A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は、一実施例としての複合機を示す説明図である。この複合機100は、複合機100の全体を制御するCPU等のプロセッサ110と、記憶装置115と、画像を表示する表示部140と、ユーザによる操作を受け入れる操作部150と、読取部160と、印刷実行部170と、他の装置と通信するためのインタフェース180(例えば、ネットワークインタフェースや、USBインタフェース)と、を含んでいる。記憶装置115は、DRAM等の揮発性記憶装置120と、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置130と、を含んでいる。これらの要素は、バスを介して、互いに接続されている。
表示部140は、画像を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイである。これに代えて、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイなどの、画像を表示する他の種類の装置を採用してもよい。操作部150は、ユーザによる操作を受け取る装置であり、例えば、表示部140上に重ねて配置されたタッチパネルである。これに代えて、ボタン、レバーなどの、ユーザによって操作される他の種類の装置を採用してもよい。ユーザは、操作部150を操作することによって、種々の指示を複合機100に入力可能である。
読取部160は、色を光学的に読み取って読み取った色の色値を示す読取データを出力する装置である。本実施例では、読取部160は、読取対象物(例えば、印刷物)を光学的に読み取って、読取対象物の画像データである読取データ(スキャンデータとも呼ぶ)を生成するいわゆるスキャナである。スキャナとしては、例えば、CIS(Contact Image Sensor)などの光学センサを備える装置が、採用されてよい。スキャンデータは、マトリクス状に配置された複数の画素のそれぞれの色を、示している。本実施例では、各画素の色は、赤Rと緑Gと青Bとの色値(例えば、256段階の値)で示されている。以下、スキャンデータによって示される色値を、スキャン値とも呼ぶ。
印刷実行部170は、本実施例では、いわゆるインクジェット式のプリンタである。印刷実行部170は、印刷ヘッドを含み、印刷ヘッドには、インク滴を吐出する複数のノズルが、インク毎に設けられている(図示省略)。本実施例では、印刷実行部170は、シアンCとマゼンタMとイエロYとブラックKとの4つのインク(色材)を用いて、画像を印刷する。シアンCとマゼンタMとイエロYの3つのインクは、染料を用いたインクであり、ブラックKのインクは顔料を用いたインクである。シアンCとマゼンタMとイエロYのインクの間では、色材の成分は異なっているが(シアン、マゼンタ、イエロ)、色材の種類は同じである(染料)。3つの染料インク(シアンとマゼンタとイエロ)と、顔料のブラックインクと、の間では、色材の成分も異なり、色材の種類も異なっている。
また、本実施例では、印刷実行部170は、インクのドットとして、大(L)と中(M)と小(S)との3つサイズのドットを形成可能である。ドットのサイズは、印刷媒体上に記録される1つのドットのインク量と相関がある(以下、1つのドットのインク量を「ドットインク量」と呼ぶ)。印刷実行部170は、大、中、小のドットサイズ(すなわち、ドットインク量)が、それぞれ、予め決められた大、中、小の標準ドットサイズ(すなわち、標準ドットインク量)となることを想定して、構成されている。実際のドットインク量は、標準ドットインク量とは異なり得る。この原因としては、例えば、インクタンクと印刷ヘッドとを結ぶインクの流路(図示省略)や、印刷ヘッドを駆動する電源(図示省略)等の種々の部材の製造誤差が、挙げられる。実際のドットインク量が標準ドットインク量と異なり得るので、単位面積当たりの実際のインク使用量は、標準ドットサイズに基づく単位面積当たりのインク使用量(標準インク使用量とも呼ぶ)とは、異なり得る。後述するように、印刷実行部170に画像を印刷させる印刷処理では、種々の制御データが使用される(例えば、ハーフトーン処理用のドット階調値や、色変換用のルックアップテーブルなど)。本実施例では、インク使用量の標準からのズレの影響を抑制する制御データが、生成される(詳細は、後述)。なお、標準ドットインク量、ひいては、標準インク使用量は、印刷実行部170と同じ機種の複数の印刷実行部に共通な標準量を示している。
インタフェース180には、測色器200が接続されている。測色器200としては、例えば、いわゆる分光測色を行うセンサを備える装置が採用されてよく、また、他の測色方式のセンサ(例えば、刺激値直読式のセンサ)を備える装置が採用されてよい。
不揮発性記憶装置130は、第1プログラム131と、第2プログラム132と、ズレ量情報134と、補正値テーブル情報136と、補正値Cc、Cm、Cy、Ck(「制御値Cc、Cm、Cy、Ck」とも呼ぶ)を示す情報と、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkと、修正済の濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxと、ドット階調値テーブル情報137と、修正済のドット階調値テーブル情報137xと、マトリクスMXと、色変換情報138と、パッチ画像データPAd、PBd、PCdと、プロファイルデータ139と、を格納している。補正値Cc、Cm、Cy、Ckと濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gk、Gcx、Gmx、Gyx、Gkxとの符号中の、小文字のc、m、y、kは、それぞれ、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4つのインクに対応している。例えば、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、それぞれ、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4つのインクに対応した補正値を示している。
プログラム131、132と、ズレ量情報134と、補正値テーブル情報136と、マトリクスMXと、パッチ画像データPAd、PBd、PCdとは、予め(例えば、複合機100の出荷時に)、不揮発性記憶装置130に格納されている。他の情報は、後述する制御データの生成処理によって、生成される。なお、修正済の濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxは、後述する第2実施例の生成処理によって、生成される。第1プログラム131は、制御データを生成する処理のためのプログラムである。第2プログラム132は、印刷実行部170に画像を印刷させる印刷処理のためのプログラムである。
A2.制御データの生成処理:
図2は、制御データの生成処理の例を示すフローチャートである。プロセッサ110は、操作部150に入力されたユーザの指示に応じて、第1プログラム131を実行することによって、図2の処理を開始する。S100では、プロセッサ110は、ズレ量情報134を取得する。本実施例では、ズレ量情報134は、不揮発性記憶装置130から、取得される。ズレ量情報134は、印刷実行部170による色材の使用量の標準の使用量からのズレを示す情報である。本実施例では、ズレ量情報134は、複合機100の製造者によって、予め準備されている。なお、ズレ量情報134は、複合機100に接続された外部装置(例えば、サーバ装置)から、取得されてよい。
ズレ量情報134は、例えば、以下のように決定される。印刷実行部170に、予め決められたドット記録率のパッチ画像を、印刷させる。読取部160に、印刷されたパッチ画像を、光学的に読み取らせ、そして、読み取ったパッチ画像のスキャンデータを生成させる。スキャンデータの解析によって、パッチ画像の色値(すなわち、スキャン値)が特定される。パッチ画像の色値から予め決められた標準の色値を減算して得られる差が、算出される。そして、色値の差に対応付けられた値が、ズレ量情報134によって示されるズレ量として、使用される。なお、本実施例では、色値のゼロの差には、ゼロのズレ量が対応付けられ、色値の正の差には、正のズレ量が対応付けられ、色値の負の差には、負のズレ量が対応付けられる。
ゼロのズレ量は、パッチ画像の色値が標準の色値と同じであること、すなわち、実際のインク使用量が標準インク使用量と同じであることを、示している。正のズレ量は、パッチ画像の色値が標準の色値よりも大きいこと、すなわち、パッチ画像が明るいことを示している。明るいパッチ画像は、実際のインク使用量が標準インク使用量よりも少ないことを示している。従って、正のズレ量は、インク使用量を増大することが好ましいことを、示している。逆に、負のズレ量は、パッチ画像の色値が標準の色値よりも小さいこと、すなわち、パッチ画像が暗いことを示している。暗いパッチ画像は、実際のインク使用量が標準インク使用量よりも多いことを示している。従って、負のズレ量は、インク使用量を低減することが好ましいことを、示している。
実際のインク使用量と標準インク使用量との差(インク量差とも呼ぶ)は、インクの種類(例えば、染料と顔料)に応じて、異なり得る。本実施例では、ズレ量情報134は、染料インクのズレ量と、顔料インクのズレ量と、を示している。
ズレ量は、1つのパッチ画像を使用して、決定されてよい。また、インク量差は、色(例えば、濃度)に応じて、異なり得る。従って、互いに濃度が異なる複数のパッチ画像に基づいてズレ量を決定すれば、ズレ量は、種々の色に適した情報を示すことができる。本実施例では、以下に説明するように、複数のパッチ画像を使用して、ズレ量が決定される。
本実施例では、染料のインクのズレ量は、染料のインク(ここでは、マゼンタインク)のパッチ画像を使用して、決定される。顔料のインクのズレ量は、顔料のインク(ここでは、ブラックインク)のパッチ画像を使用して、決定される。また、ズレ量は、インク使用量とドットサイズとの組み合わせが互いに異なる6個のパッチ画像を使用して、決定される。インク使用量は、20%と30%との2つから選択される。インク使用量は、ドットの記録率によって示されており、100%の記録率は、全ての画素にドットを記録することを意味している。ドット記録率は、濃度を表すパラメータでもある。従って、インク使用量は濃度を示している、ということができる。ドットサイズは、大(L)と中(M)と小(S)との3つから選択される。
印刷されたパッチ画像のスキャンデータの解析によって、6個のパッチ画像のそれぞれの色値が、特定される。パッチ画像の色値としては、特定の色成分の色値(「処理色値」と呼ぶ)が、使用される。処理色値としては、インクの色の補色の色成分の色値が用いられる。例えば、パッチ画像がマゼンタインクを用いて印刷されている場合、緑色の色値が用いられる。パッチ画像がブラックインクを用いて印刷されている場合、任意の色の色値を採用可能である(本実施例では、青色の色値が用いられる)。なお、パッチ画像の色値(すなわち、スキャン値)は、読取部160の特性に基づいて補正されてもよい。
6個のパッチ画像のそれぞれには、予め、標準の色値が対応付けられている。6個のパッチ画像を使用して、6個の色値の差が、算出される。印刷実行部170の実際のインク使用量が標準インク使用量からずれている場合、実際のインク使用量に対する標準インク使用量の割合は、通常は、ドットサイズとドット記録率とによらず、おおよそ同じである。例えば、実際のインク使用量が標準インク使用量よりも多い場合には、6個のパッチ画像のそれぞれの色値が、標準の色値よりも、暗くなる。ただし、インク使用量の変化量に対する色値(ここでは、スキャン値)の変化量の割合は、一定ではなく、インク使用量に応じて変化する。すなわち、インク使用量と色値との対応関係は、非線形である。例えば、実際のインク使用量が標準インク使用量よりも多い場合に、色値の差は、6個のパッチ画像の間で、異なっている。
本実施例では、実際のインク使用量が標準インク使用量からずれている場合に、6個のパッチ画像のそれぞれの色値から、実際のインク使用量に対する標準インク使用量の割合に対応するおおよそ同じズレ量が得られるように、パッチ画像の色値とズレ量との対応関係が、予め実験的に決定されている。
上述のようなズレ量とパッチ画像の色値(ここでは、スキャン値)との対応関係は、実験的に決定可能である。例えば、ドット記録率が互いに少しずつ異なる複数のパッチ画像を印刷する。そして、それらのパッチ画像のスキャン値を取得する。以上により、ドット記録率とスキャン値との間の対応関係が得られる。ドット記録率は、単位面積当たりのインク使用量と同等であるので、上記対応関係から、実際のインク使用量とスキャン値との間の対応関係を特定することができる。特定された対応関係を用いることによって、スキャン値とズレ量との対応関係を決定することができる。
ゼロのズレ量に対応付けられる標準のスキャン値(すなわち、標準の色値)は、好ましい印刷結果が得られるように、任意に決定可能である。例えば、予め選択された標準の複合機100を用いて印刷されたパッチ画像のスキャン値を、標準スキャン値として採用可能である。
以上説明したパッチ画像の色値とズレ量との対応関係に従って、6個のパッチ画像から6個のズレ量が、特定される。そして、6個のパッチから特定される6個のズレ量の平均値が、ズレ量情報134によって示されるズレ量として、使用される。なお、ズレ量情報134のための1つのズレ量としては、平均値に限らず、6個のズレ量の関数で表される種々の値を採用可能である(例えば、平均値、最頻値、中央値(メディアン)、最大値、最小値等の統計量)。なお、ズレ量は、実際のインク使用量に影響を与えるパラメータ(例えば、パッチ画像の印刷時の印刷ヘッドの温度)を使用して、補正されてもよい。
図2のS100では、プロセッサ110は、ズレ量情報134によって示されるズレ量を使用して、補正値テーブル情報136を参照して、補正値を決定する。図3は、補正値テーブル情報136の例を示す概略図である。補正値テーブル情報136は、ズレ量と補正値との間の対応関係を定めている。本実施例では、補正値テーブル情報136は、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4つのインクのための4つの対応関係136c、136m、136y、136kを定めている。3つの対応関係136c、136m、136yは、マゼンタインクのパッチを用いて特定された共通の第1ズレ量Vgbから、シアン補正値Cc、マゼンタ補正値Cm、イエロ補正値Cyを、それぞれ特定する。ブラックのための対応関係136kは、ブラックインクのパッチを用いて特定された第2ズレ量Vbbから、ブラック補正値Ckを、特定する。図3の例では、1つのインクのための対応関係は、ズレ量と補正値との11組の組み合わせによって、定められている。定めの無いズレ量に関しては、補間によって、小数を含んだ値として補正値が決定される。
補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、実際のインク使用量に対する標準インク使用量の割合と相関を有する指標である。本実施例では、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、実際のインク使用量に補正値Cc、Cm、Cy、Ckを乗じることによって標準インク使用量が得られるように、決定される。ズレ量Vgb、Vbbがゼロである場合には、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、いずれも「1」である。「1」の補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、インク使用量の補正が不要であること(すなわち、補正量がゼロであること)を示している。ズレ量Vgb、Vbbがゼロよりも大きい場合には、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、いずれも1よりも大きい。1より大きい補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、標準のインク使用量が実際のインク使用量よりも多いことを、示している。ズレ量Vgb、Vbbがゼロよりも小さい場合には、補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、いずれも1よりも小さい。1より小さい補正値Cc、Cm、Cy、Ckは、標準のインク使用量が実際のインク使用量よりも少ないことを、示している。
ズレ量Vgb、Vbbと、補正値Cc、Cm、Cy、Ckとの好ましい対応関係は、種々の補正値から得られる種々の補正結果(具体的には、補正後の印刷結果)を評価する実験に基づいて、決定可能である。また、図3の実施例では、シアンとマゼンタとイエロとの間で、同じズレ量Vgbに対応付けられる補正値が同じである。ただし、少なくとも一部のズレ量Vgbに関して、少なくとも2つのインクの間で、補正値が異なっていても良い。
図2のS100では、プロセッサ110は、決定した補正値Cc、Cm、Cy、Ckを示す情報を、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。図2のS110では、プロセッサ110は、パッチ画像データPAdを用いて、ドット階調値テーブル情報137を生成するための複数のドット用パッチ画像を、印刷実行部170に印刷させる。
図4(A)は、複数のドット用パッチ画像PAの例を示す概略図である。複数のドット用パッチ画像PAは、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックのための複数のパッチ画像PAc、PAm、PAy、PAkを、含んでいる。図中には、シアンの複数のパッチ画像PAcの例が示されている。複数のパッチ画像PAcは、シアンの小ドットで構成された複数のパッチ画像PAcSと、シアンの中ドットで構成された複数のパッチ画像PAcMと、シアンの大ドットで構成された複数のパッチ画像PAcLと、を含んでいる。共通のドットサイズの複数のパッチ画像の間では、ドット記録率DTが異なっている。ドット記録率DTは、ゼロ%から100%までの範囲の全体に亘って、分布している。図示を省略するが、マゼンタ、イエロ、ブラックのための複数のパッチ画像PAm、PAy、PAkも、シアンのための複数のパッチ画像PAcと同様に、ドット記録率DTとドットサイズとの組み合わせが互いに異なる複数のパッチ画像を、含んでいる。
なお、本実施例では、パッチ画像データPAdは、上記の複数のドット用パッチ画像PAを示す印刷データである。印刷データは、印刷実行部170によって解釈可能なデータ形式の画像データである。プロセッサ110は、印刷データを印刷実行部170に供給することによって、印刷実行部170に画像を印刷させる。
図2のS120では、測色器200は、複数のドット用パッチ画像PAを読み取ることによって、複数のドット用パッチ画像PAのそれぞれの光学濃度を示す読取データを生成する。例えば、ユーザは、測色器200を操作することによって、測色器200に、複数のドット用パッチ画像PAが印刷された用紙を読み取らせる。これに代えて、測色器200は、印刷実行部170から自動的に印刷済の用紙を取得し、複数のドット用パッチ画像PAを読み取るように構成されてもよい。
プロセッサ110は、測色器200から読取データを取得する。そして、プロセッサ110は、読取データを解析することによって、インク毎に、大ドットと中ドットと小ドットとの間のドットインク量の比率を特定する。
図4(B)は、ドット記録率DTと光学濃度ODとの関係の例を示すグラフである。横軸は、ドット記録率DTを示し、縦軸は、光学濃度ODを示している。3つのグラフODL、ODM、ODSは、それぞれ、大ドット、中ドット、小ドットのグラフを示している。図示するように、ドット記録率DTが同じである場合、ドットサイズが大きいほど、光学濃度ODは、大きい。また、ドット記録率DTの増大に応じて、光学濃度ODは、増大する。ここで、グラフの傾き、すなわち、ドット記録率DTの変化量に対する光学濃度ODの変化量の割合は、ドット記録率DTの増大に応じて、徐々に小さくなる。比較的小さいドット記録率DTの範囲Rs内(具体的には、下限DT1以上、上限DT2以下の範囲Rs内)では、大ドットと中ドットと小ドットとのそれぞれの光学濃度ODは、ドット記録率DTに対しておおよそ線形に変化する。
プロセッサ110は、読取データを解析することによって、範囲Rs内のドット記録率DTに対応する複数のパッチ画像PAのそれぞれの光学濃度ODを示す色値を特定する(濃度色値と呼ぶ)。そして、プロセッサ110は、各ドットサイズの濃度比率を算出する。濃度比率は、大ドットの光学濃度ODに対する各ドットサイズの光学濃度ODの比率に相当する値である。
図4(C)は、ドット記録率DTと濃度比率Rdとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、ドット記録率DTを示し、縦軸は、濃度比率Rdを示している。3つのグラフRdL、RdM、RdSは、それぞれ、大ドット、中ドット、小ドットの濃度比率Rdを示している。算出される濃度比率Rdは、大ドットのドットインク量に対する、各ドットサイズのドットインク量の比率を示している。
大ドットの比率RdLは、ドット記録率DTによらず1である。中ドットと小ドットの比率RdM、RdSは、ドット記録率DTに応じて、変化し得る。ただし、図4(B)で説明したように、ドット記録率DTの範囲Rs内では、大ドットと中ドットと小ドットとのそれぞれの光学濃度ODは、ドット記録率DTに対しておおよそ線形に変化する。従って、中ドットと小ドットの比率RdM、RdSは、おおよそ一定である。
なお、範囲Rsとしては、予め決められた範囲が、使用される。これに代えて、プロセッサ110は、濃度色値とドット記録率DTとの対応関係を解析することにより、濃度色値がドット記録率DTの変化に対しておおよそ線形に変化する範囲Rsを、決定してもよい。
プロセッサ110は、大ドットと中ドットと小ドットとのそれぞれ比率RdL、RdM、RdSに基づいて、大ドットと中ドットと小ドットとのそれぞれのドット階調値QdL、QdM、QdSを決定する。詳細は後述するが、本実施例の印刷処理では、いわゆる誤差拡散法を用いるハーフトーン処理によって、ドットパターンが決定される。このハーフトーン処理では、1つの画素位置にドットが形成されることによって、そのドットに対応付けられたドット階調値が、その画素位置で表現されることとして、種々の階調値に応じたドットパターンが決定される。通常は、複数の画素位置にドットを形成することによって、全体として、印刷すべき階調値の色が表現される。ここで、ドット階調値が小さいほど、印刷すべき階調値を実現するために必要なドット数が多くなる。従って、ドット階調値を小さくすることによって、ドット数が増大する。この結果、単位面積当たりのインク使用量が、増大する。逆に、ドット階調値を大きくすることによって、ドット数が減少し、単位面積当たりのインク使用量が減少する。
プロセッサ110は、大ドットのドット階調値QdL(大ドット階調値QdLとも呼ぶ)を、予め決められた値に決定する。大ドット階調値QdLは、例えば、ハーフトーン処理の入力値(シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックのそれぞれの階調値)が取り得る範囲の最大値である最大階調値より若干大きい値(例えば、最大階調値の1.1倍の値)に、設定される。階調値の範囲が、0以上、1023以下の範囲である場合、大ドット階調値QdLは、例えば、1125に決定されてよい。
一般的に、最も大きいドットのドット階調値は、最大階調値以上の値に、決定される。この理由は、以下の通りである。最大のドットのドット階調値が、最大階調値よりも小さいと仮定する。最大階調値の色を印刷する場合、最大のドットのドット記録率が100%に設定されたとしても、誤差が蓄積されて、過剰なドットが形成され得る。このような不具合を抑制するために、最大のドットのドット階調値は、最大階調値以上の値に、決定される。また、後述するように、本実施例では、ドット階調値は、補正値Cc、Cm、Cy、Ckを使用して、修正される。修正済の大ドット階調値が最大階調値以上となるように、修正前の大ドット階調値QdLは、最大階調値よりも大きい値に、決定される。
プロセッサ110は、中ドットのドット階調値QdMを、大ドット階調値QdLに、中ドットの比率RdMを乗じて得られる値に、決定する(中ドット階調値QdMとも呼ぶ)。プロセッサ110は、小ドットのドット階調値QdMを、大ドット階調値QdLに、小ドットの比率RdSを乗じて得られる値に、決定する(小ドット階調値QdSとも呼ぶ)。なお、比率RdM、RdSは、範囲Rs内において、ドット記録率DTの変化に応じて、変化し得る。プロセッサ110は、範囲Rs内での比率RdM、RdSの平均値を用いて、中ドット階調値QdMと小ドット階調値QdSとを、決定する。
ドット階調値QdL、QdM、QdSは、シアンとマゼンタとイエロとブラックとのインク毎に、決定される。プロセッサ110は、各インクのドット階調値QdL、QdM、QdSを示すドット階調値テーブル情報137を、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。以下、各インクのドット階調値QdL、QdM、QdSを区別する場合には、符号の末尾に、インクを示す小文字(シアンc、マゼンタm、イエロy、ブラックkのいずれか)を付加する。例えば、大ドット階調値QdLcは、シアンの大ドット階調値を示している。
上述したように、印刷実行部170の実際のインク使用量が標準インク使用量からずれている場合、そのズレの特性は、通常は、ドットサイズとドット記録率DTとによらず、おおよそ同じである。例えば、実際のインク使用量が標準インク使用量よりも多い場合には、大ドットと中ドットと小ドットとのそれぞれのパッチ画像PAの光学濃度ODは、標準インク使用量に従ってパッチ画像PAが印刷される場合の光学濃度ODよりも、高くなる。濃度比率RdL、RdM、RdSは、2つのドットサイズの光学濃度ODの比率である。従って、濃度比率RdL、RdM、RdSに対する、実際のインク使用量と標準インク使用量との差の影響は、緩和されている。この結果、各インクのドット階調値QdL、QdM、QdS(すなわち、ドット階調値テーブル情報137)に対するインク使用量の差の影響は、緩和されている。このようなドット階調値テーブル情報137は、標準ドットインク量の印刷実行部(標準の印刷実行部とも呼ぶ)に適したドット階調値を、示している。なお、標準の印刷実行部は、仮想的な印刷実行部であってよい。すなわち、標準ドットインク量(ひいては、標準インク使用量)は、設計値であり、現実の印刷実行部のドットインク量(ひいては、インク使用量)とは異なっていてよい。これに代えて、標準の印刷実行部は、現実の印刷実行部であってよい。すなわち、標準ドットインク量(ひいては、標準インク使用量)は、現実の標準の印刷実行部のドットインク量(ひいては、インク使用量)であってよい。
図2のS130では、プロセッサ110は、ドット階調値テーブル情報137を、補正値Cc、Cm、Cy、Ckを用いて修正することによって、修正済ドット階調値テーブル情報137xを生成する。図5は、修正済ドット階調値テーブル情報137xの説明図である。図示するように、ドット階調値テーブル情報137によって示されるドット階調値を、対応するインクの補正値で除することによって、修正済のドット階調値が決定される。例えば、シアンの中ドットの修正済のドット階調値QdMcxは、修正前のドット階調値QdMcを、シアン補正値Ccで除算して得られる値である。プロセッサ110は、修正済のドット階調値を示す修正済ドット階調値テーブル情報137xを、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。
シアンインクのドットインク量が標準ドットインク量よりも多い場合、シアンの補正値Ccは、1よりも小さくなる。従って、シアンCの修正済のドット階調値は、修正前のドット階調値よりも、大きくなる。上述したように、ドット階調値が大きい場合には、ドットの数が減少する。これにより、修正済のドット階調値を使用するハーフトーン処理は、ドットインク量が標準ドットインク量よりも多い場合に、印刷される色が標準と比べて濃くなることを、抑制する。逆に、シアンインクのドットインク量が標準ドットインク量よりも少ない場合には、シアンの補正値Ccが1よりも大きいので、シアンCの修正済のドット階調値は、修正前のドット階調値よりも小さくなる。そして、ドットの数が増大する。これにより、修正済のドット階調値を使用するハーフトーン処理は、ドットインク量が標準ドットインク量よりも少ない場合に、印刷される色が標準と比べて薄くなることを、抑制する。他のインクに関しても、同様である。
図2のS140では、プロセッサ110は、複数の階調補正用パッチ画像のパッチ画像データPBdと、修正済ドット階調値テーブル情報137xと、を使用して、複数の階調補正用パッチ画像を印刷実行部170に印刷させる。図6(A)は、複数の階調補正用パッチ画像PBの例を示す概略図である。複数の階調補正用パッチ画像PBは、シアンインクで印刷された複数のパッチ画像PBcと、マゼンタインクで印刷された複数のパッチ画像PBmと、イエロインクで印刷された複数のパッチ画像PByと、ブラックインクで印刷された複数のパッチ画像PBkと、を含んでいる。各パッチ画像PBは、均一な色の画像である。パッチ画像データPBdは、印刷に使用可能な複数のインクのそれぞれの色成分の階調値で、色を示している(本実施例では、シアンとマゼンタとイエロとブラックのそれぞれの階調値)。
共通のインクに対応する複数のパッチ画像PBの間では、対応するインクの色成分(対応色成分と呼ぶ)の階調値Viが、互いに異なっており、他の色成分の階調値は、ゼロである。例えば、シアンインクの複数のパッチ画像PBcに関しては、マゼンタ、イエロ、ブラックの3つの色成分の階調値は、ゼロである。また、複数のパッチ画像PBcの間では、シアンの階調値が、互いに異なっている。また、対応色成分の複数の階調値Viは、ゼロから最大階調値Vimまでの範囲の全体に亘って、分布している。
図6(B)は、複数の階調補正用パッチ画像PBを印刷する処理の例を示すフローチャートである。S200では、プロセッサ110は、パッチ画像データPBdを取得する。本実施例では、パッチ画像データPBdは、不揮発性記憶装置130から、取得される。
S230では、プロセッサ110は、修正済ドット階調値テーブル情報137xを参照して、パッチ画像データPBdのハーフトーン処理を実行する。図7(A)は、ハーフトーン処理の概略図であり、図7(B)は、ハーフトーン処理のフローチャートである。以下、図7(B)の手順に沿って説明する。
S500では、先ず、プロセッサ110(図1)は、誤差マトリクスMXと誤差バッファEBとを用いて、処理対象の印刷画素(注目画素とも呼ぶ)の誤差値Etを算出する。後述するように、誤差バッファEBは、各画素における濃度誤差(すなわち、階調の誤差値)を格納している。誤差マトリクスMXは、注目画素の周辺の所定の相対位置に配置された画素に、ゼロより大きい重みを割り当てている(例えば、「Jarvis, Judice & Ninke」のマトリクス)。図7(A)の誤差マトリクスMXでは、記号「+」が注目画素を表し、周辺の画素に重みa〜lが割り当てられている。重みa〜lの合計は1である。プロセッサ110は、この重みに従って、周辺の画素の誤差値の重み付き和を、注目画素の誤差値Etとして算出する。次に、プロセッサ110は、誤差値Etと注目画素の階調値(以下、入力階調値Qinとも呼ぶ。例えば、シアンの階調値)との和を、対象階調値Qaとして算出する。なお、ハーフトーン処理は、インクに対応する色成分毎に、行われる。図6(A)で説明した階調値Viは、入力階調値Qinの例である。
S510〜S540では、プロセッサ110は、対象階調値Qaと、3つの閾値ThL、ThM、ThSと、の間の大小関係に基づいて、注目画素のドットサイズを決定する。本実施例では、入力階調値Qinは、0〜1023の1024段階で表される。大ドット閾値ThLは、大ドットを出力するための閾値である。中ドット閾値ThMは、中ドットを出力するための閾値である。小ドット閾値ThSは、小ドットを出力するための閾値である。本実施例では、ThL>ThM>ThS=ゼロである。
プロセッサ110は、以下のように、ドットサイズを決定する。
A)対象階調値Qa>大ドット閾値ThL(S510:Yes):ドットサイズ=「大ドット」(S515)
B)対象階調値Qaが大ドット閾値ThL以下であり、かつ、対象階調値Qa>中ドット閾値ThM(S510:No、かつ、S520:Yes):ドットサイズ=「中ドット」(S525)
C)対象階調値Qaが中ドット閾値ThM以下であり、かつ、対象階調値Qa>小ドット閾値ThS(S520:No、かつ、S530:Yes):ドットサイズ=「小ドット」(S535)
D)対象階調値Qaが小ドット閾値ThS以下である(S530:No):ドットサイズ=「ドット無し」(S540)
S550では、プロセッサ110は、修正済ドット階調値テーブル情報137xを参照し、決定されたドットサイズに対応付けられた階調値(ドット階調値Qdと呼ぶ)を取得する。なお、ドットサイズ=「ドット無し」の場合には、ドット階調値はゼロである。
S570では、プロセッサ110は、注目誤差値Eaを算出する。注目誤差値Eaは、以下の式で表される。
注目誤差値Ea=対象階調値Qa−ドット階調値Qd
プロセッサ110は、算出した注目誤差値Eaを、注目画素の誤差値として、誤差バッファEBに登録する。なお、このように登録した注目誤差値Eaを、S500の処理において、別の注目画素に対応する周辺の画素の誤差値として使用する。
以上のように、プロセッサ110は、インク毎に、各印刷画素のドットサイズを決定する。
図6(B)のS240では、ハーフトーン処理の結果(具体的には、図7(B)のS515、S525、S535、S540にて決定された各画素のドットサイズ)を用いて、印刷データを生成する。印刷データは、ハーフトーン処理の結果を示す、印刷実行部170によって解釈可能な形式のデータである。
S250では、プロセッサ110は、生成した印刷データを印刷実行部170に出力する。S260では、印刷実行部170は、受信した印刷データを使用して、複数の階調補正用パッチ画像PBを印刷する。以上により、図6(B)の処理、すなわち、図2のS140の処理が、終了する。
図2のS150では、測色器200は、複数の階調補正用パッチ画像PBを読み取ることによって、複数の階調補正用パッチ画像PBのそれぞれの光学濃度を示す読取データを生成する。測色器200による階調補正用パッチ画像PBの読み取りは、図2のS120におけるドット用パッチ画像PAの読み取りと同様に、行われる。プロセッサ110は、測色器200から読取データを取得し、読取データを解析することによって、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成する。
図8(A)は、階調値Viと光学濃度ODとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、階調値Viを示し、縦軸は、光学濃度ODを示している。図中のトーンカーブTxは、共通のインクに対応する複数の階調補正用パッチ画像PBの階調値Viと光学濃度ODとの対応関係の例を示している。図示するように、階調値Viがゼロから最大階調値Vimまで増大する場合に、光学濃度ODはゼロから最大濃度ODmまで増大する。ただし、階調値Viと光学濃度ODとの対応関係は、非線形である。図8(A)の例では、トーンカーブTxは、上に凸な曲線を示している。濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkは、階調値Viと光学濃度ODとの対応関係が線形な対応関係に近づくように、階調値Viを補正するための情報である。
図8(B)は、階調値Viと光学濃度ODとの線形な対応関係を示すグラフである。横軸は、階調値Viを示し、縦軸は、光学濃度ODを示している。図中の対応関係Txlは、線形な対応関係を示している。光学濃度ODは、階調値Viに比例している。階調値Viがゼロから最大階調値Vimまで増大する場合に、光学濃度ODはゼロから最大濃度ODmまで、増大する。図中の第1濃度OD1は、図8(A)に示す実際のトーンカーブTxによって第1階調値Vi1に対応付けられる光学濃度ODである。参考階調値Vi1xは、線形な対応関係Txlによって第1濃度OD1に対応付けられる階調値Viである。図示するように、参考階調値Vi1xは、第1階調値Vi1とは、異なっている。
図8(C)は、修正前の階調値Vi(入力階調値Viとも呼ぶ)と、修正後の階調値Vo(出力階調値Voとも呼ぶ)と、の対応関係の例を示すグラフである。横軸は、入力階調値Viを示し、縦軸は、出力階調値Voを示している。図中の対応関係Gxは、入力階調値Viと出力階調値Voとの対応関係を示している。図示するように、入力階調値Viが参考階調値Vi1xである場合、出力階調値Voは、第1階調値Vi1である。この対応関係Gxに従って入力階調値Viが修正される場合、参考階調値Vi1xである階調値Viは、第1階調値Vi1に修正され、そして、修正済の第1階調値Vi1に従って印刷が行われる。図8(A)に示すように、印刷される色の光学濃度ODは、第1濃度OD1である。このように、線形な対応関係Txlによって参考階調値Vi1xに対応付けられる濃度の色が、印刷される。このように階調値Viを修正することによって、階調値Viと光学濃度ODとの対応関係を、線形の対応関係Txlに近づけることができる。プロセッサ110は、他の入力階調値Viに関しても、実際のトーンカーブTxと線形な対応関係Txlとを使用して、入力階調値Viと出力階調値Voとの対応関係を決定する。
プロセッサ110は、インク毎に、複数のパッチ画像PBから得られる階調値Viと光学濃度ODとの複数の組み合わせを使用して、入力階調値Viと出力階調値Voとの対応関係Gxを決定する。プロセッサ110は、シアンCとマゼンタMとイエロYとブラックKとのそれぞれの対応関係Gxを示す濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成し、生成した濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkは、例えば、一次元のルックアップテーブルである。
上述したように、複数の階調補正用パッチ画像PBの印刷のためのハーフトーン処理では、修正済ドット階調値テーブル情報137xが使用される。従って、複数の階調補正用パッチ画像PBのそれぞれの濃度は、標準ドットインク量の印刷実行部(すなわち、標準の印刷実行部)によって印刷される場合の濃度と、おおよそ同じである。このような複数の階調補正用パッチ画像PBを使用して決定される濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkは、標準の印刷実行部に適した対応関係を、示している。
図2のS160では、プロセッサ110は、複数の色変換用パッチ画像のパッチ画像データPCdと、修正済ドット階調値テーブル情報137xと、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkと、を使用して、複数の色変換用パッチ画像を、印刷実行部170に印刷させる。
図9(A)は、複数の色変換用パッチ画像PCの例を示す概略図である。複数の色変換用パッチ画像PCは、互いに異なる色の画像であり、いずれも均一な色の画像である。パッチ画像データPCdは、RGB色空間の色値(すなわち、RGBのそれぞれの階調値)で、色を示している。複数の色変換用パッチ画像PCの複数のRGBの色値は、RGBの色空間の全体に亘って、分布している。以下、各色変換用パッチ画像PCのRGBの色値を、グリッド値とも呼ぶ。
図9(B)は、複数の色変換用パッチ画像PCを印刷する処理の例を示すフローチャートである。S300では、プロセッサ110は、パッチ画像データPCdを取得する。本実施例では、パッチ画像データPCdは、不揮発性記憶装置130から、取得される。
S310では、プロセッサ110は、パッチ画像データPCdの色変換処理を行う。この色変換処理では、RGBの色値が、CMYKの色値(すなわち、CMYKのそれぞれの階調値)に、変換される。RGBの色値とCMYKの色値との対応関係としては、予め決められた対応関係が、使用される。
S320では、プロセッサ110は、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを使用して、CMYKの色値の階調補正を行う。S330では、プロセッサ110は、階調補正済のCMYKの色値と、修正済ドット階調値テーブル情報137xと、を使用して、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理は、図7(A)、図7(B)で説明した処理と、同様に、行われる。なお、入力階調値Qinとしては、階調補正済のCMYKのそれぞれの階調値が、使用される。
S340では、プロセッサ110は、ハーフトーン処理の結果を用いて、印刷データを生成する。S350では、プロセッサ110は、生成した印刷データを印刷実行部170に出力する。S360では、印刷実行部170は、受信した印刷データを使用して、複数の色変換用パッチ画像PCを印刷する。以上により、図9(B)の処理、すなわち、図2のS160の処理が、終了する。
図2のS170では、プロセッサ110は、複数の色変換用パッチ画像PCの読取データを取得し、取得した読取データを使用して、色変換情報138を生成する。図10は、色変換情報138を生成する処理の例を示すフローチャートである。S600では、測色器200は、複数の色変換用パッチ画像PCを読み取ることによって、複数の色変換用パッチ画像PCのそれぞれの測色値を示す読取データを生成する。測色値は、例えば、機器に依存しない色空間の色値で、示される(CIELAB色空間、CIEXYZ色空間など)。測色器200による色変換用パッチ画像PCの読み取りは、図2のS120におけるドット用パッチ画像PAの読み取りと同様に、行われる。プロセッサ110は、測色器200から読取データを取得する。
S610では、プロセッサ110は、読取データを解析することによって、各色変換用パッチ画像PCのCMYKの色値と測色値との対応関係を、特定する。パッチ画像PCのCMYKの色値は、図9(B)のS310の色変換によって特定されるパッチ画像PCのCMYKの色値である。S620では、プロセッサ110は、色変換用パッチ画像PCのRGBの色値(すなわち、グリッド値)に対応する目標測色値を特定する。パッチ画像PCのRGBの色値は、パッチ画像データPCdによって示されるパッチ画像PCのRGBの色値である。RGBの色値と目標測色値との対応関係としては、予め決められた対応関係が、使用される。S630では、プロセッサ110は、各グリッド値の目標測色値に対応するCMYKの色値を、算出する(目標CMYK値と呼ぶ)。目標CMYK値は、S610で特定されたCMYKの色値と測色値との対応関係を補間することによって、算出される。S640では、プロセッサ110は、RGBのグリッド値と、目標CMYK値と、の複数の対応関係を示す色変換情報138を生成し、生成した色変換情報138を、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。色変換情報138は、例えば、三次元のルックアップテーブルである。
上述したように、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷のためのハーフトーン処理(図9(B):S330)では、修正済ドット階調値テーブル情報137xが使用される。従って、複数のパッチ画像PCのそれぞれの色は、標準ドットインク量の印刷実行部(すなわち、標準の印刷実行部)によってパッチ画像PCが印刷される場合の色と、おおよそ同じである。このような複数の色変換用パッチ画像PCを使用して決定される色変換情報138は、標準の印刷実行部に適した対応関係を、示している。
以上により、図10の処理、すなわち、図2のS170の処理が、終了する。図2のS180では、プロセッサ110は、ドット階調値テーブル情報137と、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkと、色変換情報138とを含むデータであるプロファイルデータ139を生成し、生成したプロファイルデータ139を記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。後述するように、プロファイルデータ139は、印刷実行部170に画像を印刷させる印刷処理で、使用される。
A3.印刷処理:
図11は、画像の印刷処理の例を示すフローチャートである。プロセッサ110は、操作部150に入力されたユーザの指示に応じて、第2プログラム132を実行することによって、図11の処理を開始する。
S400では、プロセッサ110は、印刷対象の画像データを取得する(「対象画像データ」とも呼ぶ)。例えば、プロセッサ110は、ユーザ、または、アプリケーションプログラムからの印刷開始指示で指定された画像データを、対象画像データとして取得する。本実施例では、対象画像データが、ビットマップデータであり、対象画像データの各画素の画素値が、0〜255の256階調のR(赤)G(緑)B(青)の階調値で表されていることとする。指定された画像データの形式がビットマップ形式とは異なる形式である場合(例えば、EMF(Enhanced Meta File)形式)、プロセッサ110は、データ形式を変換(例えば、ラスタライズ)することによって生成されるビットマップデータを、対象画像データとして用いる。また、画像データの画素密度が、印刷処理用の所定の画素密度と異なる場合、プロセッサ110は、画像データの画素密度を印刷処理用の画素密度に変換する処理を実行する。
S440では、プロセッサ110は、対象画像データの各画素の画素値を、RGBの階調値から、印刷用の色材の色成分に対応するCMYKの階調値に変換する。RGBとCMYKとの間の対応関係は、プロファイルデータ139に含まれる色変換情報138によって、予め決められている。プロセッサ110は、色変換情報138を参照して、色変換を実行する。S450では、プロセッサ110は、プロファイルデータ139に含まれる濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを使用して、CMYKの色値の階調補正を行う。
S460では、プロセッサ110は、階調補正済のCMYKの色値と、プロファイルデータ139に含まれるドット階調値テーブル情報137と、を使用して、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理は、図7(A)、図7(B)で説明した処理と、同様に、行われる。なお、入力階調値Qinとしては、階調補正済のCMYKのそれぞれの階調値が、使用される。また、ドット階調値としては、修正済ドット階調値テーブル情報137xに代えて、標準のドット階調値テーブル情報137によって示されるドット階調値が、使用される。
S470では、プロセッサ110は、ハーフトーン処理の結果を用いて、印刷データを生成する。S480では、プロセッサ110は、生成した印刷データを印刷実行部170に出力する。S490では、印刷実行部170は、受信した印刷データを使用して、画像を印刷する。これにより、対象画像データによって示される画像が、印刷される。以上により、図11の印刷処理が、終了する。
プロファイルデータ139に含まれる情報137、Gc、Gm、Gy、Gk、138は、特定の印刷実行部170を使用して、生成される。上述したように、それらの情報137、Gc、Gm、Gy、Gk、138に対する、特定の印刷実行部170に固有なインク量差(すなわち、実際のインク使用量と標準インク使用量との差)の影響は、緩和されている。本実施例では、仮に特定の印刷実行部170に固有なインク量差が大きい場合であっても、標準の印刷実行部に適したプロファイルデータ139が、生成される。従って、プロファイルデータ139は、特定の印刷実行部170を使用する印刷処理に限らず、同じ機種の他の印刷実行部170を使用する印刷処理にも、適している。このように、プロファイルデータ139は、特定の印刷実行部170を有する複合機100とは別の複合機の記憶装置に、格納されてよい。そして、別の複合機は、プロファイルデータ139を参照して、図11の印刷処理を実行してよい。このように、プロファイルデータ139は、印刷実行部170と同じ機種の複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されてよい。
以上のように、本実施例では、図2のS100で、プロセッサ110は、複数の印刷実行部に共通な標準の使用量からの印刷実行部170による色材の使用量のズレを示すズレ量情報134を取得する。S110では、プロセッサ110は、ズレ量情報134(すなわち、補正値Cc、Cm、Cy、Ck))を用いずに、複数のドット用パッチ画像PAのパッチ画像データPAdを用いて、印刷実行部170に、複数のドット用パッチ画像PAを印刷させる。S120では、プロセッサ110は、複数のドット用パッチ画像PAを光学的に読み取ることによって得られる読取データを用いて、印刷実行部170と同じ機種の複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるためのドット階調値テーブル情報137を、生成する。S130では、プロセッサ110は、ズレ量情報134(具体的には、補正値Cc、Cm、Cy、Ck)を用いてドット階調値テーブル情報137を修正することによって、特定の印刷実行部170のための修正済ドット階調値テーブル情報137xを生成する。S160では、プロセッサ110は、修正済ドット階調値テーブル情報137xを用いて、特定の印刷実行部170に複数の色変換用パッチ画像PCを印刷させる。S170では、プロセッサ110は、複数の色変換用パッチ画像PCを光学的に読み取ることによって得られる読取データを用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための色変換情報138を生成する。
このように、ズレ量情報134を用いずに生成されたドット階調値テーブル情報137が、ズレ量情報134を用いて修正されることによって、特定の印刷実行部170のための修正済ドット階調値テーブル情報137xが生成される。そして、この修正済ドット階調値テーブル情報137xを用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための色変換情報138が生成される。この結果、特定の印刷実行部170による色材の使用量が標準の使用量からずれている場合であっても、この特定の印刷実行部170を用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための色変換情報138を、適切に、生成できる。
また、図2のS120、S130で生成されるドット階調値テーブル情報137、137xは、ハーフトーン処理(ここでは、誤差拡散法に基づくハーフトーン処理)で用いられる情報である。また、図2のS170で生成される色変換情報138は、色変換処理で用いられる情報である。そして、図2のS160(具体的には、図9(B)のS330、S340)では、プロセッサ110は、修正済ドット階調値テーブル情報137xを用いてハーフトーン処理を実行することによって、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データを生成する。そして、図9(B)のS350では、プロセッサ110は、生成した印刷データを特定の印刷実行部170に出力することによって、特定の印刷実行部170に複数の色変換用パッチ画像PCを印刷させる。このように、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データが、修正済ドット階調値テーブル情報137xを用いてハーフトーン処理を実行することによって、生成されるので、適切な複数の色変換用パッチ画像PCを印刷できる。この結果、色変換情報138を、適切に、生成できる。
また、図2のS140では、プロセッサ110は、修正済ドット階調値テーブル情報137xを用いて、特定の印刷実行部170に複数の階調補正用パッチ画像PBを印刷させる。S150では、プロセッサ110は、複数の階調補正用パッチ画像PBを光学的に読み取ることによって得られる読取データを用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成する。また、図2のS160では、図9(B)のS320〜S330で説明したように、プロセッサ110は、修正済ドット階調値テーブル情報137xと、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkと、を用いて、特定の印刷実行部170に複数の色変換用パッチ画像PCを印刷させる。このように、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷に、修正済ドット階調値テーブル情報137xと、修正済ドット階調値テーブル情報137xを用いて得られる濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkと、が用いられるので、適切な複数の色変換用パッチ画像PCを印刷できる。この結果、色変換情報138を、適切に、生成できる。
また、図2のS150で生成される濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkは、階調補正処理で用いられる情報である。この濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成する処理(図2のS150)では、図6(B)のS230で説明したように、修正済ドット階調値テーブル情報137xが用いられる。従って、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを、適切に、生成できる。
B.第2実施例:
B1.制御データの生成処理:
図12は、制御データの生成処理の別の例を示すフローチャートである。図2の生成処理との差異は、S130、S140、S150、S160が、S140a、S150a、S155a、S160aに置換されている点である。図12のフローチャートの他の部分は、図2のフローチャートの対応する部分と、同じである。以下、図12のステップのうち、図2のステップと同じステップには、同じ符号を付して、説明を省略する。また、第2実施例では、第1実施例と同様に、図1の複合機100が、使用される。
第2実施例では、図2の第1実施例と同様に、プロセッサ110は、標準の印刷実行部に適したプロファイルデータ139(すなわち、情報137、Gc、Gm、Gy、Gk、138)を、生成する。第1実施例とは異なり、ドット階調値テーブル情報137が修正される代わりに、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkが、ズレ量情報134(具体的には、補正値Cc、Cm、Cy、Ck)を用いて、修正される。
図12のS100〜S120は、図2のS100〜S120と、同じである。S140aでは、プロセッサ110は、パッチ画像データPBdと、ドット階調値テーブル情報137と、を使用して、複数の階調補正用パッチ画像を印刷実行部170に印刷させる。印刷される複数の階調補正用パッチ画像は、図6(A)の複数のパッチ画像PBと、同様の画像である(以下、同じ符号を用いて階調補正用パッチ画像PBと呼ぶ)。
図13は、パッチ画像PBの印刷処理の例を示すフローチャートである。図6(B)の実施例との差異は、S230が、S230aに置換されている点だけである。図13のフローチャートの他の部分は、図6(B)のフローチャートの対応する部分と、同じである。S230aでは、プロセッサ110は、標準のドット階調値テーブル情報137を参照して、パッチ画像データPBdのハーフトーン処理を実行する。図13の処理では、図6(B)の処理とは異なり、修正済ドット階調値テーブル情報137xは使用されない。従って、印刷される複数の階調補正用パッチ画像PBの濃度は、印刷実行部170に固有なインク量差の影響を、受けている。
図12のS150aでは、測色器200は、複数の階調補正用パッチ画像PBを読み取ることによって、複数の階調補正用パッチ画像PBのそれぞれの光学濃度を示す読取データを生成する。測色器200による階調補正用パッチ画像PBの読み取りは、図2のS150と同様に、行われる。プロセッサ110は、測色器200から読取データを取得し、読取データを解析することによって、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成する。
図14は、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkの生成処理の例を示すフローチャートである。S700では、プロセッサ110は、読取データを解析することによって、パッチ画像データPBdによって示される階調値Viと、光学濃度ODと、の対応関係を特定する。
図15(A)は、階調値Viと光学濃度ODとの対応関係の例を示すグラフである。横軸は、階調値Viを示し、縦軸は、光学濃度ODを示している。図中のトーンカーブTcは、図8(A)のトーンカーブTxと同様に、共通のインクに対応する複数の階調補正用パッチ画像PBの階調値Viと光学濃度ODとの対応関係の例を示している。より具体的に説明するために、トーンカーブTcが、シアンインクのトーンカーブを示していることとする。
図14のS705では、プロセッサ110は、特定した対応関係(例えば、トーンカーブTc)を使用して、階調値Viと光学濃度ODとの標準の対応関係を特定する。上述したように、第2実施例の複数の階調補正用パッチ画像PBの濃度は、印刷実行部170に固有なインク量差の影響を、受けている。ここで、シアンインクの実際のインク使用量が標準インク使用量よりも多いと仮定する(すなわち、シアン補正値Ccは、1よりも小さい)。この場合、各パッチ画像PBの光学濃度ODは、標準インク使用量に従ってパッチ画像PBが印刷される場合の光学濃度ODよりも、高くなる。図15(A)中の標準トーンカーブTcaは、シアンインクの実際のインク使用量が標準インク使用量と同じである場合に得られるトーンカーブである。図示するように、標準トーンカーブTcaによって示される光学濃度ODは、実際のトーンカーブTcによって示される光学濃度ODよりも、低い。図14のS705では、プロセッサ110は、以下に説明するように、実際のトーンカーブTcの光学濃度ODを補間することによって、標準トーンカーブTcaを特定する。
図15(A)中の第3階調値Vi3と第3濃度OD3とは、1つのパッチ画像PBの階調値Viと光学濃度ODとの組み合わせを示している。ここで、シアンインクの実際のインク使用量が標準インク使用量よりも多いので、第3濃度OD3は、標準トーンカーブTcaによって第3階調値Vi3に対応付けられる光学濃度ODである参考光学濃度OD3aよりも、高い。実際のインク使用量が標準インク使用量と同じである場合、第3階調値Vi3に対応付けられるパッチ画像PBの光学濃度ODは、第3階調値Vi3よりも小さい参考階調値Vi3aに実際のトーンカーブTcによって対応付けられる参考光学濃度OD3aと同じである。上述したように、図12のS100で決定されるシアン補正値Ccは、実際のインク使用量に対する標準のインク使用量の割合と相関を有する指標である。参考階調値Vi3aは、第3階調値Vi3にシアン補正値Ccを乗じることによって、算出される。実際のトーンカーブTcによって参考階調値Vi3aに対応付けられる参考光学濃度OD3aは、トーンカーブTcを形成する複数のパッチ画像PBの階調値Viと光学濃度ODとの複数の組み合わせを補間することによって、算出される。プロセッサ110は、第3階調値Vi3に対応する参考光学濃度OD3aを補間によって算出するのと同様に、種々の階調値Viに対応する光学濃度ODを補間によって算出する。これにより、プロセッサ110は、標準トーンカーブTcaを特定できる。このように、プロセッサ110は、読取データによって示される光学濃度ODを、補正値Ccを使用して修正することによって、階調値Viと修正された光学濃度ODとの対応関係、すなわち、標準トーンカーブTcaを、特定する。階調値Viがゼロから最大階調値Vimまで増大する場合に、標準トーンカーブTcaによって示される光学濃度ODは、ゼロから最大濃度ODmaまで増大する。プロセッサ110は、シアンC以外の色成分についても、同様に、標準トーンカーブを特定する。
図14のS710では、プロセッサ110は、修正済の光学濃度OD(すなわち、標準トーンカーブ)を使用して、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成する。濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkの生成は、図8(A)〜図8(C)の実施例と同様に、行われる。
図15(B)は、階調値Viと光学濃度ODとの線形な対応関係を示すグラフである。横軸は、階調値Viを示し、縦軸は、光学濃度ODを示している。図中の対応関係Tcalは、線形な対応関係を示している。図中の第4濃度OD4aは、図15(A)に示す標準トーンカーブTcaによって第4階調値Vi4に対応付けられる光学濃度ODである。参考階調値Vi4xは、線形な対応関係Tcalによって第4濃度OD4aに対応付けられる階調値Viである。
図15(C)は、修正前の入力階調値Viと、修正後の出力階調値Voと、の対応関係の例を示すグラフである。横軸は、入力階調値Viを示し、縦軸は、出力階調値Voを示している。図中の対応関係Gcは、濃度関係情報Gcによって示される入力階調値Viと出力階調値Voとの対応関係を示している。図示するように、入力階調値Viが参考階調値Vi4xである場合、出力階調値Voは、第4階調値Vi4である。この対応関係Gcに従って入力階調値Viが修正される場合、参考階調値Vi4xである階調値Viは、第4階調値Vi4に修正され、そして、修正済の第4階調値Vi4に従って印刷が行われる。図15(A)に示すように、標準トーンカーブTcaに従って画像が印刷される場合、すなわち、実際のインク使用量が標準インク使用量と同じである場合、印刷される色の光学濃度ODは、第4濃度OD4aである。このように、線形な対応関係Tcal(図15(B))によって対応付けられる濃度の色が、印刷される。プロセッサ110は、他の入力階調値Viに関しても、標準トーンカーブTcaと線形な対応関係Tcalとを使用して、入力階調値Viと出力階調値Voとの対応関係を決定できる。以上により、プロセッサ110は、濃度関係情報Gcを生成する。
以上、補正値Ccが1よりも小さい場合について説明した。補正値Ccが1よりも大きい場合も、プロセッサ110は、同じ方法に従って、濃度関係情報Gcを生成できる。また、図14の処理では、プロセッサ110は、他のインクに関しても、同様に、濃度関係情報Gm、Gy、Gkを生成する。そして、プロセッサ110は、生成した濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。以上により、図14の処理、すなわち、図12のS150aの処理が、終了する。
図12のS155aでは、プロセッサ110は、補正値Cc、Cm、Cy、Ckを使用して、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを修正することによって、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを生成する。図15(C)には、標準の濃度関係情報Gcから生成される修正済濃度関係情報Gcxの例が示されている。修正済濃度関係情報Gcxは、標準の濃度関係情報Gcの出力階調値Voに補正値Ccを乗じることによって、得られる。他のインクの修正済濃度関係情報Gmx、Gyx、Gkxも、同様に、生成される。プロセッサ110は、生成した修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを、記憶装置115(例えば、不揮発性記憶装置130)に、格納する。
実際のインク使用量が標準インク使用量よりも多い場合、すなわち、補正値Ccが1よりも小さい場合、図15(C)に示すように、修正済濃度関係情報Gcxによって示される出力階調値Voは、標準の濃度関係情報Gcによって示される出力階調値Voよりも、小さい。修正済濃度関係情報Gcxに基づいて階調補正が行われる場合、印刷に使用されるインク量が低減するので、印刷される色を、標準の印刷実行部によって印刷される色に、近づけることができる。逆に、実際のインク使用量が標準インク使用量よりも少ない場合(すなわち、補正値Ccが1よりも大きい場合)、修正済濃度関係情報Gcxによって示される出力階調値Voは、標準の濃度関係情報Gcによって示される出力階調値Voよりも、大きい。これにより、印刷に使用されるインク量が増大するので、印刷される色を、標準の印刷実行部によって印刷される色に、近づけることができる。
図12のS160aでは、プロセッサ110は、パッチ画像データPCdと、標準のドット階調値テーブル情報137と、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxとを使用して、複数の色変換用パッチ画像を印刷実行部170に印刷させる。印刷される複数の色変換用パッチ画像は、図9(A)の複数の色変換用パッチ画像PCと、同様の画像である(以下、同じ符号を用いて色変換用パッチ画像PCと呼ぶ)。
図16は、色変換用パッチ画像PCの印刷処理の例を示すフローチャートである。図9(B)の実施例との差異は、S320、S330が、S320a、S330aに置換されている点だけである。図16のフローチャートの他の部分は、図9(B)のフローチャートの対応する部分と、同じである。S320aでは、プロセッサ110は、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを使用して、CMYKの色値の階調補正を行う。S330aでは、プロセッサ110は、階調補正済のCMYKの色値と、標準のドット階調値テーブル情報137と、を使用して、ハーフトーン処理を行う。図16の処理では、図9(B)の処理とは異なり、修正済ドット階調値テーブル情報137xは使用されない。この代わり、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxが使用される。従って、複数のパッチ画像PCのそれぞれの色は、標準の印刷実行部によってパッチ画像PCが印刷される場合の色と、おおよそ同じである。
図12のS170、S180は、図2のS170、S180と、それぞれ、同じである。これにより、図2の実施例と同様に、標準の色変換情報138が生成され、そして、標準の情報137、Gc、Gm、Gy、Gk、138を含むプロファイルデータ139が、生成される。
以上のように、第2実施例では、図12のS140aで、プロセッサ110は、ズレ量情報134(すなわち、補正値Cc、Cm、Cy、Ck))を用いずに、複数の階調補正用パッチ画像PBのパッチ画像データPBdを用いて、特定の印刷実行部170に複数の階調補正用パッチ画像PBを印刷させる。S150aでは、プロセッサ110は、複数の階調補正用パッチ画像PBを光学的に読み取ることによって得られる読取データを用いて、印刷実行部170と同じ機種の複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成する。S155aでは、プロセッサ110は、ズレ量情報134(具体的には、補正値Cc、Cm、Cy、Ck)を用いて濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを修正することによって、特定の印刷実行部170のための修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを生成する。S160aでは、プロセッサ110は、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを用いて、特定の印刷実行部170に複数の色変換用パッチ画像PCを印刷させる。S170では、プロセッサ110は、複数の色変換用パッチ画像PCを光学的に読み取ることによって得られる読取データを用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための色変換情報138を生成する。
このように、ズレ量情報134を用いずに生成された濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkが、ズレ量情報134を用いて修正されることによって、特定の印刷実行部170のための修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxが生成される。そして、この修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための色変換情報138が生成される。この結果、特定の印刷実行部170による色材の使用量が標準からずれている場合であっても、この特定の印刷実行部170を用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるための色変換情報138を、適切に、生成できる。
また、図12のS150a、具体的には、図14のS700では、図15(A)で説明したように、プロセッサ110は、パッチ画像データPBdによって示される階調値Viと、読取データの色値である光学濃度ODと、の対応関係であるトーンカーブTcを特定する。S705では、プロセッサ110は、トーンカーブTcを用いて、標準トーンカーブTcaによって対応付けられる標準の光学濃度ODと標準の階調値Vi(例えば、図15(A)の参考光学濃度OD3aと参考階調値Vi3a)を特定する。そして、S710では、プロセッサ110は、標準トーンカーブTcaを用いて、標準の濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを生成する。このように、実際のトーンカーブTcを用いて特定される標準トーンカーブTcaを用いることによって、標準の濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを、適切に、生成することができる。
また、図12のS150aで生成される濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkは、階調補正処理で用いられる情報である。図12のS170で生成される色変換情報138は、色変換処理で用いられる情報である。そして、図12のS160a、具体的には、図16のS320a〜S340では、プロセッサ110は、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを用いて階調補正処理を実行することによって、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データを生成する。そして、図16のS350では、プロセッサ110は、生成した印刷データを特定の印刷実行部170に出力することによって、特定の印刷実行部170に複数の色変換用パッチ画像PCを印刷させる。このように、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データが、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを用いて階調補正処理を実行することによって、生成されるので、適切な複数の色変換用パッチ画像PCを印刷できる。この結果、色変換情報138を、適切に、生成できる。
また、図12のS110では、プロセッサ110は、ズレ量情報134(すなわち、補正値Cc、Cm、Cy、Ck))を用いずに、複数のドット用パッチ画像PAのパッチ画像データPAdを用いて、特定の印刷実行部170に、複数のドット用パッチ画像PAを印刷させる。図12のS120では、プロセッサ110は、複数のドット用パッチ画像PAを光学的に読み取ることによって得られる読取データを用いて、複数の印刷実行部のための複数の印刷処理において共通に使用されるためのドット階調値テーブル情報137を、生成する。また、図12のS140aでは、プロセッサ110は、パッチ画像データPBdと、標準のドット階調値テーブル情報137と、を用いて、特定の印刷実行部170に複数の階調補正用パッチ画像PBを印刷させる。S160aでは、図16のS320a〜S340で説明したように、プロセッサ110は、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxと、ドット階調値テーブル情報137と、を用いて、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データを生成する。このように、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データが、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxと、ドット階調値テーブル情報137と、を用いて生成されるので、適切な複数の色変換用パッチ画像PCを印刷できる。この結果、色変換情報138を、適切に、生成できる。
また、図12のS120で生成されるドット階調値テーブル情報137は、ハーフトーン処理で用いられるデータである。そして、図12の160a、具体的には、図16のS320a〜S340では、プロセッサ110は、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを用いて階調補正処理を実行し、ドット階調値テーブル情報137を用いてハーフトーン処理を実行することによって、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データを生成する。このように、複数の色変換用パッチ画像PCの印刷データが、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを用いる階調補正処理と、ドット階調値テーブル情報137を用いるハーフトーン処理と、が実行されることによって、生成されるので、適切な複数の色変換用パッチ画像PCを印刷できる。この結果、色変換情報138を、適切に、生成できる。
C.印刷処理の別の実施例:
図17は、印刷処理の別の実施例のフローチャートである。図11の実施例との差異は、S400とS440との間にS410、S420が追加されている点と、S460がS460bに置換されている点と、だけである。図17のフローチャートの他の部分は、図11のフローチャートの対応する部分と、同じである。S410は、図2のS100と、同じである。S420は、図2のS130と同じである。S460bでは、プロセッサ110は、階調補正済のCMYKの色値と、修正済ドット階調値テーブル情報137xと、を使用して、ハーフトーン処理を行う。このように、図17の印刷処理では、標準のドット階調値テーブル情報137に代えて、修正済ドット階調値テーブル情報137xを用いるハーフトーン処理が行われる。従って、印刷される色を、標準の印刷実行部によって印刷される色に、近づけることができる。
図18は、印刷処理の別の実施例のフローチャートである。図11の実施例との差異は、S400とS440との間にS410、S430が追加されている点と、S450がS450cに置換されている点と、だけである。図18のフローチャートの他の部分は、図11のフローチャートの対応する部分と、同じである。S410は、図2のS100と、同じである。S430は、図12のS155aと同じである。S450cでは、プロセッサ110は、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを使用して、階調補正処理を行う。このように、図18の印刷処理では、標準の濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkに代えて、修正済濃度関係情報Gcx、Gmx、Gyx、Gkxを用いる階調補正処理が行われる。従って、印刷される色を、標準の印刷実行部によって印刷される色に、近づけることができる。
D.変形例:
(1)制御データの生成処理は、上記の処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、ズレ量情報134は、補正値Cc、Cm、Cy、Ckに対応付けられたズレ量ではなく、補正値Cc、Cm、Cy、Ckそのものを示す情報であってよい。この場合、補正値テーブル情報136(図3)は、省略されてよい。また、ズレ量情報134は、実際のインク使用量に対する標準インク使用量の割合に限らず、実際のインク使用量と標準インク使用量との間のズレを示す種々の値であってよい。ズレ量情報134を使用して特定される補正値に従って制御データを修正する処理(例えば、図2のS130、図12のS155a)は、補正値に応じて適切な修正を行う種々の処理であってよい。
また、制御データの生成処理において、測色器200の代わりに読取部160が使用されてよい。例えば、図2のS120、S150では、プロセッサ110は、読取部160によって生成される読取データによって示されるスキャン値を使用して、光学濃度と相関を有する色値である濃度色値を算出してよい。濃度色値としては、例えば、輝度値が使用されてよい(輝度値が大きいほど、光学濃度は低い)。プロセッサ110は、濃度色値を使用して、図4(B)、図4(C)の実施例と同様に、ドット階調値テーブル情報137を決定する。また、プロセッサ110は、濃度色値を使用して、図8(A)〜図8(C)の実施例と同様に、濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gkを決定する。また、図2のS170では、測色値に代えて、読取部160からの読取データによって示されるスキャン値(例えば、RGB色空間の色値)が、使用される。また、目標測色値に代えて、目標のスキャン値が使用される。
(2)ハーフトーン処理は、誤差拡散法を用いる処理に代えて、他の処理(例えば、ディザマトリクスを使用する処理)であってよい。ディザマトリクスを使用する場合、標準のディザマトリクスは、予め準備されてよい。そして、ズレ量情報134を使用して標準のディザマトリクスを修正することによって、修正済のディザマトリクスが生成されてよい。
(3)印刷実行部170の構成は、画像を印刷する任意の構成であってよい。例えば、印刷に使用可能なドットサイズの総数は、大、中、小の3つに限らず、1以上の任意の数であってよい。シアンとマゼンタとイエロのインクは、顔料インクであってよい。ブラックインクは、染料インクであってよい。使用可能なインクの組み合わせは、CMYKの組み合わせに限らず、任意の組み合わせであってよい。印刷実行部170は、レーザ方式の印刷実行部であってよい。
(4)濃度関係情報Gc、Gm、Gy、Gk、ドット階調値テーブル情報137、色変換情報138などの制御データを生成する生成装置は、複合機100とは異なる他の種類の装置であってよい(例えば、パーソナルコンピュータ)。また、印刷実行部170は、生成装置に接続された外部装置であってよい。また、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、生成装置による生成処理の機能を一部ずつ分担して、全体として、生成処理の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムが生成装置に対応する)。
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図2のS170の機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。