以下、本発明の実施の形態を説明する。
[トリエンエーテル化合物]
本発明の一形態は、下記式(1):
で表される、化合物である。
本発明者らは、驚くべきことに、果実様の香気や香味に寄与する化合物として従来知られていた特許文献1〜特許文献3に開示された化合物等とは異なり、上記式(1)で表されるように、イソプロペニルオキシ基を有するトリエンエーテル化合物(本明細書中、単に「本発明の一形態に係る化合物」、「トリエンエーテル化合物」などとも称することがある)が、マンゴーの果肉感や、パイナップルの芯の部分をイメージさせるような、独特な甘みや果汁感に寄与する香気(すなわち、繊維感を想起させる香気)を有していることを見出した。したがって、上記式(1)で表されるトリエンエーテル化合物を飲食品や香粧品に添加することにより、これらに対し、上記のような独特な甘みや果汁感のある優れた果実様の香気・香味を付与することができる。
また、本発明者らは、上記式(1)で表される化合物を飲食品や香粧品に添加した際に、従来の香気の特徴がより強調されることも見出した。したがって、上記式(1)で表されるトリエンエーテル化合物を飲食品や香粧品に添加することにより、従来の香気の特徴をより強調することができる。
なお、本明細書中、「果実」とは、マンゴー、パイナップル、マンゴスチン、アセロラ、アボカド、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツ、バナナ、パパイア、りんご、もも、ベリー類(いちご、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリーなど)、ナシ、メロン、さくらんぼ、アセロラ、くり、アーモンド、クルミ、トマト、すいか、かき、うめ、あんず、いちじく、ザクロ、ビワ、キウイ、ドリアン、チェリモヤ、バンレイシ、カムカム、グアバ、フェイジョア、タマリンド、ライチー、ランブータン、リュウガン、アサイー、ココナッツなどを指すが、これらに限定されない。
以下、本発明の一形態に係るトリエンエーテル化合物について説明する。
上記式(1)中、主骨格における二つの炭素−炭素二重結合は、それぞれ、シス型およびトランス型のいずれであってもよい。また、シス型とトランス型とが任意の割合で混合された形態であってもよい。すなわち、上記式(1)は、以下の式(A)〜(D)で表される構造を含む。
上記式(A)で表される化合物(本明細書中、単に「化合物(A)」とも称する)は、(1E,3E)−4−メチル−1−(プロパ−1−エン−2−イロキシ)ヘキサ−1,3,5−トリエンであり;上記式(B)で表される化合物(本明細書中、単に「化合物(B)」とも称する)は、(1Z,3E)−4−メチル−1−(プロパ−1−エン−2−イロキシ)ヘキサ−1,3,5−トリエンであり;上記式(C)で表される化合物(本明細書中、単に「化合物(C)」とも称する)は、(1E,3Z)−4−メチル−1−(プロパ−1−エン−2−イロキシ)ヘキサ−1,3,5−トリエンであり;上記式(D)で表される化合物(本明細書中、単に「化合物(D)」とも称する)は、(1Z,3Z)−4−メチル−1−(プロパ−1−エン−2−イロキシ)ヘキサ−1,3,5−トリエンである。よって、上記式(1)は、単独の化合物(A)〜(D)のみならず、化合物(A)〜(D)のうち、2種以上が混合された形態も包含する。このとき、混合比は特に制限されない。
上記化合物の中でも、マンゴーの果肉感等をイメージさせるような、独特な甘みや果汁感を付与する効果に優れるという観点や、また、製造上の観点から、式(A)および式(B)で表される化合物が好ましい。すなわち、上記化合物の中でも、(1E,3E)体および(1Z,3E)体が好ましい。
すなわち、本発明の一形態に係るトリエンエーテル化合物は、下記式(2):
[上記式(2)中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型およびトランス型の任意の割合の混合物であることを示す]
で表される、化合物であると好ましい。
さらに、香気や製造上の観点から、式(A)で表される化合物、すなわち、(1E,3E)体が特に好ましい。
上記トリエンエーテル化合物の製造方法としては特に制限されず、合成してもよいし、また、天然物(例えば、果実等)から抽出してもよい。
上記トリエンエーテル化合物の合成は、公知の方法を適宜改変し、またこれらを組み合わせて行うことができる。例えば、以下の合成経路を経て合成することができる。
まず、チグリルアルデヒド(i)を出発原料とし、HWE反応(ホーナー・ワズワース・エモンス反応)によりE(トランス)選択的に増炭反応を行い、ジエンエステル(ii)を得る。次いで、還元反応を経てジエンアルコール(iii)を得、さらに酸化反応を経てジエンアルデヒド(ジエナール)(iv)を合成する。そして、ジエンアルデヒド(iv)に対し、エノールエステル化を行うことで、トリエンアセテート(v)を得、さらに、Tebbe試薬等を用いてカルボニル基のエキソメチレン化を行うことで、上記式(2)で表される化合物を得ることができる。なお、上記では式(2)で表される化合物の合成経路を例示したが、上記HWE反応の代わりに、Still−Gennari反応等を用いて、Z(シス)選択的に増炭反応を行ってもよい。これにより、式(1)で表される他のシス−トランス異性体をさらに製造することができる。
天然物から抽出する方法もまた特に制限されず、適当な溶媒を用いて抽出して濃縮することにより、上記トリエンエーテル化合物を得ることができる。
[香料組成物]
本発明は、他の形態として、上記トリエンエーテル化合物を含む香料組成物もまた提供する。すなわち、本発明の他の形態は、下記式(1):
で表される化合物を有効成分として含有する、香料組成物である。なお、香料組成物は、上記式(A)〜(D)で表される化合物(シス−トランス異性体)をそれぞれ単独で含んでいてもよいし、また、混合物(シス−トランス異性体の混合物)として含んでいてもよい。
上述のように、上記式(1)で表される化合物は、マンゴーの果肉感や、パイナップルの芯の部分をイメージさせるような、独特な甘みや果汁感に寄与する香気(すなわち、繊維感を想起させる香気)を有する。したがって、上記式(1)で表される化合物を含む香料組成物(本明細書中、単に「本発明の一形態に係る香料組成物」、「香料組成物」などとも称することがある)を飲食品や香粧品に添加することにより、これらに対し、いわゆる繊維感を想起させる、独特な甘みや果汁感のある香気を付与することができる。また、本発明の一形態に係る香料組成物を飲食品や香粧品に添加することにより、これらの従来有している香気を強調することができる。なお、香料組成物中に含まれる上記トリエンエーテル化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上が混合されていてもよい。
マンゴーの果肉感等をイメージさせるような、独特な甘みや果汁感を付与する効果に優れるという観点や、また、製造上の観点から、本発明の一形態に係る香料組成物は、上記式(2)で表される化合物を含むとより好ましい。
本実施形態に係る香料組成物は、上記トリエンエーテル化合物を有効成分として含む。ここで、上記トリエンエーテル化合物を「有効成分として含む」とは、所望の香気を発揮するのに充分な量で含むことを意味する。したがって、本実施形態に係る香料組成物は、本発明の一形態に係るトリエンエーテル化合物のみを含有してもよいが、所望の香気を損なわない限りにおいて、他の香料成分や、溶剤等の他の添加剤などを含んでいてもよい。
他の香料成分としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、各種の合成香料、天然香料、天然精油、動植物エキスなどを挙げることができる。
例えば、炭化水素化合物としてα−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネン、オシメンなどのモノテルペン;バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン;1,3,5−ウンデカトリエンなどが挙げられる。
アルコール化合物としてブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソアミルアルコール、ラウリルアルコールなどの直鎖または分岐鎖飽和アルカノール;プレノール(3−メチル−2−ブテン−1−オール)、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、2,6−ノナジエノールなどの直鎖不飽和アルコール;リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール;ベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、シンナミックアルコール、フェニルエチルアルコール、イソオイゲノールなどの芳香族アルコールなどが挙げられる。
アルデヒド化合物としてアセトアルデヒド、ヘキサナール、デカナールなどの直鎖・飽和アルデヒド;(E)−2−ヘキセナール、2,4−オクタジエナールなどの直鎖・不飽和アルデヒド;シトロネラール、シトラールなどのテルペンアルデヒド;ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピンなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。
ケトン化合物として2−ヘプタノン、2−ウンデカノン、1−オクテン−3−オンなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン;アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン)、ジアセチル(2,3−ブタンジオン)、2,3−ペンタジオン、マルトール、エチルマルトール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンなどの直鎖および環状ジケトンおよびヒドロキシケトン;カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン;α−イオノン、β−イオノン、β−ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン;ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンなどが挙げられる。
アセタール化合物としてアセトアルデヒドジエチルアセタール、シトラールエチレングリコールアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタールなどが挙げられる。
フラン・エーテル化合物としてフルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピランなどの環状エーテル類などが挙げられる。
エステル化合物として酢酸エチル、酢酸イソアミルなどの脂肪族アルコールの酢酸エステル;酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリルなどのテルペンアルコール酢酸エステル;酪酸エチル、酪酸ブチル、カプロン酸エチル、カプロン酸アリル、カプリル酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、マロン酸ジエチル(ジエチルマロネート)などの脂肪酸と低級アルコールエステル;酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、サリチル酸メチルなどの芳香族エステルなどが挙げられる。
ラクトン化合物としてγ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトンなどの飽和ラクトン;7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどの不飽和ラクトンなどが挙げられる。
酸化合物として酪酸、オクタン酸、ステアリン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸などが挙げられる。
含窒素化合物としてインドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチルなどが挙げられる。
含硫化合物としてメタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。
天然精油としてはスイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
天然香料としてはヒヤシンスアブソリュート、ローズアブソリュート、チュベローズアブソリュート、バニラアブソリュート、ガルバナムレジノイドなどが挙げられる。
また、各種のエキスとしてハーブ・スパイス抽出物、コーヒー・緑茶・紅茶・ウーロン茶抽出物など、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼ・プロテアーゼなどの酵素分解物などが挙げられる。
加えて、他の香料成分として、「特許庁、周知慣用技術集(香料)第II部食品香料、P.7−87、平成12年1月14日発行」に記載されている合成香料、天然精油、天然香料、動植物エキス等を挙げることができる。
なお、上記他の香料成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
また、他の添加剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリアセチン、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等の溶剤または香料保留剤を挙げることができる。なお、上記他の添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
また、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、キラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を添加してもよい。かような乳化剤を添加することにより、本発明の一形態に係る香料組成物は、乳化香料として使用することができる。
さらにまた、アラビアガムやデキストリンなどの乳化香料を添加してもよい。かような乳化香料を添加した後、さらに乾燥することで、本発明の一形態に係る香料組成物は、粉末香料として使用することができる。
本発明の一形態に係る香料組成物の製造方法としては特に制限されず、上記式(1)もしくは上記式(2)で表される化合物と、必要に応じて添加される、上記他の香料成分および/または他の添加剤等とを混合することにより製造できる。このとき、各成分の添加方法や混合方法は特に制限されず、公知の手法を用いることができる。また、各成分の添加順序も特に制限されない。
本発明の一形態に係る香料組成物において、上記式(1)もしくは上記式(2)で表されるトリエンエーテル化合物の含有量は特に制限されず、その目的や、使用される飲食品および香粧品等の種類、香料組成物の種類に応じて異なるが、例えば、香料組成物の全質量に対して1質量ppm〜1質量%であると好ましく、100質量ppm(0.01質量%)〜0.5質量%であるとより好ましく、500質量ppm(0.05質量%)〜0.3質量%であると特に好ましい。1質量ppm以上とすることにより、マンゴーの果肉感や、パイナップルの芯の部分をイメージさせるような、独特な甘みや果汁感に寄与する香気を十分に付与することができる。また、飲食品や香粧品が従来有する香気の特徴を効果的に強調することができる。一方、1質量%以下とすることにより、過剰な香気・香味特性が付与・強調されることを抑制(異臭としての香気・香味特性の付与・強調を抑制)でき、上記のような独特な甘みや果汁感に寄与する香気が強すぎない天然感に優れた香気を付与することができる。なお、香料組成物が上記トリエンエーテル化合物を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であると好ましい。
[飲食品]
本発明のさらに他の形態は、上記式(1)もしくは上記式(2)で表される化合物または上記香料組成物を含有する、飲食品である。なお、飲食品は、上記式(A)〜(D)で表される化合物(シス−トランス異性体)をそれぞれ単独で含んでいてもよいし、また、混合物(シス−トランス異性体の混合物)として含んでいてもよい。
本発明に係るトリエンエーテル化合物および香料組成物は、マンゴーの果肉感や、パイナップルの芯の部分をイメージさせるような、独特な甘みや果汁感に大きく寄与する(すなわち、果実の繊維感を想起させる)ため、これらを含む飲食品は、より天然の果実に近い果肉感、果汁感といった香気・香味が増強される。したがって、当該トリエンエーテル化合物または香料組成物を含む飲食品には、より天然感に優れた果実を想起させる香気・香味が付与される。また、上記トリエンエーテル化合物または香料組成物は、添加される対象物が従来有している香気の特徴を強調することができる。したがって、上記トリエンエーテル化合物または香料組成物を含む飲食品は、これらの従来有している香気が強調される。
よって、本発明のさらに他の形態として、上記式(1)もしくは上記式(2)で表される化合物または上記香料組成物を飲食品に添加することを含む、飲食品の香味改善方法が提供される。
本実施形態に係る飲食品としては、特に制限されないが、果実の果肉感、果汁感を有するか、または、上記式(1)で表される化合物または上記香料組成物の添加により、従来の香気の特徴がより強調される飲食品であることが好ましく、例えば、果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料類;果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料、コーラ飲料などの炭酸飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、ビール、発泡酒、第3のビール、ビール風味発泡飲料などのアルコール飲料類;ノンアルコールビール風味飲料などの飲料類;ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工食肉;かまぼこ等の水産加工品;味噌、醤油、ドレッシング、マヨネーズなどの調味料類;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼きなどに用いられるタレやトマトケチャップなどのソース類;ジャムやマーマレードなどのジャム類;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、ムース、デイリーデザートなどのデザート類およびそれらを製造するためのミックス類;チョコレート、キャラメル、キャンディー、ガム、錠菓、クラッカー、プレッツェル、ビスケット、クッキー、パイ、スナックなどの菓子類およびそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一形態に係るトリエンエーテル化合物または香料組成物を含むこのような飲食品は、当業者に公知の手法を用いて製造されうる。
本実施形態に係る飲食品において、上記式(1)または上記式(2)で表されるトリエンエーテル化合物の含有量は特に制限されず、その目的や、飲食品の種類に応じて異なるが、例えば、飲食品の全質量に対して100質量ppt〜1000質量ppmであると好ましく、0.5質量ppb〜100質量ppmであるとより好ましく、1質量ppb〜10質量ppmであると特に好ましく、10質量ppb〜10質量ppmであると最も好ましい。100質量ppt以上とすることにより、より天然の果実に近い果肉感、果汁感といった香気・香味が増強された飲食品や、従来の香気の特徴がより強調された飲食品を提供することができる。また、飲食品が従来有する香気の特徴を効果的に強調することができる。一方、1000質量ppm以下とすることにより、過剰な香気・香味特性が付与・強調されることを抑制(異臭としての香気・香味特性の付与・強調を抑制)でき、上記のような独特な甘みや果汁感に寄与する香気が強すぎない天然感に優れた香気を付与することができる。なお、飲食品が上記トリエンエーテル化合物を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であると好ましい。
上記式(1)もしくは上記式(2)で表される化合物または上記香料組成物を飲食品へ添加する方法は特に制限されず、上記式(1)で表される化合物または上記香料組成物を、一括してもしくは別々に、段階的にもしくは連続して加えてもよい。また、混合方法も特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
[香粧品]
本発明のさらに他の形態は、上記式(1)もしくは上記式(2)で表される化合物または上記香料組成物を含有する、香粧品である。なお、香粧品は、上記式(A)〜(D)で表される化合物(シス−トランス異性体)をそれぞれ単独で含んでいてもよいし、また、混合物(シス−トランス異性体の混合物)として含んでいてもよい。
本発明に係るトリエンエーテル化合物および香料組成物は、上述のように、果実の果肉感、果汁感を付与することができ、また、添加される対象物が従来有している香気の特徴を強調することができる。よって、本発明の一形態に係るトリエンエーテル化合物および香料組成物を含む香粧品は、より天然感に優れた果実を想起させる香気・香味を有し、また、これらの従来有している香気が強調される。
本実施形態に係る香粧品としては、特に制限されないが、天然感のある果実の果肉感、果汁感が求められる香粧品であることが好ましく、例えば、香水;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマード等)等のヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤等の化粧品類;サンタン製品、サンスクリーン製品等の日焼け化粧品類;フェイス用石鹸、ボディ用石鹸、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤等の保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内芳香剤、カーコロンなどの芳香製品を挙げることができる。
また、香粧品の形態(剤型)としては、特に制限されない。例えば、液状、乳液状、クリーム状、ペースト状、固形状、多層状等の種々の形態に適用可能である。これらの他にも、シート剤、スプレー剤、ムース剤としても適用できる。
本発明に係るトリエンエーテル化合物または香料組成物を含むこのような香粧品は、当業者に公知の手法を用いて製造されうる。
本発明の一形態に係る香粧品は、所望の香気を損なわない限りにおいて、上記トリエンエーテル化合物または香料組成物が適切な濃度で、かつ均一に分散されるように、他の添加剤を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシル、酢酸フェニルエチル、酪酸フェニルエチル、ギ酸フェニルエチル、フェニル酢酸フェニルエチル、イソ酪酸フェニルエチル、安息香酸ベンジル、プロピオン酸フェニルエチル、酢酸フェニルプロピル等のエステル類;フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド等のアルデヒド類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類;ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸;リナロール、シトロネロール、バクダノール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルジメチルカルビノール、ヒドロキシシトロネラール等のアルコール類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類;インドール、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、リモネンチオール、1−p−メンテン−8−チオール、アントラニル酸ブチル、アントラニル酸シス−3−ヘキセニル、アントラニル酸フェニルエチル、アントラニル酸シンナミル、ジメチルスルフィド、8−メルカプトメントン等の含窒素および/または含硫化合物類;スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類;アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類;ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類;増粘・ゲル化剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;色剤;防腐剤;粉体等を挙げることができる。また、これら以外にも、上記[香料組成物]の項に挙げた他の香料成分もまた、香粧品における他の添加剤として用いることができる。なお、上記他の添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
本実施形態に係る香粧品において、上記式(1)または上記式(2)で表されるトリエンエーテル化合物の含有量は特に制限されず、その目的や、香粧品の種類に応じて異なるが、例えば、香粧品の全質量に対して100質量ppt〜1000質量ppmであると好ましく、0.5質量ppb〜100質量ppmであるとより好ましく、1質量ppb〜10質量ppmであると特に好ましく、10質量ppb〜10質量ppmであると最も好ましい。100質量ppt以上とすることにより、より天然の果実に近い果肉感、果汁感といった香気・香味が増強された香粧品や、従来の香気の特徴がより強調された香粧品を提供することができる。また、香粧品が従来有する香気の特徴を効果的に強調することができる。一方、1000質量ppm以下とすることにより、過剰な香気・香味特性が付与・強調されることを抑制(異臭としての香気・香味特性の付与・強調を抑制)でき、上記のような独特な甘みや果汁感に寄与する香気が強すぎない天然感に優れた香気を付与することができる。なお、香粧品が上記トリエンエーテル化合物を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であると好ましい。
以下、本発明を実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。また、特記しない限り、各操作は室温(25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行われた。以下では、特記しない限り、「ppb」、「ppm」および「%」は、それぞれ、「質量ppb」、「質量ppm」および「質量%」を意味する。
なお、以下において、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、13C−NMR)測定には、JEOL RESONANCE社製ECX−400A、400MHzを用いた。また、質量分析スペクトル(MS)測定には、Agilent Technology社製GC7890B、MS5977A(イオン化方式:EI 70eV)を用いた。また、GC測定用カラムとしては、ジーエルサイエンス社製TC−1(長さ30m、内径0.25mm、液層膜厚0.25マイクロメーター)を用いた。なお、以下、E/Z体比は、ガスクロマトグラフィー(装置名:アジレントテクノロジー社製GC−6850、使用カラム:HP−1701、温度範囲70〜260℃;昇温速度3℃/分)により求めた。
[合成例1:化合物(A)〜(B)の合成]
《Ethyl (2E,4E)-4-methylhexadienoate(化合物(ii))の合成》
まず、以下の反応式(1)に従い、Ethyl (2E,4E)-4-methylhexadienoate(化合物(ii))を合成した。
チグリンアルデヒド(i)(16.8g,200mmol)をTHF(400mL)に混和し、−20℃でホスホノ酢酸トリエチル(53.8g,240mmol)、ナトリウムエトキシド(20.4g,300mmol)のエタノール(100mL)溶液を順次添加した。同温にて30分保持したところ原料消失が確認された。その後、反応混合物を冷飽和食塩水中に注ぎ、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥させた。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=25:1(体積比))、黄色油状物として化合物(ii)を得た(収量28.0g,182mmol,収率90.8%(E/Z=98:2))。
得られた化合物について、NMRの結果を以下に示す;
化合物(ii)(E体):1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ (ppm) 1.27(3H, t, J=6.8 Hz), 1.74(3H, s), 1.78(3H, d, J=6.8 Hz), 4.18(2H, q, J=6.8 Hz), 5.75(1H, d, J=15.2 Hz), 5.95(1H, q, J=7.2 Hz), 7.29(1H, d, J=15.6 Hz). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ (ppm) 11.74, 14.32, 14.52, 60.10, 115.24, 133.73, 136.27, 149.45, 167.64。
《(2E,4E)-4-Methylhexadien-1-ol(化合物(iii))の合成》
次に、以下の反応式(2)に従い、(2E,4E)-4-Methylhexadien-1-ol(化合物(iii))を合成した。
ジエンエステル(上記化合物(ii))(15.4g,100mmol)をトルエン(400mL)に混和し、−40℃で水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)(1.0Msoln/トルエン,220mL,220mmol)を30分かけて滴下した。1時間かけて−10℃まで昇温させたが原料が5%残存していたため、さらに水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)(10mL,10mmol)を加え、同温にて0.5時間保持した後に反応終了とした。その後、反応混合物を冷希塩酸中に注ぎ、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水および飽和炭酸水素ナトリウム水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥させた。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=4:1(体積比))、黄色油状物として化合物(iii)を得た(収量10.6g,94.4mmol,収率94.4%)。
得られた化合物について、NMRの結果を以下に示す;
化合物(iii):1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ (ppm) 1.70(3H, d, J=8.0 Hz), 1.71(3H, s), 4.15(2H, d, J=6.0 Hz), 5.54(1H, q, J=6.4 Hz), 5.67(1H, dt, J=6.4, 15.6 Hz), 6.22(1H, d, J=15.6 Hz). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ (ppm) 11.97, 13.78, 63.87, 124.74, 127.42, 133.77, 136.61。
《(2E,4E)-4-Methylhexadienal(化合物(iv))の合成》
次に、以下の反応式(3)に従い、(2E,4E)-4-Methylhexadienal(化合物(iv))を合成した。
ジエンアルコール(上記化合物(iii))(2.24g,20.0mmol)のヘキサン(200mL)溶液に室温下で二酸化マンガン(17.4g,200mmol)を加え、13時間撹拌した。その後、TLCにて原料の消失を確認した。シリカゲル濾過(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3:1(体積比))し、洗浄し、濃縮することで黄色油状物として化合物(iv)を得た(収量1.87g,17.0mmol,収率85.0%)。
得られた化合物について、NMRの結果を以下に示す;
化合物(iv):1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ (ppm) 1.78(3H, s), 1.84(3H, d, J=6.8 Hz), 6.04(1H, d, J=8.0 Hz), 6.08(1H, m), 7.09(1H, d, J=15.6 Hz), 9.53(1H, d, J=8.4 Hz). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz) δ (ppm) 11.90, 14.82, 126.50, 134.34, 138.85, 157.69, 194.22。
《(1E,3E)-4-Methylhexatrienyl acetate(化合物(v))の合成》
次に、以下の反応式(4)に従い、(1E,3E)-4-Methylhexatrienyl acetate(化合物(v))を合成した。
ジエナール(上記化合物(iv))(110mg,1.0mmol)に室温下で酢酸イソプロペニル(0.30g,3.0mmol)、酢酸銅(II)(5mg)、p−トルエンスルホン酸一水和物(10mg)およびトルエン(5mL)を加え、4時間加熱還流させた。その後、原料消失を確認し、反応終了とした。次に、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水中に注ぎ、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥させた。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=15:1(体積比))、淡黄色油状物として化合物(v)を得た(収量120mg,0.789mmol,収率78.9%(E/Z=76:24))。得られた化合物(v)は速やかにTHFで希釈し、次の反応に使用した。
得られた化合物について、NMRおよびMSの結果を以下に示す;
化合物(v)(E体):1H-NMR (C6D6, 400 MHz) δ (ppm) 1.57(3H, s), 1.60(3H, s), 4.95(1H, d, J=10.4 Hz), 5.07(1H, d, J=17.6 Hz), 5.80(1H, d, J=11.6 Hz), 6.30(1H, dd, J=11.6, 12.0 Hz), 6.33(1H, dd, J=10.8, 17.2 Hz), 7.54(1H, d, J=12.4 Hz). 13C-NMR (C6D6, 100 MHz) δ (ppm) 11.81, 19.94, 112.08, 112.22, 126.26, 135.59, 139.59, 141.29, 166.92;MS(EI, 70 eV):152(M+, 55), 110(72), 95(100), 81(42), 67(10), 43(37).
化合物(v)(Z体):MS(EI, 70 eV):152(M+, 54), 110(62), 95(100), 81(51), 67(11), 43(37)。
《(1E,3E)-4-Methyl-1-(prop-1-en-2-yloxy)hexa-1,3,5-triene(化合物(A))および(1Z,3E)-4-Methyl-1-(prop-1-en-2-yloxy)hexa-1,3,5-triene(化合物(B))の合成》
さらに、以下の反応式(5)に従い、上記化合物(A)および上記化合物(B)を合成した。
トリエンアセテート(上記化合物(v))(60.2mg,0.395mmol)のTHF(5g)溶液に−78℃でTebbe試薬(0.5Msoln/トルエン,0.80mL,0.40mmol)を滴下し、10分後に室温まで昇温した。3時間後、反応終了とし、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水中に注ぎ、ヘキサンを用いて分液抽出を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥させた。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し(溶離液:ヘキサン)、無色油状物として化合物(A)(E体)および(B)(Z体)を得た(収量23.7mg,0.158mmol,収率40.0%(E/Z=75:25))。
得られた化合物について、NMRおよびMSの結果を以下に示す;
化合物(A):1H-NMR(C6D6, 400 MHz):1.63(3H, s), 1.67(3H, s), 3.96-3.97(1H, m), 4.10(1H, d, J=2.4 Hz), 4.97(1H, d, J=11.2 Hz), 5.09(1H, d, J=17.2 Hz), 5.90(1H, d, J=11.6 Hz), 6.30(1H, dd, J=11.6, 11.6 Hz), 6.43(1H, dd, J=11.2, 17.2 Hz), 6.54(1H, d, J=12.0 Hz). 13C-NMR(C6D6, 100 MHz):11.83, 19.94, 87.35, 111.31, 111.36, 126.96, 133.58, 141.54, 145.40, 158.62. MS(EI, 70 eV):150(M+, 100), 135(22), 121(6), 109(19), 95(97), 79(38), 67(15), 53(10), 41(19).
化合物(B):MS(EI, 70 eV):150(M+, 77), 135(32), 121(9), 109(19), 95(100), 79(40), 67(16), 53(11), 41(19)。
なお、本合成例にて合成された化合物(A)および化合物(B)の混合物を、以下、「合成例1で得られた化合物」と称する。
[実施例1:香気評価]
上記合成例1で得られた化合物の0.1%トリアセチン溶液について、訓練されたパネリストにより香気評価を行った。香気評価は30mLサンプル瓶に前記0.1%トリアセチン溶液を入れ、瓶口の香気およびその溶液を含浸させたにおい紙により行った。5名のパネリストの香気評価によれば、合成例1で得られた化合物は、上記果実感を想起させ、パイナップルの芯の部分やマンゴーの果肉感をイメージさせる香調を有していた。
[実施例2:パイナップル様調合香料組成物への添加]
まず、パイナップル様の調合香料組成物として、以下の表1に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
次に、上記組成物99.9gに合成例1で得られた化合物0.1gを混合して、新規なパイナップル様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物および該化合物を加えていない上記のパイナップル様調合香料組成物の香気について、専門パネリスト10名により比較した。その結果、専門パネリスト10名の全員が上記化合物を加えた新規調合香料組成物は、パイナップルの芯の部分や果肉感を想起させ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。
[実施例3:ヒヤシンス様調合香料組成物への添加]
まず、ヒヤシンス様の調合香料組成物として、下記の表2に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
次に、上記組成物99.9gに合成例1で得られた化合物0.1gを混合して、新規なヒヤシンス様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物および該化合物を加えていない上記のヒヤシンス様調合香料組成物の香気について、専門パネリスト10名により比較した。その結果、専門パネリスト10名の全員が上記化合物を加えた新規調合香料組成物は、フレッシュ感、天然感あふれる香りが強調された天然ヒヤシンスの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。
[実施例4:マンゴージュースへの添加]
以下の表3に記載の濃度となるように、市販のマンゴージュース(比較品1)に上記合成例1で得られた化合物を添加し、専門パネリスト10名で評価した。評価基準は以下の通りである。結果を以下の表3に示す。
(評価基準)
比較品1と比較して、
0:比較品1と変化なし;
1:比較品1と比べややマンゴーの果肉感を想起させる香気有り;
2:比較品1と比べマンゴーの果肉感を想起させる香気有り;
3:比較品1と比べ強いマンゴーの果肉感を想起させる香気有り。
[実施例5:りんごジュースへの添加]
以下の表4に記載の濃度となるように、市販のりんごジュース(比較品2)に上記合成例1で得られた化合物を添加し、専門パネリスト10名で評価した。評価基準は以下の通りである。結果を以下の表4に示す。
(評価基準)
比較品2と比較して、
0:比較品2と変化なし;
1:比較品2と比べややりんごの果肉感を想起させる香気有り;
2:比較品2と比べりんごの果肉感を想起させる香気有り;
3:比較品2と比べ強いりんごの果肉感を想起させる香気有り。
[実施例6:ノンアルコールビールへの添加]
以下の表5に記載の濃度となるように、市販のノンアルコールビール(比較品3)に上記合成例1で得られた化合物を添加し、専門パネリスト10名で評価した。評価基準は以下の通りである。結果を以下の表5に示す。
(評価基準)
比較品3と比較して、
0:比較品3と変化なし;
1:比較品3と比べややフルーティーな香り有り;
2:比較品3と比べフルーティーな香り有り;
3:比較品3と比べ強いフルーティーな香り有り。
以上の実施例1〜6より、本発明に係る化合物は、パイナップルの芯の部分やマンゴーの果肉感をイメージさせる香調を有しており、独特な甘みや果汁感を付与することができる他、飲食品や香粧品が従来有している香気の特徴をより強調できることが示された。