JP5433257B2 - 茶エキス - Google Patents

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Description

本発明は、加熱殺菌して得られる容器詰茶飲料用の茶エキスおよびその製造方法に関する。
緑茶に代表される茶飲料は、日々の生活に潤いを与え、日本人の生活にはなくてはならないものである。近年では茶の持つ抗酸化性が注目を集めており、ノンカロリーの健康的な飲み物として、茶飲料は無糖飲料の代表的なものとなってきている。さらに最近では嗜好性の多様化により、種々の茶飲料が市場に供されている。
茶飲料は、一般に茶葉を水などの水性溶媒で抽出して茶エキスを得、この茶エキスを飲料濃度になるよう濃度調整等を行った後、缶、ペット(PET)ボトルなどの密封容器に封入
して販売されている。このような容器詰茶飲料は、長期保存、すなわち微生物の汚染を防止するために、通常、容器の材質に適合した加熱殺菌が行われているが、この殺菌により茶の良質な香味が著しく損なわれているのが現状である。茶飲料は、品質として香味、特に香気(香り)が重要視される飲料であることから、容器詰茶飲料の香味の改善に関しては、多種多様な改良方法が提案されている。例えば、茶葉の香気成分を捕集して利用した香味の良い茶エキスとして、茶葉を温水で浸漬もしくは湿潤させる工程1、工程1の茶葉を水蒸気抽出し、溜出液を回収する工程2、工程2の溜出残渣を水で抽出し、抽出液を回収する工程3、工程2の溜出液と工程3の抽出液とを混合する工程4とを含む方法により得られる、殺菌工程後にも優れた香りや風味を有する茶エキス(特許文献1)や、抹茶を温水にてスラリーとし、該スラリーを向流接触装置(SCC)にて処理し、フレーバーを回収
する第1の工程と、別途茶葉を温水抽出し、固形物を除去後活性炭処理を行い、次いで濾過により活性炭を除去して茶抽出液を得る第2の工程と、第1の工程により得られたフレーバーと第2の工程で得られた茶抽出液とを混合する第3の工程とを含む方法により得ら
れる、抹茶のまったりとした甘味を与える茶エキス(特許文献2)などがある。
一方、緑茶、烏龍茶、紅茶などの嗜好飲料にバランスのよい香味を付与することができる新規フレーバーとして、嗜好飲料用原料を水蒸気蒸留して得られるフレーバー(A)と、嗜好飲料用原料を向流接触装置(SCC)に供して得られるフレーバー(B)とを含有し、かつ
フレーバー(A)の1重量部あたりフレーバー(B)を0.01〜100重量部の範囲内で含有する新規フレーバー(特許文献3)がある。また、香味を改善する茶飲料用添加剤として、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、2−メチルピラジン又は3−エチル−2,5−ジメチルピラジンからなる飲みごたえ感を与える茶飲料用添加剤(特許文献4)、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンからなる高級茶葉のまったりとした甘さを与える茶飲料用添加剤(特許文献5)、茶抽出物の活性炭処理物からなる高級茶葉のまったりとした甘さを与える茶飲料用添加剤(特許文献6)などがある。
特許第4104018号公報 特開2007−167005号公報 特開2003−33137号公報 特開2008−148604号公報 特開2007−167003号公報 特開2007−167004号公報
原料となる茶葉として良質な香気をもつ高級茶葉を使用したとしても、その良質な香気は、容器詰茶飲料の製造における加熱殺菌により、低下したり変化したりするため、缶入り茶飲料やペットボトル入り茶飲料などの容器詰茶飲料で良質で豊かな香気を提供することは困難であった。
本発明の課題は、高級茶葉が有しているような良質で豊かな香気を持つ容器詰茶飲料を製造しうる、容器詰茶飲料用素材を提供することである。
茶葉を多く使用すると香気を増大させることができるが、呈味成分も増大するため加熱殺菌処理を行った場合に苦味・雑味が顕著となること、近年の天然嗜好のニーズからフレーバー無添加の茶飲料が好まれていること等の理由から、容器詰茶飲料の香味を改善する素材として茶エキスを選択した。
本発明者らは上記課題を解決するために、茶エキスの製造方法を種々検討した。その結果、低級茶葉にも高級茶葉と同様な良質な香気成分が含まれていること、低級茶葉に含まれる良質でない成分が低温の加熱処理を施すことにより香気の増強作用を発現することを見出した。この知見をもとに、火入れの強い秋冬番茶のほうじ茶を用い、良質な香気成分を豊富に、良質でない香気成分が少なくなるように、水蒸気蒸留により香気成分(留出液)を分画回収し、これを茶エキスと茶抽出液を混合し、低温で加熱処理することにより、特定の成分を特定の比率で含有する、風味の良い茶エキス混合物を得た。この茶エキス混合物を飲料濃度に希釈して加熱殺菌を行うと、殺菌前と比べてさらに優れた風味を発現するという驚くべき知見を得、豊かな香気を持つ容器詰茶飲料を提供できることを見出した。
また、本発明者らは、上記水蒸気蒸留の残渣の水抽出を行って得られる抽出液で、好ましくは活性炭処理した抽出液と、上記エキスとを混合して得られる茶エキス混合物で、特定の成分を指標として製造したものが、低級茶葉から製造したにもかかわらず、高級茶葉を急須で淹れた茶飲料のような優れた風味(豊かな香気、香ばしさとまったりとした甘みのある呈味)を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕茶葉から水蒸気蒸留により分画して留出液を得る工程1、および工程1の留出液を100℃以下の温度で加熱処理する工程2を含む工程により得られる茶エキスであって、下記の(a-1) の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(a-2)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(a-3)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上とを含有し、(a-1)、(a-2)および(a-3)の各群の成分合計量の和が19.0ppm以上であり、かつ(a-1)群の成分合計量/(a-2)群の成分合計量の値が0.3〜0.9であることを特徴とする茶エキスであり、さらに、水蒸気蒸留の条件が空間速度(SV)が20〜100h-1、留出量が原料茶葉に対して30〜70%(質量比)であることを特徴とする。
(a-1):2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン
(a-2):フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、2−アセチルピロール、フェノール、ピロール−2−カルボキサルデハイド
(a-3):2,3−ペンタジオン、3−ハイドロキシ−2−ペンタノン、シス−リナロールオキサイド、2−アセチルフラン、1−エチル−2−フォルミルピロール、2−アセチル−1−エチルピロール、メチルサリシレート
〔2〕茶葉から水蒸気蒸留により分画して留出液を得る工程1、工程1の茶葉残渣から抽出液を得る工程3、工程1の留出液と工程3の抽出液を混合する工程4、および工程4の混合液を100℃以下の温度で加熱処理する工程2を含む工程により得られる茶エキス(茶エキス混合物)である。そして、工程3の抽出液の量が原料である水蒸気蒸留前の原料茶葉に対して100〜1000%(質量比)であり、かつ、0.1〜1.0%(Brix比)の活性炭処理したものであることを特徴とする。
〔3〕下記の(b-1) 成分と、(b-2) の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(b-3) の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(b-4) の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(b-5)成分とを含有し、(b-1)群の成分合計量が3.0ppm以上であり、かつ{(b-2)群の成分合計量+(b-3)群の成分合計量}/{(b-4)群の成分合計量+(b-5)群の成分量}の値が1〜15である、上記の茶エキス(茶エキス混合物)である。
(b-1):4−ハイドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン
(b-2):アスパラギン酸、グルタミン酸、テアニン、アラニン、セリン、グリシン、スレオニン
(b-3):フルクトース、グルコース、スクロース
(b-4):ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、カテキンガレート、没食子酸
(b-5):カフェイン
〔4〕上記の茶エキス(茶エキス混合物を含む)を添加したことを特徴とする飲料である。
本発明の茶エキスは、飲料濃度に希釈して加熱殺菌して容器詰茶飲料とした場合に、高級茶葉を急須で淹れた際に感じられるような優れた風味(豊かな香気、香ばしさとまったりとした自然な甘さを感じさせる呈味)を呈するので、従来になかった高級感あふれる容器詰茶飲料を製造することができる。また、その豊かな香気から、香料(フレーバー)無添加とすることが可能である。
本発明の茶エキスは、低級茶葉から水蒸気蒸留の分画と、低温加熱という、簡便かつ安価な方法で製造できるという利点もある。
以下に、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
(1)原料茶葉
本発明の茶エキスの原料である茶葉は、ツバキ科の常緑樹であるチャ(Camellia sinensis)の葉のことをいう。本発明の重要な成分である、下記の成分(a-1)、(a-2)および(a-3)を含む茶葉、好ましくは成分(a-1)、(a-2)および(a-3) に加えてさらに(b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4)および(b-5)を含む茶葉であれば、茶葉の種類、等級、産地、製法などは
何ら限定されることはなく、いずれの茶葉でも可能である。あるいは、上記成分が含まれるように、茶葉を1種または2種以上を混合して用いてもよい。
(a-1):2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン、
(a-2):フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、2−アセチルピロール、フェノール、ピロール−2−カルボキサルデハイド
(a-3):2,3−ペンタジオン、3−ハイドロキシ−2−ペンタノン、シス−リナロールオキサイド、2−アセチルフラン、1−エチル−2−フォルミルピロール、2−アセチル−1−エチルピロール、メチルサリシレート
(b-1):4−ハイドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン
(b-2):アスパラギン酸、グルタミン酸、テアニン、アラニン、セリン、グリシン、スレオニン
(b-3):フルクトース、グルコース、スクロース
(b-4):ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、カテキンガレート、没食子酸
(b-5):カフェイン
上記成分(a-1)、(a-2)および(a-3)と成分(b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4)および(b-5)とを全て含む茶葉を用いると、水蒸気蒸留による分画および低温加熱処理、必要に応じて水蒸気蒸留の茶葉の残渣の水抽出という簡便な製造で、特定成分を特定比率で含む、本発明の茶エキスを得ることができるので、好ましい。上記成分を全て含む茶葉としては、好ましくは緑茶を焙じ機で加熱処理した茶葉を挙げることができる。特に好ましくは、(a-1)、(a-2)および(a-3)と(b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4)および(b-5)の各群の全ての成分を含む秋冬番茶のほうじ茶といったいわゆる低級茶葉である。
(2)茶エキス
本発明でいう茶エキスとは、茶葉から水等の水性溶媒で抽出した茶抽出液であって、希釈して茶飲料の製造に用いられる茶飲料用素材をいい、特に本発明の茶エキスは、茶葉の香気を水等の溶媒で蒸留・抽出した茶葉から水蒸気蒸留により分画して得られる留出液をいう。
本発明の茶エキスは、Brix(ブリックス;溶液100gあたりの可溶性固形物重量[g])が10以下となるように調整することが好ましい。Brixが10を超えると、優れた風味を安定して保存することは難しくなる傾向にある。また、Brixが10を超えるような濃縮を行った場合には、濃縮時の加熱等によってまったりとした自然な甘さが損なわれるという香味の観点からの不具合もある。
本発明の茶エキスの製造では、まず上記(1)原料茶葉に水蒸気蒸留をし、留出液を回収する。ここで、水蒸気蒸留は通常は常圧下で行われ、必要であれば減圧下や高圧下でも可能である。
その工程は通常の手法において行われるが、特に好ましい水蒸気蒸留の条件としては空間速度(SV)が 20〜100(単位:1/h)の条件である。また、好ましくは留出量
を測定し、分画できる構造であることが好ましい。
この水蒸気蒸留で分離回収する茶エキスは、(a-1)、(a-2)および(a-3)の各群に列記した特定の香気成分を含有することを指標として行われるが、その大凡の目安は水蒸気蒸留の留出量が原料茶葉の質量に対して30〜70%、より好ましくは40〜60%となるように分離すればよい。水蒸気蒸留の留出量が原料茶葉の質量に対して30%未満の場合は香ばしさが弱く、一方、70%を超える場合は苦みが強くなりすぎて香気のバランスが悪くなることがある。
30〜70%に分画することで不必要な苦味のある香りの抽出を抑え、かつ香ばしい香りが最大限に生かされる。
(a-1)群に属する2−メチルピラジン(2-methylpyrazine)、2,5−ジメチルピラジン(2,5-dimethylpyrazine)、2,6−ジメチルピラジン(2,6-dimethylpyrazine)、2−エチルピラジン(2-ethylpyrazine)は、高級茶葉における「香ばしさ」に寄与する成分である。
(a-2)群に属するフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)、2−アセチルピロール(2-acetylpyrrole)、フェノール(phenol)、ピロール−2−カルボキサルデハイド(pyrrole-2-carboxaldehyde)は、高級茶葉における「苦い香り」に寄与する成分である。
(a-3)群に属する2,3−ペンタジオン(2,3-pentanedione)、3−ハイドロキシ−2−ペンタノン(3-hydroxy-2-pentanone)、シス−リナロールオキサイド(cis-linalool oxide)、2−アセチルフラン(2-acetylfuran)、1−エチル−2−フォルミルピロール(1-ethyl-2-formylpyrrole)、2−アセチル−1−エチルピロール(2-acetyl-1-ethylpyrrole)、メチルサリシレート(methyl salicylate)は、高級茶葉における「香りの豊かさ」に寄与す
る成分である。
これらの成分は、全体として重要である。本発明においては(a-1)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(a-2)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(a-3)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上とを含有することが必要であるが、(a-1)、(a-2)および(a-3)の各群の成分全てを含有することが好ましい。各群の成分の合計の総計が19.0ppm以上のときに香り豊かな風味が得られ、これらの成分が19.0〜100.0ppmのときにより好ましく、38.0〜100.0ppmのときに最も豊かな風味が得られるが、特に各群のバランスが重要である。
「(a-1)香ばしさ成分」/「(a-2)苦い香り成分」の比が0.3〜0.9のときに苦味が少なく極めて優れた香ばしさを得ることができる。「(a-1)香ばしさ成分」/「(a-2)苦い香り成分」の比が0.3未満の場合は苦味が強く感じられることがあり、一方、0.9を超したときは香りのバランスが崩れる可能性がある。
なお、これらの成分の定量分析はガスクロマトグラフィーを用いて測定でき、その方法は内部標準法により通常の手法で行うことができるが、例えば以下の条件で測定できる。<(a-1)〜(a-3)成分の分析>
実施例および比較例で作成した検体を、三菱化学(株)製「セパビーズSP−700(商品名)」を充填したカラムに通液した。続いて、蒸留水で洗浄、ジクロロメタンで香気成分を溶出させて香気抽出物を得た。これに、内部標準としてウンデカン酸メチルを検体中の濃度が25ppbになるようにそれぞれ添加した後、硫酸ナトリウムで脱水乾燥後、減圧下で濃縮、次いで窒素ガス気流により濃縮することで香気濃縮物を得た。得られた香気濃縮物は、それぞれの検体の香気の特徴を有していた。このようにして得た香気濃縮物をGC/MS分析に供した。分析条件は以下のとおりである。
装置:6890N/5973 inert GC/MS及び7683 オートサンプラー
(アジレント社製)
カラム:DB−WAX(アジレント社製、0.25mm i.d.×60m、film thickness 0.25μm)
キャリアーガス;ヘリウム
・流速:1.0mL/min.
・カラムオーブン温度:80℃−210℃、 3℃/min.
・注入口温度:250℃
・スプリット比:30:1
・注入量:1.0μL
さらに、本発明の茶エキスは、100℃以下(好ましくは75〜100℃)で加熱処理する工程を含む方法により得られる。この加熱処理を行うことによって、茶エキスの香気の力価が向上するので、加熱殺菌で香気が低下する容器詰茶飲料の製造に有利に利用できる。加熱処理の条件(温度、時間)は、用いる茶葉の種類や茶エキスの濃度等を考慮して、(a-1)、(a-2)および(a-3)の各群に列記した特定の香気成分を含有することを指標とし
て設定すればよい。
加熱処理の温度が100℃を超えると、香気のバランスが崩れ、本発明の茶エキスの微妙な風味が失われる可能性があり、75℃未満であれば、所望する香気の力価が得られないことがある。
(3)茶エキス混合物
本発明の好適な態様の一つは、留出液の加熱処理の前に、水蒸気蒸留後の茶葉残渣から抽出液を得、この抽出液と留出液とを混合して混合液とし、これを加熱処理して得られる茶エキスである。すなわち、
茶葉から水蒸気蒸留により分画して留出液を得る工程1、
水蒸気蒸留後の茶葉残渣から抽出液を得る工程3、
工程1の留出液と工程3の抽出液を混合する工程4、および
工程1の留出液を100℃以下の温度で加熱処理する工程2
を含む工程により得られる茶エキスであり、特に、低級茶葉を原料として後述する特定の成分を指標として製造して製造される茶エキスは、希釈して茶飲料とした場合に加熱殺菌後であっても、高級茶葉を急須で淹れた茶飲料のような優れた風味(豊かな香気、香ばしさとまったりとした甘みのある呈味)を有するという特徴を有する。この水蒸気蒸留の茶葉残渣の抽出液を混合して得られる本発明の茶エキスを、以下、便宜上茶エキス混合物という。
本発明の茶エキス混合物は、上記の茶エキスと同様に希釈して茶飲料の製造に用いることができる茶飲料用素材である。茶エキス混合物は、Brixが10以下、特にBrixが1〜10となるように調整することが好ましい。Brixが10を超える場合は、優れた風味を安定して保存することは難しくなる傾向にある。また、Brixが10を超えるような濃縮を行った場合には、濃縮時の加熱等によってまったりとした自然な甘さが損なわれるという香味の観点からの不具合もある。一方、Brixが1未満のものは、まったりとした自然な甘さが不足する傾向にあり、また経済的観点からも不適当である。
茶葉残渣の抽出は、水等の水性溶媒を用いて通常の手法において行われるが、好ましくは抽出量を測定し、分画できる装置であることが好ましく、ドリップ方式で行うことがより好ましい。抽出温度は特に限定されないが、30〜100℃が好ましい。
本発明における抽出は、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4)および(b-5)の各群に列記した特
定の成分を指標として行われるが、その大凡の目安は水抽出の抽出量が水蒸気蒸留前の原料茶葉の質量に対して通常100〜1000%程度となるように抽出操作を行えばよく、好ましくは200〜700%、特に好ましく300〜500%抽出すればよい。抽出量がこの範囲であれば、(b-1)〜(b-5)の各群成分を一定の組成に制御することが比較的容易に行えるからである。
(b-1)群に属する4−ハイドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン(4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)furanone)は、高級茶葉における「甘い香り」に寄与する成分である。
(b-2)群に属するアミノ酸類のアスパラギン酸(Aspartic Acid)、グルタミン酸(Glutamic Acid)、テアニン(Theanine)、アラニン(Alanine)、セリン(Serine)、グリシン(Glycine)、スレオニン(Threonine)は、高級茶葉における「旨味」に寄与する成分である。
(b-3)群に属する糖類のフルクトース(fructose)、グルコース(glucose)、スクロース(sucrose)は、高級茶葉における「甘味」に寄与する成分である。
(b-4)群に属するカテキン類のガロカテキン(gallocatechin)、エピガロカテキン(epigallocatechin)、カテキン(catechin)、エピカテキン(epicatechin)、エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate)、ガロカテキンガレート(gallocatechin gallate)、エピカテキンガレート(epicatechin gallate)、カテキンガレート(catechin gallate)、および没食子酸(gallic acid)は、高級茶葉における「渋味」に寄与する成分である。
(b-5)群に属するカフェイン(caffeine)は、高級茶葉における「苦味」に寄与する成分である。
これらの成分のなかで、風味に関しては(b-1)が重要であり、この成分が3ppm以上のときに香り豊かな甘い風味が得られ、好ましくは3〜30ppmのときにより豊かな甘い風味が得られる。
また、(b-1)の香り豊かな甘い風味を最大限に引き出すためにはその他の呈味に関する成分もそのバランスが特に重要である。
(「(b-2)旨味成分」+「(b-3)甘味成分」)/(「(b-4)渋味成分」+「(b-5)苦味成分」)の比が1〜15のときにほど良い渋味と調和が取れた極めて優れたまったりとした甘さを得ることができ、(「(b-2)旨味成分」+「(b-3)甘味成分」)/(「(b-4)渋味成分
」+「(b-5)苦味成分」)の比が2.0〜10のときに最も優れた風味を示すことができる。
(「(b-2)旨味成分」+「(b-3)甘味成分」)/(「(b-4)渋味成分」+「(b-5)苦味成分」)の比が1以下のときは渋味を強く感じることがあり、15を超えた場合は味のバランスが崩れる可能性がある。
なお、これらの成分の定量分析は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定でき、その方法は内部標準法により通常の手法で行うことができるが、例えば以下の条件で測定できる。
(I)2,4-ハイドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノンの定量分析
実施例および比較例で作成した検体各1gを10mL容のメスフラスコにはかりとり、蒸留水にてメスアップしたものを0.45μmメンブランフィルターで濾過し、HPLC分析に供した。定量値は標品にて作成した検量線を用いて算出した。
装置:HPLC 1100series(アジレント社製)
カラム:ZORBAX SB-Ag(アジレント社製、4.6mmi.d.×250mm、5μm)
溶媒:A:アセトニトリル/水=2/98
pH2.5(H3PO4
B:アセトニトリル
グラディエント法で溶離
Figure 0005433257
流速:1.0mL/min.
カラムオーブン温度:30℃
検出器:PDA(280nm、210nm)
注入量:20μL
(II)アミノ酸の定量分析
実施例および比較例で作成した検体5gを10mL容メスフラスコにはかりとり、2%スルホサリチル酸2mLを加えた後、0.02N HCl水溶液で10mLにメスアップし、0.45μmメンブランフィルターで濾過してHPLC分析に供した。定量値は標品にて作成した検量線を用いて算出した。
装置:HITACHI Model L−8500A High Speed Amin
o Acid Analyzer
カラム:Ion−Exchange Column ♯2622SC−PF(4.6mm
i.d.×60mm)
溶媒:Lithium citrate buffer
流速:0.35mL/min.
検出器:UV(570nm、440nm)
試薬:ニンヒドリン
注入量:20μL
(III)糖の定量分析
実施例および比較例で作成した検体5gを10mL容メスフラスコにはかりとり、80%アセトニトリル/水にてメスアップした後、遠心分離(3000rpm、20℃、5min.)して得られた上清を0.45μmメンブランフィルターで濾過し、HPLC分析に供した。定量値は標品にて作成した検量線を用いて算出した。
装置:HPLC 1100series(アジレント社製)
カラム:Capcellpak NH2(4.6mm i.d.×250mm:資生堂製)
溶媒:85%アセトニトリル/水
カラムオーブン温度;40℃
流速:1.0mL/min.
検出器:RI
注入量:10μL
(IV)カテキン、没食子酸およびカフェインの定量分析
実施例および比較例で作成した検体各1gを10mL容のメスフラスコにはかりとり、蒸留水にてメスアップしたものを0.45μmメンブランフィルターで濾過し、HPLC分析に供した。定量値は標品にて作成した検量線を用いて算出した。
装置:HPLC 1200series(アジレント社製)
カラム:CAPCELL Pak C18 MG(4.6mmi.d.×250mm、5μm:資生堂製)
溶媒:A:アセトニトリル/水=10/90 pH2.5(H3PO4
B:アセトニトリル
グラディエント法で溶離
Figure 0005433257
流速:1.0mL/min.
カラムオーブン温度:40℃
検出器:PDA(280nm、210nm)
注入量:10μL
水蒸気蒸留後の茶葉残渣から水等で抽出した抽出液は、香気成分を主体する茶エキスと混合する前に活性炭で吸着処理することが好ましい。本発明で使用する活性炭は、活性炭であれば特に限定することなく用いることができる。本発明における活性炭の効果は、通常の脱色処理などと異なり、茶抽出物中の不要な呈味成分を選択的に吸着除去し、甘さに寄与する呈味成分のみを保持するという意外で、且つ有用な効果であるため、その使用量は重要である。
本発明の茶エキス混合物は、100℃以下(好ましくは75〜100℃)で加熱処理を行うことを特徴とする。この加熱処理を行うことによって、茶エキスの香気の力価が向上するので、加熱殺菌で香気が低下する容器詰茶飲料の製造に有利に利用できる。加熱処理の条件(温度、時間)は、用いる茶葉の種類や茶エキスの濃度等を考慮して、(a-1)、(a-2)および(a-3)の各群に列記した特定の香気成分を含有することを指標として設定すれば
よい。
加熱処理の温度が100℃を超えると、香気のバランスが崩れ、本発明の茶エキスの微妙な風味が失われる可能性があり、75℃未満であれば、所望する香気の力価が得られないことがある。
(4)茶エキス又は茶エキス混合物の適用
本発明の茶エキス(茶エキス混合物を含む)が添加される茶飲料の例としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶葉を常法により熱水、温水または冷水で抽出して得られる茶抽出液、茶の香味成分を適宜調合して得られる茶香味を有する調合飲料などが挙げられ、また、これら茶飲料に種々の健康素材を添加した各種混合茶飲料が挙げられる。
本発明の茶エキスは、茶飲料に対して茶エキスを固形分換算で、通常は0.0001〜5質量%添加して用いる。添加濃度が0.0001質量%未満であると、人によっては風味が甘く感じなくなる場合があり、一方、添加濃度が5質量%を超えると、甘い風味がややくどく感じられる場合がある。本発明の効果を十分に発揮するには、添加量を茶エキス固形分換算で0.0005〜1質量%にすることが最も望ましい。さらに、本発明の茶エキスを使用する場合は、茶飲料用の香味料組成物として製剤化して用いると好適である。
一般に香味料組成物は、対象となる食品に対して0.1質量%程度を添加するように調製されることが多く、そのように調製される場合は該香味料組成物に対して本発明の茶エキスは、通常は0.1〜100質量%、好ましくは1〜50質量%含有される。本発明でいう甘い風味とは、高級茶葉類が本来有している馥郁とした香ばしい香りと、まったりとした自然な甘い風味である。
茶エキス及び茶エキス混合物を添加して製造される本発明の茶飲料は、加熱殺菌後にも良質で豊かな香気を有することを特徴とする。ここで、本発明の茶飲料の製造における加熱殺菌条件は、5〜30程度のF値を満たす条件が好ましい。
なお、F値とは一定温度において一定濃度の微生物を死滅させるのに要する加熱時間(分)であって、通常121.1℃における加熱致死時間に相当する加熱時間をいう。
以下に実施例を挙げ、更に詳細に説明する。
〔I〕茶エキス又は茶エキス混合物の製造とその成分組成
参考例1
遅い時期に収穫される番茶の一種である秋冬番茶を強火で火入れをしたほうじ茶を水蒸気蒸留機に2kg仕込み、これに30℃の水を0.67kg均一に散布した後、30分間静置し湿潤させた。湿潤完了後、常圧下でSV(空間速度)50h-1で水蒸気蒸留を行い、原料茶葉に対し1kgの留出液を留出させ、80℃×30sec.で加熱処理し、本発明の茶エキス得た(エキス1)。
成分組成の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
参考例1の水蒸気蒸留残渣である茶葉を80℃の水で抽出し、原料茶葉に対し8kg(Brix6.4)の抽出液を得た。この抽出液に活性炭(「太閤S」フタムラ化学(株))を0.26kg投入し、液温5℃で1時間攪拌処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、濃縮液(Brix20)を0.8kg得た。
濃縮液0.8kgにアスコルビン酸を4g配合し溶解させ、次いで参考例1の茶エキスを1kg配合、水を0.2kg配合し攪拌均一化させた。配合により得られたエキスを80℃×30sec.で加熱処理し、本発明の茶エキス混合物を得た(エキス2)。
成分組成の測定結果を表1及び表2に示す。
参考例2
秋冬番茶を強火で火入れをしたほうじ茶を水蒸気蒸留機に2kg仕込み、これに30℃の水を0.67kg均一に散布した後、30分間静置し湿潤させた。湿潤完了後、常圧下でSV(空間速度)50h-1で水蒸気蒸留を行い、原料茶葉に対し1kgの留出液を得た。
次いで茶葉を80℃の水で抽出し、原料茶葉に対し8kg(Brix6.4)の抽出液を得た。この抽出液に活性炭(「太閤S」フタムラ化学(株))を0.26kg投入し、液温5℃で1時間攪拌処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、濃縮液(Brix20)を0.8kg得た。
濃縮液0.8kgにアスコルビン酸を4g配合し溶解させ、次いで留出液を1kg配合、水を0.2kg配合し攪拌均一化させた。配合により得られたエキスを134℃×30sec.で加熱処理し、本発明の茶エキス混合物を得た(エキス3)。
成分組成の測定結果を表1及び表2に示す。
[比較例1]
秋冬番茶を強火で火入れをしたほうじ茶を水蒸気蒸留機に2kg仕込み、これに30℃の水を0.67kg均一に散布した後、30分間静置し湿潤させた。湿潤完了後、常圧下でSV(空間速度)50h-1で水蒸気蒸留を行い、原料茶葉に対し1kgの留出液を得た。
次いで茶葉を80℃の水で抽出し、原料茶葉に対し20kg(Brix2.8)の抽出液を得た。この抽出液を遠心分離と濾過により清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、濃縮液(Brix47.5)を0.8kg得た。
濃縮液0.8kgにアスコルビン酸を4g配合し溶解させ、次いで留出液を1kg配合、水を0.2kg配合し攪拌均一化させた。配合により得られたエキスを80℃×30sec.で加熱処理し、比較例の茶エキス混合物を得た(エキス4)。
成分組成の測定結果を表1及び表2に示す。
[比較例2]
秋冬番茶を強火で火入れをしたほうじ茶を水蒸気蒸留機に2kg仕込み、これに30℃の水を0.67kg均一に散布した後、30分間静置し湿潤させた。湿潤完了後、常圧下でSV(空間速度)50h-1で水蒸気蒸留を行い、原料茶葉に対し1.8kgの留出液を得た。次いで茶葉を80℃の水で抽出し、原料茶葉に対し8kg(Brix6.4)の抽出液を得た。この抽出液に活性炭(「太閤S」フタムラ化学(株))を0.26kg投入し、液温5℃で1時間攪拌処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、濃縮液(Brix50)を0.3kg得た。
濃縮液0.2kgにアスコルビン酸を4g配合し溶解させ、次いで留出液を1.8kg配合し攪拌均一化させた。配合により得られたエキスを80℃×30sec.で加熱処理し、比較例の茶エキス混合物を得た(エキス5)。
成分組成の測定結果を表1及び表2に示す。
[比較例3]
秋冬番茶を強火で火入れをしたほうじ茶を水蒸気蒸留機に2kg仕込み、これに30℃の水を0.67kg均一に散布した後、30分間静置し湿潤させた。湿潤完了後、常圧下でSV(空間速度)50h-1で水蒸気蒸留を行い、原料茶葉に対し1kgの留出液を得た。次いで茶葉を80℃の水で抽出し、原料茶葉に対し8kg(Brix6.4)の抽出液を得た。
この抽出液に活性炭(「太閤S」フタムラ化学(株))を0.72kg投入し、液温5℃で1時間攪拌処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、濃縮液(Brix12.5)を0.8kg得た。
濃縮液0.8kgにアスコルビン酸を4g配合し溶解させ、次いで留出液を1kg配合、水を0.2kg配合し攪拌均一化させた。配合により得られたエキスを80℃×30sec.で加熱処理し、比較例の茶エキス混合物を得た(エキス6)。
成分組成の測定結果を表1及び表2に示す。
Figure 0005433257
Figure 0005433257
表1及び表2の結果から、本発明における(a-1)+(a-2)+(a-3)、(a-1)/(a-2)、(b-1)、[(b-2)+(b-3)]/[(b-4)+(b-5)]の各値を計算した。その結果を表3に示した。
Figure 0005433257
本発明の参考例1、実施例2、参考例2に係る茶エキス又は茶エキス混合物は、(a-1)成分及び(a-2)成分及び(a-3)成分の合計が19.0ppm以上であり、(a-1)/(a-2)の値が0.3〜0.9であり、さらに実施例2及び参考例2に係る茶エキスは、(b-1)が3.0ppm以上であり、{(b-2)+(b-3)}/{(b-4)+(b-5)}の値が1〜15であることが示された。
〔II〕茶エキス又は茶エキス混合物を添加した茶飲料の製造とその評価
上記参考例1、実施例2、参考例2及び比較例1〜3で製造したエキス1〜6を添加した茶飲料を製造して評価した。なお、評価の基準となる茶飲料としてエキスを添加しない基準茶飲料を製造した。
[基準茶飲料]
60℃に調温した水1000gに緑茶10gを加え、5分間攪拌抽出を行なった。抽出後、茶葉を100メッシュで分離し、ビタミンCを0.2g配合、溶解させてから20℃以下まで冷却した。冷却後、2800rpmで10分間遠心分離を行ない、上澄み液を得た後、水を加えてBrix0.3を調整し、次いで重曹を添加しpHを6.0に調整した。調整後の液を134℃×30sec.でUHT殺菌を行った。
[試験例1]
60℃に調温した水1000gに緑茶10gを加え、5分間攪拌抽出を行なった。抽出後、茶葉を100メッシュで分離し、ビタミンCを0.2g配合、溶解させてから20℃以下まで冷却した。冷却後、2800rpmで10分間遠心分離を行ない、上澄み液を得た後、水を加えてBrix0.3を調整し、次いで重曹を添加しpHを6.0に調整した。調整液に参考例1のエキス1を0.1%(質量比)添加後、134℃×30sec.でUHT殺菌を行った。
[試験例2]
60℃に調温した水1000gに緑茶10gを加え、5分間攪拌抽出を行なった。抽出後、茶葉を100メッシュで分離し、ビタミンCを0.2g配合、溶解させてから20℃以下まで冷却した。冷却後、2800rpmで10分間遠心分離を行ない、上澄み液を得た後、水を加えてBrix0.3を調整し、次いで重曹を添加しpHを6.0に調整した。調整液に実施例2のエキス2を0.2%(質量比)添加後、134℃×30sec.でUHT殺菌を行った。
[試験例3]
60℃に調温した水1000gに緑茶10gを加え、5分間攪拌抽出を行なった。抽出後、茶葉を100メッシュで分離し、ビタミンCを0.2g配合、溶解させてから20℃以下まで冷却した。冷却後、2800rpmで10分間遠心分離を行ない、上澄み液を得た後、水を加えてBrix0.3を調整し、次いで重曹を添加しpHを6.0に調整した。調整液に参考例2のエキス3を0.2%(質量比)添加後、134℃×30sec.でUHT殺菌を行った。
[試験例4]
60℃に調温した水1000gに緑茶10gを加え、5分間攪拌抽出を行なった。抽出後、茶葉を100メッシュで分離し、ビタミンCを0.2g配合、溶解させてから20℃以下まで冷却した。冷却後、2800rpmで10分間遠心分離を行ない、上澄み液を得た後、水を加えてBrix0.3を調整し、次いで重曹を添加しpHを6.0に調整した。調整液に比較例1のエキス4を0.2%(質量比)添加後、134℃×30sec.でUHT殺菌を行った。
[試験例5]
60℃に調温した水1000gに緑茶10gを加え、5分間攪拌抽出を行なった。抽出後、茶葉を100メッシュで分離し、ビタミンCを0.2g配合、溶解させてから20℃以下まで冷却した。冷却後、2800rpmで10分間遠心分離を行ない、上澄み液を得た後、水を加えてBrix0.3を調整し、次いで重曹を添加しpHを6.0に調整した。調整液に比較例2のエキス5を0.2%(質量比)添加後、134℃×30sec.でUHT殺菌を行った。
[試験例6]
60℃に調温した水1000gに緑茶10gを加え、5分間攪拌抽出を行なった。抽出後、茶葉を100メッシュで分離し、ビタミンCを0.2g配合、溶解させてから20℃以下まで冷却した。冷却後、2800rpmで10分間遠心分離を行ない、上澄み液を得た後、水を加えてBrix0.3を調整し、次いで重曹を添加しpHを6.0に調整した。調整液に比較例3のエキス6を0.2%(質量比)添加後、134℃×30sec.でUHT殺菌を行った。
[官能評価]
基準茶飲料と試験例1〜6の茶飲料の香味について、熟練したパネル20名により官能評価を行った。
評価の基準は、基準茶飲料をコントロール(4点)とし、「香ばしさ」については非常に強い(7点)〜非常に弱い(1点)、「苦い香り」については非常に強い(7点)〜非常に弱い(1点)、「甘さ」については非常に強い(7点)〜非常に弱い(1点)、「渋味」については非常に強い(7点)〜非常に弱い(1点)、嗜好性については非常に高い(7点)〜非常に低い(1点)とする7段階評価で行った。
評価点の平均を表4に示した。
Figure 0005433257
パネルによる香味のコメントは以下のとおりである。
試験例1の茶飲料は、基準茶飲料と比較して、不快な苦みがなく、高級茶葉を想起させる香ばしい香りとまったりとした自然な香ばしさが感じられる。
試験例2の茶飲料は、基準茶飲料と比較して、不快な苦みがなく自然な甘さと香ばしさがあり、高級茶葉を想起させる香ばしい香りとまったりとした自然な甘さが十分に感じられる。
試験例3の茶飲料は、基準茶飲料と比較して、不快な苦みはなく香ばしさはあるが、雑みがあり甘さを感じにくいことから、高級茶葉を想起させる香味はあるものの僅かであった。
試験例4の茶飲料は、基準茶飲料と比較して、不快な苦みのある香りは無く、香ばしさはあるが、香味全体が重く感じられ渋味も強く、高級茶葉を想起させる香味は感じられなかった。
試験例5の茶飲料は、基準茶飲料と比較して、不快な苦みのある香りが強く感じられ、高級茶葉を想起させる香味は感じられなかった。
試験例6の茶飲料は、基準茶飲料と比較して、不快な苦みがなく香ばしさはあるが、呈味が弱く茶らしいバランスを崩しており、高級茶葉を想起させる香味は感じられなかった。
以上の結果から、本発明の茶エキス又は茶エキス混合物は、低級茶葉から製造したにもかかわらず、高級茶葉の優れた風味を有していることが判る。
[実施例4]緑茶飲料の製造
実施例2で得られた本発明のエキス2(Brix8.4)357gに3.7gの重曹及び4gのビタミンCを加え、さらに純水を加えて10Lとし、これを130℃、1分の条件で殺菌した後、PET容器(500ml)に充填し、本発明品飲料を得た。
一方、エキス5を用いる以外は本発明品飲料と同様の製造方法を用いて、対照品飲料1を得た。さらに、高級茶葉として火入れの強い一番茶を用いた飲料を試作した。すなわち、75℃に調温した水2700gに一番茶90gを加え、5分間攪拌抽出を行ない、抽出後、茶葉を140メッシュで分離し、20℃以下まで冷却し、冷却後、6300rpmで5分間遠心分離を行ない、澄み液を得た後、3.7gの重曹及び4gのビタミンCを加え、さらに純水を加えて10Lとし、これを130℃、1分の条件で殺菌した後、PET容器(500ml)に充填し、対照品飲料2を得た。
次に、本発明品飲料、対照品飲料1及び2について、専門パネルによる官能評価を行った。
香味評価は、専門パネル6名により評点法で行い、平均点を算出した。評点は、評価の基準は、対照品飲料2をコントロール(3点)とし、
「良い」 = 5点、
「やや良い」= 4点、
「ふつう」 = 3点、
「やや悪い」= 2点、
「悪い」 = 1点
の5段階とした。
評価点の平均を表5に示す。香味について、本発明品飲料は対照品飲料1及び2に比べて高い評価点を得た。
以上の結果から、本発明の茶エキス混合物入り飲料は、低級茶葉から製造したにもかかわらず、高級茶葉入り飲料と比較して、優れた風味を有していることが判る。
Figure 0005433257
本発明の茶エキス又は茶エキス混合物を茶飲料に添加することにより、高級茶葉が本来有している香ばしさと、まったりとした自然な甘さを有する、高級感あふれる茶飲料を提供することができる。

Claims (5)

  1. 茶葉から空間速度(SV)が20〜100h-1の条件の水蒸気蒸留により分画して、原料茶葉に対して30〜70%(質量比)の留出液を得る工程1、および、水蒸気蒸留後の茶葉残渣から抽出液を得、抽出液中で、Brix値から換算される当該抽出液中の可溶性固形物に対し50質量%の活性炭を使用して活性炭処理する工程2、および工程1の留出液と工程2の抽出液を混合する工程3、および工程3の混合液を100℃以下の温度で加熱処理する工程4を含む工程により得られる茶エキスであって、
    下記の(a-1)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(a-2)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(a-3)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上とを含有し、(a-1)、(a-2)および(a-3)の各群の成分合計量の和が19.0ppm以上であり、かつ (a-2)群の成分合計量に対する(a-1)群の成分合計量の割合{(a-1)/(a-2)}が0.3〜0.9であり、且つ、
    下記の(b-1)成分と、(b-2)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(b-3)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(b-4)の群から選ばれる成分の少なくとも1種以上と、(b-5)成分とを含有し、(b-1)群の成分量が3.0ppm以上であり、かつ(b-4)群の成分合計量と(b-5)群の成分量の和に対する(b-2)群の成分合計量と(b-3)群の成分合計量の和の割合{(b-2)群の成分合計量+(b-3)群の成分合計量}/{(b-4)群の成分合計量+(b-5)群の成分量}の値が1〜15である、茶エキス。
    (a-1):2−メチルピラジン、
    2,5−ジメチルピラジン、
    2,6−ジメチルピラジン、
    2−エチルピラジン
    (a-2):フルフリルアルコール、
    ベンジルアルコール、
    2−アセチルピロール、
    フェノール、
    ピロール−2−カルボキサルデハイド
    (a-3):2,3−ペンタジオン、
    3−ハイドロキシ−2−ペンタノン、
    シス−リナロールオキサイド、
    2−アセチルフラン、
    1−エチル−2−フォルミルピロール、
    2−アセチル−1−エチルピロール、
    メチルサリシレート
    (b-1):4−ハイドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン
    (b-2):アスパラギン酸、
    グルタミン酸、
    テアニン、
    アラニン、
    セリン、
    グリシン、
    スレオニン
    (b-3):フルクトース、
    グルコース、
    スクロース
    (b-4):ガロカテキン、
    エピガロカテキン、
    カテキン、
    エピカテキン、
    エピガロカテキンガレート、
    ガロカテキンガレート、
    エピカテキンガレート、
    カテキンガレート、
    没食子酸
    (b-5):カフェイン
  2. 工程4の加熱処理温度が75〜100℃であることを特徴とする請求項1記載の茶エキス。
  3. 活性炭処理が、5℃で行われることを特徴とする請求項1または2記載の茶エキス。
  4. 工程2における抽出が、水を溶媒とし、30〜100℃の温度で、抽出量が水蒸気蒸留前の原料茶葉の質量に対して100〜1000%となるように操作される請求項1〜のいずれかに記載の茶エキス。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の茶エキスを固形分換算で0.0001〜5質量%添加したことを特徴とする飲料。
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