JP4877056B2 - 熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法 - Google Patents

熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、ラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびその製造方法に関するものである。
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。そのような熱収縮性フィルムの内、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
また、熱収縮性フィルムとしては、ラベル製造時の取扱いの面から、一般的に、幅方向に大きく収縮させるものが利用される。それゆえ、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、加熱時に幅方向への十分な収縮力を発現させるために、幅方向へ高倍率の延伸することによって製造されていた。
ところが、従来の熱収縮性ポリエステルフィルムは、主収縮方向と直交する長手方向については、ほとんど延伸されていないため、機械的強度が低く、ラベルとしてペットボトル等に収縮させて被覆させた場合に、ラベルをミシン目に沿ってうまく引き裂くことができない(すなわち、ミシン目開封性が悪い)、という不具合がある。また、熱収縮性ポリエステルフィルムのミシン目開封性を良好なものとすべく、製造時にフィルムを長手方向に延伸すると、機械的強度が高くなり、ミシン目開封性はある程度向上するものの、長手方向に収縮力が発現してしまうため、ラベルとしてペットボトル等に収縮させて被覆させた場合に、非常に見栄え(収縮仕上がり性)が悪くなる、という不具合が露呈する。
それゆえ、熱収縮性ポリエステルフィルムのミシン目開封性を向上させるべく、熱収縮性ポリエステルフィルムの主原料中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合する方法(特許文献1)等も提案されている。
特開2002−363312号公報
ところが、上記特許文献1の如き熱収縮性ポリエステルフィルムの主原料中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合する方法によれば、熱収縮性ポリエステルフィルムのミシン目開封性がある程度向上するものの、必ずしもミシン目開封性が十分な熱収縮性ポリエステルフィルムが得られているとは言い難い。また、特許文献1の如き方法を採用した場合でも、製造時には幅方向にしか延伸することができないため、効率良く熱収縮性ポリエステルフィルムを製造することはできない。
それゆえ、本発明者らは、熱収縮性ポリエステルフィルムのミシン目開封性を良好なものとするとともに生産性を向上させる技術について検討し、縦−横延伸法によるフィルム製造の際に縦延伸後のフィルムに中間熱処理および自然冷却等を施した後に横延伸するという画期的な方法によって得られるミシン目開封性が非常に良好な上、きわめて生産性の高い熱収縮性ポリエステルフィルムについて先に提案した(特願2006−234090)。
しかしながら、本発明者らによって提案された熱収縮性ポリエステルフィルムは、ミシン目開封性が非常に良好な上、きわめて生産性が高いものの、広幅のもの(幅が3〜6mのもの)を製造した場合には、幅方向における物性が必ずしも均一であるとは言えないことが判明した。
本発明の目的は、上記従来の熱収縮性ポリエステルフィルムが有する問題点を解消し、ミシン目開封性が非常に良好で、きわめて生産性の高い上、幅方向における物性の変動の小さい熱収縮性ポリエステルフィルム(流通品の製造を目的とした製造本機(パイロット機以外のもの)で製造されるフィルム)を提供することにある。
本発明のうち、請求項1に記載された発明は、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分を15モル%以上含有しているポリエステル系樹脂からなる熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)〜(6)を満たすことを特徴とするものである。
(1)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における幅方向の湯温熱収縮率が40%以上80%以下であること
(2)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の湯温熱収縮率が0%以上15%以下であること
(3)80℃の温水中で幅方向に10%収縮させた後の単位厚み当たりの長手方向の直角引裂強度が30N/mm以上310N/mm以下であること
(4)80℃の温水中で幅方向に10%収縮させた後に幅方向および長手方向のエルメンドルフ引裂荷重を測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.3以上1.5以下であること
(5)長手方向の引張破壊強さが130MPa以上300MPa以下であること
(6)幅方向の片端縁際の分子配向角と他端縁際の分子配向角との差である分子配向角差をフィルム幅1m当たりに換算した配向ねじれ指数が2.0°/m以上9.0°/m以下であること
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、溶剤接着強度が2N/15mm幅以上15N/15mm幅以下であることを特徴とするものである。
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、動摩擦係数が0.1以上0.55以下であることを特徴とするものである。
請求項4に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、全ポリステル樹脂成分中における非晶質成分となりうるモノマーの主成分が、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸の内のいずれかであることを特徴とするものである。
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを連続的に製造するための製造方法であって、幅が4.0m以上のテンターを有する製膜設備を利用するものであり、下記(a)〜(g)の各工程を含むことを特徴とするものである。
(a)未延伸フィルムを、Tg以上Tg+30℃以下の温度で長手方向に2.2倍以上3.0倍以下の倍率で延伸した後、Tg+10℃以上Tg+40℃以下の温度で長手方向に1.2倍以上1.5倍以下の倍率で延伸することにより、トータルで2.8倍以上4.5倍以下の倍率となるように縦延伸する縦延伸工程
(b)縦延伸後のフィルムを、Tg+5℃以上Tg+70℃以下の温度で幅方向に1.3倍以上5倍以下の倍率で延伸する第一の横延伸工程
(c)第一の横延伸後のフィルムを、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で130℃以上190℃以下の温度で1.0秒以上25.0秒以下の時間に亘って熱処理する中間熱処理工程
(d)中間熱処理後のフィルムを、前後の各ゾーンと遮断されており積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させることによって自然に冷却する自然冷却工程
(e)自然冷却後のフィルムを、表面温度がTg+5℃以上Tg+60℃以下の温度となるまで積極的に冷却する積極冷却工程
(f)積極冷却後のフィルムを、Tg+5℃以上Tg+60℃以下の温度で幅方向に1.5倍以上3.5倍以下の倍率で延伸する第二の横延伸工程
(g)第二の横延伸後のフィルムを、幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、30℃以上100℃以下の温度に調整されたテンター内を通過させるセット工程
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、主収縮方向である幅方向への収縮性が高く、幅方向と直交する長手方向における機械的強度も高い上、ラベルとした際のミシン目開封性が良好であり、開封する際に引き裂き初めから引き裂き完了に至るまでミシン目に沿って綺麗にカットすることができる。また、スティフネス(所謂“腰”の強さ)が高く、ラベルとした際の装着適性に優れている。加えて、印刷加工やチュービング加工をする際の加工特性が良好である。したがって、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトル等の容器のラベルとして好適に用いることができ、ラベルとして使用した際には、ボトル等の容器に短時間の内に非常に効率良く装着することができ、装着後に熱収縮させた際にシワや収縮不足のきわめて少ない良好な仕上がりを発現させることができる上、装着されたラベルが非常に良好なミシン目開封性を発現するものとなる。
加えて、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、縦横の二軸に延伸して製造されるものであるので、非常に効率良く生産することができる。
本発明で使用するポリエステルは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものである。すなわち、エチレンテレフタレートを50モル%以上、好ましくは60モル%以上含有するものである。本発明のポリエステルを構成する他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
脂肪族ジカルボン酸(たとえば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分である。
また、3価以上の多価カルボン酸(たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
本発明で使用するポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3〜6個を有するジオール(たとえば、1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうちの1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60〜80℃に調整したポリエステルが好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が15モル%以上であることが好ましく、17モル%以上であることがより好ましく、特に20モル%以上であることが好ましい。ここで、非晶質成分となりうるモノマーとしては、たとえば、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ジエチル1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル2−エチル1,3−プロパンジオール、2,2−イソプロピル1,3−プロパンジオール、2,2−ジn−ブチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができるが、その中でも、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸を用いるのが好ましい。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、炭素数8個以上のジオール(たとえばオクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(たとえば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を、含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールをできるだけ含有させないことが好ましい。特に、ジエチレングリコールは、ポリエステル重合時の副生成成分のため、存在し易いが、本発明で使用するポリエステルでは、ジエチレングリコールの含有率が4モル%未満であることが好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、滑剤として微粒子を添加することによりポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとするのが好ましい。微粒子としては任意のものを選択することができるが、たとえば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子としては、たとえば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜3.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの幅方向の熱収縮率(すなわち、90℃の湯温熱収縮率)が、40%以上80%以下であることが必要である。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) ・・式1
90℃における幅方向の湯温熱収縮率が40%を下回ると、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルにシワやタルミが生じてしまうので好ましくなく、反対に、90℃における幅方向の湯温熱収縮率が80%を上回ると、ラベルとして用いて場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなったり、いわゆる“飛び上がり”が発生してしまうので好ましくない。なお、90℃における幅方向の湯温熱収縮率の下限値は、45%以上であると好ましく、50%以上であるとより好ましく、55%以上であると特に好ましい。また、90℃における幅方向の湯温熱収縮率の上限値は、75%以下であると好ましく、70%以下であるとより好ましく、65%以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式1により算出したフィルムの長手方向の熱収縮率(すなわち、90℃の湯温熱収縮率)が、0%以上15%以下であることが必要であり、0%以上13%以下であると好ましく、0%以上12%以下であるとより好ましく、0%以上11%以下であると一層好ましく、0%以上9%以下であると特に好ましい。
90℃における長手方向の湯温熱収縮率が0%未満であると(すなわち、収縮率が負の値であると)、ボトルのラベルとして使用する際に良好な収縮外観を得ることができないので好ましくなく、反対に、90℃における長手方向の湯温熱収縮率が15%を上回ると、ラベルとして用いた場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、90℃における長手方向の湯温熱収縮率の下限値は、1%以上であると好ましく、2%以上であるとより好ましく、3%以上であると特に好ましい。また、90℃における長手方向の湯温熱収縮率の上限値は、17%以下であると好ましく、13%以下であるとより好ましく、11%以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、80℃の温水中で幅方向に10%収縮させた後に、以下の方法で単位厚み当たりの長手方向の直角引裂強度を求めたときに、その長手方向の直角引裂強度が30N/mm以上310N/mm以下であることが必要である。
[直角引裂強度の測定方法]
80℃に調整された湯温中にてフィルムを幅方向に10%収縮させた後に、JIS−K−7128に準じて所定の大きさの試験片としてサンプリングする。しかる後に、万能引張試験機で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて、フィルムの長手方向における引張破壊時の強度の測定を行う。そして、下式2を用いて単位厚み当たりの直角引裂強度を算出する。
直角引裂強度=引張破壊時の強度÷厚み ・・式2
80℃の温水中で幅方向に10%収縮させた後の直角引裂強度が30N/mmを下回ると、ラベルとして使用した場合に運搬中の落下等の衝撃によって簡単に破れてしまう事態が生ずる可能性があるので好ましくなく、反対に、直角引裂強度が310N/mmを上回ると、ラベルを引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)が不良となるため好ましくない。なお、直角引裂強度の下限値は、50N/mm以上であると好ましく、70N/mm以上であるとより好ましく、90N/mm以上であると特に好ましい。また、直角引裂強度の上限値は、280N/mm以下であると好ましく、250N/mm以下であるとより好ましく、220N/mm以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、80℃の温水中で幅方向に10%収縮させた後に、以下の方法で長手方向および幅方向のエルメンドルフ引裂荷重を求めたときに、それらのエルメンドルフ引裂荷重の比であるエルメンドルフ比が0.3以上1.5以下であることが必要である。
[エルメンドルフ比の測定方法]
所定の長さを有する矩形状の枠にフィルムを予め弛ませた状態で装着する(すなわち、フィルムの両端を枠によって把持させる)。そして、弛んだフィルムが枠内で緊張状態となるまで(弛みがなくなるまで)、約5秒間に亘って80℃の温水に浸漬させることによって、フィルムを幅方向に10%収縮させる。しかる後に、JIS−K−7128に準じて、フィルムの幅方向および長手方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行い、下式3を用いてエルメンドルフ比を算出する。
エルメンドルフ比=長手方向のエルメンドルフ引裂荷重÷幅方向のエルメンドルフ引裂荷重 ・・式3
エルメンドルフ比が0.3未満であると、ラベルとして使用した場合にミシン目に沿って真っ直ぐに引き裂きにくいので好ましくない。反対にエルメンドルフ比が1.5を上回ると、ミシン目とずれた位置で裂け易くなるので好ましくない。なお、エルメンドルフ比の下限値は、0.4以上であると好ましく、0.5以上であるとより好ましく、0.6以上であると特に好ましい。また、エルメンドルフ比の上限値は、1.4以下であると好ましく、1.3以下であるとより好ましく、1.2以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、以下の方法で長手方向の引張破壊強さを求めたときに、その引張破壊強さが130MPa以上300MPa以下であることが必要である。
[引張破壊強さの測定方法]
JIS−K7113に準拠し、所定の大きさの短冊状の試験片を作製し、万能引張試験機でその試験片の両端を把持して、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、フィルムの長手方向の引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強さとして算出する。
長手方向の引張破壊強さが130MPaを下回ると、ラベルしてボトル等に装着する際の“腰”(スティフネス)が弱くなるので好ましくなく、反対に、引張破壊強さが300MPaを上回ると、ラベルを引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)が不良となるので好ましくない。なお、引張破壊強さの下限値は、150MPa以上であると好ましく、170MPa以上であるとより好ましく、190MPa以上であると特に好ましい。また、直角引裂強度の上限値は、280MPa以下であると好ましく、260MPa以下であるとより好ましく、240MPa以下であると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅方向の片端縁際の分子配向角と他端縁際の分子配向角との差である分子配向角差をフィルム幅1m当たりに換算した配向ねじれ指数を以下の方法で求めたときに、その配向ねじれ指数が2.0°/m以上9.0°/m以下であることが必要である。なお、配向ねじれ指数の上限値は、7.0°/m以下であると好ましく、6.0°/m以以下であるとより好ましく、5.0°/m以下であると特に好ましい。
[配向ねじれ指数の測定方法]
フィルムの幅方向の左右の端縁において、それぞれ矩形のサンプルを採取し、それらの2つのサンプルについて、分子配向角測定装置(たとえば、王子計測機器株式会社製 MOA−6004)を用いて分子配向角を測定する。そして、各測定値について、下式4を用いて分子配向角度を求め、それらの2つの分子配向角度の差を算出し、その差の値を、下式5により、サンプルの切り出し位置(中央部分)同士の間隔で除すことによって、単位幅(1m)当たりの分子配向角度の差を算出する。
分子配向角度(MOR)=90°−|測定結果| ・・式4
配向ねじれ指数=各サンプルMORの差/サンプルの切り出し位置同士の間隔 ・・式5
フィルムを連続的に製造する場合に、幅方向の中央部分では、当該配向ねじれ指数は2.0°/m以上9.0°/m以下の範囲内の数値となるが、フィルムの製造においては所謂“ボーイング現象”が必ず発生するため、端部に近くなるほど配向ねじれ指数の数値が大きくなり、上記数値の範囲に入らなくなる。すなわち、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに要求される“2.0°/m以上9.0°/m以下の配向ねじれ指数”は、フィルムの幅方向において大きなボーイング現象が生じていないことを意味する。また、製造されるフィルムの幅方向の中央部分では、配向ねじれ指数が2.0°/m以下の範囲内の数値となることもあり得るため、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、製造されるフィルムの内の中央部分(製造されるフィルムの配向ねじれ指数が2.0°/m以下となるような部分)を除いた部分を対象とするものである。
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、ラベル用熱収縮性フィルムとして5〜200μmが好ましく、10〜70μmがより好ましい。
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、溶剤接着強度が4(N/15mm)以上であることが好ましい。溶剤接着強度が4(N/15mm)未満であると、ラベルが熱収縮した後に溶剤接着部から剥れ易くなるので好ましくない。なお、溶剤接着強度は、6(N/15mm)以上であるとより好ましく、8(N/15mm)以上であると特に好ましい。なお、溶剤接着強度は高いほど好ましいが、当該溶剤接着強度の上限は、製膜装置の性能上から15(N/15mm)程度が限界であると考えている。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、動摩擦係数(熱収縮性ポリエステル系フィルムの表面と裏面とを接合させた場合の動摩擦係数)が0.1以上0.55以下であることが必要である。動摩擦係数が0.1を下回ったり0.55を上回ったりすると、ラベルに加工する際の加工特性が悪くなるので好ましくない。なお、動摩擦係数の下限値は、0.15以上であるとより好ましく、0.2以上であると特に好ましい。また、動摩擦係数の上限値は、0.50以下であるとより好ましく、0.45以下であると特に好ましい。
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、示差走査熱量測定(DSC)において融点測定時の吸熱曲線のピークが検出されないことが好ましい。フィルムを構成するポリエステルを非晶性とすることで、融点測定時の吸熱曲線のピークはより発現しにくくなる。融点測定時の吸熱曲線のピークが発現しない程度まで高度に非晶化することにより、溶剤接着強度が向上するとともに、熱収縮率や最大熱収縮応力値を高めて、前述の好ましい範囲内に制御することが容易となる。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの幅は、特に制限されるものではないが、取扱い易さの点から、0.5m以上1.5m以下であると好ましい。なお、そのような0.5m以上1.5m以下の幅を有するフィルムは、広幅のフィルムをロール状に巻き取った3m以上6m以下の幅を有するミルロールを複数個にスリットすることにより、ロール状に巻き取った状態に形成するのが好ましい。加えて、上記の如くフィルムロールを形成する場合には、その巻長は、特に制限されないが、巻き易さや取扱い易さの点から、1,000m以上10,000m以下であると好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す所定の方法により二軸延伸して熱処理することによって得ることができる。
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で長手方向に延伸し、その縦延伸後のフィルムを急冷した後に、一旦、熱処理し、その熱処理後のフィルムを所定の条件で冷却した後に、所定の条件で幅方向に延伸し、再度、熱処理することによって本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製膜方法について、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製膜方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
[本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製膜方法]
上述したように、通常、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、未延伸フィルムを収縮させたい方向(すなわち、主収縮方向、通常は幅方向)のみに延伸することによって製造される。本発明者らが従来の製造方法について検討した結果、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造においては、以下のような問題点があることが判明した。
・単純に幅方向に延伸するだけであると、上述の如く、長手方向の機械的強度が小さくなり、ラベルとした場合のミシン目開封性が悪くなる。その上、製膜装置のライン速度を上げることが困難である。
・幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法を採用すると、どのような延伸条件を採用しても、幅方向の収縮力を十分に発現させることができない。さらに、長手方向の収縮力が同時に発現してしまい、ラベルとした際に収縮装着後の仕上がりが悪くなる。
・長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法を採用すると、幅方向の収縮力は発現させることができるものの、長手方向の収縮力が同時に発現してしまい、ラベルとした際に収縮装着後の仕上がりが悪くなる。
さらに、上記従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造における問題点に基づいて、本発明者らが、ミシン目開封性が良好で生産性の高い熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることについてさらなる考察を進めた結果、次のような知見を得るに至った。
・ラベルとした際のミシン目開封性を良好なものとするためには、長手方向へ配向した分子をある程度残しておく必要があると考えられること
・ラベルとした際の収縮装着後の仕上がりを良好なものとするためには、長手方向への収縮力を発現させないことが不可欠であり、そのためには長手方向へ配向した分子の緊張状態を解消する必要があると考えられること
そして、本発明者らは、上記知見から、良好なミシン目開封性と収縮仕上がり性を同時に満たすためには、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム中に存在させる必要がある、と考えるに至った。そして、どのような延伸を施せば“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム中に存在させることができるかに注目して試行錯誤した。その結果、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する所謂、縦−横延伸法によるフィルム製造の際に、縦延伸後のフィルムに中間熱処理および自然冷却等を施した後に横延伸することにより、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム中に存在させることを実現し、良好なミシン目開封性と収縮仕上がり性を同時に満たす熱収縮性ポリエステル系フィルムを得られることが判明した。
ところが、縦−横延伸法によるフィルム製造の際に、縦延伸後のフィルムに高温で中間熱処理を施すと、縦延伸によってフィルム中の分子が長手方向に配向しているため、中間熱処理工程においてフィルムが縦方向に収縮してしまい、その縦方向の収縮に起因して、フィルムの幅方向における主配向方向、主収縮方向等のずれが大きくなる現象(所謂、ボーイング現象)が発生することが判明した。それゆえ、本発明者らは、縦−中間熱処理−横延伸法によるフィルム製造においてボーイング現象を抑制するための方策についてさらに試行錯誤した。その結果、縦延伸後のフィルムに中間熱処理を施すのではなく、縦延伸後のフィルムに小倍率の横延伸を施した後に中間熱処理を施し、しかる後に、再度、所定の倍率となるように横延伸を施すことにより、中間熱処理における縦方向の収縮を低減し、ボーイング現象を抑制することが可能となり、本発明を案出するに至った。すなわち、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造においては、以下の手段を講じる必要がある。
(1)縦延伸条件の制御
(2)縦延伸後における小倍率横延伸(一段目の横延伸)
(3)一段目の横延伸後における中間熱処理
(4)中間熱処理と横延伸(二段目の横延伸)との間における自然冷却(加熱の遮断)
(5)自然冷却後のフィルムの強制冷却
(6)二段目の横延伸条件の制御
以下、上記した各手段について順次説明する。
(1)縦延伸条件の制御
本発明の縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、本発明のフィルムロールを得るためには、縦延伸を二段で行うのが好ましい。すなわち、実質的に未配向のフィルムを、Tg以上Tg+30℃以下の温度で2.2倍以上3.0倍以下の倍率となるように縦延伸し(一段目の延伸)、Tg以下に冷却することなく、Tg+10以上Tg+40℃以下の温度で1.2倍以上1.5倍以下の倍率となるように縦延伸する(二段目の延伸)ことにより、トータルの縦延伸倍率(すなわち、一段目の縦延伸倍率×二段目の縦延伸倍率)が2.8倍以上4.5倍以下となるように縦延伸するのが好ましく、トータルの縦延伸倍率が3.0倍以上4.3倍以下となるように縦延伸するとより好ましい。
また、上記の如く二段で縦延伸する際には、縦延伸後のフィルムの長手方向の屈折率が1.600〜1.630の範囲内となり、縦延伸後のフィルムの長手方向の熱収縮応力が10MPa以下となるように、縦延伸の条件を調整するのが好ましい。そのような所定の条件の縦延伸を施すことにより、後述する中間熱処理、横延伸、最終熱処理時にフィルムの長手方向・幅方向への配向度合い、分子の緊張度合いをコントロールすることが可能となり、ひいては、最終的なフィルムのミシン目開封性を良好なものとすることが可能となる。
上記の如く縦方向に延伸する際に、トータルの縦延伸倍率が高くなると、長手方向の収縮率が高くなってしまう傾向にあるが、上記の如く縦方向に二段で延伸することにより、長手方向の延伸応力を小さくすることが可能となり、長手方向の収縮率を低く抑えることが可能となる。また、トータルの縦延伸倍率が高くなると、幅方向の延伸時の応力が高くなってしまい、最終的な横方向の収縮率のコントロールが難しくなる傾向にあるが、二段で延伸することにより、横方向の延伸応力も小さくすることができ、横方向の収縮率のコントロールが容易なものとなる。
さらに、トータルの縦延伸倍率が高くなると、直角引裂強度が低くなり、長手方向の引張強さが高くなる。また、トータルの縦延伸倍率を横延伸倍率に近づけることによって、エルメンドルフ比を1.0に近づけることが可能となり、ラベルとした際のミシン目開封性を良好なものとすることができる。さらに、縦方向に二段で延伸することにより、横方向の延伸応力を低下できることに起因して、長手方向の配向を高くすることが可能となり、直角引裂強度が一層低くなり、長手方向の引張強さがより大きなものとなる。したがって、縦方向に二段で延伸し、トータルの縦延伸倍率を高くすることによって、非常にミシン目引裂性の良好なラベルを得ることが可能となる。
一方、トータルの縦延伸倍率が4.5倍を上回ると、長手方向の配向が高くなって溶剤接着強度が低くなってしまうが、トータルの縦延伸倍率を4.5倍以下にコントロールすることによって、幅方向への配向を抑えて、溶剤接着強度を高く保持することが可能となる、また、トータルの縦延伸倍率が4.5倍を上回ると、表層の粗さが少なくなるため、動摩擦係数が高くなってしまうが、トータルの縦延伸倍率を4.5倍以下にコントロールすることによって、表層の粗さの減少を抑えて、動摩擦係数を低く保持することが可能となる。
また、縦方向に二段で延伸することにより、長手方向の延伸応力が小さくなるため、長手方向の厚み斑および幅方向の厚み斑が大きくなる傾向にあるが、トータルの縦延伸倍率が高くすることにより、長手方向の厚み斑を小さくすることができ、それに伴ってヘイズも低減することができる。加えて、トータルの縦延伸倍率を高くすることによって、横延伸時の応力が高くなるため、幅方向の厚み斑も低減することができる。
加えて、トータルの縦延伸倍率が高くすることにより、長手方向への配向を高くすることができ、二軸延伸後のフィルムを最終的にロールに巻き取る際のスリット性を向上させることができる。
(2)縦延伸後における小倍率横延伸(一段目の横延伸)
本発明の縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、縦延伸後のフィルムに小倍率となるように横延伸する必要がある。すなわち、横延伸は、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、70℃(Tg+5℃)以上135℃(Tg+70℃)以下の温度で1.3倍以上5.0倍以下の倍率となるように行う必要がある。
上記したように、縦延伸後の中間熱処理前に、上記した所定の条件で小倍率の横延伸を加えることによって、縦延伸により長手方向に配向した分子を横方向に配向させることが可能となり、その結果、驚くべきことに、後述の如くテンター内で中間熱処理を施す際に縦方向のみ収縮を緩和することが格段に容易となり、ひいては、ボーイング現象を抑制することが可能となる。なお、一段目の横延伸の温度の下限は、75℃以上であると好ましく、80℃以上であるとより好ましい。また、一段目の横延伸の温度の上限は、130℃以下であると好ましく、125℃以下であるとより好ましい。一方、一段目の横延伸の倍率の下限は、1.4倍以上であると好ましく、1.5倍以上であるとより好ましい。また、一段目の横延伸の倍率の上限は、4.8倍以下であると好ましく、4.6倍以下であるとより好ましい。
上記の如く一段目の横方向に延伸する際に、延伸温度が70℃より低いと破断が生じ、生産性が悪化する。延伸温度が135℃より高いと、幅方向の厚み斑が大きくなり、次工程の熱処理ゾーン(中間熱処理ゾーン)で 幅方向で厚みが高い箇所と薄い箇所で収縮斑が生じ 厚みの薄い箇所が白っぽくなり外観が悪くなる。また横方向の厚みも悪くなる。反対に、一段目の横延伸倍率が1.3倍より低いと 長手方向の配向が高く残り 次工程の熱処理ゾーンでの長手方向の収縮が大きくなり ボーイングが大きくなる。一段目の横延伸の倍率が5倍より高いと、ポリマーのもつ収縮特性がなくなっていき、後の工程で熱処理して二段目の横方向の延伸を施しても、90℃の幅方向の温湯収縮率が40%未満となってしまう。
(3)一段目の横延伸後における中間熱処理
上述の如く、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させるためには、長手方向に配向した分子を熱緩和させることが好ましいが、従来、フィルムの二軸延伸において、一軸目の延伸と二軸目の延伸との間において、高温の熱処理をフィルムに施すと、熱処理後のフィルムが結晶化してしまうため、それ以上延伸することができない、というのが業界での技術常識であった。しかしながら、本発明者らが試行錯誤した結果、縦−横延伸法において、ある一定の条件で縦延伸を行い、その縦延伸後のフィルムの状態に合わせて中間熱処理を所定の条件で行い、さらに、その中間熱処理後のフィルムの状態に合わせて所定の条件で横延伸を施すことによって、横延伸時に破断を起こさせることなく、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させ得る、という驚くべき事実が判明した。
すなわち、本発明の縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、未延伸フィルムを縦延伸し約3倍以下の倍率で横延伸した後に、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、130℃以上190℃以下の温度で1.0秒以上25.0秒以下の時間に亘って熱処理(以下、中間熱処理という)することが必要である。かかる中間熱処理を行うことによって、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させることが可能となり、ひいては、ラベルとした場合にミシン目開封性が良好で収縮斑が生じないフィルムを得ることが可能となる。なお、どのような縦延伸を行った場合でも、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させることが可能となるわけではなく、前述した所定の縦延伸を実施することによって、中間熱処理後に、初めて“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させることが可能となる。そして、後述する所定の自然冷却、強制冷却、横延伸(二段目の横延伸)を施すことによって、フィルム内に形成された“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”を保持したまま、幅方向へ分子を配向させて幅方向への収縮力を発現させることが可能となる。
なお、中間熱処理の温度の下限は、135℃以上であると好ましく、140℃以上であるとより好ましい。また、中間熱処理の温度の上限は、180℃以下であると好ましく、170℃以下であるとより好ましい。一方、中間熱処理の時間は、1.0秒以上22.0秒以下の範囲内で原料組成に応じて適宜調整する必要があり、3.0秒以上19.0秒以下に調整するのが好ましい。
また、上記の如く中間熱処理する際には、中間熱処理後のフィルムの長手方向の屈折率が1.595〜1.625の範囲内となり、中間熱処理後のフィルムの長手方向の熱収縮応力が0.5MPa以下となるように、中間熱処理の条件を調整するのが好ましい。さらに、中間熱処理後のフィルムの長手方向の引張破壊伸びが100%以上170%以下となるように、中間熱処理の条件を調整するのが好ましい。そのような所定の条件の中間熱処理を施すことにより、横延伸、最終熱処理時にフィルムの長手方向・幅方向への配向度合い、分子の緊張度合いをコントロールすることが可能となり、ひいては、最終的なフィルムのミシン目開封性を良好なものとすることが可能となる。なお、中間熱処理後のフィルムの長手方向の引張破壊伸びが100%を下回ると、フィルムが脆いために横延伸性が悪く、横延伸時に破断が起こり易くなってしまう。反対に、中間熱処理後のフィルムの長手方向の引張破壊伸びが170%を上回ると、横延伸、最終熱処理の条件を調整しても、ミシン目開封性の良好なフィルムを得ることが困難となる。
さらに、上記の如く中間熱処理する際には、中間熱処理後のフィルムの長手方向の直角引裂強度が260N/mm以下となるように、中間熱処理の条件を調整するのが好ましい。そのような所定の条件の中間熱処理を施すことにより、横延伸時における長手方向の直角引裂強度の急激な増加を抑えることが可能となり、最終的なフィルムのミシン目開封性を良好なものとすることが可能となる。
上記の如く中間熱処理する際に、処理温度を130℃以上に保つことにより、長手方向へ収縮する応力を低減することが可能となり、長手方向の収縮率をきわめて低くすることが可能となる。また、中間熱処理の温度を180℃より高くすると、横方向の収縮率のバラツキが大きくなってしまうが、中間熱処理の温度を180℃以下にコントロールすることによって、横方向の収縮率のバラツキを低減することが可能となる。
また、処理温度を130℃以上に保つことにより、長手方向の配向を高くすることが可能となり、直角引裂強度を低く保つことが可能となるとともに、長手方向のエルメンドルフ比を1.0に近づけることができる。また、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムが結晶化して、長手方向の引張強さが低下してしまうが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの結晶化を抑えて長手方向の引張強さを高く保つことが可能となる。
また、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムの表層が結晶化して溶剤接着強度が低くなってしまうが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの表層の結晶化を抑えて溶剤接着強度を高く保つことが可能となる。加えて、処理温度を130℃以上に保つことにより、表層の表面粗度を適度に高くすることによって、摩擦係数を低くすることが可能となる。
さらに、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムに収縮斑が生じることにより、長手方向の厚み斑および幅方向の厚み斑が大きくなる傾向にあるが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、長手方向の厚み斑を小さく保つことが可能となる。加えて、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムが結晶化してしまい、横延伸時の応力がばらつくことに起因して、幅方向の厚み斑が大きくなる傾向にあるが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの結晶化を抑えて幅方向の厚み斑を小さく保つことが可能となる。
また、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムに収縮斑が生じることに起因して、製造中にフィルムのスリット性が悪化したり、フィルムの破断が生じ易くなったりするが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの破断を抑えて、良好なスリット性を保つことが可能となる。
加えて、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムが結晶化することに起因して、フィルムのヘイズが高くなる傾向にあるが、中間熱処理の温度を180℃以下にコントロールすることによって、フィルムのヘイズを低く抑えることが可能となる。
(4)中間熱処理と横延伸(二段目の横延伸)との間における自然冷却(加熱の遮断)
本発明の縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、上記の如く、縦延伸後に中間熱処理を施す必要があるが、その縦延伸と中間熱処理との間において、0.5秒以上3.0秒以下の時間に亘って、積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させる必要がある。すなわち、横延伸用のテンターの横延伸ゾーンの前方に中間ゾーンを設けておき、縦延伸後のフィルムをテンターに導き、所定時間をかけて当該中間ゾーンを通過させた後に、横延伸を実施するのが好ましい。加えて、その中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、フィルムの流れに伴う随伴流および冷却ゾーンからの熱風を遮断するのが好ましい。なお、中間ゾーンを通過させる時間が0.5秒を下回ると、横延伸が高温延伸となり、横方向の収縮率を十分に高くすることができなくなるので好ましくない。反対に中間ゾーンを通過させる時間は3.0秒もあれば十分であり、それ以上の長さに設定しても、設備のムダとなるので好ましくない。なお、中間ゾーンを通過させる時間の下限は、0.7秒以上であると好ましく、0.9秒以上であるとより好ましい。また、中間ゾーンを通過させる時間の上限は、2.8秒以下であると好ましく、2.6秒以下であるとより好ましい。
(5)自然冷却後のフィルムの強制冷却
本発明の縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、上記の如く自然冷却したフィルムをそのまま横延伸するのではなく、フィルムの温度が70℃以上120℃以下となるように急冷することが必要である。なお、急冷後のフィルムの温度の下限は、75℃以上であると好ましく、80℃以上であるとより好ましい。また、急冷後のフィルムの温度の上限は、115℃以下であると好ましく、110℃以下であるとより好ましい。
上記の如くフィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が120℃を上回ったままであると、フィルムの幅方向の収縮率が低くなってしまい、ラベルとした際の収縮性が不十分となってしまうが、冷却後のフィルムの温度が120℃以下となるようにコントロールすることによって、フィルムの幅方向の収縮率を高く保持することが可能となる。
また、フィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が120℃を上回ったままであると、フィルムが結晶化してしまい、ヘイズが高くなり、長手方向の引張強さが低下し、溶剤接着強度が低下する傾向にあるが、冷却後のフィルムの温度が120℃以下となるような急冷を施すことによって、ヘイズを低く保持し、長手方向の引張強さおよび溶剤接着強度を高く保持することが可能となる。
さらに、フィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が120℃を上回ったままであると、冷却後に行う横延伸の応力が小さくなり、幅方向の厚み斑が大きくなり易い傾向にあるが、冷却後のフィルムの温度が120℃以下となるような急冷を施すことによって、冷却後に行う横延伸の応力を高めて、幅方向の厚み斑を小さくすることが可能となる。
フィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が70℃を下回ったままであると、フィルムの破断が生じ易くなってしまうが、冷却後のフィルムの温度が70℃以上となるような急冷を施すことによって、フィルムの破断を抑えることが可能となる。
(6)二段目の横延伸条件の制御
本発明の縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、縦延伸、一段目の横延伸、中間熱処理、自然冷却、強制冷却後のフィルムを所定の条件で横延伸(二段目の横延伸)する必要がある。すなわち、横延伸は、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、70℃(Tg+5℃)以上125℃(Tg+60℃)以下の温度で1.5倍以上3.5倍以下の倍率となるように行う必要がある。かかる所定条件で二段目の横延伸を施すことによって、縦延伸および中間熱処理によって形成された“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”を保持したまま、幅方向へ分子を配向させて幅方向の収縮力を発現させることが可能となり、ラベルとした際のミシン目開封性が良好なフィルムを得ることが可能となる。なお、二段目の横延伸の温度の下限は、73℃以上であると好ましく、76℃以上であるとより好ましい。また、二段目の横延伸の温度の上限は、122℃以下であると好ましく、119℃以下であるとより好ましい。一方、二段目の横延伸の倍率の下限は、1.7倍以上であると好ましく、1.9倍以上であるとより好ましい。また、二段目の横延伸の倍率の上限は、3.3倍以下であると好ましく、3.1倍以下であるとより好ましい。
上記の如く二段目の横方向を施す際に、延伸温度を高くすると、長手方向の引張強さが大きくなり、長手方向のエルメンドルフ比が1.0に近づき、直角引裂強度が低くなり、ラベルとした際のミシン目開封性が良好なものとなる。
また、延伸温度が125℃を上回ると、幅方向の収縮率が低くなってしまうが、延伸温度を125℃以下にコントロールすることによって、幅方向の収縮率を高く保持することが可能となる。
さらに、二段目の横延伸における延伸温度が高くなると、横方向の配向が低くなって、溶剤接着強度が高くなるとともに、滑剤の圧潰を防止することが可能となり、摩擦係数を低く保つことが可能となる。加えて、横延伸における延伸温度が高くなると、フィルムの内部のボイドが減少することによって、フィルムのヘイズが低くなる。
また、延伸温度が125℃を上回ると、幅方向の厚み斑が大きくなり易い傾向にあるが、延伸温度を125℃以下にコントロールすることによって、幅方向の厚み斑を小さくすることができる。
一方、延伸温度が70℃を下回ると、幅方向への配向が高くなりすぎて、二段目の横延伸時に破断し易くなったり、長手方向の収縮率が高くなったり、二軸延伸後のフィルムを最終的にロールに巻き取る際のスリット性が悪くなったりするが、延伸温度を70℃以上にコントロールすることによって、二段目の横延伸時における破断を低減し、巻き取り時のスリット性を改善することが可能となる。
[製造工程の相互作用がフィルム特性に与える影響]
本発明の本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造に当たっては、縦延伸工程、一段目の横延伸工程、中間熱処理工程、自然冷却工程、強制冷却工程、二段目の横延伸工程の内の何れかの工程のみが、単独でフィルムの特性を良好なものとすることができるものではなく、縦延伸工程、一段目の横延伸工程、中間熱処理工程、自然冷却工程、強制冷却工程、二段目の横延伸工程のすべてを所定の条件にて行うことにより、非常に効率的にフィルムの特性を良好なものとすることが可能となるものと考えられる。また、フィルムの特性の中でも、エルメンドルフ比、長手方向の直角引裂強度、長手方向の引張破壊強さ、動摩擦係数、配向ねじれ指数といった重要な特性は、特定の複数の工程同士の相互作用によって大きく数値が変動する。
すなわち、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エルメンドルフ比を0.3以上1.5以下に調整し、長手方向の直角引裂強度を30N/mm以上310N/mm以下に調整する必要があるが、当該エレメンドルフ比および長手方向の直角引裂強度には、縦延伸工程と中間熱処理工程との相互作用が非常に大きく影響する。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、長手方向の引張破壊強さを130MPa以上300MPa以下に調整する必要があるが、当該長手方向の引張破壊強さには、縦延伸工程、中間熱処理工程、および横延伸工程という3つの工程の相互作用が非常に大きく影響する。
加えて、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、動摩擦係数を0.1以上0.55以下に調整すると好ましいが、当該動摩擦係数には、縦延伸工程と中間熱処理工程との相互作用が非常に大きく影響する。
また、本発明の如き熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造においては、テンター内で中間熱処理、横延伸する際におけるダクトの風量が非常に大きく物性に影響する。それゆえ、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造においては、テンター内での各工程における熱伝達係数が以下の範囲内となるように、ダクトの風量等の条件を調整するのが好ましい。
一段目、二段目の横延伸前の予熱工程=0.0030J/cm・sec・℃以上0.0050J/cm・sec・℃以下
一段目の横延伸工程=0.0040J/cm・sec・℃以上0.0120J/cm・sec・℃以下
中間熱処理工程=0.0060J/cm・sec・℃以上0.0200J/cm・sec・℃以下
二段目の横延伸工程=0.0050J/cm・sec・℃以上0.0130J/cm・sec・℃以下
最終的な熱セット工程=0.0005J/cm・sec・℃以上0.0060J/cm・sec・℃以下
したがって、熱収縮性ポリエステル系フィルムのエルメンドルフ比、長手方向の直角引裂強度、引張破壊強さ、幅方向の厚み斑、動摩擦係数、配向ねじれ指数を本発明の範囲内に調整するためには、上記した工程同士の相互作用を考慮しつつ、上記(1)〜(5)のようなデリケートな条件調整が必要となる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。なお、フィルムの評価方法は下記の通りである。
[熱収縮率(湯温熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下式1にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。当該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) ・・式1
[最大熱収縮応力値]
延伸したフィルムを、主収縮方向(幅方向)×主収縮方向と直交する方向(長手方向)=200mm×15mmのサイズにカットした。しかる後、(株)ボールドウィン社製 万能引張試験機 STM−50を温度90℃に調整した上で、カットしたフィルムをセットし、10秒間保持したときの主収縮方向の応力値を測定した。
[直角引裂強度]
80℃に調整された湯温中にてフィルムを主収縮方向に10%収縮させた後に、JIS−K−7128に準じて、図1に示す形状にサンプリングすることによって試験片を作製した(なお、サンプリングにおいては、試験片の長手方向をフィルムの主収縮方向とした)。しかる後に、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ)で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて、引張破壊時の強度の測定を行い、下式2を用いて単位厚み当たりの直角引裂強度を算出した。
直角引裂強度=引張破壊時の強度÷厚み ・・式2
[エルメンドルフ比]
得られたフィルムを矩形状の枠に予め弛ませた状態で装着し(フィルムの両端を枠によって把持させ)、弛んだフィルムが枠内で緊張状態となるまで(弛みがなくなるまで)、約5秒間に亘って80℃の温水に浸漬させることによって、フィルムを主収縮方向に10%収縮させた(以下、予備収縮という)。しかる後に、JIS−K−7128に準じて、主収縮方向×直交方向=75mm×63mmのサイズに切り取り、長尺な端縁(主収縮方向に沿った端縁)の中央から当該端縁に直交するように20mmのスリット(切り込み)を入れることによって試験片を作製した。そして、作製された試験片を用いて主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行った。また、上記方法と同様な方法でフィルムを主収縮方向に予備収縮させた後に、フィルムの主収縮方向と直交方向とを入れ替えて試験片を作製し、直交方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行った。そして、得られた主収縮方向方向および主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重から下式3を用いてエルメンドルフ比を算出した。
エルメンドルフ比=長手方向のエルメンドルフ引裂荷重÷幅方向のエルメンドルフ引裂荷重 ・・式3
[配向ねじれ指数]
フィルムの幅方向の左右の端縁において、長手方向(MD方向)×幅方向=140mm×100mmのサンプルを採取した。そして、それらの2つのサンプルについて、王子計測機器株式会社製の分子配向角測定装置(MOA−6004)を用いて分子配向角を測定した。そして、下式4を用いて分子配向角度を求めた。
分子配向角度(MOR)=90°−|測定結果| ・・式4
そして、それらの2つのサンプルの分子配向角度の差を算出し、その差の値を、下式5により、サンプルの切り出し位置(中央部分)同士の間隔で除すことによって、単位幅(1m)当たりの分子配向角度の差を算出して、配向ねじれ指数とした。
配向ねじれ指数=各サンプルMORの差/サンプルの切り出し位置同士の間隔 ・・式5
[引張破壊強さ]
JIS−K7113に準拠し、所定の大きさの短冊状の試験片を作製し、万能引張試験機でその試験片の両端を把持して、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、フィルムの長手方向の引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強さとして算出した。
[溶剤接着強度]
延伸したフィルムに1,3−ジオキソランを塗布して2枚を張り合わせることによってシールを施した。しかる後、シール部をフィルムの主収縮方向と直交する方向(以下、直交方向という)に15mmの幅に切り取り、それを(株)ボールドウィン社製 万能引張試験機 STM−50にセットし、引張速度200mm/分の条件で180°ピール試験を行った。そして、そのときの引張強度を溶剤接着強度とした。
[動摩擦係数]
JIS K−7125に準拠し、引張試験機(ORIENTEC社製テンシロン)を用い、23℃・65%RH環境下で、フィルムの表面と裏面とを接合させた場合の動摩擦係数μdを求めた。なお、上側のフィルムを巻き付けたスレッド(錘)の重量は、1.5kgであり、スレッドの底面積の大きさは、縦63mm×横63mmであった。また、摩擦測定の際の引張速度は、200mm/min.であった。
[Tg(ガラス転移点)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgを、−40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、得られた吸熱曲線より求めた。吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をTg(ガラス転移点)とした。
[収縮仕上り性]
熱収縮性フィルムに、予め東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷を施した。そして、印刷したフィルムの両端部をジオキソランで接着することにより、円筒状のラベル(熱収縮性フィルムの主収縮方向を周方向としたラベル)を作成した。しかる後、Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式;SH−1500−L)を用い、通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃で、500mlのPETボトル(胴直径 62mm、ネック部の最小直径25mm)に熱収縮させることにより、ラベルを装着した。なお、装着の際には、ネック部においては、直径40mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。収縮後の仕上がり性の評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
◎:シワ,飛び上り、収縮不足の何れも未発生で、かつ色の斑も見られない
○:シワ,飛び上り、または収縮不足が確認できないが、若干、色の斑が見られる
△:飛び上り、収縮不足の何れも未発生だが、ネック部の斑が見られる
×:シワ、飛び上り、収縮不足が発生
[ミシン目開封性]
予め主収縮方向とは直向する方向にミシン目を入れておいたラベルを、上記した収縮仕上り性の測定条件と同一の条件でPETボトルに装着した。ただし、ミシン目は、長さ1mmの孔を1mm間隔で入れることによって形成し、ラベルの縦方向(高さ方向)に幅22mm、長さ120mmに亘って2本設けた。その後、このボトルに水を500ml充填し、5℃に冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のボトルのラベルのミシン目を指先で引裂き、縦方向にミシン目に沿って綺麗に裂け、ラベルをボトルから外すことができた本数を数え、全サンプル50本に対する割合(%)を算出した。
また、実施例、比較例で使用したポリエステル原料の性状、組成、実施例、比較例におけるフィルムの製造条件(延伸・熱処理条件等)を、それぞれ表1、表2に示す。
Figure 0004877056
Figure 0004877056
<ポリエステル原料の調製>
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、二塩基酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)を用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、280℃で26.6Pa(0.2トール)の減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gのポリエステル(A)を得た。このポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。なお、上記ポリエステル(A)の製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して8,000ppmの割合で添加した。また、上記と同様な方法により、表1に示すポリエステル(A2,B,C,D)を合成した。なお、表中、NPGがネオペンチルグリコール、CHDMが1,4−シクロヘキサンジメタノール、BDが1,4−ブタンジオールである。それぞれのポリエステルの固有粘度は、Bが0.72dl/g、Cが0.80dl/g、Dが1.15dl/gであった。なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。
[実施例1]
上記したポリエステルA2とポリエステルBとポリエステルDとを重量比7:83:10で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが582μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは67℃であった。
そして、上記の如く得られた未延伸フィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、ロールの回転速度差を利用して、縦方向に二段階で延伸した。すなわち、未延伸フィルムを、予熱ロール上でフィルム温度が78℃になるまで予備加熱した後に、表面温度78℃に設定された低速回転ロールと表面温度78℃に設定された中速回転ロールとの間で回転速度差を利用して2.6倍に延伸した。さらに、その縦延伸したフィルムを、表面温度95℃に設定された中速回転ロールと表面温度30℃に設定された高速回転ロールとの間で回転速度差を利用して1.4倍に縦延伸した(したがって、トータルの縦延伸倍率は、3.64倍であった)。
上記の如く縦延伸直後のフィルムを、表面温度30℃に設定された冷却ロール(二段目の縦延伸ロールの直後に位置した高速ロール)によって、40℃/秒の冷却速度で強制的に冷却した後に、冷却後のフィルムをテンター(テンター幅5m)に導き、一段目横延伸ゾーン、中間熱処理ゾーン、第一中間ゾーン(自然冷却ゾーン)、冷却ゾーン(強制冷却ゾーン)、第二中間ゾーン、二段目横延伸ゾーン、最終熱処理ゾーンを連続的に通過させた。なお、当該テンターにおいては、第一中間ゾーンの長さを、約40cmに設定し、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの間、第一中間ゾーンと冷却ゾーンとの間、冷却ゾーンと第二中間ゾーンとの間、第二中間ゾーンと横延伸ゾーンとの間に、それぞれ遮蔽板を設けた。さらに、第一中間ゾーンおよび第二中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、中間熱処理ゾーンからの熱風、冷却ゾーンからの冷却風および横延伸ゾーンからの熱風を遮断した。加えて、フィルムの通紙時には、フィルムの流れに伴う随伴流の大部分が、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの間に設けられた遮蔽板によって遮断されるように、フィルムと遮蔽板との距離を調整した。加えて、フィルムの通紙時には、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの境界、および、冷却ゾーンと第二中間ゾーンとの境界においては、フィルムの流れに伴う随伴流の大部分が遮蔽板によって遮断されるようにフィルムと遮蔽板との距離を調整した。
そして、テンターに導かれた縦延伸フィルムを、まず、フィルムの表面温度が85℃になるまで予備加熱した後に、92℃で幅方向(横方向)に1.9倍に延伸した(一段目の横延伸)。なお、一段目の横延伸前の予熱工程における熱伝達係数は、約0.0038J/cm・sec・℃であり、一段目の横延伸工程における熱伝達係数は、約0.0082J/cm・sec・℃であった。しかる後、その一段目の横延伸後のフィルムを中間熱処理ゾーンに導き、当該中間熱処理ゾーンにおいて、155℃の温度で7.0秒間に亘って熱処理した後に、その中間熱処理後のフィルムを第一中間ゾーンに導き、当該ゾーンを通過させることによって(通過時間=約1.0秒)自然冷却した。なお、中間熱処理工程における熱伝達係数は、約0.0130J/cm・sec・℃であった。しかる後に、自然冷却後のフィルムを冷却ゾーンに導き、フィルムの表面温度が90℃になるまで、低温の風を吹き付けることによって積極的に冷却し、その冷却後のフィルムを第二中間ゾーンに導き、当該ゾーンを通過させることによって(通過時間=約1.0秒)再度自然冷却した。さらに、その第二中間ゾーンを通過した後のフィルムを二段目横延伸ゾーンに導き、フィルムの表面温度が92℃になるまで予備加熱した後に、95℃で幅方向(横方向)に2.1倍に延伸した(したがって、トータルの横延伸倍率は4.0倍である)。なお、二段目の横延伸前の予熱工程における熱伝達係数は、約0.0038J/cm・sec・℃であり、二段目の横延伸工程における熱伝達係数は、約0.0090J/cm・sec・℃であった。
しかる後、その横延伸後のフィルムを最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、85℃の温度で5.0秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製造した。なお、最終の熱処理工程における熱伝達係数は、約0.0025J/cm・sec・℃であった。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例2]
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しする際に、未延伸フィルムの厚みが627μmとなるように押出機の吐出量を調整した。それ以外は実施例1と同様にして未延伸フィルムを得た。そして、得られた未延伸フィルムを、縦延伸機を用いて、予熱ロール上でフィルム温度が78℃になるまで予備加熱した後に、表面温度78℃に設定された低速回転ロールと表面温度78℃に設定された中速回転ロールとの間で回転速度差を利用して2.8倍に延伸した。さらに、その縦延伸したフィルムを、表面温度95℃に設定された中速回転ロールと表面温度30℃に設定された高速回転ロールとの間で回転速度差を利用して1.4倍に縦延伸した(したがって、トータルの縦延伸倍率は、3.92倍であった)。そして、縦延伸後のフィルムをテンターに導き、中間熱処理ゾーンにおいて、155℃の温度で10.0秒間熱処理した以外は実施例1と同様な条件で製膜することによって、約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例3]
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しする際に、未延伸フィルムの厚みが728μmとなるように押出機の吐出量を調整した。それ以外は実施例1と同様にして未延伸フィルムを得た。そして、得られた未延伸フィルムを用いて、テンター内での1段目の横延伸倍率を2.4倍に変更し、2段目の横延伸倍率を2.1倍に変更(トータル5倍延伸)した以外は実施例1と同様な条件で製膜することによって、約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[実施例4]
上記したポリエステルAとポリエステルA2とポリエステルBとポリエステルCとポリエステルDとを重量比3:7:15:65:10で混合して押出機に投入した以外は 実施例1と同様な条件で製膜することによって、約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例1]
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しする際に、未延伸フィルムの厚みが582μmとなるように押出機の吐出量を調整した。それ以外は実施例1と同様にして未延伸フィルムを得た。そして、得られた未延伸フィルムに実施例1と同様な縦延伸を施した後、その縦延伸フィルムを中間熱処理ゾーンに導き、当該中間熱処理ゾーンにおいて、155℃の温度で7.0秒間に亘って熱処理した後に、その中間熱処理後のフィルムを実施例1と同様に第一中間ゾーン・第二中間ゾーンと連続的に導いて自然冷却した。しかる後、その第二中間ゾーンを通過した後のフィルムを横延伸ゾーンに導き、フィルムの表面温度が92℃になるまで予備加熱した後に、95℃で幅方向(横方向)に4.0倍に延伸(一段のみで延伸)した。しかる後、その横延伸後のフィルムを実施例1と同様に最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、85℃の温度で5.0秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例2]
上記したポリエステルAとポリエステルA2とポリエステルBとポリエステルDとを重量比50:7:33:10で混合して押出機に投入した以外は 実施例1と同様な条件で製膜することによって、約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例3]
一段目の横延伸の倍率を3.3倍に変更し、二段目の横延伸倍率を1.2倍に変更した以外は、実施例1と同様にして約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
[比較例4]
未延伸フィルムに縦延伸を施す際に、一段目の縦延伸の倍率を1.4倍に変更し、二段目の縦延伸倍率を1.1倍に変更(トータルの縦延伸倍率=1.54倍)した以外は、実施例1と同様にして約40μmの厚みを有する二軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 0004877056
表3から明らかなように、実施例1〜3で得られたフィルムは、いずれも、主収縮方向である幅方向への収縮性が高く、主収縮方向と直交する長手方向への収縮性は非常に低かった。また、実施例1〜3で得られたフィルムは、いずれも、溶剤接着強度が高く、長手方向の厚み斑が小さく、ラベルとした場合に、ラベル密着性が良好で、収縮斑も見られず、ミシン目開封性が良好であった。さらに、実施例1〜3で得られたフィルムロールには、シワが発生することがなかった。すなわち、実施例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、いずれもラベルとしての品質が高く、きわめて実用性の高いものであった。
それに対して、比較例1で得られた熱収縮性フィルムは、長手方向の熱収縮率が高く、ラベルとした際に収縮斑が発生した。また、比較例2で得られたフィルムは、エルメンドルフ比が極端に低く、ミシン目開封性が不良であった。その上、ヘイズが高く、幅方向の厚み斑が大きく、フィルムロールにシワが発生した。さらに、比較例3で得られたフィルムは、収縮仕上がり性が不良であり、比較例4で得られたフィルムは、ミシン目開封性が不良であった。すなわち、比較例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、いずれもラベルとしての品質に劣り、実用性の低いものであった。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記の如く優れた加工特性を有しているので、ボトルのラベル用途に好適に用いることができる。
直角引裂強度の測定における試験片の形状を示す説明図である(なお、図中における試験片の各部分の長さの単位はmmである)。
符号の説明
F・・フィルム。

Claims (5)

  1. エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分を15モル%以上含有しているポリエステル系樹脂からなる熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、
    下記要件(1)〜(6)を満たすことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
    (1)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における幅方向の湯温熱収縮率が40%以上80%以下であること
    (2)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の湯温熱収縮率が0%以上15%以下であること
    (3)80℃の温水中で幅方向に10%収縮させた後の単位厚み当たりの長手方向の直角引裂強度が30N/mm以上310N/mm以下であること
    (4)80℃の温水中で幅方向に10%収縮させた後に幅方向および長手方向のエルメンドルフ引裂荷重を測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.3以上1.5以下であること
    (5)長手方向の引張破壊強さが130MPa以上300MPa以下であること
    (6)幅方向の片端縁際の分子配向角と他端縁際の分子配向角との差である分子配向角差をフィルム幅1m当たりに換算した配向ねじれ指数が2.0°/m以上9.0°/m以下であること
  2. 溶剤接着強度が2N/15mm幅以上15N/15mm幅以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  3. 動摩擦係数が0.1以上0.55以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  4. 全ポリステル樹脂成分中における非晶質成分となりうるモノマーの主成分が、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸の内のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを連続的に製造するための製造方法であって、幅が4.0m以上のテンターを有する製膜設備を利用するものであり、下記(a)〜(g)の各工程を含むことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
    (a)未延伸フィルムを、Tg以上Tg+30℃以下の温度で長手方向に1.5倍以上3.0倍以下の倍率で延伸した後、Tg+10℃以上Tg+40℃以下の温度で長手方向に1.2倍以上1.5倍以下の倍率で延伸することにより、トータルで2.5倍以上4.5倍以下の倍率となるように縦延伸する縦延伸工程
    (b)縦延伸後のフィルムを、Tg+5℃以上Tg+70℃以下の温度で幅方向に1.3倍以上5倍以下の倍率で延伸する第一の横延伸工程
    (c)第一の横延伸後のフィルムを、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で130℃以上190℃以下の温度で1.0秒以上25.0秒以下の時間に亘って熱処理する中間熱処理工程
    (d)中間熱処理後のフィルムを、前後の各ゾーンと遮断されており積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させることによって自然に冷却する自然冷却工程
    (e)自然冷却後のフィルムを、表面温度がTg+5℃以上Tg+60℃以下の温度となるまで積極的に冷却する積極冷却工程
    (f)積極冷却後のフィルムを、Tg+5℃以上Tg+60℃以下の温度で幅方向に1.5倍以上3.5倍以下の倍率で延伸する第二の横延伸工程
    (g)第二の横延伸後のフィルムを、幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、30℃以上100℃以下の温度に調整されたテンター内を通過させるセット工程
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