JP6913592B2 - 硬化性組成物および硬化被膜の製造方法ならびに樹脂成形物品 - Google Patents

硬化性組成物および硬化被膜の製造方法ならびに樹脂成形物品 Download PDF

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Description

本発明は、硬化性組成物及び硬化被膜の製造方法ならびに硬化被膜を含む樹脂成形物品に関する。
自動車の内装部材、電子機器の筐体、家電、家具、床や壁材等の建築部材などに用いられる樹脂成形品は、表面の耐傷性や耐擦傷性を備えることが要求されている。このような樹脂成形品の製造に用いられる樹脂は、適切な伸度や可撓性を有し、良好な成形性を持つことが望まれるが、耐傷性を備えた硬度の高い成形品を提供しうる樹脂用モノマーは一般に伸度が低く、成形性に劣るという欠点がある。そこで、樹脂成形品の表面に、耐傷性や耐擦傷性に優れたコーティングを施すことで、良好な成形性と、高い耐傷性とのバランスを取ることが提案されている。
特許文献1には、基材フィルム上に自己修復性樹脂層を有する樹脂成形品の表面被覆用積層フィルムが開示されている。特許文献1の表面被覆用積層フィルムにおいて自己修復性樹脂層は主にフィルム表面に耐傷性を付与するために設けられており、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂を含有している。一方特許文献2には、末端にアクリレート系化合物が導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物と線状分子と封鎖基とを有するポリロタキサン化合物を含む、光硬化性コーティング組成物が開示されている。特許文献2の光硬化性コーティング組成物によるコーティングフィルムは、高い耐スクラッチ性、耐薬品性および耐摩耗性を有し、優れた自己治癒能力(すなわち耐傷性)を有するものである。
特開2016−107409号公報 国際公開2013/176527号公報
近年、特許文献1や特許文献2に開示されているような耐傷性を有する機能性コーティングフィルムに、さらに汚れの付きにくさや指紋拭き取り性を含む防汚性を付与することが試みられている。これらの機能性コーティング用組成物にさらに防汚剤を加えて、形成したコーティングに防汚性を持たせることが考えられる。ところが、一般的によく用いられているフッ素系防汚剤は、コーティング組成物との相溶性が低く、基材上へのコーティング組成物の塗工が困難になるという問題があった。このようなコーティング組成物を塗工して形成したコーティングは、その表面によれや乱れを有している場合が多く、美観および外観上も好ましくない。
本発明は、優れた耐傷性と防汚性とを併せ持つ塗膜を樹脂成形品上に付与することができる硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明の実施形態における硬化性組成物は、ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤とを含むことを特徴とする。ここでポリロタキサン化合物は、環状化合物A、該環状化合物Aの環状構造の輪の中を貫通する線状分子Bおよび該線状分子の末端部に配置され、該貫通した環状化合物Aの脱離を防止する封鎖基Cを含む。環状化合物Aには、以下の式(1)
Figure 0006913592

[式中、Rは、以下の式(2):
Figure 0006913592

または、以下の式(3):
Figure 0006913592

(ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基、または以下の式(4):
Figure 0006913592

(ここで、Rfは、炭素数3〜20のパーフルオロアルケニル基であり、Rは、炭素数2〜50の二価の炭化水素基である。)で表される基であり;
は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基であり;
は、以下の式(5):
Figure 0006913592

または、以下の式(6):
Figure 0006913592

(ここで、Rは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であり;
nは、1〜10の数である。]
で表される基が2以上結合しており、
該式(1)で表される2以上の基のうち少なくとも1つの基の該Rは、該式(4)で表される基であることを特徴とする。
本発明の他の実施形態は、上記の硬化性組成物を硬化させてなる硬化被膜を含む樹脂成形物品である。
本発明の他の実施形態は、上記の硬化性組成物を基材に塗布し、塗布した硬化性組成物を硬化させることを含む、硬化被膜の製造方法である。
本発明の硬化性組成物は、含有成分同士が相溶性よく混合して均質であり、基材表面への塗工性に優れる。本発明の硬化性組成物を用いて形成した硬化被膜は、自己修復能に優れ耐傷性が高く、さらに防汚性、撥水撥油性および滑り性等の機能を併せ持つ。
本発明の実施形態を以下に説明する。本発明の一の実施形態は、ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤とを含む硬化性組成物である。
本実施形態において、硬化性組成物とは、常温で液状で、光、電磁放射線または粒子放射線の照射、湿気への曝露あるいは熱等の刺激に応答して硬化する混合物のことである。通常、重合性モノマーを1種以上と必要に応じて重合開始剤等の添加剤とを含み、重合性モノマーが重合することにより組成物が硬化する。硬化性組成物は、フィルムやコーティング等の成形品の原料、塗料、あるいは接着剤の主成分または副成分として広く用いられる。実施形態の硬化性組成物は、樹脂成形品や金属材料等の基材表面に硬化皮膜を形成するコーティング材料として特に好適に用いられる。
本実施形態の硬化性組成物に含まれるポリロタキサン化合物は、環状化合物A、該環状化合物Aの環状構造の輪の中を貫通する線状分子Bおよび該線状分子の末端部に配置され、該貫通した環状化合物Aの脱離を防止する封鎖基Cを含む。ここでロタキサンとは、環状の分子が形成する輪の中を棒状の分子が貫通し、当該棒状の分子の両末端に嵩の高い置換基を結合させることにより、環状の分子が棒状の分子から抜けなくなった構造を有する分子のことである。ポリロタキサンとは、ロタキサンが複数結合したものを指す。つまり、上記の棒状の分子としての長い線状分子に、上記の環状の分子を複数通し、線状分子の量末端を封鎖基で封止したものがポリロタキサンである。本実施形態に用いるポリロタキサン化合物において「環状化合物A」は上記の環状の分子、「線状分子B」は上記の棒状の分子、「封鎖基C」は上記の棒状の分子の両末端に結合した嵩の高い置換基に相当する。
環状化合物Aとして、たとえばα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレーン、環状アミドを挙げることができる。環状化合物Aとして、特にα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンを用いることが好ましい。シクロデキストリンとは、D−グルコースが、α−1,4グリコシド結合により結合して環状構造を形成した環状オリゴ糖である。D−グルコースが6個結合したものをαーシクロデキストリン、7個結合したものをβ−シクロデキストリン、8個結合したものをγ-シクロデキストリンという。実施形態のポリロタキサン化合物1分子中には、環状化合物Aが1以上含まれていてよい。ポリロタキサン化合物1分子中に環状化合物Aが2以上(複数)含まれている場合、各環状化合物Aは互いに同じであっても各々異なっていてもよい。
線状分子Bとして、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリアミド、またはアルキル鎖のような、複数の原子が長い線状に結合した形状を有する分子を挙げることができる。線状分子Bとして、特に分子量が10,000〜50,000のポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
封鎖基Cは、環状化合物Aの環状構造の輪の中を貫通した線状分子Bから該環状化合物Aがすり抜けないように、線状分子Bの両末端を止めるためのストッパーまたはキャップとしての働きをする、嵩高い置換基である。封鎖基Cとして、たとえば、アダマンチル基、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、フルオレセイン基またはピレン基を挙げることができる。実施形態のポリロタキサン化合物1分子中には、封鎖基Cが2つ含まれている。2つの封鎖基Cは互いに同じであっても各々異なっていてもよい。
環状化合物Aには、以下の式(1)
Figure 0006913592

で表される置換基が結合していてよい。この式(1)中、Rは、以下の式(2):
Figure 0006913592

または、以下の式(3):
Figure 0006913592

(ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基であることができる。
式(1)中、Rは、以下の式(4):
Figure 0006913592

(ここで、Rfは、炭素数3〜20のパーフルオロアルケニル基であり、Rは、炭素数2〜50の二価の炭化水素基である。)で表される基であることもできる。
さらに式(1)中、Rは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基であり;
は、以下の式(5):
Figure 0006913592

または、以下の式(6):
Figure 0006913592

(ここで、Rは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であり;
nは、1〜10の数であることができる。
上記の通り、環状化合物Aは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群より選択されることが好ましい。環状化合物Aは、2以上の式(1)の基を有していてよい。Rが上記式(2)または式(3)で表される重合性置換基である式(1)の基、およびRが上記式(4)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する置換基である式(1)の基のいずれかのみが環状化合物Aに結合していてもよいし、それらの両方が環状化合物Aに結合していてもよいが、Rが上記式(2)または式(3)で表される重合性置換基である式(1)の基、およびRが上記式(4)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する置換基である式(1)の基が、共に環状化合物Aに結合していることが特に好ましい。つまり、上記式(1)で表される2以上の基のうち、少なくとも1つの基のRは、式(4)で表される基であることが特に好ましい。すなわち、実施形態のポリロタキサン化合物中の環状化合物Aに、重合性置換基とパーフルオロアルケニル基とを共に有していることが好適である。上記の通り実施形態のポリロタキサン化合物1分子中に、環状化合物Aは1以上含まれているが、1つの環状化合物Aに、重合性置換基とパーフルオロアルケニル基とを共に有していることができる。あるいは、一の環状化合物Aに重合性置換基を有し、他の環状化合物Aにパーフルオロアルケニル基を有し、実施形態のポリロタキサン化合物1分子全体としてみると、重合性置換基とパーフルオロアルケニル基とを共に有している状態であってもよい。重合性置換基に置換しているRが水素またはメチル基であることから、重合性置換基は、アクリル基またはメタクリル基をその一部に含む置換基であると云える。重合性置換基中にRまたはR’を2以上含む場合、これらは互いに同じであっても異なっていてもよい。なお、該式(1)で表される基に存在するRが、以下の式(5):
Figure 0006913592

または、以下の式(6):
Figure 0006913592

(ここで、Rは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であることから明らかであるとおり、式(1)で表される基は、環状化合物Aに元々存在している水酸基に結合している。環状化合物Aに存在する総水酸基数を基準として、Rが該式(2)または式(3)で表される基である式(1)で表される基、すなわち重合性置換基を有する式(1)で表される基が40%以上置換していることが特に好ましい。一方環状化合物Aに存在する総水酸基数を基準として、Rが該式(4)で表される基である式(1)で表される基、すなわちパーフルオロアルケニル基を有する置換基を有する式(1)で表される基は、5%以上置換していればよい。
上記の通り、実施形態で用いるポリロタキサン化合物には重合性置換基が導入されている。このため実施形態のポリロタキサン化合物を含む硬化性組成物を硬化させると、重合性置換基が反応して架橋し網目状ポリマーを形成する。この網目状ポリマーは、架橋点が自由に動く環動高分子材料あるいはスライドリングマテリアルと呼ばれ、いわゆるスライディング弾性を発現することが知られている。実施形態で用いるポリロタキサン化合物は、硬化性組成物を硬化させた硬化被膜の弾性を担うことになり、硬化被膜の自己修復性や耐傷性を向上させる役割を果たすと考えられる。
さらに上記の通り、実施形態で用いるポリロタキサン化合物にはパーフルオロアルケニル基が導入されている。パーフルオロアルケニル基は、物質の撥水撥油性や防汚性を担うことが知られている。ポリロタキサン化合物が重合することで得られる網目状ポリマー中にパーフルオロアルケニル基が存在することで、後述するパーフルオロポリエーテル変性アクリレートが重合した部位を硬化被膜の表面部分に特異的に偏析させる等の役割を果たすことができると考えられる。このように実施形態で用いるポリロタキサン化合物が、重合性置換基と、パーフルオロアルケニル基とを併せ持つことにより、硬化被膜に弾性と撥水撥油性とをバランスよく付与することができると考えられる。
なお本明細書において、二価の炭化水素基という場合、炭化水素から2つの水素分子を除いてできる原子団のことを意味し、2つの結合手を有する置換基のことをいうものとする。二価の炭化水素基として、アルキレン基(アルカンジイル基)、シクロアルキレン基(シクロアルカンジイル基)、アリーレン基(アレーンジイル基)等のヒドロカルビレン基を挙げることができる。炭素数2の二価の炭化水素基という場合、エチレン基(−CHCH−)を指し、炭素数6の二価の炭化水素基という場合、線状または分岐のヘキシレン基(−C12−)、シクロヘキシレン基(−C10−)、フェニレン基(−C−)のほか、以下の式:
Figure 0006913592

のような、メチルシクロペンチレン基等も含むものとする。
また本明細書においてパーフルオロアルケニル基という場合、アルケンの任意の炭素原子から1個の水素原子を除去した1価の原子団であるアルケニル基の水素が全てフッ素で置換された基をいう。たとえば炭素数2のパーフルオロアルケニル基という場合、パーフルオロビニル基(パーフルオロエテニル基)(CF=CF−)を指し、炭素数3のパーフルオロアルケニル基という場合、パーフルオロアリル基(パーフルオロプロペニル基)を指す。さらに炭素数5のパーフルオロアルキル基という場合、シクロペンテニル基の全水素がフッ素で置換されたパーフルオロシクロペンテニル基等も含むものとする。パーフルオロアルケニル基は線状基であっても分岐基であってもよいが、分岐のパーフルオロ基が含まれていると、ポリロタキサン化合物にパーフルオロ基特有の性質(撥水性や偏析性等)をより効果的に付与することができる。
本実施形態の硬化性組成物に含まれる重合性モノマーは、上記のポリロタキサン化合物に含まれている重合性置換基と反応し、硬化するモノマーである。重合性モノマーとして、イソシアネート化合物とポリオール化合物と(メタ)アクリルモノマーとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。特に、重合性モノマー単体を重合して得られる樹脂の鉛筆硬度がB以下である(たとえば、2B、4B等)中硬質のウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートは、市販のものを適宜入手することができる。ウレタン(メタ)アクリレートとして、UV7000B、UV6640B等の紫外線硬化型ウレタンアクリレート(日本合成化学株式会社)、EBECRYL9260等の脂肪族ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社)などの、鉛筆硬度が概ねB以下である(たとえば、2B、4B等)中硬質ウレタン(メタ)アクリレートから選択することができる。これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。重合性モノマーの種類と配合量とを工夫することにより、所望の硬度と伸度とを有する硬化被膜を得ることが可能である。
本実施形態の硬化性組成物に含まれるパーフルオロポリエーテル変性アクリレートは、本実施形態の硬化性組成物を硬化して得られる硬化被膜に表面防汚機能を発現させるための添加剤である。パーフルオロポリエーテル変性アクリレートは、上記の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリルモノマーに添加して、形成した硬化被膜表面に撥水撥油性および滑り性を与え、耐指紋付着性を付与することができる。本明細書でパーフルオロポリエーテルとは、エーテル結合を主鎖に有する鎖状高分子であるポリエーテルの水素が全てフッ素で置換されたものを指す。パーフルオロポリエーテル変性アクリレートとは、上記のパーフルオロポリエーテルに重合性のアクリル基が1つ以上結合したものである。パーフルオロポリエーテル変性アクリレートにも重合性置換基が含まれているため、上記のポリロタキサン化合物およびウレタン(メタ)アクリレート重合性モノマーと重合反応する。パーフルオロポリエーテル変性アクリレートは、市販のものを適宜入手することができる。パーフルオロポリエーテル変性アクリレートとして、KY1200シリーズフッ素系防汚添加剤(信越化学工業株式会社)、オプツールDACシリーズ指紋付着防止用添加剤(ダイキン工業株式会社)などの、防汚添加剤を用いることができる。これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。
本実施形態の硬化性組成物に含まれる重合開始剤は、光または放射線の照射、熱の付与等の刺激に応答して重合性置換基を有する化合物の重合反応を開始させる化合物である。本明細書においては、水分との接触により反応を開始する湿気硬化触媒も広義の意味で重合開始剤の中に含まれる。実施形態の硬化性組成物においては、紫外線、電子線、可視光線を含む光の照射により重合を開始させる光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤として、光の照射によりラジカル活性種を発生する光ラジカル重合開始剤(たとえば、アセチルベンゼン、ジメトキシベンジル、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、クロロチオキサトン、エチルアントラキノン)、カチオン活性種を発生する光カチオン重合開始剤(たとえば、ビス(4−tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-フルオロフェニル)ヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、2,4-ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−1,3,5−トリアジン、4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート)、アニオン活性種を発生される光アニオン重合開始剤(アセトフェノン−O−ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸1,2−ビス(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル、ニフェジピン)を用いることができる。光重合開始剤として、イルガキュアシリーズ(BASFジャパン)等の市販品を用いることができる。イルガキュア184−(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュア907(2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、イルガキュアTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、ルシリンTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)等を使用することができる。これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。
さらに実施形態の硬化性組成物は、希釈用の有機溶剤を含有していてもよい。実施形態の硬化性組成物の主成分であるポリロタキサン化合物、重合性モノマーおよびパーフルオロポリエーテル変性アクリレートの混合物のみでも基材表面上に塗布して硬化被膜を形成することはできるが、この混合物にさらに有機溶剤を含有していれば、基材上への塗布が容易になり、また硬化時の重合反応を促進することもできる。実施形態で用いることができる有機溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、イソプロパノール、エタノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、ダイアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環族炭化水素類、およびこれらのハロゲン化物等を含む有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶剤は、硬化性組成物100重量部に対して10〜70重量部程度含まれていることが好ましい。
本実施形態の好適な硬化性組成物は、ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤と、場合により有機溶剤とを混合することで得られる。ポリロタキサン化合物の配合比は、硬化性組成物の総重量を基準として10〜70%、好ましくは15〜40%とすることができる。重合性モノマーの配合比は、硬化性組成物の総重量を基準として2〜20%、好ましくは10〜15%とすることができる。パーフルオロポリエーテル変性アクリレートの配合比は、硬化性組成物の総重量を基準として0.5〜3%、好ましくは1〜2%とすることができる。さらに重合開始剤の配合比は、硬化性組成物の総重量を基準として0.5〜3%、好ましくは1〜2%とすることができる。有機溶剤を用いる場合は、硬化性組成物の総重量を基準として20〜70%、好ましくは30〜60%とすることができる。実施形態の硬化性組成物は、これらの成分のほか、硬化性組成物に通常含まれている添加剤(たとえば染料、顔料、可塑剤、分散剤、防腐剤、つや消し剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤)を必要に応じて適宜配合することもできる。
実施形態の硬化性組成物は、基材表面に塗布し、この上で硬化させて硬化被膜を形成することができる。基材として、ガラス、プラスチック、金属などを挙げることができるが、実施形態の硬化性組成物は、特にプラスチック上に好適に塗布することができる。硬化性組成物の基材表面への塗布は、ドクターブレード法、バーコート法、ディッピング法、エアスプレー法、ローラーブラシ法、ローラーコーター法等の従来のコーティング方法により適宜行うことができる。塗布した硬化性組成物を加熱して、硬化被膜を形成することができる。硬化性組成物の加熱は、重合開始剤が開裂し、ポリロタキサン化合物中の重合性置換基と重合性モノマー中の重合性置換基とパーフルオロポリエーテル変性アクリレート中の重合性置換基とが反応するのに充分な温度まで加熱すればよい。使用する重合開始剤や有機溶剤の種類ならびに量にもよるが、通常は80〜150℃、好ましくは100〜150℃程度に加熱することで、反応をスムーズに進行させ、かつ、有機溶剤を蒸発させることができる。硬化性組成物塗布物の加熱は、バーナーやオーブンなどの加熱装置による加熱のほか、ドライヤーなどの温風による加熱方法により行うことができる。
実施形態の硬化性組成物を上記の通り基材に塗布し、放射線を照射することにより硬化被膜を形成することもできる。放射線は、重合開始剤が開裂するのに充分なエネルギーレベルを有するものであればいかなるものを用いてもよい。放射線として、電磁放射線または粒子放射線が挙げられ、特に紫外光、赤外光、可視光、遠赤外光などを用いることが好ましい。さらに実施形態の硬化性組成物を上記の通り基材に塗布し、空気中の水分と触れさせることにより硬化被膜を形成することもできる。この場合、実施形態の硬化性組成物には湿気硬化触媒が含まれている。湿気により硬化させて形成した硬化被膜は、硬化性組成物と基材との間にも結合が生じた強固なものとなる。
上記のように実施形態の硬化性組成物を硬化して硬化被膜を製造することができる。製造した硬化被膜の大気側表面には、該パーフルオロポリエーテル基およびパーフルオロアルケニル基を含むフッ素置換基が偏在している。フッ素置換基が偏在しているとは、製造した硬化被膜のいずれかの面にフッ素置換基が偏って存在していることを意味する。製造した硬化被膜中においてフッ素置換基の濃度分布に偏りあるいは勾配があり、いずれかの面の近傍におけるフッ素置換基濃度が高くなっていることを意味する。本実施形態の製造方法では、硬化被膜の2表面である基材側表面と大気側表面のうち、大気側表面およびその近傍に、硬化性組成物中に含まれているフッ素置換基(パーフルオロポリエーテル基およびパーフルオロアルケニル基)が偏って存在した、特徴的な硬化被膜が得られる。
上記のように実施形態の硬化性組成物を硬化してなる硬化被膜を含む樹脂成形物品を得ることができる。本実施形態の硬化性組成物は、ポリロタキサン化合物を含有しているため、樹脂成形物品の表面に耐擦傷性ならびに自己修復性を付与することができる。また本実施形態の硬化性組成物は、防汚機能を有するパーフルオロポリエーテル変性アクリレートを含有しているため、樹脂成形物品の表面に撥水撥油性や耐指紋付着性、マジックはじき性等の防汚性を付与することも可能となる。実施形態の硬化性組成物は、たとえば、自動車シフトパネル、自動車ナビパネル等の自動車用内装部材およびドアミラー、前照灯等の自動車用外装部材を含む各種自動車部品、電子機器筐体、照明装置等の家電、家具、床材、壁等の建築部材のように、日常的に傷および水性汚染や油性汚染が発生しうる場所での使用が企図されている樹脂成形物品に、耐擦傷性および防汚性を付与するために用いることができる。実施形態の硬化性組成物を用いて形成した硬化被膜は優れた耐擦傷性能と防汚性能とを有し、かつ硬化被膜を施した樹脂成形物品が過酷な環境に曝された場合であっても、傷の形成および残存や汚染を防止することができる。
(1)硬化性組成物の作製
(1−1)ポリロタキサン化合物の合成
[合成例1]
線状分子がポリエチレングリコール、封鎖基がアダマンチル基、環状化合物が末端に水酸基を有するカプロラクトン修飾シクロデキストリンであるポリロタキサンであるセルムスーパーポリマー SH1310P(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製;分子量:18万、カプロラクトン末端水酸基価:85mgKOH/g)1.00gと、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製;カレンズAOI):
Figure 0006913592

0.21gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを、ナスフラスコ中で、常温で7時間撹拌した。反応液をメタノールで精製した後、以下の式:
Figure 0006913592

(ここでRfは、以下の式:
Figure 0006913592

で表されるパーフルオロアルケニル基である。)で表される含フッ素酸クロライド(以下「FTACl」と表記する。)を0.44gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを加え、常温で7時間撹拌した。この反応液を酢酸エチルで希釈し、目的のフッ素修飾ポリロタキサン化合物(以下「PR−1」と称する。)が得られた(25質量%酢酸エチル溶液)。1HNMR(CDCl3、400MHz):δ8.10-8.08、6.98-6.96、6.45-6.41、6.16-6.09、5.88-5.85、4.33-4.29、4.25-4.22、4.07-4.04、2.32-2.28、1.69-1.60、1.42-1.34
得られたポリロタキサン(PR−1)H−NMR測定と、置換基の導入前のポリロタキサンのH−NMR測定の結果を比較して、アクリロイル基導入率およびフッ素置換基導入率をそれぞれ算出した。ポリロタキサン化合物の環状化合物部分に修飾されたカプロラクトン鎖の末端の水酸基を100%としたときに、アクリロイル基導入率は40%、フッ素置換基導入率は5%であった。
[合成例2]
ポリロタキサン化合物セルムスーパーポリマー SH1310P(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)1.00gと、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製;カレンズBEI):
Figure 0006913592

0.36gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを、ナスフラスコ中で、常温で7時間撹拌した。反応液をメタノールで精製した後、FTAClを0.40gと、酢酸エチル4.00gとを加え、常温で7時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、目的のフッ素修飾ポリロタキサン化合物(以下、「PR-2」と称する。)が得られた(25質量%酢酸エチル溶液)。1HNMR(CDCl3、400MHz):δ8.10-8.08、6.98-6.96、6.46-6.42、6.17-6.10、5.90-5.87、4.39-4.28、4.18-4.17、4.07-4.04、2.33-2.29、1.71-1.61、1.43-1.34
[比較合成例1]
ポリロタキサン化合物セルムスーパーポリマー SH1310P(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)1.00gと、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製;カレンズAOI)0.21gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを、ナスフラスコ中で、常温で7時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、ポリロタキサン化合物(以下、「PR-3」と称する。)が得られた(25質量%酢酸エチル溶液)。1HNMR(CDCl3、400MHz):δ6.45-6.41、6.17-6.10、5.87-5.85、4.26-4.22、4.07-4.04、2.32-2.28、1.69-1.60、1.42-1.34
上記の各ポリロタキサン化合物のフッ素置換基導入率とアクリロイル基導入率は、得られた各ポリロタキサン化合物のH−NMR測定の結果と、置換基の導入前のポリロタキサン化合物のH−NMR測定の結果とを比較してそれぞれ算出した。ポリロタキサン化合物の環状部分に修飾されたカプロラクトン鎖の末端の水酸基を100%としたときの、フッ素置換基導入率とアクリロイル基導入率は以下の表1に示す。
Figure 0006913592
(1−2)硬化性組成物の調製
上記の各合成方法により得た各ポリロタキサン化合物、重合性モノマー、パーフルオロポリエーテル変性アクリレート、重合開始剤であるイルガキュアTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASFジャパン株式会社)、有機溶剤であるメチルエチルケトン(以下「MEK」と称する。)を表2に示す配合比(重量比)で混合して撹拌し、硬化性組成物を調製した。
Figure 0006913592
Figure 0006913592
なお、表1、表2中の略号の意味は、以下の通りである:
SH1310P:セルムスーパーポリマー(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社)
FTACl:含フッ素酸クロライド
AOI:カレンズAOI、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社)
BEI:カレンズBEI、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社)
UV7000B[重合性モノマー]:紫外線硬化型ウレタンアクリレート、鉛筆硬度2B(日本合成化学株式会社)なお、鉛筆硬度は、当該モノマー単体を重合させて得られる樹脂の硬度を表す。
EBECRYL9260[重合性モノマー]:脂肪族ウレタンアクリレート、鉛筆硬度F(ダイセル・オルネクス株式会社)
UV6640B[重合性モノマー]:紫外線硬化型ウレタンアクリレート、鉛筆硬度3B(日本合成化学株式会社)
KY1203[パーフルオロポリエーテル変性アクリレート]:信越化学工業株式会社
DAC−HP[パーフルオロポリエーテル変性アクリレート]:ダイキン工業株式会社
IrgacureTPO[重合開始剤]:2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル−ホスフィンオキサイド、BASFジャパン株式会社
MEK[有機溶剤]:メチルエチルケトン
(2)硬化被膜の作製
硬化被膜を作成する基材として厚さ1mmのアクリル樹脂板と、厚さ100μmの易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社)を用意した。これらの基材表面上に各硬化性組成物をバーコート法で厚さ5μmとなるように塗布し、100℃のオーブンで1分間乾燥させた。次いで基材に紫外線を照射して硬化性組成物を硬化させ、硬化被膜を形成した。こうして以下の評価に用いる試験片を得た。
(3)硬化被膜の防汚性の評価
アクリル樹脂板上に設けた硬化被膜を用いて防汚性を評価した。防汚性は、硬化被膜上に黒色マジックインキ(ハイマッキー、ゼブラ株式会社)による汚染を施し、インキのハジキを目視により観察することにより評価した。マジックインキをはじくものを「良好」、マジックインキをはじかないものを「不良」と評価した。
(4)硬化被膜の自己修復性の評価
アクリル樹脂板上に設けた硬化被膜を用いて自己修復性を評価した。自己修復性は、各硬化被膜上に、真鍮ブラシを荷重500gで5往復させた後、傷の発生とその傷の回復を目視により観察することにより評価した。1時間以内に傷が回復するものを「良好」、1時間以内に傷が回復しないものを「不良」と評価した。
(5)硬化被膜の伸張性の評価
易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設けた硬化被膜を用いて伸張性を評価した。易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム試験片について引張試験(サンプル寸法:200mm×10mm、チャック間距離:110mm、引張速度:50mm/分)を行い、硬化被膜にクラックが発生した時点の伸度を破断伸度とした。破断伸度は、100×(L−L)/L(L:試験前の試験片長さ、L:破断時の試験片長さ)により計算した。破断伸度が40%以上であるものを「合格」と評価した。
本発明の硬化性組成物は、防汚性、自己修復性、破断強度のいずれかあるいは全てに優れた硬化被膜を形成することができる。特にアクリロイル基導入率の高いポリロタキサン化合物であるPR−1またはPR−2を用いた硬化性組成物(実施例1〜6)は、防汚性、自己修復性、破断強度のいずれにおいても良好な性質を示す硬化被膜を形成することができた。
重合性モノマーを使用していない硬化性組成物(比較例1)は防汚性に難がある硬化被膜を形成した。またポリロタキサン化合物を使用していない硬化性組成物(比較例2)は防汚性及び自己修復性共に低い硬化被膜を形成した。さらにパーフルオロアルケニル基が導入されていないポリロタキサン化合物PR−3を用いた硬化性組成物(比較例3)は防汚性の低い硬化被膜を形成した。
(6)硬化被膜の表面特性の評価
上記の通り、重合性置換基とパーフルオロアルケニル基とが導入されたポリロタキサン化合物を成分とする硬化性組成物(たとえば実施例1)と、パーフルオロアルケニル基が導入されていないポリロタキサン化合物を成分とする硬化性組成物(比較例3)とを比較すると、形成した硬化被膜の防汚性に違いが見られた。これが硬化被膜のどのような表面特性の違いに基づくのかを調べるため、以下の実験をおこなった。
ポリロタキサン化合物、重合性モノマー、重合開始剤および溶剤を含有する混合物を作成した(表4)。この混合物は、本実施形態の硬化性組成物からパーフルオロポリエーテル変性アクリレートを除いたものである。混合物を厚さ1mmのアクリル樹脂板基材に塗布し、100℃のオーブンで1分間乾燥させた。次いで基材に紫外線を照射して硬化性組成物を硬化させ、硬化塗膜を形成した。硬化塗膜の表面の接触角(水)を測定した。
Figure 0006913592
パーフルオロアルケニル基が導入されたポリロタキサン化合物(PR−1)を含む混合物1は、パーフルオロアルケニル基が導入されていないポリロタキサン化合物(PR−3)を含む混合物2よりも、水の接触角が大きい硬化塗膜を形成することができた。パーフルオロアルケニル基を導入したポリロタキサン化合物を成分として含む混合物を硬化させると、塗膜の表面に自由エネルギーが低いフッ素置換基がより多く存在するようになることがわかる。硬化被膜の表面近傍(すなわち、硬化被膜のうち大気側表面近傍)にフッ素置換基をより多く偏在させることが、硬化被膜の防汚性の発揮に効果的であると推測される。

Claims (14)

  1. ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤とを含む、硬化性組成物であって、
    該ポリロタキサン化合物は、環状化合物A、該環状化合物Aの環状構造の輪の中を貫通する線状分子Bおよび該線状分子の末端部に配置され、該貫通した環状化合物Aの脱離を防止する封鎖基Cを含み、該環状化合物Aには、以下の式(1)
    Figure 0006913592

    [式中、Rは、以下の式(2):
    Figure 0006913592

    または、以下の式(3):
    Figure 0006913592

    (ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基、または以下の式(4):
    Figure 0006913592

    (ここで、Rfは、炭素数3〜20のパーフルオロアルケニル基であり、Rは、炭素数2〜50の二価の炭化水素基である。)で表される基であり;
    は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基であり;
    は、以下の式(5):
    Figure 0006913592

    または、以下の式(6):
    Figure 0006913592

    (ここで、Rは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
    で表される基であり;
    nは、1〜10の数である。]
    で表される基が2以上結合しており、
    該式(1)で表される2以上の基のうち少なくとも1つの基の該Rは、該式(4)で表される基であることを特徴とする、前記硬化性組成物。
  2. 2以上の該式(1)で表される基が結合している該環状化合物Aにおいて、該式(1)で表される基が結合する前の環状化合物は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群より選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 該式(1)で表される基は、R が炭素数5の二価の炭化水素基である、カプロラクトン鎖を有する基であり、
    該式(1)で表される基が結合する前の該環状化合物に対して、末端に水酸基を有するカプロラクトン鎖を導入した環状化合物に存在する、該カプロラクトン鎖の末端の水酸基の総数を基準として、該水酸基に由来する水素原子の40%以上が、該式(2)および/または該式(3)で表される重合性置換基によって置換されている、請求項2に記載の硬化性組成物。
  4. さらに該水酸基に由来する水素原子の5%以上が、該式(4)で表される基によって置換されている、請求項3に記載の硬化性組成物。
  5. 該線状分子Bが、該線状分子B部分の分子量が10,000〜50,000のポリエチレングリコールである、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  6. 該封鎖基Cが、アダマンチル基、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化被膜を含む、樹脂成形物品。
  8. ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤とを含む、硬化性組成物を基材に塗布し、
    該塗布した硬化性組成物を硬化させる
    ことを含む、硬化被膜の製造方法であって、
    該ポリロタキサン化合物は、環状化合物A、該環状化合物Aの環状構造の輪の中を貫通する線状分子Bおよび該線状分子の末端部に配置され、該貫通した環状化合物Aの脱離を防止する封鎖基Cを含み、該環状化合物Aには、以下の式(1)
    Figure 0006913592

    [式中、Rは、以下の式(2):
    Figure 0006913592

    または、以下の式(3):
    Figure 0006913592

    (ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基、または以下の式(4):
    Figure 0006913592

    (ここで、Rfは、炭素数3〜20のパーフルオロアルケニル基であり、Rは、炭素数2〜50の二価の炭化水素基である。)で表される基であり;
    は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基であり;
    は、以下の式(5):
    Figure 0006913592

    または、以下の式(6):
    Figure 0006913592

    (ここで、Rは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
    で表される基であり;
    nは、1〜10の数である。]
    で表される基が2以上結合しており、
    該式(1)で表される2以上の基のうち少なくとも1つの基の該Rは、該式(4)で表される基であることを特徴とする、前記硬化被膜の製造方法。
  9. 2以上の該式(1)で表される基が結合している該環状化合物Aにおいて、該式(1)で表される基が結合する前の環状化合物は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群より選択される、請求項に記載の硬化被膜の製造方法。
  10. 該式(1)で表される基は、R が炭素数5の二価の炭化水素基である、カプロラクトン鎖を有する基であり、
    該式(1)で表される基が結合する前の該環状化合物に対して、末端に水酸基を有するカプロラクトン鎖を導入した環状化合物に存在する、該カプロラクトン鎖の末端の水酸基の総数を基準として、該水酸基に由来する水素原子の40%以上が、該式(2)および/または該式(3)で表される重合性置換基によって置換されている、請求項に記載の硬化性被膜の製造方法。
  11. さらに該水酸基に由来する水素原子の5%以上が、該式(4)で表される基によって置換されている、請求項10に記載の硬化被膜の製造方法。
  12. 該線状分子Bが、該線状分子B部分の分子量が10,000〜50,000のポリエチレングリコールである、請求項11のいずれか1項に記載の硬化被膜の製造方法。
  13. 該封鎖基Cが、アダマンチル基、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選択される、請求項12のいずれか1項に記載の硬化被膜の製造方法。
  14. 該硬化被膜の大気側表面近傍に、該パーフルオロポリエーテル基およびパーフルオロアルケニル基を含むフッ素置換基が偏在している、請求項13のいずれか1項に記載の硬化被膜の製造方法。
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