WO2021095686A1 - 吸音材 - Google Patents

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大谷 淳
修 岡山
杉浦 健二
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アイシン化工株式会社
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Abstract

【課題】薄い厚みでも、中周波数域から高周波数域に亘る幅広い周波数域における吸音特性が高いこと。 【解決手段】吸音材は、独立気泡を有し25%圧縮時の圧縮応力が2~30kPaの範囲内である発泡体に対し、50~95%の範囲内の圧縮率とする圧縮力を付与することで、気泡が連通化されて圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡との気泡構造を有し、比重が0.08~0.4の範囲内で、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内としたものである。

Description

吸音材
 本発明は、自動車の車両等に使用される防音材として騒音等を吸収する吸音材に関するもので、特に、例えば、1000~6000Hzの中・高周波数域の吸音特性に優れた吸音材に関するものである。
 近年、自動車の低燃費化のための車両の軽量化に伴い騒音対策が重視されている。また、自動車の高級化、高性能化、快適性の要求により車室内の静粛性の向上も望まれている。更に、自動車の車外騒音においても、その規制が厳しくなる一方にあり、自動車から近隣住民に排出される車外騒音の低減化の要望が高くなっている。こうした背景により、自動車における騒音の低減対策が急務となっている。
 自動車の騒音現象を低減する対策としては、従来、例えば、エンジン等から発生する騒音の漏出を抑制するために、ダッシュパネル等において、グラスウール、フェルト等の繊維材料や軟質ウレタンフォームからなるシート状の多孔質吸音材が取付けられている。
 これらグラスウール、フェルト等の繊維材料や軟質ウレタンフォームからなる多孔質吸音材においては、例えば、10mm程度の薄い厚さであると、4000Hz超の高周波数域における吸音率は高くあるも、それ以下の周波数域の吸音率は低いものであった。厚みを厚くしたり、多層構造にしたり、或いは、背後空気層を設けたり(即ち、吸音材と設置面との間に空気層を介在させたり)することにより中周波数域以下の吸音率を上げることができるも、嵩高による設置スペースの大型化や重量の増大を招いて適用範囲、設置が制約される問題もあり、中周波数域以下において十分に高い吸音率が得られなかった。
 このため、グラスウール、フェルト等の繊維材料や軟質ウレタンフォームからなる従来の多孔質吸音材のみでは、自動車から発せられる広範囲の周波数域の騒音に対して、その吸音が不十分である。特に、自動車においてエンジンノイズ、ロードノイズ等の車外音や車内音の中心ノイズ、また、加速時やトランスミッション変動時等の騒音が、高周波数域から外れること、そして、人間の耳の感度が中周波数域から高周波数域(2000~6000Hz)で高くなっていることからして、中周波数域に対しても高い吸音特性を示す吸音材の存在が強く望まれている。
 ここで、特許文献1では、連続気泡を形成する母材樹脂と、母材樹脂に分散され独立気泡を形成する膨張した有機中空粒子との構成により、薄く軽量であり、広い周波数域で高い吸音性を有し、かつ、遮音性に優れる吸音材を開示している。この特許文献1の記載によれば、実施例において、連続気泡を形成する母材樹脂と、母材樹脂に分散され独立気泡を形成する膨張した平均粒径が0.1~3000μmの有機中空粒子とからなる厚み1mmの発泡体のフィルムを厚さ10mmの不織布に接着した試験体の垂直入射吸音率の測定で、2000~4000Hzの周波数域における吸音率が81~92%となっている。
特開2010-2617号公報
 ところが、特許文献1では、吸音材としての発泡体のフィルムを不織布と組み合わせた試験体での吸音率の測定結果であり、発泡体のフィルム単独での吸音特性は高くないものと予測される。
 そこで、本発明は、薄い厚みでも、中周波数域から高周波数域に亘る幅広い周波数域における吸音特性が高い吸音材の提供を課題とするものである。
 請求項1の発明の吸音材は、独立気泡を有し樹脂、エラストマまたはゴムからなる発泡体に対し圧縮力を付与したことにより、前記圧縮により連通化した気泡と前記独立気泡との混成の気泡構造を有するものである。
 ここで、上記独立気泡を有する発泡体とは、気泡が独立気泡のみのものに限定されず、発泡過程における気泡の成長で繋がった連続気泡を含んでいてもよく、独立気泡及び連続気泡を含む場合、好ましくは、全気泡のうち10%以上、より好ましくは、20%以上、更に好ましくは、30%以上が独立気泡であればよい。
 また、上記圧縮力の付与は、樹脂、エラストマまたはゴムからなる発泡体の厚み方向に、即ち、発泡体の表裏面に対し垂直方向に外力、押圧力を加えたことを意味し、外力を加えて厚みを小さくし圧縮変形させるも、その圧縮状態が固定されること、圧縮成形することを意味するものではなく、気泡を連通させる圧縮荷重が加えられたことを特定するものである。圧縮力を付与する方法は、気泡の連通化が可能であれば、特に問われず、例えば、平板やロールで押圧する等の機械的応力により気泡を連通させることができる。このような機械的応力による気泡の連通化では、例えば、100μm以上の気泡の連通化を可能とする。また、エアー加圧や真空引き等により圧縮力を付与してもよい。即ち、上記圧縮力は、平板プレスやロールプレス等の加重に限定されず、エアー加圧や真空引き等の加圧または減圧による荷重を含む広義の外力、押圧力の概念である。
 上記樹脂、エラストマまたはゴムからなる発泡体の樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂等が使用でき、エラストマとしては、熱可塑性エラストマ等を使用でき、ゴムとしては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等を使用できる。
 そして、上記圧縮により連通化した気泡及び前記独立気泡を有するとは、前記圧縮力の付与により隣接する気泡間の気泡壁、骨格、気泡膜の一部が破れて互いに気泡同士が連通化した連通気泡と、前記圧縮力を付与したときでも隣接する気泡と連通することのなかった独立気泡、即ち、圧縮力付与前から独立して単独で存在していた単独気泡とが混成、併存していることを意味し、圧縮力付与により圧縮前に存在していた気泡のうちその一部が連通化したことを意味する。独立気泡及び連続気泡を含む発泡体に圧縮力を付与した場合には、圧縮により連通化した気泡は、連続気泡同士の連通、独立気泡同士の連通、または、独立気泡と連続気泡の連通が含まれることになり、いずれの連通化によっても中周波数域における吸音特性を向上させる気泡として機能する。
 請求項2の発明の吸音材は、25%圧縮時の圧縮応力が2kPa以上、30kPa以下の範囲内、好ましくは、3kPa以上、25kPa以下の範囲内、より好ましくは、4kPa以上、20kPa以下の範囲内である前記発泡体に対して前記圧縮力を付与したものである。
 ここで、上記25%圧縮時の圧縮応力(kPa)は、20mm角×10mm厚に切り出した試験片を圧縮試験機にて加圧平板(φ15)を用い圧縮速度10mm/分で初めの厚みの25%分(2.5mm)を圧縮、即ち、初めの厚みに対し75%の厚み(7.5mm厚)になるまで圧縮したときの応力(N)を測定し、当該応力(N)を単位面積(cm)当たりに換算することにより求めたものである。
 請求項3の発明の吸音材の前記圧縮力は、前記発泡体に対して圧縮率が、好ましくは、50%以上、95%以下、より好ましくは、70%以上、95%以下、更に好ましくは、80%以上、95%以下となるようにプレスしたものである。
 上記圧縮率が50%~95%とは、圧縮力付与前の厚み(見掛け厚み)の50%~95%を圧縮すること、即ち、圧縮力付与前の厚みに対し5%~50%の厚みになるまで圧縮力を付与することを意味する。
 請求項4の発明の吸音材の前記発泡体は、2液付加反応硬化型のシリコーン材料を発泡、硬化してなるものであり、2液付加反応硬化型のシリコーン材料を被塗布物に塗布した後、常温下でまたは加熱処理により、シリコーン材料が反応して発泡、硬化することで形成されたものである。
 請求項5の発明の吸音材は、独立気泡及び連通した気泡を有し、比重が、0.08以上、0.4以下、好ましくは、0.09以上、0.3以下、より好ましくは、0.1以上、0.25以下の範囲内であり、25%圧縮時の圧縮応力が、好ましくは、2kPa以上、4.8kPa以下、より好ましくは、2.2kPa以上、4.7kPa以下、更に好ましくは、2.5kPa以上、4.6kPa以下の範囲内である樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなるものである。
 ここで、上記25%圧縮時の圧縮応力(kPa)は、20mm角×10mm厚に切り出した試験片を圧縮試験機にて加圧平板(φ15)を用い圧縮速度10mm/分で初めの厚みの25%分(2.5mm)を圧縮、即ち、初めの厚みに対し75%の厚み(7.5mm厚)になるまで圧縮したときの応力(N)を測定し、当該応力(N)を単位面積(cm)当たりに換算することにより求めたものである。
 上記樹脂、エラストマまたはゴムからなる発泡体の樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂等が使用でき、エラストマとしては、熱可塑性エラストマ等を使用でき、ゴムとしては、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等を使用できる。
 請求項6の発明の吸音材は、樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなる吸音材であって、独立気泡及び連通した気泡を有し、前記吸音材の表面の気泡を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察した際に、開口形状が全体的に丸い円形の気泡よりも、開口周囲に皺部または捲れ部を有したり、角部または尖頭部がある開口形状を有したりする気泡が主体であるものである。
 上記開口周囲に皺部または捲れ部を有したり、角部または尖頭部がある開口形状を有したりする気泡とは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)観察で得られたSEM画像(300倍~2000倍)において、開口(穴)の周囲が二重または幾重かの筋目になっていたり、開口の周囲端が巻かれたように捲れあがっていたり、開口形状に窪みがあり角部や尖頭部を有したりするものである。特に、本発明者らは、開口(穴)の周囲が二重または幾重かの筋目になっていたり、開口の周囲端が巻かれたように捲れあがっていたりする部分では、走査型電子顕微鏡(SEM)の観察により細かな孔が複数形成されていることも確認している。なお、気泡の開口周囲の皺部または捲れ部や、角部または尖頭部がある開口形状は、主に、圧縮力が付与された気泡の座屈変形や気泡壁の破泡により生じたものと推測される。
 そして、上記開口周囲に皺部または捲れ部を有したり、角部または尖頭部がある開口形状を有したりする気泡が主体とは、全気泡の50%以上、好ましくは、60%以上、より好ましく70%以上を、開口周囲に皺部や捲れ部を有したり、角部や尖頭部がある開口形状を有したりする気泡が占めていることを意味する。それ以外は、開口形状が全体的に略丸い円形の気泡である。
 請求項7の発明の吸音材の前記発泡体は、シリコーンからなるものである。
 上記シリコーンは、ケイ素と酸素からなるシロキサン結合を主鎖(無機)とし、そのケイ素にメチル基を主体とする有酸基が結合したポリマーであり、室温でゴム弾性を有するエラストマであるシリコーンゴム、またはシリコーン樹脂の総称である。
 請求項8の発明の吸音材の前記発泡体は、前記独立気泡及び前記連通気泡の平均セル径が、好ましくは、100μm以上、2000μm以下、より好ましくは、150μm以上、1800μm以下、更に好ましくは、200μm以上、1500μm以下の範囲内であり、前記気泡壁の平均厚みが、好ましくは、0.5μm以上、40μm以下、より好ましくは、0.6μm以上、35μm以下、更に好ましくは、0.7μm以上、30μm以下の範囲内のものである。
 ここで、上記気泡の平均セル径は、マイクロスコープ(100倍~200倍)により吸音材の断面を観察して、表層側及び内部側の2個所(例えば、厚み10mmの吸音材の場合には表面から約2mm程度の深さ位置の箇所と5mm程度の深さ位置の箇所)から任意の各20個の気泡のセル径(直径に相当)を測定し、その平均を算出することにより求めるものである。なお、独立気泡の場合にはその単独セルの最大径(最大幅)を測定し、また、連通した気泡の場合には、セル単位の連通とみなしてそのセル単位の最大径(最大幅)を測定したものである。
 上記気泡壁の平均厚みも、マイクロスコープ(100倍~200倍)により吸音材の断面を観察して、任意の20箇所で隣接する気泡間(但し、3つ以上の気泡が隣接するプラトー境界は除く)の距離長さ(最大幅)を測定しその平均を算出することにより求めるものである。
 請求項9の発明の吸音材の前記発泡体は、10mm厚さでの測定における1250Hz~4000Hzの周波数域における垂直入射吸音率が、0.45以上であり、かつ、その1250Hz~4000Hzの周波数域における最大吸音率が0.5以上、より好ましくは、0.85以上であるものであり、人間の耳の聞き取りやすい周波数で高い吸音特性を示すものである。
 なお、垂直入射吸音率の測定は、JIS A 1405-2に準拠して測定されたものである。
 請求項1の発明に係る吸音材によれば、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与したことより連通した気泡と前記独立気泡とが混成した気泡構造を有する。
 本発明者らは、人の耳の感度が高い中周波数域の音に対しても高い吸音率を示す吸音材を得るべく鋭意実験研究を重ねた結果、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与して気泡を連通化させて、圧縮により連通化した気泡と独立気泡との気泡構造とすることで、中周波数域における吸音率が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
 即ち、圧縮により連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造を有することで、気泡壁、骨格や圧縮により連通した気泡内の気泡膜との摩擦、粘性・通気抵抗による吸音効果、樹脂、ゴムまたはエラストマからなる母材の膜振動、共鳴による吸音効果、気泡の共鳴、特に、圧縮により連通化した気泡内における膜振動、共鳴による吸音効果等によって、中周波数域における吸音特性を高くでき、中周波数から高周波数に亘る幅広い周波数域において高い吸音特性が得られるものである。更に、吸音率を高くしても、圧縮により連通した気泡と独立気泡との気泡構造であることで、遮音率も高く、吸音率と遮音率が両立する。よって、騒音の拡散を効果的に防止することが可能である。
 請求項2の発明に係る吸音材によれば、25%圧縮時の圧縮応力が2~30kPaの範囲内である前記発泡体に対し前記圧縮力を付与したものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、気泡の連通率を高くして、中周波数域の吸音率を高めることができる。
 請求項3の発明に係る吸音材によれば、前記発泡体に対し、圧縮率が50~95%となるようにプレスしたことから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、中周波数域の吸音率を更に高めることができる。
 請求項4の発明に係る吸音材によれば、前記発泡体は2液付加反応硬化型のシリコーン材料を発泡、硬化してなるものであるから、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、自動塗布を可能とし施工の手間を簡易化できる。
 請求項5の発明に係る吸音材によれば、連通した気泡と独立気泡を有し、比重が0.08~0.4の範囲内で、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内である。
 本発明者らは、人の耳の感度が高い中周波数域の音に対しても高い吸音率を示す吸音材を得るべく鋭意実験研究を重ねた結果、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与して気泡を連通化させて、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造で、比重が0.08~0.4の範囲内で、かつ、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内であるものは、中周波数域における吸音率が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
 即ち、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造であり、比重が0.08~0.4の範囲内で、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内であるものは、圧縮により連通した気泡を含むものであり、気泡壁、骨格や圧縮により連通した気泡内の気泡膜との摩擦、粘性・通気抵抗による吸音効果、樹脂、ゴムまたはエラストマからなる母材の膜振動、共鳴による吸音効果、気泡の共鳴、特に、圧縮により連通化した気泡内における膜振動、共鳴による吸音効果等によって、中周波数域における吸音特性を高くでき、中周波数から高周波数に亘る幅広い周波数域において高い吸音特性が得られるものである。更に、吸音率を高くしても、圧縮により連通した気泡と独立気泡との気泡構造であることで、遮音率も高く、吸音率と遮音率が両立する。よって、騒音の拡散を効果的に防止することができる。
 請求項6の発明の吸音材によれば、樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなる吸音材であって、独立気泡及び連通した気泡を有し、前記吸音材の表面の気泡を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察した際に、開口周囲に皺部や捲れ部を有したり、角部や尖頭部がある開口形状を有したりする気泡が主体であるものである。
 本発明者らは、人の耳の感度が高い中周波数域の音に対しても高い吸音率を示す吸音材を得るべく鋭意実験研究を重ねた結果、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与して気泡を連通化させて、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造で、前記吸音材の表面の気泡を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察した際に、開口周囲に皺部または捲れ部を有したり、角部または尖頭部がある開口形状を有したりする気泡が主体であるものは、中周波数域における吸音率が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
 即ち、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造であり、前記吸音材の表面の気泡を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察した際に、開口周囲に皺部または捲れ部を有したり、角部または尖頭部がある開口形状を有したりする気泡が主体であるものは、圧縮により連通した気泡を含むものであり、気泡壁、骨格や圧縮により連通した気泡内の気泡膜との摩擦、粘性・通気抵抗による吸音効果、樹脂、ゴムまたはエラストマからなる母材の膜振動、共鳴による吸音効果、気泡の共鳴、特に、圧縮により連通化した気泡内における膜振動、共鳴による吸音効果等によって、中周波数域における吸音特性を高くでき、中周波数から高周波数に亘る幅広い周波数域において高い吸音特性が得られるものである。更に、吸音率を高くしても、圧縮により連通した気泡と独立気泡との気泡構造であることで、遮音率も高く、吸音率と遮音率が両立する。よって、騒音の拡散を効果的に防止することができる。
 請求項7の発明に係る吸音材によれば、シリコーン発泡体からなるものであるから、請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の効果に加えて、耐熱性が高く、高熱源の周囲への施工でも高い吸音効果が得られ、施工の適用範囲を広くできる。更には、中周波数域における吸音率に優れ、最大吸音率を高くできる。
 請求項8の発明に係る吸音材によれば、前記独立気泡及び連通した気泡の平均セル径が、100~2000μmの範囲内であり、気泡壁の平均厚みが0.5~40μmの範囲内であるから、適度な気泡率及び比重となる。したがって、請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の効果に加えて、吸音特性及び遮音性に優れ、騒音防止効果を向上できる。
 請求項9の発明に係る吸音材によれば、10mm厚さでの測定における1250Hz~4000Hzの周波数域における垂直入射吸音率が、0.45以上であり、かつ、その1250Hz~4000Hzの周波数域における最大吸音率が0.5以上であるから、人が聞き取りやすい周波数帯での高い吸音特性により、請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の効果に加えて、自動車等における車外騒音にも効果的であり、周囲に対する騒音の拡散の抑制効果が高いものである。
図1は、本発明の実施の形態に係る実施例1の吸音材の断面のCT(Computed tomography)画像である。 図2(a)は、本発明の実施の形態に係る実施例1の吸音材の断面のマイクロスコープ画像(×100)であり、図2(b)は、本発明の実施の形態に係る実施例1の吸音材の断面のマイクロスコープ画像(×200)であり、図2(c)は、本発明の実施の形態に係る実施例1の吸音材の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図3は、本発明の実施の形態に係る実施例2の吸音材の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図4は、本発明の実施の形態に係る実施例4の吸音材の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図5(a)は、本発明の実施の形態に係る実施例5の吸音材の断面のマイクロスコープ画像(×100)であり、図5(b)は、本発明の実施の形態に係る実施例5の吸音材の断面のマイクロスコープ画像(×200)であり、図5(c)は、本発明の実施の形態に係る実施例5の吸音材の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図6(a)は、比較例1のシリコーン発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×100)であり、図6(b)は、比較例1のシリコーン発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×200)であり、図6(c)は、比較例1のシリコーン発泡体の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図7(a)は、比較例2のシリコーン発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×100)であり、図7(b)は、比較例2のシリコーン発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×200)であり、図7(c)は、比較例2のシリコーン発泡体の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図8(a)は、比較例3のEPDM発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×100)であり、図8(b)は、比較例3のEPDM発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×200)であり、図8(c)は、比較例3のEPDM発泡体の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図9(a)は、比較例4のEPDM発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×100)であり、図9(b)は、比較例4のEPDM発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×200)であり、図9(c)は、比較例4のEPDM発泡体の表面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図10は、比較例5のメラミン発泡体の断面のマイクロスコープ画像(×100)である。 図11は、本発明の実施の形態に係る実施例1乃至実施例5の吸音材の垂直入射吸音率の測定結果を、比較例1乃至比較例6と比較して示したグラフである。 図12は、本発明の実施の形態に係る実施例1の吸音材の透過損失の測定結果を、比較例6と比較して示したグラフである。 図13は、シリコーン材料を型内で発泡硬化させるとき断面説明図である。 図14は、型内で発泡硬化させるシリコーン材料の厚み(ウェット膜厚)を変化させたときの吸音材の垂直入射吸音率の周波数特性を示すグラフである。 図15は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、その表面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×100)である。 図16は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、図15で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×400~500)である。 図17は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、図15で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×500)である。 図18は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、図15で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×500~600)である。 図19は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、図15で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×800~1000)である。 図20は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、図15で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×1000)である。 図21は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、その表面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×100)である。 図22は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、図21で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×300)である。 図23は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、図21で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×400)である。 図24は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、図21で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×500~600)である。 図25は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、図21で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×600~800)である。 図26は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、図21で示したSEM画像中の各気泡を走査型電子顕微鏡で更に拡大観察したときのSEM画像(×800~1200)である。 図27(a)は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、その内部断面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×15)であり、図27(b)は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、その内部断面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×50)であり、図27(c)は、独立気泡型のシリコーン発泡体(比較例1に相当)について、その表層断面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×100)である。 図28(a)は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、その内部断面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×15)であり、図28(b)は、独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、その内部断面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×50)であり、図28(c)は、独独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる本発明の実施の形態に係る吸音材(実施例1乃至実施例4に相当)について、その表層側の断面を走査型電子顕微鏡で観察したときのSEM画像(×100)である。
 以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
 本発明の実施の形態に係る吸音材は、連通した気泡及び独立気泡の混成の気泡構造を有する樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなり、特に、連通した気泡は、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与することによって連通化させたものである。
 本実施の形態では、独立気泡を含む発泡体に対し、平板プレスやロールプレス等の機械的応力により常温下で圧縮力を付与することで、例えば、100μm以上のセル径の気泡を連通化させ、その圧縮により連通化した気泡と、圧縮で連通化されなかった独立気泡とを有する樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなる吸音材としている。
 このように樹脂、エラストマまたはゴムからなり独立気泡を含んだ発泡体に対し、圧縮力を付与することにより気泡同士を連通させて、圧縮により連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造とした吸音材について、その吸音率を測定すると、圧縮力付与前と比較し、広範囲の周波数域で吸音率が上昇し、特に、人の耳の感度が高い1250Hz~4000Hzの中周波数域における吸音率が高くなり、中周波数域から高周波数域に亘る広帯域の周波数域で高い吸音特性を示した。
 こうした独立気泡を有する発泡体に対し圧縮力を付与することにより気泡同士を連通させて、圧縮により連通化した気泡と独立気泡とを有する吸音材において、中周波数域の吸音率が高くなる理由については、必ずしも明らかではないが、以下のことが考えられる。
 即ち、連通した気泡の存在によって、つまり、多孔質構造によって、伝播した音が連通気泡を移動する際に、その気泡の周壁に対して摩擦、粘性抵抗が生じることにより、また、気泡内の空気や母材(樹脂、エラストマまたはゴム)の振動が生じることにより音が減衰することに加え、圧縮力を付与して気泡同士を連通させた連通気泡では、例えば、図1のCT画像や図2(b)のマイクロスコープ画像で示すように、連通した気泡同士の界面で連通孔2の両側に、例えば、厚みが1~20μmの薄い気泡膜1が形成されやすく、その薄い気泡膜1の膜振動、共鳴や、気泡膜1を有する連通気泡内での干渉により音が減衰されること、また、その気泡膜1の存在により音が連通気泡を移動する際に摩擦、粘性抵抗が生じることにより、更には、空気の流れ抵抗値が高まることや空気の流れ抵抗が変化することにより音の減衰が生じることが考えられる。
 特に、このように独立気泡を有する発泡体に対し圧縮力を付与して気泡を連通化させたものでは、隣接する気泡間に存在する固化した母材のポリマー相が圧縮力によって物理的に引き伸ばされて破れることで気泡同士が連通されることから、即ち、ポリマーの分子鎖が絡み合っている硬いポリマー相の気泡壁、骨格、気泡膜が破られて気泡同士が連通化されることから、発泡過程における気泡の成長に伴う気泡同士の衝突により形成された連続気泡とは異なり、圧縮により連通した気泡同士の界面にはポリマー相の薄い気泡膜1が形成されやすいことが推測される。つまり、本実施の形態では、独立気泡を有する発泡体に対し、その厚み方向に所定の圧縮荷重を付与すると、その圧縮力の付与で気泡同士が接近、接触して衝突し、その接触界面の気泡の壁、即ち、固化したポリマー相が引き伸ばされて次第に薄くなり、最終的にその壁が破れて連通孔2が形成され気泡同士が連通化されることになるから、発泡過程で硬化前のポリマー材料内での気泡の成長により形成される連続気泡とは相違し、固化したポリマー相を引き伸ばして破っていることになる。このため、そのような固化したポリマー相の破れにより連通した気泡同士の界面には、ポリマー相の薄い気泡膜1が生じやすく、その薄い気泡膜1による膜振動、共鳴構造や、抵抗による音の減衰効果が得られるものと推測できる。
 加えて、母材の樹脂、エラストマまたはゴムの柔軟特性、弾性体で生じる共鳴、膜振動、弾性損失による吸音効果、更には、大きさの異なる独立気泡及び連続気泡の両方が併存することによる空気の流れ抵抗の変化や、気泡における空間共鳴による吸音効果もある。
 故に、これらの相互作用によって、即ち、吸音する周波数が異なる複数の吸音機構によって、中周波域から高周波域の幅広い周波数域の吸音が可能となり、特に、圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡とが併存し、連通気泡間の界面の気泡膜1の形成による膜振動、共鳴によって、1000Hz~4000Hzの中周波数域においても高い吸音特性が得られたものと考えられる。
 ここで、本実施の形態の吸音材は、独立気泡を有する樹脂、エラストマまたはゴムからなる発泡体に対し圧縮力を付与することにより気泡を連通化させ、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造としたものであるが、樹脂としては、例えば、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体、(メタ)アクリル共重合体、スチレンアクリル共重合体、エチレンプロピレン共重合体等のオレフィン系重合体、ポリフッ化ビニル、ポリイソプレン、ポリスチレン、スチレン系重合体、フェノール、ユリア、メラミン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネード、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレア等が使用でき、エラストマとしては、例えば、熱可塑性エラストマ、軟質ウレタン等のエラストマが使用でき、ゴムとしては、例えば、アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプロピレンゴム、天然ゴム等を使用できる。
 樹脂材料、エラストマ材料またはゴム材料を含む組成物を発泡させることにより、樹脂、エラストマまたはゴムからなる発泡体が得られるが、このときの発泡方法としては、独立気泡を形成できれば特に限定されず、例えば、ADCA、OBSH、DBT等の有機発泡剤または炭酸水素塩、炭酸塩等の無機発泡剤の化学発泡剤或いはマイクロカプセルによる発泡や、所定の複数成分の反応で生じるガスによる自己発泡や、超臨界、機械発泡等による物理発泡がある。
 好ましくは、合成樹脂またはゴムを主成分とし、これに化学発泡剤或いは混合によりガスを生じる成分を含有する発泡性組成物を発泡させることにより得られる樹脂またはゴム発泡体である。
 化学発泡剤による発泡(化学発泡)や成分の反応でガスを発生させる発泡(自己発泡)で形成された発泡体によれば、発泡成形等の機械発泡によるものと異なり、スキン層が厚くならないから形成されないから、後述するプレス等で圧縮力を付与したときでも、内圧の高まりが少ない。よって、破れ、割れ、破損、破断等を生じさせることなく、気泡の高連通化を可能とし吸音特性の向上効果を高くできる。
 例えば、ウレタン樹脂にイソシアネートを用いた液状ウレタン樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム等の液状ゴム、液状シリコーン樹脂等の液状樹脂または液状ゴムを用い、それに、発泡剤を配合し、或いは、自己発泡させる成分を配合し、更に、必要に応じ界面活性剤等の添加剤や炭酸カルシウム等の充填剤を配合して混合した液状の樹脂組成物または液状ゴム組成物であれば、自動車等の車体の所望部位(例えば、ホイルハウス、ダッシュパネル、フロアパネル等)に塗装ロボット等による機械塗装(自動塗装)を行うことができ、塗布後に硬化、発泡させることで、所望部位に対する貼付け手作業の手間等を生じさせることなく発泡体を形成でき、自動化塗装により発泡体を短時間で効率的に施工できる。
 即ち、塗料等としての液状の樹脂またはゴム組成物を被塗布物に塗布した後、常温下または加熱処理若しくは材料の反応による発熱(反応熱)で発泡、硬化させ、或いは、常温下または加熱処理での材料の反応により発泡、硬化して樹脂またはゴム発泡体を形成するのが好ましい。このように塗布型の組成物から発泡体を形成する方法では、予め形状を成型する必要がなく、被塗布物の形状に馴染んだ形状とし、施工する形状の制約を受け難いものとなる。そして、車体の内部のみならず車体の外部にも好適となる。
 しかし、本発明を実施する場合には、成形後に取付け施工する形態であってもよく、例えば、発泡成形された発泡体や、押出成形機を用いてシート状に押出成形し、それを加熱処理して発泡させた発泡体に対し、それを被塗布物に接合してから圧縮力を加えて吸音材を形成してもよいし、発泡体に圧縮力を付与して形成した吸音材を被塗布物に接合してもよい。このときの接合は、例えば、粘着剤層、接着剤層等を介しての接着、離型紙を用いた貼着等とされる。
 そして、原料の選定等により、樹脂、エラストマまたはゴム材料の硬化による粘性と発泡のガス量及び圧力とのバランス制御で、独立気泡、即ち、気泡同士が互いに連通していない単独気泡を有する発泡体を得ることができる。ここで、独立気泡を有する発泡体とは、気泡構造として独立気泡(単独気泡)のみのものに限定されず、気泡同士が繋がった連続気泡を含んでいてもよい。全気泡のうち、好ましくは、10%以上、より好ましくは、20%以上、更に好ましくは、30%以上が独立気泡であればよい。なお、この気泡率は、例えば、マイクロスコープ画像、CT画像、顕微鏡画像等による任意の数か所の測定で、その平均を算出できる。
 本実施の形態では、このように樹脂、エラストマまたはゴム材料を発泡させて独立気泡を含んだ発泡体に対し、平板またはロール等のプレスで圧縮荷重を加えて圧縮力を付与することで、気泡同士を連通化させて連通した気泡を形成する。このとき、独立気泡のみの発泡体に圧縮荷重を加えたものでは、独立していた単独気泡同士が連通化し、連通気泡が形成される。また、発泡過程で、独立気泡、及び、気泡の成長により連続した気泡が形成された発泡体に圧縮荷重を加えたものでは、独立していた単独気泡同士、連続気泡同士、または、独立していた単独気泡と連続気泡とが連通化することになる。
 ここで、本発明者らの実験研究によれば、25%圧縮時の圧縮応力が、好ましくは、2kPa以上、30kPa以下、より好ましくは、3kPa以上、25kPa以下、更に好ましくは、4kPa以上、20kPa以下の発泡体に対し、圧縮力を付与することで、気泡同士を好適に連通化させることが可能である。
 圧縮力を付与する発泡体の25%圧縮時の圧縮応力が小さすぎるものは、気泡の連通化が安定せず、圧縮による破断等の恐れもある。一方で、25%圧縮時の圧縮応力が大きすぎるものでは、圧縮力を付与しても気泡を連通化することができず、中周波数域で高い吸音率を示す吸音特性が得られない。
 25%圧縮時の圧縮応力が、好ましくは、2kPa以上、30kPa以下の独立気泡を有する発泡体であれば、圧縮荷重の付与により安定した高連通化を可能とし、中周波数域においても高い吸音率を示す吸音特性が得られる。より好ましくは、3kPa以上、25kPa以下、更に好ましくは、4kPa以上、20kPa以下の範囲内である。
 また、独立気泡を含み所定の応力を有する発泡体に対し付与する圧縮力は、圧縮前の発泡体の厚みの、好ましくは、50%以上、95%以下、より好ましくは、75%以上、95%以下、更に好ましくは、80%以上、95%以下に圧縮変形させるものである。
このときの圧縮率が小さすぎると、気泡を十分に連通化できず、中周波数域から高周波数域の広範囲の周波数域で高い吸音率を示す吸音特性が得られない。一方で、吸音効果からして施工される吸音材は、5mm~50mm厚が好適であるところ、そのよう厚さ範囲では、樹脂、エラストマまたはゴム相の厚みからして約90%~95%が最大圧縮率となる。
 圧縮前の発泡体の厚みの、好ましくは、50%以上、95%以下の圧縮率でプレスする、即ち、圧縮前の発泡体の厚みに対して、5%以上、50%以下の厚みとなるように圧縮プレスすることで、圧縮で気泡同士が連通化した連通化率が高く、中周波数域から高周波数域の広範囲の周波数域で高い吸音率を示す吸音特性が得られる。より好ましくは、75%以上、95%以下、更に好ましくは、80%以上、95%以下の範囲内の圧縮率となるようにプレスする。
 なお、ここでいう圧縮率は、以下の式(1)で算出されるものである。
圧縮率(%)={(プレス前の発泡体の厚み-プレスした状態の発泡体の厚み)/プレス前の発泡体の厚み}×100・・(1)
 即ち、発泡体の所定の弾性力により、プレスしても厚みが回復するから、圧縮率は、プレス前後の厚みの比較ではなく、圧縮荷重を付与したときの圧縮させた厚みに基づくものであり、付与した圧縮力を解放すると、圧縮した厚みは回復する。
 このようにして、独立気泡を有し25%圧縮時の圧縮応力が所定の範囲内である発泡体に圧縮荷重を付与し気泡を連通化させることで、その圧縮により連通化した気泡と独立気泡との混成の気泡構造を有する吸音材とする。
 こうして、本実施の形態の吸音材は、独立気泡を有し25%圧縮時の圧縮応力が所定の範囲内である発泡体に圧縮荷重を付与することで連通化した気泡と独立気泡とを有するものである。特に、上述したように、圧縮により連通化した気泡においては、その連通した気泡同士が連通する界面の連通孔2の両側に薄い気泡膜1が生じやすく、それにより、中周波数域における吸音特性が向上する。なお、このような薄い気泡膜1の存在により、本実施の形態の吸音材においては、発泡過程で気泡を連通させた気泡構造のものと比較し、流れ抵抗(Flow Resistivity: FR)や迷路度(Tortuosity: Tor)が高くなることが推測される。また、圧縮力付与前と比較し、通気度が増大する。
 そして、こうした圧縮により連通化した気泡と独立気泡との混成の気泡構造を有する本実施の形態の吸音材は、その25%圧縮時の圧縮応力が、好ましくは、2kPa以上、4.8kPa以下、より好ましくは、2.2kPa以上、4.7kPa以下、更に好ましくは、2.5kPa以上、4.6kPa以下の範囲内である。
 吸音材の25%圧縮時の圧縮応力が小さすぎるものは、強度が弱く耐久性に乏しくなる。また、遮音特性が低くなる。一方で、25%圧縮時の圧縮応力が大きすぎるものは、圧縮による気泡の連通化の効果、即ち、中周波数域における吸音特性の向上の実用的な効果が得られない。
 吸音材の25%圧縮時の圧縮応力が、好ましくは、2kPa以上、4.8kPa以下であれば、必要な強度を有して施工後に剥離、脱落、損傷が生じ難く、発泡体の圧縮により十分に連通化した気泡数及び独立気泡とのバランスにより中周波数域から高周波数域において高い吸音率を示す吸音特性が安定して得られる。より好ましくは、2.2kPa以上、4.7kPa以下、更に好ましくは、2.5kPa以上、4.6kPa以下の範囲内である。
 また、本実施の形態の吸音材は、その比重が、好ましくは、0.08以上、0.4以下、より好ましくは、0.09以上、0.3以下、更に好ましくは、0.1以上、0.25以下の範囲内とされる。
 比重が低すぎるものは、気泡率(発泡率)が高いために所定の強度が得られず、また、遮音特性も低下する。一方で、比重が高すぎるものは、気泡率が低く、高い吸音特性が得られない。
 吸音材の比重が0.08以上、0.4以下の範囲内であれば、必要な強度を確保でき、かつ、粘性損失の大きい空気が多く含まれ、高い吸音特性が得られると共に、高い遮音特性が得られる。より好ましくは、0.09以上、0.3以下、更に好ましくは、0.1以上、0.25以下の範囲内である。
 気泡率、即ち、吸音材の全体積中に占める気泡の体積からすると、好ましくは、20%以上、95%以下、より好ましくは、30%以上、90%以下、更に好ましくは、40%以上、85%以下の範囲内である。
 気泡率が高すぎると、所定の強度が得られず、また、遮音特性も低下する。一方で、気泡率が低すぎると、吸音特性が不十分となる。
 吸音材の気泡率は、好ましくは、20%以上、95%以下の範囲内であれば、高い吸音特性と遮音特性が両立し、強度も確保できる。より好ましくは、30%以上、90%以下、更に好ましくは、40%以上、85%以下の範囲内である。
 また、全気泡のうち、好ましくは、独立気泡率が10%以上、80%以下、連続気泡率が20%以上、90%以下の範囲内であれば、中周波数域における吸音特性に優れ、かつ、吸音特性と遮音特性の両立に優れる。より、好ましくは、独立気泡率が30%以上、70%以下、連続気泡率が30%以上、70%以下である。
 なお、独立気泡を有する発泡体に対し所定の圧縮力を付与して発泡体の圧縮により連通化した気泡と独立気泡とが併存する気泡構造では、固化したポリマー相(樹脂、エラストマまたはゴム相)の一部の気泡壁、骨格、気泡膜を破り気泡同士を連通化させているものであるから、発泡過程で気泡が連通した連続気泡と独立気泡を含む気泡構造の発泡体と比較し、連続気泡率や独立気泡率の発泡率や比重を同じとしても、その圧縮応力は低くなるものである。
 複数の独立気泡や連通した気泡の大きさは、均一または不均一であることまでは問われず、例えば、約100μm~500μm程度の分布幅がある。また、その形状も、一般的には、円形や楕円形等の円形状、三角、四角等の多角形状に近い形状であるが、均一な一定形状であることまでは問わず、各種形状が混在していてもよく、不定形状のものも含まれる。
 そして、発泡体の圧縮により連通化した気泡と独立気泡とを有する発泡構造の本実施の形態の吸音材では、連通した気泡及び独立気泡の平均セル径が、好ましくは、100μm~2000μm、より好ましくは、150μm~1800μm、更に好ましくは、200μm~1500μmの範囲内であり、気泡壁の平均厚みが、好ましくは、0.5μm~40μm、より好ましくは、0.6μm~35μm、0.7μm~30μmの範囲内である。
 当該範囲内であれば、独立気泡を有する発泡体の圧縮により連通化した気泡と独立気泡とが併存した発泡構造の気泡径及び気泡壁の厚みとして、適度な気泡率であり、中周波数域から高周波数域に亘る広範囲の周波数域で高い吸音特性が得られるうえ、適度な比重が得られ、遮音特性も高いものとなる。
 即ち、従来のグラスウール、フェルト等の繊維材料や軟質ウレタンフォームからなる多孔質吸音材によれば連続気泡により高い吸音率が得られるも、連続気泡の気泡構造及び低密度であることで、その遮音特性は低いものであり、吸音特性と遮音特性の両立が困難である。これに対し、発泡体の圧縮により連通化した気泡と独立気泡とを有する発泡構造の本実施の形態の吸音材においては、連通化した気泡と独立気泡の併存及び連通した気泡間の界面の薄い気泡膜1の存在による吸音効果によって中周波数域の吸音特性が向上し、中周波数域から高周波数域に亘る広範囲の周波数域で高い吸音率が得られるうえ、連通化した気泡のみならず独立気泡も有し、密度を高くできるから高い遮音効果が得られ、吸音効果と遮音効果とが両立する。特に、上述したように、所定の比重及び所定の気泡サイズ、気泡壁厚みであれば、安定した遮音特性及び吸音特性が得られる。故に、自動車のダッシュパネル等、吸音特性と遮音特性の両方が要求される部位にも好適であり、重量増加やコスト増を招く他の比重の高い遮音材と貼り合わせる等しなくとも十分な吸音特性及び遮音特性が低コスト及び軽量で得られる。
 本実施の形態の吸音材として、特に好ましくは、耐熱性の高いシリコーン樹脂、シリコーンゴムの発泡体(発泡シリコーンゴム、シリコンフォーム)の使用である。即ち、独立気泡を含むシリコーン発泡体(シリコーン樹脂、シリコーンゴム)に対し、所定の圧縮力を付与することで気泡を連通化させ、その圧縮により連通化した気泡と独立気泡とが混成した気泡構造を有するシリコーン発泡体からなる吸音材が特に好ましい。独立気泡を有するシリコーンゴム発泡体は、例えば、1液型または2液型の液状のシリコーン材料を硬化、発泡することにより得ることができる。冷蔵保管、密栓保管を必要としない等の取り扱い性や貯蔵安定性からすれば、2液型のものが好適である。
 シリコーンの硬化反応形式としては、空気中の湿気と反応して硬化する縮合反応タイプと、加熱により短時間での硬化も可能とする付加反応タイプと、紫外線照射により硬化が促進するUV反応タイプとがあるが、自動車部品に適用する際の作業環境、作業性、生産性等を考慮すると、短時間で硬化反応を行うことができるうえ、有機過酸化物の分解による副生成物を生じず、硬化収縮もない付加反応型の液状シリコーン材料が好適である。
 シリコーンの発泡手法としては、シリコーン材料に熱分解型発泡剤を添加し、加熱による発泡剤の分解によって窒素ガスを発生させることでシリコーン発泡体を形成する加熱発泡タイプ、シリコーン材料の2液混合反応による脱水素反応によって水素ガスを発生させながらエラストマ状に硬化(ゴム化)してシリコーンを発泡硬化させる自己発泡反応タイプ等がある。
 加熱発泡タイプでは、例えば、ポリオルガノシロキサン(反復単位がジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、フェニルビニルシロキシ、メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキシ等である重合体または共重合体等)のシリコーン材料に発泡剤として、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の任意の一種又は二種以上の加硫剤、及びアゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルフォンヒドラジッド、N,N'-ジニトロソ-N,N'-ジメチルテレフタルアミド、p-p'-オキシ-ビス-(ベンゼンスルフォンヒドラジッド)、テレフタールアジド等を添加することで発泡させることができる。
 自己発泡タイプでは、シリコーン材料の縮合反応で水素を発生することで発泡させることができ、例えば、オルガノポリヒドロシロキサンとオルガノポリハイドロジェンシロキサンの2液混合反応による脱水素反応によって水素ガスを発生させながら発泡硬化させることができる。
 シリコーンの発泡手法としては、このように加熱発泡と自己発泡とがあるが、高温加熱を必要とせず、また、発泡分解残渣の毒性、臭いの問題や触媒毒作用による硬化不良を生じさせることのないことから、脱水素縮合反応による自己発泡反応タイプが好適である。
 このような自己発泡反応タイプの液状シリコーンとしては、例えば、水酸基(ヒドロキシ基)含有オルガノポリシロキサン、シラノール基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び触媒等を含有する主剤(本剤)と、シラノール基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する硬化剤とが使用でき、それら主剤及び硬化剤のシリコーンコンパウンド混合することでシリコーンゴムの発泡硬化体を形成できる。例えば、(株)スリーボンド製のTB5277、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製のSEF-10、信越化学工業(株)製のKE-521AB、KE-524AB、X-31-1075AB、X-32-1576AB、X-32-1703AB等の市販のものを使用することも可能である。このような主剤と硬化剤を混合することで発泡硬化させる2液付加反応型のものでは、保存性に優れ、温度による硬化速度の調整も容易であるから、作業効率が良好である。
 なお、こうしたオルガノポリヒドロシロキサンとオルガノポリハイドロジェンシロキサンを含む主剤及び硬化剤は、例えば、プラネタリーミキサー、グレンミル、ニーダー、アトライター、ロール、ディゾルバー等の公知の混合分散、混合攪拌機を用いて混合されることにより調製され、混合された発泡硬化前のシリコーンコンパウンドは適度な流動性を示す。好ましくは、10,000~100,000mPa・secの粘度である。よって、吸音を必要とする塗装部位、例えば、ダッシュパネル、エンジンルーム、排気管周辺、ブレーキキャリアパ周辺等に対し塗布可能であり、従来公知の塗装方法、例えば、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗装、浸漬塗装等により塗装できる。このような液状シリコーンから発泡硬化体を形成するものでは、細部への浸透性も良く、塗装面が凹凸や曲面等を有していても、その塗装面に対し、高い接着性、密着性、付着性を確保できる。
 塗装部位に塗装された2液付加反応型のシリコーンコンパウンドは、室温下で発泡、硬化し、或いは、所定温度で加熱することで発泡、硬化し、ゴム弾性を有するスポンジ状のシリコーン発泡硬化体となる。なお、このときの発泡、硬化は、通常、材料混合後に室温(常温)下に放置しても進行するが、短時間で発泡、硬化させるために、例えば、30~180℃、好ましくは、80℃~150℃で加熱してもよい。硬化前のシリコーンコンパウンドは、射出成形、注入成形等の公知の成形装置を使用して成形することも可能である。
 自己発泡反応タイプのものでは、例えば、白金化合物、アミノキシ化合物、有機錫化合物等を触媒として用いるが、高発泡倍率化、難焼化、耐熱性、短硬化時間の観点から、白金化合物系(白金族系触媒)が好ましく使用される。白金族系触媒としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系があるが、好ましくは白金系であり、白金系としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム等の白金族金属や、白金ブラック、塩化白金(例えば、HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0または6である))、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変成物等の白金族金属化合物、またはこれらの錯体、例えば、白金とオレフィンの錯体、白金とビニル基含有シラン(ビニルシロキサン)またはシロキサンの錯体(例えば、ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラチメルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン錯体)、白金のホスファイト錯体、白金のホスフィン錯体等が使用できる。より好ましくは、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変成物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサンまたはアセチレンアルコール類との錯体等である。これらのうち、硬化前の安定性や適度の発泡速度を与えるという観点からは、塩化白金酸、塩化第二白金、白金とオレフィン系化合物の錯体、ビニルシロキサンの白金錯体、塩化白金酸6水塩とオレフィンまたはジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液等が好ましい。シリカ、アルミナ、シリカゲルのような担体上に微粒子状白金金属を吸着させたものを用いてもよい。このような白金族金属系触媒は、オルガノシルフェニルシロキサン中のアルケニル基とオルガノハイドロジェンシロキサン中のSiH基との付加反応(ハイドロサイレーション)、及び、オルガノシルフェニルシロキサン中の水酸基(シラノール基)とオルガノハイドロジェンシロキサン中のSiH基との脱水素縮合反応を促進させるための触媒として作用するものである。
 例えば、白金族金属系触媒を用いたときの発泡、硬化の機構は、オルガノポリシロキサンのアルケニルキ基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基(Si-H基)との付加反応が触媒により促進され、アルケニル基とヒドロシリル基(Si-H基)の付加反応による架橋によって、シリコーン材料が硬化すると共に、オルガノポリシロキサンの水酸基(シラノール基)とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基(Si-H基)による脱水縮合反応が触媒により促進され、脱水素縮合反応による水素ガスの発生によって、シリコーン材料が発泡する。
 なお、主剤(本剤)や硬化剤には、必要に応じて、高強度、安定した発泡性、安定した硬化性の確保等のために、補強性充填剤(例えば、カーボンブラック、シリカ、ヒュームド二酸化チタン等)や、無機充填剤(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、金属炭酸塩、クレー、炭酸カルシウム、珪藻土、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、亜鉛華、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、タルク、ベントナイト、ガラスビーズ、ガラスファイバ等)や、ヒドロキシ基含有化合物(例えば、水、アルコール等)が含有される。また、発泡硬化反応の速度制御のために硬化抑制剤(硬化遅延剤)や、発泡硬化時間の短縮化のために硬化促進剤等や、エポキシ基含有ポリシロキサン化合物やエステルシロキサン化合物等の接着性向上剤を配合することも可能である。なお、2液付加硬化型において、白金族系金属を触媒として使用するものでは、主剤及び硬化剤の配合が、例えば、1:1とされる。
 このように液状のシリコーン材料を発泡硬化することで独立気泡を有するシリコーン発泡体(シリコーンゴム発泡体)を得て、この独立気泡を有するシリコーン発泡体を所定の圧縮力によりプレス等で圧縮し気泡同士を連通化させることで、圧縮により連通化した気泡と独立気泡とが混成したシリコーン発泡体からなる吸音材とすることができる。
 特に、このようなシリコーン発泡体からなる吸音材では、その母材がシリコーン(シリコーン樹脂、シリコーンゴム)であるから、一般の有機ゴム等の有機系材料よりも耐熱性に優れることで、高温の熱源の周囲に配しても溶融、熱劣化することなく耐久性が高く、長期に亘って安定した吸音効果を発揮できる。例えば、エンジンルームや排気管周辺等の高温環境の部位に好適となり、車体の内部のみならず車体の外部にも適し、広範囲の部位に適用可能で幅広く自動車等の騒音対策に有用である。
 加えて、シリコーン(シリコーン樹脂、シリコーンゴム)であれば、安定した電気特性、耐候性、耐紫外線、耐水性(防水性)、耐薬品性、耐溶剤性、耐オイル性、耐オゾン性、耐寒性を有する。グラスウール等の吸音材と比較しても耐水性、耐オイル性に優れることから、例えば、フロアパネル等の車外側で水分の付着が生じる部位や、エンジンオイルの付着が生じる部位であっても、好適に施工できる。
 更に、シリコーン(シリコーン樹脂、シリコーンゴム)は、低架橋密度であり有機成分を含有することで、例えば、鋼板等の金属からなる車体面であってもそれに対する接着性、付着性、密着性も良く、塗装部位に塗布するのみで硬化後も塗装面に対する接着性、付着性、密着性が良い。
 2液付加硬化型のシリコーンでは、曲面や複雑な表面形状を有する部位等であってもそれに追従させる施工が容易である。特に、ゴム物性を有するから、適用部位の熱による膨張や収縮に追従できる弾性、柔軟性を確保でき、凹凸部位、曲面や複雑な表面形状を有する部位等に適用した際でも、また、適用部位が熱負荷により膨張したときでも、割れ(亀裂)、破壊、剥離等が生じ難く、耐久性もよい。よって、塗装箇所、塗布量等の塗装条件が限定されずに広範囲の部位の防音、騒音対策に好適となる。
 更に、シリコーン材料の硬化が付加反応型であると、収縮を伴わない硬化によりシリコーン発泡硬化体に亀裂や膨れが生じ難く、また、硬化スピードを制御でき施工の効率に優れるものである。
 そして、こうした未硬化の液状シリコーンを所望の塗装部位の塗装面に直接塗布による塗装を行い、発泡、硬化させて塗装部位上に独立気泡を有する発泡体を形成し、更に、所定の圧縮力を付与することで発泡体の気泡の壁に連通孔2をあけて気泡同士を連通化したその連通気泡と連通されなかった独立気泡とを有する発泡体とした吸音材を塗装部位上に形成するものでは、ロボットによる塗布、即ち、自動塗装による機械的な塗布が可能で、例えば、所定の塗布ノズルを用いて塗布可能であり、施工を自動化できる。よって、シート状の吸音材とする手作業による貼付け施工のものと比較して、端材等の無駄が生じ難く、作業精度、作業性、作業効率等も格段に向上し、工程時間を短縮できる。また、塗装面に対し隙間を生じさせない取付けを可能とする。そして、塗装部位に対する追従性にも優れる。
 こうして、本実施の形態に係る吸音材は、独立気泡を有し25%圧縮時の圧縮応力が2~30kPaの範囲内である発泡体に対し、50~95%の範囲内の圧縮率とする圧縮力を付与することで、気泡が連通化されて圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡との気泡構造を有し、比重が0.08~0.4の範囲内で、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内としたものである。このような本実施の形態に係る吸音材によれば、薄型で軽量でも、1000~4000Hzの中周波数域における高い吸音特性を獲得し、500~6000Hzの幅広い範囲の周波数に亘って吸音特性を有し、特に、人間の聞き取りやすい周波域を含む1000~6000Hzの中・高周波帯の幅広い周波数に対し高い吸音効果を達成するものである。
 また、このような本実施の形態の吸音材によれば、圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡との気泡構造を有するから、気泡率の制御により、更には、全気泡に占める独立気泡率、連通気泡率の制御により、吸音の周波数を制御することも可能であり、所望の吸音特性とする設計も容易に可能である。なお、気泡率の制御、独立気泡と連通気泡の比率の制御は、例えば、発泡過程における発泡剤の種類、量や、樹脂材料の種類、量、硬化特性や、発泡硬化時の温度や、圧縮力付与処理における圧縮率等によって制御することが可能である。
 そして、圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡の混成とし、比重が0.08~0.4の範囲内であることで、吸音特性に優れるばかりか遮音特性にも優れ、更に、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内であることで、機械的強度も確保され、振動による周波数の減衰効果(吸音、遮音)が安定して長期間得られる。故に、騒音の防止、抑制効果が高いものである。
 こうした本実施の形態に係る吸音材は、自動車等の車両の車体表面、例えば、ダッシュパネル、ボンネット、エンジンルーム、エンジンカバー、排気管周辺、ブレーキキャリアパ周辺、ピラー、フェンダーライナー、エンジンやトランスミッション等のパワートレイン部材、エンジンフード、ドアトリム等に施工することにより、車両から生じる騒音、例えば、エンジンノイズ、タイヤノイズ、ロードノイズ、マフラーノイズ(排気ノイズ)、風切り音、こもり音、小石、砂利、泥水(水溜り)等の飛散・衝突音(スプラッシュノイズ、チッピングノイズ)等の車外騒音及び車内騒音、即ち、振動等によって発生する音の1000~4000Hzの中周波数域における吸音効果を向上でき、1000~6000Hzの中周波域から高周波数域に亘る幅広い周波数帯での吸音特性を発揮できる。好ましくは、それら自動車等の塗料として施工され、発泡硬化と圧縮力付与処理されることで吸音材として中周波域から高周波数域における高い吸音率を発揮する。このときの吸音材の厚みは、例えば、1mm~50mm程度とされ、特に、10mm厚の薄さの単層構造のみでも、1000~4000Hzの中周波数域で高い吸音率を示す。そして、薄い厚みでも1000~4000Hzの中周波数域を高くできることで、施工スペースも少なくて済み、幅広く車体の吸音を必要とする部位への適用を可能とする。
 また、自動車以外にも、機械装置、例えば、工具の一部またはその筐体、機械的構造体及びその筐体、技術的に可動であるパーツを備える内燃機関(エンジン)、変圧器、電動機等の構造体や、建築物や、電気製品等の防音材料等として適用できる。
 次に、本発明の実施の形態に係る吸音材の実施例を具体的に説明する。
 実施例1に係る吸音材は、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させることにより発泡倍率10倍のシリコーン発泡体(シリコーンゴム発泡体)を得て、そのシリコーン発泡体に対し、厚み方向を常温下でロールプレスして所定の圧縮荷重、即ち、圧縮力を付与することにより形成したものである。なお、実施例1~実施例5では、何れも、圧縮前後の厚みの変化、クリープが殆どないものである。即ち、塑性変形されていないものである。
 本実施例1において、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させて得られた発泡倍率10倍である圧縮力付与前のシリコーン発泡体は、後述する比較例1の発泡体の図6のマイクロスコープ画像で示すように、独立気泡型であり、25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのものである。そして、本実施例1では、圧縮力付与前において25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのシリコーン発泡体に対し、その厚みの90%を圧縮プレスすることにより、即ち、圧縮付与力前の厚みの10%になるまで所定の圧縮力を付与することにより、実施例1に係る吸音材を得た。
 なお、ここでの発泡倍率とは、発泡前のシリコーンコンパウンドの密度を発泡後のシリコーン発泡体の見掛密度で除した値である。
 また、25%圧縮時の圧縮応力(kPa)は、発泡体の最初の厚みに対し75%の厚みとなるまで圧縮荷重を加えたときの反発荷重であり、最初の厚みの25%だけ圧縮するのに必要な圧縮荷重(N)を断面積(m)で割って単位面積当たりで表したものである。
 このようにして得た本実施例1に係る吸音材は、図1のX線CT画像及び図2(a)~(c)のマイクロスコープ画像で示すように、圧縮力が付与されたことにより連通化した気泡と、独立気泡とが混在した気泡構造を有し、その比重が0.13であり、25%圧縮時の圧縮応力が2.8kPaである。また、マイクロスコープ画像を用いた気泡の測定により、気泡の径、容積は比較的不均一であり、気泡のセル単位は、例えば、100~600μmで分布し、気泡の壁の厚みは、例えば、1μm前後で分布していた。測定箇所をいくつかかえて平均値を算出したところ、気泡の平均セル径(平均気泡径)は、約200μmであり、気泡壁の平均厚みは、約1μmであった。なお、圧縮力の付与で気泡が連通されたことにより、吸音材の25%圧縮時の圧縮応力は、圧縮力付与前の約0.56倍である。
 実施例2に係る吸音材も、実施例1のときと同様、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させることにより発泡倍率10倍のシリコーン発泡体を得て、そのシリコーン発泡体に対し、厚み方向をロールプレスして所定の圧縮荷重、即ち、圧縮力を付与することにより形成したものである。
 本実施例2において、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させて得られた発泡倍率10倍である圧縮力付与前のシリコーン発泡体も、実施例1のときと同じ独立気泡型(後述する比較例1の発泡体の図6のマイクロスコープ画像参照)であり、25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのものである。そして、本実施例2では、この25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのシリコーン発泡体に対し、実施例1のときよりも小さい圧縮率で圧縮力を付与した。即ち、圧縮力付与前において25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのシリコーン発泡体に対し、その厚みの80%を圧縮プレスすることにより、つまり、圧縮付与力前の厚みの20%になるまで所定の圧縮力を付与することにより、実施例2に係る吸音材を得た。
 このようにして得た本実施例2に係る吸音材は、図3のマイクロスコープ画像で示すように、圧縮力が付与されたことにより連通化した気泡と、独立する気泡とが混在した気泡構造を有し、その比重が0.13であり、25%圧縮時の圧縮応力が2.8kPaである。なお、実施例2では、実施例1よりも小さい圧縮率であるから、圧縮により連通化した気泡率は実施例1よりも少ないものである。なお、実施例2の吸音材においては、気泡の連通化率が実施例1よりも低くなるも、図3のマイクロスコープ画像から、平均気泡サイズ及び気泡壁の平均厚みについては、実施例1のときと略同等または大きくなってもその差は約10μm以下であるから、ここでは、詳細な測定は省略している。
 実施例3に係る吸音材も、実施例1、2のときと同様、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン樹脂を発泡、硬化させて得られた発泡倍率10倍である圧縮力付与前のシリコーン発泡体を得て、そのシリコーン発泡体に対し、厚み方向をロールプレスして所定の圧縮荷重、即ち、圧縮力を付与することにより形成したものである。
 本実施例3において、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させて得られた発泡倍率10倍である圧縮力付与前のシリコーン発泡体も、実施例1のときと同じ独立気泡型(後述する比較例1の発泡体の図6のマイクロスコープ画像参照)であり、25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのものである。そして、本実施例3では、この25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのシリコーン発泡体に対し、実施例1、2のときよりも更に小さい圧縮率で圧縮力を付与した。即ち、圧縮力付与前において25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのシリコーン発泡体に対し、その厚みの70%を圧縮プレスすることにより、つまり、圧縮付与力前の厚みの30%になるまで所定の圧縮力を付与することにより、実施例3に係る吸音材を得た。
 このようにして得た本実施例3に係る吸音材は、図4のマイクロスコープ画像で示すように、圧縮力が付与されたことにより連通化した気泡と、独立する気泡とが混在した気泡構造を有し、その比重が0.13であり、25%圧縮時の圧縮応力が2.8kPaである。なお、実施例3では、実施例1、2よりも小さい圧縮率であるから、圧縮により連通化した気泡率は実施例1、2よりも低いものとなる。なお、実施例3の吸音材においても、気泡の連通化率が実施例1より低くなるも、図4のマイクロスコープ画像から、平均気泡サイズ及び気泡壁の平均厚みについては、実施例1のときと同等または大きくなってもその差は約10μm以下であるから、ここでは、詳細な測定は省略している。
 実施例4に係る吸音材は、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させることにより、実施例1~3のときよりも低い発泡倍率である発泡倍率5倍のシリコーン発泡体を得て、そのシリコーン発泡体に対し、厚み方向をロールプレスして所定の圧縮荷重、即ち、圧縮力を付与することにより形成したものである。
 本実施例4において、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させて得られた発泡倍率5倍である圧縮力付与前のシリコーン発泡体は、独立気泡型であり、25%圧縮時の圧縮応力が14kPaと実施例1~3のときよりも圧縮応力が大きいものである。そして、本実施例4では、この25%圧縮時の圧縮応力が14kPaであるシリコーン発泡体に対し、実施例1のときと同じ90%の圧縮率で圧縮力を付与した。即ち、圧縮力付与前において25%圧縮時の圧縮応力が14kPaのシリコーン発泡体に対し、その厚みの90%を圧縮プレスすることにより、つまり、圧縮付与力前の厚みの10%になるまで所定の圧縮力を付与することにより、実施例4に係る吸音材を得た。
 このようにして得た本実施例4に係る吸音材は、圧縮力が付与されたことにより連通化した気泡と、独立した気泡とが混在した気泡構造を有し、その比重が0.25であり、25%圧縮時の圧縮応力が3.0kPaである。なお、実施例4では、実施例1~3のときよりも発泡倍率が小さいから、圧縮応力が実施例1~3よりも大きいものとなっている。また、圧縮力の付与で気泡が連通されたことにより、吸音材の25%圧縮時の圧縮応力は、圧縮力付与前の約0.21倍である。なお、気泡率が実施例1よりも低くなるが、平均気泡サイズ及び気泡壁の平均厚みについては、実施例1のときと略同等または大きくなってもその差は約50μm以下であるから、ここでは、詳細な測定は省略している。
 実施例5に係る吸音材は、市販のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡体(日東電工株式会社製の「エプトシーラー」)を用い、そのEPDM発泡体に対し、厚み方向をロールプレスして所定の圧縮荷重、即ち、圧縮力を付与することで得たものである。
 本実施例5において、圧縮力付与前のEPDM発泡体は、後述する比較例3の発泡体の図8のマイクロスコープ画像で示すように、半独立半連続気泡型であり、即ち、独立気泡と発泡過程の気泡の成長で気泡同士が繋がった連続気泡とを有し、25%圧縮時の圧縮応力が6.2kPaのものである。そして、本実施例5では、圧縮力付与前において25%圧縮時の圧縮応力が6.2kPaのEPDM発泡体に対し、その厚みの90%を圧縮プレスすることにより、つまり、圧縮付与力前の厚みの10%になるまで所定の圧縮力を付与することにより、実施例5に係る吸音材を得た。
 このようにして得た本実施例5に係る吸音材は、その比重が0.10であり、また、25%圧縮時の圧縮応力が4.2kPaであり、圧縮力付与前のEPDM発泡体における25%圧縮時の圧縮応力の約0.68倍となっていることからして、また、図5(a)~(c)のマイクロスコープ画像からしても、圧縮力が付与されたことで気泡の連通化が生じ、圧縮により連通化した気泡と独立した気泡を含有した気泡構造を有する。また、マイクロスコープ画像を用いた気泡の測定により、気泡の径、容積は比較的不均一であり、気泡のセル単位は、例えば、1mm前後であり、気泡の壁の厚みは、例えば、10~30μmで分布していた。測定箇所をいくつかえて平均値を算出したところ、気泡の平均セル径(平均気泡径)は、約1mmであり、更に、気泡壁の平均厚みは、約20μmであった。
 そして、こうして得られた実施例1~5に係る吸音材について、垂直入射吸音率の測定を行った。垂直入射吸音率の測定は、リオン社製の垂直入射音響計測システム(アコースティックダクト 9302型)を使用し、10mm厚みの試験片で測定した。実施例1~5に係る吸音材の垂直入射吸音率の測定結果は図11のグラフに示した通りである。
 なお、ここでの垂直入射吸音率は、500Hz、630Hz、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、4000Hz、5000Hz、6300Hzの各周波数域における垂直入射吸音率の測定結果である。
 また、比較のために、比較例1~6に係る発泡材、多孔質材、繊維についても垂直入射吸音率の測定を行い、その測定結果を実施例1~5と併せて図11に示している。
 ここで、比較例1は、実施例1~3における圧縮力付与前のシリコーン発泡体である。即ち、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させて得られた発泡倍率10倍のシリコーン発泡体であって、圧縮力処理を行なっていないシリコーン発泡体である。この比較例1に係るシリコーン発泡体は、図6(a)~(c)のマイクロスコープ画像で示すように、独立気泡型で、比重が0.13であり、25%圧縮時の圧縮応力が5kPaのものである。なお、図6のマイクロスコープ画像から、平均気泡サイズ及び気泡壁の平均厚みについては、実施例1と比較し、気泡が連通化していなため、その気泡サイズは略同等またはそれ以下、また、気泡壁の厚みは略同等またはそれ以上となるも、それらの差は約30μm以下であるから、ここでは、詳細な測定は省略している。
 比較例2は、市販のシリコーン発泡体(株式会社ミスミ製のシリコーンゴムスポンジ(SGNL(型式))を用い、そのシリコーン発泡体に対し、厚み方向をロールプレスして所定の圧縮荷重、即ち、圧縮力を付与することで得たものである。
 比較例2において、圧縮力付与前のシリコーン発泡体は、独立気泡型であり、25%圧縮時の圧縮応力が80kPaのものである。そして、比較例2では、圧縮力付与前において25%圧縮時の圧縮応力が80kPaのシリコーン発泡体に対し、その厚みの90%を圧縮プレスすることにより、つまり、圧縮付与力前の厚みの10%になるまで所定の圧縮力を付与することにより、比較例2に係るシリコーン発泡体を得た。
 このようにして得た比較例2にシリコーン発泡体は、比重が0.26であり、また、25%圧縮時の圧縮応力が80kPaのものであり、圧縮力付与前と同等の圧縮応力であることからして、また、図7(a)~(c)のマイクロスコープ画像からしても、圧縮力の付与により気泡が連通、破泡することなく、独立気泡のままである。マイクロスコープ画像を用いて気泡を測定したところ、気泡のセル単位は、例えば、200~500μmで分布し、気泡の壁の厚みは、例えば、30~60μmで分布していた。測定箇所をいくつかかえて平均値を算出したところ、気泡の平均セル径(平均気泡径)は約250μmであり、気泡壁の平均厚みは約45μmであった。
 比較例3は、実施例5における圧縮力付与前のEPDM発泡体である。即ち、市販のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡体(日東電工株式会社製の「エプトシーラー」)であって、圧縮力処理を行なっていないEPDM発泡体である。この比較例3のEPDM発泡体は、図8(a)~(c)のマイクロスコープ画像で示すように、半独立半連続気泡型であり、即ち、独立気泡と発泡過程の気泡の成長で気泡同士が繋がった連続気泡とを有し、その比重が0.10であり、25%圧縮時の圧縮応力が6.2kPaのものである。なお、図8のマイクロスコープ画像から、平均気泡サイズ及び気泡壁の平均厚みについては、実施例5と比較し、圧縮による気泡の連通化がないため、その気泡サイズは略同等またはそれ以下、また、気泡壁の厚みは略同等またはそれ以上となるも、それらの差は約30μm以下であるから、ここでは、詳細な測定は省略している。
 比較例4は、市販のEPDM発泡体(株式会社ミスミ製のEPDMスポンジ(SGNP(型式))を用い、そのEPDM発泡体に対し、厚み方向をロールプレスして所定の圧縮荷重、即ち、圧縮力を付与することで得たものである。
 比較例4において、圧縮力付与前のEPDM発泡体は、独立気泡型であり、25%圧縮時の圧縮応力が34kPaのものである。そして、比較例4では、圧縮力付与前において25%圧縮時の圧縮応力が34kPaのEPDM発泡体に対し、その厚みの90%を圧縮プレスすることにより、つまり、圧縮付与力前の厚みの10%になるまで所定の圧縮力を付与することにより、比較例4に係るEPDM発泡体を得た。
 このようにして得た比較例4に係る吸音材は、比重が0.11であり、また、25%圧縮時の圧縮応力が34kPaのものであり、圧縮力付与前と同等の圧縮応力であることからして、また、図9(a)~(c)のマイクロスコープ画像からしても、圧縮力の付与により気泡が連通、破泡することなく独立気泡のままである。マイクロスコープ画像を用いて気泡を測定したところ、気泡のセル単位は、例えば、100~200μmで分布し、気泡の壁の厚みは、例えば、10~20μmで分布していた。測定箇所をいくつかかえて平均値を算出したところ、気泡の平均セル径(平均気泡径)は約150μmであり、更に、気泡壁の平均厚みは約15μmであった。
 比較例5は、市販のメラミン発泡体(BASF社製「バソテクト(登録商標)」)とし、圧縮力処理を行なっていないメラミン発泡体である。この比較例5のメラミン発泡体は、図10(a)、(b)のマイクロスコープ画像で示すように、連続気泡型で、比重が0.01であり、25%圧縮時の圧縮応力が14kPaのものである。
 更に、比較例6は、市販のグラスウール(繊維型吸音材)で比重が0.05のものである。
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 図11のグラフ及び表1の吸音率の測定結果に示すように、比較例1~比較例6の発泡体、多孔質体、または繊維は、何れも、10mmの薄い厚さでは、1000~4000Hzの中周波数域における吸音率が低く、特に、1000~3150Hzの周波数帯の平均吸音率が0.445以下である。
 即ち、25%時の圧縮応力が80kPaの独立気泡型のシリコーン発泡体に圧縮力を付与してなる比較例2、市販の半独立半連続気泡型のEPDM発泡体からなる比較例3、及び25%時の圧縮応力が34kPaの独立気泡型のEPDM発泡体に圧縮力を付与してなる比較例4においては、測定した全周波数域において0.4未満の低い吸音率である。
 特に、比較例2及び比較例4では、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与していても、それぞれ圧縮力付与前における25%の圧縮応力が80kPa、34kPaであるから、そのような発泡体に対し圧縮率が90%となるように圧縮力を付与しても、気泡を連通化させることができず、1000~4000Hzの中周波数域の吸音率の向上効果が得られないものである。
 そして、比較例3では、独立気泡及び連続気泡が併存するEPDM発泡体であっても、その連続気泡は、発泡過程で形成されたものであり、圧縮により連通した気泡を含まないため、1000~4000Hzの中周波数域で高い吸音特性を示すことはなく、全周波数域において0.4未満の低い吸音率である。
 また、市販の連続気泡型のメラミン発泡体からなる比較例5及び市販の連続気泡型のグラスウールからなる比較例6は、4000Hzを超える高周波数域において高い吸音率であるも、1000~31500Hzの中周波数域、特に、1000~2000Hzの周波数域において、10mmの薄い厚さでは、十分な吸音特性を示さない。
 更に、2液付加反応/脱水素縮合反応型の液状シリコーン材料を発泡、硬化させることにより得た独立気泡型のシリコーン発泡体からなる比較例1でも、1000Hz付近の特定の周波数の音に対して吸音率が上昇するも、1250Hz以上の周波数域では吸音率が大きく低下し、低い吸音率である。
 これに対し、実施例1乃至実施例5の吸音材においては、何れも、1000~3150Hzの周波数帯の平均吸音率が0.51以上であり、特に、1000~4000Hzの中周波数域では0.4以上の吸音率を示し、1000~4000Hzの中周波数域における最大吸音率は0.56~0.91であった。
 特に、実施例1~実施例3と比較例1との比較から分かるように、独立気泡のみの気泡構造を有するシリコーン発泡体からなる比較例1、つまり、実施例1~3において圧縮力付与前のシリコーン発泡体からなる比較例1では、図11のグラフにおいて、1000Hz付近の特定の周波数の音に対して吸音ピークが現れるも、即ち、特定の単一周波数及びその近傍の周波数の狭い幅の周波数の音源に対する吸音効果はあるも、1250Hz以上では吸音率が大きく低下して低い吸音率であり、中周波数域から高周波数域に亘る幅広い周波数域の効果的な吸音に対応できない。なお、比較例1では特定の周波数域のみ吸音特性から、柔軟材料等による共鳴、膜振動系のみの吸音によるものと推測される。
 一方で、この比較例1に対し、圧縮力を付与して連通した気泡と独立気泡とを併存させた実施例1~3の吸音材では、1000~6300Hz範囲の広範囲の中・高周波数域で高い吸音率を示し、特に、1600~4000Hzの中周波数域では、何れも吸音率が0.5以上で比較例1よりも吸音率が飛躍的に向上し高い吸音率を示した。なお、実施例のこのような吸音特性は、上述したように、連続気泡における空気の粘性、通気抵抗による吸音や樹脂、ゴムの柔軟材料等による共鳴、膜振動系の吸音に加え、独立気泡及び連続気泡が併存すること及び圧縮により連通した連通気泡の気泡界面に薄い気泡膜1が形成されることによる膜振動、共鳴の吸音効果と推測される。
 同様に、比較例3と実施例5の比較からも、半独立半連続気泡型のEPDM発泡体からなる比較例3、即ち、実施例5において圧縮力付与前のEPDM発泡体からなる比較例3では、全周波数域において低い吸音率であるが、この比較例3に対し、圧縮力を付与することで連通させた気泡と独立気泡とを併存させた実施例5の吸音材では、測定した全周波数域で吸音率が向上して1000~6300Hz範囲の広範囲の中・高周波数域で高い吸音特性を示し、特に、1250~3150Hzの周波数域では、何れも吸音率が0.4以上の高い吸音率を示し、2000Hzの周波数で吸音ピークを有してその最大吸音率が0.7であった。
 とりわけ、独立気泡を含んだ発泡体を80%~90%の圧縮率となるように圧縮力を付与してなる実施例1、実施例2、実施例4及び実施例5の吸音材では、1600~4000Hzの中周波数域での最大吸音率が0.73以上である。
 更に、独立気泡を有する発泡体を80%~90%の圧縮率となるように圧縮力を付与してなるシリコーン発泡体からなる実施例1、実施例2及び実施例4の吸音材では、何れも、1600~4000Hzの中周波数域で0.6以上の吸音率であり、2000~3150Hzの中周波数域で吸音ピークを有しその最大吸音率が0.85以上である。
 なお、実施例1~実施例3の比較から、70%~90%の圧縮率では、圧縮率を高めるほど、1250~6300Hzの周波数域における吸音率が上昇しており、圧縮による気泡の連通率を高めることで、吸音率を高くできる。吸音効果からして施工される吸音材は、5mm~50mm厚が好適であり、そのよう厚さ範囲では、樹脂、ゴム相の厚みからして約90%~95%が最大圧縮率となる。一方、本発明者らの実験研究によれば、好ましくは、50%以上の圧縮率であれば、圧縮による気泡の連通化により1600~4000Hzの中周波数域を含むブロードな範囲で吸音特性が向上する。より好ましくは、60%以上の圧縮率であり、更に好ましくは、70%以上の圧縮率である。特に好ましくは、独立気泡を含んだ発泡体を80%~95%の圧縮率となるように圧縮力を付与することにより、1000~4000Hzの中周波数域の吸音率の向上効果が高くなり、優れた吸音率が得られる。
 また、発泡倍率が10倍のシリコーン発泡体に90%の圧縮率となるよう圧縮力を付与して得られた実施例1と発泡倍率が5倍のシリコーン発泡体に90%の圧縮率となるよう圧縮力を付与して得られた実施例4との比較から、発泡体全体積中に占める連通気泡の割合、即ち、圧縮により連通した連通気泡率が高いほど吸音率が高くなり、また、発泡体全体積中に占める気泡の割合、即ち、独立気泡及び連通気泡の全気泡率が高いほど吸音率のピークが低周波数側にシフトすることが分かる。よって、圧縮力付与前の発泡体の気泡率の制御により、吸音効果を高めたい周波数の制御を可能とする。
 なお、本発明者らの実験研究によれば、2液付加反応/脱水素縮合反応型における圧縮力付与前のシリコーン発泡体は、その発泡倍率が3倍~20倍、より好ましくは、4倍~18倍、更に好ましくは、5倍~15倍の範囲内のものが好ましい。
 発泡倍率が低すぎるものは、機械的強度、硬度が高く、気泡率も少ないことで、所定の圧縮力を付与しても、圧縮により連通した気泡数が十分に得られないから、目的とする1000~4000Hzの中周波数域の吸音率の実用的な向上効果が得られない。一方で、発泡倍率が高すぎるものは製造が困難であるうえ、弾性、柔軟性が高いことで、所定の圧縮力を付与しても、圧縮により連通した気泡数が十分に得られず、目的とする1000~4000Hzの中周波数域の吸音率の実用的な向上効果が得られない可能性がある。
 2液付加反応/脱水素縮合反応型におけるシリコーン発泡体では、発泡倍率が3倍~20倍の発泡体に対し所定の圧縮力を付与することで、連通した気泡が十分に得られ、目的とする1000~4000Hzの中周波数域の吸音率の実用的な向上効果が得られる。より好ましくは、4倍~18倍、更に好ましくは、5倍~15倍の範囲内のものが好ましい。
 こうして、実施例1乃至実施例5の吸音材は、25%圧縮時の圧縮応力が5~14kPaの範囲内であり独立気泡を有する発泡体に対し、70%~90%の範囲内の圧縮率とする圧縮力を付与することで気泡が連通化されて、圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡との気泡構造を有し、比重が0.1~0.25の範囲内で、25%圧縮時の圧縮応力が2.8~4.2kPaの範囲内であるものである。
 こうした実施例1乃至実施例5の吸音材においては、10mm厚の薄さでも、圧縮力の付与前より全周波数域で吸音特性が向上し、特に、1000~4000Hzの中周波数域の吸音特性が極めて高く、1000~6300Hzの中周波数域から高周波数域に亘る幅広い周波数域で高い吸音特性を示す。こうして、厚みを厚くしなくとも、例えば、10mm厚の薄さの単層構造のみでも、1000~4000Hzの中周波騒音に対する高い吸音特性を示すことから、少ない施工スペースで済み、広範囲の部位への適用を可能とする。
 そして、このように吸音率を高めていても、圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡との気泡構造を有する吸音材では、高い遮音率を有する。即ち、遮音性を損なうことなく、吸音率を向上できる。
 念のため、実施例1のシリコーン発泡体からなる吸音材の10mm厚の試験片と、比較例6のグラスウールからなる15mm厚の試験片について、その透過損失(dB)を測定した結果を図12のグラフに示す。なお、このときの透過損失の測定も、上述した垂直入射吸音率測定のときと同様の周波数での測定としている。図12に示すように、実施例1では、測定した全周波数域において透過損失(dB)が14.0以上であり、比較例6よりも高い透過損失(dB)、即ち、高い遮音効果を示している。
 なお、このときの透過損失は、ASTM E2611-09に準拠して、音響管による垂直入射音響透過損失を測定したものである。即ち、所定の音響管内に試験片をセットし、その音響管の一方の開口面からスピーカで音響管内に向かって音を発生し、音響管の周面から内部に向けられた4本のマイクロフォンを用いて伝達関数法による測定を行った。
 このように、圧縮により連通化した連通気泡と独立気泡との気泡構造を有する吸音材では、吸音率を高めていても、高い遮音率が得られ、吸音率と遮音率が両立した防音特性が得られる。よって、吸音特性及び遮音特性の相乗により騒音の抑制効果に優れ、騒音の拡散抑制効果が高くなる。
 即ち、本実施の形態の吸音材では、他の遮音材等と併用する複合、多層構造でなくとも、発泡体の単体とする単一構造の施工でも、高い吸音率と高い遮音率によって、高い騒音抑制効果を発揮できる。よって、複合、多層構造とする接合工程を必要とすることもなく、防音効果を付与する作業性、施工性が簡単で短い工程時間で済むから、車両の生産性を上げることもできる。しかし、本発明を実施する場合には、他の遮音材等と併用して施工することも可能である。また、複数の貫通孔を設ける構成としてもよい。
 なお、上記実施例1乃至実施例4においては、2液付加反応硬化型のシリコーン材料を発泡、硬化させてなる独立気泡型の発泡体に対して圧縮力を付与したものであるが、シリコーン材料を発泡、硬化させる際に、後述する図13で示すように、発泡後の厚みが10mmとなるように厚み方向、更には、厚み方向に対する直角方向の移動を規制してシリコーン発泡体(130mm×45mm×10mm厚)を作製している。因みに、このときの発泡、硬化させるシリコーン材料の厚み(ウェット膜厚)は3.2~3.8mmとした。そして、実施例1乃至実施例4では、発泡硬化したシリコーン発泡体は乾燥(150℃×20分)後、所定圧縮力を付与することで吸音体を得ている。吸音率等の測定には、得られた吸音体の中央部をカットした試験片を使用している。
 ここで、上述したように、本実施の形態の吸音材においては、独立気泡及び連通気泡の気泡率、比率制御等により、吸音効果を高めたい周波数の制御が可能であるところ、特に、2液付加反応硬化型のシリコーン材料を発泡、硬化させてなるシリコーン発泡体から吸音体を得る場合には、発泡硬化させる際にシリコーン材料を型に入れて発泡、硬化させることで、その型内に投入するシリコーン材料の量(容積)、特に厚み(ウェット膜厚)によって独立気泡及び連通気泡の気泡率、比率制御を可能とし、吸音率の周波特性の制御を可能とする。
 具体的に、型に入れて発泡、硬化させるシリコーン材料の厚み(ウェット膜厚)を変化させたときの周波数特性の変化について、図14を参照して説明する。本発明者らは、上述の実施例1乃実施例4で使用したときと同じ2液付加反応/脱水縮合反応側のシリコーン材料を用い、そのシリコーン材料を発泡、硬化させるときの厚み(ウェット膜厚)を変えて、複数の10mm厚のシリコーン発泡体を作製した。そして、かかるシリコーン発泡体に所定の圧縮力(圧縮率90%)を付与することで吸音材のサンプルを得て、それらの吸音率を測定した。
 このとき、図13に示したように、シリコーン材料は、上治具J1、下治具J2及びスペーサS1,S2,R1,R2で囲んだ状態、即ち、型内で、発泡硬化させた。即ち、下治具J2(70mm×150mm)上にシリコーン材料を投入する厚み分(ウェット膜厚分)の所定厚みの1対のスペーサS1,S2を平行に配置し、そのスペーサS1,S2内に2液付加反応/脱水縮合反応側のシリコーン材料を流し込み、更に、1対のスペーサS1,S2の外側に1対の10mm厚のスペーサR1,R2を配置し、そのスペーサR1,R2の上に上治具J1(70mm×150mm)を配置した。なお、スペーサS1,S2及びスペーサR1,R2は、上治具J1、下治具J2の長辺側の対向する2辺のみの配置としている。このような上治具J1、下治具J2及びスペーサS1,S2,R1,R2で囲まれたシリコーン材料は、発泡、硬化したときに10mm厚に厚みが規制され、10mm厚のシリコーン発泡体となる。
 ここでは、下治具J2上のスペーサS1,S2内に投入されるシリコーン材料の厚さ(ウェット膜厚)を3.0mm、3.2mm、3.8mmとし、厚みを相違させたシリコーン材料をそれぞれ発泡硬化させて45mm×130mm×10mm厚のシリコーン発泡体を作製した。そして、かかるシリコーン発泡体は、離型し、乾燥(150℃×20分)した後、所定の圧縮力(圧縮率90%)を付与することで吸音材のサンプルとし、それらの吸音率を上記実施例のときと同様に測定した。吸音率の測定は、吸音材のサンプルをその長手方向で3等分し、長手方向の端部側のものと中央部のものとで測定を行った。図14のグラフに、厚みを相違させたシリコーン材料から得た各吸音体のサンプルについて、吸音率の周波数特性を測定した結果を示す。
 図14に示すように、厚みの規制下では、発泡、硬化させるシリコーン材料の厚さ(発泡前のウェット膜厚)が大きいときほど、1000Hz付近の吸音率が上がり吸音率のピーク周波数が低周波側に移動している。これは、発泡、硬化させるシリコーン材料の厚さ(発泡前のウェット膜厚)が大きいものでは、得られたシリコーン発泡体のスキン層の厚さが大きく、また、比重が高くて、表面の気泡の連通化、連通気泡数が少ないことから、膜振動による吸音特性が高くなり、それ故、1000Hz付近の吸音率が高く、吸音率のピーク周波数が低周波側に表れたものと推測される。換言すれば、発泡、硬化させるシリコーン材料の厚さ(発泡前のウェット膜厚)が薄いと、得られるシリコーン発泡体のスキン層の厚さは薄く、また、比重が小さくて、表面の気泡の連通化、連通気泡数が多く、それ故、1000Hz付近の吸音率が低く、吸音率の最大ピーク周波数が高周波側に表れるものと推測される。このことは、中央部側よりも端部側の方で吸音率のピーク周波数が低周波側にあることからも推測できる。即ち、中央部側では、端部側よりものスキン層の厚さが薄く、気泡が緻密で、また、圧縮の応力も集中しやすいことで、気泡が連通化されやすく連通気泡数が多くなるから、端部側よりも1000Hz付近の吸音率が低く吸音率のピーク周波数が高周波寄りになっているものと推測される。
 このように、2液付加反応硬化型のシリコーン材料を発泡、硬化させてなるシリコーン発泡体に所定の圧縮力を付与してなる吸音体によれば、型に入れて発泡、硬化させるシリコーン材料の厚みを制御することにより、スキン層の厚みや発泡の制御で圧縮される気泡の連通化の制御を可能とし、吸音の周波数特性の制御を容易とするものである。同様に、型の寸法の制御等でも、吸音の周波数特性の制御が可能である。しかし、本発明を実施する場合には、発泡、硬化させるシリコーン材料の厚みを規制したり、厚み方向に対する直角方向の幅を拘束したりすることなく自由発泡によりシリコーン発泡体を作製し、それに所定の圧縮力を付与した吸音体とすることも可能である。
 ところで、このようなシリコーン材料を発泡、硬化させてなる独立気泡型の発泡体(上記の比較例1に相当)と、そのような独立気泡型の発泡体に圧縮力を付与し、気泡を連通させてなる吸音材(上記の実施例1乃至実施例4に相当)について、それら表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、圧縮力付与前の独立気泡型の発泡体では、図15乃至図20に示すように、開口周囲に皺部や捲れ部がなく、また、角部や尖頭部がなく開口が全体的に丸い円形状である気泡Aが主体であるのに対し、独立気泡型の発泡体に所定の圧縮力を付与して得た吸音材では、図21乃至図26に示すように、開口周囲に皺部aや捲れ部bを有したり、角部dや尖頭部dのある開口形状を有したりする気泡Bが主体である。
 即ち、圧縮力付与前の独立気泡型の発泡体について、その表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、図15のSEM画像(×100)中の気泡の拡大を図16乃至図20のSEM画像(×300~×1000)で示すように、開口周囲に皺部や捲れ部を有したり、角部や尖頭部のある開口形状を有したりする気泡Bよりも、開口周囲に皺部や捲れ部がなく、また、角部や尖頭部がなく開口が全体的に丸い円形状である気泡Aが多く存在している。
 これに対し、独立気泡型の発泡体に対し圧縮力を付与してなる吸音材について、その表面の電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、図21のSEM画像(×100)中の気泡の拡大を図22乃至図26のSEM画像(×300~×1500)で示すように、開口周囲に皺部や捲れ部がなく、また、角部や尖頭部がなく開口が全体的に丸い円形状である気泡Aよりも開口周囲に皺部aや捲れ部bを有したり、角部dや尖頭部dのある開口形状を有したりする気泡Bが多く存在しており、全気泡の50%以上を占めている。好ましくは、60%以上、より好ましく70%以上である。
 なお、図16乃至図20及び図22乃至図26のSEM画像における気泡A(判定欄のA)または気泡B(判定欄のB)は、社内のモニター(N=8)により、開口(穴)の周囲が二重または幾重かの筋目(亀裂跡等)になっていたり(皺部a)、開口の周囲端が巻かれたように捲れあがっていたり(捲れ部b)、開口形状に窪みがあり角部cや尖頭部dを有したりするものは気泡Bとし、それ以外の開口が全体的に丸い円形であるものは気泡Aとしたときに、気泡Aまたは気泡Bの何れかで判断して、50%以上の人が気泡Aと判断したものを気泡Aと判定し、50%以上の人が気泡Bと判断したものを気泡Bと判定している。
 このように、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与してなる本実施の形態の吸音材では、その表面の気泡を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、開口が全体的に丸い円形である気泡Aよりも、開口周囲に皺部aや捲れ部bを有したり、角部dや尖頭部dのある開口形状を有したりする気泡Bが主体となっている。これは、気泡を連通化させる圧縮力の付与により、気泡が座屈変形、破泡したことで、気泡の開口縁部に皺部aや捲れ部bが生じたり、その開口形状が角部c、または尖頭部dを有するものに変形したりしたと推測される。
 こうして、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与してなる本実施の形態の吸音材では、気泡を連通化させる圧縮力の付与により、吸音材表面の気泡の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察において、開口周囲に皺部aや捲れ部bを有したり、角部dや尖頭部dのある開口形状を有したりする気泡Bが主体となっている。
 このような吸音材表面の電子顕微鏡(SEM)観察で、開口周囲に皺部aや捲れ部bを有したり、角部dや尖頭部dのある開口形状を有したりする気泡Bが主体である本実施の形態の吸音材では、上述したように、気泡壁、骨格や圧縮により連通した気泡内の気泡膜1との摩擦、粘性・通気抵抗による吸音効果、母材(樹脂、ゴムまたはエラストマ)の膜振動、共鳴による吸音効果、気泡、特に、圧縮による連通化で気泡膜1を有する連通気泡内における膜振動、共鳴による吸音効果等によって、薄い厚み及び軽量でも、中周波数域における吸音特性を高くでき、中周波数から高周波数に亘る幅広い周波数域において高い吸音特性が得られるものである。
 なお、図27に示すように、実施例1~3における圧縮力付与前の独立気泡構造のシリコーン発泡体(比較例1に相当)においては、その断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察で、全体的に丸みのある気泡が確認され、断面のスキン層や内部での気泡の破れが見られないのに対し、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与してなるシリコーン吸音材(上記の実施例1乃至実施例4に相当)においては、図28に示すように、その断面の走査型電子顕微鏡(SEM)の観察で、圧縮付与されたときに気泡が座屈変形、破泡し、吸音材の断面の表層及び内部で部分的な気泡の破れ部分Pや、吸音材の内部で破泡により形成された空隙部分Qが確認されている。よって、ポリマー相の気泡壁の破れが不均一に存在することやポリマー相に空隙があることも、中周波数域において高い吸音率となる一因であると推測できる。
 以上説明してきたように、本実施の形態に係る吸音材は、独立気泡を有する発泡体に圧縮力を付与してなる吸音材であって、圧縮力の付与により連通した気泡と独立気泡とを有するものである。
 本実施の形態に係る吸音材によれば、圧縮により連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造であるから、気泡壁、骨格や圧縮により連通した気泡内の気泡膜1との摩擦、粘性・通気抵抗による吸音効果、母材(樹脂、ゴムまたはエラストマ)の膜振動、共鳴による吸音効果、気泡、特に、圧縮による連通化で気泡膜1を有する連通気泡内における膜振動、共鳴による吸音効果等によって、薄い厚み及び軽量でも、中周波数域における吸音特性を高くでき、中周波数から高周波数に亘る幅広い周波数域において高い吸音特性が得られるものである。更に、吸音率を高くしても、圧縮により連通した気泡と独立気泡との気泡構造であることで、遮音率も高く、吸音率と遮音率が両立する。よって、騒音の拡散を効果的に防止することができる。
 特に、25%圧縮時の圧縮応力が2~30kPaの範囲内である発泡体に対し、圧縮力を付与することにより、気泡の連通率を高くして、中周波数域の吸音率を安定して高めることができる。
 更に、発泡体に対し、圧縮率が50~95%となるようにプレスすることで、中周波数域の吸音率を更に高めることができる。
 また、上記実施の形態は、連通した気泡と独立気泡を有し、比重が0.08~0.4の範囲内で、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内である吸音材の発明と捉えることもできる。
 即ち、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造で、比重を0.08~0.4の範囲内とし、かつ、25%圧縮時の圧縮応力を2~4.8kPaの範囲内としたものは、圧縮により連通した気泡を含むものであり、気泡壁、骨格や圧縮により連通した気泡内の気泡膜1との摩擦、粘性・通気抵抗による吸音効果、母材(樹脂、ゴムまたはエラストマ)の膜振動、共鳴による吸音効果、気泡、特に、圧縮による連通化で気泡膜1を有する連通気泡内における膜振動、共鳴による吸音効果等によって、中周波数域における吸音特性を高くでき、中周波数から高周波数に亘る幅広い周波数域において高い吸音特性が得られるものである。更に、吸音率を高くしても、圧縮により連通した気泡と独立気泡との気泡構造であり所定の比重であるから、遮音率も高く、吸音率と遮音率が両立する。よって、騒音の拡散を効果的に防止することができる。加えて、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8kPaの範囲内であるから、機械的強度も維持され、中周波数から高周波数帯における音の伝播による振動、騒音を長期間効果的に吸収、遮断することが可能である。
 特に、吸音材がシリコーン発泡体からなると、耐熱性が高いから、施工の適用範囲を広くでき、高熱源の周囲への施工でも高い吸音効果が得られる。そして、温度変化によってもシリコーン相(シリコーン樹脂相、シリコーンゴム相)の物性が変化し難いから、安定した吸音率が得られる。更には、中周波数域における吸音率に優れてその最大吸音率を高くできる。
 また、2液付加反応硬化型のシリコーン材料を発泡、硬化して独立気泡を有する発泡体を形成し、それに圧縮力を付与して連通化した気泡と独立気泡とを有する吸音材とするものでは、塗装ロボット等の塗装装置を使用した自動塗布を可能とし施工の手間を簡易化できる。更に、任意の塗布形状に形成でき、塗布後の形状調整も容易で扱いやすく、端材等の無駄を生じることもない。加えて、特定の成型用の密閉型に入れて成形しなくとも開放型で発泡、硬化が可能である。特に、液状のシリコーン材料を用いてそれを所望の部位に塗布してから、発泡、硬化させるものでは、閉鎖される空間において高充填率、高密着を可能とし、閉鎖空間での共鳴による騒音の増大の抑制効果も得られる。
 また、独立気泡及び連通気泡の平均セル径が、100~2000μmの範囲内であり、かつ、気泡壁の平均厚みが0.5~40μmの範囲内であれば、適度な気泡率で粘性損失の大きい空気が多く含まれるから、中周波数域における吸音率を安定的に高くでき、かつ、遮音効果にも優れ、吸音性と遮音性の両立化に優れる。
 そして、10mm厚さでの測定における1250Hz~4000Hzの周波数域における垂直入射吸音率が、0.45以上であり、かつその1250Hz~4000Hzの周波数域における最大吸音率が0.5以上であれば、人が聞き取りやすい周波数帯での高い吸音特性により、自動車等における車外騒音にも効果的であり、周囲に対する騒音の拡散の抑制効果が高いものである。
 特に、吸音材がシリコーン発泡体からなる場合、圧縮力を付与する発泡体が、25%圧縮時の圧縮応力が、好ましくは、2~20kPa、より好ましくは、3~15kPa、更に好ましくは、4~10kPaの範囲内であれば、圧縮荷重の付与により連通化した気泡率を高くでき、中周波数域から高周波数域に亘る広範囲の周波数帯で高い吸音率を示す吸音特性が安定して得られる。
 そして、圧縮力が付与され気泡が連通化したシリコーン発泡体からなる吸音材は、比重が、好ましくは、0.1~0.3、より好ましくは、0.11~0.28、更に好ましくは、0.13~0.25の範囲内であり、また、25%圧縮時の圧縮応力が、好ましくは、2.5~4Kpa、より好ましくは、2.6~3.5Kpa、更に好ましくは、2.8~3Kpaの範囲内であれば、適度な気泡率が得られ、かつ、圧縮荷重の付与により連通化した気泡率が高く、中周波数域から高周波数域に亘る広範囲の周波数帯で高い吸音率を示す吸音特性が安定して得られる。
 更に、吸音材がシリコーン発泡体からなる場合、気泡平均セル径が、好ましくは、100~500μm、より好ましくは、100~400μm、更に好ましくは、100~300μmの範囲内であり、かつ、気泡壁の平均厚みが、好ましくは、0.5~10μm、より好ましくは、0.6~5μm、更に好ましくは、0.8~3μmの範囲内であれば、人が聞き取りやすい周波数帯を含む中周波数域から高周波数域に亘る広い周波数帯において安定して優れた吸音率特性を発揮でき、かつ、遮音効果にも優れる。
 また、上記実施の形態は、樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなる吸音材であって、独立気泡及び連通した気泡を有し、吸音材表面の気泡を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した際に、開口周囲に皺部aや捲れ部bを有したり、角部dや尖頭部dのある開口形状を有したりする気泡Bが主体である吸音材の発明と捉えることもできる。
 即ち、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造で、吸音材表面の気泡を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した際に、開口周囲に皺部aや捲れ部bを有したり、角部dや尖頭部dのある開口形状を有したりする気泡Bが主体であるものは、圧縮により連通した気泡を含むものであり、気泡壁、骨格や圧縮により連通した気泡内の気泡膜1との摩擦、粘性・通気抵抗による吸音効果、母材(樹脂、ゴムまたはエラストマ)の膜振動、共鳴による吸音効果、気泡、特に、圧縮による連通化で気泡膜1を有する連通気泡内における膜振動、共鳴による吸音効果等によって、中周波数域における吸音特性を高くでき、中周波数から高周波数に亘る幅広い周波数域において高い吸音特性が得られるものである。更に、吸音率を高くしても、圧縮により連通した気泡と独立気泡との気泡構造であり所定の比重であるから、遮音率も高く、吸音率と遮音率が両立する。よって、騒音の拡散を効果的に防止することができる。
 加えて、連通した気泡と独立気泡との混成の気泡構造による柔軟特性、弾性があり、また、母材の樹脂、エラストマまたはゴムによる柔軟特性、弾性もあるから、共鳴、膜振動、弾性損失による吸音効果、更には、大きさの異なる独立気泡及び連続気泡の両方が併存することによる空気の流れ抵抗の変化や、気泡における空間共鳴による吸音効果もある。
 なお、本発明を実施するに際しては、吸音材のその他の部分の構成、成分、配合、製造方法等について、上記実施例に限定されるものではない。
 また、本発明の実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は製造コスト、製造が容易な形態等から決定した値であり、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。

Claims (9)

  1.  独立気泡を有し樹脂、エラストマまたはゴムからなる発泡体に対し、圧縮力を付与してなる吸音材であって、
     前記圧縮力の付与により前記気泡が連通した連通気泡と前記独立気泡とを有することを特徴とする吸音材。
  2.  前記圧縮力の付与は、25%圧縮時の圧縮応力が2~30kPaの範囲内である前記発泡体に対して行ったものであることを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
  3.  前記圧縮力は、前記発泡体に対して圧縮率が50~95%となるようにプレスしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸音材。
  4.  前記発泡体は、2液付加反応硬化型のシリコーン材料を発泡、硬化してなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の吸音材。
  5.  樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなる吸音材であって、
     独立気泡及び連通した気泡を有し、比重が0.08~0.4の範囲内であり、25%圧縮時の圧縮応力が2~4.8Kpaの範囲内であることを特徴とする吸音材。
  6.  樹脂、エラストマまたはゴムの発泡体からなる吸音材であって、
     独立気泡及び連通した気泡を有し、
     前記吸音材表面の気泡を走査型電子顕微鏡により観察した際に、開口周囲に皺部や捲れ部を有したり、角部や尖頭部のある開口形状を有したりする気泡が主体であることを特徴とする吸音材。
  7.  前記発泡体は、シリコーンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の吸音材。
  8.  前記独立気泡及び前記連通気泡は、その平均セル径が、100~2000μmの範囲内であり、気泡壁の平均厚みが0.5~40μmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の吸音材。
  9.  更に、10mm厚さでの測定における1250Hz~4000Hzの周波数域における垂直入射吸音率が、0.45以上であり、かつ、その1250Hz~4000Hzの周波数域における最大吸音率が0.5以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の吸音材。
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