JP2021036795A - ラクトン化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】香味付与剤として有用なラクトン化合物の提供。【解決手段】式Aで表されるラクトン化合物からなる、香味付与剤。[破線は、すべて単結合か、いずれか1箇所が二重結合でもう1箇所が単結合(Rにおいてはそのほかは単結合)であることを表し、nは1〜4の整数を表す。(但し、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは除く)]【選択図】なし

Description

本発明は、ラクトン化合物、ラクトン化合物からなる香味付与剤、およびラクトン化合物または香味付与剤を有効成分として含有する香料組成物に関する。
昨今、飲食品や香粧品における消費者の要求は高度化および多様化しているが、特に、香りに注目が集まっており、香りの特性が製品の訴求力に重要な要素となっている。例えば、配合によって、香味を改善すること、例えば、香りや味に持続性、天然感、ボリューム感などを付与または増強できる香料化合物への要求が高まっている。
これまで、香りや風味を改善可能な様々な香料化合物が提案されてきた。
例えば、本発明に係る化合物が属するフラノン類では、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分とする香料組成物をシトラスやフローラル調の香味の改善に使用すること(特許文献1)、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノンなどによって酸味や酸臭をマスキングすること(特許文献2)、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンなどによって甘味を増強する方法(特許文献3)が提案され、また、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)−フラノンなどが、硬化油風味」に極めて類似した、醸成されたねっとりとした上品な甘さの付与に寄与するとされている(特許文献4)。
しかし、消費者製品によりよい香味を付与して既存製品の香味との差別化を可能とする、新たな香料化合物の開発が期待されて続けている。
特開2017−025182号公報 特開2012−34603号公報 特開平4−8264号公報 国際公開第2008/032852号
本発明の課題は、香料化合物として有用な新たな化合物を提供することである。
本発明者らは、未知の有用香料化合物を鋭意探索したところ、香料用途が全く知られていなかった各種ラクトン化合物が香料化合物として有用であることを見出した。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] 式Aで表されるラクトン化合物からなる、香味付与剤。
Figure 2021036795
[式中、5員環の破線は、すべて単結合か、いずれか1箇所が二重結合でもう1箇所が単結合であることを表し、Rにおいて、nは1〜4の整数を表し、破線は、すべて単結合であるか、いずれか1箇所または2箇所が二重結合でありそのほかは単結合であることを表す。(ただし、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは除く)]
[2] [1]に記載の香味付与剤を有効成分として含有する、香料組成物。
[3] [1]に記載の香味付与剤または[2]に記載の香料組成物を配合してなる、消費財。
[4] [1]に記載の香味付与剤または[2]に記載の香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味改善方法。
[5] [1]に記載の香味付与剤を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香気改善方法。
[6] 式A’で表されるラクトン化合物。
Figure 2021036795
[式中、5員環の破線はいずれか1箇所が二重結合でありもう1箇所は単結合であることを表し、R’において、n1は1〜4の整数を表し、破線のいずれか1箇所が二重結合でありそのほかは単結合である(ただし、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは除く)、または、5員環の破線はすべて単結合であり、R’において、nは2〜4の整数を表し、破線はすべて単結合である。]
[7] 下記式A1〜A13で表される化合物のいずれかであるラクトン化合物。
Figure 2021036795
本発明によって、香料化合物として新規に使用可能な化合物を提供できるようになった。
以下、本発明について、具体例を挙げつつさらに詳細に説明する。本明細書において、「〜」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、濃度、%は特に断りのない限りそれぞれ質量濃度、質量%を表すものとする。
(式Aで表されるラクトン化合物)
式Aで表されるラクトン化合物は、これまで香料化合物として使用可能なことが全く知られていなかった化合物群であり、本発明者らによって香料化合物としての有用性が初めて確認されたものである。香料化合物の中には構造がわずかに異なる異性体では香りを呈さないものや不快な香りを呈するものもある中で、本発明は、この化合物群においては各類縁体が好ましい香気を呈し、有効量物品に配合することで物品に香味を付与することができる、という驚くべき発見に基づく。
Figure 2021036795
[式中、5員環の破線は、すべて単結合か、いずれか1箇所が二重結合でもう1箇所が単結合であることを表し、Rにおいて、nは1〜4の整数を表し、破線は、すべて単結合であるか、いずれか1箇所または2箇所が二重結合でありそのほかは単結合であることを表す。(ただし、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは除く)]
本明細書において、香味とは、香りによって刺激し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚と味覚などを含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味を付与」とは、前記香味を新たに加える、または増強することを含み、例えば、付与の結果香味が改善されるものであってよい。
(本発明の香味付与剤)
式Aの各ラクトン化合物は、それ自体、シトラス様、ウッディ、紫蘇様、フィッシー(魚様)、ハーバル、スイート、ワキシー、フラワリー、メタリック、パウダリー、コショウ、オイリー、スパイシーおよび/またはファッティ(脂肪様)といった香気を含む特徴的な香気を呈し、香味付与剤として各種物品に配合することで配合対象に香味を付与できる。配合対象としては特に限定されないが、飲食品、香粧品、医薬衛生品などの消費財を例示できる。さらに、本発明の化合物は、各種香料組成物に配合して、当該組成物に香気を付与することもできる。
(式A’で表されるラクトン化合物)
式Aで表されるラクトン化合物の一部である式A’で表されるラクトン化合物は、従来文献未記載の新規化合物である。
Figure 2021036795
[式中、5員環の破線はいずれか1箇所が二重結合でありもう1箇所は単結合であることを表し、R’において、n1は1〜4の整数を表し、破線のいずれか1箇所が二重結合でありそのほかは単結合である(ただし、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは除く)、または、5員環の破線はすべて単結合であり、R’において、nは2〜4の整数を表し、破線はすべて単結合である。]
例えば、式A’で表されるラクトン化合物は、以下の式A1〜A13によって表される化合物であってよい。
Figure 2021036795
(式Aのラクトン化合物の製造例)
式Aのラクトン化合物を得る手段は特に限定されないが、例えば、下記の方法によって得ることができる。
反応経路1
式Aのラクトン化合物のうち、2(5H)−フラノン骨格を有する化合物(例えば、式A−1〜A−3、式A−12、式A−13の各化合物)は、例えば下記に示す反応経路1によって製造できる。
Figure 2021036795
上記反応の工程は、ヒドロキシル基が保護されたプロパルギルアルコール1−1を原料として、任意の塩基とクロロギ酸エチルを用いてエトキシカルボニル化し三重結合を有する不飽和エステル1−2とする。得られた不飽和エステル1−2に対し銅試薬存在下、グリニャール試薬を加えることでZ選択的に共役付加反応させ二重結合を有する不飽和エステル1−3とする。得られた不飽和エステル1−3の脱保護を行うと環化まで進行し式A−1〜A−3、A−12、A−13の各化合物を得ることが出来る。以下、各工程について一般的な製法を述べるが、本発明を限定するものではない。上記反応の出発物質として用いられるヒドロキシル基が保護されたプロパルギルアルコール1−1は、一般的な方法に従って合成されたもの、または市販品のいずれでも良い。保護基としてはエトキシエチル基(EE)やテトラヒドロピラニル基(THP)のようなアセタール系保護基やt−ブチルジメチルシリル基(TBS)のようなシリル系保護基などを挙げることが出来るが、EE基が好ましい。エトキシカルボニル化反応に用いる塩基は特に限定はされないが、n−ブチルリチウムが好ましい。共役付加反応に用いるグリニャール試薬は対応するハロゲン化アルキルとマグネシウムから調製することが出来る。ハロゲン化アルキルは一般的な方法に従って合成されたもの、または市販品のいずれでも良い。用いる銅試薬は臭化銅ジメチルスルフィド錯体、臭化銅、ヨウ化銅などを挙げることが出来るが、臭化銅ジメチルスルフィド錯体が好ましい。脱保護の条件は用いた保護基の種類によって選択する必要がある。EE基のようなアセタール系保護基は一般的には酸加水分解で脱保護されるが特に限定はされない。酸加水分解に用いる酸は塩酸、硫酸などを挙げることが出来るが、塩酸が好ましい。脱保護が進行すると環化まで進行し目的物へと変換される。なおE体では脱保護後に環化が進行せず目的物へと変換されない。
反応経路2
本発明のラクトン化合物のうち、2(5H)−フラノン骨格を有する化合物(例えば式A−4、式A−5の化合物)は、例えば下記に示す反応経路2によって製造することが出来る。
Figure 2021036795
上記反応の工程は、前述の三重結合を有する不飽和エステル2−1を出発原料とし、脱保護を行うことでアルコール2−2とする。得られたアルコール2−2をパラジウム触媒存在下、4−メチル−1−ペンチンとカップリング反応させることで2(5H)−フラノン骨格を有するアルキン2−3とする。このものを還元することで式A−4の化合物、式A−5の化合物を得ることが出来る。以下、各工程について一般的な製法を述べるが、本発明を限定するものではない。上記反応の出発物質として用いられる三重結合を有する不飽和エステル2−1は、前述の方法などによって合成することが出来る。保護基としてはエトキシエチル基(EE)やテトラヒドロピラニル基(THP)のようなアセタール系保護基やt−ブチルジメチルシリル基(TBS)のようなシリル系保護基などを挙げることが出来るが、EE基が好ましい。脱保護条件に関しては前述の通り。カップリング反応に用いるPd触媒は特に限定はされないが酢酸パラジウムが好ましい。還元に関してはアルキン17を選択的にE体もしくはZ体に還元しても良いし、リンドラー還元などの手法でまずZ体に選択的に還元した後にE体へと異性化する方法でも良いが、後者が好ましい。Z体からE体への異性化の方法は特に限定されないがヨウ素による異性化が好ましい。
反応経路3
本発明のラクトン化合物のうち、2(3H)−フラノン骨格を有する化合物(例えば式A−6〜式A−10の化合物)は、上記のように製造した2(5H)−フラノン骨格を有する化合物(例えば式A−1〜式A−5の化合物)を下記の反応経路3のように異性化することで製造することが出来る。
Figure 2021036795
異性化の方法としては塩基を作用させて発生したエノラートを酸で位置選択的にプロトン化する方法や、エノラートをTBS基などでトラップした後に脱保護およびプロトン化する方法などが挙げられるが前者が好ましい。エノラート化するための塩基はリチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)やリチウムジイソプロピルアミド(LDA)などが挙げられるが、LHMDSが好ましい。プロトン化のための酸は酢酸や塩酸や硫酸などが挙げられるが、酢酸が好ましい。
反応経路4
本発明の化合物のうちブチロラクトン骨格を有する化合物(例えば、式A’−1、式A−11の化合物)は、例えば、2(5H)フラノン骨格を有する化合物から、下記に示す反応経路4によって製造することが出来る。
Figure 2021036795
上記反応例の工程は、文献既知の4−(4−methyl−3−pentenyl)−2(5H)−furanoneを原料として、一方の二重結合のみを選択的に還元することで式A’−1の化合物を、両方の二重結合を還元することで式A−11の化合物を得ることが出来る。以下、一般的な製法を述べるが、本発明を限定するものではない。式A’−1の化合物へと導く選択的な還元の方法はヒドリドによる1,4−還元などが挙げられる。さらに具体的にはStryker試薬と呼ばれる銅(I)ヒドリド(トリフェニルホスフィン)ヘキサマーなどが挙げられるが、これに限定されない。式A−11の化合物へと導く還元の方法はパラジウム、ロジウムなどの金属触媒下で水素を添加する方法などが挙げられるが、これに限定されない。なお用いる金属はパラジウムが好ましい。
その他経路
本発明の化合物のうち、式A’−2、式A’−3、または式A’−4で表される各化合物については、文献に記載の方法に従って製造することができる。具体的には、式A’−2の化合物であればJ.Agric.Food Chem.,41,p.2097−2103(1993年)に記載の方法に従って、式A’−3の化合物および式A’−4の化合物であればJ.Chem.Res.(s),3,p.102−103(1986年)に記載の方法に従って製造することができる。
Figure 2021036795
(本発明の香料組成物)
本発明の香料組成物は、式Aのラクトン化合物の1種以上からなる香味付与剤を、有効成分として所定量含むものである。本発明の香料組成物は、各種物品に配合することができる。物品の例としては、上述のように、飲食品、香粧品、医薬衛生品などの消費財が挙げられる。本発明の香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
本発明の香料組成物中の式Aのラクトン化合物の濃度は、香料組成物の配合対象に応じて任意に決定できる。
当該濃度の例として、香料組成物の全体質量に対して、0.01ppm〜10%、好ましくは0.1ppm〜1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm、1%のいずれかとし、上限値を10%、1%、1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、0.1ppmのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。なお、香料組成物の処方や香調にも依存するが、香料組成物中の式Aの化合物の濃度が0.01ppm未満の場合は配合効果が低いと感じられる場合があり、10%を超える場合は式Aの化合物由来の香りが強く配合対象の香料組成物の香気および/または風味特性に好ましくない変質を与えると感じられる場合がある。なお、本明細書において、「〜」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、濃度は特に断りのない限り質量濃度を表すものとする。
また、本発明の香料化合物は、式Aのラクトン化合物に加えて、さらに他の任意の化合物または成分を含有し得る。
そのような化合物または成分の例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
合成香料化合物のその他の例として、炭化水素化合物としては、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5−ウンデカトリエンなどが挙げられる。
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3−オクタノール、ヘキサノールなどの直鎖・飽和アルカノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、プレノール、2,6−ノナジエノールなどの直鎖・不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ヒドロキシシトロネラールなどの直鎖・飽和アルデヒド、(E)−2−ヘキセナール、2,4−オクタジエナールなどの直鎖・不飽和アルデヒド、シトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p−トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
ケトン化合物としては、2−ヘプタノン、2−ウンデカノン、1−オクテン−3−オン、アセトインなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンなどの直鎖および環状ジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α−イオノン、β−イオノン、β−ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8−シネオールなどが挙げられる。
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2−メチル酪酸エチル、3−メチル酪酸エチル、イソ酪酸2−メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、カプロン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルぺニルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3−メチル−2−フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
ラクトン化合物としては、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
酸化合物としては、酢酸、酪酸、オクタン酸、イソバレル酸、カプロン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3−メチル−2−ブテン−1−チオール、3−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−1−ブタンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、およびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼおよび/またはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
本発明の香料組成物は、式Aのラクトン化合物を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に配合して調製することができる。
本発明の香料組成物の形態としては、式Aのラクトン化合物やその他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2−プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
また、乳化製剤とするためには、式Aのラクトン化合物を水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。式Aのラクトン化合物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びおよびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、式Aのラクトン化合物1質量部に対し、約0.01〜約100質量部、好ましくは約0.1〜約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶媒液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を配合することができる。
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
本発明の香料組成物はさらに、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
(各種物品への使用)
式Aのラクトン化合物からなる本発明の香味付与剤、およびそれを含む本発明の香料組成物は、各種物品またはそれに用いる香料組成物に配合して使用することができる。
例えば、式Aのラクトン化合物からなる香味付与剤、およびそれを含有する香料組成物は、それ自体を飲食品に配合してもよいし、1種または2種以上の水溶性香料、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識」に記載される香料化合物)、から選択される1種以上と併せて各種物品に配合してもよい。
式Aのラクトン化合物からなる本発明の香味付与剤、またはそれを含有する本発明の香料組成物を配合可能な飲食品は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウィスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせるもの(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味およびコーラ風味を感じさせるもの(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられる。
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;
缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、乳酸菌飲料などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、ノンアルコールビールやいわゆる「第三のビール」などを含むビールテイスト飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、まあはこれらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
式Aのラクトン化合物からなる本発明の香味付与剤、およびそれを含有する本発明の香料組成物を配合可能な香粧品は特に限定されないが、例として、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品類;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディー用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内や車内などの芳香消臭剤、ルームフレグランスなどの芳香製品;などを挙げることができる。使用可能な香調も特に限定されず、式Aのラクトン化合物またはそれを含有する香料組成物によって香味を改善可能な任意の好調であってよいが、例えば、シトラス調、フローラル調、フルーティ調、グリーン調などに好適に使用することができる。
本発明において、飲食品や香粧品などの各種物品中の式Aのラクトン化合物の濃度は、物品の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。
当該濃度の例として、飲食品であれば、飲食品の全体質量に対して、式Aのラクトン化合物の濃度として10ppt〜10ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれか、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、本発明の式Aの化合物の濃度として100ppt〜100ppb、100ppt〜1ppm、1ppb〜100ppb、1ppb〜1ppm、10ppb〜1ppm、10ppb〜100ppbから、飲食品の風味特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、飲食品の種類や風味にも依存するが、飲食品中の式Aのラクトン化合物の濃度が10ppt未満の場合は、風味改善効果が低いと感じられる場合があり、10ppmを超える場合は、化合物そのものの香気が突出して配合対象の飲食品の風味に好ましくない変質を与えると感じられる場合がある。
香粧品であれば、香粧品の全体質量に対して、本発明の式Aのラクトン化合物の濃度として10ppt〜10%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm、1%のいずれか、上限値を10%、1%、1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、香粧品の全体質量に対して、本発明の式Aのラクトン化合物の濃度として、1ppm〜1000ppm、10ppm〜1000ppm、10ppm〜1%、100ppm〜1%の各範囲から、香粧品の香気特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、香粧品の種類や香気にも依存するが、香粧品中の本発明の式Aのラクトン化合物の濃度が10ppt未満の場合は、香気改善効果が低いまたは変化がないと感じられる場合があり、10%を超える場合は、配合対象の香粧品の香気に好ましくない変質を与えると感じられる場合がある。
本発明のラクトン化合物によって、各種物品に良好な香気または風味を付与することができ、例えば、ミドルからラストのボリューム感や余韻を増強することができる。
例えば、本発明の化合物を飲食品や香粧品などの物品に微量配合することで、飲食品や香粧品などに使用された動植物素材を想起させるような天然感、果汁感、みずみずしさ、ボリューム感、華やかさ、コクなどが増強され、芯のある香りとなり、それが良好なバランスのまま持続可能となるという効果を奏する。より具体的には、果実飲料であれば、果汁感、果皮感(苦さ、渋さ、ワックス感など)などを付与することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(1)式A−1の4−(4−メチル−4−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの合成
まず、Eur.J.Org.Chem.2007,14,2257−2267頁に記載の方法に従って5−ブロモ−2−メチル−1−ペンテンを合成し、次いで下記の反応経路の通りに合成を行った。
Figure 2021036795
10Lの四つ口フラスコに3−(1’−エトキシエトキシ)−1−プロピン((1)−1)(200g、1.56mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)(3560g)を入れ、窒素雰囲気下−78℃で撹拌した。ここにn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液、1080mL、1.73mol)を滴下し、同温下1時間撹拌した。ついでクロロギ酸エチル(186g、1.71mol)を滴下し同温下30分撹拌した後に、5℃まで昇温し45分撹拌した。得られた反応液にエタノール(36g)を入れ、その後30%塩化アンモニウム水溶液(3000g)を入れた。有機層を分離後、(5%ソーダ灰+15%食塩)水(2000g)で洗浄した。このものを硫酸マグネシウム乾燥、濃縮し粗精製物(391g)を得た。このものを蒸留精製し(沸点93〜96℃/0.13kPa)、エチル 4−(1’−エトキシエトキシ)ブチ−2−ノエート((1)−2)を250g(収率80%)得た。
100mL二つ口フラスコにマグネシウム(1.43g、58.8mmol)、触媒量のヨウ素を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(30mL)を入れた。ここに5−ブロモ−2−メチル−1−ペンテン(9.17g、56.2mmol)のうちの少量を入れ激しく撹拌したところ5分でヨウ素の色が消え、かつ発熱も観測された。反応液を氷水浴で冷却しながら30℃以下で残りの5−ブロモ−2−メチル−1−ペンテンを15分かけて滴下し、その後室温で2時間撹拌しグリニャール試薬を調製した。
300mLの三つ口フラスコにCuBr・MeS(11.55g、56.2mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(20mL)を入れ−45℃で撹拌した。ここに先に調製したグリニャール試薬を−45℃以下で10分かけて滴下し、−60℃から−45℃で50分撹拌した。ここに化合物エチル 4−(1’−エトキシエトキシ)ブチ−2−ノエート((1)−2)(2.50g、12.5mmol)の脱水THF(5mL)溶液を−50℃以下で5分かけて滴下し、−78℃で75分間撹拌した。
反応液に−55℃以下でエタノール(10mL)を入れ、−20℃で10%塩化アンモニウム水溶液(100g)を入れた。反応液をヘキサン(80mL)で抽出後、(10%ソーダ灰+10%食塩)水(100g)、飽和食塩水(100mL)で順次洗浄した。このものをNaSO乾燥、濃縮し粗精製物(4.69g)を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:50g、ヘキサン:酢酸エチル=50:1→40:1)で精製し、エチル(2Z)−3−[(1’−エトキシエトキシ)メチル]−7−メチルオクタ−2,7−ジエノエート((1)−3)を2.91g(収率82%)得た。
次いで、50mL二つ口フラスコに得られたエチル(2Z)−3−[(1’−エトキシエトキシ)メチル]−7−メチルオクタ−2,7−ジエノエート((1)−3)(2.80g、9.85mmol)、THF(12.5mL)、2M HCl(12.90mL、25.8mmol)を入れ室温で1.5時間撹拌した。
反応液に飽和ソーダ灰水(50mL)を入れ、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄後、NaSO乾燥、濃縮し粗精製物(1.66g)を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:15g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1→10:1→2:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜240℃/0.27kPa)にて精製し目的物の4−(4−メチル−4−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式A−1の化合物)を1.40g(収率86%)得た。
得られた式A−1の4−(4−メチル−4−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.73(s,3H),1.75(tt,J=7.2,7.6Hz,2H),2.10(t,J=7.6Hz,2H),2.40(t,J=7.2Hz,2H),4.70(br s,1H),4.74(br d,2H),4.78(br s,1H),5.87(br t,1 H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ 22.1,24.9,27.9,37.0,73.0,111.1,115.5,144.2,170.2,174.1.
IR(液膜法):2941,1782,1749,1639,1451,1173,1130,1031,889cm−1
DART−TOFMS:m/z[MH] calcd.for C1015 167.1067,found 167.1075.
(2)式A−2の(2E)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび式A−3の(2Z)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの合成
まず、1−クロロ−4−メチル−2−ペンテンを、Angew.Chem.Int.Ed.2011,50,11257−11260頁に記載の方法に従って合成した。次いで、得られた1−クロロ−4−メチル−2−ペンテンと、上記実施例1(1)で得られたエチル 4−(1’−エトキシエトキシ)ブチ−2−ノエート(下記反応経路の(2)−1)とを用いて、下記の反応経路の通りに式A−2および式A−3のラクトン化合物を合成した。
Figure 2021036795
50mL三つ口フラスコにマグネシウム(206mg、8.47mmol)、触媒量のヨウ素を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(1.1mL)を入れた。ここに1−クロロ−4−メチル−2−ペンテン(888mg、7.49mmol、Z:E=91:9)の脱水THF溶液(17mL)のうちの少量を入れ室温で激しく撹拌したところ20分でヨウ素の色が消えた(発熱なし)。反応液を氷水浴で冷却しながら2℃で残りの1−クロロ−4−メチル−2−ペンテンの溶液を1.5時間かけて滴下し、滴下後2℃で1時間撹拌することでグリニャール試薬を調製した。100mL三つ口フラスコにCuBr・MeS(1.54g、7.49mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(8.0mL)を入れ−60℃で撹拌した。ここに先に調製したグリニャール試薬を−60℃以下で10分かけて滴下し、同温下45分撹拌した。ここにエチル 4−(1’−エトキシエトキシ)ブチ−2−ノエート((2)−1)(750mg,3.75mmol)の脱水THF(4.0mL)溶液を5分かけて滴下し、−78℃で40分撹拌した。反応液に−60℃以下でエタノール(5.0mL)を入れ、室温まで昇温後10%塩化アンモニウム水溶液(50mL)を入れた。反応液をEtO(50mL)で抽出後、(10%ソーダ灰+10%食塩)水(50mL)、飽和食塩水(50mL)で順次洗浄した。このものをMgSO乾燥、濃縮し粗精製物(1.16g)を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:15g、ヘキサン:酢酸エチル=50:1)にて精製しエチル(2Z,5E)−3−[(1’−エトキシエトキシ)メチル]−7−メチルオクタ−2,5−ジエノエート((2)−2)を異性体混合物として957mg(収率94%、Z:E=15:85)得た。反応は異性化を伴って進行した。
次いで、100mL二つ口フラスコに得られた異性体混合物((2)−2)(400mg,1.48mmol)、脱水THF(4.0mL)、1M HCl(4.0mL、4.00mmol)を入れ室温で50分撹拌した。反応液に飽和重曹水(20mL)を入れ、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄後、MgSO乾燥、濃縮し粗精製物(231mg)を得た。このものを硝酸銀を10%担持させたフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて2回精製し(1回目:AgNO−SiO:40g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1→12:1→5:1、2回目:AgNO−SiO:10g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1→12:1→2:1)、目的物である(2E)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式A−2の化合物)を183mg(収率74%)、(2Z)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式A−3の化合物)を23.3mg(収率10%)得た。目的物(2E)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式A−2の化合物)はさらにクーゲルロール(オーブン設定:〜240℃/0.27kPa)で精製し178mg(収率72%)を得た。(2Z)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式A−3の化合物)は数ロット分をまとめて同様の条件にてクーゲルロールで精製し、精製物を得た。
得られた式A−2の(2E)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):1.00(d,J=6.8Hz,6H),2.31(dq,J=6.8,6.8Hz,1H),3.09(d,J=6.8Hz,2H),4.73(br d,2H),5.39(ddt,J=1.2,15.2,6.8Hz,1H),5.59(dd,J=6.8,15.2Hz,1H),5.84(br t,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCL):δ22.2(2C),31.0,31.8,72.8,115.7,119.9,142.6,169.4,173.9.
IR(液膜法):2960,2930,2870,1781,1748,1637,1466,1449,1167,1129,1030,975,886cm−1
DART−TOFMS:m/z「MH」 calcd. for C1015 167.1067,found 167.1071.
得られた式A−3の(2Z)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.98(d,J=6.8Hz,6H),2.55(m,1H),3.17(d,J=7.2Hz,2H),4.75(br s,2H),5.31(dt,J=10.4,7.2Hz,1H),5.48(dd,J=10.4,10.4Hz,1H),5.86(br t,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.8(2C),26.7,26.8,72.8,115.7,119.5,141.7,169.2,173.9.
IR(液膜法):2960,2870,1781,1750,1636,1465,1341,1166,1124,1037,887,843,772,707cm−1
DART−TOFMS:m/z「MH」 calcd.for C1015 167.1067,found 167.1072.
(3)式A−4の(1E)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび式A−5の(1Z)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの合成
下記反応経路の出発物質(3)−1を、J.Org.Chem.2006,71,5830−5833頁に記載の方法で合成した。その後は、下記反応経路の通りに合成を行い、式A−4および式A−5のラクトン化合物を得た。
Figure 2021036795
200mL三つ口フラスコに酢酸パラジウム(131mg、583μmol)、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン(259mg、585μmol)を入れ、アルゴン雰囲気下室温で撹拌した。ここに脱水THF(30mL)を加え、その後(n−CSnOAc(1.36g、3.90mmol)を入れ、再度アルゴン雰囲気下とした。ここにエチル 4−ヒドロキシブチ−2−ノエート((3)−1)(2.50g、19.5mmol)および4−メチル−1−ペンチン(1.96g、23.9mmol)の脱水THF(10mL)溶液を入れ室温で22時間撹拌した。反応液を濃縮し粗精製物(5.45g)を得た。このものをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製 (SiO:130g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1→10:1)し、4−(4−メチル−1−ペンチニル)−2(5H)−フラノン((3)−2)を2.32g(収率73%)得た。
50mLナスフラスコに得られた化合物(3)−2(300mg、1.83mmol)、1−ヘキセン(7.2mL)、シクロヘキセン(1.8mL)を入れアルゴン雰囲気下とした。ここにリンドラー触媒(7.2mg、7.2質量%)を入れ水素雰囲気下とし室温で5時間撹拌した。反応液をセライトろ過後、ろ液を濃縮し粗精製物(311mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(SiO:40g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜240℃/0.27kPa)にて精製し、目的物(1Z)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式A−5の化合物)を245mg(収率81%)得た。
得られた式A−5の(1Z)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.94(d,J=6.8Hz,6H),1.75(m,1H),2.08−2.13(m,2H),4.94(br d,2H),5.94(s,1H),6.04(dt,J=11.6,7.6Hz,1H),6.15(d,J=11.6Hz,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.3(2C),28.6,39.2,72.7,116.3,119.5,142.6,161.8,173.9.
IR(液膜法):3021,2959,2933,2897,2872,1783,1751,1637,1608,1466,1325,1175,1153,1130,1037,890,854,760,705cm−1
DART−TOFMS:m/z「MH」 calcd.for C1015 167.1067,found 167.1078.
この式A−5の(1Z)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを以下のように異性化して、式A−4の(1E)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを得た。
50mLナスフラスコに式7の(1Z)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(800mg、4.81mmol)、脱水トルエン(80mL)、ヨウ素(127mg、500μmol)を入れアルゴン雰囲気下とし24時間加熱還流した。反応液を濃縮し粗精製物(994mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(SiO:80g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜250℃/0.27kPa)にて精製し、(1E)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(式A−4の化合物)を54mg(収率94%)得た。
得られた式A−4の(1E)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(5H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.91 (d,J=6.8 Hz,6H),1.73(m,1H),2.08−2.13(m,2H),4.95(br d,2H),5.82(s,1H),6.10(dt,J=16.0,7.6Hz,1H),6.37(d,J=16.0 Hz,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.3(2C),28.1,42.4,70.5,113.9,122.5,140.6,162.4,174.2.
Mp:31〜34℃
IR(液膜法):2959,2933,2873,1780,1749,1652,1598,1467,1326,1153,1035,1001,972,889cm−1
DART−TOFMS:m/z「MH」 calcd.for C1015 167.1067,found 167.1069.
(4)式A−6の4−(4−メチル−4−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの合成
以下の反応経路の通り、実施例1(1)で得た式A−1のラクトン化合物を異性化して、式A−6のラクトン化合物を合成した。
Figure 2021036795
20mL二つ口フラスコに式A−1の化合物(300mg,1.80mmol)、脱水THF(4.5mL)を入れアルゴン雰囲気下−78℃で撹拌した。ここにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.43mL,2.88mmol)を同温下入れ、10分撹拌後にリチウム ビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M THF溶液,2.70mL,2.70mmol)を加え、同温下1時間撹拌した。反応液に25%酢酸のTHF溶液(4.5mL)を同温下加え5分撹拌した。その後、昇温し1M塩酸(15mL)を加えた。このものを酢酸エチル(30mL)で抽出し、得られた有機層を飽和食塩水(30mL)、飽和重曹水(30mL)、飽和食塩水(30mL)の順で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を経て粗精製物(307mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:3g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1→2:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜210℃/0.27kPa)にて精製し、目的物である式A−6の化合物を256mg(収率85%)得た。
得られた式A−6の4−(4−メチル−4−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.60(tt,J=7.6,7.6Hz,2H),1.72(s,3H),2.04(t,J=7.6Hz,2H),2.13(t,J=7.6Hz,2H),3.09(br d,2H),4.68(s,1H),4.75(s,1H),6.52(br t,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.2,25.2,25.9,35.0,37.1,110.6,120.0,137.3,144.8,176.4.
IR(液膜法):3120,3074,2967,2937,2866,1794,1749,1649,1456,1392,1375,1275,1125,1056,889,825,560cm−1
DART−TOFMS: m/z[MH] calcd.for C1015 167.1067,found 167.1082.
(5)式A−7の(2E)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの合成
以下の反応経路の通り、実施例1(2)で得た式A−2のラクトン化合物を異性化して、式A−7のラクトン化合物を合成した。
Figure 2021036795
20mL二つ口フラスコに実施例1(2)で得た式A−2の化合物(271mg,1.63mmol)、脱水THF(4.1mL)を入れアルゴン雰囲気下−78℃で撹拌した。ここにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.39mL,2.61mmol)を同温下入れ、10分撹拌後にリチウム ビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M THF溶液,2.45mL,2.45mmol)を加え、同温下1時間撹拌した。反応液に25%酢酸のTHF溶液(4.1mL)を同温下加え5分撹拌した。その後、昇温し1M塩酸(15mL)を加えた。このものを酢酸エチル(30mL)で抽出し、得られた有機層を飽和食塩水(30mL)、飽和重曹水(30mL)、飽和食塩水(30mL)の順で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を経て粗精製物(252mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:3g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜210℃/0.27kPa)にて精製し、目的物である式A−7の化合物を180mg(収率66%)得た。
得られた式A−7の(2E)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.98(d,J=6.4Hz,6H),2.28 dq,J=6.4,6.4 Hz,1H),2.80(d,J=6.8Hz,2H),3.08(br d,2H),5.31(ddt,J=0.8,15.2,6.8Hz,1H),5.51(dd,J=6.4,15.2Hz,1H),6.51(br t,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.4(2C),29.6,30.9,35.0,119.5,121.7,137.4,141.0,176.5.
IR(液膜法):2959,2930,2871,1802,1466,1392,1275,1127,1056,973,824,559cm−1
DART−TOFMS:m/z[MH] calcd. for C1015 167.1067,found 167.1071.
(6)式A−8の(2Z)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの合成
以下の反応経路の通り、実施例1(2)で得た式A−3のラクトン化合物を異性化して、式A−8のラクトン化合物を合成した。
Figure 2021036795
20mL二つ口フラスコに式A−3の化合物(128mg,770μmol)、脱水THF(1.9mL)を入れアルゴン雰囲気下−78℃で撹拌した。ここにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.19mL,1.27mmol)を同温下入れ、10分撹拌後にリチウム ビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M THF溶液,1.16mL,1.16mmol)を加え、同温下1時間撹拌した。反応液に25%酢酸のTHF溶液(1.9mL)を同温下加え5分撹拌した。その後、昇温し1M塩酸(15mL)を加えた。このものを酢酸エチル(30mL)で抽出し、得られた有機層を飽和食塩水(30mL)、飽和重曹水(30mL)、飽和食塩水(30mL)の順で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を経て粗精製物(123mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:2g,ヘキサン:酢酸エチル=15:1→10:1→5:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜210℃/0.27kPa)にて精製し、目的物の式A−8の化合物を63.5mg(収率50%)得た。
得られた式A−8の(2Z)−4−(4−メチル−2−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.97(d,J=6.8Hz,6H),2.58(m,1H),2.87(br dt,2H),3.09(br,2H),5.22(ddt,J=0.8,10.8,7.6Hz,1H),5.38(m,1H),6.51(br,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ23.0(2C),24.6,26.5,35.1,119.2,121.4,137.5,140.5,176.3.
IR(液膜法):3007,2959,2929,2870,1801,1465,1269,1129,1056,825,777,726,559cm−1
DART−TOFMS:m/z[MH] calcd.for C1015 167.1067,found 167.1072.
(7)式A−9の(1E)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの合成
以下の反応経路の通り、実施例1(3)で得た式A−4のラクトン化合物を異性化して、式A−9のラクトン化合物を合成した。
Figure 2021036795
20mL二つ口フラスコに実施例(3)で得た式A−4の化合物(300mg,1.80mmol)、脱水THF(4.5mL)を入れアルゴン雰囲気下−78℃で撹拌した。ここにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.43mL,2.88mmol)を同温下入れ、10分撹拌後にリチウム ビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M THF溶液,2.70mL,2.70mmol)を加え、同温下1時間撹拌した。反応液に25%酢酸のTHF溶液(4.5mL)を同温下加え5分撹拌した。その後、昇温し1M塩酸(15mL)を加えた。このものを酢酸エチル(30mL)で抽出し、得られた有機層を飽和食塩水(30mL)、飽和重曹水(30mL)、飽和食塩水(30mL)の順で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を経て粗精製物(331mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:3g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜220℃/0.27kPa)にて精製し、目的物である式A−9の化合物を261mg(収率87%)得た。
得られた式A−9の(1E)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.90(d,J=6.4Hz,6H),1.61−1.72(m,1H),2.01(dd,J=7.2,7.6Hz,2H),3.26(br d,2H),5.54(dt,J=15.6,7.6Hz,1H),6.05(d,J=15.6Hz,1H),6.72(s,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.2(2C),28.4,32.5,42.1,120.1,121.1,131.7,138.4,175.1.
IR(液膜法):2956,2927,2870,1803,1610,1466,1385,1132,1121,1061,966,823,564cm−1
DART−TOFMS:m/z[MH] calcd.for C1015 167.1067,found 167.1079.
(8)式A−10の(1Z)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの合成
以下の反応経路の通り、実施例1(3)で得た式A−5のラクトン化合物を異性化して、式A−10のラクトン化合物を合成した。
Figure 2021036795
20mL二つ口フラスコに実施例1(3)で得た式A−5の化合物(300mg,1.80mmol)、脱水THF(4.5mL)を入れアルゴン雰囲気下−78℃で撹拌した。ここにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.43mL,2.88mmol)を同温下入れ、10分撹拌後にリチウム ビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M THF溶液,2.70mL,2.70mmol)を加え、同温下1時間撹拌した。反応液に25%酢酸のTHF溶液(4.5mL)を同温下加え5分撹拌した。その後、昇温し1M塩酸(15mL)を加えた。このものを酢酸エチル(30mL)で抽出し、得られた有機層を飽和食塩水(30mL)、飽和重曹水(30mL)、飽和食塩水(30mL)の順で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を経て粗精製物(302mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:3g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1→5:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜220℃/0.27kPa)にて精製し、目的物である式A−10の化合物を246mg(収率82%)得た。
得られた式A−10の(1Z)−4−(4−メチル−1−ペンテニル)−2(3H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.93 (d,J=6.4Hz,6H),1.67(m,1H),2.05(ddd,J=1.6,7.2,7.6Hz,2H),3.41(br d,2H),5.52(dt,J=11.6,7.6Hz,1H),5.88(d,J=11.6 Hz,1H),6.78(br t,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.3(2C),28.9,35.3,38.1,118.4,118.8,132.0,140.8,175.4.
IR(液膜法):2957,2926,2900,2872,1804,1652,1467,1386,1265,1228,1133,1064,942,823,681,521cm−1
DART−TOFMS:m/z[MH] calcd.for C1015 167.1067,found 167.1075.
(9)式A−11の4−(4−メチルペンタニル)ブチロラクトンの合成
4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを、Biosci.Biotechnol.Biochem.2002,66,135−140頁に記載の方法に従って合成し、これを出発物質として、以下の反応によって式A−11の4−(4−メチルペンタニル)ブチロラクトンを合成した。
Figure 2021036795
100mL二つ口フラスコに4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(1.50g、9.02mmol)、99%エタノール(20mL)、パラジウム炭素(10%Pd,wet,75.0mg,5.0質量%)を入れ、水素雰囲気下室温で1時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を濃縮し粗精製物(1.60g)を得た。このものをクーゲルロール(オーブン設定:〜230℃/0.27kPa)によって精製し目的物である式A−11の4−(4−メチルペンタニル)ブチロラクトンを1.48g(収率96%)得た。
得られた式A−11の4−(4−メチルペンタニル)ブチロラクトンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.88 (d,J=6.4 Hz,6H),1.18(dt,J=7.2,7.2Hz,2H),1.25−1.35(m,2H),1.45(dt,J=7.2,7.2Hz,2H),1.54(m,1H),2.18(dd,J=7.6,16.4Hz,1H),2.53(dd,J=7.6,15.2Hz,1H),2.61(m,1H),3.92(dd,J=7.2,8.8Hz,1H),4.42(dd,J=7.2,8.8Hz,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ22.5(2C),25.1,27.8,33.3,34.5,35.7,38.7,73.4,177.2.
IR(液膜法):2955,2928,2869,1780,1469,1420,1385,1367,1171,1020,995,838cm−1
DART−TOFMS:m/z「MH」 calcd.for C1019 171.1380,found 171.1388.
(10)式A−12の4−(5−メチル−4−ヘキセニル)−2(5H)−フラノンの合成
出発原料には上記実施例1(1)で得られたエチル 4−(1’−エトキシエトキシ)ブチ−2−ノエート(下記反応経路の(10)−1)を用いた。また、下記反応経路の化合物(10)−2を、J.Org.Chem.2016,81,7288−7300頁に記載の方法に従って合成した。これらの化合物を用いて、下記の反応経路に従って合成を行った。
Figure 2021036795
100mL三つ口フラスコにマグネシウム(240mg、9.87mmol)、触媒量のヨウ素を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(10mL)を入れた。ここに6−ブロモ−2−メチル−2−ヘキセン(1.60g、9.03mmol)の脱水THF溶液(5mL)うちの少量を入れ室温で激しく撹拌したところ10分でヨウ素の色が消えた。反応液を氷水浴で冷却しながら30℃以下で残りの6−ブロモ−2−メチル−2−ヘキセンの溶液を30分かけて滴下し、滴下後室温で2時間撹拌することでグリニャール試薬を調製した。100mL三つ口フラスコにCuBr・MeS(1.85g、9.00mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(5mL)を入れ−40℃で撹拌した。ここに先に調製したグリニャール試薬を−40℃以下で10分かけて滴下し、−40℃で1時間10分撹拌した。ここにエチル 4−(1’−エトキシエトキシ)ブチ−2−ノエート(600mg、3.00mmol)の脱水THF(3mL)溶液を5分かけて滴下し、−78℃で1時間撹拌した。反応液に−55℃以下でエタノール(5mL)を入れ、室温まで昇温後10%塩化アンモニウム水溶液(50mL)を入れた。反応液をエチルエーテル(50mL)で抽出後、(10%ソーダ灰+10%食塩)水(50mL)、飽和食塩水(50mL)で順次洗浄した。このものをMgSO乾燥、濃縮し粗精製物(1.26g)を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:20g、ヘキサン:酢酸エチル=50:1)にて精製し化合物(10)−3を837mg(収率94%)得た。
100mLナスフラスコに化合物(10)−3(789mg、2.64mmol)、THF(7mL)、1M HCl水溶液(7.0mL、7.00mmol)を入れ室温で1.5時間撹拌した。反応液に飽和重曹水(50mL)を入れ、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄後、MgSO乾燥、濃縮し粗精製物(475mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:20g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1→12:1→10:1→5:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜250℃/0.27kPa)にて精製し、目的物である式A−12の4−(5−メチル−4−ヘキセニル)−2(5H)−フラノンを448mg(収率94%)得た。
得られた式A−12の4−(5−メチル−4−ヘキセニル)−2(5H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.60(s,3H),1.64(tt,J=7.6,7.6Hz,2H),1.70(s,3H),2.07(dt,J=7.2,7.6Hz,2H),2.40(t,J=7.6Hz,2H),4.74(d,J=2.0Hz,2H),5.09(t,J=7.2Hz,1H),5.84(br t,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ17.7,25.7,27.3,27.4,28.0,73.0,115.3,122.9,133.0,170.6,174.1.
IR(液膜法):2966,2928,2862,1782,1751,1637,1449,1377,1170,1149,1129,1025,887,852cm−1
DART−TOFMS:m/z「MH」 calcd.for C1117 181.1223,found 181.1228.
(11)式A−13の4−(3−メチル−2−ブテニル)−2(5H)−フラノンの合成
出発原料には上記実施例1(1)で得られたエチル 4−(1’−エトキシエトキシ)ブチ−2−ノエート(下記反応経路の(11)−1)を用い、下記の反応経路に従って合成を行った。
Figure 2021036795
300mL三つ口フラスコにマグネシウム(1.12g、46.1mmol)、触媒量のヨウ素を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(6.5mL)を入れた。ここに1−クロロ−3−メチル−2−ブテン(4.58g、43.8mmol)の脱水THF溶液(100mL)うちの少量を入れ室温で激しく撹拌したところ15分でヨウ素の色が消えた。反応液を氷水浴で冷却しながら5℃で残りの1−クロロ−3−メチル−2−ブテンの溶液を2時間50分かけて滴下し、さらに同温下1時間撹拌することでグリニャール試薬を調製した。300mL三つ口フラスコにCuBr・MeS(9.00g、43.8mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下脱水THF(20mL)を入れ−40℃で撹拌した。ここに先に調製したグリニャール試薬を−40℃以下で15分かけて滴下し、−78℃で2.5時間撹拌した。ここに化合物(11)−1(2.50g、12.5mmol)の脱水THF(5mL)溶液を5分かけて滴下し、−78℃で1.5時間撹拌した。反応液に−55℃以下でエタノール(10mL)を入れ、−20℃迄昇温後10%塩化アンモニウム水溶液(150mL)を入れた。反応液をエチルエーテル(200mL)で抽出後、(10%ソーダ灰+10%食塩)水(150mL)、飽和食塩水(150mL)で順次洗浄した。このものをMgSO乾燥、濃縮し粗精製物(4.19g)を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:50g、ヘキサン:酢酸エチル=50:1)にて精製し化合物(11)−3を3.02g(収率89%)得た。
200mL三つ口フラスコに化合物(11)−3(2.81g、10.4mmol)、THF(20mL)、1M HCl水溶液(27.0mL、27.0mmol)を入れ室温で40分間撹拌した。反応液に飽和ソーダ灰水(50mL)を入れ、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄後、MgSO乾燥、濃縮し粗精製物(1.85g)を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:20g、ヘキサン:酢酸エチル=15:1→10:1→5:1→2:1)およびクーゲルロール(オーブン設定:〜210℃/0.27kPa)にて精製し、目的物である式A13の4−(3−メチル−2−ブテニル)−2(5H)−フラノンを1.46g(収率92%)得た。
得られた式A−13の4−(3−メチル−2−ブテニル)−2(5H)−フラノンの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.65(s,3H),1.77(s,3H),3.10(d,J=6.8 Hz,2H),4.72−4.74(m,2H),5.21(m,1H),5.82(m,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ17.8,25.6,27.5,72.8,115.4,117.1,136.5,169.7,174.0.
IR(液膜法):2973,2929,2918,1781,1749,1652,1646,1636,1558,1541,1521,1507,1456,1169,1036,888,845,505cm−1
DART−TOFMS:m/z「MH」 calcd.for C13 153.0910,found 153.0917.
(12)式A’−1の4−(4−メチル−3−ペンテニル)ブチロラクトンの合成
4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを、Biosci.Biotechnol.Biochem.2002,66,135−140頁に記載の方法に従って合成し、これを出発物質として、以下の反応によって式A’−1の4−(4−メチル−3−ペンテニル)ブチロラクトンを合成した。
Figure 2021036795
30mL二つ口フラスコにStryker試薬(118mg,60.2μmol)、脱水トルエン(5.0mL)を入れ、アルゴン雰囲気下撹拌した。ここにフェニルシラン(0.22mL,1.79mmol)を入れ、ついで4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(200mg,1.20mmol)の脱水トルエン(2.0mL)溶液を入れ、室温で3時間、50℃で1時間、70℃で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)を入れ、ジエチルエーテル(50mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(50mL)、飽和食塩水(50mL)で洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮し粗精製物(518mg)を得た。このものをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO:25g,ヘキサン:酢酸エチル=15:1→12:1→5:1)、クーゲルロール(オーブン設定:〜240℃/0.27kPa)によって精製し、式A’−1の化合物142mg(収率70%)を得た。
得られた式A’−1の4−(4−メチル−3−ペンテニル)ブチロラクトンの物性データは以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.52(dt,J=7.2,7.6Hz,2H),1.61(s,3H),1.70(s,3H),2.02(dt,J=7.2,7.6Hz,2H),2.19(dd,J=7.6,16.4Hz,1H),2.54(dd,J=7.6,15.2Hz,1H),2.62(m,1H),3.93(dd,J=7.6,9.2Hz,1H),4.41(dd,J=7.6,8.8Hz,1H),5.07(m,1H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ17.7,25.7,25.8,33.1,34.5,35.3,73.4,122.9,132.8,177.2.
IR(液膜法):2966,2921,2856,1781,1455,1420,1378,1172,1025,839cm−1
DART−TOFMS:m/z[MH] calcd.for C1017 169.1223,found 169.1244.
(13)式A’−2の4−(4−メチルペンタニル)−2(5H)−フラノン、式A’−3の(1E)−4−(4−メチルペンタ−1,3−ジエニル)−2(5H)−フラノン、および式A’−4の(1Z)−4−(4−メチルペンタ−1,3−ジエニル)−2(5H)−フラノンの合成
式A’−2の化合物を、J.Agric.Food Chem.,41,p.2097−2103(1993年)に記載の方法に従って合成して得た。また、式A’−3の化合物および式A’−4の化合物を、J.Chem.Res.(s),3,p.102−103(1986年)に記載の方法に従って合成して得た。
Figure 2021036795
[実施例2]合成した式Aのラクトン化合物の香気特性
実施例1(1)〜(13)で得られた式Aの各ラクトン化合物の香気評価を行った。香気評価は、95%エタノール溶液に式Aの各ラクトン化合物を濃度が0.1質量%となるように配合し、その溶液を匂い紙に浸し、よく訓練された経験年数10年以上の調香師12名に嗅がせて香気についてコメントさせた。また、香気の強度について、本発明のラクトン化合物の類縁体である4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(特開2017−25182号公報に記載)を対照品とし、上記12名の調香師による下記の基準に従って点数付けを行った。
1:対照品より香気が弱い
2:対照品と同程度の香気の強さであった
3:対照品より香気が強い
4:対照品より香気が非常に強い
調香師12名の平均的な結果を下記表1に示す。
Figure 2021036795
表1に示すように、式Aのラクトン化合物はそれぞれ特徴的な香気を呈し、類縁体の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンにはない香気特性も有していた。本発明のラクトン化合物は、それぞれの香気特性を踏まえて、類縁体の4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンと同様の香調とは別の様々な香調にも有用であり、当該類縁体とは異なる香味も付与可能と考えられる。また、式Aのラクトン化合物は、香気強度も香料化合物として使用可能な程度に十分なものであった。
[実施例3] 果実調香料化合物への配合効果
下記表2の一般的な処方に従って、グレープフルーツ様基本調合香料組成物を調整した。
Figure 2021036795
得られた基本調合香料組成物に、実施例1(1)〜(13)で得られた式Aの各ラクトン化合物が基本調合香料組成物全質量に対して0.1%となるように配合し、本発明品の調合香料組成物を得た。
そして、市販の果汁50%のグレープフルーツジュースを用意し、このジュースに、本発明品の調合香料組成物を、各ラクトン化合物濃度が0.01ppmまたは10ppmとなるように、調合香料組成物を配合して、本発明の柑橘飲料を調製した。一方で、上記グレープフルーツ様基本調合香料組成物を市販のグレープフルーツジュースに配合し、対照品の柑橘飲料を調製した。本発明品の柑橘飲料の天然感、、果皮感、および香味の持続性について、対照品の柑橘飲料(基本調合香料組成物を配合した市販のグレープフルーツジュース)を比較対象として官能評価を行った。具体的には、よく訓練された経験年数10年以上の調香師12名に、対照品と比較した天然感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせた。ここで、天然感とは、素材であるグレープフルーツ果実を想起させる何らかの香味が増強されており、グレープフルーツをより多く使用したような自然な香味を意味するものとした。調香師12名の平均した結果を下記表3に示す。
Figure 2021036795
表3に示すように、式Aのラクトン化合物は、それぞれ特徴的な香味改善効果を有しており、所望の香味に応じて式Aのラクトン化合物を適宜選択して良好な香味の飲料を得られることが確認された。また、少なくとも飲食品中0.01ppm〜10ppmの範囲内で香味改善効果が得られることが確認された。
[実施例4] ビール風味飲料への配合効果
市販のノンアルコールビールに、実施例1(1)〜(13)で得られた式Aの各ラクトン化合物を、1ppmとなるように配合して、本発明のノンアルコールビール飲料を得た。そして、市販のノンアルコールビールを対照品として、対照品と比べた本発明品および比較品の飲料の香味についてよく訓練された経験年数10年以上の調香師12名による官能評価を行った。官能評価では、ホップ感、コク感、ビール感について「大きく向上した」=4点、「向上した」=3点、「わずかに向上した」=2点、「変化なし」=1点、「劣化した」=0点として点数付けさせるとともに、香味に関してコメントさせた。なお、ビール感とは、ノンアルコールでありながらビールのような香味が感じられるという意味とした。調香師12名の平均した結果を下記表4に示す。
Figure 2021036795
表4に示すように、本発明品はいずれもノンアルコールビールに対し、ホップ感、コク感を増強するものであり、より本物のビールに近い香味を付与することが確認された。
[実施例5]紅茶飲料への配合効果
市販のミルク入り紅茶飲料に、実施例1(1)〜(13)で得られた式Aの各ラクトン化合物を、1ppmとなるように配合して、本発明の紅茶飲料を得た。そして、市販の紅茶飲料を対照品として、対照品と比べた本発明品の紅茶飲料の香味についてよく訓練された経験年数10年以上の調香師5名による官能評価を行い、どのような香味が増強されたかについて回答させた。その結果、調香師5名全員が、本発明品の紅茶飲料はいずれも、対照品の市販の紅茶飲料に比べて、乳脂様のコク、生乳のフレッシュ感、紅茶の茶葉をふんだんに使用したようなふくよかな香味が増強されていると回答した。なかでも、式A−3の化合物、式A−7の化合物、式A−10の化合物、式A’−1〜A’−4の化合物が、これらの増強効果が高かったと回答した。
[実施例6]コーヒーへの配合効果
市販の缶入りブラックコーヒーに、実施例1(1)〜(13)で得られた式Aの各ラクトン化合物を、コーヒー全量に対し1ppmの濃度となるように配合して、本発明のコーヒー飲料を得た。そして、市販の缶入りブラックコーヒーを対照品として、対照品と比べた本発明品のコーヒー飲料の香味についてよく訓練された経験年数10年以上の調香師5名による官能評価を行い、どのような香味が増強されたかについて回答させた。その結果、調香師5名全員が、本発明品のコーヒー飲料はいずれも、対照品の市販のコーヒー飲料に比べて、コーヒーオイル様のコク感、コーヒー豆様の渋さ、良好な酸味が増量されていると回答した。特に、式A−1の化合物、式A−3の化合物、式A−5の化合物、式A−7の化合物、式A−13の化合物、式A’−3〜のA’−4の化合物が、これらの増強効果が高かったと回答した。
[実施例7]各種香辛料風味への配合効果
市販のショウガ風味ドレッシングおよびシソ風味ドレッシングに、実施例1(1)〜(13)で得られた式Aの各ラクトン化合物をドレッシング全量に対し1ppmの濃度となるように配合して、本発明の香辛料風味ドレッシングを得た。そして、市販の各ドレッシングを対照品として、対照品と比べた本発明品のドレッシングの香味についてよく訓練された経験年数10年以上の調香師7名による官能評価を行い、どのような香味が増強されたかについて回答させた。
その結果、ショウガ風味ドレッシングについては、調香師7名全員が、本発明品はいずれもショウガの刺激感、オイルのコク、香味の持続性が増強されていると回答し、特に、式A−1〜式A−3の化合物、式A−6の化合物、式A−9の化合物、式A−12の化合物が、これらの増強効果が高かったと回答した。
シソ風味ドレッシングについては、調香師7名全員が、本発明品はいずれもシソ独特の青くさわやかな香り、オイルのコク、香味の持続性が増強されていると回答し、特に、式A−4の化合物、式A−5の化合物、式A−8の化合物、式A’−1の化合物が、これらの増強効果が高かったと回答した。
[実施例8]ミュゲ調香料組成物への配合効果
下記表8の一般的な処方に従って、ミュゲ様基本調合香料組成物を調製した。
Figure 2021036795
得られたミュゲ様基本調合香料組成物に、実施例1(1)〜(13)で得られた本発明の式Aの各ラクトン化合物を1ppbの濃度となるように配合して、本発明の香料組成物とした。そして、よく訓練された調香師12名に、基本調合香料組成物を対照品として、本発明の香料組成物の香気についてよく訓練された調香師7名による官能評価を行い、どのような香味が増強されたかについて回答させた。その結果、調香師7名全員が、本発明品の香料組成物はいずれも、対照品の基本調合香料組成物に比べて、グリーンを帯びたフローラル調の香気や、やや石鹸を思わせるようなミュゲ独特のさわやかな香りが増強され、よりミュゲ生花を思わせるものであったと回答した。なかでも、式A−5の化合物、式A−10の化合物、式A11の化合物、式A−12の化合物、式A’−1の化合物、式A’−3〜A’−4の化合物が、これらの増強効果が高かったと回答した。
以上に示すように、式Aの各ラクトン化合物は、各種香味において優れた増強効果を奏し、香料素材として有用であることが確認された。

Claims (7)

  1. 式Aで表されるラクトン化合物からなる、香味付与剤。
    Figure 2021036795
    [式中、5員環の破線は、すべて単結合か、いずれか1箇所が二重結合でもう1箇所が単結合であることを表し、Rにおいて、nは1〜4の整数を表し、破線は、すべて単結合であるか、いずれか1箇所または2箇所が二重結合でありそのほかは単結合であることを表す。(ただし、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは除く)]
  2. 請求項1に記載の香味付与剤を有効成分として含有する、香料組成物。
  3. 請求項1に記載の香味付与剤または請求項2に記載の香料組成物を配合してなる、消費財。
  4. 請求項1に記載の香味付与剤または請求項2に記載の香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味改善方法。
  5. 請求項1に記載の香味付与剤を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香気改善方法。
  6. 式A’で表されるラクトン化合物。
    Figure 2021036795
    [式中、5員環の破線はいずれか1箇所が二重結合でありもう1箇所は単結合であることを表し、R’において、n1は1〜4の整数を表し、破線のいずれか1箇所が二重結合でありそのほかは単結合である(ただし、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(3H)−フラノンは除く)、または、5員環の破線はすべて単結合であり、R’において、nは2〜4の整数を表し、破線はすべて単結合である。]
  7. 下記式A1〜A13で表される化合物のいずれかであるラクトン化合物。
    Figure 2021036795
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