形成動作)について説明する。画像形成部PYは、感光ドラム1Yの他に、露光装置511、現像装置510、及びドラムクリーナ509を有する。感光ドラム1Yは、外周部に感光層を有するドラム状の感光体であり、中間転写ベルト506の回転方向(矢印R2)に沿った方向(矢印R1)に回転する。感光ドラム1Yの表面は、帯電ローラ等の帯電手段から電荷を供給されることで帯電する。露光装置511は、画像情報に応じて変調されたレーザ光を発し、反射装置512を含む光学系によって感光ドラム1Yを走査することで、感光ドラム1Yの表面に静電潜像を描き込む。現像装置510は、トナーを含む現像剤を収容し、感光ドラム1Yにトナーを供給することで静電潜像をトナー像に現像する。感光ドラム1Yに形成されたトナー像は、一次転写装置である一次転写ローラ507と中間転写ベルト506との間のニップ部である一次転写部において中間転写ベルト506に一次転写される。転写後に感光ドラム1Yに残留した残トナーは、ドラムクリーナ509によって除去される。
中間転写ベルト506は、駆動ローラ504、従動ローラ505、二次転写内ローラ503、及び一次転写ローラ507に巻き掛けられ、駆動ローラ504により図中時計回り方向(矢印R2)に回転駆動される。上述の画像形成動作は各画像形成部PY〜PKにおいて並行して進められ、4色のトナー像が互いに重なるように多重転写されることで、中間転写ベルト506にフルカラーのトナー像が形成される。このトナー像は、中間転写ベルト506に担持されて二次転写部に搬送される。二次転写部は、転写手段としての二次転写ローラ56と二次転写内ローラ503の間のニップ部として構成され、二次転写ローラ56にトナーの帯電極性とは逆極性のバイアス電圧が印加されることでトナー像がシートSに二次転写される。転写後に中間転写ベルト506に残留した残トナーは、ベルトクリーナによって除去される。
トナー像を転写されたシートSは、定着前搬送部57により定着ユニット58へと受け渡される。定着ユニット58は、シートSを挟持して搬送する定着ローラ対と、ハロゲンヒータ等の熱源とを有し、シートSに担持されたトナー像に圧力及び熱を加える。これにより、トナー粒子が溶融・固着して、シートSに定着した定着画像が得られる。
次に、給送カセット51に収容されたシートSを給送し、画像が形成されたシートSを機体外部に排出するシート搬送系の構成及び動作について説明する。シート搬送系は、大まかにシート給送部54、レジストレーション部50、分岐搬送部59、反転搬送部501、及び両面搬送部502を含む。
給送カセット51は装置本体1Aに対して引抜き可能に装着され、昇降可能な昇降プレート52に積載されたシートSは、給送ユニット53によって1枚ずつ給送される。シート給送手段である給送ユニット53としては、吸引ファンによってベルト部材にシートSを吸着して搬送するベルト方式(図1参照)や、ローラ又はパッドを用いた摩擦分離方式が挙げられる。給送ユニット53から送り出されたシートSは、搬送ローラ対54bによって給送パス54aに沿って搬送され、レジストレーション部50に受け渡される。
レジストレーション部50は、プレレジ搬送部20、斜行補正部30、及びレジストレーションローラ対(以下、レジローラとする)7を備え、シートSの斜行を補正してシートSを二次転写部に向けて搬送する。このとき、レジローラ7は、レジストレーションセンサ8の検知信号に基づいて、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作の進行度に合わせたタイミングでシートSを二次転写部に送り込む。二次転写部においてトナー像を転写され、定着ユニット58によって画像の定着が行われたシートSは、シートSの搬送経路を切換可能な切換部材を有する分岐搬送部59に搬送される。シートSに対する画像形成が完了している場合には、シートSは排出ローラ対によって装置本体1Aの外方に配置された排出トレイ500に排出される。シートSの裏面に画像を形成する場合、シートSは反転搬送部501を介して両面搬送部502に受け渡される。反転搬送部501は、正転及び逆転可能な反転ローラ対を有し、シートSをスイッチバックさせて両面搬送部502に受け渡す。両面搬送部502は、給送パス54aに合流する再搬送パス54cを介してシートSをプレレジ搬送部20へ向けて搬送する。そして、シートSは裏面に画像を形成された後、排出トレイ500へと排出される。
なお、上記構成は画像形成装置の一例であり、例えば、電子写真方式に代えてインクジェット方式の画像形成手段を備えた画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、画像形成手段を備えた装置本体の他にオプションフィーダやシート処理装置等の付属機器を備えるものがあるが、以下で説明するシート搬送装置の構成はこのような付属機器におけるシートの搬送に用いてもよい。
(サイドレジストレーション)
ここで、斜行補正部30によるシートSの斜行補正について説明する。本開示に係る斜行補正部30は、サイドレジストレーション方式のシート整合装置である。即ち、斜行補正部30は、シート搬送方向に沿って延びる当接面を有する基準部材にシートの側端、つまりシート搬送方向に直交する幅方向の端部を当接させることで、シートの側端が当接面に倣うようにしてシートの斜行を補正する。ただし、シート搬送方向とは、斜行補正部30によってシートSが基準部材に向かって幅寄せされる前のシートの搬送方向であり、本実施例ではプレレジ搬送部20の搬送ローラ対21によるシートSの搬送方向を指すものとする。
図24に示す参考例としての斜行補正部30Aは、基準部材300と、基準部材300に向けてシートSを幅寄せする1つ以上の斜送ローラ32Aとを備える。各斜送ローラ32Aは、シート搬送方向(図中左方向)に沿って延びる基準部材300の基準面301に対して角度αで傾斜した姿勢で配置されている。斜送ローラ32Aは、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21からシート搬送方向の下流に送り出されたシートSに対して図中左下方向の斜めの搬送力を付与することで、シートSの側端を基準面301に当接させる。
プレレジ搬送部20の各搬送ローラ対21は、ニップ部にシートSを挟持可能な加圧状態と、ニップ部が開放される離間状態とを切換可能であり、斜送ローラ32AによってシートSの幅寄せが行われている期間中は離間状態に保持される。これは、搬送ローラ対21がシートSの幅寄せを妨げることを防ぐと共に、シートSに対する摩擦やストレスによってシートSのダメージが生じることを避けるためである。
ここで、斜送ローラ32Aの角度αが比較的小さい場合、シートSはシート搬送方向に対して小さな傾斜角度に沿って移動し、基準部材300に向かって徐々に幅寄せされる。即ち、斜送ローラ32AがシートSの幅寄せを開始してからシートSの側端が基準部材300の基準面301に当接するまでの、シート搬送方向におけるシートの移動距離Lαが大きな値となる。しかしながら、少なくとも幅寄せを開始する位置(破線参照)でシートSに当接する可能性のある搬送ローラ対21を開放可能とする必要から、搬送ローラ対21を移動させる機械的構成やその制御構成の分、装置が大型化又は複雑化してしまう。
特に、長尺シート、即ちA判及びB判等の広く用いられている規格に比べて長辺と短辺の比が大きいシートの場合、開放可能とする必要のある搬送ローラ対21の数が多くなる。例えば、図1においてシート給送部54から斜行補正部30に至る長さの長尺シートSに対応する場合に、給送パス54aの搬送ローラ対54bを離間させる必要が生じることが考えられる。なお、搬送ローラ対を移動させるための構成の他にも、シートが斜送される区間では例えばシートの搬送抵抗を抑制するためにシート搬送路の湾曲を極力避ける等の対策が必要となり、装置の大型化・複雑化につながる。
そこで、図24(b)に示すように斜送ローラ32Bの角度βを大きく設定する(β>α)ことが考えられる。斜送ローラ32Bの角度βが大きい程、幅寄せを開始する位置(破線参照)をシート搬送方向の下流側に設定できるため、上流側の搬送ローラ対21を離間させるための構成を省略可能となる。例えば図24(a)の例では4組の搬送ローラ対21(Nα=4)を離間させる必要がある一方で、図24(b)の例では下流側の2組の搬送ローラ対21(Nβ=2)を開放可能とすれば済む。しかし、斜送ローラ32Bの角度βが大きいことから、シートSの側端が基準部材300に対して強く突き当てられてしまい、シートSの座屈が生じる懸念があった。
そこで、本開示に係るシート搬送装置は、シート搬送方向に対する傾斜角度が異なる複数の斜送手段を併設することにより、このような不都合を克服している。以下、シート搬送装置の構成及び動作について、具体例に沿って説明する。
まず、実施例1に係るシート搬送装置であるレジストレーション部50の構成について説明する。図2に示すように、レジストレーション部50は、シートをシート搬送方向Dxに搬送するプレレジ搬送部20と、プレレジ搬送部20の下流に配置された斜行補正部30と、斜行補正部30の下流に配置されたレジローラ7と、を備える。
プレレジ搬送部20は、少なくとも1組(本実施例では4組)の搬送ローラ対21を有し、各搬送ローラ対21はシート搬送方向DxにシートSを送り出す。プレレジ搬送部20は、シートSをセンター基準方式で、即ちシート搬送方向Dxに直交する幅方向Dyに関してシートSの中心がシート搬送路の中央位置(以下、搬送中心とする)L0に揃うようにシートSを搬送する。搬送中心L0の位置は、本実施例の場合、搬送ローラ対21がシートSを挟持可能な領域、つまりローラ同士の接触領域の幅方向Dyにおける中央位置である。
最下流の搬送ローラ対21の近傍かつ搬送中心L0の近傍には、シートSを検知するための検知手段として、プレレジセンサS1が配置されている。プレレジセンサS1は、例えば発光部及び受光部を有する反射型の光電センサを用いることができ、その場合は検知位置に到達したシートSによって発光部が発した光が反射され、受光部が反射光を検出することでシートSの通過タイミングが検知される。
斜行補正部30は、基準部材300と、奥側斜送ユニット31と、前側斜送ユニット32と、を備える。ただし、前側・奥側は画像形成装置1を正面から視た場合(図1の視点)の奥行方向における位置関係を表している。基準部材300は、シート搬送方向Dxに延びる基準面301を有し、幅方向Dyに関してシート搬送路のいずれか一方に配置される。基準面301は、シート搬送方向に沿って延び、シートの側端に当接可能な当接面に相当する。
奥側斜送ユニット31は、幅方向Dyに関して搬送中心L0の一方側つまり基準部材300の反対側に配置され、前側斜送ユニット32は搬送中心L0の他方側つまり基準部材300と同じ側に配置されている。前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31は、それぞれ少なくとも1つの斜送ローラ311,321,322,323を有し、本実施例では奥側斜送ユニット31に1つ、前側斜送ユニット32に3つ配置されている。
奥側及び前側の斜送ローラ311,321〜323は、いずれも幅方向Dyに対して傾斜した軸線を中心に回転する。即ち、第1ローラに相当する奥側の斜送ローラ311は、シートSに対する接触部における接線方向が、シート搬送方向Dxに対してθ1の角度で傾斜した方向となるように配置されている。また、各々が第2ローラに相当する前側の斜送ローラ321〜323は、シートSに対する接触部における接線方向が、シート搬送方向Dxに対してθ2の角度で傾斜した方向となるように、互いに平行に配置されている。従って、各斜送ローラ311,321〜323は、シートSに当接して回転することにより、シート搬送方向Dxの下流に向かう程、幅方向Dyにおいて基準部材300の基準面301に近付くように傾斜した方向の搬送力をシートSに付与する。
奥側斜送ユニット31は、シート搬送方向に対して傾斜した第1方向の搬送力をシートに付与してシートを当接面に接近させる第1斜送手段に相当する。前側斜送ユニット32は、幅方向に関して第1斜送手段より当接面に近い位置に配置され、シート搬送方向に対して傾斜した第2方向の搬送力をシートに付与してシートを当接面に当接させる第2斜送手段に相当する。また、プレレジ搬送部20の各搬送ローラ対21及びレジローラ7は、いずれもシートをシート搬送方向に搬送可能なシート搬送手段の一例である。この内、搬送ローラ対21は、第1斜送手段及び第2斜送手段にシートを受け渡す第1搬送手段に相当し、レジローラ7は第1斜送手段及び第2斜送手段によって斜送されたシートを受け取って搬送する第2搬送手段に相当する。
ここで、奥側の斜送ローラ311の傾斜角度θ1は、前側の斜送ローラ321〜323の傾斜角度θ2より大きく設定されている(θ1>θ2)。即ち、第1斜送手段がシートに付与する力のシート搬送方向に対する傾斜角度(第1の角度)が、第2斜送手段がシートに付与する力のシート搬送方向に対する傾斜角度(第2の角度)に比べて大きくなるように構成されている。なお、このような構成を備えた構成におけるレジストレーション部50のシート搬送動作及びシートの挙動については、後に詳しく説明する。
斜行補正部30には、それぞれシートSを検知可能な検知手段として、斜送センサS2及びレジ前センサS3が配置されている。斜送センサS2は、シート搬送方向Dxに関して、斜送ユニット31,32によって斜送されるシートSが基準部材300に当接することが予定される位置の付近に配置される。レジ前センサS3は、シート搬送方向Dxに関して斜送センサS2より下流かつレジローラ7より上流に配置される。斜送センサS2及びレジ前センサS3は、プレレジセンサS1と同様、反射型光電センサ等の既知のセンサを用いることができる。
レジローラ7は、シートSを挟持した状態で幅方向Dyにスライド可能であり、側端が基準部材300の基準面301に当接していたシートSを二次転写部において転写される画像の位置に合わせて幅方向Dyに移動させる。なお、基準部材300及び前側斜送ユニット32も幅方向Dyに移動可能であり、搬送されるシートSの幅に合わせて予め位置決めされる。また、シートとシートに形成する画像との位置調整を行う方法はこれに限らず、例えば基準部材300及びレジローラ7の幅方向位置を固定し、画像形成部PY〜PKが形成するトナー像の主走査方向位置を調整する構成としてもよい。
(プレレジ搬送部)
プレレジ搬送部20の構成について、図3及び図4を用いて詳しく説明する。図3(a)、(b)はプレレジ搬送部20の断面構成を示す概略図であり、図4は搬送ローラ対21の駆動構成を示す斜視図である。
図3(a)、(b)に示すように、プレレジ搬送部20の各搬送ローラ対21は、駆動力が入力される駆動ローラ23と、駆動ローラ23に従動回転する従動ローラ24とで構成される。少なくとも一部の搬送ローラ対21は、ニップ部にシートSを挟持可能な加圧状態(図3(a))と、ニップ部が開放された離間状態(図3(b))とに切換可能である。なお、全ての搬送ローラ対21を加圧状態と離間状態とに切換可能とするかどうかは、画像形成装置がサポートするシートSの最大サイズに応じて決定すればよい。
プレレジ搬送部20には、搬送ローラ対21の加圧状態と離間状態とを切換可能な切換手段として、偏芯コロ103を有するカム機構100が設けられている。偏芯コロ103は、駆動源としてのプレレジ加圧モータMrによってギヤ105,106を介して回転駆動され、外周部のカム面に当接するアーム部材101を揺動させる。アーム部材101は、揺動軸102を中心にステー部材18に対して揺動可能に支持され、揺動軸102の一方側で偏芯コロ103に当接し、他方側で従動ローラ24の回転軸である従動軸26を支持している。アーム部材101の揺動により、従動ローラ24はガイド部材201,202によって形成されるシート搬送路に出没する。従って、ステッピングモータであるプレレジ加圧モータMrを介して偏芯コロ103の回転角を制御することにより、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間する離間状態と従動ローラ24が駆動ローラ23に圧接する加圧状態とを切換可能な構成である。
図4に示すように、各駆動ローラ23は、駆動ローラ軸25にゴムローラ23aが取付けられて構成され、ベルト伝動機構152を介して駆動源であるプレレジ駆動モータMpに接続されている。各プレレジ駆動モータMpはステッピングモータであり、駆動の開始及び停止のタイミング及び駆動ローラ23の駆動速度(ゴムローラ23aの周速)を変更可能である。
(斜行補正部)
続いて、斜行補正部30の構成について、図5〜図7を用いて詳しく説明する。図5(a)は斜行補正部30を上方から視た概略図であり、図5(b)は基準部材300をシート搬送方向Dxから視た断面構成を示す模式図である。図6(a)は斜送ユニットの加圧構成を示す斜視図であり、図6(b)はその側面図である。図7(a)、(b)は、斜送ユニットの加圧状態及び解除状態を表す模式図である。
図5(a)に示すように、前側及び奥側の斜送ローラ311,321〜323は、ユニバーサルジョイント31c,32cを用いて、上記の角度θ1,θ2に合わせて傾斜した状態で回転軸線を固定されている。各斜送ローラ311,321〜323は、ユニバーサルジョイント31c,32c、ベルト31a,32a及びプーリ31b,32bを含む伝動機構を介して駆動源である斜送駆動モータMs1,Ms2に連結されている。斜送駆動モータMs1,Ms2はステッピングモータであり、駆動速度や駆動開始・停止のタイミングを制御可能である。
図5(b)に示すように、基準部材300は、シートSの側端が突き当たる基準面301、シートSの上面に対向する上ガイド面302、及びシートSの下面に対向する下ガイド面303からなる凹形状の断面を有する。基準部材300は、アルミのダイキャストで構成され、基準面301を切削加工により高精度化し、さらに基準面301にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)無電解ニッケル加工処理を施したものを好適に用いることができる。こうすることで、平面性が高く、かつすべり性の高い(シートSに対する摩擦抵抗の小さい)基準面301が得られ、シートSの斜行補正の精度向上を図ることができる。
図6及び図7に示すように、斜行補正部30には、斜送ローラ320とこれに対向する従動ローラ330とのニップ部(挟持部)にシートSを挟持して搬送可能な加圧状態と、加圧状態が解除される解除状態とを切換可能な加圧機構33が配置される。なお、解除状態とは、ニップ部が開放されている状態に限らず、加圧状態に比べて弱い力でローラ同士が接触している場合を含むものとする。また、斜送ユニットの加圧状態とは少なくとも1つの斜送ローラが加圧状態であることを指し、斜送ユニットの解除状態とは全ての斜送ローラが解除状態であることを指すものとする。
なお、本実施例の斜行補正部30には、図6及び図7に示す斜送ローラ320が斜送ローラ311,321〜323のいずれかに置換えられた状態で、複数組の従動ローラ330及び加圧機構33が配置されている。言い換えると、加圧状態と解除状態を切換可能な切換手段としての加圧機構33は、前側の斜送ローラ321〜323に対応するもの(第1切換手段)と、奥側の斜送ローラ311に対応するもの(第2切換手段)とがそれぞれ設けられている。また、前側斜送ユニット32又は奥側斜送ユニット31の斜送ローラが追加される場合には、追加される斜送ローラの各々に加圧機構33が配置される。
図6(a)、(b)に示すように、加圧機構33はアーム部材332、リンク部材333、加圧ギヤ334、加圧バネ335、及び斜送加圧モータMkを含む。従動ローラ330は、アーム部材332によって従動軸331を中心に回転可能に支持され、アーム部材332の揺動によって斜送ローラ320に対して接近又は離間する方向に移動可能である。本実施例における従動ローラ330は、幅方向に延びる軸線を中心にシート搬送方向に沿って回転するが、対応する斜送ローラと平行な軸線上に配置する構成としてもよい。アーム部材332は、加圧バネ335及びリンク部材333を介して加圧ギヤ334に連結される。加圧ギヤ334は、駆動源である斜送加圧モータMkの出力軸に連結されている。
図7(a)に示すように、加圧状態においては、加圧ギヤ334が図中反時計回り方向に回動し、加圧バネ335に引っ張られたアーム部材332が揺動軸332aを中心に反時計回り方向に揺動する。これにより、従動ローラ330が斜送ローラ320に圧接した状態となる。一方、図7(b)に示すように、解除状態においては、加圧ギヤ334が図中時計回り方向に回動してリンク部材333を押圧し、リンク部材333がアーム部材332を時計回り方向に揺動させる。これにより、従動ローラ330が斜送ローラ320から離間するか、少なくとも斜送ローラ320に対する当接圧が加圧状態に比べて小さい状態となる。
斜送加圧モータMkはステッピングモータであり、加圧ギヤ334の回転角を制御することにより、加圧状態における加圧バネ335の伸び量を変更可能である。即ち、本実施例に係る加圧機構33は、加圧状態・解除状態の切換と、加圧状態における加圧力の変更とを行うことができる。
レジストレーション部50の制御構成について説明する。図8のブロック図に示すように、レジストレーション部50の動作は、画像形成装置に搭載されるコントローラ600によって制御されている。制御手段の一例であるコントローラ600は、中央処理装置(CPU)601と、記憶手段である書換え可能メモリ(RAM)602及び読取り専用メモリ(ROM)603と、外部機器又はネットワークに対するインターフェース(I/O)604を備える。
CPU601は、ユーザインタフェースである操作部412を介して入力された情報や、上述のプレレジセンサS1、斜送センサS2、及びレジ前センサS3からAD変換部605を介して入力される検知信号に基づいて制御を行う。CPU601は、ROM603等に格納されたプログラムを読出して実行し、ドライバ606,607,608,609,610を介してレジストレーション部50のアクチュエータであるモータ群(Ms,Mp,Mr,Mk)を駆動制御する。これにより、下記の制御方法の各工程を実行可能に構成されている。なお、斜送加圧モータMkは、いずれも前側及び奥側の斜送ローラに対応する数(n)で配置され、CPU601は各斜送ローラに対する従動ローラの加圧の有無及び加圧力の大きさを独立に制御可能である。
(レジストレーション部の制御方法)
以下、レジストレーション部50におけるシート搬送動作の制御方法と、シート搬送動作におけるシートの挙動について、図10〜図13を適宜参照しながら図9のフローチャートに沿って説明する。なお、図11〜図13において破線で示されたローラは解除状態であることを表し、実線で示されたローラは加圧状態であることを表す。また、以下のフローチャートの実行中、各斜送ローラは継続的に回転駆動されているものとする。
操作部412を介して画像形成の対象であるシートの坪量、サイズ、枚数等の情報が入力された状態で画像形成ジョブが開始(S101)されると、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の斜送圧が決定される(S102)。ただし、斜送圧とは、各斜送ローラに対する従動ローラ330の加圧力であり、ROM603等に予め格納されたテーブルに基づいて、各斜送ローラ311,321〜323について決定される。斜送圧の大きさは、図10に示すように、シートの種類に関わらす安定して搬送可能となるように、シートの坪量に応じて設定されている(突き当て時の加圧力の欄参照)。そして、決定された斜送圧に基づいて、まず奥側の斜送ローラ311の加圧が開始されて加圧状態となる(S103)。
その後、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作が開始(S104)されると、画像形成動作の開始タイミングを基準に、給送開始のディレイ時間がカウント(S105)された後、給送カセット51からシートが給送される(S106)。そして、プレレジ搬送部20に受け渡されたシートがプレレジセンサS1によって検知(S107)されると、停止ディレイ時間がカウント(S108)された後に、プレレジ駆動モータMpが停止される(S109)。なお、給送開始から所定時間経過してもプレレジセンサS1がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S126)、ジョブの実行が終了する。
この後、画像形成動作の進捗に合わせてリスタートのディレイ時間がカウント(S110)され、プレレジ駆動モータMpの駆動が再開される(S111)。プレレジ駆動モータMpの駆動再開タイミングが画像形成動作に合わせて調節されることから、シートがプレレジセンサS1に到達するまでの時間のばらつきが吸収される。その後、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21の加圧を解除するディレイ時間がカウント(S112)され、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間して搬送ローラ対21が離間状態となる(S113)。これにより、シートを基準部材300に突き当てて斜行を補正する突き当て整合動作が開始される。本実施例における突き当て整合動作は、搬送ローラ対21の加圧解除から、斜送ユニット31,32がいずれも解除状態となるまでの期間(S113〜S122)である。
搬送ローラ対21の加圧が解除されると、図11(a)に示すように、シートは奥側斜送ユニット31から受ける搬送力によって、基準部材300に近付くようにシート搬送方向に対して斜めに移動を開始する。即ち、シートSは、シート搬送方向Dxに対して比較的大きく傾斜した奥側の斜送ローラ311の接線方向に沿って搬送され、基準部材300の基準面301に向かって素早く幅寄せされる。
その後、シートの側端と基準部材300の基準面301がある程度近づいたタイミングで、決定済みの斜送圧に基づいて前側の斜送ローラ321〜323の加圧が開始される(S114)。つまり、奥側斜送ユニット31によるシートの斜送動作が開始された後、加圧機構33によって前側斜送ユニット32の加圧が開始されることで前側斜送ユニット32による斜送動作が開始される。すると、図11(b)に示すように、斜送ローラ321〜323に挟持されたシートSは基準部材300にさらに近づき、基準面301に側端が当接する。即ち、シートSは、シート搬送方向Dxに対して比較的小さく傾斜した前側の斜送ローラ321〜323の接線方向に沿って搬送され、幅方向Dyの移動速度が減速された状態で基準面301に当接する。これにより、シートSの側端が基準面301に衝突する際にシートSが受ける力が緩和され、シートSの座屈が防がれる。
なお、実際のシートの移動方向は、シートの慣性やシートに対する搬送抵抗等の影響により斜送ローラのスリップが生じることから、斜送ローラの接線方向とは必ずしも一致しない。しかしながら、奥側斜送ユニット31がシートに付与する搬送力の方向のシート搬送方向に対する傾斜角度を、前側斜送ユニット32に比べて大きく設定することにより、シートSの座屈を防ぎつつシートSの幅寄せを素早く行うことができる点は変わらない。
また、斜送ローラの加圧の有無を切換えることで斜送ユニット間でシートを受け渡す構成に代えて、斜送ユニット同士の位置関係によってシートの受渡しを行う構成としてもよい。例えば、シート搬送方向において奥側斜送ユニットを前側斜送ユニットより上流に配置した場合も、奥側斜送ユニットによってシートを素早く基準部材に幅寄せしつつ、前側斜送ユニットによって基準部材に対する衝突を緩和することができる。ただし、本実施例のように前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の斜送ローラが配置される範囲が、幅方向から視て少なくとも部分的に重なるように配置することで、斜行補正部をコンパクトに構成することができる。
図9のフローチャートに戻って説明を続ける。前側の斜送ローラ321〜323の加圧開始後、斜送センサS2がシートの前端、つまりシート搬送方向の下流端を検知すると(S115)、斜送ローラ321〜323の加圧力を変更するためのディレイ時間がカウントされる(S116)。このディレイ時間の長さは、シートの側端が基準部材300の基準面301に当接した後に、加圧力の変更が実行されるように設定されている。本実施例では、ディレイ時間の経過後に、前側の斜送ローラ321〜323の加圧力を低減させる処理(S117)が実行される。また、減圧後の各斜送ローラの加圧力は、ROM等に格納されたテーブル(図10の加速時の加圧力の欄参照)を参照することで決定される。そして、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の搬送速度を増加させる処理(S118)が行われる。
加速の完了後、かつレジ前センサS3によるシートの前端の検知前となるように設定されたタイミングで、奥側の斜送ローラ311が加圧を解除されて解除状態となる(S119)。上述したように、奥側の斜送ローラ311は前側の斜送ローラ321〜323に比べてシート搬送方向Dxに対する傾斜角度が大きく、幅方向Dyに関して基準部材300に近づけようとする力が相対的に大きくなる(V1y>V2y)。このため、図12(a)に示すように、奥側斜送ユニット31及び前側斜送ユニット32が加圧状態である期間中に、幅方向Dyにおけるユニット間領域でシートの撓み(ループ)が形成される可能性がある。ループが形成されたままでシートの前端がレジローラ7のニップ部に突入すると、ループが押し潰されてしわが発生したり、ループの解消に伴ってシートの姿勢が乱れてシートが斜行したりする可能性がある。本実施例では、図12(a)に示すように、レジローラ7にシートが突入する前に奥側斜送ユニット31が解除状態に切換わるため、このような不都合の発生が回避される。
レジ前センサS3がシートの前端を検知すると(S120)、前側の斜送ローラ321〜323を解除するためのディレイ時間がカウント(S121)され、斜送ローラ321〜323の加圧が解除されて解除状態となる(S122)。このディレイ時間は、シートの前端がレジローラ7のニップ部に突入した後に前側の斜送ローラ321〜323が解除状態となるように設定される。言い換えると、前側斜送ユニット32は、シート前端が第2検知手段であるレジ前センサS3の検知位置(第2検知位置)を通過した後に加圧を解除される。一方、奥側斜送ユニット31は、シート前端が第1検知手段である斜送センサS2の検知位置(第1検知位置)を通過した後であって第2検知位置を通過する前に加圧を解除されるように構成される。なお、所定時間内にレジ前センサS3がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S126)、ジョブの実行が終了する。
レジローラ7にシートが受け渡されると、図13に示すように、レジローラ7がシートを搬送しながら幅方向に移動する。これにより、幅方向Dyにおけるシートの中心位置が、画像形成部PY〜PKによって形成される画像の中心位置に合わせて位置決めされる(S123)。シートが二次転写部に送られると、画像形成すべきシートの残り枚数Kを管理するカウンタにより、Kの値がデクリメントされる(S124)。残り枚数Kが0でない場合、つまり画像形成すべきシートが残っている場合(S125:NO)、以上の動作(S103〜S124)が繰返される。このとき、プレレジ搬送部20では先行するシートの後端が通過した搬送ローラ対21が順に加圧されることで、シートが連続的に搬送され、二次転写部へと供給される。残り枚数Kが0である場合(S125:YES)、画像形成動作が完了したと判断されてジョブの実行が終了する。
このように、本実施例では、シート搬送方向Dxに対する傾斜角度が相対的に大きい斜送ローラ311を有する奥側斜送ユニット31と、傾斜角度が相対的に小さい斜送ローラ321〜323を有する前側斜送ユニット32とを併用している。言い換えると、シートを基準部材の当接面に接近させる第1方向の力を付与する第1斜送手段と、第1方向に比べてシート搬送方向に対する角度が小さい第2方向の力を付与する第2斜送手段とが設けられている。第1斜送手段によってシートが当接面に短い距離で幅寄せされることから、シート搬送装置の大型化及び複雑化を抑制することができる。また、第2斜送手段によってシートが減速されるため、シートの座屈を防ぐことができる。
なお、奥側の斜送ローラの傾斜角度θ1を大きくすると、より短い搬送距離でシートの幅寄せを行うことが可能となる一方で、前側の斜送ローラの傾斜角度θ2との差が大きくなり、前側と奥側の斜送ローラ間にシートのループが生じ易くなる。また、傾斜角度θ1が大きい程、プレレジ搬送部によるシート搬送方向との差が大きくなり、受渡し時にシートが擦れてシートにダメージが生じる可能性がある。このような理由により、傾斜角度θ1は、20度以上40度以下の範囲が好ましく、25度以上35度以下とするとより好ましい。また、前側の斜送ローラの傾斜角度θ2は、奥側の斜送ローラによって幅寄せされるシートを幅方向に関して十分減速できる程度に小さいことが好ましい。このような理由により、例えば傾斜角度θ2をθ1の2分の1以下と設定すると好ましく、一例として、θ1=30°,θ2=10°とすると好適である。
(搬送速度の設定)
ここで、斜行補正部30におけるシートの搬送速度の設定について詳述する。図14を参照して、以下、各斜送ローラ311,321〜323について、シートSとの接触部における周速を、シートの実際の搬送速度と区別して斜送ローラの斜送速度V1,V2とする。また、斜送速度V1,V2のシート搬送方向Dxの成分をV1x,V2xとし、幅方向Dyの成分をV1y,V2yとする。なお、本実施例では、前側斜送ユニット32の各斜送ローラ321〜323について、斜送速度V2の大きさ及び方向が等しく設定されている。
本実施例において、前側及び奥側の斜送ローラ311,321〜323の斜送速度V1,V2は、シート搬送方向Dxの成分が等しくなるように設定される(V1x≒V2x、図14(a)参照)。仮に、前側及び奥側の斜送ユニット間でシート搬送方向Dxの速度が均衡していない場合(V1x>V2x又はV1x<V2x、図14(b)、(c)参照)、シートSを旋回させようとする力が発生する。即ち、シート搬送方向Dxの速度が大きい方の斜送ユニットに近いシートSの側端が、他方の側端に比べてシート搬送方向Dxの下流に進むような力がシートSに作用する。そこで、本実施例では、少なくとも前側及び奥側の両方の斜送ローラが加圧状態である間(S114〜S119)、シート搬送方向Dxの成分が略一致するように斜送速度V1,V2が設定されている。これにより、斜送ローラのシート搬送方向Dxの速度差に起因するシートSの旋回を防止し、シートSの斜行補正を高い精度で行うことが可能となる。
ところで、奥側の斜送ローラ311がシートに付与する力の方向は前側の斜送ローラ321〜323に比べてシート搬送方向Dxに対して大きく傾いている。このため、奥側の斜送ローラ311による斜送速度V1のシート搬送方向の成分V1xを前側の斜送ローラ321〜323に等しく設定した場合、幅方向の成分V1yは前側の斜送ローラ321〜323に比べて大きくなる。(V1x≒V2xのとき、V1y>V2y)。このことは、搬送ローラ対21の加圧が解除(S113)されてから前側斜送ユニット32の加圧が開始(S114)されるまでの間に、奥側斜送ユニット31がシートSを素早く基準部材300に幅寄せする上でも好都合である(図11(a)参照)。一方、前側の斜送ローラ321〜323が加圧されると、奥側の斜送ローラ311に比べて幅方向の速度成分が小さい前側の斜送ローラ321〜323によって幅方向の移動速度が抑制されることになる。このことは、シートSと基準部材300の基準面301との衝突を緩和する上で好都合である。
(斜行補正後の旋回抑制)
次に、斜送ローラの加速処理(S118)及び加速処理に先立つ前側斜送ユニット32の減圧処理(S117)について詳しく説明する。一般に、シートの搬送速度が大きい程画像形成装置の生産性が高まるが、一方で、搬送速度が大きい程シートが基準部材に当接する際の衝撃が大きくなり、シートの座屈が生じる懸念が大きくなる。本実施例では、シートが基準部材300に当接するまでは比較的遅い速度で前側斜送ユニット32の斜送ローラ321〜323を回転駆動し、当接後に斜送ローラ321〜323の駆動速度を増加させている。
言い換えると、第2斜送手段によってシートを当接面に当接させる動作(第1動作)の後に、シートの搬送速度を増加させる動作(第2動作)が実行される。第1動作における第1斜送手段、第2斜送手段の駆動速度を第1の速度、第2の速度とした場合、第2動作において第1斜送手段、第2斜送手段が第1の速度より大きい第3の速度、第2の速度より大きい第4の速度で駆動される。これにより、当接時にシートに加わる衝撃を低減すると共に、生産性を確保することができる。また、第1斜送手段及び第2斜送手段の斜送速度が共に加速されることから、いずれか一方のみを加速する場合に比べてシートの旋回が生じにくい。なお、加速後の斜送速度V1,V2についても、シート搬送方向の成分が等しくなるように(V1x≒V2x)設定することが好ましい。
しかしながら、加速処理を行う場合、基準部材に当接することで斜行を補正されたシートの姿勢が再度乱されないように注意する必要がある。斜送ローラの加速によって質量mのシートが加速度aで加速する場合、シートには加速前の状態に比べてF=m×aの力(以下、加速力Fとする)が作用していることになる。このとき、加速力Fに起因してシートを旋回させようとするモーメントM(M=F×X、X:加速力Fによって生じるモーメントの腕の長さ)が生じ、シートの姿勢が乱される場合がある。
この現象によるシートの挙動は、加速力Fの作用点及び加速力Fの方向と、モーメントの中心との関係によって定まる。加速力Fの作用点とは、各斜送ローラ311,321〜323とシートの接触位置である。加速力Fの方向とは、シートとの接触位置における各斜送ローラの回転方向である。モーメントの中心とは、シートに対する搬送抵抗をシートの第1面及び第2面について面積分した場合にそれが釣り合う位置であり、シートの見かけ上の重心位置である。シートに対する搬送抵抗が一様であるとした場合、モーメントの中心はシートの重心位置と一致する。実際には、搬送ローラ対と搬送ガイドとの間のシートに対する摩擦係数の差やシート搬送路の湾曲等の要因により、モーメントの中心はシートの重心位置に必ずしも一致しない。実験的には、例えば、1つだけ配置した斜送ローラの角度及び位置の条件を変更しつつ、シートを加速した場合のシートの旋回方向を観測することで、モーメントの中心を推定することができる。
以下、図15の点“O”をモーメントの中心として、加速処理におけるシートの挙動を安定させるための構成について説明する。図15(a)、(b)は参考例の斜行補正部を示す模式図であり、図15(c)に示す本実施例の斜行補正部30とは斜送ローラの配置が異なる。
前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の加速によってシートSにモーメントM1,M2が作用する場合、次の3通りの状況を想定することができる。
(A)前側/奥側の斜送ローラが共に図中時計回り方向(CW)のモーメントを発生させる(図15(a))。
(B)前側/奥側の斜送ローラが共に図中半時計回り方向(CCW)のモーメントを発生させる(図15(b))。
(C)前側の斜送ローラが図中時計回り方向(CW)のモーメントを発生させ、奥側の斜送ローラが図中反時計回り方向(CCW)のモーメントを発生させる(図15(c))。
(A)の場合、図中時計回り方向のモーメントM1,M2により、加速処理に伴ってシートSは前端が基準部材300から離れる方向に旋回する挙動を示す。(B)の場合、図中反時計回り方向のモーメントM1,M2により、加速処理に伴ってシートSは後端が基準部材300から離れる方向に旋回する挙動を示す。(A)及び(B)のいずれの場合も、前側及び奥側の斜送ユニット31,32の加速に起因するモーメントが加算的に作用し、シートの旋回が生じやすくなる。
一方、(C)の場合、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の加速は逆方向のモーメントを発生させる。この場合、前側及び奥側の斜送ローラの加速に起因するモーメントが互いに打ち消し合うように働くため、シートの旋回が生じにくく、加速時のシートの姿勢を安定させることができる。本実施例では、(C)のような構成、つまりシートが基準部材300に当接してからレジローラ7に到達するまでのモーメントの中心Oに対して、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31が幅方向の一方側と他方側に位置するような配置が採用される。具体的には、前側斜送ユニット32を搬送中心L0(図2参照)の一方側に配置し、奥側斜送ユニット31を搬送中心L0の他方側に配置する。これにより、各斜送ユニット31,32によって派生するモーメントが互いに打ち消し合い、シートの挙動が安定する。
これに加えて、本実施例では加速時のシートの姿勢をさらに安定させるため、加速時に前側斜送ユニット32がシートを挟持する力を低減する処理(図9のS117、及び図10参照)を行っている。このような処理を行う1つの理由として斜送ローラの数の違いが挙げられ、他の理由としてモーメントの腕の長さの違いが挙げられる。
斜送ローラの数の違いについて、前側斜送ユニット32が3つの斜送ローラ321〜323を有する一方、奥側斜送ユニット31は1つの斜送ローラ311によって構成される。このため、全ての斜送ローラがシートに接触している状態では、加速時に前側斜送ユニット32によって発生するモーメントM2が、奥側斜送ユニット31によって発生するモーメントをM1に比べて大きくなり易い。この場合、図15(c)においてシートSが時計回り方向に旋回する可能性がある。
また、モーメントの腕の長さについて、基準部材300に当接してからレジローラ7に到達するまでのモーメントの中心Oは、本実施例の場合、搬送中心L0の付近、かつプレレジ搬送部20と斜行補正部30の境界付近(図2参照)に位置する。このような場合、モーメントの中心Oがシート搬送方向のより上流位置にある場合に比べて、前側の斜送ローラ321〜323によるモーメントの腕の長さX21,X22,X23は短く、奥側の斜送ローラ311によるモーメントの腕の長さX1は長くなる。したがって、斜送ユニット31,32の加速によって各斜送ローラがシートに付与する搬送力が大きくなった場合、前側斜送ユニット32によるモーメントM2の増加分が奥側斜送ユニット31によるモーメントM1の増加分より大きくなり易い。
このような知見から、本実施例では、加速処理を行う前に前側斜送ユニット32の加圧力を低減させている(図9のS117)。言い換えると、シートを当接面に当接させる第1動作(S114)の後にシートの搬送速度を加速させる第2動作(S118)が行われる場合において、第2動作における第2斜送手段の加圧力が第1動作に比べて低く設定されている。これにより、突き当て整合動作の後半、つまりシートが基準部材300に当接した後の状態において各斜送ユニット31,32によって生じるモーメントM1,M2が均衡し(M1≒M2)、シートの旋回が生じにくくなる。
なお、前側斜送ユニット32の加圧力を低減する方法としては、次の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)3つある斜送ローラの加圧力をそれぞれ弱くする方法
(2)3つある斜送ローラのうちの1つ又は2つの加圧を解除する方法
(3)3つある斜送ローラのうちの1つ又は2つの加圧を解除し、残りの斜送ローラの加圧力をそれぞれ弱くする方法
本実施例では、図10の“加速時の加圧力”の欄に示すように、シートの種類に応じて(1)〜(3)の方法のいずれかを実行する。これにより、シートの種類に関わらず、シートの旋回を防いで安定して搬送可能なニップ圧に設定される。
次に、実施例2に係るシート搬送装置について図16を用いて説明する。本実施例におけるシート搬送装置のレジストレーション部は、シート搬送動作において奥側斜送ユニットの加圧を開始するタイミングが上記実施例1と異なっている。その他の構成は実施例1と同様であるため、共通する要素には実施例1と同符号を付して説明を省略する。以下、本実施例におけるシート搬送動作の制御方法について、図16のフローチャートに沿って説明する。
操作部412を介して画像形成の対象であるシートの坪量、サイズ、枚数等の情報が入力された状態で画像形成ジョブが開始(S201)されると、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の斜送圧が決定される(S202)。実施例1と異なり、奥側斜送ユニット31の加圧はこの段階では開始されない。
その後、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作が開始(S203)されると、画像形成動作の開始タイミングを基準に、給送開始のディレイ時間がカウント(S204)された後、給送カセット51からシートが給送される(S205)。そして、プレレジ搬送部20に受け渡されたシートがプレレジセンサS1によって検知(S206)されると、停止ディレイ時間がカウント(S207)された後に、プレレジ駆動モータMpが停止される(S208)。なお、給送開始から所定時間経過してもプレレジセンサS1がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S226)、ジョブの実行が終了する。
この後、画像形成動作の進捗に合わせて奥側斜送ユニット31の加圧を開始するためのディレイ時間がカウント(S209)され、奥側斜送ユニット31の斜送ローラ311が決定済みの斜送圧に基づいて加圧される(S210)。その後、停止しているプレレジ駆動モータMpの駆動が再開される(S211)。そして、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21の加圧を解除するディレイ時間がカウント(S212)され、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間して搬送ローラ対21が離間状態となる(S213)。
実施例1では、奥側斜送ユニット31が予め加圧されている状態でプレレジ搬送部20から斜行補正部30にシートが送り込まれる。一方、本実施例では、奥側斜送ユニット31の加圧開始を遅らせて、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21と奥側の斜送ローラ311とが同時に加圧状態である期間(S210〜S212)が可能な限り短くなるようにしている。これにより、斜送ローラ311とシートの摺擦によるローラ表面のゴムの劣化及びシートのダメージを低減することができる。また、本実施例においても、結果としてプレレジ駆動モータMpの駆動再開タイミングが画像形成動作に合わせて調節されることから、シートがプレレジセンサS1に到達するまでの時間のばらつきが吸収される。
なお、プレレジ駆動モータMpの駆動再開後に奥側斜送ユニット31の加圧を開始する構成としてもよい。また、プレレジ搬送部20から斜行補正部30にシートを確実に受け渡すため、奥側斜送ユニット31の加圧開始後に搬送ローラ対21が離間することが好ましい。
搬送ローラ対21の加圧が解除(S213)されると、斜行補正部30による突き当て整合動作が開始される。即ち、奥側斜送ユニット31によってシートの斜送が開始され、基準部材300の基準面301に向かってシートが幅寄せされる。その後、シートの側端と基準部材300の基準面301がある程度近づいたタイミングで、決定済みの斜送圧に基づいて前側の斜送ローラ321〜323の加圧が開始される(S214)。すると、シートは基準部材300にさらに近づき、基準面301に側端が当接することで斜行を補正される。
このように、本実施例においても、第1斜送手段としての奥側斜送ユニット31と、第2斜送手段としての前側斜送ユニット32とを併用している。これにより、基準部材300に対するシートの衝突を緩和してシートの座屈を防ぎつつ、シートの幅寄せを素早く行うことで装置の小型化・簡素化に貢献することができる。
前側の斜送ローラ321〜323の加圧開始後、斜送センサS2がシートの前端を検知すると(S215)、斜送ローラ321〜323の加圧力を変更するためのディレイ時間がカウントされる(S216)。そして、ディレイ時間の経過後に、前側の斜送ローラ321〜323の加圧力を低減させる処理(S217)が実行された後、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の搬送速度を増加させる処理(S218)が行われる。
加速の完了後、かつレジ前センサS3によるシートの前端の検知前となるように設定されたタイミングで、奥側の斜送ローラ311が加圧を解除されて解除状態となる(S219)。これにより、レジローラ7にシートが突入する前にシートのループが解消される。レジ前センサS3がシートの前端を検知すると(S220)、前側の斜送ローラ321〜323を解除するためのディレイ時間がカウント(S221)され、斜送ローラ321〜323の加圧が解除されて解除状態となる(S222)。このディレイ時間は、シートの前端がレジローラ7のニップ部に突入した後に前側の斜送ローラ321〜323が解除状態となるように設定される。なお、所定時間内にレジ前センサS3がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S226)、ジョブの実行が終了する。
レジローラ7にシートが受け渡されると、レジローラ7がシートを搬送しながら幅方向に移動し、幅方向におけるシートの中心位置が、画像形成部PY〜PKによって形成される画像の中心位置に合わせて位置決めされる(S223)。シートが二次転写部に送られると、画像形成すべきシートの残り枚数Kを管理するカウンタにより、Kの値がデクリメントされる(S224)。残り枚数Kが0でない場合、つまり画像形成すべきシートが残っている場合(S225:NO)、以上の動作(S203〜S224)が繰返される。残り枚数Kが0である場合(S225:YES)、画像形成動作が完了したと判断されてジョブの実行が終了する。
次に、実施例3に係るシート搬送装置について図17、図18を用いて説明する。本実施例におけるシート搬送装置のレジストレーション部は、厚紙等のシートを搬送する場合に、シートの搬送速度を加速する際のシートの旋回を防ぐ方法が上記実施例2と異なっている。その他の構成は実施例2と同様であるため、共通する要素には実施例2と同符号を付して説明を省略する。以下、本実施例におけるシート搬送動作の制御方法について、図18を適宜参照しながら図17のフローチャートに沿って説明する。
操作部412を介して画像形成の対象であるシートの坪量、サイズ、枚数等の情報が入力された状態で画像形成ジョブが開始(S301)されると、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の斜送圧が決定される(S302)。
その後、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作が開始(S303)されると、画像形成動作の開始タイミングを基準に、給送開始のディレイ時間がカウント(S304)された後、給送カセット51からシートが給送される(S305)。そして、プレレジ搬送部20に受け渡されたシートがプレレジセンサS1によって検知(S306)されると、停止ディレイ時間がカウント(S307)された後に、プレレジ駆動モータMpが停止される(S308)。なお、給送開始から所定時間経過してもプレレジセンサS1がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S326)、ジョブの実行が終了する。
この後、画像形成動作の進捗に合わせて奥側斜送ユニット31の加圧を開始するためのディレイ時間がカウント(S309)され、奥側斜送ユニット31の斜送ローラ311が決定済みの斜送圧に基づいて加圧される(S310)。その後、停止しているプレレジ駆動モータMpの駆動が再開される(S311)。そして、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21の加圧を解除するディレイ時間がカウント(S312)され、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間して搬送ローラ対21が離間状態となる(S313)。
搬送ローラ対21の加圧が解除(S313)されると、斜行補正部30による突き当て整合動作が開始される。即ち、奥側斜送ユニット31によってシートの斜送が開始され、基準部材300の基準面301に向かってシートが幅寄せされる。その後、シートの側端と基準部材300の基準面301がある程度近づいたタイミングで、決定済みの斜送圧に基づいて前側の斜送ローラ321〜323の加圧が開始される(S314)。すると、シートは基準部材300にさらに近づき、基準面301に側端が当接することで斜行を補正される。
このように、本実施例においても、第1斜送手段としての奥側斜送ユニット31と、第2斜送手段としての前側斜送ユニット32とを併用している。これにより、基準部材300に対するシートの衝突を緩和してシートの座屈を防ぎつつ、シートの幅寄せを素早く行うことで装置の小型化・簡素化に貢献することができる。
ここで、本実施例では、前側の斜送ローラ321〜323の加圧開始後、斜送センサS2がシートの前端を検知すると(S315)、奥側の斜送ローラ311の加圧力を変更するためのディレイ時間がカウントされる(S316)。そして、ディレイ時間の経過後に、奥側の斜送ローラ311の加圧力を低減させる処理(S317)が実行された後、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の搬送速度を増加させる処理(S318)が行われる。
上述した通り、シート搬送速度を増加させる加速処理が行われる場合、前側と奥側の斜送ローラの数の違い及びシート搬送方向に対する傾斜角度の違い(モーメントの腕の長さの違い)によりシートを旋回させようとするモーメントが発生する場合がある。実施例1では、前側斜送ユニット32がシートを挟持する力を低減させることで、加速時に前側斜送ユニット32によって生じるモーメントM1を抑制し、奥側斜送ユニットによるモーメントM2と均衡させていた。
しかしながら、例えば厚いシート等、搬送抵抗が比較的大きいシートの場合、前側の斜送ローラ321〜323の加圧力を低減すると搬送力の不足によってシートの搬送が遅滞したり搬送動作の安定性が低下したりする懸念がある。そこで、本実施例では、坪量が300gsm以上のシートを搬送する場合、前側の斜送ローラ321〜323の加圧力を低減することなく、奥側の斜送ローラ311の加圧力を増加させる(図18の最下段参照)。即ち、本実施例では、シートを当接面に当接させる第1動作(S314)の後にシートの搬送速度を加速させる第2動作(S318)が行われる場合において、第2動作における第1斜送手段の加圧力が第1動作に比べて高く設定されている。
これにより、奥側斜送ユニット31がシートを挟持する力が大きくなり、加速時に奥側斜送ユニット31によって生じるモーメントM1が増大するため、前側斜送ユニット32によって生じるモーメントM2と均衡させることができる(図15(c)参照)。従って、搬送力の不足を防止しつつ、加速時のシートの旋回を低減して安定した斜行補正を行うことが可能となる。
なお、図17に示すフローチャートはシートの坪量が300gsm以上である場合に実行されるものであり、坪量が300gsm未満のシートについては実施例2と同様の制御が行われる。つまり、坪量が300gsm未満のシートについては、加速処理の前に前側斜送ユニット32の加圧力を低減する処理(図16のS217)が行われる。これにより、比較的薄いシートについては奥側の斜送ローラ311がスリップしやすい条件となり、レジローラ7におけるしわや斜行の要因となる過大なループの発生を抑制することができる。このように、本実施例では、加速時の第1斜送手段の加圧力を高く設定するモードと、加速時の第2斜送手段の加圧力を低く設定するモードとをシートの坪量に応じて使い分けている。
図17のフローチャートに戻って説明を継続する。加速の完了後、かつレジ前センサS3によるシートの前端の検知前となるように設定されたタイミングで、奥側の斜送ローラ311が加圧を解除されて解除状態となる(S319)。これにより、レジローラ7にシートが突入する前にシートのループが解消される。レジ前センサS3がシートの前端を検知すると(S320)、前側の斜送ローラ321〜323を解除するためのディレイ時間がカウント(S321)され、斜送ローラ321〜323の加圧が解除されて解除状態となる(S322)。このディレイ時間は、シートの前端がレジローラ7のニップ部に突入した後に前側の斜送ローラ321〜323が解除状態となるように設定される。なお、所定時間内にレジ前センサS3がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S326)、ジョブの実行が終了する。
レジローラ7にシートが受け渡されると、レジローラ7がシートを搬送しながら幅方向に移動し、幅方向におけるシートの中心位置が、画像形成部PY〜PKによって形成される画像の中心位置に合わせて位置決めされる(S323)。シートが二次転写部に送られると、画像形成すべきシートの残り枚数Kを管理するカウンタにより、Kの値がデクリメントされる(S324)。残り枚数Kが0でない場合、つまり画像形成すべきシートが残っている場合(S325:NO)、以上の動作(S303〜S324)が繰返される。残り枚数Kが0である場合(S325:YES)、画像形成動作が完了したと判断されてジョブの実行が終了する。
次に、実施例4に係るシート搬送装置について図19、図20を用いて説明する。本実施例におけるシート搬送装置のレジストレーション部は、非常に薄い極薄紙を含む一部のシートを搬送する場合のシート搬送動作の制御方法が上記実施例3と異なっている。その他の構成は実施例3と同様であるため、共通する要素には実施例3と同符号を付して説明を省略する。以下、本実施例におけるシート搬送動作の制御方法について、図20を適宜参照しながら図19のフローチャートに沿って説明する。
操作部412を介して画像形成の対象であるシートの坪量、サイズ、枚数等の情報が入力された状態で画像形成ジョブが開始(S401)されると、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の斜送圧が決定される(S402)。
その後、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作が開始(S403)されると、画像形成動作の開始タイミングを基準に、給送開始のディレイ時間がカウント(S404)された後、給送カセット51からシートが給送される(S405)。そして、プレレジ搬送部20に受け渡されたシートがプレレジセンサS1によって検知(S406)されると、停止ディレイ時間がカウント(S407)された後に、プレレジ駆動モータMpが停止される(S408)。なお、給送開始から所定時間経過してもプレレジセンサS1がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S426)、ジョブの実行が終了する。
この後、画像形成動作の進捗に合わせて奥側斜送ユニット31の加圧を開始するためのディレイ時間がカウント(S409)され、奥側斜送ユニット31の斜送ローラ311が決定済みの斜送圧に基づいて加圧される(S410)。その後、停止しているプレレジ駆動モータMpの駆動が再開される(S411)。そして、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21の加圧を解除するディレイ時間がカウント(S412)され、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間して搬送ローラ対21が離間状態となる(S413)。
搬送ローラ対21の加圧が解除(S413)されると、斜行補正部30による突き当て整合動作が開始される。即ち、奥側斜送ユニット31によってシートの斜送が開始され、基準部材300の基準面301に向かってシートが幅寄せされる。その後、シートの側端と基準部材300の基準面301がある程度近づいたタイミングで、決定済みの斜送圧に基づいて前側の斜送ローラ321〜323の加圧が開始される(S414)。すると、シートは基準部材300にさらに近づき、基準面301に側端が当接することで斜行を補正される。
このように、本実施例においても、第1斜送手段としての奥側斜送ユニット31と、第2斜送手段としての前側斜送ユニット32とを併用している。これにより、基準部材300に対するシートの衝突を緩和してシートの座屈を防ぎつつ、シートの幅寄せを素早く行うことで装置の小型化・簡素化に貢献することができる。
ここで、本実施例では、前側の斜送ローラ321〜323の加圧開始後、斜送センサS2がシートの前端を検知すると(S415)、奥側斜送ユニット31の加圧を解除するためのディレイ時間がカウントされる(S416)。そして、ディレイ時間の経過後に、奥側の斜送ローラ311の加圧を解除する処理(S417)が実行された後、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の搬送速度を増加させる処理(S418)が行われる。
坪量が40gsm以上60gsm未満の極薄紙等、搬送抵抗が小さいシートの場合には、シート搬送速度を加速してもシートの旋回が生じにくい一方で、斜送ユニット31,32の斜送方向の差によってシートのループが生じる懸念がある。即ち、シート搬送方向に対する傾斜角度の大きい奥側の斜送ローラ311によってシートが基準部材300に向かって引き寄せられ、前側及び奥側の斜送ユニット31,32の間にシートのループが生じやすい。
本実施例では、シートの前端が斜送センサS2によって検知されてから、加速処理(S418)の前に奥側斜送ユニット31の加圧が解除される(S417)。このため、シートの前端がレジローラ7に到達する前にループが解消され、しわや斜行の発生を低減することができる。
一方、坪量が60gsm以上のシートは、比較的搬送抵抗が大きいため、シート搬送速度を加速させる際のシートの旋回を低減することが好ましい。図19に示すフローチャートがシートの坪量が40gsm以上60gsm未満である場合に実行されるものであり、坪量が60gsm未満のシートについては実施例3と同様の制御が行われる。つまり、坪量が60gsm以上300gsm未満のシートについては、加速前に前側斜送ユニット32の加圧力を低減する処理(図20参照)が行われる。また、坪量が300gsm以上のシートについては、加速前に奥側斜送ユニット31の加圧力を増加させる処理が行われる(図20参照)。
即ち、本実施例では、シートの坪量に応じて第1モードと第2モードとを切換え、第1の坪量を有するシートに対して第1モードのシート搬送動作を実行し、第1の坪量より小さい第2の坪量を有するシートに対して第2モードのシート搬送動作を実行する。ただし、第1モードとは、前側斜送ユニット32によるシートの斜送動作(第1動作)を開始した後も奥側斜送ユニット31を加圧状態に保持したままで加速動作(第2動作)を開始するモードである。また、第2モードとは、前側斜送ユニット32によるシートの斜送動作(第1動作)を開始した後に奥側斜送ユニット31を解除状態に切換えて加速動作(第2動作)を開始するモードである。
図19のフローチャートに戻って説明を継続する。レジ前センサS3がシートの前端を検知すると(S419)、前側の斜送ローラ321〜323を解除するためのディレイ時間がカウント(S420)され、斜送ローラ321〜323の加圧が解除されて解除状態となる(S421)。このディレイ時間は、シートの前端がレジローラ7のニップ部に突入した後に前側の斜送ローラ321〜323が解除状態となるように設定される。なお、所定時間内にレジ前センサS3がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S425)、ジョブの実行が終了する。
レジローラ7にシートが受け渡されると、レジローラ7がシートを搬送しながら幅方向に移動し、幅方向におけるシートの中心位置が、画像形成部PY〜PKによって形成される画像の中心位置に合わせて位置決めされる(S422)。シートが二次転写部に送られると、画像形成すべきシートの残り枚数Kを管理するカウンタにより、Kの値がデクリメントされる(S423)。残り枚数Kが0でない場合、つまり画像形成すべきシートが残っている場合(S424:NO)、以上の動作(S403〜S423)が繰返される。残り枚数Kが0である場合(S424:YES)、画像形成動作が完了したと判断されてジョブの実行が終了する。
次に、実施例5に係るシート搬送装置について図21〜23を用いて説明する。本実施例におけるシート搬送装置のレジストレーション部は、奥側斜送ユニットが複数の斜送ローラを有する点が上記実施例1と異なっている。その他の構成は実施例1と同様であるため、共通する要素には実施例1と同符号を付して説明を省略する。
図21に示すように、本実施例における斜行補正部30には、3つの斜送ローラ311,312,313を有する奥側斜送ユニット31が配置されている。各斜送ローラ311〜313は、シート搬送方向Dxの下流に向かう程、幅方向Dyにおいて基準部材300に近付くように傾斜した方向に沿って互いに平行に配置されている。実施例1と同様に、奥側の斜送ローラ311〜313は、シートに付与する搬送力の方向が前側の斜送ローラ321〜323に比べてシート搬送方向Dxに対する角度が大きくなるように(θ1>θ2)配置されている。
奥側斜送ユニット31の各斜送ローラ311〜313には従動ローラが対向しており、各従動ローラは図6、図7に示すものと同様の加圧機構33によって加圧状態と解除状態とを切換可能に構成されている。以下、本実施例におけるシート搬送動作の制御方法について、図23を適宜参照して図22のフローチャートに沿って説明する。
操作部412を介して画像形成の対象であるシートの坪量、サイズ、枚数等の情報が入力された状態で画像形成ジョブが開始(S501)されると、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の斜送圧が決定される(S502)。そして、決定された斜送圧に基づいて、まず奥側の斜送ローラ311〜313の加圧が開始されて加圧状態となる(S503)。斜送圧の大きさは、図23の表に示すように、シートの種類に関わらす安定して搬送可能となるように、シートの坪量に応じて設定されている。
その後、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作が開始(S504)されると、画像形成動作の開始タイミングを基準に、給送開始のディレイ時間がカウント(S505)された後、給送カセット51からシートが給送される(S506)。そして、プレレジ搬送部20に受け渡されたシートがプレレジセンサS1によって検知(S507)されると、停止ディレイ時間がカウント(S508)された後に、プレレジ駆動モータMpが停止される(S509)。なお、給送開始から所定時間経過してもプレレジセンサS1がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S525)、ジョブの実行が終了する。
この後、画像形成動作の進捗に合わせてリスタートのディレイ時間がカウント(S510)され、プレレジ駆動モータMpの駆動が再開される(S511)。プレレジ駆動モータMpの駆動再開タイミングが画像形成動作に合わせて調節されることから、シートがプレレジセンサS1に到達するまでの時間のばらつきが吸収される。その後、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21の加圧を解除するディレイ時間がカウント(S512)され、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間して搬送ローラ対21が離間状態となる(S513)。
搬送ローラ対21の加圧が解除(S513)されると、斜行補正部30による突き当て整合動作が開始される。即ち、奥側斜送ユニット31によってシートの斜送が開始され、基準部材300の基準面301に向かってシートが幅寄せされる。その後、シートの側端と基準部材300の基準面301がある程度近づいたタイミングで、決定済みの斜送圧に基づいて前側の斜送ローラ321〜323の加圧が開始される(S514)。すると、シートは基準部材300にさらに近づき、基準面301に側端が当接することで斜行を補正される。
このように、本実施例においても、第1斜送手段としての奥側斜送ユニット31と、第2斜送手段としての前側斜送ユニット32とを併用している。これにより、基準部材300に対するシートの衝突を緩和してシートの座屈を防ぎつつ、シートの幅寄せを素早く行うことで装置の小型化・簡素化に貢献することができる。
また、本実施例のように第1斜送手段が複数の斜送ローラを有する構成では、斜送ローラが1つである場合に比べてシートを幅寄せするための搬送力を確保しやすくなり、より厚いシートであっても安定してシートを基準部材に幅寄せすることができる。また、個々の斜送ローラの加圧力を小さく抑えることができるため、シートと斜送ローラの摺擦によるローラ表面のゴムの劣化及びシートのダメージを抑制することができる。
前側の斜送ローラ321〜323の加圧開始後、斜送センサS2がシートの前端を検知すると(S515)、斜送ユニット31,32の駆動速度を変更するためのディレイ時間がカウントされる(S516)。そして、ディレイ時間の経過後に、前側斜送ユニット32及び奥側斜送ユニット31の搬送速度を増加させる処理(S517)が行われる。
なお、本実施例では、前側と奥側の斜送ユニット31,32で斜送ローラの数が等しいため、加速時の斜送ローラの加圧力を変更する処理は行っていない。この構成では、加速に伴うモーメントが互いに打ち消し合って自然に均衡するためである。しかしながら、モーメントの均衡が崩れる場合(例えば、モーメントの腕の長さが前側と奥側の斜送ユニット31,32で大きく違う場合)には、加速動作における一方又は両方の斜送ユニット31,32の加圧力を調整することが可能である。
加速の完了後、かつレジ前センサS3によるシートの前端の検知前となるように設定されたタイミングで、奥側の斜送ローラ311〜313が加圧を解除されて解除状態となる(S518)。これにより、レジローラ7にシートが突入する前にシートのループが解消される。レジ前センサS3がシートの前端を検知すると(S519)、前側の斜送ローラ321〜323を解除するためのディレイ時間がカウント(S520)され、斜送ローラ321〜323の加圧が解除されて解除状態となる(S521)。このディレイ時間は、シートの前端がレジローラ7のニップ部に突入した後に前側の斜送ローラ321〜323が解除状態となるように設定される。なお、所定時間内にレジ前センサS3がシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S525)、ジョブの実行が終了する。
レジローラ7にシートが受け渡されると、レジローラ7がシートを搬送しながら幅方向に移動し、幅方向におけるシートの中心位置が、画像形成部PY〜PKによって形成される画像の中心位置に合わせて位置決めされる(S522)。シートが二次転写部に送られると、画像形成すべきシートの残り枚数Kを管理するカウンタにより、Kの値がデクリメントされる(S523)。残り枚数Kが0でない場合、つまり画像形成すべきシートが残っている場合(S524:NO)、以上の動作(S503〜S523)が繰返される。残り枚数Kが0である場合(S524:YES)、画像形成動作が完了したと判断されてジョブの実行が終了する。
(他の実施形態)
以上の実施例1〜5では、シート搬送装置の例として、画像の転写が行われる転写部の上流に配置されるレジストレーション部について説明したが、本技術はサイドレジストレーション方式を採用する他のシート搬送装置にも適用可能である。例えば、画像形成装置の装置本体に連結されシート処理装置の内部においてシートの斜行を補正しながら搬送する装置や、両面搬送部502(図1参照)においてシートの斜行を補正しながら搬送する装置として用いることができる。即ち、シート搬送装置とは、画像形成装置の装置本体に収容されるもの又は画像形成前のシート搬送に用いられるものに限らない。
また、各実施例で説明した要素は互いに組み合わせることが可能であり、例えば実施例5の斜行補正部30の構成を用いて実施例1〜4のいずれかと同様の制御を行ってもよい。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。