特許文献1または特許文献2に開示されているような従来の田植機では、人為操作によって苗取り量または植付け深さを変更することができるが、運転者がその苗取り量または植付け深さの調節操作を怠ったり、間違ったりした場合には、不適当な苗取り量で苗の植え付けが実施され、その修正には多大な負担が生じる。また、近年、コンピュータを用いた営農化により農作業が自動化される傾向があるが、田植機の走行等が自動化されたとしても、肝心の苗取り量の調節または植付け深さの調節ために、田植機に設けられた手動調節具を直接操作しなければならないという問題が解決すべき課題として残されている。
本発明による田植機の1つでは、苗載せ台に載置された苗が植付け爪によって取り出される際の苗取り量を調節する苗取り量調節機構と、前記苗取り量調節機構による苗取り量の調節を操作者の操作に基づいて手動で実行する苗取り量手動調節ユニットと、前記苗取り量調節機構による苗取り量の調節を、走行機体外部から送られてくるデータに基づいて生成された外部信号に基づいて自動で実行する苗取り量自動調節ユニットと、を備え、前記苗取り量自動調節ユニットによって苗取り量の自動調節が実行されると、前記苗取り量手動調節ユニットによって実行される苗取り量の手動調節に前記自動調節が優先し、かつ、前記自動調節の終了後に、前記苗取り量自動調節ユニットによって調節された苗取り量を前記苗取り量手動調節ユニットによって変更することが許可される。
この構成によれば、苗植付け作業における苗取り量が、運転者による手動操作で調節できるだけでなく、外部信号に基づいて自動的に行うことができる。したがって、圃場の農業管理者によって決められた苗取り量が、外部信号を用いて自動的に調節設定されるので、運転者による苗取り量の調節忘れ等によって不適切な苗取り量で苗植付けが実施される不都合が解消される。もちろん、そのような外部信号がない場合には、運転者の判断で、苗取り量の調節を手動で行うことができる。
農業管理者によって決められた苗取り量が、外部信号を通じて田植機に設定されたとしても、田植機を運転している熟練した運転者が、圃場の状態や苗の状態、苗植付装置の状態によって圃場現場で修正した方が良い場合がある。そのような場合では、運転者は、農業管理者に連絡して苗取り量の修正を承認してもらって、あるいは予め任されている場合は運転者の判断で、手動で修正することが好ましい。しかしながら、常に運転者の判断に任せていると、従来のような問題が生じ、農業管理者による農業計画が正しく反映されなくなってしまう。本発明であれば、苗取り量手動調節ユニットによって苗取り量が変更される前に、かならず、苗取り量が外部信号に基づいて自動調節されるので、農業管理者の基本的な意図は反映される。そして、状況に応じて、実際に田植機を運転する熟練した運転者によって修正変更されることにより、より好適な苗植付け作業も可能になる。
外部信号による自動調節の後、運転者等によって行われる手動調節は、原則的には微調節である。したがって、自動調節された位置を基準として、ある程度の修正ができるだけで十分であり、苗取り量調節機構の全調節範囲にわたって調節可能でなくてもよい。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記苗取り量調節機構による苗取り量を手動で微調節する手動微調節ユニットが備えられ、前記苗取り量自動調節ユニットによって実行される苗取り量の自動調節の終了後に、前記苗取り量自動調節ユニットによって調節された苗取り量を前記手動微調節ユニットによって変更することが許可される。
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記苗取り量自動調節ユニットは、前記外部信号を受信不能なときに、操作者の操作によって入力される手動操作信号に基づいて前記苗取り量調節機構による苗取り量の調節を実行することが好ましい。また、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記苗取り量自動調節ユニットは、前記手動操作信号がないときに、前回の作業時の苗取り量に相当する操作量または標準苗取り量に相当する操作量に基づいて前記苗取り量調節機構による苗取り量の調節を実行することが好ましい。
苗取り量調節機構における調節ために必要な調節動作が、苗取り量手動調節ユニットと苗取り量自動調節ユニットとの共通の動作機器を通じて行わるようにするのが、構造の簡単化や低コスト化から好ましい。また、苗取り量調節機構に必要なスペースを減じるためには、できる限りバイワイヤ方式を取り入れることが好ましい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記苗取り量調節機構は、前記苗取り量手動調節ユニットに対する手動操作により出力される駆動要求及び前記外部信号に基づいて前記苗取り量自動調節ユニットから出力される駆動要求に基づいて駆動するアクチュエータを備えている。自動及び手動での苗取り量調節が同じ駆動要求(駆動制御信号など)によって駆動するアクチェータの動きで行われるので、苗取り量調節機構の全体構成が簡単化する。
手動操作による苗取り量の調節は、圃場に投入された田植機に搭乗している操作者、例えば田植機を運転している運転者によって行われる。これに対して、自動的に苗取り量の調節を行うための外部信号は、当該圃場に対して責任をもつ農業管理者によって予め立案された農作業計画に基づいて生成され、田植機に送信されるものである。そのような農業管理者は通常は1つ以上の水田(圃場)を保有しており、農作業計画はコンピュータシステムによって支援される。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記外部信号は、1つ以上の水田(圃場)を管理する管理コンピュータからの信号である。
本発明による田植機の他の1つでは、苗載せ台に載置された苗が植付け爪によって田面に植えつけられる際の植付け深さを調節する植付け深さ調節機構と、前記植付け深さ調節機構による植付け深さの調節を操作者の操作に基づいて手動で実行する植付け深さ手動調節ユニットと、前記植付け深さ調節機構による植付け深さの調節を、走行機体外部から送られてくるデータに基づいて生成された外部信号に基づいて自動で実行する植付け深さ自動調節ユニットと、を備え、前記植付け深さ自動調節ユニットによって植付け深さの自動調節が実行されると、前記植付け深さ手動調節ユニットによって実行される植付け深さの手動調節に前記自動調節が優先し、かつ、前記自動調節の終了後に、前記植付け深さ自動調節ユニットによって調節された植付け深さを前記植付け深さ手動調節ユニットによって変更することが許可される。
この構成によれば、苗植付け作業における植付け深さが、運転者による手動操作で調節できるだけでなく、外部信号に基づいて自動的に行うことができる。したがって、圃場の農業管理者によって決められた植付け深さが、外部信号を用いて自動的に調節設定されるので、運転者による植付け深さの調節忘れや調節間違い等によって不適切な植付け深さで苗植付けが実施される不都合が解消される。もちろん、そのような外部信号がない場合には、運転者の判断で、植付け深さの調節を手動で行うことも可能である。
植付け深さに関しても、田植機を運転している熟練した運転者は、圃場の状態や苗の状態、苗植付装置の状態によって圃場現場で修正した方が良い場合がある。ただし、常に運転者の判断に任せていると、従来のような問題が生じ、農業管理者による農業計画が正しく反映されなくなってしまう。本発明であれば、植付け深さ手動調節ユニットによって植付け深さが変更される前に、かならず、苗取り深さが外部信号に基づいて自動調節されるので、農業管理者の基本的な意図は反映される。そして、状況に応じて、実際に田植機を運転する熟練した運転者によって修正変更されることにより、より適正な苗植付け作業が実現できる。
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記植付け深さ自動調節ユニットは、前記外部信号を受信不能なときに、操作者の操作によって入力される手動操作信号に基づいて前記植付け深さ調節機構による植付け深さの調節を実行することが好ましい。また、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記植付け深さ自動調節ユニットは、前記手動操作信号がないときに、前回の作業時の植付け深さに相当する操作量または標準植付け深さに相当する操作量に基づいて前記植付け深さ調節機構による植付け深さの調節を実行することが好ましい。
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記植付け深さ調節機構は、複数の接地フロートの高さ位置を変更することにより植付け深さを調節するように構成され、前記複数の接地フロートの高さ位置を個別に変更する機能を有する。このように構成されたフロートシステムでは、センタフロートを植付け深さの調節のために用い、センタフロートの左右側に位置するサイドフロートは、センタフロートに対して高低差をつけることで、例えば、畦際等で田面が傾斜している場合の対処が可能となる。また、サイドフロートを左右で異なるように昇降させることでローリング制御が実現する。
この植付け深さ調節機構においても、上述したように苗取り量調節機構と同様に、自動及び手動で植付け深さ調節が共通のアクチュエータで行われることが構造の簡単化や低コスト化からも好ましい。また、前記外部信号は、1つ以上の水田(圃場)を管理する管理コンピュータからの信号とすることが、上述した理由から好ましい。
本発明による田植機の具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて、本発明を特徴付けている、苗取り量の調節に関する基本原理を説明する。田植機は、走行機体1の後部にリンク機構2を介して苗植付け装置3を昇降自在、並びに前後軸芯周りに左右ローリング自在に連結している。苗植付け装置3は、良く知られた基本構造を有し、苗載せ台12、接地フロート10、植付アーム30等を備えている。この苗植付け装置3では、苗載せ台12に載置された苗が植付アーム30に設けられた植付け爪301によって取り出される際の苗取り量を調節する苗取り量調節機能と、苗載せ台12に載置された苗が植付け爪301によって田面に植えつけられる際の植付け深さを調節する植付け深さ調節機能とを備えている。
図1には詳しく示されていないが、苗取り量調節機構4は、苗載せ台12に載置された苗の植付アーム30の植付け爪301に対する位置をアクチュエータ41の動きによって変更することで、植付け爪301が取り出す苗の量(苗取り量)を調節する。
手動操作に基づく手動調節を行うための苗取り量手動調節ユニット6と、外部からの操作信号による自動調節を行うための苗取り量自動調節ユニット7とが備えられている。さらに、苗取り量調節機構4のアクチュエータ41に駆動信号を与えて苗取り量調節を制御するために、苗取り量制御ユニット5Aが備えられている。苗取り量制御ユニット5Aは、一方では、苗取り量自動調節ユニット7からの外部信号に応じて苗取り量調節機構4のアクチュエータ41を動かす駆動信号を生成し、他方では、苗取り量手動調節ユニット6からの手動信号に応じて苗取り量調節機構4のアクチュエータ41を動かす駆動信号を生成する。
苗取り量制御ユニット5Aは、苗取り量自動調節ユニット7からの外部信号と苗取り量手動調節ユニット6からの手動信号とに対して優先条件を設定している。この優先条件の内容は、苗植付け作業の開始時に行われる苗取り量の初期調節時において、苗取り量自動調節ユニット7によって実行される苗取り量の自動調節が、苗取り量手動調節ユニット6によって実行される苗取り量の手動調節に優先することである。具体的には、苗取り量自動調節ユニット7によって実行される苗取り量の自動調節の終了後に、苗取り量自動調節ユニット7によって調節された苗取り量を苗取り量手動調節ユニット6によって変更することが許可される。このため、苗取り量制御ユニット5Aには、優先操作信号決定部51と苗取り量調節制御部52とが備えられている。優先操作信号決定部51は、外部信号及び手動信号が入力されると、優先条件に基づいて、採用すべき信号を決定し、決定された信号に基づいた駆動要求(駆動制御データ)を苗取り量調節制御部52に与える。苗取り量調節制御部52は与えられた駆動要求に基づいて苗取り量調節機構4のアクチュエータ41を駆動要求通りに動かすために駆動信号を生成して、アクチュエータ41に与える。
これにより、苗取り量自動調節ユニット7からの外部信号または苗取り量手動調節ユニット6からの手動信号に基づいた苗取り量の調節が実行される。
図1の例では、苗取り量自動調節ユニット7は、管理センタ等に設置された管理コンピュータである営農コンピュータシステム100に登録されている苗取り量に基づいて、自動的に苗取り量を調節するように構成されている。このため、苗取り量自動調節ユニット7は、営農コンピュータシステム100とインターネットや無線データ網を介してデータ通信可能な外部データ通信部71と、この外部データ通信部71介して営農コンピュータシステム100から送られてくる外部操作データ(走行機体外部から送られてくるデータ)を入力する外部操作信号入力部72が備えられている。外部操作信号入力部72は、受け取った外部操作データに基づいて上述した外部信号を生成して、苗取り量制御ユニット5Aに転送する。ここでの説明では、営農コンピュータシステム(管理コンピュータ)100は、複数の農家、つまり多数の圃場(主に水田)を管理しており、各圃場に投入された田植機に外部操作データを送信する。しかしながら、本発明は営農コンピュータシステム100が、複数の圃場(主に水田)を管理する形態に限定されるわけでなく、本発明は、個人農家が所有する営農コンピュータシステム100が、1つの圃場(主に水田)を管理するような実施形態も含んでいる。
図1の例では、苗取り量手動調節ユニット6は、レバーやダイアルなどで構成される手動操作具61と手動操作信号入力部62とを備えている。手動操作具61の操作変位は手動操作信号として手動操作信号入力部62に入力される。手動操作信号入力部62は、入力された手動操作信号に基づいて上述した手動信号を生成して、苗取り量制御ユニット5Aに転送する。
次に、図2を用いて植付け深さ調節の基本原理を説明する。図2には詳しく示されていないが、植付け深さ調節機構40は、苗植付け装置3に揺動可能に支持された接地フロート10の高さをアクチュエータ401の動きによって変更することで、植付け爪301が田面に植付ける苗の深さ(植付け深さ)を調節する。
図2に示すように、植付け深さの調節に関しても、図1を用いた苗取り量と同様に、手動操作に基づく手動調節を行うための植付け深さ手動調節ユニット60と、外部からの操作信号による自動調節を行うための植付け深さ自動調節ユニット70とが用意されている。さらに、植付け深さ調節機構40による苗取り量調節を制御するために、植付け深さ制御ユニット5Bが設けられている。苗取り量制御ユニット5Aは、一方では、植付け深さ自動調節ユニット70からの外部信号に応じて植付け深さ調節機構40のアクチュエータ401を動かす駆動信号を生成し、他方では、植付け深さ手動調節ユニット60からの手動信号に応じて植付け深さ調節機構40のアクチュエータ401を動かす駆動信号を生成する。
植付け深さ制御ユニット5Bは、植付け深さ自動調節ユニット70からの外部信号と植付け深さ手動調節ユニット60からの手動信号とに対して優先条件を設定している。この優先条件の内容は、苗植付け作業の開始時に行われる植付け深さの初期調節時において、植付け深さ自動調節ユニット70によって実行される植付け深さの自動調節が、植付け深さ手動調節ユニット60によって実行される植付け深さの手動調節に優先し、植付け深さ自動調節ユニット70によって実行される植付け深さの自動調節の終了後に、植付け深さ自動調節ユニット70によって調節された植付け深さを植付け深さ手動調節ユニット60によって変更することが許可されることである。このため、植付け深さ制御ユニット5Bには、優先操作信号決定部510と植付け深さ調節制御部520とが備えられている。優先操作信号決定部510は、外部信号及び手動信号が入力されると、優先条件に基づいて、採用すべき信号を決定し、決定された信号に基づいた駆動要求(駆動制御データ)を植付け深さ調節制御部520に与える。植付け深さ調節制御部520は与えられた駆動要求に基づいて植付け深さ調節機構40のアクチュエータ401を駆動要求通りに動かすために駆動信号を生成して、アクチュエータ401に与える。これにより、植付け深さ自動調節ユニット70からの外部信号または植付け深さ手動調節ユニット60からの手動信号に基づいた植付け深さの調節が実行される。
植付け深さ自動調節ユニット70は、管理センタ等に設置された営農コンピュータシステム100に登録されている植付け深さに基づいて外部信号を生成するように構成されている。このため、植付け深さ自動調節ユニット70は、苗取り量自動調節ユニット7と兼用される外部データ通信部71と、外部データ通信部71介して営農コンピュータシステム100から送られてくる外部操作データを入力する外部操作信号入力部72とが備えられている。外部操作信号入力部72は、受け取った外部操作データに基づいて上述した外部信号を生成して、植付け深さ制御ユニット5Bに転送する。
植付け深さ手動調節ユニット60は、苗取り量手動調節ユニット6と同様に、レバーやダイアルなどで構成される手動操作具610と手動操作信号入力部620とを備えている。手動操作具610の操作変位は手動操作信号として手動操作信号入力部620に入力される。手動操作信号入力部620は、入力された手動操作信号に基づいて上述した手動信号を生成して、植付け深さ制御ユニット5Bに転送する。
次に、図面を用いて、本発明による田植機の具体的な実施形態の1つを説明する。図3は、田植機の一例である乗用型田植機の側面図である。乗用型田植機には、図3に示すように、左右一対の前輪1a、左右一対の後輪1bで支持された走行機体1が備えられ、走行機体1の後部に上下揺動自在なリンク機構2を介して苗植付け装置3が昇降自在に支持されている。
図3に示すように、苗植付け装置3は、伝動ケース31、伝動ケース31の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース32、回転ケース32の両端に備えられた一対の植付アーム30、植付アーム30に設けられた植付け爪301、接地フロート10及び苗載せ台12等を備えている。接地フロート10は、良く知られているように、センタフロート及びサイドフロートとからなる。
図3に示すように、エンジン動力が苗植付け装置3に伝達されることより、苗載せ台12が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース32が回転駆動されて、苗載せ台12の下部から植付アーム30の植付け爪301が苗を取り出す。取り出された苗は、植付け爪301の植付け軌跡の植付けポイントで田面に植え付けられる。
次に図4を用いて、苗植付け装置3に組み込まれた苗取り量調節機構4と植付け深さ調節機構40とを簡単に説明する。苗取り量調節機構4は、苗載せ台12及びガイドレール121を上下に位置変更することにより、植付アーム30の植付け爪301がガイドレール121に形成された苗取り出し口を通過して取り出す苗の苗取り量を調節する。苗取り量調節機構4は、苗載せ台12及びガイドレール121を上下に位置変更するためのアクチュエータ41である減速機構付きの電動モータ41と、この電動モータ41の出力軸に設けられたピニオンギヤとかみ合っている扇形ギヤ42とを備えている。さらに、苗取り量調節機構4は、ガイドレール121の前部に挿入された支持アーム45と、この支持アーム45を揺動可能に支持する支持軸44とを備えている。支持アーム45と扇形ギヤ42とは、支持アーム43によってリンク結合している。扇形ギヤ42の回動軸46には、扇形ギヤ42の回動角度(苗取り量)を検出する苗取り量センサ47が設けられ、苗取り量センサ47の検出値(苗取り量)が制御装置5に入力される。電動モータ41の一方方向の駆動により、苗載せ台12及びガイドレール121が上昇側に移動し、電動モータ41の他方方向の駆動により、苗載せ台12及びガイドレール121が下降側に移動する。
苗載せ台12及びガイドレール121の位置を上側に設定すると、植付アーム30の植付け爪301がガイドレール121の苗取り出し口を浅く入り込みながら通過する状態となって、苗取り量は減少する。苗載せ台12及びガイドレール121の位置を下側に設定すると、植付アーム30の植付け爪301がガイドレール121の苗取り出し口を深く入り込みながら通過する状態となって、苗取り量は増大する。
植付け深さ調節機構40は、苗載せ台12に載置された苗が植付け爪301によって田面に植えつけられる際の植付け深さを調節するために、接地フロート10の高さ位置を変更する。植付け深さ調節機構40は、植付け深さ調節用のアクチュエータ401である減速機構付きの電動モータ401と、この電動モータ401の出力軸に設けられたピニオンギヤとかみ合っている扇形ギヤ402とを備えている。さらに、植付け深さ調節機構40は、接地フロート10の後部に設けられた揺動軸101と扇形ギヤ402とをリンク連結するリンク機構40Aを備えている。リンク機構40Aは、横軸心を有する支持軸404と、支持軸404と扇形ギヤ402とを連結する第1アーム403と、支持軸404と接地フロート10の揺動軸101とを連結する第2アーム405とを備えている。電動モータ401の駆動により扇形ギヤ402が回動すると、リンク機構40Aの動きにより接地フロート10の後部が昇降する。接地フロート10から苗植付け装置3の回転ケース32までの高さが低くなればなるほど、植付け深さは深くなる。扇形ギヤ402の回動軸406には扇形ギヤ402の回動角度(植付け深さ)を検出する植付け深さセンサ407が設けられている。電動モータ401は制御装置5によって駆動制御され、植付け深さセンサ407の検出信号は制御装置5に入力される。
この田植機には、苗取り量の調節を外部から自動で行うための苗取り量自動調節ユニット7と、植付け深さの調節を外部から自動で行うための植付け深さ自動調節ユニット70とが必要であるが、ここでは、苗取り量自動調節ユニット7と植付け深さ自動調節ユニット70とは兼用されている。苗取り量の調節及び植付け深さの調節を外部から自動で行うために、外部データ通信部71を介して外部操作データを受信する外部操作信号入力部72が制御装置5に備えられている。外部操作信号入力部72は、受信した外部操作データを苗取り量自動調節のための外部信号または植付け深さ自動調節のための外部信号に変換して、制御装置5の機能部に転送する。
なお、この実施形態では、外部データ通信部71は、wifi機能を有するスマートフォンであり、外部データ通信部71は遠隔地にある営農コンピュータシステム100からからの外部操作データを受け取って、田植機の制御装置5に備えられている外部操作信号入力部72に転送する。
制御装置5には、苗取り量手動調節ユニット6を構成する手動操作具61からの手動操作信号と、植付け深さ手動調節ユニット60を構成する手動操作具610からの手動操作信号が入力される。
制御装置5には、苗取り量手動調節ユニット6を構成する手動操作信号入力部62が苗取り量調節のための手動操作信号を処理するために構築され、植付け深さ手動調節ユニット60を構成する手動操作信号入力部620が植付け深さ調節のための手動操作信号を処理するために構築されている。
さらに制御装置5には、苗取り量制御ユニット5Aと、植付け深さ制御ユニット5Bとが構築されている。苗取り量制御ユニット5Aは、図1を用いて説明した基本原理を流用している。また、植付け深さ制御ユニット5Bは、図2を用いて説明した基本原理を流用している。苗取り量制御ユニット5Aに含まれている優先操作信号決定部51は、外部信号と手動信号のいずれかを上述した優先条件に基づいて選択して、対応する駆動要求を苗取り量調節制御部52に送る。苗取り量調節制御部52は、駆動要求に基づいて駆動信号を生成して、苗取り量調節機構4の電動モータ41を駆動して、苗取り量を調節する。植付け深さ制御ユニット5Bに含まれている優先操作信号決定部510は、外部信号と手動信号のいずれかを上述した優先条件に基づいて選択して駆動要求を植付け深さ調節制御部520に送る。植付け深さ調節制御部520は、駆動要求に基づいて駆動信号を生成して、植付け深さ調節機構40の電動モータ401を駆動して、植付け深さを調節する。
この実施形態では、苗取り量の調節のために、微調節ダイアル63が追加装備されている。この微調節ダイアル63は、苗取り量自動調節ユニット7によって自動調節された苗取り量を手動で微調節する手動微調節ユニット6aの手動操作具61として機能する。手動微調節ユニット6aは、手動操作信号入力部62を苗取り量手動調節ユニット6と共用している。
次に図5のフローチャートを用いて、苗取り量の調節における制御の流れの一例を説明する。まず、苗植付けの作業開始時であるかどうかがチェックされる(#01)。作業開始時であれば(#01Yes分岐)、さらに、営農コンピュータシステム100から苗取り量を設定するための外部操作データが受信(ダウンロード)可能かどうかチェックされる(#02)。外部操作データが受信可能な場合(#02Yes分岐)、外部データ通信部71が外部操作データを取得し、外部操作信号入力部72に転送する(#03)。外部操作データに基づいて外部操作信号入力部72により生成された外部信号から、苗取り量制御ユニット5Aが駆動信号(外部駆動信号)を生成する(#04)。この駆動信号によって、電動モータ41が駆動することで苗取り量が調節される(自動苗取り量調節)(#05)。
ステップ#01のチェックで作業開始時でない場合(#01No分岐)、及びステップ#02のチェックで外部操作データが受信できない場合(#03No分岐)、手動操作が行われているかどうか、つまり手動操作信号が入力されているかどうかがチェックされる(#11)。手動操作が行われている場合(#11Yes分岐)、手動操作信号入力部62は、手動操作量として入力される手動操作信号を手動信号に変換して出力し、この手動信号は苗取り量制御ユニット5Aに取得される(#12)。苗取り量制御ユニット5Aは手動信号から駆動信号(外部駆動信号)を生成する(#13)。この駆動信号によって、電動モータ41が駆動することで、苗取り量が調節(手動苗取り量調節)される(#14)。
ステップ#11のチェックで手動操作が行われていない場合(#11No分岐)、さらに、作業開始時かどうか、チェックされる(#21)。作業開始時であれば(#21Yes分岐)、外部信号も手動信号も入力されていないことになるので、予め設定されている所定の調節のための操作量を取得する(#22)。この所定の操作量としては、例えば、前回の作業時の苗取り量に相当する操作量や、標準苗取り量に相当する操作量などを採用することができる。所定の操作量に基づいて、駆動信号(外部駆動信号)が生成されると(#13)、この駆動信号によって、電動モータ41が駆動することで苗取り量が調節される(#14)。
ステップ#21のチェックで、作業開始時でない場合(#21No分岐)、あるいはステップ#05やステップ#14で苗取り量が調節された後には、微調節ダイアル63を用いた微調節操作が行われているかどうか、チェックされる(#31)。微調節操作が行われている場合(#31Yes分岐)、微調操作量が取得され(#32)、この微調操作量から苗取り量制御ユニット5Aが駆動信号(外部駆動信号)を生成する(#33)。この駆動信号によって、電動モータ41が駆動することで苗取り量が調節(手動苗取り量調節)される(#34)。
ステップ#31のチェックで、微調節操作が行われていない場合(#31No分岐)、苗植付け作業が終了であるかどうかチェックされ(#41)、まだ作業が続行される場合には(#41No分岐)、ステップ#11にジャンプし、手動操作具61または微調節ダイアル63に対する手動操作による苗取り量調節の有無を監視する。ステップ#41のチェックで、苗植付け作業が終了であれば(#41Yes分岐)、この制御ルーチンを終了する。
図5を用いて説明された制御では、外部信号による自動苗取り量調節は、苗植付け作業の開始時にだけ行われ、その後は、手動操作具61または微調節ダイアル63を用いた手動での苗取り量調節だけが可能である。これに代えて、外部信号による自動苗取り量調節及び手動操作具61による手動苗取り量調節は苗植付け作業の開始時にだけ許可し、苗植付け作業の開始後は、微調節ダイアル63を用いた手動での苗取り量調節だけ許可されるようにしてもよい。また、微調節ダイアル63が備えられていない場合は、手動操作具61による手動苗取り量調節を微調苗取り量調節として利用されてもよい。
次に図6のフローチャートには、植付け深さ調節における制御の流れの一例が示されている。この植付け深さ調節における制御の流れは、微調節のステップが省かれていること以外では、図5による苗取り量の調節における制御の流れと実質的に同じである。ステップ#101からステップ#105はステップ#01からステップ#05に対応しており、ステップ#111からステップ#114はステップ#11からステップ#14に対応しており、ステップ#121とステップ#122とはステップ#21とステップ#22に対応している。
ここでも、まず、苗植付けの作業開始時であるかどうかがチェックされる(#101)。作業開始時であれば(#101Yes分岐)、さらに、営農コンピュータシステム100から植付け深さを設定するための外部操作データが受信(ダウンロード)可能かどうかチェックされる(#102)。外部操作データが受信可能な場合(#102Yes分岐)、外部データ通信部71が外部操作データを取得し、外部操作信号入力部72に転送する(#103)。外部操作データに基づいて外部操作信号入力部72により生成された外部信号から、植付け深さ制御ユニット5Bが駆動信号(外部駆動信号)を生成する(#104)。この駆動信号によって、電動モータ401が駆動することで植付け深さが調節(自動植付け深さ調節)される(#105)。
ステップ#101のチェックで作業開始時でない場合(#101No分岐)、及びステップ#102のチェックで外部操作データが受信できない場合(#103No分岐)、手動操作が行われているかどうか、つまり手動操作信号が入力されているかどうかがチェックされる(#111)。手動操作が行われている場合(#111Yes分岐)、手動操作信号入力部620は、手動操作量として入力される手動操作信号を手動信号として出力し、この手動信号を植付け深さ制御ユニット5Bが取得する(#112)。植付け深さ制御ユニット5Bは手動信号から駆動信号(外部駆動信号)を生成する(#113)。この駆動信号によって、電動モータ401が駆動することで植付け深さが調節(手動植付け深さ調節)される(#114)。
ステップ#111のチェックで手動操作が行われていない場合(#111No分岐)、さらに、作業開始時かどうか、チェックされる(#121)。作業開始時であれば(#121Yes分岐)、外部信号も手動信号も入力されていないことになるので、予め設定されている所定の調節のための操作量を取得する(#122)。この所定の操作量としては、例えば、前回の作業時の植付け深さに相当する操作量や、標準植付け深さに相当する操作量などを採用することができる。この場合でも、所定の操作量に基づいて、駆動信号(外部駆動信号)が生成され(#113)。この駆動信号によって、電動モータ41が駆動することで植付け深さが調節される(#114)。
ステップ#121のチェックで、作業開始時でない場合(#121No分岐)、あるいはステップ#105やステップ#114で植付け深さが調節された後には、苗植付け作業が終了であるかどうかチェックされ(#141)、まだ作業が続行される場合(#141No分岐)には、ステップ#111にジャンプし、手動操作具61または微調節ダイアル63に対する手動操作による苗取り量調節の有無を監視する。ステップ#141のチェックで、苗植付け作業が終了であれば(#141Yes分岐)、この制御ルーチンを終了する。
植付け深さの調節においても微調節操作具が備えられた場合、図6を用いて説明された植付け深さの制御フローチャートに、図5を用いて説明された苗取り量の制御と同様な微調苗取り量調節の制御ステップが導入される。
〔別実施の形態〕(1)上述した実施形態では、苗取り量と植付け深さとの両方の調節が可能な田植機が取り上げられたが、どちらか一方の調節が可能な田植機も本発明の対象である。
(2)手動操作具61、610の形態として、レバー、ダイアル、スイッチなど種々の形態が採用可能である。
(3)上述した実施形態では、植付け深さのために接地フロート10の高さが変更可能に構成されている。そのため、接地フロート10を構成するセンタフロートの高さ及びこのセンタフロートの両側に位置する左右のサイドフロートの高さを変更する電動モータ401が設けられており、電動モータ401は、制御装置5によって駆動制御される。そこで、それぞれのフロートに当該フロートの高さを変更する電動モータ401が、個別に制御装置5を通じて、手動または自動で駆動制御されように構成することができる。これにより、センタフロートの高さ及び左右のサイドフロートの高さは個別に変更可能となる。この構成を採用した場合、傾斜センサの検出結果等に基づいて、左右のサイドフロートの高さを異なるように制御することで、苗植付け装置3のローリング制御が実現可能となる。
(4)上述した実施形態では、外部信号に基づく苗取り量の調節及び植付け深さの調節は、作業開始時に限定されていたが、作業中においても、外部から外部信号を送信することで、苗取り量の調節または植付け深さの調節あるいはその両方が自動調節されるように構成してもよい。その際、手動操作信号との間の優先度は、受信順で決定することが好ましい。あるいは、いずれかの信号を受信したのち所定時間の間、他方の信号を受け付けないようにしてもよい。