以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
[精製された茶抽出物の製造方法]
本発明者らは、香ばしい焙煎感に寄与しやすく、また、雑味の少ない、天然感のある香気を付与する手段を検討する過程で、驚くべきことに、下記式(I)で表される化合物であるピロール類縁体が、雑味が少なく、香ばしい焙煎感や天然感のある香気を呈することを見出した:
上記式(I)中、R1は、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基または水酸基であり、R2は、1−ピロリル基、2−ピロリル基または3−ピロリル基である。
また、本発明者らは、上記式(I)で表される化合物のなかでも、下記式(I−1)で表される化合物(1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール)が、特に焙煎感や天然感に優れる(香気貢献度が高い)ことを見出した。
したがって、上記式(I)で表される化合物(好ましくは、上記式(I−1)で表される化合物)を飲食品や香粧品に添加することにより、これらに対し、天然感のある優れた焙煎香を付与することができる。
そこで、効率よく上記式(I)で表される化合物を得るべく、本発明者らはさらに鋭意検討を行ったところ、茶を原料とした抽出物であって、特定の抽出方法を用いて得られる抽出物が、上記式(I)で表される化合物を高濃度で含むこと、さらには、特に香気貢献度の高い上記式(I−1)で表される化合物(以下、単に「目的のピロール化合物」とも称することがある)を高濃度、さらには高純度で含むことを見出した。
本発明に係る茶抽出物の製造方法では、香気成分が吸着された吸着剤に対して0体積%を超えて95体積%未満の濃度のアルコール水溶液を通液する(洗浄工程)。かような工程を含むことにより、目的のピロール化合物が吸着剤に吸着した状態を維持しながら吸着剤に吸着した夾雑物(目的のピロール化合物以外の香気成分)を高効率で除去することができ、続く溶出工程において、目的のピロール化合物を高濃度、且つ高純度で溶出させることができると考えられる。したがって、本発明に係る製造方法により得られる茶抽出物は、夾雑物の含有量が極めて低減されることから、雑味が少なく、天然感のある優れた焙煎香を付与することができる。ただし、当該メカニズムは単なる推測であり、本発明の技術的範囲がこのメカニズムによって限定されるわけではない。
以下、本発明の一形態に係る精製された茶抽出物の製造方法について説明する。
本形態に係る精製された茶抽出物の製造方法は、(1)茶の予備抽出物を吸着剤に接触させる吸着工程(吸着工程)と、(2)吸着剤に0体積%を超えて95体積%未満の濃度のアルコール水溶液を通液する洗浄工程(洗浄工程)と、(3)吸着剤に吸着された成分を95体積%以上の濃度のアルコール水溶液で溶出させる溶出工程(溶出工程)と、をこの順で含む。上記(1)〜(3)の各工程の他、公知の方法により、予備抽出物を得る工程(予備抽出物準備工程)、溶出工程にて得られた溶出液を濃縮する工程(濃縮工程)等を任意で行ってもよい。
(1)吸着工程
吸着工程では、茶の予備抽出物を吸着剤に接触させる。これにより、予備抽出物中に含まれる香気成分が吸着剤に吸着される。
上記予備抽出物は、そのまま、または水等で任意の濃度に調整して用いることができる。なお、予備抽出物を吸着剤に接触させる前に、濃縮、濾過、デカンテーション、遠心分離、塩析等の前処理を行ってもよい。このような前処理を行うことにより、吸着剤に対する香気成分の吸着を効率よく行うことができる。これらの前処理の手法は特に制限されず、公知の手段を用いて、またはこれを適宜改変して行うことができる。
予備抽出物を吸着剤に接触させる方法は公知の手法を用いることができ、例えば、吸着剤を充填したカラムに予備抽出物を通液させる方法、予備抽出物中に吸着剤を分散させて撹拌した後、濾過等の手段により吸着剤を分離する方法などが用いられる。作業効率の観点からは、前者の方法が好ましく用いられる。
カラムを用いる場合において、予備抽出物の通液速度は特に制限されないが、香気成分を十分に吸着させるという観点から、空間速度(SV)が1〜500h−1であると好ましく、5〜200h−1であるとより好ましく、10〜100h−1であると特に好ましい。なお、空間速度(SV)は、1時間あたり、吸着剤の容積に対して何倍量の液体を通液するかという単位である。この場合、カラム内は常圧であってもよいし、加圧された状態であってもよい。また、吸着剤に対して接触させる予備抽出物の量についても特に制限されないが、香気成分の損失を低減するという観点から、吸着剤に対して100〜5000倍(体積)であると好ましく、500〜2000倍(体積)であるとより好ましい。
本工程において用いられる吸着剤は特に制限されず、例えば、合成吸着剤やシリカゲルを用いることができる。耐久性に優れる点や、上記式(I)で表される化合物(特に、上記式(I−1)で表される化合物)を高濃度、且つ高純度で含む茶抽出物を得るという点から、吸着剤は、合成吸着剤を用いることが好ましい。
使用可能な合成吸着剤は、特に制限されないが、目的のピロール化合物との親和性に優れ、回収率を向上させることができるという点で、有機系樹脂を母体とする合成吸着剤を用いることが好ましい。
かような合成吸着剤の例としては、芳香族系樹脂を母体とする合成吸着剤、メタクリル酸エステル系樹脂を母体とする合成吸着剤、アクリロニトリル脂肪族系樹脂を母体とする合成吸着剤等が挙げられる。なかでも、目的のピロール化合物との親和性に優れ、回収率を向上させることができるという点で、芳香族系樹脂を母体とする合成吸着剤が好ましい。芳香族系樹脂を母体とする合成吸着剤の例としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする合成吸着剤、修飾されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする合成吸着剤、エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする合成吸着剤、修飾されたエチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする合成吸着剤等が挙げられる。
合成吸着剤は市販品を用いることができ、例えば、ダイヤイオン(登録商標)HP20、HP21;セパビーズ(登録商標)SP825L、SP850、SP700、SP70、SP207(以上、芳香族系樹脂、三菱ケミカル株式会社製);アンバーライト(登録商標)として、XAD−2、XAD−4、XAD−2000(以上、芳香族系樹脂、オルガノ株式会社製);ダイヤイオン(商標)HP1MG、HP2MG(以上、メタクリル酸系エステル系樹脂、三菱ケミカル株式会社製)などが挙げられる。
なかでも、目的のピロール化合物との親和性に特に優れるという観点から、臭素原子を芳香族系樹脂に結合させてなる、修飾されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とする合成吸着剤であるセパビーズ(登録商標)SP207を用いることが好ましい。
なお、上記吸着剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
吸着剤は、予備抽出物を接触させる前に、水または水と有機溶媒との混合溶媒で洗浄してもよい。有機溶媒としては、水と混和するものであると好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のモノアルコール類;アセトン等のケトン類;エチレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられる。上記有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
(2)洗浄工程
洗浄工程は、上述の吸着工程の後に行われる。洗浄工程では、香気成分が吸着された吸着剤に対して0体積%を超えて95体積%未満の濃度のアルコール水溶液(本明細書中、単に「低濃度アルコール水溶液」とも称する)を通液する。かような洗浄工程を溶出工程の前に行うことにより、予備抽出物中に含まれる夾雑物を効果的に除去することができ、得られる茶抽出物中における目的のピロール化合物の純度を向上させることができると考えられる。したがって、雑味が極めて少ない香気を呈する茶抽出物を得ることができる。
洗浄工程において、水のみで洗浄した場合(すなわち、用いるアルコール水溶液中のアルコール濃度が0体積%である場合)や、洗浄工程そのものを行わなかった場合、夾雑物が十分に除去できず、得られる茶抽出物中における目的のピロール化合物の純度が低下する。その結果、雑味のある香気が強くなってしまい、好ましくない。
他方、本工程において用いるアルコール水溶液中のアルコール濃度が95体積%以上であると、吸着剤に吸着した目的のピロール化合物が溶出してしまい、当該ピロール化合物を高濃度で得ることが難しくなる。その結果、得られる茶抽出物において、香ばしい焙煎感に寄与する効果が低下する。
洗浄工程では、アルコール濃度が0体積%を超えて95体積%未満のアルコール水溶液を通液する前に、水のみを通液して洗浄を行ってもよい(予備洗浄)。このときの通液(通水)速度は特に制限されないが、香気成分を十分に吸着させるという観点から、空間速度(SV)が1〜100h−1であると好ましく、10〜80h−1であるとより好ましく、30〜60h−1であると特に好ましい。この場合、カラム内は常圧であってもよいし、加圧された状態であってもよい。また、予備洗浄において、吸着剤に対して通液させる水の量についても特に制限されないが、夾雑物を十分に除去しつつ、香気成分の損失を低減するという観点から、吸着剤に対して0.5〜100倍(体積)であると好ましく、1〜50倍(体積)であるとより好ましい。
雑味が低減され、香ばしい焙煎感に寄与する効果が高い茶抽出物を得るという観点から、洗浄工程にて用いる低濃度アルコール水溶液中のアルコール濃度は、5〜90体積%であると好ましく、10〜75体積%であるとより好ましい。アルコール濃度を90体積%以下、さらには75体積%以下とすると、目的のピロール化合物の溶出率がより低くなり、香ばしい焙煎感に寄与する効果がさらに高い茶抽出物が得られる。他方、アルコール濃度を5体積%以上、10体積%以上とすると、夾雑物の溶出がより促進され、雑味がより低減された香気を有する茶抽出物を提供できる。
本工程では、通液させる低濃度アルコール水溶液の濃度は一定であってもよいし、また、変化させてもよい。1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロールをより高純度で濃縮することを目的として、本工程では、アルコール濃度が段階的に高くなるように、アルコール濃度が異なる複数の低濃度アルコール水溶液を通液することが好ましい。
この際用いる低濃度アルコール水溶液は、アルコール濃度の変化幅を10〜30体積%として段階的に高濃度とすると好ましい。
香気成分が吸着された吸着剤に対して低濃度アルコール水溶液を通液する方法は公知の手法を用いることができ、例えば、吸着剤(上記吸着工程において香気成分を吸着させた吸着剤)を充填したカラムに低濃度アルコール水溶液を通液させる方法などが用いられる。このときの通液速度は特に制限されないが、夾雑物を十分に除去するという観点から、空間速度(SV)が1〜100h−1であると好ましく、1.5〜50h−1であるとより好ましく、2〜30h−1であると特に好ましい。この場合、カラム内は常圧であってもよいし、加圧された状態であってもよい。また、吸着剤に対して通液させる低濃度アルコール水溶液の量についても特に制限されないが、夾雑物を十分に除去しつつ、香気成分の損失を低減するという観点から、吸着剤に対して0.5〜100倍(体積)であると好ましく、1〜50倍(体積)であるとより好ましい。
低濃度アルコール水溶液の通液は、流出液に含まれる成分の含有量を測定しながら行い、目的のピロール化合物の流出量が少ないことを確認しながら行うことが好ましい。
低濃度アルコール水溶液に含まれるアルコールとしては、水と混和しやすく、また、夾雑物を溶出しやすいという点から、低級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等を用いることができる。なかでも、目的のピロール化合物の溶出性を制御しやすく、また、得られる茶抽出物の飲食品用途における安全性という点で、エタノールまたはn−プロパノールを用いると好ましく、エタノールを用いると特に好ましい。なお、低濃度アルコール水溶液に含まれるアルコールは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、低濃度アルコール水溶液に含まれる水は、特に制限されず、水道水、蒸留水、純水、イオン交換水などを用いることができる。
(3)溶出工程
溶出工程は、上述の洗浄工程の後に行われる。溶出工程では、吸着剤に吸着された成分(香気成分)を95体積%以上の濃度のアルコール水溶液(本明細書中、単に「高濃度アルコール水溶液」とも称する)で溶出させる。かような溶出工程を行うことにより、目的のピロール化合物を高濃度で含む茶抽出物を得ることができる。したがって、香ばしい焙煎感に寄与する効果が高い茶抽出物を得ることができる。
溶出工程において、95体積%未満のアルコール水溶液で溶出させた場合、得られる茶抽出物中における目的のピロール化合物の濃度が低下する。その結果、香ばしい焙煎感が得られにくくなるだけでなく、吸着剤に吸着した目的のピロール化合物を回収するために必要なアルコール水溶液の量が多くなり、作業効率の観点からも好ましくない。
目的のピロール化合物をより高濃度且つ高純度で含む茶抽出物を得る目的から、溶出工程にて用いる高濃度アルコール水溶液中のアルコール濃度は、95〜100体積%であると好ましく、95〜99体積%であるとより好ましい。
高濃度アルコール水溶液を用いて吸着剤に吸着された香気成分を溶出させる方法は公知の手法を用いることができ、例えば、カラム中に充填された吸着剤に高濃度アルコール水溶液を通液させる方法、高濃度アルコール水溶液中に吸着剤を分散させて撹拌した後、濾過等の手段により吸着剤を分離する方法などが用いられる。作業効率の観点からは、前者の方法が好ましく用いられる。
カラムを用いる場合において、高濃度アルコール水溶液の通液速度は特に制限されないが、香気成分を十分に溶出させるという観点から、空間速度(SV)が0.1〜10h−1であると好ましい。この場合、カラム内は常圧であってもよいし、加圧された状態であってもよい。また、通液させる高濃度アルコール水溶液の量についても特に制限されないが、吸着剤に香気成分が残留してしまうことを抑制するという観点から、吸着剤に対して0.1〜100倍(体積)であると好ましく、0.5〜30倍(体積)であるとより好ましい。高濃度アルコール水溶液の通液量を100倍以下、さらには30倍以下とすると、目的のピロール化合物が極めて高濃度に濃縮された茶抽出物を得ることができる。
高濃度アルコール水溶液に含まれるアルコールとしては、水と混和しやすく、また、目的のピロール化合物を溶出しやすいという点から、低級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等を用いることができる。なかでも、目的のピロール化合物の溶出を促進し、また、得られる茶抽出物の飲食品用途における安全性という点で、エタノールまたはn−プロパノールを用いると好ましく、エタノールを用いると特に好ましい。なお、高濃度アルコール水溶液に含まれるアルコールは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、高濃度アルコール水溶液に含まれる水は、特に制限されず、水道水、蒸留水、純水、イオン交換水などを用いることができる。さらに、本発明に用いられる高濃度アルコール水溶液には適宜アルコール以外の有機溶媒を混合してもよい。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類を挙げることができる。
(4)その他の工程
本形態に係る精製された茶抽出物の製造方法は、上記(1)〜(3)の各工程の他、(a)予備抽出物準備工程、(b)濃縮工程等の他の工程を任意に含む。
(a)予備抽出物準備工程
予備抽出物準備工程は、上記(1)吸着工程の前に行われると好ましい。すなわち、上記(1)吸着工程は、以下に詳説する予備抽出物準備工程の後に行われると好ましい。予備抽出物準備工程では、茶(原料茶葉)の含有成分を抽出し、予備抽出物を得る。
予備抽出物を得る方法は、茶(原料茶葉)の含有成分が抽出される方法であれば特に制限されず、例えば、有機溶媒による抽出方法、蒸留による抽出方法等を用いることができる。
有機溶媒による抽出方法において、用いられる有機溶媒は特に制限されないが、目的のピロール化合物の溶出能が高い溶媒であると好ましい。かような溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、アセチルアセトン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。なかでも、目的のピロール化合物の溶出能が特に高いことから、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類を用いると好ましい。なお、上記有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
蒸留による抽出方法において、蒸留の形式は特に制限されず、単蒸留、分留、減圧(または真空)蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留等の形式のいずれを採用してもよい。
なかでも、目的のピロール化合物が水に不溶性であり、高沸点を有することから、予備抽出物を得る際の蒸留は、水蒸気蒸留で行うことが好ましい。すなわち、本工程において、予備抽出物は、水蒸気蒸留法により得ることが好ましい。水蒸気蒸留は、原料茶葉に水蒸気を通気し、水蒸気に伴われて留出してくる香気成分を水蒸気と共に凝縮させる方法である。水蒸気蒸留で予備抽出物を得ることにより、目的のピロール化合物をより低温で留出させることができる他、単蒸留等の手法よりも高効率で目的のピロール化合物を得ることができる。
水蒸気蒸留は、公知の手法を用いて、またはこれを適宜改変して行うことができる。例えば、原料茶葉を仕込んだ水蒸気蒸留釜の底部から水蒸気を吹き込むか、または水蒸気蒸留釜に入っている水を沸騰させ、上部の留出側に接続した冷却器で留出蒸気を冷却する。このような操作により、凝縮物として香気成分を含有する留出液を捕集することができ、当該留出液を予備抽出物として用いることができる。
水蒸気蒸留を行う際、加圧水蒸気蒸留、常圧水蒸気蒸留および減圧水蒸気蒸留のいずれの方法を用いてもよいが、香気成分の損失を低減するという観点から、常圧にて水蒸気蒸留を行うと好ましい。
水蒸気蒸留において、水蒸気の温度、水蒸気の流量(供給量)、蒸留時間、凝縮(冷却)温度、流出液量等は、抽出に用いる原料茶葉の種類に応じて、任意に設定することができる。一例を挙げると、水蒸気の温度は80〜130℃、凝縮(冷却)温度は0〜50℃、留出液量は原料茶葉の総重量に対し、0.1〜5倍等が例示できるが、この範囲に限定されるものではない。
また、水蒸気蒸留法の改良型としての気液向流接触蒸留法を用いてもよい。具体的には、カラム上部に予め調製した原料茶葉のスラリー(原料茶葉と水の懸濁液)を投入する。次にスラリーは回転円錐に入り、円錐の回転による遠心力により薄膜状の液層となり、固定円錐に落下して次の回転円錐に移動する。スラリーはこの移動を繰り返してカラム下部に移動する一方、カラム下部より水蒸気を注入することで水蒸気は香気成分を回収しながらカラム上部に移動し、カラム上部より流出する水蒸気を冷却することで留出液を得ることができる。当該留出液を、本発明に係る吸着工程において予備抽出物として用いることができる。
上記方法を行うことができる装置として、例えば、Flavourtech社製のスピニングコーンカラム(SCC)が挙げられる。装置の操作条件に特に制限はなく、当業者であれば適宜設定することができる。
予備抽出物を調製する際の原料茶葉は、特に制限されないが、例えば、ツバキ科の常緑樹であるチャの加工品、穀物茶、ハーブ茶などが挙げられる。
ツバキ科の常緑樹であるチャ(学名:Camellia sinensis(L)O.Kuntze)の加工品としては、チャの芽、葉、茎などから得られる生葉、製茶された不発酵茶、半発酵茶および発酵茶を例示することができる。
不発酵茶としては緑茶(煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、抹茶、焙じ茶、てん茶など);半発酵茶としてはウーロン茶、包種茶など;発酵茶としては紅茶、プーアール茶など;が挙げられる。
また、穀物茶としては、例えば、麦茶(焙煎大麦)、焙煎麦芽、ハトムギ茶(焙煎ハトムギ)、焙煎玄米、ソバ茶(焙煎ソバの実)、焙煎トウモロコシ、炒りごま、焙煎キヌア、焙煎アマランサス、焙煎キビ、焙煎ヒエ、焙煎アワ、焙煎大豆などが挙げられる。
また、ハーブ茶としては、例えば、ハブ茶、アマチャヅル茶、オオバコ茶、桜茶、甘茶、柿の葉茶、昆布茶、松葉茶、明日葉茶、グァバ茶、ビワの葉茶、アロエ茶、ウコン茶、スギナ茶、紅花茶、サフラン茶、コンフリー茶、クコ茶、ヨモギ茶、イチョウ葉茶、カリン茶、桑の葉茶、ゴボウ茶、タラノキ茶、タンポポ茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、ビワの葉茶、メグスリノキ茶、羅漢果茶などが挙げられる。
なかでも、雑味が少なく、天然感のある優れた焙煎香を有する茶抽出物を得る目的から、原料茶葉は、緑茶、ウーロン茶、紅茶、および穀物茶からなる群から選択される少なくとも一種を含むと好ましい。すなわち、本工程では、緑茶、ウーロン茶、紅茶、および穀物茶からなる群から選択される少なくとも一種を用いて予備抽出物を得ることが好ましい。雑味がより少なく、天然感のある優れた焙煎香を有する茶抽出物を得やすいことから、本工程では、原料茶葉として、焙煎された茶を用いて予備抽出物を得ることが好ましい。ここで、「焙煎された茶」とは、熱媒体として油や水を使わずに、加熱乾燥された茶を意味する。さらに雑味が低減され、香ばしい焙煎感に寄与する効果が高い茶抽出物を得るという観点から、焙じ茶を用いて予備抽出物を得ることが特に好ましい。
原料茶葉の茶期も特に制限されず、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、冬春秋番茶、刈番等を用いることができる。なかでも、雑味が低減され、香ばしい焙煎感に寄与する効果が高い茶抽出物を得るという観点から、一番茶、二番茶を用いると好ましく、一番茶を用いると特に好ましい。
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、テアニン含有量および/またはグルコース含有量が特定の値以下である原料茶葉を用いることにより、香ばしい焙煎感に寄与する効果に優れ、また、雑味の少ない、天然感のある香気を呈する茶抽出物が得られることを見出した。
かような茶抽出物を得るために、具体的には、予備抽出物準備工程において、テアニン含有量が100mg%以下である茶(原料茶葉)を用いて予備抽出物を得ることが好ましい。また、予備抽出物準備工程において、グルコース含有量が100mg%以下である茶を用いて予備抽出物を得ることが好ましい。かような原料茶葉から得られた予備抽出物を用いることにより、目的のピロール化合物を高濃度且つ高純度で含む茶抽出物を得ることができる。その結果、雑味が低減され、香ばしい焙煎感に寄与する効果が高い茶抽出物を得ることができる。
さらに、茶抽出物中に含まれる目的のピロール化合物の純度および濃度をさらに高めるという観点から、予備抽出物準備工程において用いる原料茶葉は、テアニン含有量が80mg%以下であるとより好ましく、50mg%以下であるとさらにより好ましく、30mg%以下であると特に好ましい(下限:0mg%超)。同様の観点から、予備抽出物準備工程において用いる原料茶葉は、グルコース含有量が80mg%以下であるとより好ましく、60mg%以下であるとさらにより好ましく、50mg%以下であると特に好ましい(下限:0mg%超)。なお、上記テアニン含有量およびグルコース含有量は、実施例に記載の方法(「緑茶葉の分析」の項に記載の方法)に測定される値であり、「mg%」とは、茶葉100gあたりに含まれるテアニンまたはグルコースの質量(単位=mg)を指す。
原料茶葉は、粉砕や裁断せずにそのまま使用してもよいし、1mm〜2cm程度の大きさに粉砕または裁断して使用してもよい。このような大きさであれば、目的のピロール化合物の抽出効率の向上が期待できる。ただし、水蒸気蒸留の際の目詰まりを抑制し、また、有機溶媒による抽出の際の抽出液の分離/濾過効率を向上させる観点から、均一な大きさ、粒径となるように粉砕または裁断することが好ましい。
原料茶葉の粉砕または裁断は、公知の方法によって行われる。例えば、ブレンダー、石臼式破砕機、ローラーミル、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミル等の破砕機を使用できる。
(b)濃縮工程
上記(3)溶出工程の後、さらに濃縮工程を行ってもよい。濃縮工程では、溶出工程において得られた茶抽出物から、水、アルコール等を留去し、より高濃度で目的のピロール化合物を含む茶抽出物を得る。濃縮方法は公知の手法を用いることができ、例えば、減圧下、水、アルコール等を留去する方法などが用いられる。ただし、目的のピロール化合物もこれらと共に留去される可能性がある点を考慮すると、濃縮工程は行わず、上記(3)溶出工程で得られた茶抽出物をそのまま使用することが好ましい。
[精製された茶抽出物]
上記製造方法により、香ばしい焙煎感に寄与する効果が高く、また、雑味の少ない、天然感のある香気を付与することができる、精製された茶抽出物(本明細書中、単に「茶抽出物」とも称する)を得ることができる。当該茶抽出物は、上記式(I−1)で表される化合物を高濃度且つ高純度で含むため、雑味が少なく、香ばしい焙煎感に寄与する効果が高い。
具体的には、上記製造方法の好ましい形態として、上記式(I−1)で表される化合物(1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール:「目的のピロール化合物」とも称する)の含有濃度が5.5重量ppm以上である、精製された茶抽出物を得ることができる。このように、本発明に係る製造方法によれば高濃度で目的のピロール化合物を含む茶抽出物が得られる。
すなわち、本発明は、他の形態として、目的のピロール化合物の含有濃度が5.5重量ppm以上である、精製された茶抽出物もまた提供する。
上記茶抽出物中における目的のピロール化合物の含有濃度が5.5重量ppm以上であると、天然感のある、香ばしい焙煎感に寄与する効果が極めて向上する。かような効果をさらに高めるため、目的のピロール化合物の含有濃度は、6重量ppm以上であるとより好ましく、10重量ppm以上であるとさらにより好ましい。一方、目的のピロール化合物の含有濃度の上限について、特に制限されないが、例えば、500重量ppm以下である。なお、上記茶抽出物中に含まれる目的のピロール化合物の濃度は、実施例に記載の方法(「茶抽出物の分析」の項に記載の方法)により測定される。
さらに、本発明に係る製造方法によれば、高純度で目的のピロール化合物を含む茶抽出物が得られる。このとき、精製された茶抽出物中における目的のピロール化合物の純度は高いほど好ましく、雑味の低減された焙煎香を有する茶抽出物が得られる。
本発明に係る茶抽出物の形状(形態)は特に限定されないが、液状、固形状のいずれの形状であってもよい。溶出工程にて得られた茶抽出物(95体積%以上の濃度のアルコール水溶液による溶出液)から、水、アルコール等を留去することにより得られる液体を、本発明の茶抽出物として用いることもできる。また、さらに水、アルコール等を留去し、乾燥することにより得られる、塊状、粒状、または粉状の固形物を、本発明の抽出物として使用することもできる。
ただし、上述のように、目的のピロール化合物が水、アルコール等と共に留去される可能性を考慮すると、溶出工程において得られた液状の茶抽出物をそのまま本発明の茶抽出物として用いることが好ましい。
[香料組成物]
本発明は、他の形態として、上記精製された茶抽出物を含有する、香料組成物もまた提供する。
上述のように、上記製造方法により得られる精製された茶抽出物は、香ばしい焙煎感に寄与し、雑味が少なく、天然感のある香気を有する。したがって、上記茶抽出物を含む香料組成物を飲食品や香粧品に添加することにより、これらに対し、雑味が少なく、天然感のある優れた焙煎香を付与することができる。
本実施形態に係る香料組成物は、上記精製された茶抽出物を有効成分として含む。ここで、上記精製された茶抽出物を「有効成分として含有する」とは、所望の香気(焙煎香)を発揮するのに充分な量で含むことを意味する。したがって、本実施形態に係る香料組成物は、上記精製された茶抽出物のみを含有してもよいが、所望の香気を損なわない限りにおいて、他の香料成分や、溶剤等の他の添加剤などを含んでいてもよい。
他の香料成分としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、例えば、各種の合成香料、天然香料、天然精油、植物エキスなどを挙げることができる。例えば、「特許庁、周知慣用技術集(香料)第II部食品香料、P7−87、平成12年1月14日発行」に記載されている天然精油、天然香料、合成香料を挙げることができる。
このような香料としては、例えば、オシメン、リモネン、β−カリオフィレン、α−ファルネセン、α−またはβ−ピネン、α,β−またはγ−テルピネン、カンフェン、α−セドレン、ミルセン、α−またはβ−フェランドレン、p−サイメン、α−またはβ−カジネン、1−または2−メチルナフタレン、1−イソプロピル−4−メチルベンゼン、1,4−ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジメチルスチレン、t−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、1,1−ジメチルナフタレン、トリメチルジヒドロナフタレン、1,6−ジメチル−4−メチルナフタレン、3−メチル−6−(1−メチルエチリデン)シクロヘキセン、δ−3−カレンなどの炭化水素類;n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、イソアミルアルコール、アミルアルコール、n−ヘキサノール、(Z)−2−ペンテン−1−オール、1−ペンテン−3−オール、(E)−2−ヘキセン−1−オール、(Z)−または(E)−3−ヘキセン−1−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−オクテン−1−オール、1−オクテン−3−オール、1,5−オクタジエン−3−オール、n−ノナノール、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、1−または2−フェニルエチルアルコール、2,4−ジメトキシベンゼンメタノール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、α−テルピネオール、1−または4−テルピネオール、α−またはδ−カジノール、クベノール、β−エデスモール、セドロール、カルベオール、ミルテノール、イソフィトール、3,7−ジメチル−1,5,7−オクタトリエン−3−オール、3,7−ジメチル−1,5−オクタジエン−3,7−ジオール、メントール、4−ペンテン−1−オール、2−メチルブタン−1−オール、1−ヘキセン−3−オール、2−メチル−1−ペンテン−3−オール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、(E)−4−ヘプテノール、2−メチルヘキサノール、2,5−オクタジエノール、(E,E)−3,5−オクタジエン−3−オール、(E)−2−オクテノール、5−ウンデカノール、p−メンタ−1,4−ジエン−7−オール、4−テルピノール、1−テルピネオール、ボルネオール、ジヒドロカルベオール、E,E−フアルネソール、フィトールなどのアルコール類;アセトアルデヒド、プロパナール、イソブタナール、ブタナール、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、(E)−2−ヘプテナール、(Z)−4−ヘプテナール、(E)−2−ペンテナール、(Z)−3−ペンテナール、2−メチルブタナール、ヘキサナール、(E)−2−ヘキセナール、(Z)−3−ヘキセナール、(E,E)−2,4−ヘキサジエナール、(E,Z)−2,4−ヘキサジエナール、ヘプタナール、(E,Z)−2,4−ヘプタジエナール、(E,E)−2,4−ヘプタジエナール、オクタナール、(E)−2−オクテナール、(E,E)−2,4−オクタジエナール、(E,Z)−2,4−オクタジエナール、ノナナール、(E)−2−ノネナール、(E,E)−または(E,Z)−2,4−ノナジエナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、デカナール、(E)−2−デセナール、(E)−4,5−エポキシ−2−デセナール、(E,E)−2,4−デカジエナール、(E)−2−ウンデカナール、サリチルアルデヒド、p−ヒドロキシベンツアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、バニリン、ペリラアルデヒド、シンナミルアルデヒド、サフラナール、ゲラニアール、ネラール、β−シクロシトラール、アニスアルデヒトド、ベンズアルデヒド、2−フェニルブタナール、2−メチル−2−ペンテナール、4−メチル−2−ペンテナール、2−メチルペンタナール、3−メチルペンタナール、2,4−ジメチル−2,4−ヘプタジエナール、2,4,6−デカトリエナール、(E)−2−トリデセナール、4−エチル−7,11−ジメチル−(2E,6,10E)−ドデカトリエナール、ベンズアルデヒド、2−または4−メチルベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒド、4−メチル−2−フェニル−2−ペンテナール、5−メチル−2−フェニル−2−ヘキサナールなどのアルデヒド類。
エチルメチルケトン、アセトイン、ジアセチル、(Z)−または(E)−3−ペンテン−2−オン、4−メチル−3−ペンテン−2−オン、3−ヘキセン−2−オン、2−ヘプタノン、3,5−ヘプタジエン−2−オン、6−メチル−3,5−ヘプタジエン−2−オン、1−オクテン−3−オン、3−オクテン−2−オン、4−オクテン−2−オン、(E,Z)、(E,E)−または(Z,E)−3,5−オクタジエン−2−オン、(Z)−1,5−オクタジエン−3−オン、3−メチル−2,4−ノナンジオン、2−デカノン、2,6,10−トリメチルヘプタデカノン、シクロヘキサノン、シス−ジャスモン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、α−またはβ−ダマセノン、α−またはβ−ダマスコン、4−オキソ−β−イオノン、α−またはβ−イオノン、5,6−エポキシ−β−イオノン、3,4−ジヒドロ−β−イオノン、7,8−ジヒドロ−α−イオノン、5,6−ジヒドロキシ−β−イオノン、ゲラニルアセトン、2,3−ペンタンジオン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、4−メチル−3−ペンテン−2−オン、2−ヘプタノン、(3E,5E)−6−メチルヘプタジエン−2−オン、2−メチル−2−ヘプテン−6−オン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、5−エチル−6−メチル−2−ヘプタノン、2−デカノン、6,10−ジメチル−2−ウンデカノン、メチルテトラデカン−3−オン、6,10,14−トリメチル−2−ペンタデカノン、2,3−ジメチルシクロヘキサノン、3−ヒドロキシシクロヘキサノン、イソホロン、2,6,6−トリメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチル−6−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチル−4−ヒドロキシクロヘキサノン、2−ヒドロキシアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、1,3−または1,4−ジアセチルベンゼン、4−エチルアセトフェノン、3,4−ジメチルアセトフェノン、ベンジルエチルケトン、2−メトキシメチルアセトフェノン、1−(2,4−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン、カンファー、フェンコン、プレゴン、4−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセニル)−3−ブテン−2−オン、1,5,5,9−テトラメチルビシクロ−[4.3.0]−8−ノネン−7−オン、1,2−スレオ−1,2−ジヒドロキシ−β−イオノンなどのケトン類;酢酸、プロピオン酸、吉草酸、4−メチル吉草酸、(E)−2−ヘキセン酸、(Z)−3−ヘキセン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、デセン酸、(E)−2−デセン酸、(Z)−または(E)−ゲラン酸、シトロネリル酸、安息香酸、フェニル酢酸、サリチル酸、ギ酸、2−オキソブタン酸、2−ヒドロキシブタン酸、3−メチル−2−ブテン酸、2−または3−メチルブタン酸、Z−2−ヘキセン酸、E−3−ヘキセン酸、4−メチル−4−ヘプテン酸、2,3−または4−メチルペンタン酸、ヘキサン酸、(2E,4Z)−または(E,4E)−ヘプタジエン酸、Z−2−ヘプテン酸、(Z)−または(E)−4−ヘプテン酸、2,3−または5−メチルヘキサン酸、(E)−2−オクテン酸、(Z)−3−または4−オクテン酸、2−エチルヘキサン酸、2,3−または6−メチルペンタン酸、(E)−4−ノネン酸、7−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、(E)−4−ノネン酸、7−メチルノナン酸、2−エチルヘプタン酸、2−または8−メチルノナン酸、Z−またはE−3−ウンデセン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸などのカルボン酸類。
ギ酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ヘキシル、ギ酸(Z)−3−ヘキセニル、ギ酸(E)−2−ヘキセニル、ギ酸フェニルエチル、ギ酸ゲラニル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メチルブチル、酢酸(Z)−または酢酸(E)−3−ヘキセニル、酢酸(E)−2−ヘキセニル、酢酸ヘキシル、酢酸フェニル、酢酸フェニルエチル、酢酸ベンジル、酢酸ゲラニル、酢酸α−テルピニル、酢酸ネリル、酢酸リナリル、酢酸ボルニル、プロピオン酸(Z)−またはプロピオン酸(E)−3−ヘキセニル、プロピオン酸(E)−ヘキセニル、プロピオン酸ネリル、酪酸メチル、酪酸(Z)−3−ヘキセニル、酪酸(E)−2−ヘキセニル、酪酸ベンジル、酪酸フェニルエチル、酪酸ヘキシル、2−メチル酪酸(Z)−3−ヘキセニル、3−ヒドロキシ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸イソブチル、吉草酸(Z)−3−ヘキセニル、ヘキサン酸(Z)−またはヘキサン酸(E)−2−ペンテニル、ヘキサン酸(E)−2−ヘキセニル、ヘキサン酸(Z)−3−ヘキセニル、ヘキサン酸フェニルエチル、ヘキサン酸ヘキシル(Z)−3−ヘキセン酸メチル、(E)−2−ヘキセン酸メチル、(E)−2−ヘキセン酸(Z)−3−ヘキセニル、(Z)−3−ヘキセン酸(E)−3−ヘキセニル、オクタン酸エチル、オクタン酸ヘキシル、オクタン酸(Z)−3−ヘキセニル、デカン酸エチル、デカン酸プロピル、デカン酸ヘキシル、デカン酸(Z)−3−ヘキセニル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸ヘキシル、安息香酸エチル、安息香酸ヘキシル、安息香酸ベンジル、安息香酸(Z)−3−ヘキセニル、2−メトキシ安息香酸メチル、4−メトキシ安息香酸メチル、ジャスモン酸メチル、エピジャスモン酸メチル、(Z)−ジヒドロジャスモン酸メチル、メチルプロピオン酸ネリル、酢酸1−ヒドロキシ−2−プロパノン、コハク酸メチル、ペンタン酸メチル、オクタン酸メチル、4−オキソノナン酸メチル、酪酸2−ヘキシル、テトラデカン酸メチル、ペンタデカン酸メチル、ペンタデカン酸エチル、11−ヘキサデセン酸メチル、ヘキサデカン酸メチル、ヘキサデカン酸エチル、安息香酸メチルなどのエステル類;δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン、2−ヘキセン−4−オリド、4−メチル−5−ヘキセン−4−オリド、5−オクテン−4−オリド、2−ノネン−4−オリド、7−デセン−4−オリド、ロリオライド、2−メチチルブタノリド、γ−ペンタラクトン、δ−オクタラクトン、3,7−デカジエン−5−オリド、シス−ジャスミンラクトン、γ−デカラクトン、ジヒドロアクチニジオライド、ボボリッド(bovolide)、ジヒドロボボリッド(dihydrobovolide)、4−テトラデカノリドなどのラクトン類;メチルアミン、エチルアミン、ジフェニルアミン、1−エチルピロール、2−ホルミルピロール、1−エチル−2−ホルミルピロール、2−アセチルピロール、2−アセチル−1−エチルピロール、インドール、3−メチルインドール、ピラジン、メチルピラジン、エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2−(2'−フリル)−5−または2−(2'−フリル)−6−メチルピラジン、2,5−ジエチルピラジン、2,6−ジエチルピラジン、トリメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン、2,5−ジエチル−3−メチルピラジン、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、3,5−ジエチル−2−メチルピラジン、テトラメチルピラジン、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタピラジン、6,7−ジヒドロ−2−メチル−5H−シクロペンタピラジン、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタピラジン、2−(2'−フリル)ピラジン、2−メチルピリジン、アセチルピリジン、3−メトキシピリジン、3−メチルブタンニトリル、フェニルニトリル、キノリン、2−メチルキノリン、6−または7−メチルキノリン、2,4−ジメチルキノリン、2,6−ジメチルキノリン、4,8−ジメチルキノリン、ジフェニルアミン、3−プロピルキノリン、2,6−ジメチルピリジン、ピロール、1−メチル−2−ホルミルピロール、1−アセチルピロール、2,5−ジメチルピロール、1−メチル−2−アセチルピロール、1−メチル−プロピオニルピロール、2−アセチル−3−フルフリルピロール、ピリジン、3−または4−メチルピリジン、4−ビニルピリジン、2−または3−エチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2−エチル−6−メチルピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、プロピルピラジン、2,6−ジエチルピラジン、2,4,5−トリメチルオキサゾールなどの含窒素化合物類。
メチルメルカプタン、エタンチオール、1−プロパンチオール、ジメチルスルフィド、チオフェン、テトラハイドロチオフェン、2−メチルチオフェン、3−メチルチオフェン、3−メチルチオフェン−2−アルデヒド、ベンゾチアゾール、2−プロピオニルチオフェン、ビス(2−メチル−3−フリル)ジスルフィド、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオールおよび4−メルカプト−2−ペンタノンなどの含硫黄化合物類;o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、4−ビニルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、チモール、1,3−ジ−tert−ブチル−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、アネトール、グアイアコール、4−エチルグアイアコール、1,4−ジメトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、サフロール、オイゲノール、カルバクロールなどのフェノール類;リナロールオキサイド(E体またはZ体の5員環およびE体またはZ体の6員環)、2−エチルフラン、2−ペンチルフラン、2,3−ジヒドロフラン、フルフラール、5−メチルフルフラール、ソトロン、フラネオール、3,4−ジメチル−5−ペンチル−2(5H)−フラノン、3,4−ジメチル−5−ペンチリデン−2(5H)−フラノン、2−アセチルフラン、クマリン、マルトール、エチルマルトール、テアスピロン、(Z)−または(E)−テアスピロン、(E)−テアスピラン、(E)−6,7−エポキシジヒドロテアスピラン、(E)−6−ヒドロキシジヒドロテアスピラン、フルフリルアルコールなどのフラン類およびピラン類;メース、バイオレット、カシー、ゼラニウム、ナッツメグ、ダバナ、ジャスミン、メリオタス、緑茶、紅茶、ウーロン茶、麦茶、セージ、ヘイ、オークモス、オスマンサス、コリアンダー、クミン、タイム、オールスパイス、ベイ・ローレル、バーチ、カルダモン、セロリ、クローブ、ディル、ジンジャー、フェニグリーク、パセリ、オレガノ、オリガナム、ウインターグリーン、イランイラン、アボカド、アルファルファ、パルマローザなどの天然香料を挙げることができる。なお、上記香料成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
また、他の添加剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、例えば、水、エタノール等の溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等の香料保留剤を挙げることができる。なお、上記他の添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
本実施形態に係る香料組成物において、上記精製された茶抽出物の含有量は特に制限されず、その目的や、使用される飲食品および香粧品等の種類、香料組成物の種類に応じて異なるが、例えば、香料組成物の全重量に対して0.1〜50重量%であると好ましく、0.2〜20重量%であるとより好ましい。0.1重量%以上とすることにより、香ばしい焙煎感に寄与するメタリックな香気を十分に付与することができる。一方、50重量%以下とすることにより、過剰な香気・香味特性が付与されることを抑制(異臭としての香気・香味特性の付与を抑制)でき、焙煎香気が強すぎない天然感に優れた香気を付与することができる。
[飲食品]
本発明は、さらに他の形態として、上記精製された茶抽出物または上記香料組成物を含有する、飲食品もまた提供する。本発明に係る茶抽出物および香料組成物は、焙煎香に大きく寄与するため、これらを含む飲食品は、厚みのある香ばしい豊かな風味や、コクのある旨みや甘みが付与または増強される。また、本発明に係る茶抽出物および香料組成物は、雑味が少なく、天然感のある香気を有する。したがって、当該茶抽出物または香料組成物を含む飲食品には、より雑味が少なく、天然感のある優れた焙煎香が付与される。
よって、本発明のさらに他の形態として、上記精製された茶抽出物または上記香料組成物を飲食品に添加することを含む、飲食品への焙煎香の付与方法が提供される。
本実施形態に係る飲食品としては、特に制限されないが、香ばしい風味が求められる飲食品であることが好ましく、例えば、緑茶(煎茶、焙じ茶、玄米茶等)、紅茶、ウーロン茶、穀物茶(麦茶、トウモロコシ茶等)等の茶飲料、コーヒー(タンポポの根、サクラの木の根、ゴボウ等を焙煎してなる、いわゆる代用コーヒーを含む)、ビール、発泡酒、第3のビール、ビール風味発泡飲料、ノンアルコールビール風味飲料等の飲料;ハム・ソーセージ・ベーコン等の加工食肉、かまぼこ等の水産加工品、肉類および魚介類の燻製品、クッキー・パイ・スナック菓子等の菓子類、チーズ・バター等の乳製品、アーモンド・ピスタチオ等のナッツ類、豆類等、各種インスタント食品などの一般食品類等の食品が挙げられる。本発明に係る茶抽出物または香料組成物を含むこのような飲食品は、当業者に公知の手法を用いて製造されうる。
なかでも、本発明に係る飲食品の好ましい形態は、茶飲料である。茶飲料としては、特に制限されず、ツバキ科の常緑樹であるチャノキの葉や茎を加工したものの他、いわゆる代用茶と呼ばれる、チャノキ以外の植物(具体的には、当該植物の葉、茎、果実、花びら等)を加工したものなどを挙げることができる。
かような茶飲料としては、緑茶(普通煎茶、深蒸し煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、抹茶、焙じ茶、玄米茶、芽茶、茎茶等)、ウーロン茶、紅茶、プーアール茶、麦茶、はと麦茶、トウモロコシ茶、豆茶、ルイボス茶、マテ茶、熊笹茶、竹茶、そば茶、ハブ茶、甜茶、甘茶、甘茶蔓茶、杜仲茶、苦丁茶、ドクダミ茶、紫蘇茶、マタタビ茶、柚子茶、陳皮茶(蜜柑の皮茶)、生姜茶、人参茶等の野菜茶、桂皮茶、桜漬葉茶、昆布茶、梅昆布茶、椎茸茶等のきのこ茶、漢方茶等が挙げられる。また、上記茶のうち、2種以上を混合したブレンド茶であってもよい。なかでも、特に焙煎香が嗜好性に影響を与える茶飲料が好ましく、具体的には、番茶、焙じ茶、玄米茶、ウーロン茶、麦茶、はと麦茶、またはこれらから選択される少なくとも一種を含むブレンド茶が好ましい。
また、茶の発酵の程度は特に制限されず、例えば、緑茶(不発酵茶)、白茶(弱発酵茶)、青茶(半発酵茶)、紅茶(完全発酵茶・全発酵茶)、黄茶(弱後発酵茶)、黒茶(後発酵茶)などのいずれであってもよい。さらに、上記茶は、焙煎されたものであっても、焙煎されていないものであってもよく、また、焙煎されたものにあっては、焙煎の程度も問わない。
本実施形態に係る飲食品において、上記精製された茶抽出物の含有量は特に制限されず、その目的や、飲食品の種類に応じて異なるが、例えば、飲食品の全重量に対して0.1重量ppm〜1重量%であると好ましく、1重量ppm〜0.1重量%(1000重量ppm)であるとより好ましく、5重量ppm〜100重量ppmであると特に好ましい。0.1重量ppm以上とすることにより、香ばしい焙煎香を有する飲食品を提供することができる。一方、1重量%以下とすることにより、過剰な香気・香味特性が付与されることを抑制(異臭としての香気・香味特性の付与を抑制)でき、焙煎香気が強すぎない天然感に優れた香気を有する飲食品を提供することができる。
上記精製された茶抽出物または上記香料組成物を飲食品へ添加する方法は特に制限されず、上記精製された茶抽出物または上記香料組成物を、一括してもしくは別々に、段階的にもしくは連続して加えてもよい。また、混合方法も特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
[香粧品]
本発明は、さらに他の形態として、上記精製された茶抽出物または上記香料組成物を含有する、香粧品もまた提供する。本発明に係る茶抽出物および香料組成物は、雑味が少なく、天然感のある香気を有するため、当該茶抽出物または香料組成物を含む飲食品は、雑味が少なく、より天然感のある優れた焙煎香が付与される。
本実施形態に係る香粧品としては、特に制限されないが、天然感のある焙煎香が求められる香粧品であることが好ましく、例えば、香水;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマード等)等のヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤等の化粧品類;サンタン製品、サンスクリーン製品等の日焼け化粧品類;フェイス用石鹸、ボディ用石鹸、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤等の保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内芳香剤、カーコロンなどの芳香製品を挙げることができる。
また、香粧品の形態(剤型)としては、特に制限されない。例えば、液状、乳液状、クリーム状、ペースト状、固形状、多層状等の種々の形態に適用可能である。これらの他にも、シート剤、スプレー剤、ムース剤としても適用できる。
本発明に係る茶抽出物または香料組成物を含むこのような香粧品は、当業者に公知の手法を用いて製造されうる。
本発明に係る茶抽出物または香料組成物が適切な濃度で、かつ均一に分散されるように、本発明に係る香粧品は、所望の香気を損なわない限りにおいて、他の添加剤を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシル、酢酸フェニルエチル、酪酸フェニルエチル、ギ酸フェニルエチル、フェニル酢酸フェニルエチル、イソ酪酸フェニルエチル、安息香酸ベンジル、プロピオン酸フェニルエチル、酢酸フェニルプロピル等のエステル類;フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド等のアルデヒド類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類;ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸;リナロール、シトロネロール、バクダノール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルジメチルカルビノール、ヒドロキシシトロネラール等のアルコール類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類;インドール、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、リモネンチオール、1−p−メンテン−8−チオール、アントラニル酸ブチル、アントラニル酸シス−3−ヘキセニル、アントラニル酸フェニルエチル、アントラニル酸シンナミル、ジメチルスルフィド、8−メルカプトメントン等の含窒素および/または含硫化合物類;スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類;アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類;ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類;ジャスミンアブソリュート、ローズアブソリュート、チュベローズアブソリュート、バニラアブソリュート等;サンダルウッド油、シダーウッド油、オレンジ油、カミツレ油、ローマカミツレ油、カルダモン油、クラリーセージ油、グレープフルーツ油、チョウジ油、ケイヒ油、コリアンダー油、サイプレス油、ジュニパーベリー油、スペアミント油、セージ油等の精油類;増粘・ゲル化剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;色剤;防腐剤;粉体等を挙げることができる。また、これら以外にも、上記[香料組成物]の項に挙げた他の香料成分もまた、香粧品における他の添加剤として用いることができる。なお、上記他の添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
本実施形態に係る香粧品において、上記精製された茶抽出物の含有量は特に制限されず、その目的や、香粧品の種類に応じて異なるが、例えば、香粧品の全重量に対して0.1重量ppm〜1重量%であると好ましく、1重量ppm〜0.1重量%(1000重量ppm)であるとより好ましく、5重量ppm〜100重量ppmであると特に好ましい。0.1重量ppm以上とすることにより、焙煎香を有する香粧品を提供することができる。一方、1重量%以下とすることにより、過剰な香気・香味特性が付与されることを抑制(異臭としての香気・香味特性の付与を抑制)でき、焙煎香気が強すぎない天然感に優れた香気を有する香粧品を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。また、特記しない限り、各操作は室温(25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行われた。以下では、特記しない限り、「%」、「ppm」および「ppb」は、それぞれ、「重量%」、「重量ppm」および「重量ppb」を意味する。
[実施例1:茶抽出物の製造]
(a)予備抽出物準備工程
緑茶葉100kg(一番茶、焙じ茶)をカラムに充填し、カラム下部より100℃の水蒸気を送り込み水蒸気蒸留を行った。カラム上部より得られる目的物質を含む水蒸気を冷却管(15℃〜20℃)にて凝縮させ、香気成分を含有する水溶液(緑茶アロマ)170kg(緑茶葉に対して170重量%)を得た(以下、「予備抽出物」と称する)。なお、得られた予備抽出物中の1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロールの濃度は、0.023ppmであった。
(b)吸着工程
次いで、予備抽出物の一部20kgに食塩を2kg添加し、よく溶解させ塩析を行った。塩析後の緑茶アロマを、カラムに充填した20mLの合成吸着剤(三菱ケミカル株式会社製 商品名「セパビーズ(登録商標)SP−207」)に流出速度が1kg/hとなるように通液し(SV=50h−1)、香気成分を合成吸着剤に吸着させた。
(c)洗浄工程
次いで、目的物質が吸着された吸着剤に200gの軟水を1kg/hで通液した(SV=50h−1)。その後、連続して10体積%EtOH、25体積%EtOH、50体積%EtOH、75体積%EtOHをそれぞれ20gずつ、流出速度が40g/hとなるように通液し(SV=2h−1)、洗浄を行った。
(d)溶出工程
次いで、20gの95体積%EtOHを、流出速度が40g/hとなるように通液して(SV=2h−1)、茶抽出物を得た。
(茶抽出物の分析)
得られた茶抽出物の各フラクション(Fr.1〜Fr.5)について、1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール(上記式(I−1)で表される化合物)の定量分析を行った結果を、以下の表1に示す。測定は、得られた各フラクションを、メスフラスコを用いてそれぞれ希釈し、0.45μmの目開きのメンブレンフィルタで濾過して得られたサンプルについて、LC−MS/MS(株式会社エービー・サイエックス社製)を用いて多重反応モニタリングを行い、m/z=175→80として、予め合成により得られていた標準品との比較を行うことにより行った。なお、LC−MS/MSの分析条件は、以下の通りとした。
また、得られた茶抽出物の各フラクション(Fr.1〜Fr.5)について、1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール(上記式(I−1)で表される化合物)の純度(GC AREA%)を測定した結果を、以下の表1に示す。測定は、GC/MS(装置名:GC7890A/MSD5975C、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて行った。なお、GC/MSの分析条件は、以下の通りとした。
≪GC/MS分析条件≫
GC/MS測定用GCカラム:ジーエルサイエンス社製InertCap−WAX(長さ60m、内径0.25mm、液層膜厚0.25μm)
(GC条件)
昇温条件:40℃〜230℃、5.0℃/min昇温、20minのホールド
カラム流量:1.0mL/分。
上記表1より、上記方法により得られた茶抽出物は、香気貢献度の高い1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール(上記式(I−1)で表される化合物)を高濃度で含んでいることが分かった。また、これらの各フラクションについて香調を確認したところ、雑味が少なく、香ばしい焙煎香を有していた。
(緑茶葉の分析)
上記実施例1において、予備抽出物を得る際に用いた緑茶葉について、含有成分の分析を以下のように行った。
フードプロセッサーにて粉砕した緑茶葉を、20mLメスフラスコに0.5g精秤した。水を8分目まで入れ、60℃の湯浴に入れ、30分間経過後、5分間の超音波照射を行い、これを2回繰り返した。その後、水でメスアップした。0.45μmの目開きのメンブレンフィルタでろ過後、分析を行った。テアニン含有量の分析は株式会社日立ハイテクサイエンス製のアミノ酸分析装置を、グルコース含有量の分析は株式会社島津製作所製の還元糖分析システムを用いた。なお、それぞれの分析条件は、以下の通りとした。
≪テアニン含有量分析条件≫
株式会社日立ハイテクサイエンス製高速アミノ酸分析計L−8900を用いて分析を行った。ニンヒドリンを用いたポストカラム発色によるHPLC法により、あらかじめ作成したテアニン標品の検量線から濃度を測定した。
≪グルコース含有量分析条件≫
株式会社島津製作所製Prominence還元糖分析システムを用いて分析を行った。カラムはShim−pack ISA−07/S2504(7μm、4.0×250mm)を用い、検出には蛍光検出器を用いた。グルコース標品の検量線を作成し、試料中の含有量を求めた。
試料について、3回繰り返し測定を行い、平均値を求めた。以下の表2にその結果を示す。また、上記実施例1において予備抽出物を得る際に用いたものとは異なる緑茶葉についても同様の分析を行った(参考例1)。また、参考までに、上記の分析手法において水の代わりに50%MeCN水溶液を用いて分析された1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロールの含有量を併せて表2に示す(以下の表2中、単に「ピロール化合物」と記載する)。
上記の表2の結果より、テアニンおよびグルコースの含有量が少ない茶葉、特に、これらの含有量がそれぞれ100mg%以下である茶葉は、香気貢献度の高い1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール(上記式(I−1)で表される化合物)の含有量が比較的多いことから、本発明に係る精製された茶抽出物を得るために特に適していると言える。
[比較例1:茶抽出物の製造]
上記実施例1において、(c)洗浄工程を行わなかったこと以外は、同様にして茶抽出物を得た。
(茶抽出物の分析)
上記実施例1と同様の方法で、得られた茶抽出物の各フラクション(Fr.1〜Fr.4)について、1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール(上記式(I−1)で表される化合物)の濃度および純度(GC AREA%)を測定した結果を、以下の表3に示す。
上記表1と表3との比較より、洗浄工程を経ずに得られた茶抽出物は、香気貢献度の高い1−エチル−2−(1−ピロリルメチル)ピロール(上記式(I−1)で表される化合物)を含んでいるものの、その濃度や純度が、実施例1で得られた茶抽出物と比較して低いという結果が得られた。また、これらの各フラクションについて香調を確認したところ、焙煎香を有しているものの、雑味のある香気を呈していた。
[官能評価]
(1)緑茶飲料への添加
市販の緑茶飲料に、以下の表4に記載の濃度となるように、上記実施例1(Fr.2)および比較例1(Fr.2)で得られた茶抽出物を添加し、評価した。評価基準は以下の通りである(以下、同様);
(評価基準)
−:変化なし(コントロール)
+:天然感のある焙煎香がわずかに感じられる、雑味が出る
++:天然感のある焙煎香が感じられる
+++:天然感に優れた良好な焙煎香が感じられる。
(2)コーヒー飲料への添加
市販のコーヒー飲料に、以下の表5に記載の濃度となるように、上記実施例1および比較例1で得られた茶抽出物を添加し、上記(1)と同様に評価した。
(3)麦茶への添加
市販の麦茶に、以下の表6に記載の濃度となるように、上記実施例1および比較例1で得られた茶抽出物を添加し、上記(1)と同様に評価した。
(4)ノンアルコールビールへの添加
市販のノンアルコールビールに、以下の表7に記載の濃度となるように、上記実施例1および比較例1で得られた茶抽出物を添加し、上記(1)と同様に評価した。
上記表4〜7の結果から、本発明に係る方法により得られる茶抽出物は、香ばしい焙煎感に寄与する効果(香気貢献度)が高く、雑味が少なく、天然感のある香気を飲食品に付与できることが示された。