(実施例1)
図1は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの概略図である。
<装置の構成>
画像読取装置Aは、載置台1に積載された一又は複数の原稿束Sを1枚ずつ装置内に経路RTにて搬送してその画像を読み取り、排出トレイ2に排出する装置である。読み取る原稿束Sは、例えば、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等の原稿であり、厚手の原稿であっても、薄手の原稿であってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。
<載置台>
載置台1には原稿束Sが載置されたことを検知するための載置台原稿検出センサ110が設けられている。載置台原稿検出センサ110は発光素子と受光素子からなる反射型光学センサであり、原稿束Sが載置台1に載置されることで、原稿束Sで反射された発光素子の光を受光し原稿束Sを検出する。
<給紙>
経路RTに沿って原稿束Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は本実施形態の場合、送りローラ11と、送りローラ11に対向配置される分離ローラ12と、を備え、載置台1上の原稿束Sを搬送方向D1に一枚ずつ順次搬送する。送りローラ11には、給紙モータ3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(経路RTに沿って原稿を搬送させる正方向)に回転駆動される。伝達部5は例えば電磁クラッチであり、給紙モータ3からの送りローラ11への駆動力を断続する。
<駆動部>
給紙モータ3と送りローラ11とを接続する伝達部5は、例えば、本実施形態では、通常時において駆動力が伝達される状態とし、原稿の逆送の場合に駆動力を遮断する。送りローラ11は伝達部5により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、このような伝達部5は、送りローラ11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
<分離構造>
送りローラ11に対向配置される分離ローラ12は、原稿束Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、送りローラ11に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、分離ローラ12は揺動可能に設けると共に送りローラ11へ付勢されるように構成される。分離ローラ12は、トルクリミッタ12aを介して給紙モータ3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(送りローラ11の正方向とは逆方向))に回転駆動される。
分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制されるため、送りローラ11と当接している際は送りローラ11に連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の原稿が送りローラ11と分離ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、1枚を残して2枚以上の原稿が下流に搬送されないようにせき止められる。
また、不図示の分離設定部から分離動作を行わない非分離モードが選択された場合は、給紙モータ3からの駆動力の伝達がOFFされ、分離ローラ12は圧接している送りローラ11に従動して回転する状態となり、分離はOFFされる。
本実施形態においては、分離機構として分離ローラ12を設けたが、分離ローラ12のような構成の代わりに、原稿に摩擦力を付与する分離パッドを送りローラ11に圧接させて、同様の分離作業を持たせるようにしてもよい。
<搬送構造>
第1搬送部10の搬送方向下流側にある搬送機構としての第2搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを備え、第1搬送部10から搬送されてきた原稿をその下流側へ搬送する。駆動ローラ21にはモータ等の搬送モータ4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ22は駆動ローラ21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ21に連れ回る。この従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢された構成としてもよい。この駆動ローラ21と従動ローラ22で搬送ローラ部を構成している。
このような第2搬送部20よりも搬送方向下流側にある第3搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを備え、第2搬送部20から搬送されてきた原稿を排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。駆動ローラ31にはモータ等の搬送モータ4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ31に連れまわる。この従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ31に対して付勢された構成としてもよい。
排出トレイ2は、画像読取装置Aに対して回動可能なように、画像読取装置Aの下方に設けられた第1ヒンジ2cを介して軸支されている。また、第1ヒンジ2c側の第1排出トレイ2aとその先端側に接続された第2排出トレイ2bとから構成されており、第2排出トレイ2bは第1排出トレイ2aに対して回動可能に軸支されている。
<画像読取構造、制御>
ここで、本実施形態の画像読取装置Aでは、第2搬送部20と第3搬送部30との間に配置される画像読取ユニット70によって画像の読み取りを行うため、第2搬送部20及び第3搬送部30は原稿を定速搬送する。搬送速度は常に第1搬送部10の搬送速度以上とすることで、先行する原稿に後続の原稿が追いついてしまう事態を確実に回避できる。例えば、本実施形態では、第2搬送部20及び第3搬送部30による原稿の搬送速度を、第1搬送部10による原稿の搬送速度よりも速くなるように速度制御するようにした。
なお、第2搬送部20及び第3搬送部30による原稿の搬送速度と、第1搬送部10による原稿の搬送速度とを同一条件とした場合でも、給紙モータ3を制御して後続原稿の給送開始タイミングを間欠的にずらすことにより先行原稿と後続原稿との間に最低限の間隔を形成することも可能である。
<重送検出>
第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される重送検出センサ40は、静電気等で紙などの原稿同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するための検出センサ(原稿の挙動や状態を検出するセンサ)の一例である。重送検出センサ40としては、種々のものが利用可能であるが本実施形態の場合には超音波センサであり、超音波の発信部とその受信部とを備え、紙等の原稿が重送されている場合と1枚ずつ搬送されている場合とで、原稿を通過する超音波の減衰量が異なることを原理として重送を検出する。
<レジストセンサ>
原稿検出センサ50は第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置された上流側の検出センサ(原稿の挙動や状態を検出するセンサ)としての一例であり、第1搬送部10により搬送される原稿の位置、詳細には、原稿検出センサ50の検出位置に原稿の端部が到達又は通過したか否かを検出する。原稿検出センサ50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサであり、発光部51とその受光部52とを備え、原稿の到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することで原稿を検出する。
本実施形態の場合、原稿の先端が原稿検出センサ50で検出されると、原稿が重送検出センサ40により重送を検出可能な位置に到達しているように、上記の原稿検出センサ50は重送検出センサ40の近傍においてその下流側に設けられている。なお、この原稿検出センサ50は、上記の光学センサに限定されず、例えば、原稿の端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、経路RTに突出したレバー型のセンサでもよい。
原稿の先端が原稿検出センサ50に到達すると当該原稿が間もなく駆動ローラ21に到達することが分かる。このときに給紙モータ3を継続して駆動し続けると原稿は駆動ローラ21に到達し、原稿は一定速度で搬送される。
原稿検出センサ50とは別の原稿検出センサ60が画像読取ユニット70よりも上流側に配置されている。第2搬送部20よりも下流側に配置された検出センサとしての一例であり、第2搬送部20により搬送される原稿の位置を検出する。原稿検出センサ60としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合、原稿検出センサ50と同様に光センサであり、発光部61と受光部62とを備え、原稿の到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として原稿を検出する。
<CISの配置>
原稿検出センサ60よりも下流側にある画像読取ユニット70は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものである。本実施形態の場合、画像読取ユニット70は経路RTの両側に一つずつ配置されており、原稿の表裏面を読み取る。しかし、経路RTの片側にのみ一つ配置して、原稿の片面のみを読み取る構成としてもよい。また、本実施形態では、画像読取ユニット70を経路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、経路RTの方向に間隔をあけて配置してもよい。
背景切替モータ77は、画像読取ユニット70の一部を移動させて読取位置を変更し、原稿を読み取るときの背景を白色/黒色に切り替える。
<PCからの開始指示受信による駆動>
画像読取装置Aの基本的な動作について説明する。制御部80は、例えば画像読取装置Aが接続されたホストPCから画像読み取りの開始指示を受信すると、第1乃至第3搬送部10乃至30の駆動を開始する。載置台1に積載された原稿束Sはその最も下に位置する原稿から1つずつ搬送される。
<レジストセンサの出力に応じた読取開始>
制御部80は、原稿検出センサ60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた原稿の、画像読取ユニット70による画像の読み取りを開始し、読み取った画像を一次記憶して順次ホストPCへ送信する。画像が読み取られた原稿は第3搬送部30により排出トレイ2に排出されてその原稿の画像読取処理が終了する。
<排紙構造>
排出トレイ2は、画像読取装置Aに対して回動可能なように、画像読取装置Aの下方に設けられた第1ヒンジ2cを介して軸支されており、第1排出トレイ2a及び第2排出トレイ2bによって本体前面を覆うように構成されている。
<表示パネルの構成>
第2排出トレイ2bの収納状態において、第2排出トレイ2bと重なる位置に設けられた表示パネル90には、表示画面が配置されている。
<全体ブロック図の説明>
図2を参照して画像読取装置Aのブロック図について説明する。
制御部80はCPUや周辺機能を備えたマイコン等のデバイスで、周辺機能として記憶部182、操作部183、通信部184等を備える。制御部80は記憶部182に記憶されたプログラムを実行することにより、画像読取装置A全体の制御を行う。記憶部182は例えばRAM、ROM等から構成される。操作部183は、例えば、スイッチや表示パネル90に設けられたタッチパネル等で構成され、操作者からの操作を受け付ける。
通信部184は、外部装置との情報通信を行うインターフェースである。外部装置としてPC(パソコン)を想定した場合、通信部184としては、例えば、USBインターフェースやSCSIインターフェースを挙げることができる。また、このような有線通信のインターフェースの他、通信部184は無線通信のインターフェースとしてもよく、有線通信、無線通信の双方のインターフェースを備えていてもよい。
画像読取ユニット70は、制御部80から各種設定情報を受け取り、読み取った画像データを画像処理部84に送信する。電源制御部68は、画像読取ユニット70への電源供給/遮断を制御する。画像処理部84では、得られた画像データの明るさを調整するなど画像データに様々な画像処理を施しつつ、並行して、画像から原稿端部を検出することで原稿サイズを検知することができる。画像メモリ181は画像処理部84で処理された画像データを格納できる。画像メモリ181に一旦蓄えられた画像データは、不図示のDMAC(Direct Memory Access Controller)等により制御部80を介さずに直接通信部184に送られる。
また、給紙モータ3を駆動するための駆動制御部89、搬送モータ4を駆動させるための駆動制御部88、背景切替モータ77を駆動するための駆動制御部87、重送の発生を検出する重送検出センサ40、原稿の到達を検出する原稿検出センサ50、60、載置台1上に原稿が積載されていることを検出する載置台原稿検出センサ110を有している。
表示パネル90には本実施例では液晶パネルを用い、読み取った画像データを表示可能な構成としたが、画像読取装置Aの外部に接続されたホストPC等の表示装置を用いても構わない。その場合には、その表示装置を含んだ全体のシステムが画像読取装置Aとして見做される。
<スリープモードの説明>
画像読取装置Aでは待機状態のときの消費電力を低減するためにスリープモードを有している。電源ON後や原稿読み取りの終了後など、待機状態に入ってから一定時間経過するとスリープモードに遷移する。スリープモードからの復帰は、ホストPCなどから通信部184を介して復帰の命令を受け取ったときや、ユーザーにより操作部183を操作されたときに限定し、これら以外の機能は電力を消費しないように制御する。スリープモードでは、画像読取ユニット70には電源制御部68を制御して電源供給を遮断し、表示パネル90は非表示、画像処理部84は無効化するよう制御する。
<画像読取ユニットの構成>
画像読取ユニット70とその周辺は図3(a)のように構成している。画像読取ユニット70は、原稿の表面を読み取る画像読取ユニット70aと原稿の裏面を読み取る画像読取ユニット70bとから成る。なお、載置台1が傾斜しており、載置台1に接する原稿から順に給紙されるため、載置台1に接する下側の面が表面となる。
原稿の表面の画像を読み取る画像読取ユニット70aは、読取センサ69aと、搬送する原稿の進行を案内しつつ光を透過させるコンタクトガラス71a、コンタクトガラス71aと一体となって読取センサ69aのカバーとなる読取ユニットカバー72aとから構成される。コンタクトガラス71aと読取ユニットカバー72aは画像読取ユニット70a内に搬送原稿の紙粉や埃などが入り、読み取り画像に影響を与えないように不図示の電気ケーブルを除いては密封されている。
読取センサ69aは、光を照射する発光素子である光源99a、光源99aからの光を導光して搬送される原稿にライン状に光を照射するライン状の不図示の導光体、ライン状に配置され原稿等からの反射光を受光する受光素子であるイメージセンサ91aを有している。また、光源99aからの照射光が原稿などから反射してきてイメージセンサ91aまで導くレンズアレイ75a、イメージセンサ91aで受光したアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して出力するアナログフロントエンド(AFE)93a、光源99aの点灯を制御する光源点灯部92などによって、画像信号を取得する。
さらに、イメージセンサ91a、AFE93a、光源99a、光源点灯部92が実装されて電気回路を形成する電気回路基板である基板74aと、基板74a、レンズアレイ75a、導光体103を保持する読取ユニットフレーム73aと、読取ユニットフレーム73aに貼り付けられて対向側にある画像読取ユニット70bによる読み取りのときに背景となる白色の背景板76aと、それらを覆い、イメージセンサ91aに対して光源99によって照射された光以外が遮光されるようにする読取ユニットカバー72から読取センサ69aが構成される。
読取ユニットフレーム73aは、光源99aから照射される光が原稿から反射されてくる光以外を遮光するため、レンズアレイ75aの周囲を囲うように構成している。これにより、対向側の画像読取ユニット70bからの照射光や画像読取装置A外部からの外乱光をイメージセンサ91aが受光しないようになっている。
また、図4に基板74上の部品配置を示す。イメージセンサ91はライン状に配置する。AFE93はイメージセンサ91の走査方向である主走査方向のほぼ中央に位置するように基板74上でもほぼ中央に配置する。また、AFE93は搬送面に近い側の基板面に配置する。これらにより、AFE93の発熱を基板74に効率良く拡散させつつ、AFE93の表面からも搬送面に熱を伝えやすくなる。
基板74の裏側にはコネクタ102があり、制御部80からの制御信号や電源供給を受ける不図示のケーブルが接続される。光源99は基板74の端に配置し、不図示のライン状の導光体により光をライン状に照射する。光源99付近には光源点灯部92を配置し、その付近にコネクタ102が配置される。
図5は駆動ローラ21、31、従動ローラ22、32、読取センサ69a、69b、搬送されている原稿S1の位置関係を示す斜視図である。AFE93bは図5では点線で示しており、基板74bの搬送面側に実装されている。またAFE93bは主走査方向の中央にあり、かつ、搬送される原稿S1の通過する位置に配置される。
以上説明した内容は、画像読取ユニット70bについても原稿の裏面を読み取ること以外は同様であるため説明を省略する。但し、画像読取ユニット70bの配置は、画像読取ユニット70aに対して搬送路を挟んで上下逆であり、搬送方向の前後については逆向きに配置されている。
<画像読取ユニットの背景切替>
画像読取装置Aで読み取る画像の背景は白色と黒色を切り替えることができる。図3(a)の画像読取ユニット70aは背景切替モータ77を備え、読取センサ69aを搬送方向に移動させることで背景を切り替える。図3(a)では光源99aの光は対向側にある読取センサ69bの白色の背景板76bで反射した後イメージセンサ91aで受光するため、原稿が通過していないときの画像は白色になる。背景切替モータ77を駆動すると読取センサ69aが下流側に移動し、図3(b)のようになる。読取センサ69aの光源99aの反射光はイメージセンサ91aには受光されないため、原稿が通過していないときの画像は黒色になる。読取センサ69bについても同様である。
<読取センサのブロック図の説明>
図6を参照して読取センサ69のブロック図について説明する。
光源99はLEDなどで構成されている。LEDドライバICなどで構成される光源点灯部92で、点灯信号に応じて光源99を駆動する。イメージセンサ91は光電変換素子がライン状に配列され、スタート信号に同期して1ラインの画像を読み取る。AFE93は1チップのICで構成され、光源点灯部92により光源99が点灯されるのに同期してイメージセンサ91からのアナログ信号をデジタル信号に変換して送信する。
AFE93内のサンプルホールド部96は、イメージセンサ91で読み取ったアナログ画像信号をサンプルホールドし、後段のAD変換部95に出力する。AD変換部95はサンプルホールド部96からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。画像送信部94は、1ライン分のデジタル画像データを送信する。タイミング制御部98は、光源点灯部92、イメージセンサ91、サンプルホールド部96、AD変換部95へそれぞれタイミング信号を出力する。具体的には、光源点灯部92へは点灯信号を出力し、イメージセンサ91には1ライン読み取りのスタート信号を出力し、サンプルホールド部96へはサンプルホールドタイミングを出力し、AD変換部95へはAD変換タイミングを出力する。通信IF部97は、受け取ったタイミング情報をタイミング制御部98に通知する。
低電力制御部100は、AFE93を低電力モード(低電力状態)へ移行させたり、通常モード(通常状態)へ復帰させたり制御する。通信IF部97が低電力モードへの移行指示を受け取ると、低電力制御部100はサンプルホールド部96、AD変換部95、画像送信部94への電力を遮断したり動作クロックを停止したりしてAFE93の消費電力を最小限に抑える。低電力モードにしてもAFE93への電源は供給されているため、タイミング制御部98に設定されているタイミング情報は保持される。そのため、通信IF部97から低電力モードからの復帰を指示された後に再度タイミング情報を設定する必要は無く、すぐに原稿の読み取りを開始できる。
画像読取ユニット70にある温度センサ101は、基板74上でAFE93付近に配置されており、AFE93付近の温度上昇を測定可能になっている。一例として、AFE93に直に当接するように基板74とは異なる基板上などに配置されても良い。
<搬送面から見た画像読取ユニット周辺の説明>
図7を参照して搬送面から見た画像読取ユニット70周辺を説明し、AFE93の温度上昇を抑える構成を説明する。
画像読取ユニット70は搬送面にコンタクトガラス71がある。AFE93の発熱は読取センサ69内を介してコンタクトガラス71に伝導し、搬送面まで熱が伝わる。コンタクトガラス71の搬送方向上流側には駆動ローラ21、下流側には駆動ローラ31がある。駆動ローラ21、31は搬送方向に直交する方向に2つに分割し、それぞれ駆動ローラ軸23、33と一体となっている。駆動ローラ21、31を2つに分割することにより、原稿先端の駆動ローラ21への噛み込みが不均一だった場合に原稿に皺ができるのを防止できる。また、駆動ローラ21については原稿検出センサ50、60を駆動ローラ21の分割された間に配置することができるため、装置全体の小型化に寄与できる。
原稿を搬送するためには、少なくとも原稿の一部に駆動ローラ21、31が重複していることと、原稿検出センサ50、60位置を原稿が通過する必要がある。図7では駆動ローラ21、31は分割されているため、原稿をより安定して搬送するためには分割された両方のローラに原稿が重複しているのが望ましい。よって、搬送可能な最小幅の原稿は図7で図示した最小原稿通過領域を通過することになる。どのようなサイズの原稿を搬送してもこの最小原稿通過領域を必ず通過する。最小原稿通過領域は主走査方向の中央位置となるようにしている。原稿が主走査方向中央位置を必ず通過するようにすることで、多様なサイズの原稿を搬送することができる。
AFE93も同様に最小原稿通過領域と同じ主走査方向中心に配置される。これにより、搬送面に伝わったAFE93の熱が搬送される原稿によって冷却され、コンタクトガラス71の温度上昇を抑え、結果としてAFE93の温度上昇も効率良く抑えられる。
駆動ローラ21、31及び従動ローラ22、32は、図3や図7に示すように、画像読取ユニット70(またはコンタクトガラス71)に近接させて配置している。具体的には、駆動ローラ21と従動ローラ22とを画像読取ユニット70の上流側近傍に、駆動ローラ31と従動ローラ32とを画像読取ユニット70の下流側近傍に配置している。これにより、駆動ローラ21、31による回転によって従動ローラ22、32も回転する。これら4つのローラが回転することで画像読取ユニット70(70a、70b)の周囲の空気を撹拌でき、画像読取ユニット70の内部の温度上昇を抑える効果がある。
すなわち、画像読取装置で搬送できる最小幅の原稿が通過する最小原稿通過領域近傍にAFEを配置することで、どのようなサイズの原稿が搬送されても必ずAFE近傍を通過することになり、AFEの温度上昇をより効率的に抑えることができる。特に、最小幅の原稿が通過する最小原稿通過領域に重なる位置にAFEが配置されていると良いが、熱が伝達する原稿の主走査方向に対する熱伝導を考慮し、本実施形態のように、最小原稿通過領域が主走査方向の中心を含むようにし、AFEを主走査方向の中心に配置していることが最も好ましい。
最小原稿通過領域を主走査方向の中央を含むようにすることで、主走査方向の両方向に均一に熱が拡散するため、熱による受光素子の特性の変化が均一化して画像への影響を小さくできる。
駆動ロ−ラ21、31及び従動ロ−ラ22、32は、図3や図7に示すように、画像読取ユニット70(またはコンタクトガラス71)に近接させて配置している。具体的には、駆動ロ−ラ21と従動ロ−ラ22とを画像読取ユニット70の上流側近傍に、駆動ロ−ラ31と従動ロ−ラ32とを画像読取ユニット70の下流側近傍に配置している。これにより、駆動ロ−ラ21、31による回転によって従動ロ−ラ22、32も回転する。これら4つのロ−ラが回転することで画像読取ユニット70(70a、70b)の周囲の空気を撹拌でき、画像読取ユニット70の内部の温度上昇を抑える効果がある。
AFE93の温度上昇を抑える効果を、図8を参照して説明する。図8には、基板74とその主走査方向の位置に対応するコンタクトガラス71の搬送面の温度分布を示している。横軸はコンタクトガラス71の主走査方向の位置を表し、左側端部を原点とした距離で表している。縦軸はコンタクトガラス71の搬送面側の温度である。主走査方向距離の中心は主走査方向中央とし、ここと同位置の基板74上にAFE93がある。点線のグラフは原稿を搬送していない場合を仮定した温度分布である。最も温度が高いのは主走査方向中央にあるAFE93の位置である。AFE93の発熱は基板74にも拡散するため、AFE93から少し離れても比較的温度が高くなっている。また、イメージセンサ91も発熱があり、主走査方向全体の温度を一律上昇させる要因になっている。光源点灯部92及び光源99も発熱するため、基板74の左端部よりも右端部の方が少し温度は高くなっている。
図8の温度分布のうち実線のグラフは、装置で搬送できる最小幅の原稿を搬送した場合である。原稿を搬送することで図8での最小原稿通過領域の範囲で温度を低下させる効果がある。また、図8での2つの駆動ローラ領域では、駆動ローラ21、31と従動ローラ22、32が回転することにより温度を低下させる効果がある。これら2つの効果により、コンタクトガラス71のピーク温度が低減できている。これにより、読取センサ69全体の温度上昇が抑えられ、結果としてAFE93の温度上昇も抑えることができる。
まとめると、読取手段の上流側近傍と下流側近傍にそれぞれ搬送ロ−ラの一例である駆動ロ−ラを配置し、その搬送ロ−ラが最小原稿通過領域を含むことで、最小幅の原稿を搬送できるようにしつつ、搬送ロ−ラの回転によって読取手段周辺の空気を拡散して温度を低下させ、AFEの温度上昇を抑えることができる。
本実施の形態では、AFE93を主走査方向中央に配置したが、中央以外に配置してもよい。最小原稿通過領域が主走査方向中央にある場合、AFE93を最小原稿通過領域と一部だけでも重なる位置に配置すれば中央に配置しなくても温度上昇を抑える効果は得られる。また、最小原稿通過領域が主走査方向中央ではなく、他の位置にあってもよい。例えば、搬送面の中央ではなく片側に寄せて搬送する画像読取装置では、最小原稿通過領域は主走査方向の片側端部になる。その場合はAFE93を中央ではなく片側端部にある最小原稿通過領域近傍に配置することで温度上昇を抑える効果が得られる。
本実施の形態では、駆動ローラ21、31を2つに分割して配置していたが、分割しなくても良いし、3つ以上に分割しても構わない。2つに分割した場合の効果は上述の通りであるが、分割しない場合、主走査方向中央にもローラを配置することができ、AFE93の温度上昇を抑える効果がより高まる。また3つ以上に分割する場合も2つに分割する場合と同様である。
本実施の形態では、AFE93を1チップのICで構成しているが、複数のICで構成してもよい。例えば、画像送信部94のみを1つのICに独立させても良いし、AD変換部95を独立させてもよい。
(実施例2)
実施例2では、実施例1に加えて搬送路の一部に金属部材を用い、AFE93の近傍まで延伸させて、AFE93の温度上昇を抑える効果を高めている。実施例2では実施例1と同じ構成の説明は省略し、異なる部分について説明する。
図9は本実施の形態に係る画像読取ユニット70とその周辺の断面図である。図9は実施例1での図3に相当する図である。図9では画像読取ユニット70bの読取ユニットカバー72bに部分的に開口部を設け、基板74bの搬送面とは反対側の面を一部むき出しにしている。むき出しになっている基板74bの面に熱伝導部材78を貼り付ける。画像読取ユニット70bの上流側の搬送路には金属材料を使用した金属搬送路34を設ける。さらに金属搬送路34は画像読取ユニット70bに沿って読取ユニットカバー72bに設けた開口部を通してAFE93近傍まで延伸させる。金属搬送路34の金属面と基板74bとの間には熱伝導部材78を設け、AFE93bの発熱が伝わった基板74bの熱を効率良く金属搬送路34に伝導させる。金属搬送路34の搬送面に近い部分にまで熱が伝導し、原稿を搬送すると、コンタクトガラス71だけでなく金属搬送路34の熱を拡散することができ、温度上昇を抑える効果が得られる。読取ユニットカバー72は、フレーム部材の一例であり、光源99により照射され原稿から反射する光以外が遮光されるように覆っている。
一方、画像読取ユニット70aには背景切替モータ77があり、背景を切り替えるときに読取センサ69aを移動させる必要があるため、AFE93a近傍まで搬送路を延伸させたとしても基板74aに直接接触させることができない。しかし、画像読取ユニット70b側だけでも温度上昇を抑えることができれば、画像読取ユニット70aの温度上昇もある程度抑えることができる。画像読取ユニット70aは画像読取ユニット70bの対向した位置にあるため、コンタクトガラス71aの熱は近接するコンタクトガラス71bにも伝わって均一化する。よって、AFE93bの温度上昇を抑えることで、AFE93aの温度もある程度抑えられる。
このようにAFE93a近傍には金属部材を延伸させないため、画像読取ユニット70aの上流側の搬送路は金属部材ではなく樹脂部材を使った樹脂搬送路35を設ける。樹脂材料を使うことで金属材料よりもコストダウンすることができる。
以上のようにしてAFE93の発熱をより効率よく拡散し、温度上昇を抑えることができる。
本実施の形態では、AFE93bのみ近傍まで金属搬送路を延伸させたが、AFE93aも同様にしてもよい。例えば、背景切替モータ77を設けない場合、読取センサ69aは同じ位置に固定されるため、AFE93aもAFE93bと同様に近傍まで金属搬送路を延伸させて、AFE93aの発熱を拡散させることができる。
搬送路の一部に金属面を有し、金属面がAFE近傍まで延伸することで、AFEの発熱が金属面を伝導して搬送路に拡散でき、そこを原稿が通過することで熱を拡散し、AFEの温度上昇を抑えることができる。
本実施の形態では、金属搬送路34は搬送面付近からAFE近傍まで一体となった金属部材で構成したが、複数にわかれた金属部材を用いても良い。例えば、金属搬送路の金属部材を搬送面付近と画像読取ユニット付近とで分割されていてもよい。この分割された部分でも熱伝導を良くする必要があるが、金属部材同士が直接接触してもいいし、間に熱伝導部材を挟んでも良い。
(実施例3) 本実施例では、実施例1や実施例2の、読取センサを省電力モードで制御する点が異なり、その点について説明する。
本実施例は、載置台1に一度に積載できる枚数分の原稿束は最高のスループットを維持しつつ、原稿束を読み取る動作を開始してからの連続読取枚数(または連続読取時間)が所定枚数(または所定時間)に達した以降にウェイト時間を設定することで、載置台1の積載能力を超える枚数を連続して読み取ろうとしたときにはウェイト時間を設定してAFEの温度上昇を抑えることができるものである。1枚の原稿を画像読取手段で読み取った後、次の原稿を給送するタイミングをウェイト時間だけ遅らせることで、原稿と原稿の間でAFEを低電力モードに遷移する時間を作る。
図10のフローチャートを用いて本実施例の動作を説明する。載置台1上に載置された複数枚の原稿束を連続して読み取る連続読取動作であるバッチスキャンモードについて説明する。
画像読取装置Aに接続されたホストPCもしくは操作部183から原稿の読み取り開始が指示されると、制御部80は載置台原稿検出センサ110により、載置台1に原稿が置かれているかどうかを検出する(ステップS402)。
載置台1に原稿が置かれていない場合(ステップS402 No)、ユーザーによって原稿が置かれるまで待機する。この時、表示パネル90等に搬送原稿の載置を促すメッセージを表示してもよい。
載置台1に原稿が置かれている場合(ステップS402 Yes)、原稿を連続して読み取るバッチスキャンの初期化処理をする。まず、制御部80は枚数カウンタをクリアする(ステップS403)。枚数カウンタは原稿を連続して搬送して読み取る枚数をカウントするカウンタである。画像読取装置Aの待機状態では画像読取ユニット70のAFE93は低電力モードとなっており、画像を読み取るために通常モードに復帰させる(ステップS404)。
搬送モータを駆動し(ステップS405)、第2搬送部20及び第3搬送部30を動作させる。次に画像を読み取る準備をする(ステップS406)。背景切替モータ77を駆動して読取センサ69aを背景色が白の位置に移動させ、背景板76を読み取る。このデータを用いて原稿の画像を読み取った後の濃度調整にて基準データとして使用する。
次に、給紙モータ3を駆動し、原稿の給紙を開始する(ステップS407)。原稿の先端が原稿検出センサ50に到達するまで待機する(ステップS408)。原稿検出センサ50に原稿が到達したのを検知したら(ステップS408 Yes)、先行原稿の読み取りが終了しているかを確認する(ステップS409)。先行原稿が読取中の場合(ステップS409 No)、給紙モータ3を停止させて給紙動作を一時停止し(ステップS418)、先行原稿の読み取りが終わるまで待機する。先行原稿の読み取りが終了したら(ステップS409 Yes)、ステップS410に進む。ステップS409で給紙中の原稿がバッチスキャン1枚目の場合は先行原稿が無いのでステップS409でYesと判定してすぐにステップS410に進む。
次に、枚数カウンタが所定枚数未満かどうかを確認する(ステップS410)。ここで所定枚数とは、載置台1に原稿束Sを一度に積載可能な枚数とする。本実施形態においては、A4サイズの原稿を80枚積載可能なようになっている。枚数カウンタが所定枚数未満の場合には(ステップS410 Yes)、高いスループットを維持できるようにするため、原稿と原稿の間隔はできるだけ小さくする必要があるので、給紙動作を継続する(ステップS411)。ここで、ステップS418ですでに給紙動作を停止していた場合はステップS411で給紙動作を再開する。
ステップS410で枚数カウンタが所定枚数以上の場合(ステップS410 No)、載置台1上に一度に積載可能な原稿束Sの枚数を超えて連続スキャンすることになる。画像読取装置Aでは載置台1に積載される原稿束Sの下面側の原稿から順に給紙していくため、給紙中であっても原稿束Sの上面側に原稿を追加することができるため、このような状況が起こり得る。
このような状況においては原稿を無制限に連続して読み取ることになり、実施例1や2のような態様であったとしても、AFE93の温度上昇が懸念される。そこでAFE93の温度上昇を抑えるため、AFE93を低電力モードに移行する時間を設ける。そのために、まず、給紙動作を停止する(ステップS419)。ステップS418ですでに給紙動作を停止していた場合はS419では停止を維持する。
この時点で画像読取ユニット70は原稿の読み取りをしていないので、AFE93を低電力モードに移行する(ステップS420)。このあと一定時間経過したら低電力モードから復帰させるために、低電力モードにいる時間をカウントするウェイト時間タイマーを初期化する(ステップS421)。ウェイト時間タイマーの初期化は、タイマーのカウント値を0クリアした後にカウントアップを開始し、タイマー値が設定値と一致するまで待機する(ステップS422 No)。ここで設定値はどの原稿も同じ所定時間に相当する値とし、どの原稿でも原稿と原稿の間隔を一定量広げるようにする。タイマー値が設定値以上になったら(ステップS422 Yes)、AFE93を低電力モードから通常モードに復帰させ(ステップS423)、給紙動作を再開する(ステップS411)。
なお、ステップS419からステップS423の処理の間、ステップS405で駆動した搬送モータ4は駆動したままにしている。これは、図3において搬送モータ4と連結される駆動ローラ21、31と、その回転で従動する従動ローラ22、32の4つのローラの回転により、画像読取ユニット70の周囲の空気が拡散されて冷却される効果があるためである。
ここからはAFE93を低電力モードに移行させた場合とそうでない場合とで共通の処理となる。給紙中の原稿が原稿検出センサ60に到達するまで待機する(ステップS412 No)。原稿検出センサ60で原稿を検出すると(ステップS412 Yes)、原稿は第2搬送部20により搬送されるため、給紙動作を停止する(ステップS413)。その後、適切なタイミングで原稿の読み取りを開始し(ステップS414)、当該原稿が原稿検出センサ50を抜けるまで読み取りを継続しながら待機する(ステップS415 No)。原稿の後端が原稿検出センサ50を抜けると(ステップS415 Yes)、ステップS410の判定に用いる枚数カウンタを1カウントアップする(ステップS416)。
次に、載置台1上に次に給紙すべき原稿があれば(ステップS417 Yes)、給紙を開始し(ステップS407)、同様の処理を継続する。もし載置台1上に原稿がなければ(ステップS417 No)、バッチスキャン終了に向けた処理に移行する。先行する原稿の読み取りが終了するまで待機し(ステップS424 No)、読み取りが終了すると(ステップS424 Yes)、バッチスキャン終了後の待機中にAFE93の温度上昇を抑えるためにAFE93を低電力モードに移行する(ステップS425)。搬送中の原稿の後端が第3搬送部30を抜けて原稿を排出トレイ2に排出するまで待機し(ステップS426 No)、排出を終えたら(ステップS426 Yes)、搬送モータ4を停止し(ステップS427)、バッチスキャンが終了となる(ステップS428)。
本実施の形態では、連続読取枚数が所定枚数以上となったらウェイト時間を設定するようにしたが、連続読取時間を条件としても良く、連続読取時間が所定時間以上となったときにウェイト時間を設定するようにしてもよい。また、連続読取枚数と連続読取時間の条件を組み合わせてウェイト時間を設定しても良い。例えば、画像読取装置では数mにも及ぶ長尺原稿などを読み取ることがあり、長尺原稿を連続して読み取る場合、読取枚数のみでは過度な温度上昇を防止できない可能性があるので、連続読取時間も条件に加えると温度上昇を防止できる。
本実施の形態では、連続読取枚数が所定枚数以上になったらすべての原稿に対してウェイト時間を設定しているが、一部の原稿に対してのみウェイト時間を設定してもよい。例えば、数枚のうち1枚にウェイト時間を設定してもよい。
本実施の形態では、AFEを低電力モードにするために、給紙モータ3の動作を一時停止させて原稿と原稿の間隔を広げているが、給紙モータ3の給送速度を遅く制御することで原稿と原稿の間隔を広げてもよい。その場合、先行する原稿の後端が原稿検出センサ50を抜けた後、給紙モータ3を遅い速度で駆動する。先行する原稿の読み取りが終了した後、ステップS420でAFEを低電力モードに移行させるが、このときには、その前のステップS419で停止ではなく、遅い速度で給紙モータ3を駆動するため、原稿先端が原稿検出センサ60に到達するまでは給紙モータ3を駆動し続けることになる。速度を遅くした分原稿検出センサ60に到達するまでの時間が長くかかり、これが上記実施形態のステップ422でウェイト時間の間給紙を待機していた時間に相当するように設定すれば良い。これにより、給紙モータ3が停止する時間が短くなるため、画像読取装置Aの給紙動作が急に停止したことによって、故障したとユーザーが誤解する可能性を低くすることができる。
またそれらを組み合わせて、AFEを低電力モードにするために、給紙モータ3の動作を一時停止させた上で、給紙モータ3の給送速度を遅く制御することによって原稿と原稿の間隔を広げても良い。
以上のように構成することによって、載置台1に一度に積載可能な枚数分は高いスループットを維持しつつ、積載可能な枚数を超えた過積載をしたり給紙中に無理に追加で積載したりした場合でもAFEの温度上昇を抑えることができる。
(実施例4)
AFE93の温度上昇を抑えるために、実施例3では原稿と原稿の間隔を一定量広げ、AFE93を低電力モードに移行している時間も一定となるように制御したが、本実施の形態では、原稿のサイズに応じて必要最小限の間隔を形成するように制御する。
図3において、AFE93の発熱は、AFE93付近の読取ユニットフレーム73を介してコンタクトガラス71に伝わるため、コンタクトガラス71の表面温度はAFE93付近が局所的に上昇する。同時に、AFE93の熱は実装されている基板74全体にも伝わるため、熱は基板74全体から読取ユニットフレーム73全体に伝わり、コンタクトガラス71全体の温度が上昇する。よってコンタクトガラス71表面の温度は全体的に上昇しつつ、AFE93付近が最も高くなるような温度分布になる。ここに原稿を搬送すると、原稿が通過した領域の空気が入れ替わり、コンタクトガラス71の表面温度を低下させる効果がある。これは原稿長さが長く、原稿幅も広いほど効果が大きくなる。
これを利用して、搬送する原稿サイズを検知し、サイズに応じて原稿と原稿の間隔を設定する。原稿長さは搬送方向の長さとし、原稿検出センサ50、60を用いて原稿長さを検出する。原稿検出センサ60で原稿先端を検知してから原稿検出センサ50で原稿後端を検知するまでの時間、第2搬送部20における搬送速度、原稿検出センサ50、60の配置を元に原稿長さを算出する。
原稿幅は主走査方向の幅とし、画像処理部84で検出する。画像読取ユニット70で1枚分の画像を読み取った後、画像処理部84で主走査方向に1ラインごとに原稿端部の位置を検出する。原稿1枚分の原稿端部の位置を検出したら、原稿1枚の最大幅を原稿幅とする。すなわち、画像読取ユニット70および画像処理部84とを原稿幅検知手段として利用している。
原稿長さと原稿幅の検知は本実施の形態の通りでなくても良い。例えば、原稿長さは、画像処理部84にて原稿の先端と後端位置を検出しても良い。また、原稿幅は、主走査方向に1ラインごとに全てのラインで検出せずに間引いて行っても良いし、それらの最大幅ではなく平均としても良い。また、原稿検出センサ60を主走査方向に複数個配置して原稿の検知状態によって検出しても良い。
図11は本実施例に係る画像読取装置Aの動作フローを示すフローチャートである。実施例1と同様の処理については図10と同じ符号を付記している。本実施例で用いる画像読取装置Aの装置の構成、ブロック図は実施例3で用いたものと同様であるので説明は割愛する。
本実施例では原稿サイズを検知する処理が追加になっている。搬送する原稿後端が原稿検出センサ50を抜けた後(ステップS415 Yes)に原稿の搬送方向の長さを検出する(ステップS503)。また、原稿の読み取りを終了した後(ステップS409 Yes)に読み取った画像を元に原稿幅を検出する(ステップS502)。
枚数カウンタが所定枚数以上になったとき(ステップS410 No)、原稿と原稿との間隔をウェイト時間だけ広げるよう制御するが、このウェイト時間を原稿長さと原稿幅から決める(ステップS504)。
ウェイト時間は図12のグラフを元に決定する。横軸は原稿幅、縦軸は原稿長さとし、原稿幅と原稿長さに対応するウェイト時間をtとしてt=0,100,200,・・・,1000 [msec]となる境界それぞれを描いている。ウェイト時間は100msec刻みで設定し、検出した原稿幅と原稿長さに対応するグラフ上の座標の一つ下の境界のウェイト時間を設定する。
例えば、A4サイズの原稿の場合、原稿幅210mm、長さ297mmでt=0以下の領域となるため、ウェイト時間は0msec、つまり原稿と原稿の間隔は広げる必要がない。A5サイズの原稿も同様にウェイト時間は0msecとなる。A6サイズの原稿の場合、原稿幅105mm、長さ149mmでt=300〜400の領域になるためウェイト時間は400msecに設定する。最小原稿として原稿幅50mm、長さ50mmの場合はt=1000msecを設定する。
このように、サイズが小さい原稿では画像読取ユニット70の冷却効果が小さいため、原稿と原稿の間隔を広げてAFE93を低電力モードにする時間tを長く取り、温度上昇を抑えるよう制御する。一方、A4やA5サイズのようなある程度大きさのある原稿では、原稿による冷却効果のみで十分なため、AFE93を低電力モードにする必要がない。
よって、サイズが大きい原稿では連続読取枚数が所定数を超えても最高のスループットを維持することができ、サイズが小さい原稿でも原稿と原稿の必要な間隔を必要最小限に抑えることができる。なお、上記実施例では定型紙の場合を説明したが、定型紙の場合には、スキャン設定等からの入力によって原稿サイズを検出する方法に代えても良い。定型紙以外の場合には、上述したように、各原稿検出センサや画像処理部を用いて原稿長さと原稿幅を検出すれば良い。
本実施例では、原稿長さが同じ場合、原稿幅とウェイト時間の関係はt=0以上で一定の勾配を持つように設定した。コンタクトガラス71の温度上昇の分布が均一であれば図12のように原稿幅が広くなるほど均一にウェイト時間を短くしていくのがよい。しかし、コンタクトガラス71の温度分布が均一でなければ、温度分布に応じて設定するのが望ましい。画像読取ユニット70においてはAFE93の温度上昇が特に大きいため、AFE93付近のコンタクトガラス71の温度が最も高くなりやすく、離れるほど温度が低くなる。
一例として、コンタクトガラス71の中心付近の温度が最も高い場合(AFE93が中央付近に配置されている場合)には、ウェイト時間は図14のように設定するのが望ましい。搬送される原稿は必ず中心付近を通過するが、原稿幅が小さくても最も温度の高い中心付近を通過することで温度を下げる効果が大きくなる。しかし、主走査方向の両端付近のコンタクトガラス71の温度上昇は小さいため、原稿幅が広くなるほどウェイト時間の勾配を小さくする。
また、本実施例では、原稿のサイズとして原稿長さと原稿幅に応じてウェイト時間を設定したが、原稿の通過位置(主走査方向の座標位置)も考慮してもよい。AFE93の位置が図15の下部に示すように主走査方向の中心から離れた位置にある場合、コンタクトガラス71の主走査方向の温度分布は図15のようになり、温度が最も高い位置が中心位置とは異なる。
原稿を正常に搬送するためには主走査方向の中心位置を原稿が通過する必要があるが、必ずしも原稿の中心と一致する必要はない。例えば、図15の通紙領域Aと通紙領域Bは同じ幅をもつ原稿を搬送させたときのコンタクトガラス71上の通過位置であるが、ともに主走査方向中心位置を通過するため問題なく搬送できる。しかし、通紙領域Bの原稿は温度の最も高い位置を通過するため温度を下げる効果が大きいが、通紙領域Aの原稿は温度の最も高い位置から外れているため温度を下げる効果が小さくなる。同じ原稿幅でも通過位置の違いで冷却効果に大きな差が生じることになる。そこで、主走査方向の通過位置に対応する温度分布を重み付けしてウェイト時間を設定するとよりウェイト時間を短縮することができる。
本実施例では、搬送される原稿の長さと幅を検出して決定したウェイト時間は検出対象原稿に適用し、検出対象原稿の後端から次に給紙する原稿の先端の間の間隔を広げていた。そのウェイト時間はサイズの検出対象とした原稿以外の原稿に適用してもよい。例えば、原稿の画像を読み取り終えてから原稿幅の検出までに時間がかかる場合はサイズの検出対象とした原稿に対して適用することができない。その場合は、サイズの検出が完了した後に給紙を開始する原稿に対して適用すればよい。
読み取る原稿の幅と長さを元にウェイト時間を設定することで、読取センサ位置を原稿が通過することで生じる冷却効果の度合いに応じた適切なウェイト時間が設定できるため、スループットの低下を最低限に抑えながらAFE93の温度上昇を抑えることができる。
(実施例5)
ウェイト時間の設定について、実施例3では固定の所定時間とし、実施例4では原稿サイズに応じて決定するようにした。実施例5では実施例3と同様に固定の所定時間とするが、ウェイト時間を設定するタイミングを画像読取ユニット70に設けた温度センサで検知する温度に応じて設定するようにする。
画像読取ユニット70にある温度センサ101は、基板74上でAFE93付近に配置していおり、図5にその配置の一例を示す。図13は実施例5に係る画像読取装置Aの動作フローを示すフローチャートである。実施例3と同様の処理については図10と同じ符号を付記している。本実施例で用いる画像読取装置Aの装置の構成、ブロック図は実施例3で用いたものと同様であるので説明は割愛する。
本実施例では、画像読取ユニット70の温度センサ101により温度を検出する処理と、その温度に応じてウェイト時間を設定する処理を追加している。
まず、バッチスキャン開始時に、ウェイト時間設定をクリアする(ステップS602)。このウェイト時間は、連続読取枚数をカウントしている枚数カウンタが所定枚数未満のとき(ステップS410 Yes)には使用しないので、少なくとも所定枚数未満のときの画像読取装置Aは最高のスループットを維持できる。
枚数カウンタが所定枚数以上となったとき(ステップS410 No)、ウェイト時間が未設定かどうか判定する(ステップS603)。バッチスキャン毎に初めてステップS603に移行したときにはステップS602でウェイト時間設定をクリアしているため、ステップS603でYesとなる。ウェイト時間が未設定の場合(ステップS603 Yes)、温度センサ101の温度を検出し(ステップS604)、その温度が閾値以上かどうか判定する(ステップS605)。温度が閾値未満の場合(ステップS605 Yes)、まだ温度を下げる必要が無いため、通常の給紙動作に移行する(ステップS411)。読取センサの温度が閾値以上だった場合(ステップS605 No)、ウェイト時間を設定する(ステップS606)。ウェイト時間は固定の時間を用いる。ウェイト時間を設定したら給紙動作を停止し(ステップS419)、原稿と原稿の間隔を広げる制御をする。ステップS606でウェイト時間を設定したら、その後に搬送する原稿ではステップS603でウェイト時間設定済みと判定する(ステップS603 No)ため、一度でも温度が閾値を超えたらそれ以降の原稿では常に原稿と原稿の間隔をあけるように制御される。
実施例4で示したように、A5サイズ以上のようなサイズの大きい原稿ではAFE93を低電力モードに移行させる必要がなく、サイズの小さい原稿のみで温度を下げる制御が必要であった。実施例5でも同様に、サイズの大きい原稿を搬送していれば、温度センサ101で検知する温度も高くなく、温度を下げる制御は必要ない。また、サイズの小さい原稿を搬送する場合でも連続スキャンの間隔が長ければ最高温度も高くならないため、温度を下げる制御は必要ない。但し、温度センサ101を用いると、周囲の環境温度等の影響等に関係なく実際の温度に応じた制御が可能となるため、好適である。
以上のように、読取センサの温度を検出し、温度が閾値以上となったときのみウェイト時間を設定することで、スループットの低下を最小限に抑えることができる。
なお、本実施例において、図13に示す動作フローでは、一度温度センサ101による検出結果が閾値を超えた場合には以後の原稿についてウェイト時間設定済みと判定して常に原稿間隔を空けるように、送りローラ11を停止や減速制御する給紙動作を行っているが、一度ウェイト時間を設定された後でも、ステップS603でYesに進み、ステップS604における温度検知を行い、温度が閾値を下回っている場合にはウェイト時間が未設定であると再設定しても良い。動作状態によっては一度温度上昇が起こっても再度温度が低下する可能性もあり、その場合にはスループットを向上するのに有効となる。例えば、様々なサイズの原稿を搬送する異種混載の原稿の画像を読み取る際に、始めのうちは小さい原稿を搬送してAFE93の温度が上昇していった場合でも、後半に大きな原稿が続けば温度の低下が起こりやすくなる。
また、本実施例においては、ウェイト時間として固定の時間を設定する例を説明したが、他の実施例として、温度センサ101と閾値との温度差に比例したウェイト時間を設定しても良い。この場合、何らかの理由で急激に温度上昇や温度の低下が起こった際に、適切なウェイト時間を設定することができ、スループットの向上と温度上昇の低減が可能となる。
なお、ステップS413で給紙動作を停止した後の動作は、図10に示すものと基本的な動作が同様であるため省略し、「2」から先のフローチャートとしては、図10を援用する。すなわち、ステップS413の後は図10に示すステップS414へ移行することになるが、本実施形態と実施例3との相違点としては、その後のステップS417で載置台1に原稿があると判定した場合には、図13の「3’」に戻り、ステップS407に移行する点のみが異なる。
上記各実施例では、AFEを最小原稿通過領域付近、特に中央部に配置することを説明したが、より具体的に説明すると、原稿が主走査方向の中央部に対して対称に通過するように構成し、読取センサ69a、69bに対して読取ユニットカバー72の内部構造が同じものを用い、上下の読取センサ69を図3に示すように回転対称に配置することが好ましい。このように配置することによって、AFEを図15に示すように中央部から少しずらして配置した場合でも、主走査方向の中央部を搬送される原稿に対して、主走査方向への上下のAFEのズレ量を同一にすることができ、対向する原稿に対する熱伝導を対称にすることができ、冷却効果を高めることができる。
以上本発明の実施例に係る画像読取装置について説明したが、本発明は以上説明した実施例に限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることが可能である。