JP5682985B1 - ジャスミン茶飲料及びその製造方法、並びにジャスミン茶飲料の後味改善方法 - Google Patents

ジャスミン茶飲料及びその製造方法、並びにジャスミン茶飲料の後味改善方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コールドから常温にかけての温度範囲において飲用する場合に、飲用開始時にはジャスミンの花香を強く感じることができると共に、飲用後の香りの抜けが良く、苦渋味に起因するボディ感を軽減して飲用後のキレやスッキリ感を確保しうる、止渇目的の飲料として好適なジャスミン茶飲料を提供する。【解決手段】飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が50〜500であると共に、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキン類濃度(mg/100g)の比率が0.5〜3.5であり、且つカテキン類合計濃度(mg/100g)が13.0〜36.0とする。【選択図】なし

Description

本発明は、ジャスミンの花、特にマツリカ(茉莉花)の花の香気を着香した茶葉から抽出されるジャスミン茶飲料及びその製造方法、並びに前記ジャスミン茶飲料の後味改善方法に関する発明である。
近年、様々な清涼飲料製品が流通する中で、茶系飲料についても緑茶系飲料、紅茶飲料、烏龍茶飲料をはじめ、非常に多種多様な製品が上市されており、そのバリエーションは年々拡大しつつある。
その中において、茶葉のみから抽出された緑茶、紅茶、烏龍茶といった一般的な茶系飲料の他に、玄米、黒豆等の焙煎穀物を混合したもの、フルーツフレーバー等が着香されたフレーバーティー等も様々な種類のものが流通しており、フレーバーとしては各種フルーツの他、ジャスミン、キンモクセイ(桂花)、バラ等の花香を着香させた所謂花茶も多種存在し、中でもジャスミン茶は、今日ポピュラーなフレーバーティーの一つである。
ジャスミン茶に用いられるジャスミンは、モクセイ科ソケイ属(素馨属 Jasminum)の植物の総称であり、世界で約300種が知られている。例えばベニバナソケイ(Jasminum beesianum)、リュウキュウオウバイ(Jasminum floridum)、ソケイ(Jasminum grandiflorum)、ヒマラヤソケイ(Jasminum humile)、ウンナンソケイ(Jasminum humile var. glabrum)、キソケイ(Jasminum humile var. revolutum)、オウバイ(Jasminum nudiflorum)、マリアナソケイ(Jasminum marianum)、オウバイモドキ(Jasminum mesnyi)、ボルネオソケイ(Jasminum multiflorum)、シロソケイ(Jasminum nervosum var. elegans)、オオシロソケイ(Jasminum nitidum)、オウバイ(Jasminum nudiflorum)、シロモッコウ(Jasminum officinale)、ハゴロモジャスミン(Jasminum polyanthum)、マツリカ(茉莉花、Jasminum sambac)、オキナワソケイ(Jasminum sinense)などを挙げることができる。
ソケイ属の植物種は、花が強いフレーバーを有するものが多く、従来から、香水等に使用されており、茶葉の着香にも用いられている。
前記で列記したもの中でも、特にマツリカ(茉莉花)は、ジャスミン茶の着香原料として、中国及び東南アジアなどで大規模に栽培され、これを用いたジャスミン茶は、近年はわが国においても飲用機会が増加してきている。
ジャスミン茶の着香は、夜間に開花するマツリカを、蕾(つぼみ)状態である昼間のうちに摘み取り、夜間に花が開き始めたところで、茶葉と混合して着香させる方法が従来から行われている。
着香先の茶葉としては緑茶が用いられることが一般的であるが、烏龍茶等の半発酵茶、白茶等の弱発酵茶が用いられることもある。
ジャスミン茶はその爽やかで甘い花香から、油分や香味野菜等の臭みを消し去り、口中をスッキリさせるという目的で、中国料理等、油分が多い食事の後、若しくは食事中に、熱水で抽出したものを熱いまま飲用する形態が一般的であった。
従って、花香が強く、且つ重厚なボディ感を有し、飲み応えがあるものが好まれていたが、近年においては、容器詰飲料の形態で提供されるジャスミン茶飲料も存在している。
前記容器詰ジャスミン茶飲料の場合、コールド〜常温状態で、止渇目的で飲用されるシーンが多く、この場合、ホットでの飲用シーンと比較して、ジャスミンの花香の香り立ちが弱くなるという特徴がある。
一方で、香り立ちが弱くなるに伴い、飲用液中に含有される苦渋み成分(カフェイン、カテキン類)や、糖分(単糖類、二糖類等)に起因するボディ感はより強く感じられるため、飲用後に長時間に亘って、苦渋味が口中に残り、香りのキレも悪くなることから、スッキリ感が阻害され、止渇目的の飲料としてゴクゴクと飲用するには重すぎて不向きな面もあった。
冷温状態で飲用されるジャスミン茶飲料に関する知見としては、リナロール及びメチルアンスラニレイト、並びにベンジルアルコールを含有しそれらの割合を所定の範囲に調整したジャスミン茶飲料が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、前記特許文献1にあっては、冷温状態で弱くなる傾向のジャスミンの花香を、飲用後においても強く保持し、飲用後までジャスミンの残香を強く感じさせることができるというものであり、飲用開始時においてはジャスミンの花香を十分に楽しめつつも、飲用後においては香りの抜けが良く、ジャスミン茶が有するボディ感を軽減して飲用後のキレやスッキリ感を確保するという要望に対しては、寧ろ逆行した作用を奏することから、止渇目的の飲料として、ジャスミン茶飲料を提供する点においては不十分なものであった。
特開2010−000049号公報
本発明は、コールドから常温にかけての温度範囲において飲用する場合に、飲用開始時(トップからミドル)に感じるジャスミンの花香を適度に高めつつも、苦渋味に起因するボディ感並びに、飲用後(ラスト)の残香を適度に抑制し、飲用後の香りの抜けが良く、苦渋味に起因するボディ感を軽減し、飲用後のキレやスッキリ感を確保しうる止渇目的の飲料として好適なジャスミン茶飲料を提供することにある。
前記課題を解決する手段として、飲料液中における二糖類と単糖類の合計濃度を所定範囲に調整しつつ、飲用液中のカフェイン濃度に対するエステル型カテキン類濃度を所定の割合とし、更にカテキン類の合計濃度が所定の範囲となるように調整することによって、ジャスミンのさわやかな花香を飲用開始時において十分に感じつつも、飲用後における香りの抜けが良く、且つ苦渋味に起因するボディ感が軽減されキレのあるスッキリとした味わいの止渇目的の飲料として好適なジャスミン茶飲料が得られる旨の知見を見い出した。
すなわち本発明は、
(1)
飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が50〜500であると共に、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキン類濃度(mg/100g)の比率が0.5〜3.5であり、且つカテキン類合計濃度(mg/100g)が13.0〜36.0であることを特徴とするジャスミン茶飲料。
(2)
飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が80〜300であることを特徴とする(1)のジャスミン茶飲料。
(3)
飲料液中のテアニン濃度(mg/100g)が7.0以下であることを特徴とする(1)又は(2)のジャスミン茶飲料。
(4)
飲料液中のテアニン濃度(mg/100g)に対する二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)の割合が15.0〜65.0であることを特徴とする(3)のジャスミン茶飲料。
(5)
飲料液中に含有される香気成分において、インドール含有量をI、リナロール含有量をL、及び酢酸ベンジル含有量Bとした場合に、以下式1を満たすことを特徴とする(1)〜(4)いずれか1のジャスミン茶飲料。
(式1)
[I/(L+B)]×100 < 12.0
(6)
容器詰飲料であることを特徴とする(1)〜(5)いずれか1のジャスミン茶飲料。
(7)
飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が50〜500であると共に、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキン類濃度(mg/100g)の比率が0.5〜3.5であり、且つカテキン類合計濃度(mg/100g)が13.0〜36.0となるように調整することを特徴とするジャスミン茶飲料の製造方法。
(8)
飲料液中に含有される香気成分において、インドール含有量をI、リナロール含有量をL、及び酢酸ベンジル含有量Bとした場合に、以下式1を満たすように調整することを特徴とする(7)のジャスミン茶飲料の製造方法。
(式1)
[I/(L+B)]×100 < 12.0
(9)
飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が50〜500であると共に、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキン類濃度(mg/100g)の比率が0.5〜3.5であり、且つカテキン類合計濃度(mg/100g)が13.0〜36.0となるように調整することを特徴とするジャスミン茶飲料の後味改善方法。
(10)
飲料液中に含有される香気成分において、インドール含有量をI、リナロール含有量をL、及び酢酸ベンジル含有量Bとした場合に、以下式1を満たすように調整することを特徴とする(9)のジャスミン茶飲料の後味改善方法。
(式1)
[I/(L+B)]×100 < 12.0
に関する。
本発明により、飲用開始時(トップからミドル)にかけて、ジャスミンの花香を適度に高めつつも、苦渋味に起因するボディ感並びに、飲用後(ラスト)の残香を適度に抑制し、コールド〜常温の温度域においてもキレのあるスッキリとした味わいの、止渇目的の飲料として好適なジャスミン茶飲料を得ることができる。
本願発明を実施する為の形態について、以下詳述するが、本願発明の技術的範囲から逸脱しない限りにおいて、以下に示す実施形態以外の公知手法を適宜選択することも可能である。
(ジャスミン茶)
本実施形態においてジャスミン茶とは、上述したマツリカ(茉莉花)の香りを着香させた茶葉の総称を言う、原料茶葉としては、緑茶、烏龍茶(半発酵茶)、白茶(弱発酵茶)等を選択することができ、花弁が茶葉に混合された形態のものも含む。
(茶葉原料)
本実施形態において原料茶葉は、本願発明の要件を満たす限りにおいて、形態や種類を特に制限するものではない。例えば、緑茶であれば、蒸し茶、煎茶、玉緑茶、釜炒り茶、焙じ茶、番茶、柳、中国緑茶等、不発酵茶に分類される茶を広く包含し、これら2種類以上をブレンドしたものも包含する。
更に、烏龍茶等の半発酵茶、並びに、白茶等の弱発酵茶についても同様であり、茶葉自体の形態は問わない。また、乾燥度合や焙煎強度についても問わない。
また、ジャスミン以外のフレーバーが別途添加されていてもよいが、本発明の効果を顕著に発揮させるためには、ジャスミン以外のフレーバーが着香されていないことが望ましい。
(ジャスミン茶飲料)
本実施形態にあってジャスミン茶飲料は、上述のジャスミン茶を水、若しくは所定温度の熱水にて抽出して得られた抽出液を主成分とする液体をいい、容器に充填された容器詰飲料の形態であることが望ましい。
本実施形態のジャスミン茶飲料はホット状態でも飲用可能であるが、本発明の効果を発揮させる為には、コールド(氷温以上)〜常温の形態で飲用されることが望ましい。
なお、前記抽出液は、複数種のジャスミン茶の抽出液を混合しても良く、また必要に応じて濃縮若しくは希釈しても良い。
(単糖類)
単糖類は、一般式C12で表される炭水化物であり、加水分解によりそれ以上単純な構造にならない糖類を指す。
本実施形態にあっては、グルコース(ブドウ糖)、及びフルクトース(果糖)を示すものである。
(二糖類)
二糖類は単糖の2分子が脱水縮合によるグリコシド結合を介して1分子となった糖のことであり、砂糖の主成分であるスクロース(ショ糖)が代表的である、本実施形態にあっては二糖類の濃度は、スクロースの濃度(ppm)を示すものである。
(糖類濃度)
単糖類と二糖類の合計濃度はジャスミン茶飲料のボディ感の強さと相関する。
本実施形態にあっては、上述の単糖類(グルコース、フルクトース)と、二糖類(スクロース)の合計濃度(ppm)は50〜500であり、50〜400がより望ましく、75〜300が更に望ましく、80〜300が最も望ましい。
合計濃度が50ppm未満であると、ボディ感が極度に低すぎ、飲料として物足りない味わいとなり、500ppmを超過すると、ボディ感が強すぎてキレやスッキリ感が感じられなくなり、止渇目的の飲料として望ましくなく、また飲用時におけるジャスミン花香を感じにくくする要因ともなる。
また、原料茶の焙煎状態によっても糖類濃度をコントロールすることが可能である。
本実施形態にあっては、上記の数値範囲であれば、原料由来以外に、ブドウ糖、果糖、ショ糖等の糖類を添加することもでき、また高甘味度甘味料等の甘味料を添加することもできるが、本願発明の作用効果を顕著に得る為には、原料由来以外の糖分、甘味料は添加しない、所謂無糖飲料であることが望ましい。
(カテキン類)
本実施形態にあっては、カテキン類には、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)の合計8種のカテキン類を含み、カテキン類の濃度とは、前記8種のカテキンの合計濃度をいう。
本実施形態にあっては、カテキン類の濃度(mg/100g)は、13.0〜36.0であり、15.0〜36.0であることが望ましく、20.0〜35.0がより望ましく、25.0〜35.0がさらに望ましい。
カテキン類の合計濃度が13.0mg/100g未満であると、苦渋味が少なすぎ飲料として物足りないものとなり、36.0mg/100gを超過した場合は、苦渋味が飲用後も残ってしまい、キレやスッキリ感の阻害となりうる。
なお、カテキン類の濃度を調整するためには、抽出条件等で調整することができる。
カテキン類は高温ほど抽出され易くなることから、抽出時に用いる湯の温度調整、抽出時間の長短によって、茶葉の量等によって抽出されるカテキン類の量を任意に調整することができる。
またカテキン類を直接添加して調整することも可能であるが、茶飲料としてのバランスが崩れるおそれがあるため、茶抽出液を得るための条件を調整するほか、茶抽出液どうしの混合、或いは茶抽出物の添加などによって調整することが望ましい。
(エステル型カテキン)
また、本発明において、エステル型カテキンとは、遊離型カテキンの水酸基と没食子酸のカルボキシル基とが脱水縮合し(エステル化)、結合した構造を有し、ガレート型カテキンとも称され、エステル結合した没食子酸側はガレート基と称される。
具体的には、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)の総称である。
エステル型カテキンの量については、茶抽出液を得るときの抽出条件や、得られた複数種類の抽出液の混合割合を調整することによりエステル型カテキン類量を調整することができる旨が既に知られている。
この際、エステル型カテキン類又はこれを含有する茶抽出物や茶濃縮物を別途に添加して調整することも可能であるが、緑茶飲料本来の香味バランスが崩れるおそれがあるため、エステル型カテキン類を別途添加することなく、茶抽出液を得るための条件を調整する他、茶抽出液どうしの混合、或いは茶抽出物の添加などによって調整することが望ましい。
また、エステル型カテキン比率は、上記のほか、タンナーゼ処理等の公知の方法でも行うことができる。
(エステル型カテキン比率)
本実施形態にあっては、カテキン類の合計濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキンの濃度(mg/100g)比率は、0.4〜1.0が望ましく、0.4〜0.7がより望ましく、0.5〜0.7が更に望ましい。
エステル型カテキンは苦渋味への寄与が大きく、エステル型カテキンの比率が高すぎると鋭い残香感があり、ジャスミンの重い香りを助長し、止渇目的の飲料として望ましくなく、キレやスッキリ感の阻害となるが、また、少なすぎると薄く物足りない味わいとなる。
(カフェイン濃度)
カフェインはプリン環を有するプリンアルカロイドの一種である。コーヒーの他、緑茶、紅茶等にも含まれ、カテキン類と同様に苦味を呈するが渋味は少ない。
一定濃度範囲で、且つエステル型カテキンとの濃度比率を調整することによって、花香の余韻を妨げることなく飲用後のキレやスッキリ感を高める作用を奏する。
本実施形態にあっては、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)は、2.0〜16.0であることが望ましく、5.0〜15.0がより望ましく、5.0〜13.0であることが更に望ましい。
(カフェイン濃度に対するエステル型カテキン濃度の比率)
本実施形態においては、「カフェイン濃度に対するエステル型カテキンの濃度比率(エステル型カテキン/カフェイン)」は、0.5〜3.5あり、0.5〜3.0がより望ましく、であることが望ましく、0.8〜3.0が更に望ましく、0.8〜2.5であることが最も望ましい。3.5を超過するとエステル型カテキンに起因する渋味が目立ち、止渇目的の飲料として望ましくなく、0.5未満の場合は飲料としてのメリハリが出なくなる。
(pH)
本実施形態にあっては、飲料液のpHは、20℃で5.0〜7.0であることが望ましく、5.0〜6.4であるのがより望ましく、6.0〜6.4であることが更に望ましい。
(アミノ酸)
本実施形態において、アミノ酸の合計濃度(mg/100g)は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニン、及びテアニンの濃度合計(mg/100g)とする。
本実施形態にあっては、アミノ酸の合計濃度(mg/100g)は、2.0〜15.0であることが望ましく、3.0〜15.0がより望ましく、3.5〜15.0が更に望ましい。
(テアニン)
テアニンは、本実施形態に係るジャスミン茶飲料の飲料液中に含まれるアミノ酸の一つであり、甘味と旨味に大きく寄与する物質である。
本実施形態にあっては、テアニン濃度(mg/100g)は、7.0以下であり、2.0〜7.0がより望ましく、2.0〜6.5が更に望ましい。
テアニン濃度が高すぎると、旨味が強すぎ香りの余韻と飲用後のキレやスッキリ感を阻害するが、低すぎると水っぽく物足りない味わいとなる。
また、テアニン濃度に対する単糖類と二糖類の合計濃度の比率は、15.0〜65.0の範囲であることが望ましく、20.0〜60.0がより望ましく、25.0〜50.0が更に望ましい。15.0未満の場合旨味が口に残り易く、香り立ちの阻害要因となり、65.0を超過すると香りと味のバランスを崩す要因となる。
(香気成分)
ジャスミン茶飲料には多種の香気成分が含まれている。香気成分はその物理的性質から、飲用開始後すぐに感じられる香気(所謂トップ香気〜ミドル香気)としては、リナロール、cis−3−ヘキセノール、及びcis−3−ヘキセニルアセテート等、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール等の成分があり、飲用後半から飲用後において強く感じられる香気(所謂ラスト香気)にはインドール等の成分がある。
トップの香り立ちを強く保持したまま、後味のキレとスッキリ感を出すため、トップ香気とラスト香気のバランスを調整する。
本実施形態にあっては、リナロール含有量Lと酢酸ベンジル含有量Bの合計に対するインドール含有量Iの割合(%換算)、即ち、以下式1の値が12.0未満であることが望ましく、1.0 < [I/(L+B)]×100 < 7.0であることがが最も望ましい。
(各成分の測定方法)
各成分の測定方法は、公知の方法を適宜用いることができるが、例えば、以下記載の測定
方法を用いることができる。
(単糖類、二糖類の測定方法)
単糖、二糖はHPLC糖分析装置(Dionex社製)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
カラム:Dionex社製Carbopack PA1 φ4.6×250mm
カラム温度:30℃
移動相:A相 200mM NaOH
:B相 1000mM Sodium Acetate
:C相 超純水
流速:1.0mL/min
注入量:25μL
検出:Dionex社製ED50 金電極
グラジエントプログラム:表1
Figure 0005682985
(カテキン類、エステル型カテキンの測定方法)
カテキン8種量及びエステル型カテキン量は、Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
カラム: wakosil 3C18HG φ3.0×100mm(和光純薬工業株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:A相 5%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
B相:50%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
流速:0.43mL/min
注入量:5μL
検出:UV230nm
グラジエントプログラム:表3
Figure 0005682985
(Brix)
光学屈折率計(アタゴ社製、Refractometers、RX−DD7α−tea)を用いて、Brixを測定した。
(アミノ酸)
Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
サンプル調整法:
サンプルを適量はかりとり、蒸留水に懸濁後、フィルターろ過して分析に供した。
HPLC測定条件:
カラム :XBridge Shield RP18 3.0×100mm
温度 :40℃
注入量 :5μL
移動相A:50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)
移動相B:アセトニトリル
検出器 :Waters 2475マルチ波長蛍光検出器
検出波長:励起335nm エミッション450nm(アミノ酸、テアニンの測定方法)
グラジエントプログラム:表3
Figure 0005682985
(香気成分の測定方法)
各サンプルを適宜希釈し、20mLバイアルにサンプルを10mL、塩化ナトリウムを3g、及び内部標準物質として0.1%シクロヘキサノールを5μL加え、抽出用サンプルとした。抽出操作は固相マイクロ抽出(SPME)ファイバー(シグマアルドリッチ社製,50/30μm DVB/CAR/PDMS,1cm)を用い、60℃にて30min抽出した。得られたサンプルを以下の条件によりガスクロマトグラフィー質量分析に供した。
各香気成分の含有量は、0.1%シクロヘキサノールのピーク面積を1とした場合における、各成分のピーク面積比率の値で示した。
ガスクロマトグラフィー条件:
使用機器:Agilent 5973N(アジレントテクノロジーズ社製)
インジェクション:スプリットレスモード
注入口温度:240℃
カラム:DB−WAX60m×0.25mm×0.25μm
キャリア:ヘリウム
流速:0.8mL/min
オーブン温度:35℃〜5℃/min〜240℃
質量分析条件:
使用機器:Agilent 5973N(アジレントテクノロジーズ社製)
イオン化方式:電子イオン化(EI)法
本実施例において示す各香気成分の含有量は、内部標準物質(0.1%シクロヘキサノール
5μL)のピーク面積を1とした場合の相対面積で示した数値であり、各成分の面積値は以下の質量を用いて計算した。
シクロヘキサノールm/z82
リナロールm/z93
酢酸ベンジルm/z108
インドールm/z117
(容器)
本発明の緑茶飲料を充填する容器は、特に限定するものではなく、例えばプラスチック製
ボトル(所謂ペットボトル)、スチール、アルミなどの金属缶、ビン、紙容器などを用い
ることができ、特に、ペットボトルなどの透明容器等を望ましく用いることができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、以下に記載の実施例に限定されるもので
はない。
<ジャスミン茶飲料の製法>
本実施例中に示すジャスミン茶飲料の実施例試料並びに比較例試料の調整方法につき以下説明する。
本実施例に示す各試料(実施例試料1乃至実施例試料7、比較例試料1乃至比較例試料8)は、以下に示すジャスミン茶抽出液A乃至Dを単独若しくは所定比率で混合し、更に必要に応じ公知の成分調整手段により、飲用液中の各成分の含有量を調整することで製造した。また、比較例の調整にあっては意図的に本願の要件を外すべく、糖類、カテキン製剤等の成分を添加しても良い。
(抽出液A)
ジャスミン茶茶葉(銀毫)50gを1250mlの熱水(65℃)で3分間抽出し、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で定容し、抽出液Aとした。
(抽出液B)
ジャスミンの花香を着香した頭柳50gを1250mlの熱水(65℃)で5分間抽出し、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で定容し、抽出液Bとした。
頭柳とは、緑茶加工の工程でやや硬化した葉が柳の葉のように扁平にもまれたものを選別したもの。
(抽出液C)
ジャスミンの花香を着香したほうじ茶50gを1250mlの熱水(80℃)で3分間抽出し、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で定容し、抽出液Cとした。
(抽出液D)
ジャスミンの花香を着香した玉露50gを1250mlの温水(50℃)で10分間抽出し、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で定容し、抽出液Dとした。
前記の各抽出液を用いて、実施例試料1乃至7及び比較例試料1乃至8を以下の通り調整した。
各試料はアスコルビン酸を400ppm相当量添加した後に、重曹を添加して殺菌後のpHが6.2になるように調整し、イオン交換水を加えてメスアップした。
その液を、耐熱性の缶容器に充填して蓋をし、30秒間転倒殺菌後にレトルト殺菌F値9以上(121℃、9分)を行い、20℃まで冷却して作成した。
調整後の各試料の分析結果を表4に示す。
(実施例試料1)
抽出液Aと抽出液Bを1:1の割合で混合する。
(実施例試料2)
抽出液Bを単独で用いる。
(実施例試料3)
抽出液Dと比較例試料1を1:2の割合で混合する。
(実施例試料4)
抽出液Aにスクロースを150ppm相当量添加する
(実施例試料5)
抽出液Aを単独で用いる。
(実施例試料6)
抽出液Aにスクロースを300ppm相当量添加する。
(実施例試料7)
実施例試料4と抽出液Cを1:2の割合で混合する。
(比較例試料1)
抽出液Aを以下の処理で脱カテキン処理を行う。

抽出液AにPVPP(ポリビニルピロリドン)を抽出液500gに対し1.0g添加。

20分間攪拌後、No.2濾紙でろ過し、ろ過前の液量に純水でメスアップする。
(比較例試料2)
抽出液Aを以下の処理で脱カテキン処理を行う。

抽出液Aに活性炭及びPVPP(ポリビニルピロリドン)を抽出液500gに対し夫々1.0g添加する。

20分間攪拌後、No.2濾紙でろ過し、ろ過前の液量に純水でメスアップする。
(比較例試料3)
抽出液Aを以下の処理で脱カテキン処理を行う。

抽出液Aに活性炭を抽出液500gに対し1.0g添加する。

20分間攪拌後、No.2濾紙でろ過し、ろ過前の液量に純水でメスアップする。
(比較例試料4)
比較例試料3にカテキン製剤(製品名:テアフラン90(株式会社伊藤園製))を添加する。
(比較例試料5)
抽出液Cを単独で用いる。
(比較例試料6)
抽出液Aにスクロースを濃度450ppm相当量添加する。
(比較例試料7)
比較例試料1及び2を1:2の割合で混合する。
(比較例試料8)
抽出Dを単独で用いる。
Figure 0005682985
2.官能評価
前記表2の通りに調整された実施例1乃至7、及び比較例1乃至8について、10℃に冷却し、以下の評価項目により官能評価試験を実施した。
官能評価試験は、10人のパネラーに委託して行い、各項目を以下に示す基準で評価したものである。ここで、表中の数値は、10人のパネラーの評価の平均値を算出(小数点以下は四捨五入)したものである。
<飲み口の軽さ>
0点:非常に物足りなくメリハリが無い、非常に重くて飲みにくい
1点:やや物足りない、やや重過ぎる
2点:普通
3点:最適な軽さでごくごく飲める
<キレ>
0点:非常に口に残り、花香の余韻を妨げる
1点:やや口に残るが飲用可能
2点:ややキレが良い
3点:非常にキレが良く、適度な花香の余韻が感じられる
<冷涼感>
0点:全く感じず、べたっとしている
1点:やや感じる
2点:普通
3点:非常に感じられ、口の中がすっきりする
<やわらかさ>
0点:非常に口当たりが悪く、刺々しい
1点:やや口当たり悪い
2点:普通
3点:非常に口当たりがやわらかく、心地よい
<トップの香り立ち>
0点:全く花香を感じない
1点:やや感じる
2点:普通
3点:非常にトップの花香を感じる
前記の各評価項目の合計点を参考に、飲料商品としての適正を総合的に評価した。
<総合評価>
×:商品としての適性に劣っている(5点未満又は0点評価項目有り)
△:商品としての適性は標準的である(6〜8点)
○:商品としての適性に優れている(9〜11点)
◎:商品としての適性に非常に優れている(12点以上)
前記の各評価項目について実施例及び比較例の評価を行った結果を表5に示す。
Figure 0005682985
(考察)
官能評価を行った結果、飲料液中における二糖類と単糖類の合計濃度を所定範囲に調整しつつ、飲用液中のカフェイン濃度に対するエステル型カテキン類濃度を所定の割合とし、更にカテキン類の合計濃度が所定の範囲となるように調整することによって、ジャスミンのさわやかな花香を飲用開始時において十分に感じつつも、飲用後における香りの抜けが良く、且つ苦渋味に起因するボディ感が軽減されキレのあるスッキリとした味わいの止渇目的の飲料として好適なジャスミン茶飲料が得られることが確認できた。
ジャスミンの花、特にマツリカ(茉莉花)の花の香気を着香した茶葉から抽出されるジャスミン茶飲料及びその製造方法、並びに前記ジャスミン茶飲料の後味改善方法に利用可能である。

Claims (5)

  1. 飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が50〜500であり、カフェイン含有量が2.0〜12.7(mg/100g)であり飲料液中の アミノ酸濃度(mg/100g)が2.0〜15.0であり、テアニン濃度(mg/100g)が2.0〜6.5であり、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキン類濃度(mg/100g)の比率が0.5〜3.5であって、更にカテキン類合計濃度(mg/100g)が13.0〜36.0であり、飲料液中に含有される香気成分において、インドール含有量をI、リナロール含有量をL、及び酢酸ベンジル含有量Bとした場合に、以下式1を満たすことを特徴とする容器詰ジャスミン茶飲料。
    (式1)
    [I/(L+B)]×100 < 12.0
  2. 飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が80〜300であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰ジャスミン茶飲料。
  3. 飲料液中のテアニン濃度(mg/100g)に対する二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)の割合が15.0〜65.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器詰ジャスミン茶飲料。
  4. 飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が50〜500であり、カフェイン含有量が2.0〜12.7(mg/100g)であり飲料液中の アミノ酸濃度(mg/100g)が2.0〜15.0であり、テアニン濃度(mg/100g)が2.0〜6.5であり、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキン類濃度(mg/100g)の比率が0.5〜3.5であって、更にカテキン類合計濃度(mg/100g)が13.0〜36.0であ、飲料液中に含有される香気成分において、インドール含有量をI、リナロール含有量をL、及び酢酸ベンジル含有量Bとした場合に、以下式1を満たすように調整することを特徴とする容器詰ジャスミン茶飲料の製造方法。
    (式1)
    [I/(L+B)]×100 < 12.0
  5. 飲料液中の二糖類と単糖類の合計濃度(ppm)が50〜500であり、カフェイン含有量が2.0〜12.7(mg/100g)であり飲料液中の アミノ酸濃度(mg/100g)が2.0〜15.0であり、テアニン濃度(mg/100g)が2.0〜6.5であり、飲用液中のカフェイン濃度(mg/100g)に対するエステル型カテキン類濃度(mg/100g)の比率が0.5〜3.5であって、更にカテキン類合計濃度(mg/100g)が13.0〜36.0であ、飲料液中に含有される香気成分において、インドール含有量をI、リナロール含有量をL、及び酢酸ベンジル含有量Bとした場合に、以下式1を満たすように調整することを特徴とする容器詰ジャスミン茶飲料の後味改善方法。
    (式1)
    [I/(L+B)]×100 < 12.0
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