JP6915914B2 - 表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板 - Google Patents

表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板 Download PDF

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Description

本発明は、表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板及びその製造方法に関し、特に、自動車などの車両の窓などに被覆ポリカーボネート基板を適用して、緊急の際に自動車などのガラス窓と同様に、容易に窓を破壊して脱出することを可能とした表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板及びその製造方法に関する。
従来、ポリカーボネート(以下に、PCという場合もある)を素材とするフィルムやシート、成形加工品とする樹脂板は、透明性や耐衝撃性、耐熱性、難燃性などに優れ、ガラスに比べて軽量で成形性にも優れデザイン的な自由度が高いために、自動車などの車両の窓ガラスに代わり軽量なプラスチック窓として用いられている。
今後もEV車両や自動運転車両、新幹線やリニアモーター鉄道車両などの次世代車両に多く採用されることが期待されている。
しかし、ガラスに比べてPCは、表面硬度や耐擦傷性などの表面特性に劣るので、シリコーンハードコートの被覆層を設けて用いられているが十分でない。
ハードコートの種類には、例えばUV硬化型アクリル系樹脂や熱硬化型メラミン樹脂、熱硬化型有機無機シラン化合物などがある。
これらのハードコートの中でも特に優れた表面硬度や耐擦傷性が得られるのは、熱硬化型有機無機シラン化合物で樹脂基板の表面に硬化層を形成する方法である。
この有機無機シラン化合物のハードコートはシリコーンハードコートと呼ばれ、骨格をシラン化合物成分で形成されるRnSi(OR')4-nの一般式で表され(ここで、Rは有機置換基、OR'は有機官能基、nは0〜4)、有機官能基を3個持つ3官能性アルコキシシランをゾルゲル法で加水分解・縮合反応により生成させた反応物のゾル液を基板に塗布して湿潤ゲルとし、加熱処理により架橋・縮合・硬化した被覆層を形成して乾燥ゲルのシリコーンハードコートとしている。
シリコーンハードコートは熱膨張率の低い有機無機シラン化合物であり、有機物のPC基板は一般的な樹脂と同様に熱膨張率が高いために、PC基板表面に直接シリコーンハードコートを形成しても、熱膨張率の差により剥がれや亀裂が生じて良好な密着性を持つ被覆層を形成することができない。
一般的には熱膨張率の差を緩和させるために、塗布形成したプライマー層を介して、PC基板とシリコーンハードコートを密着させている。
また、自動車のプラスチック窓などには、一般的に、プライマー層に紫外線吸収剤などを添加してPC基板の耐候性を向上させて劣化を防いでいる。
場合によってはハードコート層に紫外線吸収剤などを添加して耐候性を補うこともある。
例えば、従来の技術の被覆PC基板では、図6に示すように、プライマー層を設け、その上層にシリコーンハードコートのハードコート層を設けた被覆層の構造で、表面硬度や耐擦傷性に優れたプラスチック窓を得ようとしていた。
一般に、PC基板に施したハードコートの耐擦傷性の評価に、鉛筆の芯で引っ掻いて傷が付くか付かないかを観察し、鉛筆の芯の硬さで示す鉛筆硬度試験があり、鉛筆硬度を耐擦傷性の基準としている。
従来技術の被覆層(図6)では、数ミクロンメーターの厚さのハードコート層に、どのように硬い物質を用いて形成しても、鉛筆硬度は一定の値以上にならない。
自動車の安全規格ではドライバーの視認性を妨げるような傷があってはならず、PC基板に施したハードコートの表面を擦って、傷の付き具合を光学的に光線透過の曇化率(本明細書では△H%と表記する)を測定して耐擦傷性として評価している。
しかし、従来の技術の被覆PC基板では、自動車などのプラスチック窓に一般的に用いられているPC基板に、ハードコートは十分な表面硬度と耐擦傷性を同時に満足しておらず、自動車など車両のプラスチック窓として本格的な実用化には大きな障壁となっている。
すなわち、PCは、一般的な物性として知られているガラス転移温度は約147℃であるが、PCは二つのガラス転移温度を持ち、PC表面にもう一つのガラス転移温度相があり、そのガラス転移温度は20℃と低く、室温でのPC表面相はゴム状態の性質を持っていることが記載されている(非特許文献1)。
このゴム状態の表面相に、僅か数ミクロンメーターのハードコートの被覆層を施しても、鉛筆などの硬い尖った先で引っ掻けば容易に薄い被覆層を突き破って傷が付いてしまう。
Formation of a Metastable Phase of Bisphenol-A Polycarbonate Induced by Mechanical Stress; Matsuda Y., Hanamura R., Takemura Y., Sugita A. and Tasaka S., J. Appl. Polym. Sci. 2012, 126, E116-E122.
本発明は、以下のことを課題とする。
すなわち、自動車(乗用車、バス、トラック、トラクター、ローダー、建機キャビン、特殊車両などを含む)や電車などの窓ガラスに代わるプラスチック窓には、透明で耐衝撃性に優れたPCが車両の軽量化などのために用いられているが、ガラスと較べ表面は傷が付き易くワイパーなどで傷が付いてしまい、ドライバーの視認性を妨げるのが問題となっている。これらを解決するために、ハードコートと呼ばれる高硬度で耐擦傷性に優れた被覆層を表面に設けているが十分でない。
また、自動車などの車両の窓ガラスに使用した場合において、PCは割れ難く強靭なため、何らかの事故で車両内に閉じ込められた場合に、簡単にPCを割って脱出することができなく、例えば自動車の水没事故の際の不安要素となっている。
本発明は上記の課題を解決する自動車のプラスチック窓を提供することも課題とする。
本発明は以下の特徴を有する。
(1)ポリカーボネート基板の両面に、
アクリル樹脂を主成分としたキャッピング層が設けられ、
その片方の面の上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
その上層に有機無機シラン化合物を主成分とするハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
(2)ポリカーボネート基板の両面に、
アクリル樹脂を主成分とするキャッピング層が設けられ、
その片方の面の上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
その上層に有機無機シラン化合物を主成分とする2層のハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
(3)ポリカーボネート基板の片面に、
アクリル樹脂を主成分とするキャッピング層が設けられ、
その上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
その上層に有機無機シラン化合物を主成分とするハードコート層が設けられ、
ポリカーボネート基板の他面に、
アクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
その上層に有機無機シラン化合物を主成分とするハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
(4)ポリカーボネート基板の片面に、
アクリル樹脂を主成分とするキャッピング層が設けられ、
その上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
その上層に有機無機シラン化合物を主成分とする2層のハードコート層が設けられ、
ポリカーボネート基板の他面に、
アクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
その上層に有機無機シラン化合物を主成分とする2層のハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
(5)前記キャッピング層の厚みが、前記ポリカーボネート基板の板厚に対して5%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
本発明の被覆PC基板は、PCを基板とし、PC基板とハードコートを良好に密着させるためのプライマー層を設け、その上層には有機無機シラン化合物を主成分とするシリコーンハードコートの2層のハードコート層を設けているので、表面硬度や耐擦傷性をより向上させることができる。
さらに、本発明の被覆PC基板は、PC基板の柔らかくて傷が付き易いという表面物性を、PCと較べて硬いアクリル樹脂のポリメタクリル酸メチル(以後PMMAと言う)の物性に置換えるキャッピング層をPC基板表面に設け、PC基板あるいはキャッピング層にハードコートを良好に密着させるためのプライマー層を設け、その上層には有機無機シラン化合物を主成分とするシリコーンハードコートの1層目ハードコート層を設けることで、高い表面硬度や耐擦傷性を持つプラスチック窓を得ることができる。
また、本発明の被覆PC基板は、1層目と同様な有機無機シラン化合物を主成分とするシリコーンハードコートの2層目のハードコート層を設けることで、より高い表面硬度や耐擦傷性を得ることができる。
さらに、PC基板にPMMAのキャッピング層を設けることで、割れ難いPC基板の表面物性を、割れ易いPMMAの物性に置き換えることができる。
これにより、衝撃や曲げなどによる引張方向の応力に弱いPMMAのキャッピング層を自動車のプラスチック窓の車外面側に配置することで、車両の外面側からの衝撃力や曲げ力に対する破壊を維持しつつ、車両の内面側からの衝撃力や曲げ力によってキャッピング層に亀裂が発生し、容易に破壊することができるプラスチック窓とすることができる。
またさらに、本発明の被覆PC基板は、PC基板の両面にキャッピング層を有するので、ガラス窓と同様に車両内外の両方向からの衝撃力や曲げ力により破壊することができる。
実施形態1のハードコート層を被覆した被覆ポリカーバネート基板であり、(a)は片面に被覆した例、(b)は両面に被覆した例である。 実施形態2のハードコート層を被覆した被覆ポリカーバネート基板であり、(a)は片面に被覆した例、(b)は両面に被覆した例である。 実施形態3のハードコート層を被覆した被覆ポリカーバネート基板であり、(a)は片面に被覆した例、(b)は両面に被覆した例である。 実施形態4のハードコート層を被覆した被覆ポリカーバネート基板であり、(a)は片面に被覆した例、(b)は両面に被覆した例である。 実施形態5のハードコート層を被覆した被覆ポリカーバネート基板であり、(a)は片面に被覆した例、(b)は両面に被覆した例である。 従来のハードコート層を被覆した被覆ポリカーバネート基板であり、(a)は片面に被覆した例、(b)は両面に被覆した例である。
本発明者は、電気自動車や自動運転車両などの次世代自動車の車両の軽量化において、最後に残された軽量化の課題と言われるガラス窓のプラスチック化に取り組み、エンジニアリングプラスチックの中で透明性に優れ、耐衝撃性に優れて割れ難く、比重はガラスの約半分で軽く、一般的にどこでも入手が可能なPCをプラスチック窓の基板に用い、ガラスと較べて劣るPCの表面硬度や耐擦傷性を、ハードコートの被覆層を施すことによって改善し、自動車などの車両のプラスチック窓の良好な実用化をすべく鋭意研究開発した結果、表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆PC基板を提供することができた。
PCの持つゴム状態の表面相の鉛筆硬度は2Bである。
この柔らかいゴム状態の表面相を、PCと較べて2Hの表面硬度を持つアクリル樹脂のPMMAでキャッピングすることで、基板の表面硬度を2Hに置き換えることができる。
本発明の被覆PC基板は、PC基板にキャッピング層を設け、次に良好な密着性を保つプライマー層を設け、その上にハードコート層を設けることで、表面硬度や耐擦傷性を向上することができる。
また、従来の被覆PC基板(図6)のハードコート層の厚みは5μm以下の薄い層であるために、砥石やスチールウールで擦った場合に、PC基板のゴム状態の表面相の影響を受けて、被覆層が破壊され耐擦傷性に乏しくなる。5μm以上の厚い層にしようとすると加熱処理の引けなどによりクラックが発生し、プラスチック窓の良好な品質が得られない。
そこで、図1(実施形態1),図3(実施形態3)、図5(実施形態5)に示す被覆PC基板は、2層目のハードコート層を重ねて積層する構造にすることで、ハードコート層を厚くすることができ、表面硬度や耐擦傷性をより良好にすることができる。
なお、2層目のハードコート層にシリカナノ粒子を添加することで、耐擦傷性をより改善することができ、キャッピング層を設けることでの表面硬度の高硬度化も相俟って、良好な表面硬度や耐擦傷性を更に向上することができる。
<キャッピング層の形成>
PC基板表面の柔らかいゴム状態の物性を、他の材料で覆い物性を置き換えるキャッピング層を設けることを実施した。
キャッピング層はプラスチック窓の耐擦傷性を妨げる欠点要因のPCの表面物性を封じ込め、なお且つPCの持つ優れた特性を保つ必要がある。またキャッピング層の材料はPC基板の鉛筆硬度の2Bより硬くて、PC基板との密着において相溶性のある材料が好ましく、アクリル樹脂のPMMAを主成分とする鉛筆硬度2Hの材料が適している。
<キャッピング層の形成>
PC基板へのキャッピング層の形成方法としては特に制限はなく、2層射出成形機、フィルムインサート射出成形機、多層押出成形機、オートクレーブ成形機(真空脱気・加熱圧着)などによる方法や、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などを塗布硬化して層を形成する方法などがある。
キャッピング層の形成材料としては、市販されているクラレ社製のパラマイティー(登録商標)MT2LXR及びMT2LHI20の、PCを基板とする総板厚4mmの多層押出成形材料で、キャッピング層にはPMMAを主成分とする厚みがそれぞれの基板に対して4.3%〜4.7%の180±8μm、及び2.9%〜3.2%の120±6μmの材料を用いることができる。
同様な材料は住友化学社製のテクノロイ(登録商標)C001、帝人社製のパンライト(登録商標)SH-1126Z、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンMB6001UR、タキロンシーアイ社製のPCMA K3250などがある。
<キャッピング層の厚み>
キャッピング層の有効的な最小厚みは、キャッピング層と同様な素材を使用しているプライマー層の厚みは数ミクロンメーターで、キャッピングとしての役割には薄すぎて効果がなく、経験則から数十ミクロンメーター以上は必要と考えられるが、プライマー層と同じ様な塗布形成方法で数十ミクロンメーターの厚さにすると表面状態が悪くなり、プラスチック窓としての品質に劣るために、PC基板材料とキャッピング用のPMMA材料を多層押出成形機を用いて同時に成形する方法を用いた。
キャッピング層の形成は、PC材料とPMMA材料のポリマーを多層押出成形機でPMMAとPCの2層あるいはPMMAとPCとPMMAの3層の押出成形をするのが有効的だと考えられる。
キャッピング層はPC表面のゴム状態の物性をキャッピングするのが目的で、その他のPCの優れた物性、例えば難燃性や可撓性、高いガラス転移温度などは維持する必要があり、キャッピング層は熱処理加工や熱成形加工、最終製品の性能などに影響を及ぼさない厚みにする必要がある。
特にPCのガラス転移温度は147℃であり、アクリル樹脂を主成分とするキャッピング層のPMMAのガラス転移温度はPCのそれと比較して100℃と低く、ハードコートの硬化加熱温度は120℃〜125℃が一般的に適切温度であることから、PMMAが軟化してPC基板の形状を崩さない配分の厚みにする必要があり、有効的なキャッピング層の厚みはPC基板の板厚に対して5%以下にすることが好ましい。
<プライマー層の形成>
PC基板上にキャッピング層を形成した上に、PMMAを主成分とするプライマー層を形成する。
プライマー層は下層のキャッピング層と、上層のハードコート層を良好に密着させる役目を持っている。
特にハードコート層の有機無機シリカ化合物は、下層のキャッピング層との熱膨張率の差が大きく、温度変化により密着性を阻害しクラックや剥がれが生ずるために、プライマー層にシリカナノ粒子を添加するなどして、熱膨張率差の傾斜緩和や緩衝帯としての役目を持たせて防止している。
プライマー層を形成するプライマー溶液は、アクリル樹脂のPMMAの主成分に架橋剤、紫外線吸収剤、シリカナノ粒子、アルコール溶媒を加えて、固形分量25%程度とする。
プライマー溶液としては、市販されている動研社製SARCoat(登録商標)SCP310が好適に使用できる。
他に、動研社製SARCoat(登録商標)SCP500、Momentive社製SHP470、帝人社製DMT250プライマーコート液なども使用できる。
プライマー層の形成は、ディップコート方式、フローコート方式、スプレーコート方式などで、PC基板あるいはキャッピンク層に塗布し、加熱乾燥させる。
プライマー層の乾燥後の厚みとしては、2μm〜5μmが好適である。
<ハードコート層の形成>
シリコーンハードコートの溶液は、有機無機シラン化合物を主成分とするアルコキシシランを出発溶液として、アルコール、水、触媒を加えるゾルゲル反応により加水分解・縮合反応させ、シリコーンハードコートのゾル溶液を作製する。
主材のアルコキシシラン溶液の具体的な材料としては、信越化学工業社製のメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また必要に応じて、ゾル溶液に、シランカップリング剤やシリカナノ粒子を加え、高硬度や可撓性や滑り性の付与することもできる。
また、紫外線吸収剤を添加して耐候性を付与させることもできる。
さらに、塗布方法に合わせたレベリング剤や消泡剤などの表面調整剤を加えることもできえる。
これらの処理により、固形分量30%程度とするシリコーンハードコートのゾル溶液を作製する。
<ハードコート層の形成用のシリコーンハードコート溶液>
ハードコート層形成用のシリコーンハードコート溶液としては、市販されている動研社製SARCoat(登録商標)SCH730が挙げられる。
他に、動研社製SARCoat(登録商標)SCH720、Momentive社製AS4700、帝人社製DMT250トップコート液なども使用できる。
ハードコート層形成方法としては、シリコーンハードコートのゾル溶液をプライマー層の表面にディップコート方式、フローコート方式、スプレーコート方式などで塗布し湿潤ゲルとし、加熱処理を施し乾燥ゲルの2μm〜5μmの厚みのハードコート層を形成する。
<ハードコート層のリコート性の改良>
シリコーンハードコートは重ね塗りのリコート性に劣ると言われている。リコート性の悪い材料を密着させる場合、一般的に紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理、コロナ放電処理、フレーム処理、または苛性ソーダや苛性カリなどによるアルカリ処理により表面界面の濡れ性などを改質し密着させることができる。
<ハードコート層の積層>
本発明では、有機無機シラン化合物を主成分とするハードコート層の表面界面の改質を行うことなく、有機無機シラン化合物を主成分とする1層目と同様な2層目のハードコート層を重ね積層することが好ましい。
1層目のゾル溶液を塗布した湿潤ゲルを加熱処理して乾燥ゲルとする過程において、ハードコート層は形成されているが完全ではなく、2層目のハードコート溶液を重ね塗布できる濡れ性が保たれている加熱処理条件の範囲があることを見いだした。
すなわち、有機無機シラン化合物を主成分とするシリコーンハードコートのゾルゲル反応の硬化縮合過程において、加熱処理温度が100℃程度まではほぼ一定の曲げ弾性率を示したが、100℃超から120℃の範囲で急激に硬化縮合反応が進むことが分かった。
この加熱処理温度の範囲を細分して1層目のハードコート層の曲げ弾性率と2層目のハードコート層の密着性の関係を調査した結果、曲げ弾性率が20GPa〜30GPaの範囲において良好な密着性を示した。
しかし、この加熱処理温度の範囲で硬化縮合反応が急激に進むため、実際の生産において安定した性能が得られない。
そこで、本発明のハードコート層の形成には、低温縮合剤を1層目のゾル溶液に添加することで、60℃超から120℃の間で曲げ弾性率は緩やかに増加し、曲げ弾性率が20GPa〜30GPaとなる加熱処理温度の範囲を広げることができ、良好な密着性を安定して示した。
<低温縮合剤>
低温縮合剤としては、求核性のOHに対して、アルデヒド類架橋剤、エポキシ類架橋剤、酸クロリド類、酸無水物、エステル類架橋剤、ジビニルスルホン系架橋剤を用いることができる。
アルデヒド類架橋剤としては、例えば、マロニルアルデヒド、スクシニルアルデヒド、グルタリルアルデヒド、アジホイルアルデヒド、フタロイルアルデヒド、イソフタロイルアルデヒド、テレフタロイルアルデヒドなどが挙げられる。
また、エポキシ類架橋剤としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリシジルクロライド、グリシジルブロマイドなどが挙げられる。
酸クロリド類としては、例えば、マロニル酸クロリド、スクシニル酸クロリド、グルタリル酸クロリド、アジホイル酸クロリド、フタロイル酸クロリド、イソフタロイル酸クロリド、テレフタロイル酸クロリドなどが挙げられる。
また、酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、スクシニル酸無水物、グルタリル酸無水物などが挙げられる。また、エステル類架橋剤としては、マロニル酸メチルエステル、スクシニル酸メチルエステル、グルタリル酸メチルエステル、フタロイル酸メチルエステル、ポリエチレングリコールカルボン酸メチルエステル、ジビニルスルホン系架橋剤は、ジビニルスルホンおよびその誘導体などが挙げられる。
<2層目ハードコート層の形成>
1層目で作製したシリコーンハードコートのゾル溶液と同じゾル溶液を2層目のハードコート層に使用することもできるが、2層目のシリコーンハートーコートは1層目と同様に動研社製SARCoat(登録商標)SCP730を用いて必要に応じて耐擦傷性の向上のために、シリカナノ粒子を添加して、2層目のシリコーンハードコートのゾル溶液を調製することもできる。
シリカナノ粒子の具体的な材料としては、例えば、日産化学工業社製のオルガノシリカゾルのメタノールシリカゾル、MA-ST-M、MA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、EG-ST、Nポリカーボネート-ST-30、PGM-ST、DMAC-ST、MEK-ST-40、MEK-ST-L、MEK-ST-ZL、MIBK-ST、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、EAC-ST、PMA-ST、TOL-ST、MEK-AC-2140Z、MEK-AC-4130Y、MEK-AC-5140Z、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y、MIBK-AC-2140Z、MIBK-SD-L、MEK-EC-2130Yなどが挙げられる。
また水に分散したスノーテックス登録商標のST-XS,ST-S,ST-30,ST-50,ST-30L,ST-OXS,ST-OS,ST-O,ST-O-40,ST-OL,ST-NXS,ST-NS,ST-N,ST-N-40,ST-CXS,ST-C,ST-CM,ST-AK-XS,ST-AK,ST-AK-Lなどが挙げられる。
また例えば、BYK社のシリコン系のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのBYK(登録商標)-306,BYK(登録商標)-307,BYK(登録商標)-310,BYK(登録商標)-313,BYK(登録商標)-330,BYK(登録商標)-333,BYK(登録商標)-342,BYK(登録商標)-370,BYK(登録商標)-375などが挙げられる。
またナノ粒子ディスパージョンのNANOBYK(登録商標)-3605,NANOBYK(登録商標)-3620,NANOBYK(登録商標)-3650,NANOBYK(登録商標)-3652などが挙げられる。
作製した2層目形成用のシリコーンハードコートのゾル溶液を、1層目のハードコート層の表面にディップコート方式、フローコート方式、スプレーコート方式などを用いて塗布し湿潤ゲルとし、加熱処理を行い乾燥ゲルの2μm〜5μmの厚みの2層目のハードコート層を形成する。
2層以上の多層のハードコート層の重ね積層も、2層目を1層目と同様に曲げ弾性率が20GPa〜30GPaの加熱処理を施すことで可能である。
<被覆層の効果実証>
[鉛筆硬度試験]
本発明のハードコート層の構造と、従来のハードコート層の構造を含め、鉛筆硬度試験における性能比較の試験結果を表1に示す。
Figure 0006915914
PC基板は板厚4mmのものを用いた。表中、HCはシリコーンハードコート層を示す。
シリコーンハードコート溶液は動研社製SARCoat(登録商標)SPH730を用いた。
大凡1層目のHCは4.7μmの厚み、2層目のHCも大凡4.7μmの厚みである。
EBは電子線照射による高硬度架橋処理を示し、照射強度は100KGyである。
CVDは化学気相成長処理によるガラスと同等の硬度の被覆層の他社製のカタログ値である。
PMMAはアクリル樹脂のPMMAを示し板厚は4mmのものを用いた。
PC基板+キャッピング層は総板厚4mmとし、キャッピング層はクラレ社製のパラマイティー(登録商標)MT2LXRを用いて厚みが180±8μmとした。
鉛筆硬度試験は動研社で実施し、鉛筆はMITSU-BISHI製の鉛筆引かき値試験用の日塗検査済、鉛筆芯の硬度2B〜9Hを用いた。
鉛筆硬度試験装置は動研社製で鉛筆を45°の角度に取付け、先端に750g±10gの荷重をかけて、JIS-K5600-5-4に基づき鉛筆硬度試験を行った。
表中の○印は、鉛筆硬度試験を3回実施し、3回とも傷が付かなかった鉛筆硬度を示す。
表中の△印は、鉛筆硬度試験を3回実施し、1回もしくは2回傷が付かなかった鉛筆硬度を示す。
試験11はPC基板の鉛筆硬度で2Bを示す。
試験12の従来技術の被覆PC基板のハードコート層(図6)であっても、試験13のハードコートの高硬度化処理といわれているEB処理であっても、比較14のハードコート層の上に更にガラスと同等の硬さと言われるCVDコート層であっても、試験15に示した被覆層の構造1(実施形態1、図1)の重ね積層であっても、鉛筆硬度に変わりがなくF〜Hを示した。
PC基板の表面界面のゴム状態の特有な物性の影響で、ハードコート1層でも2層でも、どの様な硬いハードコート材料でも、鉛筆硬度試験では一定の硬度以上には上がらない。言い換えれば、どの様に硬い材料を使っても、どこにでもある様な鉛筆で引っ掻けば簡単に傷が付いてしまうことになる。
試験16のハードコート層なしのPMMA基板の鉛筆硬度はH〜2Hを示した。
試験17のPC基板にPMMAのキャッピング層を施した場合のハードコート層なしの鉛筆硬度もH〜2Hを示した。
試験17のキャッピング層の表面はPC特有のゴム状態の表面物性の影響を受けることなく、PC基板の表面物性はPMMAの表面物性に置き換わった。
これに対し、試験18のキャッピング層を施した場合のシリコーンハードコート層1層での鉛筆硬度は3H〜5Hを示した。
さらに、試験19のシリコーンハードコート層にシリカナノ粒子などを添加調製した2層ハードコート層での鉛筆硬度は6H〜8Hを示した。
下地にキャッピング層を形成したことでハードコート層は材料物性に応じた鉛筆硬度を示した。
<テーバー摩耗試験>
表2に、本発明の被覆PC基板と従来の被覆PC基板の、テーバー摩耗試験における耐擦傷性の比較と、鉛筆硬度試験における表面硬度の関連性を示す。
Figure 0006915914
テーバー摩耗試験は、TOYOSEIKI社製の5130ABRASERのTABER(登録商標)摩耗試験機を用いた。
摩耗輪はCS-10Fを用いて、4.9Nの荷重を加え、摩耗輪を1000回転させて試験を行った。
曇化率(△H%)の測定は日本電色工業社製のHaze Meter NDH7000SPIIを用いて測定した。
PMMAはアクリル樹脂のPMMAを示し板厚は4mmである。
PC基板+キャッピング層は総板厚4.0mmとし、キャッピング層はクラレ社製のパラマイティー(登録商標)MT2LXRを用い、厚みは180±8μmとした。
1層目及び2層目のシリコーンハードコート溶液は動研社製SARCoat(登録商標)SPH730を用いた。
試験21の被覆PC基板(図6)に有機無機シリコーンハードコートを施したハードコート1層は鉛筆硬度F〜Hの硬度を示した。
試験22の2層のハードコート層を有する被覆PC基板(実施形態1、図1)も鉛筆硬度もF〜Hの硬度を示した。
試験23の、キャッピング層を施しハードコート層を有する被覆PC基板(実施形態2、図2)は、ハードコート層の材料物性に応じて鉛筆硬度は3〜5Hを示した。
試験24の、キャッピング層を施し2層のハードコート層を有する被覆PC基板(実施形態5、図5)は、鉛筆硬度は6〜8Hと更に向上し、テーバー摩耗試験における耐擦傷性の曇化率(△H%)も改善された。
鉛筆硬度試験(表1に示す)及びテーバー摩耗試験(表2に示す)の結果、鉛筆硬度試験はハードコート層を鉛筆の芯で突いた圧痕を引き摺った場合に傷が付くか否かを判断して耐擦傷性を評価しており、テーバー摩耗試験はハードコート層の表面だけを、砥石や砂塵などで擦った場合に曇が生じ視認性が悪くなったか否かを判断して耐擦傷性を評価している。
実用面においてこれら両方の耐擦傷性は重要な指標であり、キャッピング層及び2層のハードコート層の重ね積層による耐擦傷性の向上の効果を実証した。
<発明の用途>
自動車の窓ガラスに代わり、割れ難く強靭なPCのプラスチック窓では、何らかの事故で車内に閉じ込められた場合に、窓を割って脱出することができない。
実際のバスなどには窓ガラスを割って脱出できるように、車内にハンマーが備えられている。
次に、図4(実施形態4)及び図5(実施形態5)に示す被覆PC基板を用いたプラスチック窓と、素材であるPC基板やPMMA基板を試験片として、強度試験を行いガラスの衝撃強さと比較検討し、自動車のプラスチック窓の用途として使用できるか否かを評価したのでその結果を表3に示す。
<シャルピー衝撃試験及び曲げ強度試験>
PCは耐衝撃性に優れた特徴を持ち、その表面がゴム状態の特有な物性のために、柔らかい物性が衝撃を緩和させ、亀裂の発生を妨げていると考えられる。
表3においては、その表面のゴム状態の物性をPMMAでキャッピングすることでPMMAの物性に置換えており、そのPMMAの物性が耐衝撃性、曲げ強度にどの様な影響を与えているか、それぞれの試験の結果を示す。
試験は静岡県工業技術研究所浜松工業技術支援センターにおいて実施した。
試験実施の温度は23℃、湿度50%の室温で実施した。
シャルピー衝撃試験機は島津製作所社製の低容量型シャルピー衝撃試験機を用いた。
曲げ強度試験は島津製作所社製のオートグラフAG-50KNIS型の曲げ/引張試験機を用いた。
曲げ強度試験の負荷試験速度は5mm/min.である。
Figure 0006915914
試験31及び試験33の材料はテイジン社製ポリカーボネート-P1111の厚み4.0mmを用いた。
試験32及び試験34の材料は三菱ケミカル社製のアクリル樹脂PMMA-SKLの厚み4.0mmを用いた。
試験35及び試験36の材料は、クラレ社製のパラマイティー(登録商標)MT2LXRのPC基板+キャッピング層の総板厚み4.0mmの被覆PC基板を用いた。
1層目及び2層目のハードコート層を形成するシリコーンハードコート溶液は動研社製SARCoat(登録商標)SPH730を用いた。
キャッピング層の厚みは180±8μmとした。
シャルピー衝撃試験の結果、試験31のPC基板は試験32のアクリル樹脂のPMMA基板と比べて衝撃吸収エネルギーと衝撃値は約7.5倍高く、衝撃試験においてPC基板は破断することなく、アクリル樹脂のPMMA基板は破断した。
低速度負荷の曲げ試験においてもPC基板は破断することなく、アクリル樹脂のPMMA基板は破断し、PC基板とアクリル樹脂のPMMA基板は同じ撓みを示し、アクリル樹脂のPMMA基板は約1.2倍の曲げ強度を示したが破断した。
試験33及び試験34は、試験31及び試験32と同じ素材の組み合わせの、ハードコートの2層重ね積層した試験片である。
シャルピー衝撃試験の結果、試験33のPC基板は試験34のアクリル樹脂のPMMA基板と比べて衝撃吸収エネルギーと衝撃値は約10.8倍高く、衝撃負荷においてPC基板は破断することなく、アクリル樹脂のPMMA基板は破断した。低速度負荷の曲げ試験においてもPC基板は破断することなく、アクリル樹脂のPMMA基板は破断した。しかし、アクリル樹脂のPMMA基板はハードコートを施すことにより撓みは約0.44倍に低下し、曲げ強度は0.69倍に低下する。
試験35は、被覆PC基板(実施形態5,図5)におけるA面側から衝撃を加えた場合である。
試験36は、被覆PC基板(実施形態5,図5)におけるB面側から衝撃を加えた場合である。
これらを比べると、衝撃吸収エネルギーと衝撃値は約29.9倍の違いがある。
A面側から衝撃を加えた場合は破断することはなく、B面側から衝撃を加えた場合は破断した。
同様に曲げ強度試験においても同様な結果を得た。
一般的なガラスの衝撃吸収エネルギー及び衝撃値はアクリル樹脂の約1/10とされていることから、試験2のそれは一般的なガラスの約10倍になり、ハードコート処理が施されている試験6のB面側は、一般的なガラスの約2.8倍程度の衝撃吸収エネルギー及び衝撃値であると考えられる。
図5に示す被覆PC基板(実施形態5)を自動車のプラスチック窓に使用する場合は、キャッピング層のある側のA面側を車外面にし、キャッピング層のないB面側を車内面にすることが好ましい。
すなわち、シャルピー衝撃試験の結果からは、自動車外からの耐衝撃力は一般的なガラスと比べて約85倍強く、自動車内からの耐衝撃力は一般的なガラスと比べて約2.8倍程度の強さであることが分かる。
シャルピー衝撃試験と曲げ強度試験の結果から、本発明の被覆PC基板を自動車ガラスの窓の代わりに十分使用できると考えられる。
<落球衝撃試験>
次に、表4に落球衝撃試験の結果を示す。
実際の自動車の窓ガラスと、図4に示す本発明の被覆PC基板(実施形態4)とで落球衝撃試験を実施した。
本発明の被覆PC基板においては、自動車の車外を想定したA面側に落球した場合と、車内から脱出を想定してB面側に落球した場合の本発明のプラスチック窓と、実際の自動車窓ガラスの落球衝撃試験による破損強度を比較した。
Figure 0006915914
試験41の自動車ガラスはスズキ社製エブリーの後部席サイドガラスで、少し湾曲した形状の最大横幅655mm、最大縦幅455mmの厚み3.0mmを用いた。
試験42のアクリル樹脂のPMMAは三菱ケミカル社製SKLの300mm角の板厚4.0mmを用いた。
試験43の材料はテイジン社製パンライトシート(登録商標)ポリカーボネート-P1111の300mm角の板厚4.0mmを用いた。
試験44及び試験45の材料はクラレ社製パラマイティー(登録商標)MT2LXRのPMMAキャッピング層の厚み180±8μmを施したもの、及び試験46及び試験47はMT2L HI20のPMMAキャッピング層にアクリル系ゴム成分を添加した厚み120±6μmを施したものを用い、それぞれ300mm角の総板厚4.0mmの材料を用いた。
被覆槽の構造のシリコーンハードコート溶液は動研社製SARCoat(登録商標)SPH730を用いた。
落球試験は1052gの鋼鉄製の球を使用して、260mm×260mmの四角い穴を設けた300mm×300mmの金属製の枠の面に、8.0mm程度の厚みのスポンジを敷き、金属製の枠からの直接的な衝撃を避け、その金属製の枠に試験片を水平に置き、所定の高さに鋼球の下面が来るように磁力で固定し、磁力を切ることで鋼球を試験片に落下させ、破損したかどうかを観察し、破損の高さを持って落球衝撃試験の破損強度とした。
ただし、プラスチックの落球衝撃試験は材料毎のポリマー構造や分子量の違い、成形方法や温度などによる物性の違いなどの影響が大きいために、一概に衝撃強度を表すことができないとされている(参照資料 TECHNICAL NOTE 落球試験法によるプラスチックの衝撃強度に及ぼす試験条件の影響について 山口章三郎、大柳康、村本幸保、近藤和為 「材料」第17巻 第172号 昭和43年1月)。
また、自動車ガラスには破損における安全上の問題から、ガラスが細かく破砕されるなどの独特な工夫が施されており、一概にプラスチックとガラスの落球衝撃強度を比較することができないことから、ガラスの大きさや湾曲や板厚が試験片とは違うものの、実際に使用されている自動車のガラス窓と比べて破損の傾向などを評価した。
表4において、落球試験に示す落球高さは試験片の平面と鋼球の下面の落下距離を示す。
表4中の○印は落球で試験片が全く破損しなかった落球高さを示し、×印は試験片がひび割れも含み、破損した落球高さを示す。
試験41の自動車ガラスは0.8mからの落球で割れて飛び散った。
この高さを自動車のプラスチック窓を破壊して脱出可能な衝撃破損強度の基準とした。
試験41の自動車ガラスは0.8mからの落球で破損した。
試験42のPMMAのハードコート処理を施していない試験片は、0.6mからの落球で破損した。
自動車ガラスとアクリル樹脂のPMMA板の落球衝撃破損強度はほぼ同程度であった。
試験43のハードコートを施したPC基板の試験片、試験44のキャッピング層のPMMAを設けたMT2LXRのハードコートを施した試験片のA面側、及び、試験46のキャッピング層のPMMAを設けたMT2L HI20のPC基板にハードコートを施した試験片のA面側は、2.0mからの落球でも、ひび割れなどの破損が全く生じなかった。
試験45のキャッピング層のPMMAを設けたMT2LXR、及び試験47のMT2L HI20のPC基板にハードコートを施した試験片のB面側は、それぞれ落球高さ0.3m及び0.6mからの落球で破損した。
試験45及び試験47の落球試験の結果から、キャッピング層にアクリル系ゴム成分などを調製して添加することで、自動車のプラスチック窓の衝撃破損強度を調整することができる。
シャルピー衝撃試験、曲げ強度試験、落球強度試験の実証実験から、PCの表面界面のゴム状の物性がキャッピング層でPMMAの物性に置き換わったことにより、キャッピング層を設けた側の反対側から衝撃や曲げ負荷が加わることで、硬くて割れやすいキャッピング層のPMMAの表面に引張負荷が生じて亀裂が発生し、亀裂の伝播によって割れ難くて強いPC基板の全体が簡単に破損したと考えられる。
表4の落球衝撃試験の結果が示す様に、自動車の車外からの耐衝撃力には強く、非常時に車内から窓を破壊して脱出することが可能となる。
図2(実施形態2)及び図3(実施形態3)に示す被覆PC基板の様に、軽量化されたプラスチック窓は、キャッピング層が両面にあり、ガラスと同じ様にどちらの面からでも破壊することができ、自動車のガラス窓と同様な耐衝撃力を持っている。
本発明の被覆PC基板は、自動車などの移動体の窓などに好適に使用でき、産業上の利用可能性が高い。

Claims (5)

  1. ポリカーボネート基板の両面に、
    アクリル樹脂を主成分としたキャッピング層が設けられ、
    その片方の面の上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
    その上層に有機無機シラン化合物を主成分とするハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
  2. ポリカーボネート基板の両面に、
    アクリル樹脂を主成分とするキャッピング層が設けられ、
    その片方の面の上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
    その上層に有機無機シラン化合物を主成分とする2層のハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
  3. ポリカーボネート基板の片面に、
    アクリル樹脂を主成分とするキャッピング層が設けられ、
    その上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
    その上層に有機無機シラン化合物を主成分とするハードコート層が設けられ、
    ポリカーボネート基板の他面に、
    アクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
    その上層に有機無機シラン化合物を主成分とするハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
  4. ポリカーボネート基板の片面に、
    アクリル樹脂を主成分とするキャッピング層が設けられ、
    その上層にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
    その上層に有機無機シラン化合物を主成分とする2層のハードコート層が設けられ、
    ポリカーボネート基板の他面に、
    アクリル樹脂を主成分とするプライマー層が設けられ、
    その上層に有機無機シラン化合物を主成分とする2層のハードコート層が設けられていることを特徴とする表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
  5. 前記キャッピング層の厚みが、前記ポリカーボネート基板の板厚に対して5%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板。
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