<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜4を参照して説明する。サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたコネクタ31とを備えている。なお、図1では、コネクタ31の図示を省略し、コネクタ31が配置される領域を一点鎖線で示している。
なお、以下、外部との電気的な接続をするための接続部材としてコネクタ31を用いて説明するが、可堯性のあるフレキシブルプリント配線板、ガラスエポキシ基板あるいはポリイミド基板等、他の部材を用いてもよい。フレキシブルプリント配線板により外部と電気的な接続をする場合、フレキシブルプリント配線板と放熱体1との間には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板(不図示)を設けてもよい。
放熱体1は、板状に形成されており、平面視して長方形状をなしている。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。また、放熱体1の上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。
ヘッド基体3は、平面視して、板状に形成されており、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体(不図示)に印字を行う機能を有する。
コネクタ31は、図1,2に示すように、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収納するハウジング10とを有している。複数のコネクタピン8は、一方がハウジング10の外部に露出しており、他方がハウジング10の内部に収容されている。複数のコネクタピン8は、ヘッド基体3の各種電極と、外部に設けられた例えば電源との電気的な導通を確保する機能を有しており、それぞれが電気的に独立している。
ハウジング10は、各コネクタピン8をそれぞれ電気的に独立された状態で収納する機能を有するため、絶縁性の部材により構成されている。そして、ハウジング10は、外部に設けられたコネクタ(不図示)の着脱により、ヘッド基体3に電気を供給している。コネクタピン8は、導電性を有する必要があるため、金属あるいは合金により形成されており、ハウジング10は、例えば、熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂あるいは光硬化性の樹脂により形成されている。
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。蓄熱層13は、基板7の上面の左半分にわたり形成された下地部13aと、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状をなしている隆起部13bとを有している。下地部13aは、発熱部9の近傍に設けられており、後述する保護層25の下方に配置されている。隆起部13bは、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された保護層25に良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することで形成される。
電気抵抗層15は蓄熱層13の上面に設けられており、電気抵抗層15上には、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。電気抵抗層15は、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。電気抵抗層15の露出領域は、図1に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1で簡略化して記載しているが、例えば、600dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、複数の個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。これらの接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極17は、基板7の一方の長辺に沿って延びる主配線部17aと、基板7の一方および他方の短辺のそれぞれに沿って延びる2つの副配線部17bと、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びる複数のリード部17cと、基板7の他方の長辺に沿って延びる主配線部17dとを有している。共通電極17は、一端部が複数の発熱部9と接続され、他端部がコネクタ31に接続されることにより、コネクタ31と各発熱部9との間を電気的に接続している。
複数の個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、他端部が駆動IC11に接続されることにより、各発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数のIC−コネクタ接続電極21は、一端部が駆動IC11に接続され、他端部が基板7の端面7a側に引き出された接続端子2に接続されている。それにより、コネクタ31に電気的に接続されることにより、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数のIC−コネクタ接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。
グランド電極4は、個別電極19と、IC−コネクタ接続電極21と、共通電極17の主配線部17dとにより取り囲むように配置されており、広い面積を有している。グランド電極4は、0〜1Vのグランド電位に保持されている。
グランド電極4は、接続端子2に隣り合うように切欠部14が設けられている。切欠部14は、複数の接続端子2に対応して複数設けられている。なお、切欠部14は、グランド電極4を形成するマスクパターンに、切欠部14を形成するためのパターンを形成することにより作成することができる。また、レーザーを照射して、切欠部14となる位置のグランド電極4を取り除くことにより切欠部14を形成してもよい。
接続端子2は、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21およびグランド電極4をコネクタ31に接続するために基板7の端面7a側に引き出されている。コネクタピン8に対応して接続端子2が設けられており、コネクタ31に接続する際は、それぞれ電気的に独立するようにコネクタピン8と接続端子2とが接続されている。
複数のIC−IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11を電気的に接続している。複数のIC−IC接続電極26は、それぞれIC−コネクタ接続電極21に対応するように設けられており、各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部とIC−コネクタ接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いればよい。
上記の電気抵抗層15、接続端子2、共通電極17、個別電極19、グランド電極4、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、接続端子2、共通電極17、個別電極19、グランド電極4、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、同じ工程によって同時に形成することができる。
図1,2に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。なお、図1では、説明の便宜上、保護層25の形成領域を一点鎖線で示し、これらの図示を省略している。
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。保護層25は、SiN、SiO、SiON、SiC、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができ、保護層25を単層で構成してもよいし、これらの層を積層して構成してもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
また、図1,2に示すように、基板7上には、共通電極17、個別電極19およびIC−コネクタ接続電極21を部分的に被覆する被覆部材27が設けられている。なお、図1では、説明の便宜上、被覆部材27の形成領域を一点鎖線で示している。被覆部材27は、共通電極17、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。なお、被覆部材27は、共通電極17および個別電極19の保護をより確実にするため、図2に示すように保護層25の端部に重なるようにして形成されている。被覆部材27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することが
できる。
被覆部材27は、駆動IC11と接続される個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、開口部を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21に接続された状態で、駆動IC11の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続部の保護のため、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなるハードコート29によって被覆されることで封止されている。被覆部材27の高さは、サーマルヘッドX1の態様にあわせて適宜設定することができるが、10〜30μmとすることが好ましい。
図3,4を用いて、コネクタ31とヘッド基体3との電気的な接続について説明する。なお、図3(a)においては、コネクタ31を覆う保護部材12について省略して示している。
被覆部材27は、図3(a)に示すように、基板7の主面(不図示)の端面7a側において、各種電極が露出した露出部16が設けられている露出部16から接続端子2が露出しており、接続端子2がコネクタ31と電気的に接続されている。
図3(b),4に示すように、コネクタ31は、基板7上に設けられており、接続端子2と、コネクタピン8とは、導電部材23により電気的に接続されている。導電部材23は、例えば、はんだ、あるいは電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電接着剤等の、加熱することにより電気的に接続するものを例示することができる。本実施形態においては、リフローする際に熱を加えるはんだを用いて説明する。コネクタピン8は、導電部材23に覆われることにより電気的に接続されている。なお、導電部材23と接続端子2との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。
図3,4に示すように、サーマルヘッドX1は、コネクタ31の少なくとも一部を保護するための保護部材12が設けられている。保護部材12は、コネクタピン8、ハウジング10の上面の一部、および被覆部材27の一部を覆うように設けられている。保護部材12は、平面視して、露出部16を完全に覆うように設けられている。
保護部材12は、例えば、熱硬化性樹脂、熱軟化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂により形成することができる。また、各接続端子2が、電気的に独立する必要がある場合は、絶縁性であることが好ましい。
また、保護部材12は、コネクタ31のコネクタピン8を覆うことにより電気的な導通を保護しているが、図4に示すように、ハウジング10の上面の一部にも設けられることが好ましい。これにより、コネクタピン8の全領域を保護部材12により覆うことができ、さらに電気的な導通を保護することができる。
また、図4に示すように、保護部材12は、ハウジング10と基板7の端面7aとの間に設けられることが好ましい。これにより、コネクタ31の上面に設けられた保護部材12により、基板7の厚み方向の接合強度を高めるとともに、ハウジング10と基板7の端面7aとの間に設けられた保護部材12により、コネクタピン8の延びる方向の接合強度を高めることができる。そのため、基板7とコネクタ31との接合強度をさらに高めることができる。特に、ハウジング10の上面の一部に保護部材12を設けることにより、剥離が生じやすいハウジング10の上面の接合強度を向上させることができる。なお、基板7の端面7aとハウジング10との間に隙間を設けずに、基板7の端面7aとハウジング
10とが接触する構成としてもよい。
また、図3(a)に示すように、コネクタ31のハウジング10の側面と、基板7の端面7aとに挟まれた領域30に保護部材12が設けられていることが好ましい。保護部材12が、この領域30に設けられることで、ハウジング10を基板7に強固に固定することができる。つまり、ハウジング10に、発熱部9の配列方向における外力が働いた場合に、領域30に設けられた保護部材12が、この外力を緩和することができる。また、領域30に設けられた保護部材12は、図3(a)に示すように、平面視して、側面が基板7の端面7aおよびハウジング10の側面に向けて凸形状を有することが好ましい。これにより、配列方向における外力に対して、コネクタ31を強固に固定することができる。
図3(a)に示すように、グランド電極4は、接続端子2に隣り合う切欠部14を有している。そのため、導電部材23をリフローする際に必要な熱が、接続端子2を伝わってグランド電極4に放熱される可能性を低減することができる。特に、グランド電極4は、平面視面積が大きく、グランド電極4に接続された接続端子2は、他のIC−コネクタ接続電極21に接続された接続端子2よりも放熱しやすい構成となるため、特に有効である。
つまり、サーマルヘッドX1のグランド電極4には、接続端子2に隣り合うように切欠部14が設けられていることにより、接続端子2から伝わった熱が、周囲に比べて断面積の小さい部位である切欠部14にて熱が伝導されにくい構成となっている。それにより、導電部材23を加熱する際に生じた熱が接続端子2から放熱される可能性を低減することができ、リフローに必要な熱量を確保することができる。その結果、導電部材23の接合強度が低下する可能性を低減することができ、サーマルヘッドX1の接続信頼性を向上させることができる。
また、切欠部14が、各接続端子2に対応して設けられていることから、各接続端子2において、リフローに必要な熱量を確保することができる。さらに、切欠部14は、接続端子2に隣り合うように配置されているが、接続端子2とは離間している。それにより、接続端子2とグランド電極4との電気的な接続を確保することができる。
切欠部14の発熱部9の配列方向における長さ(以下、単に長さと称する場合がある)は、接続端子2の長さの50%よりも長いことが好ましい。これにより、切欠部14にて熱伝導を抑えることができる。また、切欠部14の長さは、接続端子2の長さよりも長いことがさらに好ましい。これにより、切欠部14にて熱伝導をさらに抑えることができる。
切欠部14の記録媒体(不図示)の搬送方向における幅(以下、単に幅と称する場合がある)は、30〜100μmであることが好ましい。この範囲にあることで、接続端子2からの放熱を抑えることができるとともに、グランド電極4の電流容量が低下することを抑えることができる。
なお、導電部材23としてはんだを用いる例を説明したが、異方性導電接着剤を用いてもよい。その場合、露出部16の全域にわたって異方性導電接着剤を設け、ヒーターバーを用いて、異方性導電接着剤を熱圧着することにより、接続端子2と外部とを電気的に接続することができる。この場合においても、切欠部14により熱が伝導することを低減することができ、導電部材23の接合強度が低減する可能性を抑えることができる。
次に、サーマルプリンタZ1について、図5を参照しつつ説明する。
図5に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタZ1は、図5に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
図6を用いて、他の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。なお、図6においては、グランド電極104以外の他の部材の構成は同様であり、説明を省略する。図7についても同様である。
図6(a)に示すサーマルヘッドX2は、グランド電極104は、基板7の端面7a側に設けられた接続端子102に接続されている。接続端子102は、サーマルヘッドX1における3つの接続端子2を分割せずに設けた構成となっている。このように、グランド電極104に接続される接続端子102を1つとしてもよい。
切欠部114は、グランド電極104における駆動IC11と接続端子102との間に配置され、発熱部9の配列方向に沿って延びる延伸部114aと、発熱部9の配列方向において駆動IC11よりも突出した突出部114bとを有している。また、切欠部114
は、平面視して、発熱部9の配列方向に沿って直線状に設けられている。言い換えると、平面視して、発熱部9の配列方向における切欠部114の長さは、発熱部9の配列方向における駆動IC11の長さよりも長くなっている。つまり、突出部114bは、発熱部9の配列方向において、切欠部114のうち駆動IC11の長さよりも長い部分である。
延伸部114aは、駆動IC11と接続端子102との間に配置されており、駆動IC11の長さと略同等の長さを有する。駆動IC11の長さと略同等とは、製造誤差範囲のものを含み駆動IC11の長さの±10%であることを示す。
突出部114bは、発熱部9の配列方向に駆動IC11から突出している部位を示しており、記録媒体の搬送方向においては、突出部114bの下流側に駆動IC11が位置していない。突出部114bの長さは、隣り合う駆動IC11の離間距離の50±20%程度であることが好ましい。
サーマルヘッドX2は、切欠部114が駆動IC11と接続端子102との間に設けられている。また、駆動IC11と略同じ長さである延伸部114aを有している。そのため、接続端子102と切欠部114を挟んで対向する駆動IC11までの電流経路を長くすることができる。すなわち、駆動IC11を流れた電流は、接続端子102に到達するまでに切欠部114を回り込むように流れることとなる。
それにより、接続端子102からの発熱部9の配列方向における中央部に位置する駆動IC11aまでの電流経路を、接続端子102からの発熱部9の配列方向における端部に位置する駆動IC11bまでの電流経路に近づけることができる。そのため、各駆動IC11を流れ、接続端子に流れ込む電流の配線抵抗を近づけることができ、サーマルヘッドX2の発熱部9の配列方向における印字ムラを低減することができる。これは、グランド電極104が薄膜技術により形成され、グランド電極104の厚さが0.5〜1.5μm程度の厚みの場合に、特に効果を奏する。
また、切欠部114は、突出部114bを有している。そのため、駆動IC11aまでの電流経路をさらに長くすることができる。また、突出部114bの長さを調整することにより、駆動IC11aまでの電流経路を簡単に調整することができる。具体的には、中央部に位置する駆動IC11aまでの電流経路を長くしたい場合には、突出部114bの長さを長くすればよい。
さらにまた、サーマルヘッドX2は、突出部114bを有することから、接続端子102から隣り合う駆動IC11a,11bの対向する端部までの電流経路を均一に近づけることができる。それにより、各駆動IC11間での接続端子102からの電流経路を均一に近づけることができ、各駆動IC11間の配線抵抗に起因する濃度ムラが生じる可能性を低減することができる。
なお、切欠部114は、駆動IC11と切欠部114との離間距離と、接続端子102と切欠部114との離間距離とが、均一なことが好ましい。それにより、配線抵抗が大きくなる可能性を低減することができる。また、接続端子102と切欠部114との離間距離が、駆動IC11と切欠部114との離間距離よりも小さくすることで、接続端子102からの放熱を低減することができる。
図6(b)を用いてサーマルヘッドX2の変形例について説明する。サーマルヘッドX2は、グランド電極204が傾斜部214a,214bを有している。傾斜部214aは、駆動IC11と接続端子102との間に配置されており、傾斜部214bは、駆動IC11から突出している。
傾斜部214a,214bは、平面視して、接続端子102との離間距離が、発熱部9の配列方向において、中央部から両端部に向かうにつれて大きくなっている。そのため、中央部にて接続端子102と切欠部214との離間距離が最も近くなっている。それゆえ、切欠部214により接続端子102からの放熱を低減させることができる。
また、サーマルヘッドX2は、駆動IC11と切欠部214との離間距離が中央にて最も長いこととなる。そのため、駆動IC11と切欠部214との間の領域を大きくすることができ、駆動IC11の中央部における電気抵抗を小さくすることができる。その結果、1つの駆動IC11の発熱部9の配列方向における電気抵抗値を均一に近づけることができ、印字ムラを低減させることができる。
なお、図示していないが、傾斜部214a,214bは、発熱部9の配列方向に対して傾斜していればよく、切欠部214と接続端子102との離間距離が、発熱部9の配列方向における端部に向かうにつれて短くなる構成としてもよい。この場合、切欠部214により、接続端子202の周囲に位置するグランド電極204を熱的に分割することができ、接続端子102から熱が放熱される可能性をさらに低減することができる。
<第3の実施形態>
図7(a)を用いてサーマルヘッドX3について説明する。サーマルヘッドX3は、グランド電極304が切欠部314を有しており、グランド電極304に接続された接続端子302は、3つの接続端子302が途中まで一体化されており、途中から分割されている。
切欠部314は、延伸部314aと、延伸部314aに接続された傾斜部314cと、傾斜部314cに接続された突出部314bとを有している。延伸部314aは、複数の接続端子302にまたがって隣り合うように配置されている。それにより、切欠部314を形成するレーザー加工を簡単なものとすることができる。
傾斜部314cは、延伸部314aと突出部314bとに接続されており、発熱部9の配列方向の端部に向かうにつれて、切欠部314と接続端子302との離間距離が大きくなる構成となっている。そのため、突出部314bと接続端子302との離間距離と、延伸部314aと接続端子302との離間距離よりも大きくすることができる。
そのため、隣り合う駆動IC11a,11bの対向する端部同士の電流経路を均一に近づけるために必要な突出部314bの突出長さを短くすることができる。その結果、グランド電極314の面積が小さくならず、サーマルヘッドX2のグランド電極204に比べて、グランド電極304の配線抵抗を小さくすることができる。それに伴い、サーマルヘッドX3を小型化することができる。
また、突出部314bが、発熱部9の配列方向に沿って設けられているため、すべての部位が傾斜した突出部314bを設ける場合に比べて、発熱部9の配列方向における突出長さを短くすることができる。
なお、サーマルヘッドX3は、延伸部314aと、傾斜部314cと、突出部314bとを備える例を示したが、延伸部314aを設けなくてもよい。例えば、駆動IC11の
上流側に位置する領域に設けた切欠部314を傾斜部314cにより形成し、駆動IC11から突出した突出部314bを発熱部9の配列方向に沿った形状とすることで、同様の効果を奏することができる。
図7(b)を用いてサーマルヘッドX3の変形例を説明する。サーマルヘッドX3は、グランド電極404が、切欠部414を備えており、接続端子302に接続されている。切欠部414は、1つの第1切欠部414aと、2つの第2切欠部414bとを備えており、接続端子302は、1つの第1接続端子302aと、2つの第2接続端子302bとを備えている。第2接続端子302bは、第1接続端子302aに隣り合うように設けられている。そして、それぞれの切欠部414は、接続端子302に対応して設けられている。
第1切欠部414aは、第1接続端子302aからの放熱を低減するように機能している。また、第2切欠部414bは、第2接続端子302bからの放熱を低減するように機能している。第1切欠部414aと第1接続端子302aとの離間距離が、第2切欠部414bと第2接続端子302bとの離間距離よりも長い構成となっている。また、第2切欠部414bの長さが、第1切欠部414aの長さよりも長い構成となっている。
このように、サーマルヘッドX3は、第1切欠部414aと第1接続端子302aとの離間距離が短いことから、熱伝導の生じやすい第1接続端子302aからの放熱を有効に抑えることができる。また、第1接続端子302aおよび第2接続端子302bにあわせて適宜第1切欠部314aおよび第2切欠部314bを変更することができる。
<第4の実施形態>
図8を用いてサーマルヘッドX4について説明する。サーマルヘッドX4は、コネクタ31が、発熱部9の配列方向における基板7の両端部に設けられている。発熱部9の配列方向における基板7の中央部にサーマルヘッドX4の温度を測定する測温部材20が設けられている。また、測温部材20に電流を供給するための配線電極18が設けられている。その他の点はサーマルヘッドX1と同様であり説明を省略する。
測温部材20は、サーマルヘッドX4の温度を測定している。測温部材20としては、チップ型の電子部品を用いることができ、チップ型サーミスタ等を例示することができる。なお、サーマルヘッドX1のように測温部材20を設けなくてもよい。その場合、サーマルヘッドX1に接続端子18を設ける必要はない。
サーマルヘッドX4は、両端部にコネクタ31が接続されているため、配線パターンがサーマルヘッドX1と異なっている。グランド電極4は、両端部にてそれぞれコネクタ31に電気的に接続される。そして、接続端子2に隣り合うように切欠部14が設けられている。そのため、サーマルヘッドX4は、接続端子2から放熱される可能性を低減することができる。
なお、基板7の両端部にコネクタ31を接続する例を示したが、サーマルヘッドX1,X4を組み合わせて、基板7の中央部および両端部にコネクタ31を接続する構成としてもよいし、基板7の端面7aの全域にわたって、コネクタ31と接続する構成としてもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X4をサーマルプリンタZ1に用いても
よい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X4を組み合わせてもよい。
また、サーマルヘッドX1では、蓄熱層13に隆起部13bが形成され、隆起部13b上に電気抵抗層15が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13に隆起部13bを形成せず、電気抵抗層15の発熱部9を、蓄熱層13の下地部13a上に配置してもよい。または、蓄熱層13を基板7の上面の全域にわたって設けてもよい。その場合においても、第2露出部16により蓄熱層13の表面に、保護部材12を入り込ませることができ、基板7と保護部材12との接合強度を向上させることができる。
また、サーマルヘッドX1では、電気抵抗層15上に共通電極17および個別電極19が形成されているが、共通電極17および個別電極19の双方が発熱部9(電気抵抗体)に接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を構成してもよい。
さらにまた、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示して示したが、これに限定されるものではない。例えば、各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成することにより、発熱部9の厚い厚膜ヘッドに本発明を用いてもよい。
なお、保護部材12と、駆動IC11を被覆するハードコート29とを同じ材料により形成してもよい。その場合、ハードコート29を印刷する際に、保護部材12が形成される領域にも印刷することで、ハードコート29と保護部材12とを同時に形成することができる。