JP6913592B2 - 硬化性組成物および硬化被膜の製造方法ならびに樹脂成形物品 - Google Patents
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Description
本発明は、優れた耐傷性と防汚性とを併せ持つ塗膜を樹脂成形品上に付与することができる硬化性組成物を提供することを目的とする。
[式中、R1は、以下の式(2):
または、以下の式(3):
(ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基、または以下の式(4):
(ここで、Rfは、炭素数3〜20のパーフルオロアルケニル基であり、R4は、炭素数2〜50の二価の炭化水素基である。)で表される基であり;
R2は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基であり;
R3は、以下の式(5):
または、以下の式(6):
(ここで、R5は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であり;
nは、1〜10の数である。]
で表される基が2以上結合しており、
該式(1)で表される2以上の基のうち少なくとも1つの基の該R1は、該式(4)で表される基であることを特徴とする。
本発明の他の実施形態は、上記の硬化性組成物を硬化させてなる硬化被膜を含む樹脂成形物品である。
本発明の他の実施形態は、上記の硬化性組成物を基材に塗布し、塗布した硬化性組成物を硬化させることを含む、硬化被膜の製造方法である。
で表される置換基が結合していてよい。この式(1)中、R1は、以下の式(2):
または、以下の式(3):
(ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基であることができる。
R3は、以下の式(5):
または、以下の式(6):
(ここで、R5は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であり;
nは、1〜10の数であることができる。
または、以下の式(6):
(ここで、R5は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であることから明らかであるとおり、式(1)で表される基は、環状化合物Aに元々存在している水酸基に結合している。環状化合物Aに存在する総水酸基数を基準として、R1が該式(2)または式(3)で表される基である式(1)で表される基、すなわち重合性置換基を有する式(1)で表される基が40%以上置換していることが特に好ましい。一方環状化合物Aに存在する総水酸基数を基準として、R1が該式(4)で表される基である式(1)で表される基、すなわちパーフルオロアルケニル基を有する置換基を有する式(1)で表される基は、5%以上置換していればよい。
のような、メチルシクロペンチレン基等も含むものとする。
(1−1)ポリロタキサン化合物の合成
[合成例1]
線状分子がポリエチレングリコール、封鎖基がアダマンチル基、環状化合物が末端に水酸基を有するカプロラクトン修飾シクロデキストリンであるポリロタキサンであるセルムスーパーポリマー SH1310P(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製;分子量:18万、カプロラクトン末端水酸基価:85mgKOH/g)1.00gと、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製;カレンズAOI):
0.21gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを、ナスフラスコ中で、常温で7時間撹拌した。反応液をメタノールで精製した後、以下の式:
(ここでRfは、以下の式:
で表されるパーフルオロアルケニル基である。)で表される含フッ素酸クロライド(以下「FTACl」と表記する。)を0.44gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを加え、常温で7時間撹拌した。この反応液を酢酸エチルで希釈し、目的のフッ素修飾ポリロタキサン化合物(以下「PR−1」と称する。)が得られた(25質量%酢酸エチル溶液)。1HNMR(CDCl3、400MHz):δ8.10-8.08、6.98-6.96、6.45-6.41、6.16-6.09、5.88-5.85、4.33-4.29、4.25-4.22、4.07-4.04、2.32-2.28、1.69-1.60、1.42-1.34
ポリロタキサン化合物セルムスーパーポリマー SH1310P(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)1.00gと、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製;カレンズBEI):
0.36gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを、ナスフラスコ中で、常温で7時間撹拌した。反応液をメタノールで精製した後、FTAClを0.40gと、酢酸エチル4.00gとを加え、常温で7時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、目的のフッ素修飾ポリロタキサン化合物(以下、「PR-2」と称する。)が得られた(25質量%酢酸エチル溶液)。1HNMR(CDCl3、400MHz):δ8.10-8.08、6.98-6.96、6.46-6.42、6.17-6.10、5.90-5.87、4.39-4.28、4.18-4.17、4.07-4.04、2.33-2.29、1.71-1.61、1.43-1.34
ポリロタキサン化合物セルムスーパーポリマー SH1310P(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)1.00gと、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製;カレンズAOI)0.21gと、トリエチルアミン0.15gと、酢酸エチル4.00gとを、ナスフラスコ中で、常温で7時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、ポリロタキサン化合物(以下、「PR-3」と称する。)が得られた(25質量%酢酸エチル溶液)。1HNMR(CDCl3、400MHz):δ6.45-6.41、6.17-6.10、5.87-5.85、4.26-4.22、4.07-4.04、2.32-2.28、1.69-1.60、1.42-1.34
上記の各合成方法により得た各ポリロタキサン化合物、重合性モノマー、パーフルオロポリエーテル変性アクリレート、重合開始剤であるイルガキュアTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASFジャパン株式会社)、有機溶剤であるメチルエチルケトン(以下「MEK」と称する。)を表2に示す配合比(重量比)で混合して撹拌し、硬化性組成物を調製した。
SH1310P:セルムスーパーポリマー(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社)
FTACl:含フッ素酸クロライド
AOI:カレンズAOI、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社)
BEI:カレンズBEI、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社)
UV7000B[重合性モノマー]:紫外線硬化型ウレタンアクリレート、鉛筆硬度2B(日本合成化学株式会社)なお、鉛筆硬度は、当該モノマー単体を重合させて得られる樹脂の硬度を表す。
EBECRYL9260[重合性モノマー]:脂肪族ウレタンアクリレート、鉛筆硬度F(ダイセル・オルネクス株式会社)
UV6640B[重合性モノマー]:紫外線硬化型ウレタンアクリレート、鉛筆硬度3B(日本合成化学株式会社)
KY1203[パーフルオロポリエーテル変性アクリレート]:信越化学工業株式会社
DAC−HP[パーフルオロポリエーテル変性アクリレート]:ダイキン工業株式会社
IrgacureTPO[重合開始剤]:2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル−ホスフィンオキサイド、BASFジャパン株式会社
MEK[有機溶剤]:メチルエチルケトン
硬化被膜を作成する基材として厚さ1mmのアクリル樹脂板と、厚さ100μmの易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社)を用意した。これらの基材表面上に各硬化性組成物をバーコート法で厚さ5μmとなるように塗布し、100℃のオーブンで1分間乾燥させた。次いで基材に紫外線を照射して硬化性組成物を硬化させ、硬化被膜を形成した。こうして以下の評価に用いる試験片を得た。
アクリル樹脂板上に設けた硬化被膜を用いて防汚性を評価した。防汚性は、硬化被膜上に黒色マジックインキ(ハイマッキー、ゼブラ株式会社)による汚染を施し、インキのハジキを目視により観察することにより評価した。マジックインキをはじくものを「良好」、マジックインキをはじかないものを「不良」と評価した。
アクリル樹脂板上に設けた硬化被膜を用いて自己修復性を評価した。自己修復性は、各硬化被膜上に、真鍮ブラシを荷重500gで5往復させた後、傷の発生とその傷の回復を目視により観察することにより評価した。1時間以内に傷が回復するものを「良好」、1時間以内に傷が回復しないものを「不良」と評価した。
易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設けた硬化被膜を用いて伸張性を評価した。易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム試験片について引張試験(サンプル寸法:200mm×10mm、チャック間距離:110mm、引張速度:50mm/分)を行い、硬化被膜にクラックが発生した時点の伸度を破断伸度とした。破断伸度は、100×(L−L0)/L0(L0:試験前の試験片長さ、L:破断時の試験片長さ)により計算した。破断伸度が40%以上であるものを「合格」と評価した。
上記の通り、重合性置換基とパーフルオロアルケニル基とが導入されたポリロタキサン化合物を成分とする硬化性組成物(たとえば実施例1)と、パーフルオロアルケニル基が導入されていないポリロタキサン化合物を成分とする硬化性組成物(比較例3)とを比較すると、形成した硬化被膜の防汚性に違いが見られた。これが硬化被膜のどのような表面特性の違いに基づくのかを調べるため、以下の実験をおこなった。
Claims (14)
- ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤とを含む、硬化性組成物であって、
該ポリロタキサン化合物は、環状化合物A、該環状化合物Aの環状構造の輪の中を貫通する線状分子Bおよび該線状分子の末端部に配置され、該貫通した環状化合物Aの脱離を防止する封鎖基Cを含み、該環状化合物Aには、以下の式(1):
[式中、R1は、以下の式(2):
または、以下の式(3):
(ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基、または以下の式(4):
(ここで、Rfは、炭素数3〜20のパーフルオロアルケニル基であり、R4は、炭素数2〜50の二価の炭化水素基である。)で表される基であり;
R2は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基であり;
R3は、以下の式(5):
または、以下の式(6):
(ここで、R5は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であり;
nは、1〜10の数である。]
で表される基が2以上結合しており、
該式(1)で表される2以上の基のうち少なくとも1つの基の該R1は、該式(4)で表される基であることを特徴とする、前記硬化性組成物。 - 2以上の該式(1)で表される基が結合している該環状化合物Aにおいて、該式(1)で表される基が結合する前の環状化合物は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群より選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
- 該式(1)で表される基は、R 2 が炭素数5の二価の炭化水素基である、カプロラクトン鎖を有する基であり、
該式(1)で表される基が結合する前の該環状化合物に対して、末端に水酸基を有するカプロラクトン鎖を導入した環状化合物に存在する、該カプロラクトン鎖の末端の水酸基の総数を基準として、該水酸基に由来する水素原子の40%以上が、該式(2)および/または該式(3)で表される重合性置換基によって置換されている、請求項2に記載の硬化性組成物。 - さらに該水酸基に由来する水素原子の5%以上が、該式(4)で表される基によって置換されている、請求項3に記載の硬化性組成物。
- 該線状分子Bが、該線状分子B部分の分子量が10,000〜50,000のポリエチレングリコールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 該封鎖基Cが、アダマンチル基、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化被膜を含む、樹脂成形物品。
- ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤とを含む、硬化性組成物を基材に塗布し、
該塗布した硬化性組成物を硬化させる
ことを含む、硬化被膜の製造方法であって、
該ポリロタキサン化合物は、環状化合物A、該環状化合物Aの環状構造の輪の中を貫通する線状分子Bおよび該線状分子の末端部に配置され、該貫通した環状化合物Aの脱離を防止する封鎖基Cを含み、該環状化合物Aには、以下の式(1):
[式中、R1は、以下の式(2):
または、以下の式(3):
(ここで、Rは、水素またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)で表される重合性置換基、または以下の式(4):
(ここで、Rfは、炭素数3〜20のパーフルオロアルケニル基であり、R4は、炭素数2〜50の二価の炭化水素基である。)で表される基であり;
R2は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基であり;
R3は、以下の式(5):
または、以下の式(6):
(ここで、R5は、炭素数2〜10の二価の炭化水素基である。)
で表される基であり;
nは、1〜10の数である。]
で表される基が2以上結合しており、
該式(1)で表される2以上の基のうち少なくとも1つの基の該R1は、該式(4)で表される基であることを特徴とする、前記硬化被膜の製造方法。 - 2以上の該式(1)で表される基が結合している該環状化合物Aにおいて、該式(1)で表される基が結合する前の環状化合物は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群より選択される、請求項8に記載の硬化被膜の製造方法。
- 該式(1)で表される基は、R 2 が炭素数5の二価の炭化水素基である、カプロラクトン鎖を有する基であり、
該式(1)で表される基が結合する前の該環状化合物に対して、末端に水酸基を有するカプロラクトン鎖を導入した環状化合物に存在する、該カプロラクトン鎖の末端の水酸基の総数を基準として、該水酸基に由来する水素原子の40%以上が、該式(2)および/または該式(3)で表される重合性置換基によって置換されている、請求項9に記載の硬化性被膜の製造方法。 - さらに該水酸基に由来する水素原子の5%以上が、該式(4)で表される基によって置換されている、請求項10に記載の硬化被膜の製造方法。
- 該線状分子Bが、該線状分子B部分の分子量が10,000〜50,000のポリエチレングリコールである、請求項8〜11のいずれか1項に記載の硬化被膜の製造方法。
- 該封鎖基Cが、アダマンチル基、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、フルオレセイン基およびピレン基からなる群より選択される、請求項8〜12のいずれか1項に記載の硬化被膜の製造方法。
- 該硬化被膜の大気側表面近傍に、該パーフルオロポリエーテル基およびパーフルオロアルケニル基を含むフッ素置換基が偏在している、請求項8〜13のいずれか1項に記載の硬化被膜の製造方法。
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