ところが、特許文献4に記載の断熱塗料で形成される断熱層は、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂を母材とするものであるから、耐熱性が低い。このため、この断熱層を単独では、排気管の周囲に配置しても、高熱の負荷を受けて断熱層として機能させることはできない。
そこで、特許文献4では、断熱層上に、揮発性の溶剤及び溶剤の揮発に伴い表面側へ移動される薄板状のアルミの光輝顔料を含有した光輝塗料を塗布して光輝層を形成する技術を開示している。
しかしながら、このような断熱層及び光輝層を有する断熱パネルでは少なくとも2種以上の塗料を用意する必要から煩雑な作業を要するうえ、塗り重ねが必要であるからその塗布作業や乾燥にも時間と手間を要する。即ち、塗装工程及び乾燥工程における工数が多大となり、また塗装時のタレを防止する必要がある等塗料の設計工数が多大となる。更に、コスト的にも高価なものとなってしまう。なお、特許文献4では、光輝層の光輝顔料の塗料組成、樹脂等が具体的に開示されておらず、排気管の周囲に配置しても光輝顔料が塗膜から脱落することなく断熱層上に保持されアルミの遮熱性能が発現されるかの光輝層の塗膜性状が不明であり、排気管の周囲に配置したときでも、長期に亘って断熱効果を発揮するのか不明である。
また、特許文献5には、車両搭載の内燃機関の一部または全部を覆う金属製の内燃機関用のインシュレータに関する技術ではあるが、インシュレータを構成する金属板材の表面に気泡またはバルーン系の充填材を含んだシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂の層を形成した内燃機関用インシュレータの開示がある。
しかしながら、特許文献5の技術は、内燃機関用のインシュレータに対し、気泡またはバルーン系の充填材を含んだシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂層を形成することにより内燃機関用インシュレータの軽量化及び断熱性の向上を図った熱環境の高い内燃機関周囲の熱対策を開示するものであり、そこに、内燃機関から延出する排気管が配置される車体のフロアトンネルの熱対策として、従来フロアトンネルに配置されていたインシュレータに代えて、フロアパネルのトンネル内壁面に断熱層を形成することで、排気管からの熱がフロアパネルに伝達されるのを阻止する技術思想の開示はない。また、内燃機関用のインシュレータの表面に形成するシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂層の塗料の組成等の具体的な技術的開示もなく、特に、インシュレータを構成する金属板材が高熱伝導率のアルミニウムであり、熱環境の厳しい内燃機関の周囲に配置するインシュレータではアルミニウムからなる金属板材の温度上昇特性が高いことで、そのような高熱伝導率のアルミニウムの表面にそれとは熱的特性が異なるシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂層を形成しても、熱伝導による高熱の負荷によってシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂層が脱落しやすく実用的な断熱効果が得られないことが予測される。
そこで、本発明は、高い耐熱性及び断熱性を備えて高温の熱源周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、かつ、高い生産性で断熱構造の形成を可能とする車両フロアパネル用断熱塗料組成物、断熱塗膜、車両フロアパネル及び車両フロアトンネル構造の提供を課題とするものである。
請求項1の発明の車両フロアパネル用断熱塗料組成物は、シリコーン樹脂と中空粒子を含有し、前記シリコーン樹脂100重量部に対し前記中空粒子を8.1重量部以上、26.7重量部以下の範囲内で配合したものであり、車両のフロアパネルの表面に塗布、例えば、室内空間とは反対側の床下のフロアトンネル内で塗布されるものである。
上記シリコーン樹脂は、シロキサン結合の主鎖(無機)を有し、側鎖に有酸基を有するシリコーンを主成分とする合成樹脂材料であり、ゴム状の樹脂や、アクリルシリコーン樹脂等のシリコーン塗料(シリコン塗料)等を使用できるが、硬化によってゴム弾性体となるゴム状の樹脂(シリコーンゴム)が好適に使用される。また、液状のシリコーンゴムでは、低温保管を必要としない等の貯蔵の取扱性や貯蔵安定性からすれば2液体型を用いるのが好ましいが、1液体型を用いてもよい。更に、室温で空気中の湿気と反応して硬化する常温硬化型であってもよいし、加熱により硬化する加熱硬化型であってもよく、縮合型または付加型の何れでもよいが、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネルの熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する塗膜を形成できる点から、加熱硬化型、付加型が好ましい。
上記組成物に配合される中空粒子は、樹脂を加熱硬化する場合でも所定の中空度が維持される中空体であり、例えば、シェル(外殻)が樹脂からなる有機系中空粒子や、シェル(外殻)がガラス、シリカ、シラス等の無機質からなる無機系中空粒子を使用できるが、概して真比重が小さくて軽量効果が高く、また、外殻が厚くて弾力性が高い熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張樹脂マイクロカプセル)が好ましい。なお、組成物に配合される中空粒子は、バルーン型であれば既膨張のものを意味し、未膨張体、例えば、加熱によって膨張する熱膨張性の未膨張のマイクロカプセルは含まれない。
そして、上記中空粒子は、前記シリコーン100重量部に対し、8.1重量部以上、26.7重量部以下の範囲内で配合されるものであり、断熱性の観点から、より好ましくは、10重量部以上、更に好ましくは、15重量部以上であり、塗布作業性の観点から、より好ましくは、25重量部以下、更に好ましくは、20重量部以下である。
請求項1の発明の車両フロアパネル用断熱塗料組成物の前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であり、加熱により硬化反応が進められるものである。
請求項1の発明の車両フロアパネル用断熱塗料組成物の前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンである。
上記樹脂マイクロバルーンとは、シェル(外殻)成分が樹脂からなるバルーンであり、例えば、気化物質(炭化水素ガス等)を内包しシェル(外殻)が熱可塑性樹脂(例えば、アクリロニトリル系)からなる熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させた中空状の熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)が使用される。この熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、熱可塑性樹脂からなるシェル(外殻)が炭酸カルシウム等の無機粉末で被覆された樹脂マイクロバルーンを用いてもよい。
請求項2の発明の車両フロアパネル用断熱塗料組成物は、更に、熱膨張性マイクロカプセル及び/または発泡剤を含有するものである。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、例えば、気化物質(例えば、炭化水素ガス等)を内包しシェル(外殻)が熱可塑性樹脂(例えば、アクリロニトリル系)からなる加熱膨張型の未膨張マイクロカプセルであり、塗布後の熱処理、例えば、塗布膜を硬化する際の加熱によって膨張させて中空状の熱可塑性樹脂マイクロバルーンを形成するものである。
また、上記発泡剤としては、好ましくは、塗布後の熱処理、例えば、塗布膜を硬化する際の加熱によって、熱分解してガスを発生し塗膜内に気泡を形成するものであり、例えば、加熱型発泡剤であるADCA(アゾジカルボンアミド)系の化学発泡剤が使用される。
請求項3の発明の車両フロアパネル用断熱塗料組成物は、請求項2の構成において、前記熱膨張性マイクロカプセルまたは前記発泡剤が、前記シリコーン樹脂100重量部に対し、20重量部以下で配合されたものである。前記熱膨張性マイクロカプセルまたは前記発泡剤による効果的な断熱性向上の観点からすれば、前記熱膨張性マイクロカプセルまたは前記発泡剤は、前記シリコーン樹脂100重量部に対し、1重量部以上がより好ましく、高い塗膜強度及び断熱性の両立の観点からすれば、15重量部以下がより好ましい。
ここで、上記熱膨張性マイクロカプセルまたは前記発泡剤が、前記シリコーン樹脂100重量部に対し、20重量部以下とは、熱膨張性マイクロカプセルまたは発泡剤のどちらか一方のみの配合であれば、20重量部が熱膨張性マイクロカプセルまたは発泡剤の上限の配合量であることを意味する。熱膨張性マイクロカプセル及び発泡剤の併用であれば、それら合計の配合量の上限は25重量部が好ましい。
請求項4の発明の断熱塗膜は、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなり、車両のフロアパネルの表面に形成、例えば、室内空間とは反対側の床下のフロアトンネル内で形成されたものである。
上記シリコーン樹脂は、シロキサン結合の主鎖(無機)を有し、側鎖に有酸基を有するシリコーンを主成分とする合成樹脂材料であり、ゴム状の樹脂や、アクリルシリコーン樹脂等のシリコーン塗料(シリコン塗料)等を使用できるが、硬化によってゴム弾性体となるゴム状の樹脂(シリコーンゴム)が好適に使用される。室温で空気中の湿気と反応して硬化した常温硬化型であってもよいし、加熱により硬化した加熱硬化型であってもよく、縮合型または付加型の何れでもよいが、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネルの熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する塗膜を形成できる点から、加熱硬化型、付加型が好ましい。
上記塗膜に含まれている中空粒子としては、例えば、シェル(外殻)が樹脂からなる有機系中空粒子や、シェル(外殻)がガラス、シリカ、シラス等の無機質からなる無機系中空粒子を使用できるが、概して真比重が小さくて軽量効果が高く、また、外殻が厚くて弾力性が高い熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張樹脂マイクロカプセル)が好ましい。なお、塗膜に含有される中空粒子は、バルーン型であれば既膨張のものを意味するが、この中空粒子を含有した断熱塗膜を形成する塗布液に、既膨張のもの、未膨張のもの、或いは両者の混合が含有されていたかは問われるものでなく、断熱塗膜を形成する塗布液に最初から未膨張のものが含まれていた場合には、塗布後の所定の加熱で膨張し塗膜において中空粒子としての中空状バルーンとなっている。
請求項4の発明の断熱塗膜の前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であり、白金等の硬化触媒によって加熱により硬化反応が進められたものである。
請求項4の発明の断熱塗膜の前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンである。
上記断熱塗膜に含まれている樹脂マイクロバルーンとは、シェル(外殻)成分が樹脂からなるバルーンであり、例えば、気化物質(炭化水素ガス等)を内包しシェル(外殻)が熱可塑性樹脂(例えば、アクリロニトリル系)からなる熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させた中空状の熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)が使用される。この熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、熱可塑性樹脂からなるシェル(外殻)が炭酸カルシウム等の無機粉末で被覆された樹脂マイクロバルーンであってもよい。
請求項4の発明の断熱塗膜は、JIS A 1412−2(熱流計法)に基づいて測定された熱伝導率が0.03W/(m・K)以上、0.08W/(m・K)以下であるものである。
本発明者の実験研究によれば、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を得るためには、断熱塗膜の熱伝導率が0.08W/(m・K)以下が好ましく、断熱性の観点からすれば、その値が小さい程好ましいが、空気の熱伝導率が0.026W/(m・K)であり、塗膜強度を確保する点からその下限値は0.03に設定したものである。より好ましくは、0.035W/(m・K)以上、0.06W/(m・K)以下であるものである。
請求項5の発明の断熱塗膜は、更に、前記シリコーン樹脂に気泡を含有してなるものである。
上記気泡は、断熱塗膜を形成する塗料に発泡剤を配合し、発泡剤が分解されたときのガス発生により形成されたものであってもよいし、断熱塗膜を形成する塗料や断熱塗膜の形成過程で物理的に空気等の投入や攪拌、墳流によって気泡を生じさたことによって形成されたものであってもよい。自己発泡タイプの液状シリコーン等の使用で気泡を形成するものであってもよい。なお、「気泡」とは、一般に『液体または固体中にあって気体を含む微小部分。』(新村出・編「広辞苑(第4版)」641頁,1991年11月15日株式会社岩波書店発行)であるが、本明細書及び特許請求の範囲においては、気体を含むか含まないかに関わらず、「液体または固体中における空隙部分」という意味として用いるものとする。
請求項6の発明の断熱塗膜は、その膜厚(乾燥膜厚)が0.1mm〜30mmの範囲内であるものであり、好ましくは、0.1mm〜20mm、より好ましくは、0.1mm〜10mmの範囲内であるものである。
請求項7の発明の車両フロアパネルは、車両のフロアパネル本体部の表面に対し、例えば、室内空間とは反対側の床下のフロアトンネル内の内壁面で、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層が形成されたものである。
上記シリコーン樹脂は、シロキサン結合の主鎖(無機)を有し、側鎖に有酸基を有するシリコーンを主成分とする合成樹脂材料であり、ゴム状の樹脂や、アクリルシリコーン樹脂等のシリコーン塗料(シリコン塗料)等が用いられるが、硬化によってゴム弾性体となるゴム状の樹脂(シリコーンゴム)が好適に使用される。室温で空気中の湿気と反応して硬化した常温硬化型であってもよいし、加熱により硬化した加熱硬化型であってもよく、縮合型または付加型の何れでもよいが、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネルの熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する塗膜を形成できる点から、加熱硬化型、付加型が好ましい。
上記断熱層に含まれている中空粒子としては、例えば、シェル(外殻)が樹脂からなる有機系中空粒子や、シェル(外殻)がガラス、シリカ、シラス等の無機質からなる無機系中空粒子を使用できるが、概して真比重が小さくて軽量効果が高く、また、外殻が厚くて弾力性が高い熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張樹脂マイクロカプセル)が好ましい。なお、断熱層に含有される中空粒子は、バルーン型であれば既膨張のものを意味するが、この中空粒子を含有した断熱層を形成するための原料に、既膨張のもの、未膨張のもの、或いは両者の混合が含有されていたかは問われるものでなく、断熱層を形成するための原料に最初から未膨張のものが含まれていた場合には、所定の加熱で膨張し断熱層において中空粒子としての中空状バルーンとなっている。
そして、上記断熱層の形成は、例えば、車両のフロアパネル本体部の表面に対し所定の塗布液を塗布することにより形成されたものであってもよいし、フロアトンネルに断熱層を形成するための所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有した液状物を流し込んで、フロアパネル表面に断熱層を形成してもよいし、所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有した液状物にフロアパネルを浸漬させてフロアパネル表面に断熱層を形成してもよいし、所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有したシート状等の成形品をフロアパネル表面に接合することで断熱層を形成することも可能である。
請求項7の発明の車両フロアパネルの前記断熱層の前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であり、加熱により硬化反応が進められたものである。
請求項7の発明の車両フロアパネルの前記断熱層の前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンである。
上記断熱層に含まれている樹脂マイクロバルーンとは、シェル(外殻)成分が樹脂からなるバルーンであり、例えば、気化物質(炭化水素ガス等)を内包しシェル(外殻)が熱可塑性樹脂(例えば、アクリロニトリル系)からなる熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させた中空状の熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)が使用される。この熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、熱可塑性樹脂からなるシェル(外殻)が炭酸カルシウム等の無機粉末で被覆された樹脂マイクロバルーンであってもよい。
請求項7の発明の車両フロアパネルの前記断熱層は、JIS A 1412−2(熱流計法)に基づいて測定された熱伝導率が0.03W/(m・K)以上、0.08W/(m・K)以下であるものである。
本発明者の実験研究によれば、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を得るためには、断熱層の熱伝導率が0.08W/(m・K)以下が好ましく、断熱性の観点からすれば、その値が小さい程好ましいが、空気の熱伝導率が0.026W/(m・K)であり、強度を確保する点からその下限値は0.03に設定したものである。より好ましくは、0.035W/(m・K)以上、0.06W/(m・K)以下であるものである。
請求項8の発明の車両フロアパネルは、更に、前記断熱層の前記シリコーン樹脂に気泡を含有してなるものである。
上記気泡は、断熱層を形成するための原料に発泡剤を配合し、発泡剤が分解されたときのガス発生により形成されたものであってもよいし、原料や断熱層の形成過程で物理的に空気等の投入や攪拌、墳流によって気泡を生じさたものであってもよい。自己発泡タイプの液状シリコーン等の使用で気泡を形成するものであってもよい。
請求項9の発明の車両フロアパネルの前記断熱層は、0.1mm〜30mmの範囲内、好ましくは、0.1mm〜20mm、より好ましくは、0.1mm〜10mmの範囲内の厚さであるものである。
請求項10の発明の車両のフロアトンネル構造は、車体上方側の車室側に突出してトンネル状としたフロアパネル本体部の前記車体の下方側に開口形成されたトンネル内に排気管が収納され、その排気管の周囲で、前記フロアパネル本体部の前記トンネルの内壁面上に、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層を形成したものである。
上記フロアパネル本体部は、車体の前後方向に沿って車体上方側の車室側に突出してトンネル状とされ、車両下部構造の床下で、前記車体の下方側に開口するフロアトンネルを形成するものである。
また、上記排気管は、エンジンから延出し、上記フロアパネル本体部の前記車体上方側への突出により前記車体の下方側に開口形成されたトンネル内に収納されるものである。
更に、上記断熱層は、前記排気管の周囲で前記フロアパネル本体部の前記トンネルの内壁面上に形成され、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなるものである。前記排気管の周囲で前記トンネルの側壁面及び上壁面のトンネル内壁面全体に形成されていても良いし、側壁面側または上壁面側等の部分的であっても良い。
ここで、上記シリコーン樹脂は、シロキサン結合の主鎖(無機)を有し、側鎖に有酸基を有するシリコーンを主成分とする合成樹脂材料であり、ゴム状の樹脂や、アクリルシリコーン樹脂等のシリコーン塗料(シリコン塗料)等が用いられるが、硬化によってゴム弾性体となるゴム状の樹脂(シリコーンゴム)が好適に使用される。室温で空気中の湿気と反応して硬化した常温硬化型であってもよいし、加熱により硬化した加熱硬化型であってもよく、縮合型または付加型の何れでもよいが、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネルの熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する塗膜を形成できる点から、加熱硬化型、付加型が好ましい。
上記断熱層に含まれている中空粒子としては、例えば、シェル(外殻)が樹脂からなる有機系中空粒子や、シェル(外殻)がガラス、シリカ、シラス等の無機質からなる無機系中空粒子を使用できるが、概して真比重が小さくて軽量効果が高く、また、外殻が厚くて弾力性が高い熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張樹脂マイクロカプセル)が好ましい。なお、断熱層に含有される中空粒子は、バルーン型であれば既膨張のものを意味するが、この中空粒子を含有した断熱層を形成するためのもとの組成物に、既膨張のもの、未膨張のもの、或いは両者の混合が含有されていたかは問われるものでなく、断熱層を形成する組成物に最初から未膨張のものが含まれていた場合には、所定の加熱で膨張し断熱層において中空粒子としての中空状バルーンとなっている。
そして、上記断熱層の形成は、例えば、車両のフロアパネル本体部の表面に対し所定の塗布液を塗布することにより形成されたものであってもよいし、フロアトンネルに断熱層を形成するための所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有した液状物を流し込んで、フロアパネル表面に断熱層を形成してもよいし、所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有した液状物にフロアパネルを浸漬させてフロアパネル表面に断熱層を形成してもよいし、所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有したシート状等の成形品をフロアパネル表面に接合することで断熱層を形成することも可能である。
請求項10の発明の車両のフロアトンネル構造の前記断熱層の前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であり、加熱により硬化反応が進められたものである。
請求項10の発明の車両のフロアトンネル構造の前記断熱層の前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンである。
上記断熱層に含まれている樹脂マイクロバルーンとは、シェル(外殻)成分が樹脂からなるバルーンであり、例えば、気化物質(炭化水素ガス等)を内包しシェル(外殻)が熱可塑性樹脂(例えば、アクリロニトリル系)からなる熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させた中空状の熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)が使用される。この熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、熱可塑性樹脂からなるシェル(外殻)が炭酸カルシウム等の無機粉末で被覆された樹脂マイクロバルーンであってもよい。
請求項10の発明の車両のフロアトンネル構造の前記断熱層は、JIS A 1412−2(熱流計法)に基づいて測定された熱伝導率が0.03W/(m・K)以上、0.08W/(m・K)以下であるものである。
本発明者の実験研究によれば、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を得るためには、断熱層の熱伝導率が0.08W/(m・K)以下が好ましく、断熱性の観点からすれば、その値が小さい程好ましいが、空気の熱伝導率が0.026W/(m・K)であり、強度を確保する点からその下限値は0.03に設定したものである。より好ましくは、0.035W/(m・K)以上、0.06W/(m・K)以下であるものである。
請求項11の発明の車両のフロアトンネル構造は、更に、前記断熱層の前記シリコーン樹脂に気泡を含有してなるものである。
上記気泡は、断熱層を形成するための原料に発泡剤を配合し、発泡剤が分解されたときのガス発生により形成されたものであってもよいし、原料や断熱層の形成過程で物理的に空気等の投入や攪拌、墳流によって気泡を生じさたものであってもよい。自己発泡タイプの液状シリコーン等の使用で気泡を形成するものであってもよい。
請求項12の発明の車両のフロアトンネル構造の前記断熱層は、0.1mm〜30mmの範囲内、好ましくは、0.1mm〜20mm、より好ましくは、0.1mm〜10mmの範囲内の厚さであるものである。
請求項1の発明に係る車両フロアパネル用断熱塗料組成物は、シリコーン樹脂と中空粒子を含有し、前記シリコーン樹脂100重量部に対し前記中空粒子を8.1重量部〜26.7重量部配合したものである。
本発明者は、車両の床下で排気管が収められるフロアトンネルの設計自由度を高めるべく、フロアトンネルの断熱構造を検討した結果、従来のインシュレータを用いた断熱構造に代えて、シリコーン樹脂と中空粒子を含有する断熱塗料組成物をフロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に塗布して断熱塗膜を形成する断熱構造とすることで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるうえ、従来のインシュレータを配置した断熱構造と異なり、トンネル空間の制約が少ない断熱構造となり、断熱構造の省スペース化が可能でフロアトンネルの設計自由度を高めることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、シリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物によれば、シリコーン樹脂によって排気管からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を確保でき、また、鋼板等からなるフロアパネルの表面に対する付着性も良く、そして、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子による断熱効果によって高い断熱効果を発揮する断熱塗膜が得られる。
ここで、前記シリコーン樹脂100重量部に対し前記中空粒子の配合量が8.1重量部未満であると、断熱塗膜の熱伝導率が、例えば、0.08W/(m・k)以下の高い断熱性を得ることができず、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等の断熱効果を確保して、断熱構造の省スペース化を実現するのが困難である。一方で、前記シリコーン樹脂100重量部に対し前記中空粒子の配合量が26.7重量部を超えると、塗布に適した粘性、流動性の塗布性状が得られず、塗布作業性を確保できない。
前記シリコーン樹脂100重量部に対し前記中空粒子の配合量が8.1重量部以上、26.7重量部以下の範囲内であれば、熱伝導率が、例えば、0.08W/(m・K)以下の高い断熱性を有する断熱塗膜を得ることができ、断熱塗膜の乾燥膜厚が、例えば、30mmの以下の薄い厚みで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保でき、断熱構造の省スペース化を可能とする。
このような所定の配合組成のシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物によれば、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子の断熱効果によって、熱伝導率が、例えば、0.08W/(m・K)以下の断熱塗膜を得ることができ、また、シリコーン樹脂によって高い耐熱性を有するから、排気管を収容したフロアトンネルの内壁面に断熱塗膜を形成したときでも、断熱塗膜が溶融、熱劣化することなく、断熱性等の安定した塗膜性能を発揮する。更に、断熱塗膜の熱伝導率が低いから、塗膜自体の温度上昇も抑えられ、フロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に塗膜を形成してもフロアパネルを熱劣化させることなく、排気管からの高熱を断熱してフロアパネルの温度上昇を効果的に抑えることができる。そして、このようにフロアパネルのトンネル内壁面に所定の配合のシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物を塗布して塗膜を形成する断熱構造では、フロアパネルに塗膜を密着させて配設するものであり、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けない配置なので、対流やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネルの温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けた配置を必要とせず、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もないから、トンネル空間が制約を受けることなく、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネルの設計自由度を高めることができる。
特に、このようなシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物によれば、フロアパネルの表面に1液の塗布のみで断熱性及び耐熱性が高い断熱塗膜を形成でき、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるから、塗料の設計工数、塗装工数が少なくて済みフロアトンネルの断熱構造の形成が容易である。即ち、生産性良くフロアトンネルの断熱構造を形成できる。
このようにして、高い耐熱性及び断熱性を備えた断熱塗膜を形成して、高温の熱源の周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、かつ、生産性良く断熱構造の形成を可能とする車両フロアパネル用断熱塗料組成物となる。
請求項1の発明に係る車両フロアパネル用断熱塗料組成物によれば、前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であるから、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネルの温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する塗膜を形成できる。よって、塗膜のひび割れ、亀裂、皺等が防止され、塗膜の安定した断熱性能を得ることができる。
請求項1の発明に係る車両フロアパネル用断熱塗料組成物によれば、前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンであることから、塗膜の軽量化(低比重化)の向上が可能である。また、樹脂マイクロバルーンの高い弾力性によって塗料調製時のせん断力等によっても破壊され難く、断熱性能の制御を容易とする。特に、熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、耐熱性や弾力性や耐圧性に優れて、塗膜の引っ張りや曲げ等に対する塗膜の強度、柔軟性を高めることも可能である。
請求項2の発明に係る車両フロアパネル用断熱塗料組成物によれば、更に、熱膨張性マイクロカプセル及び/または発泡剤を含有するから、請求項1に記載の効果に加えて、塗布作業性を低下させることなく、断熱性の向上が可能である。
請求項3の発明に係る車両フロアパネル用断熱塗料組成物によれば、前記熱膨張性マイクロカプセル及び/または発泡剤の配合は、前記シリコーン樹脂100重量部に対し、20重量部以下であるから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、成膜性を低下させることなく、断熱性の向上を可能とする。
請求項4の発明に係る断熱塗膜によれば、車両のフロアパネルの表面に形成され、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなるものである。
本発明者は、車両の床下で排気管が収められるフロアトンネルの設計自由度を高めるべく、フロアトンネルの断熱構造を検討した結果、従来のインシュレータを用いた断熱構造に代えて、シリコーン樹脂と熱可塑性樹脂マイクロバルーン等を含有する断熱塗料組成物をフロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に塗布して、フロアパネル表面にシリコーン樹脂及び中空粒子を含有した断熱塗膜を形成した断熱構造とすることで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるうえ、従来のインシュレータを配置した断熱構造と異なり、トンネル空間の制約が少ない断熱構造となり、断熱構造の省スペース化が可能でフロアトンネルの設計自由度を高めることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱塗膜によれば、シリコーン樹脂によって排気管からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を確保でき、また、鋼板等からなるフロアパネルの表面に対する接着性、密着性も良く、そして、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子による断熱効果によって、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下の高い断熱効果を発揮できる。特に、シリコーン樹脂によって高い耐熱性を有するから、排気管周囲のフロアトンネルの内壁面に断熱塗膜を形成したときでも、断熱塗膜が溶融、熱劣化することなく、断熱性等の安定した塗膜性能を発揮する。更に、断熱塗膜の熱伝導率が低いから、塗膜自体の温度上昇も抑えられ、フロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に塗膜を形成してもフロアパネルを熱劣化させることなく、排気管からの高熱を断熱してフロアパネルの温度上昇を効果的に抑えることができる。
そして、このようにフロアパネルのトンネル内壁面にシリコーン樹脂及び中空粒子からなる断熱塗膜を形成する断熱構造では、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けない配置なので、対流やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネルの温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けた配置を必要とせず、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もないから、トンネル空間が制約を受けることなく、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネルの設計自由度を高めることができる。
特に、このようにシリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱塗膜によれば、高い断熱性及び耐熱性を有し、その断熱塗膜のみで従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるものであり、塗料の設計工数、塗装工数が少なくて済むから、フロアトンネルの断熱構造の形成が容易である。即ち、生産性良くフロアトンネルの断熱構造を形成できる。
このようにして、高い耐熱性及び断熱性を備えて高温の熱源周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、生産性良く断熱構造の形成を可能とする断熱塗膜となる。
請求項4の発明に係る断熱塗膜によれば、前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であるから、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネルの温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する塗膜を形成できる。よって、塗膜のひび割れ、亀裂、皺等が防止され、塗膜の安定した断熱性能を発揮できる。
請求項4の発明に係る断熱塗膜によれば、前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンであることから、塗膜の軽量化(低比重化)の向上が可能である。また、樹脂マイクロバルーンの高い弾力性によって破壊され難く、塗膜において安定して所定の空隙率(中空度)を確保し安定した断熱効果を発揮できる。更に、断熱性能の制御を容易とする。特に、熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、耐熱性や弾力性や耐圧性に優れて、塗膜の引っ張りや曲げ等に対する塗膜の強度、柔軟性を高めることも可能である。
請求項4の発明に係る断熱塗膜によれば、その熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内であるから、例えば、30mm以下の薄い膜厚で、所定の塗膜強度を確保しつつ、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できて、フロアパネルの温度上昇を効果的に抑制でき、断熱構造の省スペース化効果も高いものとなる。更に、薄い膜厚で所望の断熱性および強度を確保できるから、軽量化効果も高いものとなる。
請求項5の発明に係る断熱塗膜によれば、更に、気泡を含有するから、請求項4に記載の効果に加えて、軽量効果を高めることができる。
請求項6の発明に係る断熱塗膜によれば、その膜厚が0.1mm〜30mmの範囲内である。
本発明者の実験研究により、膜厚が小さすぎると、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できない一方で、膜厚が厚すぎると、重量が重くなり、また、断熱構造のスペースを取ることにもなり、更に、ムラが生じやすくなって塗装性や塗装効率も低下することから、好適な塗膜の厚さとして、0.1mm〜30mmの範囲内と特定したものである。そして、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱塗膜によれば、かかる薄膜で、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できて断熱構造の省スペース化を可能とする。
このように、断熱塗膜の膜厚が0.1mm〜30mmの範囲内であれば、請求項4または請求項5に記載の効果に加えて、良好な塗布性を確保でき、軽量性にも優れ、そして、トンネル空間の制約が極めて少ないものとなる。
請求項7の発明に係る車両フロアパネルによれば、車両のフロアパネル本体部の表面に対し、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層が形成されたものである。
本発明者は、車両の床下で排気管が収められるフロアトンネルの設計自由度を高めるべく、フロアトンネルの断熱構造を検討した結果、従来のインシュレータを用いた断熱構造に代えて、シリコーン樹脂と熱可塑性樹脂マイクロバルーン等を含有する断熱塗料組成物をフロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に塗布して、フロアパネル表面にシリコーン樹脂及び中空粒子を含有した断熱塗膜からなる断熱層を形成した断熱構造とすることで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるうえ、従来のインシュレータを配置した断熱構造と異なり、トンネル空間の制約が少ない断熱構造となり、断熱構造の省スペース化が可能でフロアトンネルの設計自由度を高めることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層によれば、シリコーン樹脂によって排気管からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を確保でき、また、鋼板等からなるフロアパネルの表面に対する接着性、密着性も良く、そして、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子による断熱性によって、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下の高い断熱効果を発揮できる。特に、シリコーン樹脂によって高い耐熱性を有するから、排気管周囲のフロアトンネルの内壁面に断熱層を形成したときでも、断熱層が溶融、熱劣化することなく、断熱性等の安定した特性を発揮する。更に、断熱層の熱伝導率が低いから、断熱層自体の温度上昇も抑えられることでフロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に断熱層を形成してもフロアパネルを熱劣化させることなく、排気管からの高熱を断熱してフロアパネルの温度上昇を効果的に抑えることができる。
そして、このようにフロアパネルのトンネル内壁面にシリコーン樹脂及び中空粒子からなる断熱層を形成する断熱構造では、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けない配置なので、対流やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネルの温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けた配置を必要とせず、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もないから、トンネル空間が制約を受けることなく、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネルの設計自由度を高めることができる。
特に、このようにシリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層によれば、高い断熱性及び耐熱性を有し、その断熱層のみで従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるものであり、断熱構造形成の設計工数が少なくて済むから、フロアトンネルの断熱構造の形成が容易である。即ち、生産性良くフロアトンネルの断熱構造を形成できる。
このようにして、高い耐熱性及び断熱性を備えた断熱層によって高温の熱源周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、また、生産性良く断熱構造の形成を可能とする車両用フロアパネルとなる。
請求項7の発明に係る車両フロアパネルによれば、前記断熱層の前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であるから、鋼板等からなるフロアパネルの温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する。よって、断熱層においてひび割れ、亀裂、皺等が防止されて安定した断熱性能を得ることができる。
請求項7の発明に係る車両フロアパネルによれば、前記断熱層の前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンであることから、断熱層の軽量化(低比重化)の向上が可能である。また、樹脂マイクロバルーンの高い弾力性によって破壊され難く、断熱層において安定して所定の空隙率(中空度)を確保し安定した断熱効果を発揮できる。更に、断熱性能の制御を容易とする。特に、熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、耐熱性や弾力性や耐圧性に優れて、断熱層の引っ張りや曲げ等に対する強度等を高めることも可能である。
請求項7の発明に係るに係る車両フロアパネルによれば、前記断熱層の熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内であるから、例えば、30mm以下の薄い厚さの断熱層で、所定の強度を確保しつつ、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できて、フロアパネルの温度上昇を効果的に抑制でき、断熱構造の省スペース化効果も高いものとなる。更に、断熱層の薄い厚さで所望の断熱性および強度を確保できるから、軽量化効果も高いものとなる。
請求項8の発明に係る車両フロアパネルによれば、更に、前記断熱層が気泡を含有するから、請求項7に記載の効果に加えて、軽量効果を高めることができる。
請求項9の発明に係る車両フロアパネルによれば、前記断熱層の厚さが0.1mm〜30mmの範囲内である。
本発明者の実験研究により、断熱層の厚さが薄すぎると、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できない一方で、断熱層の厚さが厚すぎると、重量が重くなり、また、断熱構造のスペースを取ることにもなることから、断熱層の好適な厚さとして、0.1mm〜30mmの範囲内と特定したものである。そして、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層によれば、かかる薄い厚さで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できて断熱構造の省スペース化を可能とする。
このように、断熱層の厚さが0.1mm〜30mmの範囲内であれば、請求項7または請求項8に記載の効果に加えて、良好な塗布性を確保でき、軽量性にも優れ、そして、トンネル空間の制約が極めて少ないものとなる。
請求項10の発明に係る車両のフロアトンネル構造によれば、車体の前後方向に沿って車体上方側の車室側に突出してトンネル状としたフロアパネル本体部のトンネル内にエンジンから延出した排気管が収容され、その排気管の周囲のフロアパネル本体部のトンネル内壁面に対してシリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層を形成したものである。
本発明者は、車両の床下で排気管が収められるフロアトンネルの設計自由度を高めるべく、フロアトンネルの断熱構造を検討した結果、従来のインシュレータを用いた断熱構造に代えて、シリコーン樹脂と熱可塑性樹脂マイクロバルーン等を含有する断熱塗料組成物をフロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に塗布して、フロアパネル表面にシリコーン樹脂及び中空粒子を含有した断熱塗膜からなる断熱層を形成した断熱構造とすることで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるうえ、従来のインシュレータを配置した断熱構造と異なり、トンネル空間の制約が少ない断熱構造となり、断熱構造の省スペース化が可能でフロアトンネルの設計自由度を高めることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、フロアパネル本体部のトンネル内壁面に形成したシリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層によれば、シリコーン樹脂によって排気管からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を確保でき、また、鋼板等からなるフロアパネルの表面に対する接着性、密着性も良く、そして、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子による断熱性によって、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・K)以下の高い断熱効果を発揮できる。特に、シリコーン樹脂によって高い耐熱性を有するから、排気管周囲のフロアトンネルの内壁面に断熱層を形成したときでも、断熱層が溶融、熱劣化することなく、断熱性等の安定した特性を発揮する。更に、断熱層の熱伝導率が低いから、断熱層自体の温度上昇も抑えられることでフロアトンネルを形成するフロアパネルのトンネル内壁面に断熱層を形成してもフロアパネルを熱劣化させることなく、排気管からの高熱を断熱してフロアパネルの温度上昇を効果的に抑えることができる。
そして、このようにフロアパネルのトンネル内壁面にシリコーン樹脂及び中空粒子からなる断熱層を形成するフロアトンネル構造では、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けない配置なので、対流やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネルの温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネルとの間に隙間を設けた配置を必要とせず、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もないから、トンネル空間が制約を受けることなく、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネルの設計自由度を高めることができる。
特に、このようにシリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層によれば、高い断熱性及び耐熱性を有し、その断熱層のみで従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるものであり、断熱構造形成の設計工数が少なくて済むから、フロアトンネルの断熱構造の形成が容易である。即ち、生産性良くフロアトンネルの断熱構造を形成できる。
このようにして、高い耐熱性及び断熱性を備えた断熱層によって高温の熱源周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、また、生産性良く断熱構造を形成できるフロアトンネルの構造となる。
請求項10の発明に係る車両のフロアトンネル構造によれば、前記断熱層の前記シリコーン樹脂は、付加型シリコーン樹脂であるから、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネル本体部の温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する。よって、断熱層においてひび割れ、亀裂、皺等が防止されて安定した断熱性能を得ることができる。
請求項10の発明に係る車両のフロアトンネル構造によれば、前記断熱層の前記中空粒子は、樹脂マイクロバルーンであることから、断熱層の軽量化(低比重化)の向上が可能である。また、樹脂マイクロバルーンの高い弾力性によって破壊され難く、断熱層において安定して所定の空隙率(中空度)を確保し安定した断熱効果を発揮できる。更に、断熱性能の制御を容易とする。特に、熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、耐熱性や弾力性や耐圧性に優れて、断熱層の引っ張りや曲げ等に対する強度等を高めることも可能である。
請求項10の発明に係る車両のフロアトンネル構造によれば、前記断熱層の熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内であるから、例えば、30mm以下の薄い厚さの断熱層で、所定の強度を確保しつつ、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できて、フロアパネルの温度上昇を効果的に抑制でき、断熱構造の省スペース化効果も高いものとなる。更に、断熱層の薄い厚さで所望の断熱性および強度を確保できるから、軽量効果も高いものとなる。
請求項11の発明に係る車両のフロアトンネル構造によれば、更に、前記断熱層が気泡を含有するから、請求項10に記載の効果に加えて、軽量効果を高めることができる。
請求項12の発明に係る車両のフロアトンネル構造によれば、前記断熱層の厚さが0.1mm〜30mmの範囲内である。
本発明者の実験研究により、断熱層の厚さが薄すぎると、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できない一方で、断熱層の厚さが厚すぎると、重量が重くなり、また、断熱構造のスペースを取ることにもなることから、断熱層の好適な厚さとして、0.1mm〜30mmの範囲内と特定したものである。そして、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱層によれば、かかる薄い厚さで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できて断熱構造の省スペース化を可能とする。
このように、断熱層の厚さが0.1mm〜30mmの範囲内であれば、請求項10または請求項11に記載の効果に加えて、良好な塗布性を確保でき、軽量性にも優れ、そして、トンネル空間の制約が極めて少ないものとなる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は、実施の形態に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
本発明の実施の形態の断熱塗料組成物は、シリコーン樹脂と中空粒子を含有してなるものであり、例えば、図1及び図2で示すように、自動車1等の車両の床下において排気管30が収納されるフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21のトンネル内壁面に塗布することにより、フロアパネル本体部21の表面に断熱層10となる断熱塗膜を形成してフロアトンネル40の断熱構造を構成するものである。
ここで、シリコーン樹脂は、硬化によってゴム弾性体となるゴム状のもの(シリコーンゴム)が好適に使用される。付加型または縮合型の何れであってもよいが、付加型のものであると、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネル本体部21の温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する塗膜が得られやすい。また、硬化速度、生産性の観点や硬化による収縮が生じない成膜性の観点からしても付加型シリコーン樹脂が好ましい。
なお、付加型のシリコーン樹脂は、例えば、少なくともSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン等のビニル基を有するシリコーンポリマと、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノ水素ポリシロキサン等のH基を有するシリコーンポリマと、白金触媒(白金化合物)等の付加反応触媒とを含有し、加熱によってヒドロシリル化反応することによりSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物となり、ヒドロシリル化反応により硬化するものである。
また、シリコーン樹脂は、通常、常温で液状のものが使用され、1液型または2液型の何れを使用してもよいが、低温保管を必要としない等の貯蔵の取扱性や貯蔵安定性から2液型が好適に使用される。
このシリコーン樹脂に混合する中空粒子としては、塗布後に樹脂を硬化させるために加熱を行った場合でも、その加熱によって膨張して破裂することなく所定の中空度が維持されるものであればよく、例えば、ホウ珪酸ソーダ系のシリカバルーン、ガラスバルーン、シラス等のガラス質火山砕屑物を焼成発泡させてなるシラスバルーン等の外殻が無機質で形成された無機系中空粒子(無機質微小中空体)や、合成樹脂(プラスチック)、例えば、塩化ビニリデン、アクリルニトリル、ポリビニリデンクロライド、またはこれらの共重合体からなる既膨張樹脂マイクロカプセル(熱膨張性微小球)等の熱可塑性樹脂マイクロバルーンやフェノールバルーン等の樹脂マイクロバルーンまたは炭素中空球等の外殻が有機質で形成された有機系中空粒子が使用される。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
中空粒子は、その平均径(中位径)が、好ましくは、10μm以上、300μm以下、より好ましくは、20μm以上、200μm以下の範囲内である。このようなサイズであれば、均一な分散が可能であり、塗布作業性も良好で塗布ムラも少なくできる。
なお、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、「中位径」とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。定義的には、中位径と平均粒子径とで粒子群のサイズを表現されるが、正規分布に近いと、カタログ表示等の平均粒子径(含有粒子の平均値)との差も僅少であり、中位径≒平均粒子径であって中位径=平均粒子径と見做すことができ、一般的にカタログ表示等では累積の50%粒子径を平均粒子径として呼ばれる場合もあるから、ここでは、商品説明の表示、レーザ回折・散乱法によって測定した値である。この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算重量部が50%となる粒子径(D50)をいう。なお、上記数値は、厳格ものでなく概ねの値であり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
組成物に含有する中空粒子は、好ましくは、樹脂マイクロバルーン、特に、低沸点炭化水素等を熱可塑性樹脂で包み込んだ熱膨張性マイクカプセルを加熱によって膨張させた既膨張マイクロカプセルと呼ばれる熱可塑性樹脂マイクロバルーンである。このような樹脂バルーンは、真比重が小さいために、塗膜の軽量化(低比重化)効果が高いものとなる。
この既膨張マイクロカプセルとも呼ばれる熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、例えば、アクリロニトリル系等の熱可塑性樹脂により構成されるシェル(殻壁、外殻)の内部(コア)に、シェルを構成する熱可塑性樹脂の軟化温度以下の沸点を有する気化物質(例えば、低沸点炭化水素等)が封入された構造のマイクロカプセルを、シェルの軟化温度以上に加熱することで、シェルを軟化させ、また、シェルの内部に包含された気化物質を気体に変化させ、その気体の圧力(膨張力・蒸気圧)の増大によってカプセル膨張させたものであり、シェルが熱可塑性樹脂からなる中空状のマイクロバルーンである。
なお、熱可塑性樹脂マイクロバルーンのシェルを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸メチル共重合体、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸、メチル共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂マイクロバルーンのシェルは、主に上述した熱可塑性樹脂によって構成されるが、その他の成分が含まれていても良く、熱可塑性樹脂マイクロバルーンの製造方法も特に問われない。市販のもの(例えば、松本油脂製薬(株)製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)のF−DEシリーズ、MFLシリーズや、日本フェライト(株)製のExpancel(登録商標)の膨張済みグレード等)を入手して使用することも可能であるし、従来公知の方法により製造し、それを用いることも可能である。例えば、アクリロニトリルや塩化ビニル等のラジカル重合性単量体と、任意の架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコール(ジ)メタアクリレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)、トリアクリルホルマール(TAF)等)及び重合開始剤を含む単量体混合物と、発泡剤(有機溶剤)とを混合して得られた混合物を、適当な分散安定剤等を含む水系懸濁液中で懸濁重合させることにより熱膨張性マイクロカプセルを製造し、これを所定温度で加熱膨張させることによって得られたものを用いることも可能である。
このような熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、上述したように、軽量効果が高いうえ、シェルの厚み、熱可塑性樹脂の特性から、高い耐熱性を有し、また、弾力性が高くて耐圧性が高い。特に、熱可塑性樹脂からなるシェル表面に無機粉体を付着したハイブリットのバルーン、詳しくは、シェルの熱可塑性樹脂を無機金属塩や金属酸化物、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等で被覆したバルーンでは、弾力性に優れ、材料を混合する塗料調製時のせん断力、攪拌応力等や塗装時のポンプ等へ圧送や塗布時の吐出圧によっても破壊され難く、高い断熱性を発揮するための所定の空隙率の制御を容易とし、また、シリコーン樹脂との混和性も良く均一な分散が可能であり、塗膜の引っ張りや曲げ等に対する強度や柔軟性も高められる。
このような熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、好ましくは、その平均粒子径(中位径)が20μm以上、200μm以下、より好ましくは、30μm以上、150μm以下である。このようなサイズであれば、均一分散性、塗布作業性、塗布性に優れるうえ、塗布面に対する塗膜の接着性、密着性を良好なものとし、また、所望の耐圧強度を有して破壊され難く塗膜の強度も良好なものとする。特に、後述するように、図1及び図2に示す自動車1の車体床下のフロアトンネル40において、塗布面となるフロアパネル本体部21に対し塗膜の高い密着性が得られると、フロアパネル本体部21との間の隙間に熱風が入るのを阻止できるから、フロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に阻止できる断熱構造を形成できる。
このようなシリコーン樹脂及び中空粒子を含有する本実施の形態の断熱塗料組成物は、例えば、プラネタリーミキサー、グレンミル、ニーダー、アトライター、ロール、ディゾルバー等の公知の混合分散機を用いて材料を均一に混合攪拌することにより調製される。そして、従来公知の塗装方法、例えば、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗装、浸漬塗装等により塗装部位に塗装、例えば、図1及び2に示すように、排気管30の高熱からの保護を図り温度上昇を抑制したい車体床下のフロアパネル本体部21表面等に塗装される。
ここで、本実施の形態の断熱塗料組成物のシリコーン樹脂が付加型シリコーン樹脂である場合には、塗装面、例えば、図2に示すようにフロアトンネル40を構成するフロアパネル本体部21の所定部位への塗装後に、焼付け乾燥等の加熱処理によってシリコーン樹脂を熱硬化させることによって、塗装面、例えば、図2に示すフロアパネル本体部21の表面上に断熱層10としての断熱塗膜(硬化塗膜)を形成することができる。特に、付加型シリコーン樹脂であれば、塗膜の硬化スピードも速く、また、収縮やガス発生を伴わない硬化により塗膜に亀裂や膨れが生じ難くて安定した成膜性が得られ、断熱性等の塗膜物性の安定性に優れる。
このような付加型シリコーン樹脂及び中空粒子を含有してなる断熱塗料組成物では、所定部位への塗装後に、例えば120℃〜160℃の温度で20〜40分間の焼付き乾燥により加熱硬化させることによって、硬化した断熱塗膜が形成される。特に、本実施の形態の断熱塗料組成物は、例えば、図1及び図2に示すように、自動車1の車体の床下でフロアトンネル40を形成する鋼板等からなるフロアパネル本体部21の表面、具体的には、図2に示すフロアパネル本体部21の突出部21aのトンネル内壁面等に塗装するものであるから、例えば、脱脂工程、化成処理工程及び電着塗装による下塗り塗装工程を終えた鋼板等からなるフロアパネル本体部21の電着塗装面に塗布し、突出部21a以外の部位に塗装された中塗り塗装または上塗りの仕上げ塗装等の塗装乾燥炉での焼付け乾燥と併せてそれらと同時に加熱硬化させることも可能である。即ち、現行の自動車塗装ラインで採用されている中塗り塗装または外塗り塗装の焼付け乾燥時の熱処理温度(通常、120℃〜160℃の範囲内)で硬化させて断熱塗膜を得ることが可能である。勿論、中塗り塗装、仕上げ塗装の焼付けとは別途熱処理によって硬化させてもよい。
なお、縮合型シリコーン樹脂の場合には、常温乾燥でも造膜して硬化塗膜を形成できる。
こうして、本実施の形態の断熱塗料組成物によれば、シリコーン樹脂及び中空粒子を含有するものであるから、母材のシリコーン樹脂によって鋼板等からなるフロアパネル本体部21の表面等の塗装面に対する付着性も良くて、塗装面に塗布したときの付着率が、例えば、80%以上を確保でき、硬化後も塗装面に対する接着性、密着性が良い。そして、母材のシリコーン樹脂11によって、高温の熱源、例えば、図1及び図2に示した排気管30からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を有し、排気管30等の高温の熱源の周囲に配しても熱劣化、溶融することなく中空粒子12を保持し、シリコーン樹脂11の低熱伝導率及び中空粒子12の空隙による断熱性によって高い断熱性を発揮する断熱塗膜が得られる。更に、中空粒子12の含有によって塗膜重量(乾燥塗膜比重)は小さく、軽量でもある。
このようなシリコーン樹脂及び中空粒子を含有する断熱塗料組成物によれば、所定の配合で、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の低い熱伝導性を有する断熱塗膜を得ることができ、例えば、30mm以下の薄い膜厚(乾燥膜厚)でも従来のインシュレータを用いたフロアトンネルの断熱構造と同等以上の高い断熱効果を発揮できる。
特に、熱可塑性樹脂マイクロバルーン等の中空粒子によれば、例えば、図1及び図2に示すフロアパネル本体部21に塗布して硬化塗膜を形成するときの昇温条件、塗装箇所、塗布量等の塗装条件や、塗布膜の粘度等の条件に中空度が影響され難いことで、断熱塗膜における所定の空隙率の制御を容易とし、安定して中空粒子の空隙によって高い断熱性及び軽量性を確保でき、所望の断熱性能、塗膜重量の制御が容易にできる。更に、中空粒子であれば、塗装条件、昇温条件、塗布膜の粘度等の条件に左右され難いので、その添加量のみならず、粒度分布や粒径の調節によっても断熱性の制御を容易にできる。よって、断熱塗膜の膜厚や塗膜特性の制御も容易にできる。
このように本実施の形態の断熱塗料組成物から得られる断熱塗膜は、シリコーン樹脂11を母材とするために耐熱性に優れ、更に、低架橋密度であり有機成分を含有するシリコーン樹脂11によれば鋼板等からなるフロアパネル本体部21等の塗装面への接着性、密着性にも優れ、塗装部位に塗布するのみで硬化後も塗装面に対し優れた接着性、密着性を確保できる。曲面や複雑な表面形状を有する部位等であってもそれに追従させる施工が容易である。また、シリコーン樹脂11は熱伝導率が低く、シリコーン樹脂11の中に、中空粒子12が含有しているために断熱性に優れる。したがって、例えば、図1に示すエンジンからの高温の排ガスが流通するためにかなりの高温となる排気管30を収めたフロアトンネル40の断熱対策に効果的である。
即ち、このようなシリコーン樹脂及び中空粒子を含有する断熱塗料組成物を、図2に示すように、フロアパネル本体部21の突出部21aにおいてトンネル内壁面側に塗布し、硬化して、シリコーン樹脂11及び中空粒子12からなる断熱層10としての断熱塗膜を形成することにより、その断熱塗膜によってシリコーン樹脂11の低熱伝導率及び中空粒子12による断熱性によって塗膜の熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の高い断熱効果が発揮されて、断熱塗料組成物の1液(1層)塗布のみで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱効果、つまり、フロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に抑制する効果が得られる。そして、このようにシリコーン樹脂及び中空粒子を含有する断熱塗料組成物をフロアトンネル40におけるフロアパネル本体部21のトンネル内壁面に塗布して断熱層10としての断熱塗膜を形成する断熱構造によれば、図6に示す従来のインシュレータを配置した断熱構造と異なり、フロアパネル本体部21や排気管30との間に所定の広い間隔、空間を設ける制約がないことで、断熱構造の省スペース化を可能とする。
ここで、このように本実施の形態の断熱塗料組成物を用いて構成されるフロアトンネル40の断熱構造について、図1及び図2を参照して、詳しく説明する。
図1及び図2に示すように、内燃機関(エンジン)を有する自動車1では、車体の床下にエンジン(図示せず)から排気マニホールド(図示せず)を介して排気管30が接続されており、この排気管30は、車体のフロアパネル20(フロアパネル本体部21)を上方の車室側に突出させることで床下でトンネル状に形成されたフロアトンネル40のトンネル開口41に収納されている。なお、図1に示すように、フロアトンネル40及びその中に収められている排気管30は、車体の前後方向に沿って延設されており、フロアトンネル40及びその中の排気管30は、通常、車幅方向の中央部に配設されている。
図2に示すように、フロアパネル20(フロアパネル本体部21)の車体の上方側への突出によって車体の床下に開口形成されたトンネル開口41は、通常、車体の下方へ向かってその開口幅が順次拡げられており、互いに対向する左右一対の傾斜状の側壁部とこの側壁部の上端部同士を繋ぐ略水平な上壁部とからなるフロアパネル本体部21の突出部21aがトンネル状を形成している。
そして、このようにトンネル状のフロアパネル本体部21によって車体の下方側に開口したトンネル開口41内には、トンネルの内壁面から離間して筒状の排気管30が配置される。通常、排気管30は、トンネル開口41の幅方向中央に収容される。この排気管30は、その長手方向の基端側がエンジンに接続されエンジンから延出しており、反対側の先端側は車体後方側でマフラーと接続されている。即ち、排気管30はエンジンからの高温の排気ガスが基端側(前側)から先端側(後側)へ向けて通過する流路となっている。このため、エンジンの駆動によりエンジンから高温の排気ガスが排気管30の基端(前端)側から先端(後端)側へ向けて流通することで、排気管30は、例えば、300℃以上にも熱せられる。特に、排気管30の周囲がトンネル状のフロアパネル本体部21の突出部21aによって囲まれているために、トンネル開口41内の雰囲気は極めて温度上昇しやすい雰囲気である。
そこで、このように排気管30が収められていることで高温状態になりやすいフロアトンネル40において、本実施の形態では、図2で示したように、フロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の突出部21aに対し排気管30周囲のトンネル内壁面側で、シリコーン樹脂及び中空粒子を含有する断熱塗料組成物を塗布し、硬化させることにより、断熱層10としての断熱塗膜を形成する。特に、本実施の形態の断熱塗料組成物では、シリコーン樹脂によって鋼板等からなるフロアパネル本体部21の表面に対する付着性も良くて、塗装面に塗布したときの付着率で80%以上、より好ましくは90%以上を確保でき、所定の塗装部位に塗布するのみで硬化後もフロアパネル本体部21に対する接着性、密着性が確保され、断熱層10の形成が容易である。
そして、このようにフロアパネル本体部21に対しそのトンネル内壁面上に形成した断熱層10としての断熱塗膜によれば、上述したように、母材がシリコーン樹脂11であることで、排気管30からの高熱によっても溶融、熱劣化することなく、排気管30からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を有し、シリコーン樹脂11の低熱伝導率及び中空粒子12の断熱効果によって、排気管30からの熱を断熱する高い断熱効果を発揮する。シリコーン樹脂11及び中空粒子12の所定の配合によって、断熱塗膜は、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の高い断熱性を有する。そして、このような低い熱伝導率を有する断熱塗膜では、断熱塗膜自体が温度上昇し難いことで、排気管30の高熱から保護するフロアパネル本体部21の表面に対して直接、塗料組成物を塗布し断熱層10としての断熱塗膜を形成しても、フロアパネル本体部21の熱負荷は少なくてフロアパネル本体部21を熱劣化させることはなく、排気管30からの熱を断熱してフロアパネル本体部21の温度上昇を抑制することができる。
更に、断熱塗膜の母材がシリコーン樹脂であるから、上述したように、フロアパネル本体部21に対する接着性、密着性も高く、特に、付加型シリコーン樹脂ではフロアパネル本体部21の熱による膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を確保できて優れた接着性、密着性が得られる。なお、高熱から保護するフロアパネル本体部21表面に断熱塗膜を形成するものであり、フロアパネル本体部21側から断熱層10としての断熱塗膜が熱影響を受けて熱劣化や塗膜の剥がれ等が生じることもない。
ここで、図6に示した従来のインシュレータを用いた断熱構造では、フロアパネルに対してインシュレータを所定の間隔をあけて配置する必要があることから、フロアパネルとインシュレータとの間の層(空間)で対流熱伝達が生じ、また、フロアパネルとインシュレータとの間の層(空間)にエンジンからの熱風が通過することがあり、自動車1の走行、停車条件によっては、フロアパネルの温度上昇が高くなり上方の車室内空間の温度上昇を招くことがあった。
これに対し、本実施の形態のように、フロアパネル本体部21の表面に対し所定の断熱塗料組成物を塗布して断熱層10としての断熱塗膜を形成することによって排気管30からの熱を遮断する断熱構造では、フロアパネル本体部21に対する断熱層10としての断熱塗膜の接着性、密着性も良いことで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、フロアパネル本体部21に対し断熱層10との間で対流による熱伝達が生じることもなく、また、エンジンからの熱風が通過する隙間も生じさせないから、フロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。即ち、フロアパネル本体部21の熱害を抑制し、上方の車室内空間の温度上昇を抑制できる。
また、従来のインシュレータを用いた断熱構造では、インシュレータの取付けに重量の増大を招く部品を必要とするが、本実施の形態のように、フロアパネル本体部21の表面に対し所定の断熱塗料組成物を塗布して断熱層10としての断熱塗膜を形成する断熱構造では、部品点数を最小限に抑えることができ、車両の構造も複雑化することがないので、軽量化が可能となる。
そして、従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、ボルト締め等の取付部材によるフロアパネル本体部21への固定も不要であるから、インシュレータやそれを取付ける取付部材の振動による発音が生じることもない。特に、シリコーン樹脂11及び中空粒子12からなる断熱塗膜によれば音や振動の吸収性も高く、制振効果や防音効果も有する。
更に、このようにシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物によれば、フロアパネル本体部21の表面に1液(1層)の塗布のみで断熱性及び耐熱性が高い断熱層10としての断熱塗膜を形成できて、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保でき、生産性良くフロアトンネル40の断熱構造を形成できる。即ち、所望の断熱性を確保するために、塗布液の作製や施工に手間や時間を要することになる複合層とする必要なく、シリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱層10としての断熱塗膜の単独層のみで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるものであるから、フロアトンネル40への施工が容易で生産性が高いものである。つまり、塗布剤の作製も1液のみで済んで塗布剤の作製にかかる時間や手間も少なくて済み、取扱いが容易である。そして、1液の塗布のみで済むから、塗布の作業にかかる時間や手間も少なくて済み、塗装ロボット等による自動塗装が容易でフロアトンネル40への施工に多大な時間及び煩雑な作業を必要とせず、生産性良くフロアトンネル40の断熱構造を形成できる。
こうして、本実施の形態では、シリコーン樹脂と中空粒子を含有する断熱塗料組成物を自動車1等の車両の床下において排気管30が収納されるフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の突出部21aのトンネル内壁面に塗布することにより、フロアパネル本体部21表面に断熱層10となる断熱塗膜を形成し、この断熱層10としての断熱塗膜によって排気管30からの熱を断熱しフロアパネル本体部21の温度上昇を抑制するフロアトンネル40の断熱構造を構成する。
このような本実施の形態のフロアトンネル40の構造は、フロアパネル本体部21のトンネル内壁面にシリコーン樹脂と中空粒子を含有する断熱塗料組成物を塗布し硬化することによって、シリコーン樹脂11に中空粒子12が含有された断熱塗膜からなる断熱層10を形成したものであり、自動車1の車体の前後方向に沿って車体上方側の車室側に突出してトンネル状としたフロアパネル本体部21と、エンジンから延出し、フロアパネル本体部21の車体の下方側に開口形成されたトンネル開口部41に収容された排気管30と、排気管30の周囲のフロアパネル本体部21のトンネルの内壁面上にシリコーン樹脂と中空粒子を含有する断熱塗料組成物を塗布することにより形成したシリコーン樹脂11に中空粒子12を含有してなる断熱塗膜からなる断熱層10を有するものである。そして、このような本実施の形態のフロアトンネル40構造を構成するフロアパネル20は、フロアパネル本体部21の表面に対し、シリコーン樹脂と中空粒子を含有する断熱塗料組成物を塗布することによりシリコーン樹脂11に中空粒子12を含有した断熱塗膜からなる断熱層10が形成されたものである。
こうして、シリコーン樹脂及び中空粒子を含有した断熱塗料組成物をフロアパネル本体部21のトンネル内壁面に塗布して断熱塗膜からなる断熱層10を形成したフロアトンネル40の断熱構造では、断熱塗膜からなる断熱層10がフロアパネル本体部21の表面に対し高い接着性、密着性でフロアパネル本体部21の表面に形成され、そして、断熱塗膜からなる断熱層10がシリコーン樹脂11によって高い耐熱性を有し、シリコーン樹脂11の低熱伝導率及び中空粒子12による断熱性によって、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の低い熱伝導性を有し安定して高い断熱効果を発揮する。また、フロアパネル本体部21の表面に密着して断熱塗膜からなる断熱層10を形成するから、フロアパネル本体部21と断熱層10の間で対流による熱伝達もなく、また、エンジンからの熱風が通過する隙間を生じさせない。よって、フロアパネル本体部21の表面に形成する断熱塗膜が、例えば、30mm以下の薄い乾燥膜厚でも、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上にフロアパネル本体部21の温度上昇を抑制する断熱効果を得ることができる。加えて、このようにフロアパネル本体部21の表面に密着して断熱塗膜からなる断熱層10を形成し、フロアパネル本体部21と断熱塗膜からなる断熱層10の間に隙間を生じさせない断熱構造であることで、燃費に影響を与える車両の空力性能の向上も可能である。
更に、フロアパネル本体部21の表面に断熱塗膜からなる断熱層10を形成する断熱構造であるから、組成物の配合組成の調節、例えば、中空粒子12の配合量、粒子径、粒度分布等の調節や、塗膜の厚みによって、所望の断熱性能とする制御も容易である。
そして、このような本実施の形態の断熱塗料組成物をフロアパネル本体部21の表面に塗布して断熱塗膜からなる断熱層10を形成してなるフロアトンネル40の断熱構造では、図6に示す従来のインシュレータを用いた断熱構造と異なり、排気管30との間で干渉音を考慮した距離を設けたり、フロアパネル本体部21との間に空間を設けて配置したりする制約がなくなるので、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネル40の設計(レイアウト)の自由度を高めることができる。即ち、トンネル空間の制約が少なくトンネル空間を広くとることができるようなり、車両の設計自由度を向上できる。更には、フロアトンネル40のトンネル開口部41の縮小も可能であり、フロアトンネル40の縮小によって室内居住区間のスペースを拡大することも可能になる。更にまた、このような本実施の形態の断熱塗料組成物をフロアパネル本体部21の表面に塗布して断熱塗膜からなる断熱層10を形成したフロアトンネル40の断熱構造では、フロアトンネル40のトンネル開口部41の空間を仕切る(遮る)インシュレータが省かれることで、車両の空力性能の向上にも有利である。加えて、インシュレータ及びそれをフロアパネルに取付ける取付部材の振動並びにそれら振動による発音が無くなるうえ、シリコーン樹脂11に中空粒子12を含有してなる断熱塗膜は、振動を抑制する制振性や防音性に優れる。特に、付加型シリコーン樹脂11であると、所定の粘度特性を有し、また、フロアパネル本体部21への追従性、密着性が高く、高い制振性が得られ、また、このようなシリコーン樹脂11に中空粒子12を含有してなる断熱塗膜からなる断熱層10は、図1に示すように車両の床下で車体の前後方向に沿って延びるフロアトンネル40に施工されるものであり、フロアパネルの広範囲に塗布されるものであるから、フロアの振動を効果的に抑制し、室内(車内)の静粛性の向上に貢献できる。
ここで、本発明者の実験研究によれば、更に高い断熱性を求める場合、中空粒子のみでは塗布作業性の点から断熱性の向上に限界が生じる。即ち、中空粒子の配合量の増大に伴い、組成物の流動性、粘性の低下によって塗布作業性が低下し、塗布作業性の点から中空粒子の配合量の増大に限界が生じる。そこで、塗膜の熱伝導率が、例えば、0.06W/mk以下のより高い断熱性を求める場合には、図3に示すように、熱可塑性樹脂マイクロバルーン等の中空粒子12に加え、塗布後に熱処理によって、例えば、樹脂を硬化させる焼付け乾燥時等の熱処理で膨張させる熱膨張性マイクロカプセル13Aや、熱処理によって熱分解してガスを発生する発泡剤14Aを併用するのが好ましい。熱可塑性樹脂マイクロバルーン等の中空粒子12と熱膨張性マイクロカプセル13A及び/または発泡剤14Aとの併用によって、塗布作業性を低下させることなく、断熱性の向上を可能とする。
熱膨張性マイクロカプセル13Aは、例えば、アクリロニトリル系等の熱可塑性樹脂により構成されるシェル(殻壁、外殻)の内部(コア)に、シェルを構成する熱可塑性樹脂の軟化温度以下の沸点を有する気化物質(例えば、低沸点炭化水素等)が封入された構造を有する熱可塑性樹脂マイクロカプセルが使用される。即ち、この熱膨張性の熱可塑性樹脂マイクロカプセルは、コアに気化物質を包含した熱可塑性樹脂からなるシェル構造を有するカプセル状のものであり、塗装面への塗布後に、シェルの軟化温度以上に加熱することにより所定の温度域になると、シェルが軟化し、シェルの内部に包含された気化物質が気体に変化し、そのシェル内の気体の圧力(膨張力・蒸気圧)の増加によってシェルが膨張して容積が増大し、中空状の熱可塑性樹脂マイクロバルーン(中空粒子)となるものである。例えば、粒子径(中位径)が5〜50μmのものでは、体積変化で50〜100倍程度になる。
なお、この熱可塑性樹脂マイクロカプセルのシェルを構成する熱可塑性樹脂としても、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸メチル共重合体、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸、メチル共重合体等が挙げられる。
熱膨張性の熱可塑性樹脂マイクロカプセルのシェルも、主に上述した熱可塑性樹脂によって構成されるが、その他の成分が含まれていても良く、熱膨張性マイクロカプセル13Aの製造方法も特に問われない。市販(例えば、松本油脂製薬(株)製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F、FNシリーズや、日本フェライト(株)製のExpancel(登録商標)や、大日精化工業(株)製のファインセルマスター、(株)クレハ製のクレハマイクロスフェアー等)の未膨張の熱膨張性マイクロカプセルを入手して使用することも可能であるし、従来公知の方法により製造し、それを用いることも可能である。例えば、アクリロニトリルや塩化ビニル等のラジカル重合性単量体と、任意の架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコール(ジ)メタアクリレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)、トリアクリルホルマール(TAF)等)及び重合開始剤を含む単量体混合物と、発泡剤(有機溶剤)とを混合して得られた混合物を、適当な分散安定剤等を含む水系懸濁液中で懸濁重合させることにより熱膨張性マイクロカプセルを製造し、それを用いることが可能である。
このような熱膨張性マイクロカプセル(未膨張マイクロカプセル)13Aは、好ましくは、その平均粒子径(中位径)が5μm以上、50μm以下、より好ましくは、10μm以上、40μm以下のものである。このようなサイズであれば、塗布時に破壊され難い耐圧性、機械的強度を有し、また、均一分散性、塗布作業性、塗布性を確保できる。
特に、熱可塑性樹脂マイクロカプセルが膨張されてなる熱可塑性樹脂マイクロバルーンは、上述したように、真比重が小さいために、塗膜の軽量化(低比重化)が可能となる。更に、上述したように、外殻の厚み、熱化塑性樹脂の特性から、弾力性が高いために破壊され難く、高い断熱効果を発揮するための所定の空隙率の制御が容易であり、また、塗膜の引っ張りや曲げ等に対する強度、柔軟性も高められる。
本実施の形態の断熱塗料組成物において、このような熱膨張性マイクロカプセル13Aを含有する場合には、断熱塗料組成物を所定部位に塗布した後、所定の加熱処理により、所定の温度で熱膨張性マイクロカプセル13Aのシェルを構成する熱可塑性樹脂が軟化し、シェルに内包されている低沸点炭化水素等の気化物質がガス化することで、マイクロカプセルが膨張した樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)13Bとなる。特に、本実施の形態の断熱塗料組成物の塗布膜を加熱によって硬化させる場合には、通常、塗布膜を硬化させる焼付け乾燥時の熱処理温度でマイクロカプセルが膨張してマイクロバルーンを形成する熱膨張性マイクロカプセル13Aが選択される。例えば、膨張開始温度が焼付け乾燥時の加熱温度以下にある熱膨張性マイクロカプセル13Aが選択される。なお、この膨張開始温度とは、熱膨張性マイクロカプセル13Aを加熱していった際に、シェルを構成する熱可塑性樹脂等の軟化が開始すると同時に、内包されている炭化水素等の気化物質がガス化を始めることで内圧が上がり、マイクロカプセルが膨張を開始する温度のことである。例えば、膨張開始温度が、60℃〜130℃、好ましくは70℃〜110℃のマイクロカプセルが使用できる。膨張開始温度が当該温度範囲内である熱膨張性マイクロカプセル13Aであれば、現行の自動車塗装ラインで採用されている中塗り塗装または外塗り塗装の焼付け乾燥時の加熱温度(通常、120℃〜160℃)でそのシェルが破裂することなく、膨張率が高い中空状の樹脂マイクロバルーン13Bとなる。このように熱膨張性マイクロカプセル13Aを含む断熱塗料組成物では、熱膨張性マイクロカプセル13Aの膨張開始温度以上の温度で加熱されることにより、熱膨張性マイクロカプセル13Aの内包物が体積膨張しシェルが軟化して膨張したカプセル、即ち、樹脂マイクロバルーンからなる中空粒子13Bとして、塗膜の母材であるシリコーン樹脂11に分散して含まれることになる。
そして、本実施の形態の断熱塗料組成物において、図3(a)に示すように、中空粒子12に加えこのような熱膨張性マイクロカプセル13Aを含有する場合には、塗装面、例えば、フロアパネル本体部21表面への塗布後に加熱処理によって熱膨張性マイクロカプセル13Aが熱膨張することにより樹脂マイクロバルーン13Bとなることで、フロアパネル本体部21の表面に形成された断熱層10としての断熱塗膜では、組成物に配合されていたもともとの熱可塑性樹脂マイクロバルーン等の中空粒子12に加え、熱膨張性マイクロカプセル13Aが熱膨張してなる樹脂マイクロバルーン(中空粒子)13Bを有し、それら中空粒子12及び樹脂マイクロバルーン(中空粒子)13Bによって高い断熱効果が発揮される。特に、こうした熱膨張性マイクロカプセル13Aを熱可塑性樹脂マイクロバルーン等の中空粒子12と併用することによって、塗布作業性を低下させることなく、断熱性の向上が可能になる。
また、断熱塗料組成物に配合する発泡剤14Aとしては、ADCA(アゾジカルボンアミド)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、p−トルエンスルホニルアジド、p−メチルウレタンベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等の有機発泡剤や、炭酸水素ナトリウム(重曹)等の無機発泡剤が使用できる。本実施の形態の断熱塗料組成物の塗布膜を加熱によって硬化させる場合には、好ましくは、加熱型の発泡剤が使用される。加熱型の発泡剤は、加熱により発泡剤が分解してガスを生じ、発泡するものである。このような加熱型発泡剤を含有する場合には、断熱塗料組成物を所定部位に塗布した後、塗布膜を硬化させる時の加熱処理温度によって、発泡剤14Aが分解して発泡するものが望ましい。なお、必要に応じ、発泡剤14Aの発泡作用を補助する発泡助剤を使用することも可能であり、塗布膜を硬化させる焼付け乾燥時の加熱条件に合わせて発泡するように発泡助剤を配合してもよいが、加熱条件等によっては必ずしも発泡助剤は必要となるものではない。
そして、本実施の形態の断熱塗料組成物において、図3(b)に示すように、中空粒子12に加えこのような発泡剤14Aを含有する場合には、塗装面、例えば、フロアパネル本体部21表面への塗布後の加熱処理によって発泡剤14Aが発泡することにより、フロアパネル本体部21表面に形成された断熱層10としての断熱塗膜では、中空粒子12及び気泡14Bを有し、それら中空粒子12と気泡14Bによって高い断熱効果が発揮される。特に、発泡剤14Aを熱可塑性樹脂マイクロバルーン等の中空粒子12と併用することによって、塗布作業性を低下させることなく、断熱性の向上が可能になる。また、気泡14の含有によって塗膜の軽量効果も高いものとなる。
このように中空粒子12に加え、熱膨張性マイクロカプセル13Aまたは発泡剤14Aの併用によって、塗布作業性を低下させることなく、断熱性の向上を可能とするが、本発明を実施する場合には、これら熱膨張性マイクロカプセル13A及び発泡剤14Aを併用、共存させることも可能である。即ち、中空粒子12と熱膨張性マイクロカプセル13Aと発泡剤14Aとの併用も可能である。特に、熱膨張性マイクロカプセル13A及び発泡剤14Aを併用し、焼付け乾燥等の加熱によって塗布膜を硬化する場合には、マイクロカプセルが膨張を開始する温度より高い温度で発泡を開始する加熱型発泡剤を用い、マイクロカプセルの膨張開始温度より高い温度で加熱型発泡剤が分解して発泡するようにするのが望ましい。即ち、マイクロカプセルが最初に膨張を開始し、その後発泡剤の分解が開始するようなマイクロカプセル膨張開始温度と発泡開始温度の関係とする。これにより、現行の自動車塗装ラインで採用されている中塗り塗装または外塗り塗装の焼付け乾燥時の加熱温度(通常、120℃〜160℃)で塗布膜の硬化を進行させるとともに、所定の温度域でマイクロカプセルの膨張が開始し、その後マイクロカプセルの膨張開始温度より高い温度で発泡剤が発泡することで、マイクロカプセルの膨張によって塗膜層が厚くなった状態で発泡剤が発泡するから、発泡剤による発砲ガスの保持性が高まり、発泡効率、空隙率の制御及び所望の厚みの制御が容易となる。よって、所望の断熱性の設定が容易となる。また、焼付け乾燥時の温度によっては、マイクロカプセルが温度上昇に従って膨張し、その後、収縮に転じたとしても発泡剤による発泡によって所望の厚み及び空隙を確保して高い断熱性を確保できる。
次に、本発明の実施の形態に係る断熱塗料組成物の実施例について、具体的に説明する。
本実施例では、図1及び図2に示したように自動車1の車体の床下で排気管30が収容されるフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の表面、詳細には、フロアパネル本体部21の突出部21aにおいてトンネル開口部41側の内壁面に塗布する断熱塗料組成物の配合組成として、表1に示した内容で実施例1乃至実施例3に係る断熱塗料組成物を作製した。また、比較のために、比較例1に係る塗料組成物も作製した。各実施例及び比較例の配合内容を表1の上段に示す。
実施例1に係る断熱塗料組成物は、付加型シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製『KE−109E−A/B』)を100重量部と、中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)(松本油脂製薬(株)製『マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL−82D、F−48D、F−78KD』;真比重:0.12±0.02,平均粒子径(商品表示):60〜70μm、アクリルニトリル系の熱可塑性高分子殻(シェル)の表面を炭酸カルシウムでコーティングしたもの)を16重量部配合してなるものである。
実施例2に係る断熱塗料組成物は、付加型シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製『KE−109E−A/B』)を100重量部と、中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)(松本油脂製薬(株)製『マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL−82D、F−48D、F−78KD』;真比重:0.12±0.02,平均粒子径(商品表示):60〜70μm、アクリルニトリル系の熱可塑性高分子殻(シェル)の表面を炭酸カルシウムでコーティングしたもの)を16重量部と、熱膨張性マイクロカプセルカプセルとしての熱可塑性樹脂マイクロカプセル(未膨張マイクロカプセル)(日本フィライト(株)製;『Expancel(登録商標)031−40DU』、膨張開始温度:80〜95℃、最大膨張温度:120〜135℃、平均粒子径(商品表示):10〜16μm、真密度:1.2g/cm3以下)を3重量部配合してなるものである。
実施例3に係る断熱塗料組成物は、付加型シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製『KE−109E−A/B』)を100重量部と、中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーン(既膨張マイクロカプセル)(松本油脂製薬(株)製『マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL−82D、F−48D、F−78KD』;真比重:0.12±0.02,平均粒子径(商品表示):60〜70μm、アクリルニトリル系の熱可塑性高分子殻(シェル)の表面を炭酸カルシウムでコーティングしたもの)を16重量部と、アソジカルボンアミド(ADCA)系の発泡剤(永和化成工業(株)製『FE−788』)を3重量部配合してなるものである。
これに対して、比較例1に係る断熱塗料組成物は、付加型シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製『KE−109E−A/B』)100重量部のみからなるものである。
次に、このような配合組成の実施例及び比較例の各塗料組成物について、断熱性の評価試験を行った。
断熱性の評価試験は、各塗料組成物を所定の塗布対象物に塗布し、加熱によって硬化させることで断熱塗膜を得て、この断熱塗膜について熱伝導率を調べた。また、自動車1の床下で排気管30が収容されるフロアトンネル40の構造を模式的に再現し、即ち、図4に示すように、熱源であるヒータHの周囲にトンネル状の鋼板Sを配置し、ヒータHの周囲の鋼板Sの表面に実施例及び比較例の各塗料組成物を塗布し、そして、加熱によって硬化させて断熱塗膜を形成し、ヒータHを昇温したときの、鋼板Sの温度上昇を調べ、各塗料組成物から形成された断熱塗膜による鋼板Sの昇温抑制効果を評価した。
なお、これらの配合組成からなる実施例及び比較例の各塗料組成物の調製は、例えば、プラネタリーミキサーを用いて材料を均一に混合した後、15分間真空脱泡撹拌することによって行った。
ここで、熱伝導率[W/(m・K)]については、熱伝導率測定装置として英弘精機(株)のHC−074を使用し、熱流計法(JIS A1412−2準拠)に基づいて熱流量を測定し、断熱塗膜の熱伝導率[W/(m・K)]を算出した。
また、図4に示すように、車体の床下で排気管30が収納されるフロアトンネル40の構造を模し、トンネル状の鋼板S(長さ300mm)の下方開口側に熱源のヒータH(Φ50mm×300mm)を配置し、ヒータHの上方で鋼板Sの表面に実施例及び比較例の各塗料組成物を塗布し、次いで、140℃×30分間の加熱条件で焼付け乾燥を行い、塗布膜の加熱硬化を行って断熱層10としての断熱塗膜を得た。なお、この加熱処理条件は、現行の自動車塗装ラインで採用されている中塗り塗装または外塗り塗装の焼付け乾燥時の加熱条件に一致するものである。こうしてヒータHが収められた鋼板Sのトンネル内壁面(上面側)で鋼板Sの表面に5mmの乾燥膜厚tの硬化塗膜、即ち、実施例及び比較例の各塗料組成物からなる断熱塗膜(断熱層10)を形成した。このとき、鋼板Sのトンネル内壁面側の表面に形成された断熱塗膜(断熱層10)と熱源のヒータHとの距離dは30mmとした。
そして、このように、断熱性評価試験用に車両のフロアトンネル40の構造を摸して、図4に示したトンネル状とした鋼板Sのトンネル内に熱源としてのヒータHを配置し、ヒータHの上側で鋼板Sのトンネル内壁面側(上壁面)の表面に断熱塗膜からなる断熱層10を形成した構造において、そのヒータHの温度を300℃としたときの、断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面温度を熱電対Tで測定することによって、実施例及び比較例の各塗料組成物から形成された断熱塗膜(断熱層10)による断熱効果、即ち、鋼板Sの温度上昇抑制効果を評価した。
実施例及び比較例の各塗料組成物から形成された断熱塗膜の断熱性の評価結果は、熱伝導率の測定結果、及び、鋼板Sの温度上昇の測定結果(最高到達温度)と共に表1の下段に示した通りである。
ここで、断熱性については、◎、○、×の3段階で評価した。即ち、断熱塗膜の熱伝導率が0.08[W/(m・K)]以下であれば、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保するのに十分な断熱性を有すると判断して○(合格)とし、断熱塗膜の熱伝導率が0.08[W/(m・K)]を超えるものは×(不合格)と評価した。また、図4に示したようにヒータHを用いた断熱性の測定試験において、断熱塗膜(断熱層10)の形成によって断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面温度が80℃を超える場合も×(不合格)と評価し、断熱塗膜(断熱層10)の形成によって断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面温度が80℃以下に抑えれられていた場合を○(合格)と評価した。更に、断熱塗膜の熱伝導率が0.05[W/(m・K)]以下で、断熱塗膜(断熱層10)の形成によって断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面温度が78℃以下に抑えられていた場合には◎とし断熱効果の差別化を図った。
表1の下段に示すように、シリコーン樹脂及び中空粒子を含有する実施例1乃至実施例3の断熱塗料組成物によれば、シリコーン樹脂のみからなる比較例1の断熱塗料組成物と比較して、何れも断熱塗膜の熱伝導率が0.055[W/(m・K)]以下であり、低熱伝導率の断熱塗膜が得られた。
特に、実施例2及び実施例3では、塗布作業性を低下させることなく、熱伝導率が0.05[W/(m・K)]以下の極めて低い熱伝導率の断熱塗膜が得られた。
また、このような実施例1乃至実施例3及び比較例1の各断熱塗料組成物からなる断熱塗膜を熱源のヒータHの上方でトンネル状の鋼板Sの表面に乾燥膜厚(t)5mmで形成して、ヒータHを加熱した時の鋼板Sの温度上昇を測定し断熱塗膜(断熱層10)による断熱効果を評価した試験によれば、ヒータHを300℃に温度上昇したときに、シリコーン樹脂11のみからなる比較例1に係る断熱塗膜(断熱層10)では、断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面温度が82.7℃に達したのに対し、実施例1乃至実施例3に係る断熱塗膜(断熱層10)では、断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面温度が79℃以下に抑制されていた。
なお、これら実施例1乃至実施例3及び比較例1の各断熱塗料組成物からなる断熱塗膜(断熱層10)は、何れも鋼板Sに対し良好な付着性(塗装面に塗布したときの付着率が90%以上)を示した。
特に、付加型シリコーン樹脂及び熱可塑樹脂マイクロバルーンに加え、熱膨張性の熱可塑性樹脂マイクロカプセルを配合した実施例2では、熱伝導率が0.047[W/(m・K)]と極めて低い熱伝導率を有する断熱塗膜が得られ、また、この実施例2に係る断熱塗膜によれば、断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面の温度上昇を77.9℃以下に抑えられた。
なお、図3(a)で示すように、このシリコーン樹脂11としての付加型シリコーン樹脂、中空粒子12としての熱可塑樹脂マイクロバルーン及び熱膨張性マイクロカプセル13Aとしての熱可塑性樹脂マイクロカプセルを配合してなる断熱塗料組成物を所定の塗布部位に塗布し、加熱によって硬化させてなる断熱塗膜(断熱層10)は、組成物にもともと配合されていた熱可塑樹脂マイクロバルーン12(中空粒子)と組成物に配合されていた熱可塑性樹脂マイクロカプセル13Aが膨張されてなる熱可塑樹脂マイクロバルーン13B(中空粒子)とが付加型シリコーン樹脂11に含有されてなるものであり、組成物にもともと配合されていた熱可塑樹脂マイクロバルーン12由来の中空粒子と組成物に配合されていた熱可塑性樹脂マイクロカプセル13A由来の中空粒子とを含有している。
更に、付加型シリコーン樹脂及び熱可塑樹脂マイクロバルーンに加え、化学発泡剤を配合した実施例3でも、熱伝導率が0.043[W/(m・K)]と極めて低い熱伝導率を有する断熱塗膜が得られ、また、この実施例3に係る断熱塗膜によれば、断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面の温度上昇を77.4℃以下に抑制できた。
なお、図3(b)で示すように、このシリコーン樹脂11としての付加型シリコーン樹脂、中空粒子12としての熱可塑樹脂マイクロバルーン及び発泡剤14AとしてのADCA系発泡剤を配合してなる断熱塗料組成物を所定の塗布部位に塗布し、加熱によって硬化させてなる断熱塗膜(断熱層10)は、組成物にもともと配合されていた熱可塑樹脂マイクロバルーン12(中空粒子)と組成物に配合されていたADCA系発泡剤14Aの発泡により形成された気泡14Bとが付加型シリコーン樹脂11に含有されてなるものである。
ここで、更に、シリコーン樹脂及び中空粒子からなる実施例1に係る断熱塗料組成物を用いて形成するフロアトンネル40の断熱構造の断熱性能について、従来のインシュレータを用いたフロアトンネル40における断熱構造との比較を行った。
即ち、図5に示すように、車両の床下で排気管30が収納されるフロアトンネル40の構造を模式的に再現し、熱源としてのヒータHの周囲にトンネル状の鋼板Sを配置し、ヒータH周囲の鋼板Sのトンネル内壁面側の表面に実施例1の塗料組成物を塗布して断熱塗膜(断熱層10)を形成し、ヒータHを270℃に加熱したときの、鋼板Sの温度測定を行い、インシュレータを配置した断熱構造における鋼板Sの温度上昇との比較を行った。
詳しくは、図5に示したように、トンネル状の鋼板S(長さ300mm)の下方開口側に熱源のヒータH(Φ50cm×300mm)を配置し、図5(a)ではヒータHの周囲で鋼板Sのトンネル内壁面(上壁面及び左右の側壁面)に上記実施例1の配合のシリコーン樹脂及び中空粒子からなる塗料組成物を塗布し、次いで、140℃×30分間の加熱条件で焼付け乾燥を行い、塗布膜の加熱硬化を行った。こうして鋼板Sのトンネル内に収めたヒータHの周囲で鋼板Sのトンネル内壁面に硬化塗膜、即ち、実施例1の塗料組成物からなる断熱塗膜を形成した。ここでは、実施例1に係る断熱塗膜が5mmの乾燥膜厚(t)のものと10mmの乾燥膜厚(t)のものとの2種類を試験した。
そして、このように断熱性評価試験用にフロアトンネル40の構造を摸して、図5(a)に示したように、鋼板Sのトンネル内に熱源としてのヒータHを収容し、ヒータHの周囲で鋼板Sの表面に所定の膜厚で断熱塗膜からなる断熱層10を形成した構造において、そのヒータHの温度を270℃とし、風速0.8m/Sの条件としたときの、断熱層10側とは反対側の鋼板Sの表面の温度上昇を熱電対Tで測定した。なお、熱電対Tによる鋼板S表面の温度測定部位(断熱層10形成側とは反対側)と熱源のヒータHとの距離d1は35mmとしている。また、トンネル状の鋼板Sに対し、図5(a)に示したように、トンネルの内周壁面の周囲全体、即ち、トンネルの側壁面側及び上壁側面側の全体に実施例1の塗料組成物を塗布して断熱塗膜からなる断熱層10を形成し、断熱層10形成側とは反対側の鋼板Sの外側壁面とヒータHとの距離d2は35mmとしている。
一方、比較のために、図5(b)に示すように、断熱塗膜からなる断熱層10を形成することなく、ヒータHの周囲にインシュレータIを配置したときの、鋼板Sの表面の温度上昇についても測定を行った。即ち、図5(b)に示すように、トンネル状の鋼板S(長さ300mm)の下方開口側に配置したヒータH(Φ50cm×300mm)を囲むようにトンネル状のインシュレータIを配置し、そのヒータHの温度を270℃とし、風速0.8m/Sの条件としたときの、インシュレータI側とは反対側の鋼板Sの表面の温度上昇を熱電対Tで測定した。なお、熱電対Tによる鋼板S表面の温度測定部位(インシュレータ配置側とは反対側)と熱源のヒータHとの距離d1は35mmとしている。また、断熱層10形成側とは反対側の鋼板Sの外側壁面とヒータHとの距離d2を35mmとし、鋼板Sから10mm離れた距離d3にインシュレータIが収まるように配置されている。
なお、図5(a)及び図5(b)の何れの構造においても、トンネル状の鋼板Sに対してヒータHは図示しないハンガーゴム等を用いて取付けられており、また、図5(b)のインシュレータIもトンネル状の鋼板Sに対して図示しないハンガーゴム等を用いて取付けられている。
図5(a)及び図5(b)に示したように、断熱性評価試験用にトンネル状の鋼板S及びヒータHを所定配置し、ヒータHの温度を270℃、風速を0.8m/Sの条件としたときの、鋼板Sの表面温度の測定結果(最高到達温度)を表2に示す。
表2に示したように、ヒータHが収容されたトンネル内においてヒータHの周囲にインシュレータIを配置した断熱構造(図5(b))では、インシュレータI側とは反対側の鋼板Sの表面の最高到達温度が57.2℃であったのに対し、ヒータHが収容されたトンネル内において鋼板S表面に実施例1の塗料組成物を塗布して断熱塗膜からなる断熱層10を形成した断熱構造(図5(a))では、断熱塗膜の膜厚(乾燥膜厚)tが10mmもあれば、鋼板S表面の最高到達温度を54.3℃に抑えることができた。
こうして、シリコーン樹脂及び中空粒子からなる実施例1に係る断熱塗料組成物によれば、耐熱性が高く、高熱の熱源の周囲に配置しても溶融、熱劣化することなく塗膜強度を維持して、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子の断熱効果によって低熱伝導率の高い断熱性を有する断熱塗膜が得られ、この断熱塗膜をヒータHが収容されたトンネル内において鋼板S表面に形成した断熱構造では、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性能を得ることができることが確認された。特に、断熱塗膜からなる断熱層10の高い断熱性によって、厚さが10mmもあれば、従来のインシュレータを用いた断熱構造よりも優れた断熱性能が得られた。
したがって、このようにヒータHが収容されたトンネル内において鋼板S表面に所定の断熱塗料組成物を塗布して断熱塗膜からなる断熱層10を形成した断熱構造では、鋼板Sの表面に密着して断熱塗膜からなる断熱層10を配設するものであり、従来のインシュレータを用いた構造と異なり、鋼板Sとの間にスペースを設ける必要もなく、また、排気管30に対して干渉音等を考慮する必要がないから排気管30との間の距離を縮小できる。そして、断熱塗膜からなる断熱層10の高い断熱効果によって、薄い厚さでも従来のインシュレータを用いた構造と同等以上の断熱性を発揮して鋼板Sの温度上昇を効果的に抑制できる。よって、断熱構造の省スペース化を可能とし、トンネルの設計(レイアウト)自由度を高めることが可能である。
ここで、本発明者は、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を得るために、上述のフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の表面に塗布する断熱塗料組成物の配合組成について、鋭意実験研究を重ねた結果、シリコーン樹脂としての付加型シリコーン樹脂100重量部に対し、中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーンの配合量が8.1重量部以上、26.7重量部以下の範囲内が好適な配合であることが判明した。
即ち、シリコーン樹脂としての付加型シリコーン樹脂100重量部に対し中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーンの配合量が8.1重量部未満であると、断熱塗膜の熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の高い断熱性を得ることができず、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等の断熱効果や断熱構造の省スペース化の実現が困難で、実用的でない。一方で、中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーンの配合量が26.7重量部を超えると、塗布に適した粘性、流動性が得られず、塗布作業性を確保できない。
シリコーン樹脂としての付加型シリコーン樹脂100重量部に対し、中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーンの配合量が8.1重量部以上、26.7重量部以下の範囲内であれば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の高い断熱性を有する断熱塗膜を得ることができて、乾燥膜厚が、例えば、30mm以下の範囲内の薄い厚みで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保して、断熱構造の省スペース化を可能とする。
また、上述したように、中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーンに加えて、熱膨張性マイクロカプセルとしての熱可塑性樹脂マイクロカプセルや発泡剤としてのADCA系発泡剤を併用することで、塗布作業性を低下させることなく、断熱性の向上を可能とするが、本発明者の実験研究によれば、これら熱膨張性マイクロカプセルや発泡剤の配合量が多すぎると成膜が困難となる。そこで、これら熱膨張性マイクロカプセルとしての熱可塑性樹脂マイクロカプセルまたは発泡剤としてのADCA系発泡剤の配合量は、シリコーン樹脂としての付加型シリコーン樹脂100重量部に対し、20重量部以下が好ましい。より好ましくは、15重量部以下、更に好ましくは、13重量部以下であれば、高い断熱性と塗膜強度の両立が可能である。なお、熱膨張性マイクロカプセルとしての熱可塑性樹脂マイクロカプセル及び発泡剤としてのADCA系発泡剤の両方を配合する場合には、それらの合計配合量がシリコーン樹脂としての付加型シリコーン樹脂100重量部に対し、25重量部以下となるのが好ましい。
ここで、更に本発明者の鋭意実験研究により、鋼板等からなるフロアパネル本体部21に塗布する塗布作業性から、このようにシリコーン樹脂としての付加型シリコーン樹脂及び中空粒子としての熱可塑性樹脂マイクロバルーンを含有する断熱塗料組成物の粘度は1Pa・s/25℃以上、1000Pa・s/25℃以下の範囲内とするのが好ましい。断熱塗料組成物の粘度が1Pa・s/25℃以上、1000Pa・s/25℃以下の範囲内であれば、塗布生産性が良好で、タレ等が生じ難く塗布作業に適した粘度特性を確保でき、安定した塗布の品質が得られる。なお、この粘度は、JIS K 7117−1に準拠し、B型回転粘度計を用いて回転数20rpm、25℃の温度条件で測定されたものである。
より好ましくは、断熱塗料組成物の粘度が10Pa・s/25℃以上、更に好ましくは、30Pa・s/25℃以上であれば、塗装面に対し高い付着性が得られて塗布膜の硬化後も高い接着性、密着性を確保できる。よって、安定して高い断熱性が発揮される。特に、フロアパネル本体部21の塗装面に対する高い密着性が得られると、フロアパネル本体部21との間の隙間に熱風が入るのを阻止できることでフロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に阻止できる断熱構造を形成できる。更に、塗布膜の硬化後はフロアパネル本体部21に追従する柔軟性、弾性を有する断熱塗膜となり、剥がれ、亀裂等が生じ難く、安定した塗膜性能を発揮できる。
また、本発明者の実験研究によれば、断熱塗料組成物をその乾燥膜厚が0.1mm〜30mmの範囲内となるように、フロアパネル本体部21のトンネル内壁面に塗布するのが好ましい。膜厚が小さすぎると、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できない一方で、膜厚が厚すぎると、重量が重くなり、また、断熱構造のスペースを取ることにもなり、更に、ムラが生じやすくなって塗装性や塗装効率も低下する。そこで、断熱塗膜の乾燥膜厚が0.1mm〜30mmの範囲内、より好ましくは、安定して高い断熱性を確保する観点から、5mm〜15mmの範囲内となるように断熱塗料組成物を塗布することで、所望の断熱効果を得てトンネル空間の制約を少なくし、更に、塗布性も良好で軽量性にも優れる。特に、シリコーン樹脂に中空粒子を含有してなる断熱塗料組成物によれば、かかる薄膜でも、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できて断熱構造の省スペース化を可能とする。
更に、上述したように、本発明者の実験研究によれば、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を得るために、シリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物から得られる断熱塗膜は、その熱伝導率(JIS A 1412−2(熱流計法)に基づく)が0.08W/(m・k)以下が好ましい。より好ましくは、熱伝導率が0.06W/mk以下であり、更に好ましくは、熱伝導率が0.05W/(m・k)以下である。熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の断熱塗膜であれば、高い断熱性を有し、乾燥膜厚が、例えば、30mm以下の範囲内の薄い厚みでも、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保して、断熱構造の省スペース化を可能とする。特に、熱伝導率が0.06W/(m・k)以下であれば、乾燥膜厚が、例えば、20mmの以下の薄い膜厚でも従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の高い断熱性を確保して、断熱構造の省スペース化を可能とする。
加えて、本発明者は、このようにシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗膜の特性を特定するために、その塗膜密度や空隙に着目したところ、好ましくは、塗膜密度が0.7g/cm3以下、より好ましくは、0.6g/cm3以下であり、また、この塗膜密度から算出される空隙率が38%以上、より好ましくは40%以上であれば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下となる断熱塗膜が得られることを確認した。なお、この塗膜密度は、任意の基材に塗布した断熱塗膜について、その全体重量、断熱塗膜の寸法を測定し、基材の重量、厚み等を考慮して、塗膜密度(g/cm3)を算出したものである。また、中空粒子や気泡による断熱性を空気を含む空隙部で捉え、その空隙率を特定した。即ち、上記の塗膜密度D(g/cm3)は、空気密度(0.01293g/cm3)をD1、樹脂密度(例えば、上記実施例1乃至実施例3で用いた付加型シリコーン樹脂の樹脂密度は0.965g/cm3)をD2とし、空隙率をxとするとき、D=D1(1−x)+D2・xで表すことができるとし、これら塗膜密度Dと空気密度D1と樹脂密度D2から空隙率xを算出した。そして、塗膜強度の観点からすれば、上記塗膜密度は、0.1g/cm3以上が好ましく、上記空隙率は、90%以下が好ましい。
即ち、塗膜密度が低く、空隙率が高いものでは、塗膜強度が低下して亀裂、ひび割れ等が生じやすくなり、フロアパネル本体部21への付着性にも欠けて、フロアパネルの表面と塗膜との隙間にエンジンからの熱風等が入り込む恐れがあり、安定した断熱性能を得ることができない。一方で、塗膜密度が高く、空隙率が低いものでは、断熱構造の省スペース化を可能とする塗膜の厚みで従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保することができない。
塗膜密度が0.1g/cm3〜0.7g/cm3の範囲内であり、空隙率が38%〜90%の範囲内であれば、断熱塗膜の熱伝導率が0.08W/(m・k)以下を確保でき、膜厚が30mm以下の薄い膜厚で、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できると共に軽量性に優れ、かつ、亀裂、ひび割れ等が生じない塗膜強度で安定した断熱性能が確保される。つまり、断熱性及び軽量性と塗膜強度との両立によって、安定した断熱性能を得ることができる
以上説明してきたように、上記実施の形態の断熱塗料組成物は、車両のフロアパネル(フロアパネル本体部21)に塗布されるフロアパネル用断熱塗料組成物であって、シリコーン樹脂と中空粒子を含有し、シリコーン樹脂100重量部に対し中空粒子を8.1重量部以上、26.7重量部以下の範囲内で配合したものである。
上記実施の形態の断熱塗料組成物によれば、母材がシリコーン樹脂であるから排気管30からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を有し、また、鋼板等からなるフロアパネル本体部21の表面に対する付着性も良く、そして、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子による断熱効果によって高い断熱性を発揮する断熱塗膜を形成できる。
特に、シリコーン樹脂100重量部に対し中空粒子の配合量が8.1重量部以上、26.7重量部以下の範囲内であれば、熱伝導率が、例えば、0.08W/(m・k)以下の断熱塗膜を得ることができ、例えば、30mm以下の薄い塗膜の厚み(乾燥膜厚)で、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保でき、断熱構造の省スペース化を可能とする。
このように所定の配合組成のシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物によれば、シリコーン樹脂の低熱伝導率及び中空粒子による断熱効果によって熱伝導率が、例えば、0.08W/(m・k)以下の高い断熱性とシリコーン樹脂による高い耐熱性を有する断熱塗膜を形成でき、排気管30等の高温の熱源の周囲に配置したときでも、断熱塗膜が溶融、熱劣化することなく安定した断熱性等の塗膜性能を発揮できる。更に、断熱塗膜の熱伝導率が低いから、塗膜自体の温度上昇も高くならないことで、フロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の内壁面に塗布形成してもフロアパネル本体部21の熱負荷が少なくてフロアパネル本体部21を熱劣化させることなく、排気管30からの高熱を断熱してフロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に抑えることができる。
そして、フロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の内壁面に所定の配合のシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物を塗布して断熱塗膜を形成する断熱構造(図2参照)では、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)と異なり、フロアパネル本体部21の表面に対し隙間が設けられないので対流伝熱やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネル本体部21の温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)では、フロアパネル表面と間に隙間を設けたインシュレータの配置とし、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離でインシュレータを配置する必要があるのに対し、図2に示すフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の内壁面に所定の配合のシリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物を塗布して断熱塗膜を形成する断熱構造では、断熱塗膜をフロアパネル本体部21に密着させて隙間を設けた配置とせず、更に、排気管30との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もない。よって、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネル40のトンネル開口部41の制約も少なくなり、フロアトンネル40の設計自由度を高めることができる。また、断熱塗膜が高い断熱性を有することで、フロアトンネル40のトンネル開口部41の縮小、省スペース化も可能である。
更に、シリコーン樹脂と中空粒子を含有した断熱塗料組成物によれば、フロアパネル本体部21の表面に1液の塗布のみで断熱性及び耐熱性が高い断熱塗膜を形成できて、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるから、塗料の設計工数、塗装工数が少なくて済みフロアトンネル40の断熱構造の形成が容易である。即ち、塗布剤の作製も1液のみで済んで塗布剤の作製にかかる時間や手間が少なくて済み、取扱いも容易である。また、1液の塗布のみで済むから、塗布作業にかかる時間や手間も少なくて済み、塗装ロボット等による自動塗装が容易でフロアトンネル40への施工に多大な時間及び煩雑な作業を必要としない。よって、コスト的にも安価で済み、生産性良くフロアトンネル40の断熱構造を形成できる。
このようにして、上記実施の形態の断熱塗料組成物によれば、高い耐熱性及び断熱性を備えた断熱塗膜を形成できて、高温の熱源周囲の断熱構造の省スペース化を可能と、かつ、生産性良く断熱構造の形成を可能とする。
特に、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の断熱塗料組成物のシリコーン樹脂が付加型シリコーン樹脂であると、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネル本体部21の温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する断熱塗膜を形成できる。よって、断熱塗膜のひび割れ、亀裂、皺等が防止され、塗膜の安定した断熱性能を得ることができる。
また、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の断熱塗料組成物の中空粒子が樹脂マイクロバルーンであると、断熱塗膜の軽量性(低比重化)に優れる。更に、耐熱性及び弾力性も高く、特に、実施例1乃至実施例3で使用したような熱可塑性樹脂からなるシェル表面に炭酸カルシウム等の無機粉体をコーティングした熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、塗料調製時のせん断力等によっても破壊され難い優れた弾力性及び耐圧性を有し、断熱塗膜において安定して所定の空隙率を確保し安定した断熱効果を発揮でき、また、断熱性能の制御を容易とする。更には、塗膜の引っ張りや曲げ等に対する塗膜の強度、柔軟性をより高めることも可能である。
そして、上記実施の形態の断熱塗料組成物によれば、更に、熱膨張性マイクロカプセル及び/または発泡剤を含有することで、塗布作業性を低下させることなく、断熱性の向上が可能である。即ち、シリコーン樹脂に対し中空粒子を多量に配合していくと、塗料の粘性、流動性が低下するために、塗布作業性や塗布性の面からその配合量に限界が生じ、中空粒子のみでは断熱性の向上にも限界があるが、更に、中空粒子に加えて、熱膨張性マイクロカプセル及び/または発泡剤を併用することで、塗布作業性や塗布性を確保しつつ、塗膜の断熱性を高めることが可能である。
このように断熱性向上のために中空粒子と併用する熱膨張性マイクロカプセルまたは発泡剤は、成膜性の観点から、シリコーン樹脂100重量部に対し、20重量部以下が好ましい。より好ましくは、15重量部以下、更に好ましくは、13重量部以下であれば、高い断熱性と塗膜強度の両立が可能である。熱膨張性マイクロカプセル及び発泡剤の両方を用いた場合には、シリコーン樹脂100重量部に対し、熱膨張性マイクロカプセル及び発泡剤の合計量を25重量部以下とするのが好ましい。
また、上記実施の形態の断熱塗料組成物は、その粘度が1Pa・s/25℃以上、1000Pa・s/25℃以下の範囲内であるのが好ましい。組成物の粘度が低すぎると、フロアパネル本体部21に塗布する際にタレ落ち等が生じ厚塗りすることができない。一方で、組成物の粘度が高すぎても、塗布作業性が低下する。上記実施の形態の断熱塗料組成物の粘度が1Pa・s/25℃以上、1000Pa・s/25℃以下の範囲内であれば、タレ落ち等の不具合を生じさせることなくて塗布作業性が良好で、工程時間の短縮を可能とするロボットによる自動塗布も可能である。
特に、本発明者の実験研究によれば、好ましくは、断熱塗料組成物の粘度が10Pa・s/25℃以上、より好ましく30Pa・s/25℃以上であると、鋼板等からなるフロアパネル本体部21に対しての塗膜の付着性に優れ、硬化した塗膜も剥がれ難いものとなる。また、フロアパネル本体部21に対する塗膜の密着性も高くなり、フロアパネル本体部21の表面と塗膜との間にエンジンからの熱風等が入りこまない。このため、安定して高い断熱性能が得られ、フロアパネル本体部21の温度上昇抑制効果が高くなる。更に、好ましくは、断熱塗料組成物の粘度が500Pa・s/25℃以下の低粘度であれば塗布作業性に優れ、施工時間が短くて済む工程時間の短縮化が可能である。
また、上記実施の形態の断熱塗料組成物をフロアパネル本体部21に塗布し、硬化して得られた断熱塗膜は、シリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなるものであり、車両のフロアパネル(フロアパネル本体部21)の表面に形成されたものである。
上記実施の形態の断熱塗膜によれば、シリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなるから、シリコーン樹脂11によって排気管30からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を確保でき、また、鋼板等からなるフロアパネル本体部21の表面に対する接着性、密着性も良く、そして、シリコーン樹脂11の低熱伝導率及び中空粒子12,13Bによる断熱性によって、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の高い断熱効果を発揮できる。特に、シリコーン樹脂11によって高い耐熱性を有するから、排気管30等の高温の熱源の周囲に配置したときでも、断熱塗膜が溶融、熱劣化することなく、断熱性等の安定した塗膜性能を発揮する。更に、断熱塗膜の熱伝導率が低いから、塗膜自体の温度上昇も高くならないことで、フロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21のトンネル内壁面に塗膜を形成してもフロアパネル本体部21の熱負荷が少なくてフロアパネル本体部21を熱劣化させることなく、排気管30からの高熱を断熱にしてフロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に抑えることができる。
そして、このようにフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21のトンネル内壁面にシリコーン樹脂11及び中空粒子12,13Bからなる断熱塗膜を形成する断熱構造(図2参照)では、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)と異なり、フロアパネル本体部21の表面に対し隙間が設けられないので対流伝熱やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネル本体部21の温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)では、フロアパネル表面と間に隙間を設けたインシュレータの配置とし、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離でインシュレータを配置する必要があるのに対し、図2に示すフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の内壁面に断熱塗膜を形成する断熱構造では、断熱塗膜をフロアパネル本体部21に密着させて隙間を設けた配置とせず、更に、排気管30との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もない。よって、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネル40のトンネル開口部41の制約も少なくなり、フロアトンネル40の設計自由度を高めることができる。また、断熱塗膜が高い断熱性を有することで、フロアトンネル40のトンネル開口部41の縮小、省スペース化も可能である。
加えて、シリコーン樹脂と熱可塑性樹脂マイクロバルーン等を含有する断熱塗料組成物の1液の塗布のみでフロアパネルの表面に形成されたシリコーン樹脂11及び中空粒子12,13Bを含有する断熱塗膜は、高い断熱性及び耐熱性を有するから、それのみの単独層で、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保でき、塗布液の作製や施工に手間を要する複数の塗布液を使用した複合層と異なり、生産性良くフロアトンネル40の断熱構造を形成できる。即ち、このようにシリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなる断熱塗膜によれば、高い断熱性及び耐熱性を有し、その断熱塗膜のみで従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるものであり、塗料の設計工数、塗装工数が少なくて済むから、フロアトンネル40の断熱構造の形成が容易であり、コスト的にも安価で済む。
このようにして、高い耐熱性及び断熱性を備えて高温の熱源の周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、生産性良く断熱構造の形成を可能とする断熱塗膜となる。
特に、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の断熱塗膜を構成するシリコーン樹脂11が付加型シリコーン樹脂であると、塗布対象の鋼板等からなるフロアパネル本体部21の温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有する断熱塗膜を形成できる。よって、断熱塗膜のひび割れ、亀裂、皺等が防止され、塗膜の安定した断熱性能を得ることができる。
また、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の断熱塗膜に含まれる中空粒子12,13Bが樹脂マイクロバルーンであると、断熱塗膜の軽量性(低比重化)に優れる。更に、耐熱性及び弾力性も高く、特に、実施例1乃至実施例3で使用したような熱可塑性樹脂からなるシェル表面に炭酸カルシウム等の無機粉体をコーティングした熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、耐圧性や弾力性に優れ、断熱塗膜において安定して所定の空隙率を確保し安定した断熱効果を発揮でき、また、断熱性能の制御を容易とする。更には、塗膜の引っ張りや曲げ等に対する塗膜の強度、柔軟性をより高めることも可能である。
そして、上記実施の形態の断熱塗膜は、その熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内が好ましく、熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内の断熱塗膜では、その乾燥膜厚が、例えば、30mm以下の薄い膜厚で、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できてフロアパネルの温度上昇を抑制する効果が高く、また、断熱構造の省スペース化効果も高い、更に、軽量性にも優れる。特に、断熱塗膜を形成するための塗料において、シリコーン樹脂11に対し熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等を多量に配合していくと、塗料の粘性、流動性が低下するために、塗布作業性や塗布性の面からその配合量に限界が生じ、熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等のみでは断熱性の向上にも限界があるが、熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等に加えて気泡14Bを形成するための発泡剤13を併用することで、塗布作業性や塗布性を確保しつつ、塗膜の断熱性を高めることが可能であるから、中空粒子12,13Bに加え気泡14を含有してなる断熱塗膜では、より高い断熱性が得られる。また、気泡14Bを含有したものでは、軽量効果が高くなる。
更に、上記実施の形態の断熱塗膜は、その膜厚が0.1mm〜30mmの範囲内が好ましい。断熱塗膜の膜厚が0.1mm〜30mmの範囲内であれば、所望の断熱効果を得てトンネル開口部41の空間の制約を少なくし、更に、塗布性も良好で軽量性にも優れる。
そして、上記実施の形態は、車両のフロアパネル本体部21の表面に対し、シリコーン樹脂11に中空粒子12,13を含有してなる断熱層10が形成された車両用フロアパネル20の発明と捉えることもできる。
上記実施の形態の車両用フロアパネル20によれば、車両のフロアパネル本体部21の表面に対し、シリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなる断熱層10が形成されているから、断熱層10のシリコーン樹脂11によって排気管30からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を確保でき、また、鋼板等からなるフロアパネル本体部21の表面に対する接着性、密着性も良く、そして、シリコーン樹脂11の低熱伝導率及び中空粒子12,13Bによる断熱性によって、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の高い断熱効果を発揮できる。特に、シリコーン樹脂11によって高い耐熱性を有するから、排気管30等の高温の熱源の周囲に断熱層10を形成したときでも、断熱層10が溶融、熱劣化することなく、断熱性等の安定した性能を発揮する。更に、断熱層10の熱伝導率が低いから、断熱層10自体の温度上昇も高くならないことで、フロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21のトンネル内壁面に断熱層10を形成してもフロアパネル本体部21を熱劣化させることなく、排気管30からの高熱を断熱にしてフロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に抑えることができる。
そして、このようにフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21のトンネル内壁面にシリコーン樹脂11及び中空粒子12,13Bからなる断熱層10を形成する断熱構造(図2参照)では、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)と異なり、フロアパネル本体部21の表面に対し隙間が設けられないので対流伝熱やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネル本体部21の温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)では、フロアパネル表面と間に隙間を設けたインシュレータの配置とし、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離でインシュレータを配置する必要があるのに対し、図2に示すフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の内壁面に断熱層10を形成する断熱構造では、断熱層10をフロアパネル本体部21に密着させて隙間を設けた配置とせず、更に、排気管30との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もない。よって、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネル40のトンネル開口部41の制約も少なくなり、フロアトンネル40の設計自由度を高めることができる。また、断熱層10が高い断熱性を有することで、フロアトンネル40のトンネル開口部41の縮小、省スペース化も可能である。
加えて、シリコーン樹脂11及び中空粒子12,13Bを含有する断熱層10は、高い断熱性及び耐熱性を有するから、それのみの単独層で、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保でき、塗布液の作製や施工に手間を要する複数の塗布液等を使用して形成される複合層と異なり、生産性良くフロアトンネル40の断熱構造を形成できる。即ち、このようにシリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなる断熱層10によれば、高い断熱性及び耐熱性を有し、その断熱層10のみで従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるものであり、断熱構造を形成する設計工数、塗装工数が少なくて済むから、フロアトンネル40の断熱構造の形成が容易である。コスト的にも安価で済む。
このようにして、高い耐熱性及び断熱性を備えた断熱層10によって高温の熱源の周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、生産性良く断熱構造の形成を可能とする車両用フロアパネル20となる。
特に、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の車両用フロアパネル20の断熱層10を構成するシリコーン樹脂11が付加型シリコーン樹脂であると、鋼板等からなるフロアパネル本体部21の温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有するから、断熱層10でのひび割れ、亀裂、皺等が防止され、安定した断熱性能を得ることができる。
また、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の車両用フロアパネル20の断熱層10に含まれる中空粒子12,13Bが樹脂マイクロバルーンであると、断熱層10の軽量性(低比重化)に優れる。特に、実施例1乃至実施例3で使用したような熱可塑性樹脂からなるシェル表面に炭酸カルシウム等の無機粉体をコーティングした熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、耐圧性や弾力性に優れ、断熱層10において安定して所定の空隙率を確保し安定した断熱効果を発揮でき、また、断熱性能の制御を容易とする。更には、断熱層10の引っ張りや曲げ等に対する強度、柔軟性をより高めることも可能である。
更に、上記実施の形態の車両用フロアパネル20の断熱層10は、その熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内が好ましく、熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内の断熱層10では、その厚さが、例えば、30mm以下の薄い厚さで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できてフロアパネルの温度上昇を抑制する効果が高く、また、断熱構造の省スペース化効果も高い、更に、軽量性にも優れる。特に、断熱層10を塗料の塗布により形成する場合、その塗料において、シリコーン樹脂11に対し熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等を多量に配合していくと、塗料の粘性、流動性が低下するために、塗布作業性や塗布性の面からその配合量に限界が生じ、熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等のみでは断熱性の向上にも限界があるが、熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等に加えて気泡14Bを形成するための発泡剤13を併用することで、塗布作業性や塗布性を確保しつつ、塗膜の断熱性を高めることが可能であるから、中空粒子12,13Bに加え気泡14を含有してなる断熱塗膜では、より高い断熱性が得られる。また、気泡14Bを含有したものでは、軽量効果が高くなる。
更にまた、上記実施の形態の車両用フロアパネル20の断熱層10は、その厚さが0.1mm〜30mmの範囲内が好ましい。断熱層10の厚さが0.1mm〜30mmの範囲内であれば、所望の断熱効果を得てトンネル開口部41のトンネル空間の制約を少なくし、更に、軽量性にも優れる。
そして、上記実施の形態は、車体の前後方向に沿って車体上方側の車室側に突出したトンネル状のフロアパネル本体部21と、フロアパネル本体部21の車体の下方側に開口形成されたトンネル開口部41内に収納された排気管30と、排気管30の周囲でフロアパネル本体部21のトンネルの内壁面上に形成され、シリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなる断熱層10とを具備する車両のフロアトンネル40構造の発明として捉えることもできる。
上記実施の形態の車両のフロアトンネル40構造によれば、車体の前後方向に沿って車体上方側の車室側に突出してトンネル状としたフロアパネル本体部21において、車体下方側に向かって開口形成されたトンネル開口部41内に収容された排気管30の周囲でトンネル内壁面に対しシリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなる断熱層10を形成したことから、断熱層10のシリコーン樹脂11によって排気管30からの高熱にも耐え得る高い耐熱性を確保でき、また、鋼板等からなるフロアパネル本体部21の表面に対する接着性、密着性も良く、そして、シリコーン樹脂11の低熱伝導率及び中空粒子12,13Bによる断熱性によって、例えば、熱伝導率が0.08W/(m・k)以下の高い断熱効果を発揮できる。特に、シリコーン樹脂11によって高い耐熱性を有するから、排気管30等の高温の熱源の周囲に断熱層10を形成したときでも、断熱層10が溶融、熱劣化することなく、断熱性等の安定した性能を発揮する。更に、断熱層10の熱伝導率が低いから、断熱層10自体の温度上昇も高くならないことで、フロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21のトンネル内壁面に断熱層10を形成してもフロアパネル本体部21を熱劣化させることなく、排気管30からの高熱を断熱にしてフロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に抑えることができる。
そして、このようにフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21のトンネル内壁面にシリコーン樹脂11及び中空粒子12,13Bからなる断熱層10を形成する断熱構造(図2参照)では、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)と異なり、フロアパネル本体部21の表面に対し隙間が設けられないので対流伝熱やエンジンからの熱風を直接受けることによるフロアパネル本体部21の温度上昇を抑えることもできる。また、従来のインシュレータを用いた断熱構造(図6参照)では、フロアパネル表面と間に隙間を設けたインシュレータの配置とし、更に、排気管との間で干渉音を考慮した距離でインシュレータを配置する必要があるのに対し、図2に示すフロアトンネル40を形成するフロアパネル本体部21の内壁面に断熱層10を形成する断熱構造では、断熱層10をフロアパネル本体部21に密着させて隙間を設けた配置とせず、更に、排気管30との間で干渉音を考慮した距離を設ける必要もない。よって、断熱構造の省スペース化を可能とし、フロアトンネル40のトンネル開口部41の制約も少なくなり、フロアトンネル40の設計自由度を高めることができる。また、断熱層10が高い断熱性を有することで、フロアトンネル40のトンネル開口部41の縮小、省スペース化も可能である。
加えて、シリコーン樹脂11及び中空粒子12,13Bを含有する断熱層10は、高い断熱性及び耐熱性を有するから、それのみの単独層で、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保でき、塗布液の作製や施工に手間を要する複数の塗布液等を使用して形成される複合層と異なり、生産性良くフロアトンネル40の断熱構造を形成できる。即ち、このようにシリコーン樹脂11に中空粒子12,13Bを含有してなる断熱層10によれば、高い断熱性及び耐熱性を有し、その断熱層10のみで従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できるものであり、断熱構造を形成する設計工数、塗装工数が少なくて済むから、フロアトンネル40の断熱構造の形成が容易である。コスト的にも安価で済む。
このようにして、高い耐熱性及び断熱性を備えた断熱層10によって高温の熱源の周囲の断熱構造の省スペース化を可能とし、生産性良く断熱構造の形成を可能とする車両のフロアトンネル40構造となる。
特に、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の車両のフロアトンネル40構造の断熱層10を構成するシリコーン樹脂11が付加型シリコーン樹脂であると、鋼板等からなるフロアパネル本体部21の温度変化に起因する熱膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を有するから、断熱層10でひび割れ、亀裂、皺等が防止され、安定した断熱性能を得ることができる。
また、上記実施例1乃至実施例3で示したように、上記実施の形態の車両のフロアトンネル40構造の断熱層10に含まれる中空粒子12,13Bが樹脂マイクロバルーンであると、断熱層10の軽量化(低比重化)が可能である。特に、実施例1乃至実施例3で使用したような熱可塑性樹脂からなるシェル表面に炭酸カルシウム等の無機粉体をコーティングした熱可塑性樹脂マイクロバルーンでは、耐圧性や弾力性に優れ、断熱層10において安定して所定の空隙率を確保し安定した断熱効果を発揮でき、また、断熱性能の制御を容易とする。更には、断熱層10の引っ張りや曲げ等に対する強度、柔軟性をより高めることも可能である。
更に、上記実施の形態の車両のフロアトンネル40構造の断熱層10は、その熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内が好ましく、熱伝導率が0.03W/(m・K)〜0.08W/(m・K)の範囲内の断熱層10では、その厚さが、例えば、30mm以下の薄い厚さで、従来のインシュレータを用いた断熱構造と同等以上の断熱性を確保できてフロアパネルの温度上昇を抑制する効果が高く、また、断熱構造の省スペース化効果も高い、更に、軽量性にも優れる。特に、断熱層10を塗料の塗布により形成する場合、その塗料において、シリコーン樹脂11に対し熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等を多量に配合していくと、塗料の粘性、流動性が低下するために、塗布作業性や塗布性の面からその配合量に限界が生じ、熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等のみでは断熱性の向上にも限界があるが、熱可塑性樹脂マイクロバルーン12等に加えて気泡14Bを形成するための発泡剤13を併用することで、塗布作業性や塗布性を確保しつつ、塗膜の断熱性を高めることが可能であるから、中空粒子12,13Bに加え気泡14を含有してなる断熱塗膜では、より高い断熱性が得られる。更に、気泡14Bを含有したものでは、軽量効果が高くなる。
また、上記実施の形態の車両のフロアトンネル40構造の断熱層10は、その厚さが0.1mm〜30mmの範囲内が好ましい。断熱層10の厚さが0.1mm〜30mmの範囲内であれば、所望の断熱効果を得てトンネル開口部41のトンネル空間の制約を少なくし、更に、軽量性にも優れる。
なお、上記実施の形態では、フロアトンネル本体部21の表面に形成した断熱層10は、シリコーン樹脂及び中空粒子を含有した断熱塗料組成物から形成された断熱塗膜からなるものであるが、本発明を実施する場合には、例えば、フロアトンネル40に断熱層10を形成するための所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有した液状物を流し込むことでフロアパネル本体部21に断熱層10を形成してもよいし、所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有した液状物にフロアパネル本体部21を浸漬させてフロアパネル本体部21の表面に断熱層10を形成してもよいし、所定のシリコン樹脂及び中空粒子を含有したシート状等の成形品をフロアパネル本体部21の表面に接合することで断熱層10を形成してもよい。これによっても、シリコーン樹脂11及び中空粒子12を含有した断熱層10による高い断熱効果を得て、フロアパネル本体部21の温度上昇を効果的に抑制することができる。
本発明を実施するに際しては、断熱塗料組成物、断熱塗膜、フロアパネル20、フロアトンネル40構造のその他の構成、成分、材料、配合、形状、大きさ、製造方法等について、本実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で上げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更しても実施を否定するものではない。