JP6906278B2 - バリア性積層フィルムおよび食品用包装体 - Google Patents
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Description
このようなバリア性積層フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(国際公開第2004/048081号パンフレット)に記載のものが挙げられる。
こうした開発環境を踏まえ、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載されているような有機・無機ハイブリッド層を備えるバリア性積層フィルムは、水蒸気バリア性の点で改善の余地を有していることが判明した。
基材層と、有機・無機ハイブリッド層と、を備えるバリア性積層フィルムであって、
全反射測定法による上記有機・無機ハイブリッド層の赤外線吸収スペクトルにおいて、1070cm−1の近傍の波数における吸光度A(1070)に対する1190cm−1の近傍の波数における吸光度A(1190)の比(A(1190)/A(1070))が0.40以下であり、
上記基材層と上記有機・無機ハイブリッド層との間に無機物層をさらに備え、
上記有機・無機ハイブリッド層が水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物を含み、
上記有機ケイ素化合物が、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物(R1はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物(R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3であり、R2はビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、またはイソシアネート基を含む。nは1以上5以下である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種とを含むバリア性積層フィルム。
[2]
上記[1]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記水酸基含有高分子がポリビニルアルコール系樹脂を含むバリア性積層フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記無機物層が、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物を含むバリア性積層フィルム。
[4]
[1]乃至[3]いずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記無機物層が酸化アルミニウムを含むバリア性積層フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記無機物層と上記基材層との間にアンダーコート層をさらに備えるバリア性積層フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]いずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度X1が1.0g/(m2・24h)以下であるバリア性積層フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度をX1とし、
温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される、130℃で30分間レトルト処理した後の水蒸気透過度をX2としたとき、
X2/X1が10以下であるバリア性積層フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]いずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
食品用包装材に用いられるバリア性積層フィルム。
[9]
上記[7]または[8]に記載のバリア性積層フィルムを含む食品用包装体。
図1〜3は、本発明に係る実施形態のバリア性積層フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
バリア性積層フィルム100は、基材層101と、有機・無機ハイブリッド層103と、を備え、全反射測定法による有機・無機ハイブリッド層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、1070cm−1の近傍の波数における吸光度A(1070)に対する1190cm−1の近傍の波数における吸光度A(1190)の比(A(1190)/A(1070))が0.40以下である。
ここで、吸光度A(1190)及びA(1070)は、以下の手順に従って算出するものとする。
(1)バリア性積層フィルム100の有機・無機ハイブリッド層103側と、基材層101側の全反射赤外線吸収スペクトルを測定する。
(2)下記式(1)の係数αを調節して、有機・無機ハイブリッド層103側のスペクトルから、基材層101由来の吸収ピークを除去した差分スペクトルを得る。特に、860〜1300cm−1の波数範囲より高波数側で、かつこの波数範囲の近くに表れる比較的強い基材層101由来の吸収ピークを使って係数αを調整することが好ましい。例えば、基材層101としてよく使われるPETフィルムの場合、1720cm−1近傍のC=O伸縮振動のピークを除去できるように係数αを調節して下記式(1)により差分スペクトルを得る。
差分スペクトル=<有機・無機ハイブリッド層103側の全反射赤外線吸収スペクトル>−α×<基材層101側の全反射赤外線吸収スペクトル> (1)
(3)得られた差分スペクトルから、860〜1300cm−1の範囲を含む測定データを抽出し、860cm−1に最近接の測定点と1300cm−1に最近接の測定点との間を結ぶ直線をベースラインとし、スペクトルデータから差し引く。
(4)(3)で得たスペクトルデータから、1190cm−1に最近接の測定点の吸収強度をA(1190)とする。また、1060〜1080cm−1の範囲における最大吸光度を吸光度A(1070)とする。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、有機・無機ハイブリッド層の赤外線吸収スペクトルにおける特定のピークの強度比(A(1190)/A(1070))という尺度が、水蒸気バリア性を向上させるための設計指針として有効であることを見出した。
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100において、A(1190)/A(1070)を上記上限値以下とすることにより、水蒸気バリア性を効果的に向上させることができる。
A(1190)/A(1070)を上記上限値以下とすることにより、水蒸気バリア性を良好にできる理由は明らかではないが、A(1190)はシリカネットワークの緻密さを示すと考えられ、A(1190)/A(1070)が小さいほど、有機・無機ハイブリッド層103の構造はより緻密になり、その結果、水が通る孔が小さくなり、水蒸気バリア性が向上すると考えられる。
すなわち、本実施形態においてA(1190)/A(1070)は有機・無機ハイブリッド層103の緻密さの指標を表していると考えられる。
本実施形態においては、有機・無機ハイブリッド層103を構成する有機ケイ素化合物の種類を適切に選択することや、形成した有機・無機ハイブリッド層103に対し熱処理を行うこと、当該熱処理における加熱条件等が、上記A(1190)/A(1070)を制御するための因子として挙げられる。
例えば、有機・無機ハイブリッド層103に対し、熱処理を長時間おこなうと、上記A(1190)/A(1070)を低下させることができる。
上記水蒸気透過度は、例えば、有機・無機ハイブリッド層103のA(1190)/A(1070)や構成材料、厚み等を適切に調節することにより制御することが可能である。
X2/X1は、例えば、有機・無機ハイブリッド層103のA(1190)/A(1070)、アンダーコート層またはオーバーコート層の有無およびその組成、さらにバリア性積層フィルム100を構成する各層の厚み等を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態に係る有機・無機ハイブリッド層103は、例えば、水酸基含有高分子および有機ケイ素化合物を含む混合物を加熱して3次元架橋させることにより形成されたものである。すなわち、本実施形態に係る有機・無機ハイブリッド層103は、例えば、水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物を含むものである。これにより、得られるバリア性積層フィルム100のバリア性をより良好なものとすることができる。
本実施形態に係る水酸基含有高分子は、分子内に水酸基を有する高分子である。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、でんぷん、セルロース類等が挙げられる。
これらの中でも、バリア性の向上効果をより効果的に得ることができる観点から、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂はモノマー単位中に最も多く水酸基を含む高分子であるため加水分解後の有機ケイ素化合物の水酸基と非常に強固な水素結合を形成でき、その結果、バリア性により優れた有機・無機ハイブリッド層103を得ることができる。
ここで、ポリビニルアルコール系樹脂とは、一般にポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分ケン化ポリビニルアルコールや、酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化ポリビニルアルコールを含む。
本実施形態に係る有機ケイ素化合物は分子内に有機ケイ素基を有する高分子である。
有機ケイ素化合物としては、例えば、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物およびその加水分解生成物が挙げられる。ここで、R1はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3である。
式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物の中でも、水系の溶媒中において比較的安定である観点から、テトラエトキシシランが好ましい。
なお、本実施形態において、ケイ素アルコキシド化合物の加水分解生成物には、ケイ素アルコキシド化合物の部分加水分解生成物等も含まれる。
すなわち、本実施形態に係る有機・無機ハイブリッド層103は、(A)水酸基含有高分子と、(B)式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、(C)式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、の3つの成分を含むことが好ましい。
これにより、有機・無機ハイブリッド層103がより緻密な構造となり、その結果、バリア性により優れた有機・無機ハイブリッド層103を得ることができる。
また、Si(OR1)4がすべてSiO2に変換したと仮定した場合、有機・無機ハイブリッド層103中のSi(OR1)4由来のSiO2の含有量は、バリア性をより向上させる観点から、有機・無機ハイブリッド層103の全体を100質量%としたとき、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、50質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。
また、(R2Si(OR3)3)nがすべて(R2SiO1.5)nに変換したと仮定した場合、有機・無機ハイブリッド層103中の(R2Si(OR3)3)n由来の(R2SiO1.5)nの含有量は、バリア性をより向上させる観点から、有機・無機ハイブリッド層103の全体を100質量%としたとき、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態に係る有機・無機ハイブリッド層103は、例えば、(A)水酸基含有高分子と、(B)式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、(C)式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、を含む有機・無機ハイブリッド層用塗材を基材層101または無機物層102上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
ここで、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物や式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物の加水分解方法は、一般に知られているように、酸またはアルカリ触媒とアルコールと水とを用いて行われる。
図2に示すように、バリア性積層フィルム100において、水蒸気バリア性や酸素バリア性をさらに向上させる観点から、基材層101と有機・無機ハイブリッド層103との間に無機物層102をさらに備えることが好ましい。
無機物層102を構成する無機物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
上記無機物の中でも、酸化アルミニウムはレトルト処理による耐水性にも優れることから特に好ましい。酸化アルミニウムは、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比(モル比)は、Al:O=1:1.5〜1:2.0であることが好ましい。
本実施形態において、無機物層102の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
基材層101は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紙等の有機質材料により形成されており、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、およびポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種がより好ましい。
また、熱可塑性樹脂により構成された基材層101は、バリア性積層フィルム100の用途に応じて、単層であっても、二層以上であってもよい。
図3に示すように、バリア性積層フィルム100において、より均一で良質な無機物層102を形成し、バリア性をより向上させる観点から、無機物層102と基材層101との間にアンダーコート層104をさらに備えることが好ましい。
また、アンダーコート層104としては、分子内にビニル基を少なくとも1つ以上有する重合性モノマーまたはオリゴマーを基材層101上に塗布して、加熱や紫外線、電子線等による架橋反応によりアンダーコート層を形成させるものが好適である。
重合性モノマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや、各種単官能または多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル等のモノマーが挙げられる。中でも、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物またはウレタン(メタ)アクリレート系化合物から選択される少なくとも一種を硬化してなるアンダーコート層が好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を硬化してなるアンダーコート層がより好ましい。
これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物は、光重合開始剤および必要に応じて他の光重合開始剤あるいは熱反応性モノマーからなる希釈剤と共に、基材層101の表面に塗布され、その後紫外線等を照射して架橋反応によりアンダーコート層が形成される。
ポリウレタン系オリゴマーは、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合生成物から得ることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加体、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシリレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオフォスフェート等が挙げられる。
また、ポリオール化合物としては、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリエステル系ポリオール;アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマー等がある。
アクリレートを構成する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、必要に応じて、併用される。また、これらを重合させる方法としては、公知の種々の方法、具体的には電離性放射線を含むエネルギー線の照射または加熱等による方法が挙げられる。
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100は、ヒートシール性を付与するために、少なくとも片面に熱融着層を設けてもよい。
熱融着層としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独重合体若しくは共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリプロピレンランダム共重合体;低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体;エチレン・ブテン−1ランダム共重合体;プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体;等から選択される一種または二種以上のポリオレフィンを含む樹脂組成物により構成される層;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む樹脂組成物により構成される層;EVAおよびポリオレフィンを含む樹脂組成物により構成される層等が挙げられる。
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100は、例えば、食品、医薬品、日常雑貨等を包装するための包装用フィルム;真空断熱パネル用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。本実施形態に係るバリア性積層フィルム100は、水蒸気バリア性に優れていることから、食品用包装材として特に好適に用いることができる。
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100を含む包装体は水蒸気バリア性に優れていることから、食品用包装体として好適に用いることができる。また、本実施形態に係るバリア性積層フィルム100を含む包装体は、レトルト処理後の水蒸気バリア性にも優れているため、レトルト食品用包装体として特に好適に用いることができる。
(1)評価用多層フィルムの作製
厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:RXC−22)の片面に、ポリウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製、商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製、商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を乾燥後の厚みが3μmになるように塗布し、次いで、乾燥することによりポリウレタン系接着剤層を形成した。次いで、実施例・比較例で得られたバリア性積層フィルムの有機・無機ハイブリッド層面と無延伸ポリプロピレンフィルムのポリウレタン系接着剤層とが接するようにして、バリア性積層フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとを貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルムを得た。多層フィルムは、接着剤層を硬化させるため、40℃、5日間エージングを施した。
上記(1)で得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールし、袋状にした。その後、内容物として水を充填し、もう1方をヒートシールして袋をそれぞれ作製した。高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理を行い、袋のヒートシール部を除去してレトルト処理後の多層フィルムを得た。
(a)バリア性積層フィルム単体
バリア性積層フィルム単体の水蒸気透過度は、水蒸気透過率測定装置(モコン社製Permatran−W model 3/33)を用いて、測定面積50cm2、40℃、湿度90%RHの条件で測定した。
(b)多層フィルム
上記(1)で得られた多層フィルムおよび上記(2)で得られたレトルト処理後の多層フィルムのそれぞれについて、無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールし、袋状にした。その後、内容物として塩化カルシウムを入れた。次いで、もう1方をヒートシールして、内表面積が0.01m2の袋をそれぞれ作製した。次いで、得られた袋を40℃、湿度90%RHの条件で300時間それぞれ保管した。保管前後の塩化カルシウムの重量を測定し、その差から水蒸気透過度(g/(m2・24h))をそれぞれ算出した。
全反射赤外線吸収スペクトルの測定(ATR法)は日本分光社製FT/IR−300装置を用い、スペクトル品質を向上させるため多重反射測定ユニットATR PRO410−M(プリズム:Germanium結晶、入射角度45度、多重反射回数=5)装着し、室温で、分解能2cm−1、積算回数64回の条件で測定した。得られた吸収スペクトルから前述した式(1)を含む手順(1)〜(4)に従い、吸光度A(1070)および吸光度A(1190)をそれぞれ算出し、A(1190)/A(1070)を求めた。
(アンダーコート層用の塗材の調製)
アンダーコート層の形成には、溶剤含有アクリル樹脂(東レファインケミカル株式会社製、商品名:コータックスLH−635)、溶剤含有イソシアネート基末端ウレタン樹脂(三井化学株式会社製、商品名:タケネートA−10)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−9007)を用いた。配合比は、アクリル樹脂の水酸基量に対し、1.7倍のイソシアネート基量に相当するウレタン樹脂、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランは、アクリル樹脂とウレタン樹脂の合計量の10質量%とした。まず、LH−635にKBE−9007を加え、十分に撹拌・混合した後に、A−10と混合溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=1/1/2(重量比))を加えて、固形分濃度0.5質量%の塗布液:U液を調整した。
有機・無機ハイブリッド層の形成には、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、商品名:クラレポバールPVA124)、テトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−04)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−9659)を用いた。配合比は、KBE−04の加水分解物(SiO2換算):PVA124:KBM−9659の加水分解物(R2−SiO1.5)3換算)=6/4/0.72=56.0/37.3/6.7(重量比)とした。
具体的な配合は、以下の通りである。まず、KBE−04(2.5g)、KBM−9659(0.131g)、0.1N−HCl水溶液(1.94g)を混合し、2時間撹拌して加水分解反応を進行させた。さらに、イソプロピルアルコール(4.9g)、水(17.5g)を加え、1時間撹拌して、A液を調整した。次に、水:イソプロピルアルコール=9:1の混合液(97g)にPVA124(3g)を溶解させ、B液を調製した。そして、A液(27g)と、B液(16g)とを混合し、30分間撹拌して、固形分濃度3%の塗工液:H液を調整した。
基材層として、12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、商品名:エンブレットPET12)を用い、PET12のコロナ面にNo.4のバーコーターでU液を塗工し、80℃、5分間乾燥させた。塗工量は約0.06g/m2であった。さらに、100℃1時間及び、60℃12時間のエージングを実施し、アンダーコート層を十分に硬化させた。その後、アンダーコート層上にコロナ処理をおこなった。
次いで、電子線加熱方式の真空蒸着装置により、アルミニウムを加熱蒸発させ、さらに酸素を導入し、基材層のアンダーコート層のコロナ処理面に厚みが7nmになるように酸化アルミニウムを蒸着し、酸化アルミニウム蒸着フィルムを得た。
得られた酸化アルミニウム蒸着フィルムの酸化アルミニウム層上に、H液をアプリケーターで塗工し、120℃5分間乾燥させ、厚み約0.4μmの塗膜を形成した。次いで、130℃30分間の熱処理を実施し、有機・無機ハイブリッド層を形成した。
得られたバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
熱処理条件を調整することにより、上記A(1190)/A(1070)を表1に示す値に制御した以外は実施例1と同様にしてバリア性積層フィルムをそれぞれ作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られたバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
101 基材層
102 無機物層
103 有機・無機ハイブリッド層
104 アンダーコート層
Claims (9)
- 基材層と、有機・無機ハイブリッド層と、を備えるバリア性積層フィルムであって、
全反射測定法による前記有機・無機ハイブリッド層の赤外線吸収スペクトルにおいて、1070cm−1の近傍の波数における吸光度A(1070)に対する1190cm−1の近傍の波数における吸光度A(1190)の比(A(1190)/A(1070))が0.40以下であり、
前記基材層と前記有機・無機ハイブリッド層との間に無機物層をさらに備え、
前記有機・無機ハイブリッド層が水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物を含み、
前記有機ケイ素化合物が、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物(R1はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物(R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3であり、R2はビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、またはイソシアネート基を含む。nは1以上5以下である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種とを含むバリア性積層フィルム。 - 請求項1に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記水酸基含有高分子がポリビニルアルコール系樹脂を含むバリア性積層フィルム。 - 請求項1または2に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記無機物層が、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物を含むバリア性積層フィルム。 - 請求項1乃至3いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記無機物層が酸化アルミニウムを含むバリア性積層フィルム。 - 請求項1乃至4いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記無機物層と前記基材層との間にアンダーコート層をさらに備えるバリア性積層フィルム。 - 請求項1乃至5いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度X1が1.0g/(m2・24h)以下であるバリア性積層フィルム。 - 請求項1乃至6いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度をX1とし、
温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される、130℃で30分間レトルト処理した後の水蒸気透過度をX2としたとき、
X2/X1が10以下であるバリア性積層フィルム。 - 請求項1乃至7いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
食品用包装材に用いられるバリア性積層フィルム。 - 請求項7または8に記載のバリア性積層フィルムを含む食品用包装体。
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