JP6900128B2 - 4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3h)−フラノンおよびそれを有効成分として含有する香料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノン、およびそれを有効成分として含有する香料組成物に関する。
昨今、飲食品や香粧品における消費者の要求は高度化および多様化しているが、特に、香りに注目が集まっており、香りの特性が製品の訴求力に重要な要素となっている。例えば、配合によって、香味を改善すること、例えば、香りや味に持続性、天然感、ボリューム感などを付与または増強できる香料化合物への要求が高まっている。
これまで、香りや風味を改善可能な様々な香料化合物が提案されてきた。
例えば、本発明に係る化合物が属するフラノン類では、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分とする香料組成物をシトラスやフローラル調の香味の改善に使用すること(特許文献1)、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノンなどによって酸味や酸臭をマスキングすること(特許文献2)、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンなどによって甘味を増強する方法(特許文献3)が提案され、また、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)−フラノンなどが、硬化油風味」に極めて類似した、醸成されたねっとりとした上品な甘さの付与に寄与するとされている(特許文献4)。
しかし、消費者製品によりよい香味を付与して既存製品の香味との差別化を可能とする、新たな香料化合物の開発が期待されて続けている。
特開2017−025182号公報 特開2012−34603号公報 特開平4−8264号公報 国際公開第2008/032852号
本発明の課題は、香味を改善可能な新たな香料化合物を提供することである。
本発明者らは、未知の有用香料化合物を鋭意探索したところ、文献未記載の化合物である、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンが香味の改善に有用であることを見出した。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] 式(1)で表される、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノン。
Figure 0006900128
[2] [1]に記載の式(1)で表される化合物を有効成分として含有する、香料組成物。
[3] [1]に記載の式(1)で表される化合物、または[2]に記載の香料組成物を消費財に配合してなる、消費財。
[4] [1]に記載の式(1)で表される化合物、または[2]に記載の香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味改善方法。
[5] 式(1)で表される化合物を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香気改善方法。
[6] 式(1)で表される4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンと、式(2)で表される4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとの異性体混合物を有効成分として含有する、香料組成物。
Figure 0006900128
本発明によって、香料化合物として使用可能な新規化合物を提供できるようになった。
以下、本発明の前記式(1)の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノン(以下、本発明の式(1)の化合物、式(1)の化合物、本発明の化合物、または3H体と称することもある)およびそれを有効成分として含有する香料組成物について、さらに詳細に説明する。
(本発明の化合物:4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノン)
本発明の式(1)の化合物は、従来文献未記載の新規化合物である。本発明の式(1)の化合物は任意の合成方法によって得ることができるが、例えば、異性体である4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(下記反応式中の式(2)で表される化合物、以下5H体と称することがある)を、下記製造工程で示すように異性化することにより得ることができる。
Figure 0006900128
この異性化反応は、低温下カルボニル化合物(式(2))から生成させたエノラートをRで保護しエノールエーテル(式(3))とし、その後脱保護することにより行うことができる。
式(2)の化合物から式(3)の化合物への変換は、冷温(例えば、−80〜−20℃の間)にて30分〜数時間、溶媒、有機塩基及びシリル系保護試薬存在下でおこなうことができる。溶媒としてはエーテル(例:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルムなど)、または極性溶媒(例:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなど)が挙げられ、特にテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が好適である。式(3)中、保護基Rは特に限定されないが、好適な例としてシリル系保護基を挙げることができる。より具体的には、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基などが挙げられ、これらのうちt−ブチルジメチルシリル基が好ましい。
式(3)の化合物から式(1)の化合物を得るための保護基Rの脱離についても、公知の方法を採用してよいが、例えば、酸の存在下加水分解による脱離や、フッ化物イオンによる脱離が代表例として挙げられ、フッ化物イオンによる脱離が好ましい。フッ化物イオンの供給源としては、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TBAF)、フッ化水素−ピリジンなどが挙げられ、フッ化水素−ピリジンが好ましい。
反応終了後は、常法により洗浄などを行った後脱水し、シリカゲルカラムクロマトグラフィやHPLCなどの分離手段を用いて分離することにより、高純度の式(1)の化合物を得ることができる。
なお、異性化反応の反応基質である4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(5H体)は、特開2017−025182号明細書に記載のように、例えば、Biosci. Biotechnol. Biochem. 2002, 66, pp.135-140に記載の方法に従って合成することができる。
本発明の式(1)の化合物は、それ自体苦さ、グリーン、メタリック、および/またはオイリー様の香気を含む鋭いシトラス様香気を呈し、各種物品に配合して、その香味を改善することができる。配合対象としては特に限定されないが、飲食品、香粧品、医薬衛生品などの消費財を例示できる。さらに、本発明の式(1)の化合物は、各種香料組成物に配合してその香気を改善することもできる。なお、本明細書において、香味とは、物品の匂いを嗅ぐまたは物品を飲食した際にヒトが感じる感覚であって、例えば、嗅覚、味覚、またはこれら両方で感じられる感覚を含む意味で用いるものとする。
(本発明の香料組成物)
本発明の香料化合物は、式(1)の化合物を、有効成分として所定量含むものであって、各種物品に配合することができる。物品の例としては、上述のように、飲食品、香粧品、医薬衛生品などの消費財が挙げられる。本発明の香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
本発明の香料組成物は、各種物品に配合して、その物品の香味を改善する目的で使用できるものである。なお、例えば、本発明の香料組成物が柑橘様香気を呈する場合、飲食品に当該香料組成物を添加することで、香味改善および柑橘様の香りの付与がなされるものであってもよい。
本発明の香料組成物中の本発明の式(1)の化合物の濃度は、香料組成物の配合対象に応じて任意に決定できる。
当該濃度の例として、香料組成物の全体質量に対して、0.01ppm〜10%、好ましくは0.1ppm〜1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm、1%のいずれかとし、上限値を10%、1%、1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、0.1ppmのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。なお、香料組成物の処方や香調にも依存するが、香料組成物中の本発明の式(1)の化合物の濃度が0.01ppm未満の場合は配合効果が低いと感じられる場合があり、10%を超える場合は本発明の式(1)の化合物由来の香りが強く配合対象の香料組成物の香気および/または風味特性に好ましくない変質を与えると感じられる場合がある。なお、本明細書において、「〜」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、濃度は特に断りのない限り質量濃度を表すものとする。
本発明の式(1)の化合物(3H体)は、式(2)の5H体と混合した異性体混合物として使用することもでき、該異性体混合物をそのまま香料組成物として飲食品に配合して香味を改善することができ、または該異性体混合物を含有する香料組成物を調製して、各種消費財に添加することによりその消費財の香味を改善することができる。この異性体混合物における本発明の式(1)の化合物(3H体)と5H体の質量比は特に限定されないが、例えば、3H体:5H体の質量比が、1:10000〜10000:1、1:5000〜5000:1、1〜2000:2000〜1、1:1000〜1000:1、500:1〜1:500、200:1〜1:200、100:1〜1:100、50:1〜1:50、20:1〜1:20、10:1〜1:10、5:1〜1:5、2:1〜1:2、または1:1を例示することができるが、これらに限定されない。
上記式(2)で表される4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンと併用してよい。
また、本発明の香料化合物は、本発明の式(1)の化合物に加えて、さらに他の任意の化合物または成分を含有し得る。
そのような化合物または成分の例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
合成香料化合物のその他の例として、炭化水素化合物としては、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5−ウンデカトリエンなどが挙げられる。
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3−オクタノール、ヘキサノールなどの直鎖・飽和アルカノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、プレノール、2,6−ノナジエノールなどの直鎖・不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ヒドロキシシトロネラールなどの直鎖・飽和アルデヒド、(E)−2−ヘキセナール、2,4−オクタジエナールなどの直鎖・不飽和アルデヒド、シトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p−トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
ケトン化合物としては、2−ヘプタノン、2−ウンデカノン、1−オクテン−3−オン、アセトインなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンなどの直鎖および環状ジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α−イオノン、β−イオノン、β−ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8−シネオールなどが挙げられる。
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2−メチル酪酸エチル、3−メチル酪酸エチル、イソ酪酸2−メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、カプロン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルぺニルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3−メチル−2−フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
ラクトン化合物としては、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
酸化合物としては、酢酸、酪酸、オクタン酸、イソバレル酸、カプロン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3−メチル−2−ブテン−1−チオール、3−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−1−ブタンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、およびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼおよび/またはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
本発明の香料組成物は、本発明の式(1)の化合物を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に配合して調製することができる。
本発明の香料組成物の形態としては、本発明の式(1)の化合物やその他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2−プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
また、乳化製剤とするためには、本発明の式(1)の化合物を水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。本発明の式(1)の化合物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びおよびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本発明の式(1)の化合物1質量部に対し、約0.01〜約100質量部、好ましくは約0.1〜約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶媒液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を配合することができる。
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
本発明の香料組成物はさらに、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノール等の溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等の香料保留剤を含有することができる。
(各種物品への使用)
本発明の式(1)の化合物およびそれを含む香料組成物は、各種物品またはそれに用いる香料組成物に配合して使用することができる。
本発明の式(1)の化合物または香料組成物は、単独で香料組成物または飲食品に配合してもよいし、1種または2種以上の水溶性香料、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識」に記載される香料化合物)、から選択される1種以上と併せて配合してもよい。例えば、上記式(2)で表される4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(5H体)と併用してよい。
本発明の式(1)の化合物または香料組成物を配合可能な飲食品は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウィスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせるもの(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味およびコーラ風味を感じさせるもの(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられる。
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;
缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁や果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、乳酸菌飲料、ワイン、ビール、ノンアルコールビール等の嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、ビールテイスト飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)などのアルコール飲料類;などを挙げることができる。
本発明の式(1)の化合物または香料組成物を配合可能な香粧品は特に限定されないが、例として、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品類;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディー用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内や車内などの芳香消臭剤、ルームフレグランスなどの芳香製品;などを挙げることができる。使用可能な香調も特に限定されず、本発明の式(1)の化合物またはそれを含有する香料組成物によって香味を改善可能な任意の好調であってよいが、例えば、シトラス調、フローラル調、フルーティ調、グリーン調などに好適に使用することができる。
本発明において、飲食品や香粧品などの各種物品中の本発明の式(1)の化合物の濃度は、物品の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。
当該濃度の例として、飲食品であれば、飲食品の全体質量に対して、本発明の式(1)の化合物の濃度として10ppt〜10ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれか、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、本発明の式(1)の化合物の濃度として100ppt〜100ppb、100ppt〜1ppm、1ppb〜100ppb、1ppb〜1ppmから、飲食品の風味特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、飲食品の種類や風味にも依存するが、飲食品中の本発明の式(1)の化合物の濃度が10ppt未満の場合は、風味改善効果が低いと感じられる場合があり、10ppmを超える場合は、化合物そのものの香気が突出して配合対象の飲食品の風味に好ましくない変質を与えると感じられる場合がある。
香粧品であれば、香粧品の全体質量に対して、本発明の式(1)の化合物の濃度として10ppt〜10%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm、1%のいずれか、上限値を10%、1%、1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、香粧品の全体質量に対して、本発明の式(1)の化合物の濃度として、1ppm〜1000ppm、10ppm〜1000ppm、10ppm〜1%、100ppm〜1%の各範囲から、香粧品の香気特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、香粧品の種類や香気にも依存するが、香粧品中の本発明の式(1)の化合物の濃度が10ppt未満の場合は、香気改善効果が低いまたは変化がないと感じられる場合があり、10%を超える場合は、配合対象の香粧品の香気に好ましくない変質を与えると感じられる場合がある。
本発明の化合物によって、香味全体が良好となるが、特に、ミドルからラストにかけてのボリューム感や持続性を向上させることが可能である。例えば、本発明の化合物を飲食品や香粧品等の物品に微量配合することで、飲食品や香粧品等に使用された動植物素材を想起させるような天然感、果汁感、みずみずしさ、ボリューム感、華やかさ、コクなどが増強され、芯のある香りとなり、それが良好なバランスのまま持続可能となるという効果を奏する。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(1)tert−ブチルジメチル(4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2−フラニルオキシ)シランの合成
Figure 0006900128
200mLフラスコに4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(3.00g,18.0mmol)、乾燥テトラヒドロフラン(THF,12mL)を入れ窒素雰囲気下−78℃で撹拌した。ここにリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LHMDS,1.0Mテトラヒドロフラン溶液,27mL,27.0mmol)を5分かけて加え、同温下1時間撹拌した。ついで同温下tert−ブチルジメチルシリルクロリド(TBSCl,4.08g,27.1mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(THF,12mL)溶液を5分かけて加え、その後冷却バスを外し室温まで昇温させ計2時間撹拌した。反応液を20%塩化アンモニウム水(50mL)でクエンチし、ジエチルエーテル(50mL)で抽出した。有機層を20%食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を経て粗精製物(10.70g)を得た。このものを減圧蒸留しtert−ブチルジメチル(4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2−フラニルオキシ)シランを3.63g(収率73.4%)得た。
(2)4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの合成
Figure 0006900128
300mL褐色ビンにtert−ブチルジメチル(4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2−フラニルオキシ)シラン(2.00g,7.13mmol)、乾燥テトラヒドロフラン(140mL)を入れ窒素雰囲気下−25℃で撹拌した。ここにフッ化水素−ピリジン(フッ化水素含量70%,2.0mL,77.0mmol)を5分かけて加え、−25℃から−20℃で9.5時間撹拌した。反応液を飽和重曹水(100mL)でクエンチし、ジエチルエーテル(50mL)で抽出した。有機層を20%食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を経て粗精製物(1.20g)を得た。このものを減圧蒸留し濃縮物を0.54g(収率55.0%,4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノン:4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン=14:1)得た。この濃縮物をHPLCにて分離し、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンを得た。
HPLC条件は以下の通りであった。
カラム:Inertsil diol(250mmL.×4.6mmI.D.,5μm)
移動相:ヘキサン/酢酸エチル=85/15
流量:1mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV248nm
得られた4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノン(本発明の式(1)の化合物)の物性値は以下の通りであった。
H NMR(CDCl,400MHz) δ 1.61(s,3H),1.69(s,3H),2.10−2.20(m,4H),3.08−3.10(m,2H),5.04−5.09(m,1H),6.50−6.52(m,1H).
13C NMR(CDCl,100MHz) δ 17.75,25.65,26.04,26.55,35.15,120.05,122.80,132.95,137.30,176.57.
MS(EI,70eV) m/z 39(9),41(44),67(7),69(100),70(8),97(73),98(16),122(7),138(13),166(30).
また、特開2017−25182に記載の方法に従って、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを合成した。
得られた3H体(本発明の式(1)の化合物、本発明品1)および5H体(比較品1)を、以下の実施例に使用した。
[実施例2] 各種果実調香料化合物への配合効果
(1)レモン様香料組成物
下記表1および2の一般的な処方に従って、レモン様基本調合香料組成物およびグレープ様基本調合香料組成物を調整した。
Figure 0006900128
Figure 0006900128
得られた各基本調合香料組成物に、実施例1で得た3H体(本発明の式(1)の化合物、本発明品1)を0.1%含有するエタノール溶液(本発明品2)、または式(2)の化合物(5H体)を0.1%含有するエタノール溶液(比較品2)を、各化合物濃度が香料組成物全質量に対して1ppmとなるように配合して、本発明品および比較品の調合香料組成物を得た。
基本調合香料組成物、本発明品2および比較品2の香料組成物の香気について、15名のよく訓練された調香師にコメントさせた。その結果を下記表3に示す。
Figure 0006900128
また、上記3H体または5H体の0.1%エタノール溶液を、3H体および5H体が下記表4に記載の濃度となるように上記レモン様基本調合香料組成物およびグレープ様基本調合香料組成物に配合し、基本調合香料組成物を対照品として、様々な3H体または5H体濃度における、当該対照品に比べた本発明品および比較品の調合香料組成物の香気の天然感、持続性、果汁感について官能評価を行った。官能評価では、15名のよく訓練された調香師に「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香気の改善または変質に関してコメントさせた。調香師15名の平均した結果を表4に示す。
Figure 0006900128
表4に示すように、本発明品はいずれも、比較品よりも優れた香気を感じさせるものであり、比較品よりも天然感、ボリューム感、持続性、果汁感などが増強されたものであった。また、5H体とは付与する香気の質が異なっていた。
[実施例3] 各種果実風味ゼリーへの配合効果
下記表5の処方のゼリー液を調整した。
Figure 0006900128
ここに、各化合物が下記表6に記載の濃度となるように3H体(本発明品)または5H体を配合したのち、常法に従ってゼリーを調製して、本発明品および比較品のレモン風味ゼリーおよびグレープ風味ゼリーを得た。そして、実施例2の比較品1(レモン様基本調合香料組成物)または比較品2(グレープ様基本調合香料組成物)の香料化合物を配合したゼリーを比較品として、本発明品の香気の天然感、持続性、果汁感について官能評価を行った。官能評価では、よく訓練された調香師15名に、対照品と比較した天然感、持続性、ボリューム感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香味に関してコメントさせた。調香師15名の平均した結果を下記表6に示す。
Figure 0006900128
表6に示すように、実施例2と同様に、本発明品はいずれも、天然感、ボリューム感、持続性が増強されたものであり、同じ濃度の比較品と比べても、各種果実風味に果汁感、甘さなどを有効に付与できることが確認された。
[実施例4] 紅茶への配合効果
本発明品1(本発明の式(1)の化合物、3H体)および式(2)の化合物(5H体)を、市販の無糖紅茶に下記表7の濃度で配合して、本発明および比較品の飲料を得た。そして、市販の無糖紅茶を対照品として、対照品と比べた本発明品および比較品の飲料の香味についてよく訓練された調香師15名による官能評価を行った。官能評価では、天然感、持続性、ボリューム感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香味に関してコメントさせた。調香師15名の平均した結果を下記表7に示す。
Figure 0006900128
表7に示すように、本発明品はいずれも天然感、持続性、ボリューム感を増強するものであり、低い濃度であっても、同じ濃度の比較品と比べても、紅茶に華やかな甘さのある香り、ふくよかさ、ボリューム感などを有効に付与できることが確認された。
[実施例5] ビール風味飲料への配合効果
市販のノンアルコールビールに、本発明品1(本発明の式(1)の化合物、3H体)および式(2)の化合物(5H体)を下記表7の濃度で配合して、本発明および比較品のノンアルコールビール飲料を得た。そして、市販のノンアルコールビールを対照品として、対照品と比べた本発明品および比較品の飲料の香味についてよく訓練された調香師15名による官能評価を行った。官能評価では、コク、持続性、ボリューム感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香味に関してコメントさせた。なお、ビール感とは、ノンアルコールビールでありながらビールと錯覚してしまうような、ビールに似た風味であるかどうかに関するものとした。調香師15名の平均した結果を下記表8に示す。
Figure 0006900128
表8に示すように、本発明品はいずれもコク、持続性、ボリューム感を増強するものであり、同じ濃度の比較品と比べても、ビール風味飲料に甘さ、コク、ボリューム感などを有効に付与できることが確認された。
[実施例6] コーヒーへの配合効果
市販の容器詰ブラックコーヒーに、本発明品1(本発明の式(1)の化合物、3H体)および式(2)の化合物(5H体)を下記表9の濃度で配合して、本発明および比較品のコーヒー飲料を得た。そして、市販の容器詰ブラックコーヒーを対照品として、対照品と比べた本発明品および比較品の飲料の香味についてよく訓練された調香師15名による官能評価を行った。官能評価では、天然感、持続性、ボリューム感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香味に関してコメントさせた。なお、天然感とは、ここでは缶コーヒーでありながら実際に淹れたコーヒーと感じられるような風味とする。調香師15名の平均した結果を下記表9に示す。
Figure 0006900128
表9に示すように、本発明品はいずれも天然感、持続性、ボリューム感を増強するものであり、同じ濃度の比較品と比べても、コーヒー飲料に甘香ばしい香味、コク、ボリューム感などを有効に付与できることが確認された。
[実施例7] 各種スパイス風味
市販のショウガ風味ドレッシングおよびペッパー風味ドレッシングに、本発明品1(式(1)の化合物、3H体)および式(2)の化合物(5H体)を下記表10の濃度で配合して、本発明および比較品のスパイス風味ドレッシングを得た。そして、市販の各ドレッシングを対照品として、対照品と比べた本発明品および比較品の飲料の香味についてよく訓練された調香師15名による官能評価を行った。官能評価では、天然感、持続性、ボリューム感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香味に関してコメントさせた。調香師15名の平均した結果を下記表10に示す。
Figure 0006900128
表10に示すように、本発明品はいずれも天然感、持続性、ボリューム感を増強するものであり、同じ濃度の比較品と比べても、各種スパイス風味食品にコク、ボリューム感、食べ応え、華やかさなどを有効に付与できることが確認された。
[実施例8]フローラル調香料組成物への配合効果
下記表11の一般的な処方に従って、リリー様基本調合香料組成物を調整した。
Figure 0006900128
得られた基本調合香料組成物に、本発明品1(式(1)の化合物)を0.1%含有するエタノール溶液および/または式(2)の化合物を0.1%含有するエタノール溶液を下記表12に示すように配合して、本発明の式(1)の化合物を含有する香料組成物を調製して、本発明品とした。また、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式(2)の化合物)を0.1%含有するエタノール溶液を下記表3に示すように配合した。
そして、よく訓練された調香師15名に、各基本調合香料組成物を対照品として、本発明品および比較品の香気の天然感、持続性、ボリューム感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香気に関してコメントさせた。調香師15名の平均した結果を表12に示す。
Figure 0006900128
表12に示すように、本発明品はいずれも天然感、持続性、ボリューム感を増強するものであり、同じ濃度の比較品と比べても、生花のようなみずみずしい甘い香りを有効に付与できることが確認された。
[実施例9] シャンプーへの配合効果
下記表13の処方のシャンプー液を調製した。
Figure 0006900128
ここに、実施例8の比較品14(リリー様基本調合香料組成物)、実施例31〜33または比較品15のいずれかを、各化合物濃度が下記表14の濃度となるように配合して、本発明品および比較品のシャンプーを調製した。そして、比較品14を配合したシャンプーを対照品として、本発明品の香気の天然感、持続性、ボリューム感について官能評価を行った。官能評価では、よく訓練された調香師15名に、対照品と比較した天然感、持続性、ボリューム感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香気に関してコメントさせた。調香師15名の平均した結果を下記表14に示す。
Figure 0006900128
シャンプーに賦香した場合であっても、実施例8と同様、本発明品は天然感、持続性、ボリューム感に優れたリリー様香気を感じさせ、特にミドル以降に甘さやグリーン感があり、同じ濃度の比較品と比べてもより優れた香気を感じさせることが確認された。
[実施例10] 消臭芳香剤ゲルへの配合効果
下記表15の処方にて油性ゲル状消臭芳香剤液を調製した。
Figure 0006900128
ここに、実施例2で得た各種レモン様調合香料組成物(本発明品2〜4および比較品1〜2のいずれか)を、各化合物濃度が下記表16に記載の濃度となるように上記油性ゲル状消臭芳香剤液に配合したのち、常法に従って、本発明品または比較品を配合した消臭芳香剤を得た。そして、比較品1を配合した消臭芳香剤を対照品として、本発明および比較品の消臭芳香剤の香りの天然感、ボリューム感、持続性について、実施例9と同様にして15名のよく訓練された調香師による官能評価を行った。15名の調香師の平均的な結果を下記表16に示す。
Figure 0006900128
表16に示すように、本発明品はいずれも天然感、持続性、ボリューム感を増強するものであり、同じ濃度の比較品と比べても、特に天然感、持続性、果汁感などを有効に改善できることが確認された。
以上に示すように、本発明の化合物である4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは、各種香味において優れた改善効果を奏し、かつ、広範な濃度範囲に渡ってボリューム感などの様々な改善効果を奏することが確認された。

Claims (6)

  1. 式(1)で表される、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノン。
    Figure 0006900128
  2. 請求項1に記載の式(1)で表される化合物を有効成分として含有する、香料組成物。
  3. 請求項1に記載の式(1)で表される化合物、または請求項2に記載の香料組成物を消費財に配合してなる、消費財。
  4. 請求項1に記載の式(1)で表される化合物、または請求項2に記載の香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味改善方法。
  5. 式(1)で表される化合物を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香気改善方法。
  6. 式(1)で表される4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンと、式(2)で表される4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとの異性体混合物を有効成分として含有する、香料組成物。
    Figure 0006900128
JP2018156380A 2018-08-23 2018-08-23 4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3h)−フラノンおよびそれを有効成分として含有する香料組成物 Active JP6900128B2 (ja)

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