以下、実施形態に係るサーマルヘッドについて図面を参照して説明する。なお、図面には、便宜上、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系、又はD1軸、D4軸及びD5軸からなる直交座標系を付す。サーマルヘッドは、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいが、便宜上、D3軸又はD5軸の正側を上方として、上面等の用語を用いることがある。
第1実施形態の説明後においては、基本的に、先に説明された実施形態との相違部分のみを説明する。また、第1実施形態の説明後においては、先に説明された実施形態の構成と共通または類似する構成について、先に説明された実施形態の構成に付した符号を用いることがある。先に説明された実施形態の構成と対応(類似)する構成について、先に説明された実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に言及がない点は、先に説明された実施形態の構成と同様とされてよい。
<第1実施形態>
(サーマルヘッドの全体構成)
図1は、第1実施形態に係るサーマルヘッド1の要部構成を示す平面図である。図2は、サーマルヘッド1の正面図である。図3(a)は図1のIII−III線断面図である。図3(b)は、図3(a)の一部拡大図である。なお、図1及び図2において、一部の部材(後述)は、図示が省略され、又は実線以外の線で示されている。また、図1及び図2において、一部の部材(後述)については、図解を容易にするために表面(断面ではない面)にハッチングを付している。
サーマルヘッド1は、その+D2側かつ+D3側の角部にてD1軸方向に延びている加熱ライン1aを有しており、その加熱ライン1a上を概ね+D2側かつ−D3側へ搬送される記録媒体P(図3(b))に印刷を行う。記録媒体Pは、例えば、感熱紙であり、加熱ライン1aから熱が付与されることにより印刷が行われる。又は、例えば、記録媒体Pは、感熱紙以外の紙であり、当該紙に重ねられたインクフィルムに加熱ライン1aから熱が付与されて熱転写が行われることにより印刷が行われる。なお、以下では、記録媒体Pとして感熱紙を例に取る(インクフィルムに言及しない)ことがある。
サーマルヘッド1は、例えば、加熱ライン1aを有するヘッド基体3と、ヘッド基体3に当接する放熱体5と、ヘッド基体3に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits)7とを有している。なお、図1では、FPC7を1点鎖線で示している。
ヘッド基体3は、例えば、概略、D3軸方向を厚さ方向とする板状に形成されている。また、ヘッド基体3は、平面視して、D1軸方向に延びる長辺及びD2軸方向に延びる短辺を有する長方形状に形成されている。加熱ライン1aは、ヘッド基体3の1辺(図示の例では一方の長辺)に沿って(例えば平行に)延びている。加熱ライン1aが沿う1辺とは反対側(他方の長辺側)は、FPC7が接続される端子側とされている。
加熱ライン1aは、D1軸方向に配列された複数の主発熱部21aを含んでいる。記録媒体Pが搬送方向Sへ加熱ライン1aを摺動しているときに複数の主発熱部21aの温度が個別に制御されることによって、記録媒体Pに任意の2次元画像が形成される。複数の主発熱部21aの数及び密度は適宜に設定されてよい。例えば、密度は、100dpi(dot per inch)以上2400dpi以下である。
放熱体5は、例えば、断面(図3(a)に示す面)が概略L字とされた部材であり、板状の台部5aと、台部5aから突出した突起部5bとを有している。放熱体5は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3における不要な熱を放熱する。台部5aの上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3の下面が接着されている。なお、突起部5bは必ずしも設けなくてもよい。
FPC7は、ヘッド基体3と電気的に接続されており、ヘッド基体3に電流および電気信号を供給する機能を有した配線基板である。FPC7は、絶縁性の樹脂層7a(図3(a))の内部に、パターニングされたプリント配線7b(図3(a))が複数設けられている。FPC7にはコネクタ9(図1及び図3(a))が設けられており、FPC7と外部とを電気的に接続している。
FPC7のプリント配線7bは、導電性接合材11(図3(a))を介してヘッド基体3の接続電極13(図1及び図3(a))と接続されている。それにより、ヘッド基体3とFPC7とが電気的に接続されている。導電性接合材11としては、半田材料あるいは電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電フィルム(ACF)を例示することができる。なお、導電性接合材11として半田材料を用いる場合に、接続電極13にAu、Ni、あるいはPd等のメッキを設けてもよい。
なお、FPC7と放熱体5との間には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板(不図示)を設けてもよい。また、配線基板としてFPC7を用いた例を示したが、可撓性のあるFPC7でなく、硬質な配線基板を用いてもよい。硬質なプリント配線基板としては、ガラスエポキシ基板あるいはポリイミド基板等の樹脂により形成された基板を例示することができる。また、配線基板を設けずに、ヘッド基体3の接続電極13に、直接コネクタ9を電気的に接続してもよい。
(ヘッド基体の構成)
ヘッド基体3は、基板15(図3(a)及び図3(b))と、その表面上に積層される種々の層とを有している。以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
(基板)
基板15は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料、あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。基板15の形状は、概略、ヘッド基体3の形状と同様である。すなわち、本実施形態では、基板15の形状は、概略、D3軸方向を厚さ方向とする板状であり、その平面視における形状は、D1軸方向に延びる長辺及びD2軸方向に延びる短辺を有する長方形である。
より詳細には、基板15は、例えば、断面視(D1軸に直交する断面)において台形状である。当該台形は、D1軸、D2軸及びD3軸のいずれかに直交する6面を有する直方体の+D2側かつ+D3側の角部が面取りされて、斜面15eが形成された形状である。以下では、基板15の台形の上底(+D3側に面するD3軸に直交する面)を主面15aという。
斜面15eは、加熱ライン1aが形成される領域となっている。斜面15eは、例えば、一定の幅で基板15の長辺全体に亘って延びている。斜面15eの傾斜角及び広さは適宜に設定されてよい。例えば、斜面15eの主面15aに対する傾斜角θ1(図3(b))は、10°以上40°以下である。
(グレーズ層)
基板15の表面上には、グレーズ層17(図3(a)及び図3(b))が設けられている。グレーズ層17は、主として斜面15e上に位置する第1グレーズ17aと、主として主面15a上に位置する第2グレーズ17bとを有している。第1グレーズ17aは、例えば、加熱ライン1aの内部側を構成しており、蓄熱に寄与したり、及び/又は加熱ライン1aの表面を適宜な形状にすることに寄与したりしている。第2グレーズ17bは、例えば、基板15の表面(例えば主面15a)よりも平坦に形成されることにより、その上に形成される導電層の断線及び/又は短絡のおそれを低減する。
第1グレーズ17aは、例えば、基板15の斜面15eの略全域(例えば斜面15eの幅方向の8割以上、長さ方向の8割以上)にわたって設けられている。別の観点では、第1グレーズ17aは、一定の幅で直線状に延びている。なお、図示の例では、第1グレーズ17aのD1軸方向に延びる1対の縁部は、斜面15eのD1軸方向に延びる1対の縁部の内側に位置しているが、第1グレーズ17aの少なくとも一方の縁部は、斜面15eの縁部に一致していてもよい。また、第1グレーズ17aは、基本的には、斜面15e内に収まっているが、主面15aにはみ出していてもよい。
第1グレーズ17aのD1軸に直交する断面の形状は、例えば、ドーム状(外側に突出する曲線状)である。その高さ、幅及び曲率は適宜に設定されてよい。また、曲線は、円弧であってもよいし、楕円の弧のように曲率が変化するものであってもよい。
なお、第1グレーズ17aの断面形状は、ドーム状の他、例えば、上面が平坦な形状(例えば矩形又は台形)であってもよいし、ドーム状と概念できる形状よりも突出した形状(例えば上底が平面又は曲面の錐台状)であってもよいし、ドーム形状の上面から突部が突出する形状(2段の形状)であってもよい。
第1グレーズ17aの表面が曲面であることから、第1グレーズ17a上の層も曲面状となる。以下において、第1グレーズ17a上の層について平面形状(単に形状ということもある。)という場合、例えば、平面状に展開した形状をいう。ただし、平面上(例えば斜面15e上)に投影した形状と捉えられてもよい。
第2グレーズ17bは、例えば、基板15の主面15aの略全域にわたって設けられており、また、第1グレーズ17aから離間している。
第1グレーズ17aおよび第2グレーズ17bは、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストをそれぞれ印刷した後、ガラスペーストを焼成することにより作製することができる。
第1グレーズ17aおよび第2グレーズ17bの厚みは適宜に設定されてよい。例えば、第1グレーズ17aおよび第2グレーズ17bの厚みは、30μm以上80μm以下である。
第1グレーズ17aの厚みは、第2グレーズ17bの厚さよりも薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。図3(a)では、第1グレーズ17aの厚さが第2グレーズ17bの厚さよりも厚い場合を例示している。さらに、図示の例では、第1グレーズ17aが相対的に厚いことによって、加熱ライン1aの表面がヘッド基体3の上面(加熱ライン1a以外の領域)よりも盛り上がっている。このように加熱ライン1aの表面がヘッド基体3の上面に近づけられると、又は該上面よりも高くされると、例えば、記録媒体Pとヘッド基体3の上面とを平行に近づけても記録媒体Pとヘッド基体3の加熱ライン1a以外の部分との不要な接触のおそれが低減される。
(下地層)
グレーズ層17上には、下地層19が設けられている。下地層19は、例えば、ヘッド基体3の製造過程において、下地層19よりも上の層をエッチングするときに、下地層19よりも下の層がエッチングされるおそれを低減することに寄与する。下地層19は、例えば、基板15の斜面15e及び主面15aの概ね全面に亘って設けられており、グレーズ層17の非配置領域においては基板15の表面上に直接に重なっている。
下地層19は、例えば、SiC、SiN、あるいはSiALON等の材料を用いて、スパッタリング等の薄膜形成技術により形成することができる。下地層19の厚みは、適宜に設定されてよく、例えば、0.01μm以上1μm以下である。なお、下地層19は必ずしも設ける必要はない。
(発熱体層)
下地層19上には、発熱体層21が設けられている。図1及び図2(並びに後述する他の図面)において、発熱体層21の表面には、ハッチングが付されている。発熱体層21は、加熱ライン1a内(第1グレーズ17a上)に、既述の複数の主発熱部21aと、複数の補助発熱部21bとを含んでいる(いずれも発熱体層21のうち後述する導電層23から露出している部分)。補助発熱部21bは、例えば、記録媒体Pが主発熱部21aによって加熱される前に、印刷がなされない温度で記録媒体Pを加熱することによって、主発熱部21aに要求される熱量を低減することに寄与する。これにより、例えば、印刷が高速化される。
複数の主発熱部21aは、例えば、D1軸方向に直線状に1列で配列されている。同様に、複数の補助発熱部21bは、例えば、D1軸方向に直線状に1列で配列されている。また、複数の補助発熱部21bは、複数の主発熱部21aに対してD1軸方向に直交する方向(D2軸方向。厳密には後述するD4軸方向)の一方側(−D2側。記録媒体Pの搬送方向の上流側)に位置している。
発熱体層21の全体の平面形状(パターン)は、例えば、複数の主発熱部21a及び複数の補助発熱部21bを除いて、後述する導電層23の平面形状と同一である。従って、ここでは複数の発熱体層21の平面形状の説明は省略する。なお、発熱体層21は、複数の主発熱部21a及び複数の補助発熱部21bのみ、又はこれらの発熱部及びその周囲の部分のみから構成されていてもよい。発熱体層21の厚さは適宜に設定されてよいが、例えば、0.01μm以上0.5μm以下である。
発熱体層21は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、主発熱部21a及び補助発熱部21bに電圧が印加されたときに、ジュール発熱によってこれらの発熱部が発熱する。
発熱体層21は、例えば、スパッタリング法等の薄膜成形技術によって薄膜を形成した後、フォトエッチング等を用いて前記薄膜を所定のパターンに加工することにより形成される。なお、発熱体層21のエッチングは、導電層23のエッチング(主発熱部21a上及び補助発熱部21b上のエッチングを除く)と共に行われてもよい。
(導電層)
発熱体層21の上には、導電層23が設けられている。導電層23は、例えば、主発熱部21a及び/又は補助発熱部21bに電圧を印加する各種電極(共通電極25、複数の主個別電極27及び複数の補助個別電極29)を含んでいる。これらについては、後に詳述する。また、導電層23は、既述の接続電極13を含んでいる。
複数の接続電極13は、基板15の主面15a上に設けられている。複数の接続電極13の+D2側の一端は、例えば、駆動IC31(図1及び図3(a))を実装するためのランド(符号省略)を構成している。複数の接続電極13の−D2側の他端は、既述のようにFPC7と接続される部分とされている。すなわち、複数の接続電極13は、FPC7と駆動IC31とを電気的に接続している。
導電層23は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀及び銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。導電層23は、例えば、スパッタリング法等の薄膜成形技術によって薄膜を形成した後、当該薄膜をフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、エッチングは、発熱体層21及び導電層23を共にエッチングする工程と、その後に主発熱部21a直上及び補助発熱部21b直上の導電層23をエッチングする工程との2段階に亘って行われてよい。
(駆動IC)
駆動IC31は、図1に特に示されているように、配置領域R1に位置している複数のランド上に表面実装されている。複数のランドは、例えば、複数の主個別電極27及び複数の補助個別電極29の−D2側の端部に構成された複数の主ランド27e及び複数の補助ランド29e、並びに複数の接続電極13の+D2側の端部によって構成されている複数のランド(符号省略)を含んでいる。
複数の主発熱部21a及び複数の補助発熱部21bは、複数の群に分けられており、駆動IC31は、各群に対応して配置されている。駆動IC31は、各主発熱部21a及び各補助発熱部21bの通電状態を制御する機能を有している。駆動IC31としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いてよい。駆動IC31は、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材33によって封止されている。
(保護層)
導電層23上には、保護層35が設けられている。なお、図1及び図2では、保護層35の図示を省略している。保護層35は、例えば、発熱体層21及び導電層23の記録媒体Pとの接触による摩耗、及びこれらの層の酸化・腐食を抑制することに寄与する。保護層35は、例えば、基板15の+D2側を表裏に亘って覆っている。具体的には、例えば、保護層35は、基板15の表面のうち、主面15aの斜面15e側の一部、斜面15e、+D2側の端面、及び−D3側の主面の+D2側の一部に亘って形成されている。保護層35は、導電層23の非配置領域においては、発熱体層21又は下地層19に直接に重なっている。
保護層35は、SiN、SiO、SiON、SiC、SiCN、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができる。保護層35は、本実施形態のように単層で構成してもよく、複数の層を積層して構成してもよい。保護層35はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
(被覆層)
導電層23上の保護層35の非配置領域には、被覆層37が設けられている。なお、図1及び図2では、被覆層37は図示が省略されている。また、被覆層37は、保護層35の一部に重なっていてもよい。被覆層37は、例えば、導電層23とヘッド基体3外部との絶縁、及び導電層23の酸化・腐食の抑制に寄与する。
被覆層37は、例えば、基板15の−D2側を表裏に亘って覆っている。具体的には、例えば、被覆層37は、基板15の表面のうち、主面15aの加熱ライン1aよりも−D2側の比較的広い範囲、−D2側の端面及び−D3側の主面の−D2側の領域に亘って形成されている。ただし、被覆層37のうち主面15a上の部分は、導電層23のうち、駆動IC31が実装される既述の複数のランド(配置領域R1)、及びFPC7が接合される複数の端子(端子部25f以外は符号省略)を露出させている。被覆層37は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
(発熱体層及び導電層のパターンの概要)
図4は、発熱体層21及び導電層23の加熱ライン1aにおける部分を拡大した展開図である。D4軸は、下地層19、発熱体層21及び導電層23等の表面に沿うとともにD1軸に直交する軸である。D5軸は、下地層19、発熱体層21及び導電層23等に直交する軸(法線に平行な軸)である。なお、図4は、斜面15eの平面図又は図1を単純に拡大した平面図と捉えられてもよい。
図1〜図4に示すように、導電層23において、共通電極25は、複数の主発熱部21aに共通に接続されており、複数の主発熱部21aに互いに同一の電位を付与する。複数の主個別電極27は、複数の主発熱部21aに別々に(例えば1つずつ別々に)接続されており、互いに独立に複数の主発熱部21aに電位を付与する。これにより、複数の主発熱部21aに互いに独立に電圧が印加される。
複数の主個別電極27は、複数の補助発熱部21bにも別々に(例えば1つずつ別々に)接続されており、各主個別電極27は、各主発熱部21aに付与している電位と同一の電位を各補助発熱部21bに付与する。複数の補助個別電極29は、複数の補助発熱部21bに別々に(例えば1つずつ別々に)接続されており、互いに独立に複数の補助発熱部21bに電位を付与する。従って、複数の補助発熱部21bは、互いに独立に電圧が付与される。また、各補助発熱部21bは、主個別電極27を介して接続されている主発熱部21aとも独立に電圧が付与される。
以下、主発熱部21a、補助発熱部21b、共通電極25、主個別電極27及び補助個別電極29それぞれについて詳述する。
(主発熱部)
複数の主発熱部21aは、例えば、D1軸方向に直線状に1列で配列されている。複数の主発熱部21aのピッチは、例えば、一定である。複数の主発熱部21aの形状は、例えば、互いに同一であり、また、図示の例ではD1軸及びD4軸に平行な辺を有する矩形である。当該矩形は、正方形であってもよいし、D1軸又はD4軸を長手方向とする長方形であってもよい。また、当該矩形の縦横比及び具体的な寸法は適宜に設定されてよい。
(補助発熱部)
複数の補助発熱部21bは、例えば、複数の主発熱部21aに対して記録媒体の搬送方向の上流側(−D4側)に位置しており、D1軸方向に直線状に1列で配列されている。複数の補助発熱部21bは、例えば、複数の主発熱部21aに対して1対1で設けられている(1対1で主個別電極27と接続されている。)。換言すれば、補助発熱部21bの数は、主発熱部21aの数と同数である。
複数の補助発熱部21bのD1軸方向における配列長さ(例えば、両端の補助発熱部21bの最も外側の部分間の距離。主発熱部21aについても同様。)は、複数の主発熱部21aのD1軸方向における配列長さと概ね同等である。補助発熱部21bのD1軸方向の大きさが主発熱部21aのD1軸方向の大きさと異なる場合等には、補助発熱部21bの配列長さは主発熱部21aの配列長さと異なるが、その差は、例えば、主発熱部21aのD1軸方向の大きさの2つ分未満である。
互いに対応する主発熱部21a及び補助発熱部21bの、第1グレーズ17a上におけるD4軸方向の位置、及びD4軸方向の相対距離等は適宜に設定されてよい。例えば、主発熱部21aの平面形状の図形重心は、断面ドーム状の第1グレーズ17aの頂点に位置していてもよいし、頂点よりも+D4側又は−D4側にずれていてもよい。
補助発熱部21bは、例えば、平面形状及び/又はピッチ等が主発熱部21aとは異なっている。これにより、例えば、主発熱部21aの役割とは異なる役割に即した作用が奏される。なお、ここでの平面形状の相違は、相似で寸法のみが異なる場合を含む。補助発熱部21bのピッチ及び平面形状は、具体的には、以下のとおりである。
複数の補助発熱部21bのピッチは、交互に変化するように2種設定されている。換言すれば、所定の第1ピッチで互いに隣接する2つの補助発熱部21bを1組の補助発熱部21bとして、複数組の補助発熱部21bが一定の第2ピッチで配列されている。互いに隣接する2つの補助発熱部21b間の隙間の大きさ(例えばD1軸方向の大きさ及び/又は最短距離)は、例えば、互いに隣接する2つの主発熱部21a間の隙間Gの大きさ(間隔g2)と同等である。
なお、2つの補助発熱部21b(及びその他の部材)を1組として配列する場合において、配列の端部においては、必ずしも2つ1組が成立するとは限らない。ただし、実施形態の説明においては、当該端部において1組が成立するか否かは無視して説明するものとする。
複数の補助発熱部21bの形状は、例えば、互いに同一である。また、各補助発熱部21bは、D4軸方向の両側の端部(縁部。例えばそのD1軸方向中心を基準としてよい。)を結ぶ方向(別の観点では補助発熱部21bの中心線)がD4軸に対して傾斜した形状とされている。各補助発熱部21bは、D4軸方向の両側の端部を結ぶ方向は、例えば、補助発熱部21bのD4軸方向の両側の端部を構成するそれぞれのD1軸方向に沿った辺の中心点を結ぶことにより求めることができる。傾斜角θ3は適宜に設定されよく、例えば、1°以上45°以下である。
具体的には、補助発熱部21bの形状は、例えば、D1軸及びD4軸に平行な4辺を有する平行四辺形である。補助発熱部21bにおいて、D1軸方向における幅(D1軸に平行な辺を底辺と定義したときの底辺の長さ)、D4軸方向における長さ(上記のように底辺を定義したときの平行四辺形の高さ)は、いずれが大きくてもよく、図示の例では高さの方が大きい。
なお、補助発熱部21bの形状は、上記の他、例えば、D4軸方向両側の1対の縁部が傾斜角θ3でD1軸に対して傾斜している矩形であってもよいし、台形状であってもよい。台形は、D1軸に平行な2辺が上底及び下底となるもの(D4軸方向の幅が変化する形状)であってもよいし、D4軸に角度θ3で傾斜する2辺が上底及び下底となるものであってもよい。
(主発熱部及び補助発熱部のD1軸方向の位置関係等)
各補助発熱部21bのD1軸方向の長さは、主発熱部21aのD1軸方向の長さよりも小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよく、図示の例では、小さい。また、各補助発熱部21bのD1軸方向の長さは、例えば、主発熱部21a間の隙間Gの大きさ(間隔g2)よりも大きい。
各補助発熱部21bは、例えば、D4軸方向に見て、少なくとも一部が、対応する主発熱部21a(主個別電極27を介して接続されている主発熱部21a。以下、同様。)と重複している。
また、上記のように補助発熱部21bが傾斜していることにより、及び/又は後述するように補助発熱部21bに接続される電極が傾斜していることにより、互いに隣り合う2つの補助発熱部21bは、対応する主発熱部21aとのD1軸方向の位置関係が互いに相違している。
具体的には、互いに隣り合う2つの補助発熱部21bのうち、主発熱部21a側から補助発熱部21b側への方向へ向かいつつ(−D4側へ向かいつつ)、他方の補助発熱部21b側(図示の例では−D1側)へ傾斜している補助発熱部21b(図示の例では+D1側の補助発熱部21b)は、D4軸方向に見て、対応する主発熱部21aと、その隣の主発熱部21aとの隙間Gと重複している。例えば、当該補助発熱部21bは、隙間Gの全体に亘っている。
また、もう一方の補助発熱部21b(主発熱部21a側から補助発熱部21b側への方向へ向かいつつ、主個別電極27側へ傾斜している補助発熱部21b)は、例えば、D4軸方向に見て、その全体が、対応する主発熱部21aに収まっている。
(共通電極)
共通電極25は、例えば、FPC7から付与された所定の電位(例えば基準電位)を複数の主発熱部21aに付与するように構成されている。具体的には、例えば、共通電極25は、図3(a)に特に示されているように、基板15の表面上において、斜面15eの+D2側から図3(a)の左回りに基板15の表面に沿って広がり、主面15aの−D2側に到達している。すなわち、共通電極25は、基板15の表面のうち、斜面15eの主発熱部21aよりも+D2側(+D4側)の一部、+D2側の端面、−D3側の主面、−D2側の端面、及び主面15aの−D2側の一部に亘って設けられている。そして、共通電極25は、斜面15e上において主発熱部21aに接続されており、主面15a上に位置する端子部25f(図1)おいてFPC7に接続されている。
共通電極25は、主発熱部21a及びFPC7に接続される端部を除いて、概略、基板15の幅(D1軸方向)と同等の幅を有している。共通電極25は、基板15の+D2側の端面上に位置している(別の観点では、複数の主発熱部21a(加熱ライン1a)に対して+D4側に位置している)主配線部25a(図2及び図3(a))と、主配線部25aから−D4側へ延びて複数の主発熱部21aに別々に(例えば1つずつ別々に)接続されている複数のリード部25cとを有している。
主配線部25aは、一定の幅でD1軸方向へ直線状に延びている。複数のリード部17cは、斜面15e上に位置しており、例えば、主配線部25aから一定の幅でD4軸方向に沿って(例えば平行に)延び、主発熱部21aの+D2側に接続されている。リード部17cの幅は、例えば、主発熱部21aの幅と同等である。主配線部25aとリード部17cとの境界は、例えば、概ね、斜面15eの+D4側の縁部上、又は第1グレーズ17aの+D4側の縁部上に位置している。ただし、上記境界は、上記縁部から+D4側又は−D4側へずらされていてもよい。
(主個別電極)
複数の主個別電極27は、例えば、図1に示されているように、基板15の主面15a上において、駆動IC31の位置から徐々に幅及びピッチを広げつつ延びて、斜面15e上(及び/又は第1グレーズ17a上)に至っている。
そして、複数の主個別電極27は、図1及び図4に示されているように、斜面15e上(及び/又は第1グレーズ17a上)においては、上記の主面15a上の部分から+D4側へ延び、複数の補助発熱部21bの間を経由して、複数の主発熱部21aの−D4側に接続されている。さらに、複数の主個別電極27は、折り返されて複数の補助発熱部21bの+D4側に接続されている。
換言すれば、図4に符号を付すように、主個別電極27は、主発熱部21aに向かって延びる往路部27aと、往路部27aの先端に位置して主発熱部21aに接続されている折返し部27bと、折返し部27bから補助発熱部21bに至る復路部27cとを含んでいる。
往路部27aの幅(中心線に直交する方向の長さ。中心線及び/又は長手方向が不明な場合はD1軸方向の長さでもよい。以下、図4又は図4に相当する図面における他の部材についても特に断りがない限り、同様。)は、例えば主発熱部21aの幅よりも狭い。往路部27aと、主個別電極27の主面15a上にて傾斜して延びている部分との境界は、例えば、概ね、斜面15eの主面15a側の縁部上、又は第1グレーズ17aの主面15a側の縁部上に位置している。ただし、上記境界は、上記縁部から+D4側又は−D4側へずらされていてもよい。
往路部27aは、補助発熱部21bよりも−D4側(主ランド27e側)に位置している幅広部27aaと、補助発熱部21b間を通過している幅狭部27abとを有している。
幅広部27aa及び幅狭部27abは、いずれも一定の幅で延びている。ただし、幅狭部27abの幅は、幅広部27aaの幅よりも狭くなっている。換言すれば、主個別電極27は、主ランド27eから主発熱部21aまでの途中に、主ランド27e側よりも幅が狭くなる部分を有している。より具体的には、例えば、幅狭部27abは、幅広部27aaに対して、補助発熱部21b側から狭くされている。両者の幅の差は適宜に設定されてよい。例えば、両者の幅の差は、幅広部27aaの幅bの10%以上30%以下である。
幅広部27aaの幅は、補助発熱部21bの幅よりも広くてもよいし、同等でもよいし、狭くてもよく、例えば、同等か、若干狭い。また、幅狭部27abの幅は、補助発熱部21bの幅よりも広くてもよいし、同等でもよいし、狭くてもよく、例えば、狭い。例えば、幅狭部27abの幅は、補助発熱部21bの幅の60%以上90%以下である。
幅広部27aaは、例えば、D4軸に沿って(例えば平行に)延びており、幅狭部27abは、D4軸に対して傾斜角θ3で傾斜して延びている。なお、本実施形態では、往路部27aは、曲がる位置と幅が変化する位置とが一致しているが、両者は互いにずれていても構わない。
折返し部27bは、例えば、概略矩形状に形成されている。折返し部27bの幅(D1軸方向)は、例えば、主発熱部21aの幅と同等である。
復路部27cは、例えば、D4軸に対して傾斜角θ3で傾斜して直線状に延びている。復路部27cの幅は、例えば、主発熱部21aの幅よりも狭く、また、補助発熱部21bの幅と同等である。また、復路部27cの幅は、上記のように往路部27aの幅が補助発熱部21bの幅よりも狭くされている場合においては、往路部27aの幅よりも広い。
(補助個別電極)
複数の補助個別電極29は、例えば、図1に示されているように、複数の主個別電極27と同様に、基板15の主面15a上において、駆動IC31の位置から徐々に幅及びピッチを広げつつ延びて、斜面15e上(及び/又は第1グレーズ17a上)に至っている。
そして、複数の補助個別電極29は、図4に符号を付しているように、斜面15e上(及び/又は第1グレーズ17a上)においては、上記の主面15a上の部分から延びて補助発熱部21bに至る接続部29aを有している。
接続部29aの幅は、例えば主発熱部21aの幅よりも狭い。接続部29aと、主面15a上にて傾斜して延びている部分との境界は、例えば、概ね、斜面15eの主面15a側の縁部上、又は第1グレーズ17aの主面15a側の縁部上に位置している。ただし、上記境界は、上記縁部から+D4側又は−D4側へずらされていてもよい。
接続部29aは、例えば、補助発熱部21bに接続されている幅広部29abと、幅広部29abから補助ランド29e側へ延びる幅狭部29aaとを有している。
幅広部29ab及び幅狭部29aaは、いずれも一定の幅で延びている。ただし、幅狭部29aaの幅は、幅広部29abの幅よりも狭くなっている。より具体的には、例えば、幅狭部29aaは、幅広部29abに対して、両側から狭くされている。なお、その狭くなる程度は、例えば、幅狭部29aaの両側のうち主個別電極27の往路部27a側の方が大きい。幅広部29ab及び幅狭部29aaの幅の差は適宜に設定されてよい。例えば、両者の幅の差は、幅広部29abの幅の10%以上30%以下である。
幅広部29abの幅は、例えば、補助発熱部21bの幅と同等である。幅狭部29aaの幅は、主個別電極27の幅狭部27abよりも狭くてもよいし、同等でもよいし、広くてもよく、例えば、広い。
また、幅狭部29aaは、例えば、D4軸に沿って(例えば平行に)延びており、幅広部29abは、D4軸に対して傾斜角θ3で傾斜して延びている。なお、本実施形態では、接続部29aは、曲がる位置と幅が変化する位置とが一致しているが、両者は互いにずれていても構わない。
(補助発熱部及び主個別電極の位置関係等)
上記のように、複数の主個別電極27の往路部27aは、複数の補助発熱部21b間(別の観点では複数の補助個別電極29間)を経由しているから、複数の往路部27aと複数の補助発熱部21b(複数の補助個別電極29)とはD1軸方向において交互に配列されている。本実施形態では、複数の往路部27aと複数の補助発熱部21bとは、2つずつ交互に配列されている。換言すれば、複数の補助発熱部21bは、2つずつ1組で配置され、その各組の2つの補助発熱部21b間には主個別電極27が介在していない(2つの補助発熱部21bが互いに隣接している。)。
駆動IC31の配置領域R1(図1)において、複数の主ランド27eは、適宜に(例えば1列に)配列されており、また、複数の補助ランド29eは、適宜に(例えば1列に)配列されている。この複数の主ランド27e及び複数の補助ランド29eも、例えば、複数の往路部27a及び複数の補助発熱部21bと同様に、2つずつ交互に配列されている。
往路部27aの幅は、既述のように主発熱部21aの幅よりも狭い。別の観点では、補助発熱部21bを挟んでいる2つの往路部27aは、互いに隣り合う2つの主発熱部21aから延びているとともに、2つの主発熱部21aの間隔g2よりも互いに離れている。その結果、基板15上には、2つの主発熱部21a及び2つの主個別電極27によって+D4側及びD1軸方向両側の3方が囲まれた空所SPが構成されている。補助発熱部21bは、その空所SPに位置していると捉えることができる。
(ギャップ)
補助発熱部21b(別の観点では復路部27c又は幅広部29ab)と主個別電極27(より具体的には往路部27aの幅狭部27ab)との間隔g1は、例えば、主個別電極27間(より具体的には折返し部27b間、又は補助発熱部21bを間に介在させない往路部27a間。別の観点では、主発熱部21a間(隙間G)、リード部25c間、又は往路部27aを介在させずに隣り合う2つの補助発熱部21b間等)の間隔g2よりも広くなっている。また、間隔g1は、例えば、主個別電極27の幅広部27aaと補助個別電極29の幅狭部29aaとの間隔g3よりも広くなっている。例えば、間隔g1と間隔g2との差は、間隔g2の50%以上80%以下である。なお、ここでいう間隔g1〜g3は、最短距離及び/又はD1軸方向における長さである。
(信号処理系の構成)
図5は、サーマルヘッド1の信号処理系の構成を示す模式図である。
主発熱部21a、補助発熱部21b、共通電極25、主個別電極27及び補助個別電極29の符号から理解されるように、図5では、互いに接続されている主発熱部21a及び補助発熱部21bの組み合わせが2組示されている。もちろん、他の組も図示と同様でよい。
駆動IC31は、例えば、複数の主発熱部21a及び複数の補助発熱部21bに電圧を印加する駆動部41と、複数の補助発熱部21bの温度を検出する温度計測部43とを有している。
駆動部41は、例えば、各組の主発熱部21a及び補助発熱部21bに電圧を印加する素子ユニット45を有している。
各素子ユニット45は、例えば、共通電極25の電位(図示の例とは異なり、基準電位でもよい)に対する主個別電極27の電位差が、外部から駆動IC31に入力された画像信号に応じたものになる電位を主個別電極27に付与する。これにより、複数の主発熱部21aは、画像信号に応じて互いに独立に電圧が印加され、ひいては、画像信号に応じて互いに独立に発熱が制御される。なお、上記の電位差は、連続的に、又は複数段階で変化してもよいし、2段階のみ(画像の濃淡を表現しない)ものであってもよい。
また、各素子ユニット45は、例えば、主個別電極27の電位に対する補助個別電極29の電位差が、所望の電位差になる電位を補助個別電極29に付与する。これにより、複数の補助発熱部21bは、所望の電位差に応じて互いに独立に電圧が印加され、ひいては、所望の電位差に応じて互いに独立に発熱が制御される。
上記の所望の電位差は、例えば、複数の補助発熱部21b間で互いに同一であってもよい。すなわち、所望の電位差は、複数の補助発熱部21b間における発熱量が互いに同一になるものであってもよい。この場合、画像に応じて複数の主個別電極27に互いに独立に電位が付与されているから、複数の補助個別電極29に付与される電位は、複数の主個別電極27に付与される電位に応じて(別の観点では画像に応じて)互いに個別に制御される。
また、上記の所望の電位差は、複数の素子ユニット45間(補助発熱部21b間)で互いに異なっていてもよい。
例えば、複数の主発熱部21a又は複数の補助発熱部21bは、D1軸方向の位置によって、外部から受ける温度の影響が互いに異なる。従って、例えば、駆動部41は、その影響の差を補償するように、上記の所望の電位差(発熱量)を複数の素子ユニット45間で異ならせ、複数の補助発熱部21bの温度を互いに同一にしてよい。
また、例えば、複数の主発熱部21a間で、前回の加熱から今回の加熱までの時間間隔は一定である一方で、前回の発熱量は画像信号に応じて互いに異なり、ひいては、前回から今回までの放熱量は互いに異なる。そこで、例えば、駆動部41は、放熱が十分でない主発熱部21aに対応する補助発熱部21bの温度を下げ、主発熱部21aの放熱を補償してもよい。
駆動部41は、各補助発熱部21b側から見て各補助個別電極29が開放端になるように全ての素子ユニット45を制御してもよい。すなわち、サーマルヘッド1は、補助発熱部21bによる加熱を利用しないサーマルヘッドとして利用されてもよい。
駆動部41は、例えば、補助発熱部21b毎に、温度計測部43が検出する補助発熱部21bの温度に基づいて、補助発熱部21bの温度が所望の温度になるように、上記の所望の電位差をフィードバック制御する。これにより、例えば、上記の各種の補償を行う制御等が正確に行われる。
なお、上記では、各補助発熱部21bにより検出した温度に基づいてその補助発熱部21bの発熱量を制御する態様について説明したが、各補助発熱部21bにより検出した温度に基づいて、対応する主発熱部21aの発熱量を制御したり、適宜に選択したいずれかの補助発熱部21bにより検出した温度に基づいて、その周囲の複数又はサーマルヘッド1全部の補助発熱部21b及び/又は主発熱部21aの発熱量を制御したりしてもよい。
以上のような動作を実現する素子ユニット45は、適宜に構成されてよい。例えば、素子ユニット45は、主個別電極27に接続されている主制御素子47と、補助個別電極29に接続されている補助制御素子49とを含んでいる。主制御素子47及び補助制御素子49それぞれは、例えば、増幅機能及び/又はスイッチ機能を有している素子であり、図5では、トランジスタが例示されている。
温度計測部43は、例えば、補助発熱部21bをサーミスタとして利用することにより、補助発熱部21bの温度を検出する。すなわち、概念的には、温度計測部43は、補助個別電極29を流れる電流を計測し、この計測した電流と、補助個別電極29の電圧とに基づく補助発熱部21bの抵抗値から温度を算出する。なお、具体的な算出方法は種々可能であり、ここでは説明を省略する。補助個別電極29の電圧は、駆動部41から得られる目標値であってもよいし、駆動IC31が有する不図示のセンサによって検出されてもよい。
なお、補助発熱部21bの種々の制御について例示したが、補助発熱部21bは、基本的には、一定の電圧が継続的に印加されてよいものである。従って、印加される電圧が画像に応じて変化する主発熱部21aをサーミスタとして利用する場合に比較して、温度算出の過程が簡素化及び/又は高精度化される。
(サーマルプリンタ)
図6は、サーマルヘッド1を有するサーマルプリンタ101の構成を示す模式図である。
サーマルプリンタ101は、サーマルヘッド1と、記録媒体P(感熱紙を例に取る)を搬送する搬送機構103と、記録媒体Pを加熱ライン1aに押し付けるプラテンローラ105と、これらに電力を供給する電源装置107と、これらの動作を制御する制御装置109とを備えている。
サーマルヘッド1は、サーマルプリンタ101の筐体(不図示)に設けられた取付部材111の取付面111aに取り付けられている。なお、サーマルヘッド1は、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向(D1軸方向)に沿うようにして、取付部材111に取り付けられている。
搬送機構103は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ113,115,117,119とを有している。搬送機構103は、記録媒体Pを矢印S方向に搬送して、サーマルヘッド1の複数の加熱ライン1a上に搬送する。駆動部は、搬送ローラ113,115,117,119を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ113,115,117,119は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体113a,115a,117a,119aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材113b,115b,117b,119bにより被覆して構成することができる。
なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体Pとサーマルヘッド1の主発熱部21aとの間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
プラテンローラ105は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを主発熱部21a上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ105は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体105aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材105bにより被覆して構成することができる。
電源装置107は、上記のようにサーマルヘッド1の主発熱部21a及び補助発熱部21bを発熱させるための電流および駆動IC31を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置109は、サーマルヘッド1の主発熱部21a及び補助発熱部21bを選択的に発熱させるために、駆動IC31の動作を制御する制御信号を駆動IC31に供給する。
サーマルプリンタ101は、プラテンローラ105によって記録媒体Pをサーマルヘッド1の加熱ライン1a上に押圧しつつ、搬送機構103によって記録媒体Pを加熱ライン1a上に搬送しながら、電源装置107および制御装置109によって複数の主発熱部21aを選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。この際の補助発熱部31bの制御方法については既に述べたとおりである。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
以上のとおり、本実施形態のサーマルヘッド1は、複数の主発熱部21aと、補助発熱部21bとを有している。複数の主発熱部21aは、所定面上(下地層19上)において当該下地層19に沿う第1方向(D1軸方向)に配列されている。補助発熱部21bは、下地層19上に位置しており、下地層19の法線方向(D5軸方向)に見てD1軸方向に直交する第2方向(D4軸方向)両側の端部を結ぶ方向がD4軸方向に対して傾斜している。
従って、例えば、補助発熱部がD4軸方向に平行な場合に比較して、補助発熱部21bのD1軸方向における配置範囲を確保することが容易化される。具体的には、例えば、図示の例のような平行四辺形の補助発熱部21bにおいては、D4軸方向両側の1対の縁部同士のずれの分だけ、補助発熱部がD4軸方向に平行な態様よりもD1軸方向における配置範囲が広くなる。また、例えば、補助発熱部21bの形状が矩形の場合においても、長辺がD1軸方向に平行な場合に比較して、D1軸方向における配置範囲が広くなる。補助発熱部21bのD1軸方向における配置範囲が広くなることにより、例えば、D1軸方向の広い範囲に亘って予熱を行うことができ、記録媒体Pの局所的な膨張のおそれが低減される。その結果、例えば、記録媒体Pに皺が発生するおそれが低減される。その一方で、例えば、D4軸に平行な補助発熱部の幅(D1軸方向)を単純に広くした場合に比較して、補助発熱部21bの面積の増大が抑制され、サーマルヘッド1の小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、補助発熱部21bは、複数の主発熱部21aに対してD4軸方向の一方側に位置している。
従って、例えば、補助発熱部21bが主発熱部21a間に位置する態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)とは異なり、主発熱部21aに搬送される記録媒体Pを予め加熱することができる。
また、本実施形態では、上記のように補助発熱部21bが複数の主発熱部21aに対してD4軸方向の一方側に位置する構成において、補助発熱部21bは、複数の主発熱部21aのうちの互いに隣り合う2つの主発熱部21aの隙間Gに対してD1軸方向における範囲が重複している。
従って、例えば、複数の主発熱部21a及び補助発熱部21b全体として、D1軸方向において隙間なく(又は隙間を低減して)記録媒体Pを加熱することができる。その結果、例えば、上記の記録媒体Pの局所的な膨張に起因する皺の発生を低減する効果が向上する。
また、本実施形態では、サーマルヘッド1は、複数の主発熱部21aからD4軸方向の一方側(−D4側)へ延びて補助発熱部21bのD1軸方向の外側を通過している複数の主個別電極27を更に有している。複数の主個別電極27は、D4軸方向に対して補助発熱部21bが傾斜している側と同一側へ傾斜している。
従って、例えば、補助発熱部21bを傾斜させて補助発熱部21bのD1軸方向の長さを確保しつつ、主個別電極27を補助発熱部21bに近接させて、補助発熱部21bの周囲のデッドスペースを低減乃至は無くすことができる。ひいては、ヘッド基体3の小型化が図られる。
なお、本実施形態は、補助発熱部21bの傾斜の観点ではなく、主個別電極27の傾斜の観点で捉えることもできる。すなわち、複数の主個別電極27は、D4軸方向に対して互いに同一側に傾斜している2つの主個別電極27を含む。補助発熱部21bは、前記2つの主個別電極27間に位置しており、かつ複数の主発熱部21aのうちの互いに隣り合う2つの主発熱部21aの隙間Gに対して、D1軸方向における範囲が重複している。
この観点では、補助発熱部21bをD1軸方向において挟む主個別電極27が互いに傾斜していることから、補助発熱部21bの位置をD1軸方向においてずらし、D4軸方向に見て隙間Gに位置させることができる。その結果、例えば、既に述べたような、複数の主発熱部21a及び補助発熱部21b全体として、D1軸方向において隙間なく(又は隙間を低減して)記録媒体Pを加熱することができる。
また、本実施形態では、複数の補助発熱部21bがD1軸方向に配列されている。複数の補助発熱部21bの配列長さと複数の主発熱部21aの配列長さとの差は主発熱部21aのD1軸方向における長さの2つ分未満である。
すなわち、補助発熱部21bは、D1軸方向の全域に亘って設けられている。従って、例えば、上記の記録媒体PのD1軸方向における加熱範囲を広くして皺を低減する効果がより確実に奏される。
また、本実施形態では、複数の主発熱部21aは、D4軸方向の両側の端部間の方向がD4軸方向に対して平行となっている。
従って、例えば、各主発熱部21aは、D1軸方向(記録媒体Pの搬送方向に直交する方向)の両端においても十分に記録媒体Pを加熱することができる。これにより、記録媒体P上の各ドット(印刷がなされた微小領域)は、その周囲の領域(印刷がなされていない領域)との境界が明確になる。その結果、例えば、バーコードの印刷等を好適に行うことができる。その一方で、既に述べたように、補助発熱部21bについては傾斜させることによって、D1軸方向の広い範囲について補助加熱を行うことができる。
また、本実施形態では、複数の主個別電極27と複数の補助発熱部21bとはD1軸方向に2つずつ交互に配列されている。
従って、例えば、図9に示す態様(後述する第2実施形態)との比較から理解されるように、各補助発熱部21bは、両側が往路部27aに隣接するのではなく、一方のみ往路部27aに隣接するから、補助発熱部21bから往路部27aに熱が逃げるおそれが低減される。
また、例えば、2つの補助発熱部21bが互いに隣り合うことから、補助発熱部21bを露出させるための導電層23のエッチングが容易化される。当該効果について、図7(a)及び図7(b)を参照して説明する。
図7(a)及び図7(b)は導電層23のエッチング方法を説明する平面図であり、図4に対応している。
発熱体層21となる薄膜及び導電層23となる薄膜が基板15の表面上に成膜されると、図7(a)に示すように、マスク51が形成される。マスク51は、発熱体層21の平面形状(パターン)と同一の平面形状を有している。そして、マスク51を介して発熱体層21となる薄膜及び導電層23となる薄膜が共にエッチングされる。これにより、発熱体層21が形成されるとともに、主発熱部21a及び補助発熱部21bの直上のエッチングがなされていない状態の導電層23が形成される。
次に、図7(b)に示すように、マスク53が形成される。マスク53には、複数の主発熱部21aの直上にて導電層23をエッチングするための主開口53aと、複数の補助発熱部21bの直上にて導電層23をエッチングするための補助開口53bとが形成されている。主開口53aは、例えば、複数の主発熱部21aに対して共通に設けられている。すなわち、主開口53aは、1つのみ設けられている。補助開口53bは、例えば、互いに隣り合う2つの補助発熱部21bに対して共通に設けられている。すなわち、補助開口53bは、複数の補助発熱部21bの数の半数で設けられている。そして、主開口53a及び補助開口53bを介して導電層23のエッチングが行われる。
ここで、図9に示す態様のように、複数の補助発熱部21bと複数の主個別電極27とが1つずつ交互に配列されている態様においては、特に図示しないが、複数の補助発熱部21bの1つずつに対して補助開口を形成しなければならない。その結果、例えば、パターニングが微細化し、加工誤差の影響が相対的に大きくなる。
(変形例)
図8は、第1実施形態のサーマルヘッド1の変形例を示す図であり、図4に相当する。
補助発熱部21b及びその周囲の電極が傾斜している場合においては、これらの傾斜角θ3及び/又はこれらの長さを種々設定することによって、第1実施形態における主発熱部21aと補助発熱部21bとのD1軸方向の位置関係とは異なる位置関係を実現することができる。図8は、その一例を示している。
具体的には、図8の変形例は、図4に比較して、傾斜角θ3が大きくされている。その結果、例えば、互いに隣り合う2つの補助発熱部21bは、いずれも、D4軸方向に見て、対応する主発熱部21aと、その隣の主発熱部21aとの隙間G(その少なくとも一部。図示の例では全部)と重複している。別の観点では、全ての隙間Gは、補助発熱部21bと重複している。
このようにすることにより、例えば、複数の主発熱部21a及び複数の補助発熱部21b全体として、隙間なく(又は隙間を低減して)記録媒体Pを加熱することができる。その結果、例えば、記録媒体Pの局所的な膨張に起因する皺を低減する効果が向上する。
なお、図4及び図8から理解されるように、補助発熱部21bをD4軸方向に長くすること等によっても、全ての補助発熱部21bそれぞれを隙間Gに重複させることができる。また、補助発熱部21bによって全ての隙間Gを埋めることに関しては、隙間Gの数は主発熱部21aの数よりも1つ少ないから、補助発熱部21bの数は、主発熱部21aの数よりも1つ少なくされてもよい。
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係るサーマルヘッド401の構成を説明するための図であり、第1実施形態の図4に相当する。
第1実施形態では、複数の主個別電極27(具体的には往路部27a)及び複数の補助発熱部21b(別の観点では補助個別電極29)は、D1軸方向において2つずつ交互に配列された。これに対して、本実施形態では、複数の主個別電極27及び複数の補助発熱部21bは、D1軸方向において1つずつ交互に配列されている。
それ以外については、基本的に、第2実施形態は第1実施形態と同様とされてよい。もちろん、主ランド27e及び補助ランド29eの配列の相違に合わせて、駆動IC31内の構成等は適宜に変更されてよい。また、主個別電極27の幅狭部27abは、幅広部27aaに対してD1軸方向の両側から幅が狭くされるなどして、両側の補助発熱部21bとの距離が同等に確保されてもよい。
本実施形態においても、補助発熱部21bが傾斜していることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、補助発熱部21bによって加熱する範囲をD1軸方向において広くすることができる。ひいては、局所的な熱膨張に起因する皺の発生を低減することができる。
また、本実施形態のように複数の主個別電極27及び複数の補助発熱部21bを1つずつ交互に配列している場合においては、例えば、第1実施形態に比較して、複数の補助発熱部21bによる記録媒体Pの加熱をD1軸方向において均等に行うことが容易化される。その結果、例えば、上記の記録媒体Pの局所的な膨張抑制の効果が向上する。
さらに、図8と図9との比較から理解されるように、傾斜角度θ3を大きくしなくても、全ての隙間Gに対して補助発熱部21bを重複させることができる。すなわち、全ての隙間Gに対して補助発熱部21bを重複させることが容易である。
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係るサーマルヘッド501の構成を説明するための図であり、第1実施形態の図4に相当する。
本実施形態は、第2実施形態と同様に、第1実施形態において、複数の主個別電極27及び複数の補助発熱部21bをD1軸方向において1つずつ交互に配列したものである。ただし、第3実施形態は、傾斜する方向が第2実施形態とは逆である。
具体的には、補助発熱部21b(及びその周囲の電極)は、D4軸方向に見て補助発熱部21bが主発熱部21a間の隙間Gに重複せず、補助発熱部21bの全体が主発熱部21aに重複するように傾斜している。別の観点では、互いに接続される主個別電極27(往路部27a等)及び補助発熱部21bは、主発熱部21a側から補助発熱部21b側への方向へ向かいつつ(−D4側へ向かいつつ)、往路部27a側に傾斜している。
従って、例えば、第2実施形態に比較して、記録媒体Pの主発熱部21aを通過する部分を重点的に予熱できる。その結果、例えば、主発熱部21aの発熱量を低減する効果が向上する。
ただし、特に図示しないが、第1実施形態の変形例と同様に、傾斜角θ3を大きくするなどすれば、補助発熱部21bを隙間Gに重複させたり、全ての隙間Gに補助発熱部21bを重複させたりすることができる。
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態に係るサーマルヘッド701の構成を説明するための図であり、第1実施形態の図4に相当する。
第1実施形態では、主個別電極27は、主発熱部21aに対する電圧印加だけでなく、補助発熱部21bに対する電圧印加に利用された。これに対して、本実施形態では、主個別電極627は、補助発熱部21bに対する電圧印加には利用されない。具体的には、以下のとおりである。
共通電極25及び補助個別電極29は、第1実施形態の共通電極25及び補助個別電極29と同様の構成とされてよい。本実施形態の導電層23は、主個別電極627の構成が第1実施形態の主個別電極27の構成と相違するとともに、補助間電極628が設けられている点が第1実施形態と相違する。
主個別電極627の、基板15の主面15a上における構成は、例えば、第1実施形態の主個別電極27と同様とされている(図1参照)。また、主個別電極627は、例えば、主個別電極27の往路部27a及び折返し部27bに相当する第1部分627a及び第2部分627bを有している。第1部分627aは、例えば、往路部27aの幅広部27aa及び幅狭部27abに相当する幅広部627aa及び幅狭部627abを有している。ただし、主個別電極627は、第1実施形態の主個別電極27の復路部27cに相当する部分を有しておらず、補助発熱部21bに接続されていない。
補助間電極628は、主個別電極627を介在させずに互いに隣り合う2つの補助発熱部21b同士を接続している。補助間電極628は、例えば、概略、四角形の3辺のように延びており、その両端が2つの補助発熱部21bの主発熱部21a側(+D4側)に接続されている。補助間電極628の補助発熱部21bに接続されている部分の幅は、例えば、補助発熱部21bの幅と同等である。補助間電極628の中途部分(例えばD1軸方向に平行な部分)の幅(ここではD4軸方向)は、補助間電極628の両端の幅よりも狭くてもよいし、同等でもよいし、広くてもよい。
図12は、サーマルヘッド701の信号処理系の構成を示す模式図であり、第1実施形態の図5に相当する。
主発熱部21aに対する電圧印加は、第1実施形態における電圧印加と同様である。すなわち、駆動部41は、主制御素子47によって、画像信号に応じた電位を主個別電極627に付与する。これにより、主発熱部21aには、主個別電極627と、所定の電位が付与されている共通電極25とによって画像信号に応じた電圧が印加される。ただし、主個別電極627は、第1実施形態と異なり、補助発熱部21bには接続されていないことから、主制御素子47からの電位(駆動信号)は、補助発熱部21bには付与されない。
本実施形態においては、駆動部41は、補助間電極628によって互いに接続されている2つの補助発熱部21bに対して、これらに接続されている2つの補助個別電極29を介して電圧を印加する。例えば、2つの補助個別電極29の一方には、所定の電位(例えば基準電位)が付与されており、2つの補助個別電極29の他方には、補助制御素子49によって所望の電位差に応じた電位が付与される(なお、当該説明に対して図12におけるトランジスタ及びグランドの記号の接続関係は正確なものではない)。
なお、所望の電位差については、図5を参照して説明したとおりである。ただし、本実施形態では、2つの補助発熱部21bが直列に接続されていることから、電位差は、その合成抵抗に応じたものとされる。
温度計測部43は、例えば、2つの補助発熱部21bを流れる電流を計測することにより、2つの補助発熱部21bの平均的な温度を計測する。計測された温度の利用方法は、図5を参照して説明したとおりである。
本実施形態においても、補助発熱部21bが傾斜していることから、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、補助発熱部21bによって加熱する範囲をD1軸方向において広くすることができる。ひいては、局所的な熱膨張に起因する皺の発生を低減することができる。
また、本実施形態では、サーマルヘッド601は、隣り合う2つの補助発熱部21bを互いに接続する補助間電極628を更に有している。
従って、例えば、2つの補助発熱部21bは、2つの補助個別電極29によって電圧が印加されることになり、主個別電極627に接続される必要がない。その結果、例えば、主発熱部21a及び補助発熱部21bは、主個別電極627による熱的な接続がなされず、相互影響が低減される。ひいては、主発熱部21a及び補助発熱部21bそれぞれの温度制御を正確に行うことが容易化される。また、主発熱部21a及び主個別電極627に囲まれた空所SPに補助発熱部21b及び補助間電極628を配置して小型化を図ることができる。
なお、以上の実施形態において、下地層19の上面は所定面の一例であり、D1軸方向は第1方向の一例であり、D4軸方向は第2方向の一例である。所定面は、複数の主発熱部21a及び複数の補助発熱部21bが配置される面である。下地層19が設けられない場合は、例えば、グレーズ層17の上面及び基板15の表面のうちグレーズ層17から露出した領域によって構成されてよい。
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、実施形態では、加熱ラインが基板の主面と端面との角部の面取り面(斜面)に設けられる態様を例示したが、主面又は端面に加熱ラインが形成されてもよい。
補助発熱部は、主発熱部に対して独立に制御される必要はなく、例えば、駆動ICと共通電極との間で、主発熱部と直列に接続されていてもよい。また、補助発熱部が主発熱部とは独立に制御される場合、例えば、実施形態では、補助発熱部は、主個別電極と補助個別電極とによって、又は補助個別電極と補助間電極とによって電圧が印加されたが、複数の主発熱部及び/又は複数(3以上)の補助個別電極に共通に接続されている共通電極と、補助個別電極とによって電圧が印加されてもよい。
補助発熱部は、複数設けられるのではなく、複数の主発熱部に対して共通に1つ設けられてもよい。補助発熱部は、複数の主発熱部に対して記録媒体の搬送方向の上流に位置するのではなく、側方に位置してもよい。