JP6912960B2 - 硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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また、一般に、金型離型性と樹脂基材への密着性とは相反する性能であり、金型離型性を向上させようとすると樹脂基材への密着性が低下するといった問題が知られている。
即ち、本発明は、ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)、ウレタン基を有しない単官能エチレン性不飽和単量体(B)、ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(C)、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(D)及びラジカル重合開始剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)が、有機ジイソシアネート(a)とジオール(b)及び水酸基を有する(メタ)アクリレート(c)とをウレタン化反応させたものであり、前記ジオール(b)が芳香環を有するジオール(b1)のアルキレンオキサイド付加物であり、前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイド及び/又は1,2−若しくは1,3−プロピレンオキサイドであって、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート(c)がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(c1)である硬化性樹脂組成物である。
ここで、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基及びプロペニル基等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」の表記は、アクリロイル及び/又はメタアクリロイルを意味し、「(メタ)アクリレート」の表記は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」の表記は、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイロキシ」の表記は、アクリロイロキシ及び/又はメタアクリロイロキシを意味し、「(メタ)アリル」の表記は、アリル及び/又はメタリルを意味する。
(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
有機ジイソシアネート(a)として、これらのジイソシアネートを使用することにより、ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)の結晶性が向上し、その結果、硬化性樹脂組成物の硬化物の離型性が向上し、かつ靭性にも優れる。
(b)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ジオール(b)として、前記のジオール(b1)を使用することにより、硬化物の結晶性が向上し、金型離型性が向上する。
また、前記のジオール(b1)のうち、ウレタン化反応の反応性及び活性エネルギー線照射により硬化させた硬化物の着色の観点から好ましいのは、芳香環を有するジオール(b1)及びそのアルキレンオキサイド付加物であり、活性エネルギー線照射により硬化させた硬化物の結晶性向上の観点から更に好ましいのは、ビスフェノールAの1〜10モルのアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいのは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物及びビスフェノールAのエチレンオキサイド10モル付加物が挙げられる。
(c)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、(A)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
Mnが500以上であると硬化物の靭性が優れ、50,000以下であると、硬化物の金型形状の再現性に優れる。
[1]装置 :ゲルパーミエイションクロマトグラフィー「HLC−8120GPC」、東ソー(株)製
[2]カラム :「TSKgel GMHXL」2本+「TSKgel Multipore HXL−M 」、東ソー(株)製
[3]溶離液 :テトラヒドロフラン
[4]基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)、東ソー(株)製
[5]注入条件:サンプル濃度0.25重量%、カラム温度40℃
中でも、(a)と(b)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)と、(c)とをウレタン化反応させて製造することが好ましい。
上記の(a)と(b)との反応及び(d)と(c)との反応においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。
ウレタン化触媒としては、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物及び有機チタン化合物等)及び4級アンモニウム塩等が挙げられる。
但し、エチレン性不飽和単量体(B)としては、後述の(メタ)アクリロイロキシアルキル基を有するシラン化合物(D1)及び官能基(a)を有するエチレン性不飽和単量体(F)を除く。
なお、(B)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
但し、(C)としては、後述の(メタ)アクリロイロキシアルキル基を有するシラン化合物(D1)及び官能基(a)を有するエチレン性不飽和単量体(F)を除く。
具体的には以下の(C1)〜(C5)等が挙げられる。
なお、(C)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
鎖状脂肪族多価アルコールへのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート〔トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート[トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等]及びポリオキシテトラメチレングリコールのジ(メタ)アクリレート〕;
脂環式多価アルコールへのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート[EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート等];
芳香環を有する多価アルコールへのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート[以下の一般式(2)で表される化合物:ビスフェノールAへのEO4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAへのEO20モル付加物のジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
m及びkはそれぞれ独立に1〜30の数であり、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加モル数を表し、かつ(m+k)が2〜60である。好ましくは、mとkの数が2〜20かつ(m+k)が4〜40である。
脂環式骨格を有する多価アルコールのジ(メタ)アクリレート[炭素数10〜30の化合物:ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンタンジメチロールジ(メタ)アクリレート等];
芳香環を有する多価アルコールのジ(メタ)アクリレート[トリメチロールプロパンベンゾエートジ(メタ)アクリレート];
水酸基含有両末端エポキシアクリレート;及び
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とヒドロキシカルボン酸のエステル化物[例えばヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
また、nは1〜3の整数である。
これらの内、好ましくは(メタ)アクリロイロキシアルキル基又はアミノアルキル基である。
これらのシラン化合物(D)は、例えば信越シリコーン(株)のシランカップリング剤の製品パンフレットの一覧表に官能基別に化学品名とその構造式が例示されている。
なお、(D)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
具体的には以下の化合物等が挙げられる。
nが3、即ちアルコキシ基を3個有するシラン化合物としては、3−(メタ)アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
具体的には、以下の化合物等が挙げられる。
nが3、即ちアルコキシ基を3個有するシラン化合物としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
nが3、即ちアルコキシ基を3個有するシラン化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
nが3、即ちアルコキシ基を3個有するシラン化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、更に好ましいのは、アルコキシ基を3個有し(メタ)アクリロイロキシアルキル基を1個有するシラン化合物、及びアルコキシ基を3個有しアミノアルキル基を1個有するシラン化合物である。特に好ましいのは、3−(メタ)アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランであり、最も好ましいのは3−(メタ)アクリロイロキシプロピルトリメトキシシランである。
光重合開始剤(E1)としては、ベンゾイン化合物(E1−1)、アルキルフェノン化合物(E1−2)、アントラキノン化合物(E1−3)、チオキサントン化合物(E1−4)、ケタール化合物(E1−5)、ベンゾフェノン化合物(E1−6)、ホスフィンオキシド化合物(E1−7)及びオキシムエステル化合物(E1−8)等が挙げられる。
(E)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤(E1)の内、硬化物が黄変しにくいという耐光性の観点から好ましいのは、アルキルフェノン化合物(E1−2)及びホスフィンオキシド(E1−7)であり、更に好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド及びビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドであり、特に好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドである。
なお、前記の官能基(a)及びウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体は、前記のウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)として扱う。
なお、(F)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
このようなエチレン性不飽和単量体(F)は、KAYAMER PM−21[日本化薬(株)製]として市場から入手することができる。
具体的には、無機リン酸(リン酸、無水リン酸、酸化リン及びポリリン酸等)、アルキルカルボン酸(フタル酸等)又はアルキルスルホン酸(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及び分岐アルキルベンゼンスルホン酸)と、炭素数1〜24のアルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール及びステアリルアルコール等)又は炭素数1〜24のアルコールのアルキレンオキサイド付加物[ドデカノールのEO2モル付加物、トリデカノールEO10モル付加物、テトラデカノールのPO2モル付加物、ステアリルアルコールEO10モル付加物]とのエステル化合物等が挙げられる。
但し、この有機酸エステル化合物(G)としては、前記のカルボキシ基、リン酸基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(a)を有するエチレン性不飽和単量体(F)を除く。
このリン酸エステルとアミンとの塩(H)としては、リン酸エステルとアミンとの反応物(反応させた際に生成する塩の混合物)が挙げられる。
無機リン酸としては、リン酸、無水リン酸、酸化リン及びポリリン酸等が挙げられる。
リン酸エステルとして好ましいのは、トリデカノールと無機リン酸との反応物である。
炭素数6〜24のアルコールとしては、前記の炭素数1〜24のアルコールの内、炭素数が6以上のものが挙げられる。
尚、ここでのアルキレンオキサイドの炭素数は2〜4であり、単独でも2種以上の併用でもよい。
リン酸エステルとアミンの当量比は1.1/1.0〜1.0/1.0が好ましい。
その他の添加剤(I)としては、着色剤(I1)、酸化防止剤(I2)、紫外線吸収剤(I3)、重合禁止剤(I4)、連鎖移動剤(I5)、充填剤(I6)、界面活性剤(I7)、可塑剤(I8)、有機溶剤(I9)及びチクソトロピー性付与剤(増粘剤)(I10)等が挙げられ、目的に応じて種々選択することができ、1種の単独使用又は2種以上の併用のいずれでもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物が含有する重合禁止剤(I4)の重量割合は、硬化性樹脂組成物の保存安定性及び重合速度の観点から、硬化性樹脂組成物の重量に基づいて0.01〜5重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜3%である。
そして、前記のリン酸基を有するビニルモノマー及びリン酸エステル基を有するビニルモノマーの合計重量に対する前記のシラン化合物(D1)の重量比率[前記のシラン化合物(D1)の重量/前記のリン酸基を有するビニルモノマー及びリン酸エステル基を有するビニルモノマーの合計重量]は、硬化物の靱性の観点から、2.8〜2.2であることが好ましく、更に好ましくは2.7〜2.3であり、特に好ましくは2.6〜2.4である。
以下に、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて、成形体を製造する方法について説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法は、特に限定されないが、微細な凹凸構造を有する三次元形状のプラスチックレンズを製造する場合は、例えば微細な凹凸構造を有する平らな金型を用いて硬化性樹脂組成物を光硬化させ金型から離型することにより得ることができる。
本発明の樹脂組成物を予め20〜50℃に温調し、成形体形状(例えば光学レンズ形状)が得られる金型(型温は好ましくは20〜50℃、更に好ましくは25〜40℃)にディスペンサー等を用いて、硬化後の厚みが20〜150μmとなるように塗工(又は充填)し、塗膜上から透明基材(透明フィルムを含む)を空気が入らないように加圧積層する。
そして、前記の透明基材上から活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させる。なお、ラジカル重合開始剤(C)として、熱重合開始剤(C2)を含有する場合は、50〜250℃に加熱することによっても該塗膜を硬化させることができる。
その後、硬化物を型から離型し成形体(レンズシート)を得る。
本発明において、活性光線とは250nm〜830nmの波長を有する紫外線を意味する。
本発明の樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化させる場合は、種々の活性エネルギー線照射装置[例えば、フュージョンUVシステムズ(株)製、活性エネルギー線照射装置[型番「VPS/I600」]が使用できる。
使用するランプとしては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000mJ/cm2、更に好ましくは100〜5,000mJ/cm2である。
[1]装置 :ゲルパーミエイションクロマトグラフィー「HLC−8120GPC」、東ソー(株)製
[2]カラム :「TSKgel GMHXL」2本+「TSKgel Multipore HXL−M 」、東ソー(株)製
[3]溶離液 :テトラヒドロフラン
[4]基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)、東ソー(株)製
[5]注入条件:サンプル濃度0.25重量%、カラム温度40℃
また、製造例1〜5において、イソシアネート含有量は、試料に残存するイソシアネート基の重量を試料の重量に対する重量割合で表したものであり、JIS K 1603−1に記載のイソシアネート基含有率(%)の測定方法に準拠して測定した。
撹拌装置及び温度計を取り付けたガラス製の反応容器に、ビスフェノールAのPO2モル付加物[商品名:ニューポールBP−2P、三洋化成工業(株)製]57.0部、4,4’−MDI[商品名:タケネ−ト 300、武田薬品工業(株)製]を48.1部、触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)の2−エチルヘキサン酸50%溶液を0.5部仕込み、攪拌して均一溶液とした後、80℃に昇温した。容器内の温度を80℃に温度調整しながら、1段目のウレタン化反応を6時間行った。
イソシアネート含有量が2.29%以下になったのを確認した後、重合禁止の目的で酸素濃度を8体積%に調整した窒素と酸素の混合気体を液中に通気しながら、2−ヒドロキシエチルアクリレートを6.6部加え、75℃で2段目のウレタン化反応を2時間行った。
イソシアネート含有量が0.01%以下になったのを確認した後、60℃に冷却し、本発明におけるウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A−1)を得た。(A−1)のMnは2,900であった。
製造例1において、ビスフェノールAのPO2モル付加物をビスフェノールAのEO10モル付加物[商品名:ニューポールBPE−100、三洋化成工業(株)製]73.5部に、4,4’−MDIをTDI[商品名:タケネ−ト 80、武田薬品工業(株)社製]22.2部に、2−ヒドロキシエチルアクリレートの部数を4.3部に変更した以外は、製造例1と同様の操作で本発明におけるウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A−2)を得た。(A−2)のMnは4,600であった。
製造例1において、ビスフェノールAのPO2モル付加物の部数を51.0部に、4,4’−MDIをXDI[商品名:タケネ−ト 500、武田薬品工業(株)社製]37.1部に、2−ヒドロキシエチルアクリレートの部数を11.8部に変更した以外は、製造例1と同様の操作で本発明におけるウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A−3)を得た。(A−3)のMnは1,500であった。
製造例1において、ビスフェノールAのPO2モル付加物の部数を55.6部に、4,4’−MDIをヘキサメチレンジイソシアネート[商品名:デュラネート50M、旭化成ケミカルズ(株)製]34.2部に、2−ヒドロキシエチルアクリレートの部数を10.2部に変更した以外は、製造例1と同様の操作でウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A−4)を得た。(A−4)のMnは1,800であった。
製造例1において、ビスフェノールAのPO2モル付加物をポリテトラメチレングリコール[商品名:PTMG−1000、三菱化学(株)製]65.0部に、4,4’−MDIをジシクロヘキシルメタンジイソシアネート[商品名:デスモジュールW、住化バイエルウレタン(株)製]26.6部に、2−ヒドロキシエチルアクリレートの部数を8.4部に変更した以外は、製造例1と同様の操作でウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A−5)を得た。(A−5)のMnは2,200であった。
撹拌装置及び温度計を取り付けたガラス製の反応容器に、2−エチルヘキシルアルコールのリン酸エステル[商品名「AP−8」、大八化学(株)製]55.6部を仕込んだ。ここにN,N−ジメチルステアリルアミン[商品名「ファーミンDM8098」、花王(株)製]44.4部を投入し50℃で2時間攪拌し、2−エチルヘキシルアルコールのリン酸エステルとN,N−ジメチルステアリルアミンの塩(H−1)を得た。
製造例6において、2−エチルヘキシルアルコールのリン酸エステルをトリデカノールEO10モル付加物のリン酸エステル[商品名「イオネット1310R」、三洋化成工業(株)製]55.6部に変更した以外は、製造例6と同様の操作で本発明のリン酸エステルのアルキルアミン塩(H−2)を得た。
表1に示す配合組成(重量部)で、80℃で混合して、実施例1〜6の硬化性樹脂組成物及び比較例1〜4の比較用硬化性樹脂組成物を得た。
(B−1):ベンジルアクリレート[商品名「ファンクリルFA−BZA」、日立化成(株)製、 官能基数1]
(B−2):イソボルニルアクリレート[商品名「ライトアクリレートIBXA」、共栄社化学(株)製、官能基数1]
(B−3):ジシクロペンタニルアクリレート[商品名「ファンクリルFA−513A」、日立化成(株)製、官能基数1]
(B−4):1−アダマンチルアクリレート[商品名「1−AdA」、大阪有機化学工業(株)製、官能基数1]
(B−5):アクリロイルモルフォリン[商品名「ACMO」、KJケミカルズ(株)製、官能基数1]
(B−6):フェノキシエチルアクリレート[商品名「ビスコート#192,PEA」、大阪有機化学工業(株)製、官能基数1]
(C−2):ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート[商品名「ライトアクリレートDCP−A」、共栄社化学(株)製、官能基数2]
(C−3):ビスフェノールAのEO20モル付加物のジアクリレート[商品名「NKエステル A−BPE−20」、新中村化学(株)製、官能基数2]
(D−2):3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン[商品名「KBM−503」、信越化学工業(株)製]
(D−3):N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−3−トリエトキシシリルプロピルアミン[商品名「KBE−9103」、信越化学工業(株)製]
(E1−2):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド[商品名「イルガキュアTPO」、BASF社製]
(E1−3):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド[商品名「イルガキュア819」、BASF社製]
(E1−4):2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[商品名「イルガキュア907」、BASF社製]
(E2−1):ジ−t−ブチルパーオキサイド[商品名「パーブチルD」、日油(株)製]
(F−2):2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸[商品名「ライトアクリレートHOA−HH(N)」、共栄社化学(株)製]
(I−2):2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと、オキシラン[(炭素数10〜16のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物/1−メトキシ−2−プロパノール=85/15(重量比)[商品名「TINUVIN400」、BASFジャパン(株)製](紫外線吸収剤)
(I−3):フェノチアジン[和光純薬工業(株)製](重合禁止剤)
(I−4):ヒドロキノンモノメチルエーテル[和光純薬工業(株)製](重合禁止剤)
その結果を表1に示す。
(i)
溝の深さ200μm、ピッチ幅80μmで平行に線を刻んで、微細に凹凸処理を施したSUS製の金型の表面に、厚さが100μmになるように硬化性樹脂組成物を塗工した後、厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」東洋紡績(株)製]を塗工面に乗せ、ローラーを上から転がして空気を押し出して貼り合わせた。
(ii−1)実施例1の場合
100℃で10分加熱し、硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化膜を作成した。基材フィルムと密着した硬化膜を板ガラスから剥離し、凹凸の転写が再現されているかをレーザー顕微鏡で判定した。
(ii−2)実施例2〜6、比較例1〜4の場合
PETフィルム側から活性エネルギー線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]により、活性エネルギー線を1000mJ/cm2照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化膜を作成した。フィルムと密着した硬化膜を金型から剥離し、凹凸の転写が再現されているかをレーザー顕微鏡で判定した。
◎:金型に樹脂残りがなく、凹凸の転写が再現できており、しかも金型からスムースに離れる。
○:金型に樹脂残りがなく、凹凸の転写が再現できている。
×:金型に樹脂残りがあり、凹凸の転写が再現できていない。
上記の金型離型性評価で金型から剥離した硬化物をJIS K 5600−5−6に準拠し、25個(5個×5個)のマスができるよう2mm幅にカッターナイフで切込みを入れ密着性を測定した。
○:試験後にフィルム上に残ったマス目が25。
×:試験後にフィルム上に残ったマス目が24以下。
−:金型離型性の判定が「×」のものは試験できなかった。
(i)
ガラス板の表面に、厚さが10μmになるように硬化性樹脂組成物を塗工した後、縦100mm以上×横100mm以上×厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」東洋紡績(株)製]を塗工面に乗せ、ローラーを上から転がして空気を押し出して貼り合わせた。
(ii−1)実施例1の場合
100℃で10分加熱し、硬化性樹脂組成物を硬化させた。
(ii−2)実施例2〜6、比較例1〜4の場合
PETフィルム側から上記の活性エネルギー線照射装置により、活性エネルギー線を1000mJ/cm2照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させた。
(iii)
硬化物をガラス板から剥がし、試験評価用の硬化フィルム(基材のPETフィルムに各硬化性樹脂組成物の硬化物をコートしたもの)を作成した。
作成した硬化フィルムを縦100mm×横100mmの正方形に切断し、室温で1時間温調した。
この後、隙間(厚み)ゲージを用い、硬化膜の四隅の反りレベルを測定し、それによって、反り特性について試験サンプルを評価した。
○:4隅の反りのうち、4つすべてが30mm以下。
×:4隅の反りのうち、1つでも30mmより大きいのがあるもの。
硬化性樹脂組成物の硬化物を試験片(小型試験片5A形)として、JIS K7161に準じて、引張試験機[(株)島津製作所製]を用いて、試験速度50mm/分で引張り、引張破断強度(N/mm2)を測定した。
上記の(4)引張破断強度での測定の際、破断するまでに加わったエネルギーを、破断までの応力−ひずみ曲線の面積から求め、破壊エネルギー(J)とした。
上記の(4)引張破断強度と(5)破壊エネルギーの値から、下記の判定基準で靱性を総合判定した。
○:引張破断強度が20N/mm2以上かつ破壊エネルギーが3.0J以上
△:引張破断強度が20N/mm2以上かつ破壊エネルギーが2.0J以上
×:引張破断強度が20N/mm2未満又は破壊エネルギーが2.0J未満
一方、ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)を含まない比較例1の比較用硬化性樹脂組成物は、靭性が悪い。ウレタン基を有しない単官能エチレン性不飽和単量体(B)を含まない比較例2の比較用硬化性樹脂組成物は、樹脂基材への密着性が悪くて反り性も大きい。ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(C)を含まない比較例3の比較用硬化性樹脂組成物は、金型離型性が悪く、靱性も不十分である。特定の化学構造を有するシラン化合物(D)を含まない比較例4の比較用硬化性樹脂組成物は、樹脂基材への密着性が不良である。
また、本発明の硬化物を用いた光学部品は、フィルム状やシート状で使われるほか、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ及びコントラスト向上レンズ等)、位相差フィムル、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜及び感光性光導波路として極めて有用である。
Claims (11)
- ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)、ウレタン基を有しない単官能エチレン性不飽和単量体(B)、ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(C)、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(D)及びラジカル重合開始剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)が、有機ジイソシアネート(a)とジオール(b)及び水酸基を有する(メタ)アクリレート(c)とをウレタン化反応させたものであり、前記ジオール(b)が芳香環を有するジオール(b1)のアルキレンオキサイド付加物であり、前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイド及び/又は1,2−若しくは1,3−プロピレンオキサイドであって、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート(c)がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(c1)である硬化性樹脂組成物。
- 前記ウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(A)が、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記ウレタン基を有しない単官能エチレン性不飽和単量体(B)が、1個の(メタ)アクリロイル基を有する請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記ウレタン基を有しない多官能エチレン性不飽和単量体(C)が、2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記シラン化合物(D)が、前記一般式(1)においてXが(メタ)アクリロイロキシアルキル基であるシラン化合物(D1)及び/又は前記一般式(1)においてXがアミノアルキル基であるシラン化合物(D2)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 更に、カルボキシ基、リン酸基、リン酸エステル基及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(a)を有するエチレン性不飽和単量体(F)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
- 更に、リン酸エステル(G1)、カルボン酸エステル(G2)及びスルホン酸エステル(G3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸エステル化合物(G)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記有機酸エステル化合物(G)が、リン酸エステル(G1)である請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
- ウレタン基を有しない単官能エチレン性不飽和単量体(B)の重量割合が、前記エチレン性不飽和単量体(A)と前記エチレン性不飽和単量体(B)と前記エチレン性不飽和単量体(C)との合計重量に基づいて、10〜70重量%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 光学部品用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
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