JP6904490B2 - 二軸配向ポリプロピレンフィルム - Google Patents

二軸配向ポリプロピレンフィルム Download PDF

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Description

本発明は剛性と耐熱性に優れる二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。詳しくは、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、しかもヒートシールしたときにシール部のシワが少ないため、包装袋に好適に用いることができる二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、防湿性を有し、しかも必要な剛性、耐熱性を有するため、包装用途や工業用途に用いられている。近年、使用される用途が広がるにつれ、より高性能化が求められており、特に剛性の向上が期待されている。また、環境への配慮から、減容(フィルム厚みを薄く)しても強度を維持することも求められているが、そのためには、著しく剛性を向上させることが不可欠である。剛性を向上する手段として、ポリプロピレン樹脂の重合時の触媒やプロセス技術の改良により、そのポリプロピレン樹脂の結晶性や融点が向上することが知られているが、このような改善にもかかわらず、これまで十分な剛性を有する二軸配向ポリプロピレンフィルムはなかった。
二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造工程において、幅方向に延伸後に、幅方向延伸時の温度以下でフィルムを弛緩しながら一段目の熱処理を行い、二段目で一段目温度〜幅方向延伸温度で熱処理を行う方法(例えば、参考文献1等参照。)や、幅方向延伸後にさらに、長手方向に延伸を行う方法(例えば、参考文献2等参照。)が提案されている。しかしながら、特許文献2に記載のフィルムは剛性には優れるが、ヒートシール後はシール部にシワが生じやすく、耐熱性に劣るものであった。また、特許文献1記載のフィルムの配向は低く、剛性は十分でない。
WO2016/182003号国際公報 特開2013−177645号公報
本発明の課題は、上述した問題点を解決することにある。すなわち、フィルムの剛性と150℃もの高温での耐熱性に優れる二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。詳しくは、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、しかもヒートシールしたときにシール部及びその周りにシワが少ない二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することにある。
本発明者らが、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、熱機械分析装置(TMA)で測定される150℃以下での最大伸び量が、長手方向で1.5mm以下であり、幅方向で0.1mm以下であり、かつ、150℃における熱収縮率が長手方向で10%以下であり、幅方向で30%以下である二軸配向ポリプロピレンフィルムとすることにより、フィルムの加工性と150℃もの高温での耐熱性に優れる二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができることを見出した。
この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃における熱収縮率が長手方向で2.0%以下であり、幅方向で5.0%以下であり、かつ長手方向の120℃熱収縮率が幅方向の120℃熱収縮率よりも小さいことが好適である。
また、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向の屈折率Nyが1.5230以上であり、△Nyが0.0220以上であることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズが5.0%以下であることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率が97.0%以上であることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度が105℃以上であり、融点が160℃以上であることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが4.0g/10分以上であることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の分子量10万以下の成分量が35質量%以上であることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの配向度が0.85以上であることが好適である。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が高く、150℃もの高温での耐熱性にも優れるため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、しかもヒートシールしたときにシール部のシワが少ないため、包装袋に好適に用いることができる二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができる。また、その二軸配向ポリプロピレンフィルムは剛性にも優れることから、フィルムの厚みを薄くしても強度を維持することができるとともに、より高い剛性が必要とされる用途にも好適に用いることができる。
以下、さらに詳しく本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムについて説明する。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる。なお、「主成分」とは、ポリプロピレン樹脂がポリプロピレン樹脂組成物中に占める割合が90質量%以上であることを意味し、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。
(ポリプロピレン樹脂)
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。実質的にエチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、エチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィン成分を含む場合であっても、エチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィン成分量は1モル%以下であるのが好ましい。成分量の上限は、より好ましくは0.5モル%であり、さらに好ましくは0.3モル%であり、特に好ましくは0.1モル%である。上記範囲であると結晶性が向上しやすい。このような共重合体を構成する炭素数4以上のα−オレフィン成分として、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
ポリプロピレン樹脂は異なる2種以上のポリプロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物を用いることができる。
(立体規則性)
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂の立体規則性の指標であるメソペンタッド分率([mmmm]%)は、97.0〜99.9%の範囲内であることが好ましく、97.5〜99.7%の範囲内であることがより好ましく、98.0〜99.5%の範囲内であるとさらに好ましく、98.5〜99.3%の範囲内であると特に好ましい。
97.0%以上であると、ポリプロピレン樹脂の結晶性が高まり、フィルムにおける結晶の融点、結晶化度、結晶配向度が向上し、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。99.9%以下であるとポリプロピレン製造の点でコストを抑えやすく、製膜時に破断しにくくなる。99.5%以下であることがより好ましい。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(所謂NMR法)で測定される。
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率を上述の範囲内とするためには、得られたポリプロピレン樹脂パウダーをn−ヘプタンなどの溶媒で洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、ポリプロピレン樹脂組成物の成分の選定を適宜行う方法などが好ましく採用される。
(融解温度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のDSCで測定される融解温度(Tm)の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは161℃であり、さらに好ましくは162℃であり、よりさらに好ましくは163℃である。Tmが160℃以上であると剛性と高温での耐熱性が得られやすい。
Tmの上限は、好ましくは170℃であり、より好ましくは169℃であり、さらに好ましくは168℃であり、よりさらに好ましくは167℃であり、特に好ましくは166℃である。Tmが170℃以下であると、ポリプロピレン製造の点でコストアップを抑制しやすかったり、製膜時に破断しにくくなる。前述のポリプロピレン樹脂に結晶核剤を配合することによって、融解温度をより上げることもできる。
Tmとは、1〜10mgのサンプルをアルミパンに詰めて示差走査熱量計(DSC)にセットし、窒素雰囲気下で、230℃で5分間融解し、走査速度−10℃/分で30℃まで降温した後、5分間保持し、走査速度10℃/分で昇温した際に観察される、融解にともなう吸熱ピークの主たるピーク温度である。
(結晶化温度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のDSCで測定される結晶化温度(Tc)の下限は105℃であり、好ましくは108℃であり、より好ましくは110℃である。Tcが105℃以上であると、幅方向延伸とそれに続く冷却工程において結晶化が進みやすく、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。
Tcの上限は、好ましくは135℃であり、より好ましくは133℃であり、さらに好ましくは132℃であり、よりさらに好ましくは130℃であり、特に好ましくは128℃であり、最も好ましくは127℃である。Tcが135℃以下であるとポリプロピレン製造の点でコストアップしにくかったり、製膜時に破断しにくくなる。
Tcとは、1〜10mgのサンプルをアルミパンに詰めてDSCにセットし、窒素雰囲気下で、230℃で5分間融解し、走査速度−10℃/分で30℃まで降温したときに観察される発熱ピークの主たるピーク温度である。
前述のポリプロピレン樹脂に結晶核剤を配合することによって、結晶化温度をより上げることもできる。
(メルトフローレート)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JISK7210(1995)の条件M(230℃、2.16kgf)に準拠して測定した場合において、4.0〜30g/10分であることが好ましく、4.5〜25g/10分であるとより好ましく、4.8〜22g/10分であるとさらに好ましく、5.0〜20g/10分であると特に好ましく、6.0〜20g/10分であると最も好ましい。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が4.0g/10分以上であると、熱収縮が低い二軸配向ポリプロピレンフィルムを得られやすい。
また、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であると、フィルムの製膜性を維持しやすい。
フィルム特性の観点からは、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限を好ましくは5.0g/10分、より好ましくは5.5g/10分、さらに好ましくは6.0g/10分、特に好ましくは6.3g/10分、最も好ましくは6.5g/10分とするのが良い。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が5.0g/10分以上であると、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂の低分子量成分量が多くなるため、後述するフィルム製膜工程での幅方向延伸工程を採用することにより、ポリプロピレン樹脂の配向結晶化がより促進されること、及びフィルムにおける結晶化度がより高まりやすくなることに加えて、非晶部分のポリプロピレン分子鎖同士の絡み合いがより少なくなり、耐熱性をより高めやすい。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)を上記の範囲内とするためには、ポリプロピレン樹脂の平均分子量や分子量分布を制御する方法などが好ましく採用される。
すなわち、本発明のフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のGPC積算カーブにおける分子量10万以下の成分の量の下限は好ましくは35質量%であり、より好ましくは38質量%であり、さらに好ましくは40質量%であり、特に好ましくは41質量%であり、最も好ましくは42質量%である。
GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量の上限は、好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは58質量%である。GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量が65質量%以下であるとフィルム強度が低下しにくい。
このとき、緩和時間の長い高分子量成分や長鎖分岐成分を含むと、ポリプロピレン樹脂に含まれる分子量10万以下の成分の量を、全体の粘度を大きく変えずに、調整しやすくなるので、剛性や熱収縮にあまり影響させずに、製膜性を改善しやすい。
(分子量分布)
本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、分子量分布の広さの指標である質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の下限が、好ましくは3.5であり、より好ましくは4.0であり、さらに好ましくは4.5であり、特に好ましくは5.0である。Mw/Mnの上限は、好ましくは30であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは23であり、特に好ましくは21であり、最も好ましくは20である。
Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得ることができる。Mw/Mnが上記範囲であると、分子量10万以下の成分の量を多くすることが容易である。
なお、ポリプロピレン樹脂の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混練機にてブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。GPCで得られる分子量分布の形状としては、横軸に分子量(M)の対数(logM)、縦軸に微分分布値(logMあたりの重量分率)をとったGPCチャートにおいて、単一ピークを有するなだらかな分子量分布であってもよく、複数のピークやショルダーを有する分子量分布であってよい。
(二軸配向ポリプロピレンフィルムの製膜方法)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述したポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる未延伸シートを作製し、二軸延伸することによって得ることが好ましい。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、製膜安定性、厚み均一性の観点でテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましいが、幅方向に延伸後に長手方向に延伸する方法でもよい。
次に本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面に他の機能を有する層を積層させてもよい。積層するのは片面でも両面でも良い。その時は他の一方の層、また中央層の樹脂組成物を上述のポリプロピレン樹脂組成物を採用すればよい。また、上述のポリプロピレン樹脂組成物と異なるものでも良い。積層する層の数は、片面につき、1層や2層、3層以上でもよいが、製造の観点から、1層または2層が好ましい。積層の方法としては、例えば、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式による共押出が好ましい。特に、二軸配向ポリプロピレンフィルムの加工性を向上させる目的で、ヒートシール性を有する樹脂層を、特性を低下させない範囲で積層することができる。
以下には、単層の場合の例について、テンター逐次二軸延伸法を採用した場合について述べる。
まず、ポリプロピレン樹脂を含む樹脂組成物を単軸または二軸の押出機で加熱溶融させ、Tダイからシート状に押出し、冷却ロール上に接地させて冷却固化する。固化を促進する目的で、冷却ロールで冷却したシートを水槽に浸漬するなどして、さらに冷却することが好ましい。
ついで、シートを加熱した2対の延伸ロールで、後方の延伸ロールの回転数を大きくすることでシートを長手方向に延伸し、一軸延伸フィルムを得る。
引き続き、一軸延伸フィルムを予熱後、テンター式延伸機でフィルム端部を把持しながら、特定の温度で幅方向に延伸を行い、二軸延伸フィルムを得る。この幅方向延伸工程については後に詳細に述べる。
幅方向延伸工程が終了後、二軸延伸フィルムを特定の温度で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。熱処理工程においては、幅方向にフィルムを弛緩してもよい。
こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムに、必要に応じて、例えば少なくとも片面にコロナ放電処理を施した後、ワインダーで巻取ることによりフィルムロールを得ることができる。
以下それぞれの工程について詳しく説明する。
(押出し工程)
まず、ポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物を単軸または二軸の押出機で200℃〜300℃に範囲で加熱溶融させ、Tダイから出たシート状の溶融ポリプロピレン樹脂組成物を押出し、金属製の冷却ロールに接触させて冷却固化させる。得られた未延伸シートはさらに水槽に投入するのが好ましい。
冷却ロール、又は冷却ロールと水槽の温度は、10℃からTcまでの範囲であることが好ましく、フィルムの透明性を上げたい場合は、10〜50℃の範囲の温度の冷却ロールで冷却固化するのが好ましい。冷却温度を50℃以下にすると未延伸シートの透明性が高まりやすく、好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。逐次二軸延伸後の結晶配向度を増大させるには冷却温度を40℃以上とするのも好ましい場合があるが、上述のようにメソペンダット分率が97.0%以上のプロピレン単独重合体を用いる場合は、冷却温度を40℃以下とするのが次工程の延伸を容易に行い、また厚み斑を低減する上で好ましく、30℃以下とするのがより好ましい。
未延伸シートの厚みは3500μm以下とするのが、冷却効率の上で好ましく、3000μm以下とするのがさらに好ましく、逐次二軸延伸後のフィルム厚みに応じて、適宜調整できる。未延伸シートの厚みはポリプロピレン樹脂組成物の押出し速度及びTダイのリップ幅等で制御できる。
(長手方向延伸工程)
長手方向延伸倍率の下限は好ましくは3倍であり、より好ましくは3.5倍であり、特に好ましくは3.8倍である。上記範囲であると強度を高めやすく、膜厚ムラも少なくなる。長手方向延伸倍率の上限は好ましくは8倍であり、より好ましくは7.5倍であり、特に好ましくは7倍である。上記範囲であると、幅方向延伸工程での幅方向延伸がしやすく、生産性が向上する。
長手方向延伸温度の下限は、好ましくはTm−40℃であり、より好ましくはTm−37℃であり、さらに好ましくはTm−35℃である。上記範囲であると引き続いて行われる幅方向延伸が容易になり、厚みムラも少なくなる。長手方向延伸温度の上限は好ましくはTm−7℃であり、より好ましくはTm−10℃であり、さらに好ましくはTm−12℃である。上記範囲であると熱収縮率を小さくしやすく、延伸ロールに付漕し延伸しにくくなったり、表面の粗さが大きくなることにより品位が低下することも少ない。
なお、長手方向延伸は3対以上の延伸ロールを使用して、2段階以上の多段階に分けて延伸してもよい。
(予熱工程)
幅方向延伸工程の前に、長手方向延伸後の一軸延伸フィルムをTm〜Tm+25℃の範囲で加熱して、ポリプロピレン樹脂組成物を軟化させる必要がある。Tm以上とすることにより、軟化が進み、幅方向の延伸が容易になる。Tm+25℃以下とすることで、横延伸時の配向が進み、剛性が発現しやすくなる。より好ましくはTm+2〜Tm+22℃であり、特に好ましくはTm+3〜Tm+20℃である。ここで、予熱工程での最高温度を予熱温度とする。
(幅方向延伸工程)
予熱工程後の幅方向延伸工程においては、好ましい方法は以下のとおりである。
幅方向延伸工程においては、Tm−10℃以上、予熱温度以下の温度で延伸する区間(前期区間)を設ける。このとき、前期区間の開始時は予熱温度に達した時点でも良いし、予熱温度に達した後に温度を降下させ予熱温度よりも低い温度に達した時点でもよい。
幅方向延伸工程における前期区間の温度の下限は、好ましくはTm−9℃であり、より好ましくはTm−8℃であり、さらに好ましくはTm−7℃である。前期区間の延伸温度がこの範囲であると延伸ムラが生じにくい。
前期区間に続いて、前期区間の温度よりも低く、かつTm−70℃以上、Tm−5℃以下の温度で延伸する区間(後期区間)を設ける。
後期区間の延伸温度の上限は、好ましくはTm−8℃であり、より好ましくはTm−10℃である。後期区間の延伸温度がこの範囲であると剛性が発現しやすくなる。
後期区間の延伸温度の下限は、好ましくはTm−65℃であり、より好ましくはTm−60℃であり、さらに好ましくはTm−55℃である。後期区間の延伸温度がこの範囲であると製膜が安定しやすい。
後期区間終了時、すなわち幅方向最終延伸倍率に到達した時の直後に、フィルムを冷却することができる。この時の冷却の温度は、後期区間の温度以下で、かつTm−80℃以上、Tm−15℃以下の温度にするのが好ましく、Tm−80℃以上、Tm−20℃以下の温度にすることがより好ましく、Tm−80℃以上、Tm−30℃以下の温度とすることがさらに好ましく、Tm−70℃以上、Tm−40℃以下の温度とすることが特に好ましい。
前期区間の温度及び後期区間の温度は徐々に低下させることもできるが、段階的にあるいは一段階で低下させることもでき、それぞれ一定であっても良い。温度を徐々に低下させると、フィルムの破断がししにくく、またフィルムの厚み変動も小さくしやすい。また、熱収縮率も小さくしやすく、フィルムの白化も少ないため好ましい。
幅方向延伸工程における前期区間終了時の温度から後期区間開始時の温度へは徐々に低下させることもできるが、段階的にあるいは一段階で低下させることもできる。
幅方向延伸工程の前期区間終了時の延伸倍率の下限は、好ましくは4倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは6倍であり、特に好ましくは6.5倍である。前期区間終了時の延伸倍率の上限は、好ましくは15倍であり、より好ましくは14倍であり、さらに好ましくは13倍である。
幅方向延伸工程における最終幅方向延伸倍率の下限は、好ましくは5倍であり、より好ましくは6倍であり、さらに好ましくは7倍であり、特に好ましくは8倍である。5倍以上であると剛性を高めやすく、膜厚ムラも少なくなりやすい。
幅方向延伸倍率の上限は、好ましくは20倍であり、より好ましくは17倍であり、さらに好ましくは15倍である。20倍以下であると熱収縮率を小さくしやすく、延伸時に破断しにくい。
このように、立体規則性が高く、高融点である結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用い、上述の幅方向延伸工程を採用することにより、延伸倍率を極端に大きくしなくても、ポリプロピレン樹脂の分子が高度に主配向方向に(上述した幅方向延伸工程では幅方向が該当する。)に整列するため、得られる二軸配向フィルム中の結晶配向が非常に強く、融点も高い結晶が生成しやすい。
また、結晶間の非晶部の配向も主配向方向(上述した幅方向延伸工程では幅方向が該当する。)に高まり、非晶部の周りに融点の高い結晶が多く存在するため、結晶の融点より低い温度では非晶部の伸長したポリプロピレン分子は緩和しにくく、その緊張した状態を保ちやすい。そのため、高温においても二軸配向フィルム全体が高い剛性を維持することができる。
また、着目すべきことは、このような幅方向延伸工程を採用することにより、150℃の高温での熱収縮率も低下しやすいことである。その理由は、非晶部の周りに融点の高い結晶が多く存在するため、結晶の融点より低い温度では非晶部における伸長したポリプロピレン樹脂分子は緩和しにくく、しかも分子同士の絡み合いが少ないところにある。
さらに着目すべきこととして、ポリプロピレン樹脂の低分子量成分を増やすことで、フィルムの結晶化度がより高まりやすくなるとともに、非晶部分のポリプロピレン樹脂分子鎖同士の絡み合いがより少なくなり、熱収縮応力を弱めることで、熱収縮率をさらに低下させることができることが挙げられる。従来は強度と熱収縮率のどちらかが向上すれば、他方の特性が低下する傾向となることを考慮すると、画期的なことと言える。
(熱処理工程)
二軸延伸フィルムは必要に応じて、熱収縮率をさらに小さくするために、熱処理することができる。
熱処理温度の上限は好ましくはTm+10℃であり、より好ましくはTm+7℃である。Tm+10℃以下にすることで、剛性が発現しやすく、フィルム表面の粗さが大きくなりすぎず、フィルムが白化しにくい。
熱処理温度の下限は好ましくはTm−10℃であり、より好ましくはTm−7℃である。Tm−10℃未満であると熱収縮率が高くなることがある。
上述の幅方向延伸工程を採用することにより、Tm−10℃からTm+10の間の温度で熱処理を行っても、延伸工程で生成した配向の高い結晶は融解しにくく、得られたフィルムの剛性を低下させずに、熱収縮率をより小さくすることができる。
熱収縮率を調整する目的で、熱処理時に幅方向にフィルムを弛緩(緩和)させてもよい。弛緩率の上限は好ましくは10%である。上記範囲内であると、フィルム強度が低下しにくく、フィルム厚み変動が小さくなりやすい。より好ましくは8%であり、さらに好ましくは7%であり、よりさらに好ましくは3%であり、特に好ましくは2%であり、最も好ましくは0%である。
(フィルム厚み)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みは各用途に合わせて設定されるが、フィルムの強度を得るには、フィルム厚みの下限は好ましくは2μmであり、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは4μmであり、特に好ましくは8μmであり、最も好ましくは10μmである。フィルム厚みが2μm以上であるとフィルムの剛性を得やすい。フィルム厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは60μmであり、特に好ましくは50μmであり、最も好ましくは40μmである。フィルム厚みが100μm以下であると押出工程時の未延伸シートの冷却速度が小さくなりにくい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは通常、幅2000〜12000mm、長さ1000〜50000m程度のロールとして製膜され、フィルムロール状に巻き取られる。さらに、各用途に合わせてスリットされ、幅300〜2000mm、長さ500〜5000m程度のスリットロールとして供される。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムはより長尺のフィルムロールを得ることが可能である。
(厚み均一性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚み均一性の下限は好ましくは0%であり、より好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.5%であり、特に好ましくは1%である。厚み均一性の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは17%であり、さらに好ましくは15%であり、特に好ましくは12%であり、最も好ましくは10%である。上記範囲だとコートや印刷などの後加工時に不良が生じにくく、精密性を要求される用途に用いやすい。
測定方法は下記のとおりとした。フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域から幅方向40mmの試験片を切り出し、ミクロン計測器(株)製のフィルム送り装置(製番:A90172を使用)及びアンリツ株式会社製フィルム厚み連続測定器(製品名:K−313A広範囲高感度電子マイクロメーター)を用い、20000mmにわたって連続してフィルム厚みを計測し、下式から厚み均一性を算出した。
厚み均一性(%)=[(厚みの最大値−厚みの最低値)/厚みの平均値]×100
(フィルム特性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記特性に特徴がある。ここで本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向である。フィルム製造工程における流れ方向が不明なポリプロピレンフィルムについては、フィルム表面に対して垂直方向に広角X線を入射し、α型結晶の(110)面に由来する散乱ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が最も大きい方向を「長手方向」、それと直交する方向を「幅方向」とする。
(TMA加熱伸び)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの熱機械分析装置で測定される長手方向の150℃以下での最大伸び量の上限は1.5mmであり、好ましくは1.45mmであり、より好ましくは1.4mmであり、さらに好ましくは1.35mmであり、特に好ましくは1.3mmである。上記範囲であると、ロールでの加熱加工や印刷時の変形が小さく、加工性が向上することがある。長手方向の150℃以下での最大伸び量の下限は、好ましくは0.5mmであり、より好ましくは0.6mmであり、さらに好ましくは0.7mmであり、特に好ましくは0.75mであり、最も好ましくは0.8mmである。上記範囲であると、現実的な製造が容易となることがある。
幅方向の150℃以下での最大伸び量の上限は0.1mmであり、好ましくは0.09mmであり、より好ましくは0.08mmであり、さらに好ましくは0.075mmであり、特に好ましくは0.07mmである。幅方向の150℃以下での最大伸び量の下限は、好ましくは0.005mmであり、より好ましくは0.01mmであり、さらに好ましくは0.015mmであり、特に好ましくは0.018mmであり、最も好ましくは0.2mmである。上記範囲であると、上記範囲であると、変形が小さく外観が向上することがある。
(150℃熱収縮率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの150℃での長手方向の熱収縮率の上限は10%であり、好ましくは8.0%であり、より好ましくは7.0%である。150℃での幅方向の熱収縮率の上限は30%であり、好ましくは25%であり、より好ましくは20%である。長手方向の熱収縮率が10%以下、かつ、幅方向の熱収縮率が30%以下であると、ヒートシール時のシワが生じにくく、特に150℃での長手方向の熱収縮率が8.0%以下、150℃での幅方向の熱収縮率が20%以下であると、開ロ部にチャック部を融着する際の歪みが小さく好ましい。150℃での熱収縮率を小さくするには、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積算カーブを測定した場合の分子量10万以下の成分の量の下限を35質量%とするのが有効である。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記特性、構造を有するとより良い。
(23℃ヤング率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向のヤング率の下限は、好ましくは2.0GPaであり、より好ましくは2.1GPaであり、さらに好ましくは2.2GPaであり、特に好ましくは2.3GPaであり、最も好ましくは2.4GPaである。2.0GPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。長手方向のヤング率の上限は、好ましくは4.0GPaであり、より好ましくは3.8GPaであり、さらに好ましくは3.7GPaであり、特に好ましくは3.6GPaであり、最も好ましくは3.5GPaである。4.0GPa以下では現実的な製造が容易であったり、長手方向−幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向のヤング率の下限は、好ましくは6.0GPaであり、より好ましくは6.3GPaであり、さらに好ましくは6.5GPaであり、特に好ましくは6.7GPaである。6.0GPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。幅方向のヤング率の上限は、好ましくは15GPaであり、より好ましくは13GPaであり、さらに好ましくは12GPaである。15GPa以下だと現実的な製造が容易であったり、長手方向−幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
ヤング率は延伸倍率やリラックス率を調節したり、製膜時の温度を調整することで範囲内とすることが出来る。
(80℃ヤング率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの80℃における長手方向のヤング率の下限は、好ましくは0.5GPaであり、より好ましくは0.7GPaである。0.5GPa以上では、高温の印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなる。80℃における長手方向のヤング率の上限は好ましくは3.0GPaであり、より好ましくは2.5GPaである。3.0GPa以上では、現実的な製造が容易である。
80℃における幅方向のヤング率の下限は、好ましくは2.5GPaであり、より好ましくは2.8GPaであり、さらに好ましくは3.0GPaである。2.5GPa以上では、高温の印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなる。80℃における幅方向のヤング率の上限は好ましくは5.0GPaであり、より好ましくは4.7GPaであり、さらに好ましくは4.5GPaである。5.0GPa以下だと現実的な製造が容易である。
80℃におけるヤング率は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(23℃5%伸長時応力)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の5%伸長時の応力(F5)の下限は40MPaであり、好ましくは42MPaであり、より好ましくは43MPaであり、さらに好ましくは44MPaであり、特に好ましくは45MPaである。40MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。長手方向のF5の上限は、好ましくは70MPaであり、より好ましくは65MPaであり、さらに好ましくは62MPaであり、特に好ましくは61MPaであり、最も好ましくは60MPaである。70MPa以下では現実的な製造が容易であったり、縦一幅バランスが良化しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向のF5の下限は160MPaであり、好ましくは165MPaであり、より好ましくは168MPaであり、さらに好ましくは170MPaである。160MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。幅方向のF5の上限は、好ましくは250MPaであり、より好ましくは245MPaであり、さらに好ましくは240MPaである。250MPa以下だと現実的な製造が容易であったり、縦一幅バランスが良化しやすい。
F5は延伸倍率やリラックス率を調節したり、製膜時の温度を調整することで範囲内とすることが出来る。
(80℃5%伸長時応力)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの80℃での長手方向の5%伸長時の応力(F5)の下限は15MPaであり、好ましくは17MPaであり、より好ましくは19MPaであり、さらに好ましくは20MPaである。15MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。長手方向の80℃でのF5の上限は、好ましくは40MPaであり、より好ましくは35MPaであり、さらに好ましくは30MPaであり、特に好ましくは25MPaである。40MPa以下では現実的な製造が容易であったり、縦一幅バランスが良化しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの80℃での幅方向のF5の下限は75MPaであり、好ましくは80MPaであり、より好ましくは85MPaであり、さらに好ましくは90MPaであり、特に好ましくは95MPaである。75MPa以上では、剛性が高いため、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、印刷など加工時にフィルムの変形が起こりにくい。幅方向の80℃でのF5の上限は、好ましくは150MPaであり、より好ましくは140MPaであり、さらに好ましくは130MPaである。140MPa以下だと現実的な製造が容易であったり、縦一幅バランスが良化しやすい。
80℃F5は延伸倍率やリラックス率を調節したり、製膜時の温度を調整することで範囲内とすることが出来る。
(120℃熱収縮率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃での長手方向の熱収縮率の上限は好ましくは2.0%であり、より好ましくは1.7%であり、さらに好ましくは1.5%である。2.0%以下であると、印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなる。120℃での幅方向の熱収縮率の上限は5.0%であり、好ましくは4.5%であり、より好ましくは4.0%である。5.0%以下であると、ヒートシール時のシワが生じにくい。
120℃での長手方向熱収縮率が120℃での幅方向熱収縮率より小さいと、印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれがより生じにくくなる。120℃での熱収縮率と、熱収縮率の長手方向−幅方向のバランスは延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(屈折率)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向の屈折率(Nx)の下限は、好ましくは1.4950であり、より好ましくは1.4970であり、さらに好ましくは1.4980である。1.4950以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。長手方向の屈折率(Nx)の上限は、好ましくは1.5100であり、より好ましくは1.5070であり、さらに好ましくは1.5050である。1.5100以下だとフィルムの長手方向−幅方向の特性のバランスに優れやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の屈折率(Ny)の下限は1.5230であり、好ましくは1.5235であり、より好ましくは1.5240である。1.5230以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。幅方向の屈折率(Ny)の上限は、好ましくは1.5280であり、より好ましくは1.5275であり、さらに好ましくは1.5270である。1.5280以下だとフィルムの長手方向−幅方向の特性のバランスに優れやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚み方向の屈折率(Nz)の下限は、好ましくは1.4960であり、より好ましくは1.4965であり、さらに好ましくは1.4970である。1.4960以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。厚み方向の屈折率(Nz)の上限は、好ましくは1.5020であり、より好ましくは1.5015であり、さらに好ましくは1.5010である。1.5020以下だとフィルムの耐熱性を高めやすい。
屈折率は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(△Ny)
本発明の本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの△Nyの下限は0.0220であり、好ましくは0.0225であり、より好ましくは0.0228であり、さらに好ましくは0.0230である。0.0220以上だとフィルムの剛性が高くなりやすい。△Nyの上限は、現実的な値として好ましくは0.0270であり、より好ましくは0.0265であり、さらに好ましくは0.0262であり、特に好ましくは0.0260である。0.0270以下だと厚みムラも良好となりやすい。△Nyはフィルムの延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
△Nyはフィルムの長手方向、幅方向、厚み方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Ny、Nzとし、下記式で計算されるが、フィルムの長手方向、幅方向、厚み方向全体の配向における幅方向の配向の程度を意味する。
△Ny=Ny−[(Nx+Nz)/2]
(面配向係数)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの面配向係数(ΔP)の下限は、好ましくは0.0135であり、より好ましくは0.0138であり、さらに好ましくは0.0140である。0.0135以上だとフィルムの面方向のバランスが良好で、厚みムラも良好である。面配向係数(ΔP)の上限は、現実的な値として好ましくは0.0155であり、より好ましくは0.0152であり、さらに好ましくは0.0150である。0.0155以下だと高温での耐熱性に優れやすい。
面配向係数(ΔP)は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
また、面配向係数(ΔP)は、(式)[(Nx+Ny)/2]−Nzを用いて計算した。
(ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズの上限は好ましくは5.0%であり、より好ましくは4.5%であり、さらに好ましくは4.0%であり、特に好ましくは3.5%であり、最も好ましくは3.0%である。5.0%以下であると透明が要求される用途で使いやすい。ヘイズの下限は、現実的値としては好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.3%であり、特に好ましくは0.4%である。0.1%以上であると製造しやすい。ヘイズは、冷却ロール(CR)温度、幅方向延伸温度、テンター幅方向延伸前予熱温度、幅方向延伸温度、又は熱固定温度、若しくはポリプロピレン樹脂の分子量が10万以下の成分の量を調節することで範囲内とすることが出来るが、ブロッキング防止剤の添加や、シール層付与により、大きくなることがある。
(配向結晶に由来する回折ピークの半値幅)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの、フィルム面に垂直に入射した広角X線測定で得られるポリプロピレンα型結晶の(110)面の散乱ピークの方位角依存性において、フィルムの幅方向の配向結晶に由来する回折ピークの半値幅(Wh)の上限は、好ましくは27°であり、より好ましくは26°であり、さらに好ましくは25°であり、特に好ましくは24°であり、最も好ましくは23°である。Whの下限は、好ましくは13°であり、より好ましくは14°であり、さらに好ましくは15°である。半値幅(Wh)が27°以下であるとフィルムの剛性を高くしやすい。
(X線配向度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのWhから下記式で算出されるX線配向度の下限は、好ましくは0.85であり、より好ましくは0.855であり、さらに好ましくは0.861である。0.85以上とすることで剛性を高めやすい。
X線配向度=(180−Wh)/180
X線配向度の上限は、好ましくは0.928であり、より好ましくは0.922であり、さらに好ましくは0.917である。0.928以下とすることで製膜が安定しやすい。
(フィルムの実用特性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの有する実用特性について説明する。
(引張破断強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向の引張破断強度の下限は、好ましくは90MPaであり、より好ましくは95MPaであり、さらに好ましくは100MPaである。90MPa以上だと印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。長手方向の引張破断強度の上限は、現実的な値として好ましくは200MPaであり、より好ましくは190MPaであり、さらに好ましくは180MPaである。200MPa以下だとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の引張破断強度の下限は、好ましくは320MPaであり、より好ましくは340MPaであり、さらに好ましくは350MPaである。320MPa以上だと印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。幅方向の引張破断強度の上限は、現実的な値として好ましくは500MPaであり、より好ましくは480MPaであり、さらに好ましくは470MPaである。500MPa以下だとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。
引張破断強度は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(引張破断伸度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向の引張破断伸度の下限は、好ましくは50%であり、より好ましくは55%であり、さらに好ましくは60%である。50%以上であるとフィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。長手方向の引張破断伸度の上限は、現実的な値として好ましくは230%であり、より好ましくは220%であり、さらに好ましく210%である。230%以下だと印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の引張破断伸度の下限は、好ましくは10%であり、より好ましくは15%であり、さらに好ましくは17%である。10%以上だと、フィルムの破断や包装袋の破袋が少なくなりやすい。幅方向の引張破断伸度の上限は、好ましくは60%であり、より好ましくは55%であり、さらに好ましくは50%である。60%以下だと印刷インキを転写する際の印刷ピッチずれが生じにくくなり、包装袋の耐久性にも優れやすい。
引張破断伸度は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(剛軟度)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の剛軟度の下限は好ましくは0.3mN・cmであり、より好ましくは0.33mN・cmであり、さらに好ましくは0.35mN・cmである。0.3mN・cm以上であると、フィルムの薄肉化が可能であったり、剛性が必要な用途に適する。幅方向の剛軟度の下限は好ましくは0.5mN・cmであり、より好ましくは0.55mN・cmであり、さらに好ましくは0.6mN・cmである。0.5mN・cm以上であると、フィルムの薄肉化が可能であったり、剛性が必要な用途に適する。
(ループステフネス応力)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向のループステフネス応力S(mN)の下限は、二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みをt(μm)とすると、好ましくは0.00020×tであり、より好ましくは0.00025×tであり、さらに好ましくは0.00030×tであり、特に好ましくは0.00035×tである。0.00020×t以上であると、包装体の形状を保持しやすい。
23℃での長手方向のループステフネス応力S(mN)の上限は、好ましくは0.00080×tであり、より好ましくは0.00075×tであり、さらに好ましくは0.00072×tであり、特に好ましくは0.00070×tである。0.00080×t以下であると、現実的に製造しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向のループステフネス応力S(mN)の下限は、二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みをt(μm)とすると、好ましくは0.0010×tであり、より好ましくは0.0011×tであり、さらに好ましくは0.0012×tであり、特に好ましくは0.0013×tである。0.0010×t以上であると、包装体の形状を保持しやすい。
23℃での幅方向のループステフネス応力S(mN)の上限は、好ましくは0.0020×tであり、より好ましくは0.0019×tであり、さらに好ましくは0.0018×tであり、特に好ましくは0.0017×tである。0.0020×t以下であると、現実的に製造しやすい。
ループステフネス応力はフィルムの腰感を表す指標であるが、それはフィルムの厚みにも依存する。その測定方法は以下のとおりである。フィルムの長手方向を短冊の長軸(ループ方向)、あるいはフィルムの幅方向を短冊の長軸(ループ方向)として、110mm×25.4mmの短冊をそれぞれ2枚ずつ切り出した。これらをクリップに挟んでフィルムの片方の面がループの内面になるものと、その反対面がループの内面になる測定用ループを、短冊の長軸がフィルムの長手方向及び幅方向となるものについて作製した。短冊の長軸がフィルムの長手方向となる測定用のループを、東洋精機株式会社製ループステフネステスタDAのチャック部に幅方向を垂直にした状態でセットし、クリップをはずし、チャック間隔は50mm、押し込み深さを15mm、圧縮速度を3.3mm/秒としてループステフネス応力を測定した。
測定は、フィルムの片方の面がループの内面になるようにしたもののループステフネス応力と厚みを5回測定し、その後もう片面がループの内面になるようにしたものも5回測定した。この計10回分のデータを用い、各試験片の厚み(μm)の3乗を横軸に、そのループステフネス応力(mN)を縦軸にプロットし、切片0となる直線で近似して、その傾きaを求めた。傾きaは剛性を決める厚みによらないフィルム固有の特性値を意味する。傾きaを腰感の評価値とした。短冊の長軸がフィルムの幅方向となる測定用のループも同様に測定した。
(ヒートシール時のシワ)
食品を包装する袋を形成するには、製袋済みの袋に内容物を充填し、加熱してフィルムを溶融して融着して密封する。また、食品を充填しながら製袋する際にも同様に行う場合が多い。通常は基材フィルムにポリエチレンやポリプロピレンなどからなるシーラントフィルムを積層し、このシーラントフィルム面同士を融着させる。加熱方法は基材フィルム側から加熱板で圧力をかけフィルムを押さえてシールするが、シール幅は10mm程度とする場合が多い。このとき基材フィルムも加熱されるため、その際の収縮がシワを発生させる。袋の耐久性においてシワは少ない方が良く、購買意欲を高めるためにもシワは少ない方が良い。シール温度は120℃程度である場合もあるが、製袋加工速度を高めるためにはより高温でのシール温度が求められ、その場合でも収縮が小さいことが好ましい。袋の開ロ部にチャックを融着する場合には、さらに高温でのシールが求められる。
(印刷ピッチずれ)
包装フィルムの構成としては、基本的な構成として、印刷が施された基材フィルムとシーラントフィルムの積層フィルムからなる場合が多い。袋の製造には、製袋機が使用され、三方袋、スタンディング袋、ガゼット袋などがあり、さまざまな製袋機が使用されている。印刷ピッチズレは、印刷工程時にフィルムにテンションや熱を掛けるため、フィルムの基材が伸び縮みするため発生すると考えられる。印刷ピッチズレによる不良品をなくすことは資源の有効活用の点でも重要であり、購買意欲を高めるためにも重要である。
(フィルム加工)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの印刷は用途に応じて、凸版印刷・平版印刷・凹版印刷、孔版印刷、転写印刷方式により行うことができる。
また、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエステルからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルをシーラントフィルムとして貼り合せて、ヒートシール性を付与したラミネート体としても使用することができる。さらにガスバリア性や耐熱性を高めたいときはアルミ箔やポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを二軸配向ポリプロピレンフィルムとシーラントフィルムの間に中間層として設けることができる。シーラントフィルムの貼り合せには、ドライラミネーション法又はホットメルトラミネーション法により塗布した接着剤を使用することができる。
ガスバリア性を高めるには、二軸配向ポリプロピレンフィルムや中間層フィルム、あるいはシーラントフィルムにアルミや無機酸化物を蒸着加工することもできる。蒸着方法には真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング法を採用できるが、特にシリカ、アルルミナ、又はこれらの混合物を真空蒸着するのが好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムには、例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などの防曇剤のフィルム中での存在量を0.2〜5質量%の範囲することで、野菜、果実、草花など高い鮮度が要求される植物類からなる生鮮品を包装するのに適したものとすることができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤や熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。
(産業上の利用可能性)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは上記の様な従来にはない優れた特性を有するため、包装袋に好ましく使用することができ、またフィルムの厚みを従来よりも薄くすることが可能である。さらには、コンデンサーやモーターなどの絶縁フィルム、太陽電池のバックシート、無機酸化物のバリアフィルム、ITOなどの透明導電フィルムのベースフィルムなど高温で使用される用途や、セパレートフィルムなど剛性が必要とされる用途にも好適である。また、従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用い、高温でのコートや印刷加工が可能となり、生産の効率化が期待できる。
以下、実施例により本発明を群細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
(2)メソペンダット分率
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm]%)の測定は、13C−NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules、第6巻、925頁(1973)に記載の方法に従って算出した。13C−NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用い、試料200mgをo−ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
(3)ポリプロピレン樹脂の数平均分子量、重量平均分子量、分子量10万以下の成分量、および分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、単分散ポリスチレン基準としPP換算分子量として求めた。ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとした。
GPC測定条件は次のとおりである。
装置:HLC−8321PC/HT(東ソー株式会社製)
検出器:RI
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン+ジブチルヒドロキシトルエン(0.05%)
カラム:TSKgelguardcolumnHHR(30)HT(7.5mmI.D.×7.5cm)×1本 + TSKgelGMHHR−H(20)HT(7.8mmI.D.×30cm)×3本
流量:1.0mL/min
注入量:0.3mL
測定温度:140℃
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)はそれぞれ、分子量較正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(Mi)の分子数(Ni)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(N・M)/ΣN
質量平均分子量:Mw=Σ(N・M )/Σ(N・M
ここで、分子量分布は、Mw/Mnで得ることができる。
また、GPCで得られた分子量分布の積分曲線から、分子量10万以下の成分の割合を求めた。
(4)結晶化温度(Tc)、融解温度(Tm)
ティー・エイ・インスツルメント社製Q1000示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気下で熱測定を行った。ポリプロピレン樹脂のペレットから約5mgを切り出して測定用のアルミパンに封入した。230℃まで昇温し5分間保持した後、−10℃/分の速度で30℃まで冷却し、発熱ピーク温度を結晶化温度(Tc)とした。また、結晶化熱量(△Hc)は、発熱ピークの面積をピークの開始からピーク終了まで、スムーズにつながるようにベースラインを設定して求めた。そのまま、30℃で5分間保持し、10℃/分で230℃まで昇温し、主たる吸熱ピーク温度を融解温度(Tm)とした。
(5)フィルム厚み
セイコー・イーエム社製ミリトロン1202Dを用いて、フィルムの厚さを計測した。
(6)ヘイズ
日本電色工業株式会社製NDH5000を用い、23℃にて、JISK7105に従って測定した。
(7)熱機械分析(TMA)
島津製作所製熱機械分析装置TMA−60を用い、幅4mmのフィルムサンプルを、チャック間10mmでセットし、測定荷重40gで、30℃から180℃まで20℃/分で昇温し、150℃までの最大伸び量を測定した。
(8)引張試験
JIS K 7127に準拠してフィルムの長手方向および幅方向の引張強度を23℃にて測定した。サンプルは15mm×200mmのサイズにフィルムより切り出し、チャック幅は100mmで、引張試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製デュアルコラム卓上型試験機インストロン5965)にセットした。引張速度200mm/分にて引張試験を行った。得られた歪み−応力カーブより、伸長初期の直線部分の傾きからヤング率を、また、5%伸長時の応力(F5)を求めた。引張破断強度、引張破断伸度は、それぞれ、サンプルが破断した時点での強度と伸度とした。
測定を80℃の恒温槽中で行うことにより、80℃でのヤング率とF5を求めた。なお、測定は、あらかじめ80℃に設定してある恒温槽中にチャックをセットし、サンプルを測定するまで装着してから1分間保持して行った。
(9)熱収縮率
JIS Z 1712に準拠して以下の方法で測定した。フィルムを20mm巾で200mmの長さでフィルムの長手方向、幅方向にそれぞれカットし、120℃または150℃の熱風オーブン中に吊るして5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。
(10)屈折率、△Ny、面配向係数
(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いて波長589.3nm、温度23℃で測定した。フィルムの長手方向、幅方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Nyとし、厚み方向の屈折率をNzとした。△Nyは、Nx、Ny、Nzを用いて、(式)Ny−[(Nx+Nz)/2]を用いて求めた。また、面配向係数(ΔP)は、(式)[(Nx+Ny)/2]−Nzを用いて計算した。
(11)X線半値幅、配向度
X線回折装置((株)リガク製RINT2500)を用い、透過法にて測定した。波長1.5418ÅのX線を用いて、検出器にはシンチレーションカウンタを用いた。500μmの厚みになるようにフィルムを重ね合わせて試料を調製した。ポリプロピレン樹脂のα型結晶の(110)面の回折ピーク位置(回折角度2θ=14.1°)に試料台を置き、サンプルをフィルムの厚み方向を軸として360°回転させ、(110)面の回折強度の方位角依存性を得た。この方位角依存性より、フィルムの幅方向の配向結晶に由来する回折ピークの半値幅Whを求めた。
また、Whを用いて、下記式よりX線配向度を算出した。
X線配向度=(180−Wh)/180
(12)剛軟度、垂下り量
JlS L 1096B法(スライド法)に準拠し、以下の手順にて求めた。20mm×150mmの試験片を作製し、試験機本体と移動台の上面が一致するようにしてから、試験機の台に試験片を50mm突き出させるようにのせてウェイトを設置した。そして、静かにハンドルを回して試料台を下降させ、試料の自由端が試料台から離れた時点での垂下り量(δ)を測定した。この垂下り量δとフィルム厚み、試験片サイズ、フィルム密度0.91g/cmを用いて、以下の式より剛軟度(Br)を求めた。
Br=WL/8δ
Br:剛軟度(mN・cm)
W:試験片の単位面積当たり重力(mN/cm
L:試験片の長さ(cm)
δ:垂下り量(cm)
(13)ループステフネス応力、腰感
フィルムの長手方向を短冊の長軸(ループ方向)、あるいはフィルムの幅方向を短冊の長軸(ループ方向)として、110mm×25.4mmの短冊状試験片をそれぞれ10枚ずつ切り出した。これらをクリップに挟んでフィルムの片方の面がループの内面になるものと、その反対面がループの内面になる測定用ループを、短冊の長軸がフィルムの長手方向及び幅方向となるものについて作製した。短冊の長軸がフィルムの長手方向となる測定用のループを、株式会社東洋精機製作所製ループステフネステスタDAのチャック部に幅方向を垂直にした状態でセットし、クリップをはずし、チャック間隔は50mm、押し込み深さを15mm、圧縮速度を3.3mm/秒としてループステフネス応力を測定した。測定はフィルムの片方の面がループの内面になるようにしたもののループステフネス応力と厚みを5回測定し、その後もう片面がループの内面になるようにしたものも5回測定した。この計10回分のデータを用い、各試験片の厚み(μm)の3乗を横軸に、そのループステフネス応力(mN)を縦軸としてプロットし、切片0となる直線で近似して、その傾きaを求めた。傾きaを腰感の評価値とした。短冊の長軸がフィルムの幅方向となる測定用のループも同様に測定した。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分、Tc=116.2℃、Tm=162.5℃であるプロピレン単独重合体PP−1(住友化学(株)製、住友ノーブレンFLX80E4)を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、145℃で二対のロールで長手方向に4.5倍に延伸し、ついで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、幅方向に1段目として160℃で6倍延伸し、引き続き、2段目として145℃で1.36倍延伸することで、合計8.2倍の延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、163℃で熱固定を行った。こうして得られたフィルムの厚みは18.7μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
参考例1
ポリプロピレン樹脂として、PP−1を80重量部と、MFR=11g/10分、[mmmm]=98.8%、Tc=116.5℃、Tm=161.5℃であるプロピレン単独重合体PP−2(住友化学(株)製、EL80F5)を20重量部とをブレンドして用いた。長手方向の延伸温度を142℃、幅方向の1段目の延伸温度を162℃、熱固定温度を165℃とした以外は、実施例1と同様にした。得られたフィルムの厚みは21.3μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
(実施例3)
熱固定時に3%の弛緩を施した以外は実施例2と同様に行った。得られたフィルムの厚みは21.1μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
(実施例4)
長手方向の延伸温度を145℃、幅方向の延伸直後の冷却温度を140℃とした以外は実施例2と同様に行った。得られたフィルムの厚みは18.9μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高いフィルムが得られた。
(実施例5)
幅方向延伸後、冷却せずに、クリップに把持したまま、165℃で熱固定を行った以外は、実施例2と同様に行った。得られたフィルムの厚みは19.5μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
参考例2
幅方向の2段目の延伸温度を155℃とした以外は、実施例2と同様に行った。こうして得られたフィルムの厚みは20.3μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
(実施例7)
長手方向延伸倍率を4.8倍とした以外は、実施例2と同様に行った。得られたフィルムの厚みは19.1μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
(実施例8)
幅方向延伸において、1段目の延伸倍率を6.6倍、2段目の延伸倍率を1.5倍とし、合計9.9倍の延伸とした以外は、実施例2と同様に行った。得られたフィルムの厚みは20.1μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂としてPP−1を用い、250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、143℃で4.5倍の長手方向延伸を行い、テンターにおける幅方向延伸時の予熱温度を170℃、延伸温度を158℃として8.2倍延伸を行い、続いて168℃で熱固定を行った。得られたフィルムの厚みは18.6μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件、表3に物性を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が低いものであった。
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂として、PP−1を80重量部と、PP−2を20重量部とをブレンドして用いた以外は、比較例1と同様にして行った。得られたフィルムの厚みは20.0μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件、表3に物性を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が低いものであった。
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=3g/10分、Tc=117.2℃、Tm=160.6℃であるPP−3(日本ポリプロ(株)製、FL203D)を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、長手方向に、135℃で4.5倍延伸し、テンターでの幅方向延伸において、予熱温度166℃、延伸1段目の温度を155℃、2段目の温度を139℃、冷却温度を95℃、熱固定温度を158℃とした。得られたフィルムの厚みは19.2μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件、表3に物性を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高いものであった。
(比較例4)
ポリプロピレン原料として、MFR=2.7g/10分、Tc=114.7℃、Tm=163.0℃であるPP−4(住友化学(株)製、FS2012)を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、長手方向に、145℃で4.5倍延伸し、テンターでの幅方向延伸において、予熱温度170℃、延伸1段目の温度を160℃、延伸2段目の温度を145℃、冷却温度を100℃、熱固定温度を163℃とした。得られたフィルムの厚みは21.2μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件、表3に物性を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高いものであった。
(比較例5)
ポリプロピレン樹脂として、PP−4を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、長手方向に130℃で5.8倍に延伸した後、テンターにて、予熱温度167℃としてフィルムを加熱し、続いて、延伸温度161℃で幅方向に8.6倍延伸し、その後、弛緩10%をかけながら130℃で熱固定を行い、引き続き、140℃で2段目の熱固定を行った。得られたフィルムの厚みは13.4μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件、表3に物性を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高いものであった。
Figure 0006904490
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Figure 0006904490

Claims (8)

  1. メソペンタッド分率が97.0%以上、99.9%以下であり、メルトフローレートが4.0g/10分以上、30g/10分以下であるポリプロピレン樹脂を90質量%以上含むポリプロピレン樹脂組成物からなる二軸配向ポリプロピレンフィルムであって、
    熱機械分析装置(TMA)で測定される150℃以下での最大伸び量が、長手方向で1.5mm以下であり、幅方向で0.1mm以下であり、かつ、150℃における熱収縮率が長手方向で10%以下であり、幅方向で30%以下である二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  2. 前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃熱収縮率が、長手方向で2.0%以下であり、幅方向で5.0%以下であり、かつ長手方向の120℃熱収縮率が幅方向の120℃熱収縮率よりも小さい請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  3. 前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の屈折率Nyが1.5230以上であり、△Nyが0.0220以上である請求項1又は2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  4. 前記二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズが5.0%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  5. 前記ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピレン単独重合体、および/または、エチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィン成分を1モル%以下含むプロピレン共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  6. 前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度が105℃以上であり、融点が160℃以上である請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  7. 前記二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の分子量10万以下の成分量が35質量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  8. 前記二軸配向ポリプロピレンフィルムの配向度が0.85以上である請求項1〜7のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレンフィルム。
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