JP6902841B2 - 金属樹脂複合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属樹脂複合体及びその製造方法に関し、詳しくは、難燃性に優れ、強固な接合強度を有し、耐ヒートショック性に優れた金属樹脂複合体及びその製造方法に関する。
近年の自動車部品や民生部品では軽量化やリサイクル等の環境面から、金属を使用していた部品の樹脂化や、樹脂製品の小型化等が進んでいる。ポリブチレンテレフタレート樹脂に代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、各種の機器部品に広く用いられている。
近年、電気電子機器部品や自動車部品等は、通常、アルミニウムや鉄などの金属等と複合化され金属樹脂複合体として使用されることが多い。金属との複合化は強度向上の他、静電防止、熱伝導性、電磁波シールド性の観点からも有利である。
このような金属樹脂複合体を製造するには、例えば、特許文献1にあるように、金属部材上に熱可塑性樹脂をインモールド成形することにより、金属と一体成形することが行われる。しかし、単に金属部材に対して熱可塑性ポリエステル樹脂をインモールド成形した複合体は、熱可塑性ポリエステル樹脂と金属部材との接着性が悪いという欠点がある。
また、樹脂と金属の複合体を得る方法としては、金属表面にケミカルエッチング或いはアンモニア、ヒドラジン、ピリジン、アミン等で表面処理を施した金属部品にインサート成形等により樹脂を接合する方法(例えば、特許文献2〜5参照)が提案されている。また、金属表面の凹凸形状を特定のRsm(平均長さ)とRz(最大高さ粗さ)とする方法(特許文献6)も提案されている。
しかし、これらの方法自体は、金属表面に高度な表面処理を必要とし、またこのような表面処理を施した金属部材にポリブチレンテレフタレート樹脂を成形するだけでは、強固な接合強度を常に安定的に担保するには不安な面がある。特に、自動車用部品や電子電気機器部品等においては、接合強度が十分であることは勿論、耐ヒートショック性に優れること、さらには難燃性にも優れることが強く求められる。
特開平06−29669号公報 特開2001−225352号公報 特開2008−173967号公報 特開2003−200453号公報 特開2006−315398号公報 国際公開WO2015/037718号
本発明の目的(課題)は、難燃性に優れ、強固な接合強度を有し、耐ヒートショック性に優れた金属樹脂複合体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、金属表面に凹凸化処理を施した金属部材上に、ポリエステルエラストマー及び臭素系難燃剤を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した金属樹脂複合体が、ポリブチレンテレフタレート樹脂と金属部材との接合強度が著しく優れ、かつその耐ヒートショック性に優れた難燃性の金属樹脂複合体が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の金属樹脂複合体及びその製造方法に関する。
[1]金属部材と樹脂からなる金属樹脂複合体であって、金属部材の表面は凹凸化処理が施されており、前記樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエステルエラストマー(B)を15〜50質量部及び臭素系難燃剤(C)を5〜40質量部含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であることを特徴とする金属樹脂複合体。
[2]前記金属部材の凹凸が、表面凹凸化処理による凹凸である上記[1]に記載の金属樹脂複合体。
[3]ポリエステルエラストマー(B)が、ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートである上記[1]に記載の金属樹脂複合体。
[4]臭素系難燃剤(C)が、臭素化ポリアクレート系難燃剤である上記[1]に記載の金属樹脂複合体。
[5]前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm−Tc)が20℃以上である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属樹脂複合体。
[6]前記金属部材がアルミニウム、鉄、銅、錫、ニッケル、亜鉛、マグネシウム及びそれらを含む合金からなる群から選択される金属からなる上記[1]に記載の金属樹脂複合体。
[7]表面に凹凸化処理が施された金属部材上に、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエステルエラストマー(B)を15〜50質量部及び臭素系難燃剤(C)を5〜40質量部含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形することを特徴とする金属樹脂複合体の製造方法。
[8]前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm−Tc)が20℃以上である上記[7]に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
本発明の金属樹脂複合体は、難燃性に優れ、強固な接合強度を有し、耐ヒートショック性にも優れる。また、本発明の製造方法によれば、このような強固な接合強度を常に安定して達成する金属樹脂複合体を製造することができる。
実施例で作製した金属樹脂複合体の概略図である。(a)は複合体を上から見た図であり、(b)は側面から見た図である。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。
本発明の金属樹脂複合体は、金属部材と樹脂からなる金属樹脂複合体であって、金属部材の表面は凹凸化処理が施されており、前記樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエステルエラストマー(B)を15〜50質量部及び臭素系難燃剤(C)を5〜40質量部含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であることを特徴とする。
また、本発明の金属樹脂複合体の製造方法は、表面に凹凸化処理が施された金属部材上に、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエステルエラストマー(B)を15〜50質量部及び臭素系難燃剤(C)を5〜40質量部含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形することを特徴とする。
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
本発明の金属樹脂複合体に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエステルエラストマー(B)を15〜50質量部及び臭素系難燃剤(C)を5〜40質量部含有する。
[ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)]
本発明の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)が、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいる場合の、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
なお、これらのテレフタル酸以外の他のジカルボン酸を含んでいる場合の共重合量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満であることが好ましい。中でも、共重合量は好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)が、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいる場合の、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
なお、これらの1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいる場合の共重合量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満であることが好ましい。中でも、共重合量は好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上及び/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、本発明において、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエステルエラストマーの固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
[ポリエステルエラストマー(B)]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物はポリエステルエラストマー(B)を含有する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)自体は結晶性が高く結晶化速度が速すぎるので、単独では金属の凹凸表面への接合性は良くないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)にポリエステルエラストマー(B)を配合して、結晶化温度(Tc)を低めにコントロールすることにより、金属凹凸表面への接合性が向上する。結晶化温度(Tc)が高いとポリブチレンテレフタレート樹脂は金属凹凸表面内の凹部に注入されると直ちに固化してしまい凹部の奥まで十分に到達できず、接合力の強化には結びつきにくい。一方、結晶化温度(Tc)が低いと金属凹凸表面内の凹部に深く入り込むことができ、凹部内部の空間に十分充填された上でゆっくり固化することになり、強固な接合強度を達成できると考えられる。
このため、本発明に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の差ΔT、即ち、Tm−Tcは大きい方が好ましく、ΔTは20℃以上であることが好ましく、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。
なお、結晶化温度(Tc)及び融点(Tm)はDSCにより測定され、その測定法の詳細は実施例に記載される通りである。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のTm−Tcを大きくするには、各種の方法が採用できるが、好ましい方法としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が、0.3〜2dl/gであるものを選択すること、ポリエステルエラストマー(B)としてはソフトセグメントがなるべく非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルであるものを用いること、臭素系難燃剤(C)として臭素化ポリアクリレート系のものを採用する方法、あるいはこれらを組み合わせることで可能である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が含有するポリエステルエラストマー(B)は、常温でゴム特性をもつ熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは、ポリエステル系ブロック共重合体を主成分とした熱可塑性エラストマーであり、ハードセグメントとして高融点・高結晶性の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルを有するブロック共重合体であるものが好ましい。
ハードセグメントとしては、成形加工性、耐薬品性、耐老化性などの観点から芳香族ポリエステルであることが好ましく、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられ、その中でも、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
ソフトセグメントとしては、例えば、分子量が200〜5000の範囲にある脂肪族ポリエーテル、例えばポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコール等と、テレフタル酸(またはテレフタル酸ジメチル)との重縮合にポリエステルや、ポリカプロラクトンやポリブチレンアジペートなどの脂肪族ポリエステル等がある。中でも、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ポリエステルエラストマー(B)のソフトセグメントの含有量は、好ましくは全セグメント中の20〜95モル%である。ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールのブロック共重合体の場合は好ましくは50〜95モル%であり、より好ましくは50〜90モル%、特に60〜85モル%である。
ポリエステルエラストマー(B)は、ポリエステルエーテルブロック共重合体、特にポリテトラメチレングリコール−ポリブチレンテレフタレート共重合体が特に好ましい。ポリテトラメチレングリコール−ポリブチレンテレフタレート共重合体は、前記した結晶化温度(Tc)が低く、低温側の靱性が高いことから、また臭素系難燃剤(C)と組み合わせることで耐ヒートショック性に優れ、また接合強度を強くする点で好ましい。
なお、本発明において、ポリエステルエラストマー(B)は常温でゴム特性をもつ熱可塑性ポリエステルであり、一方、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は高融点・高結晶性のポリエステル樹脂であって、両者は相違しており、両者は重複するものではない。
ポリエステル系エラストマーの具体例としては、「プリマロイ」(三菱化学社製、商品名、登録商標(以下同じ))、「ペルプレン」(東洋紡社製)、「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)、「バイロン」(東洋紡社製)、「ポリエスター」(日本合成化学工業社製)等が好ましく挙げられる。
ポリエステルエラストマー(B)の固有粘度は、0.3〜3.0dl/gであるのが好ましい。より好ましくは0.7〜2.0dl/gであり、さらに好ましくは0.9〜2.0dl/gである。固有粘度が高すぎると流動性が不足や異材との接合性が悪化することがあり、固有粘度が低すぎると靱性が乏しくなり、かつ耐ヒートショック性が悪化することがある。
[臭素系難燃剤(C)]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は臭素系難燃剤(C)を含有する。臭素系難燃剤(C)としては各種のものが使用できる。このような臭素系難燃剤(C)としては、芳香族系化合物が挙げられ、具体的には例えば、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等の臭素化ポリアクレート系難燃剤、ポリブロモフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)等の臭素化イミド化合物、臭素化ポリカーボネート等が挙げられる。
中でも熱安定性の良好な点より、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等の臭素化ポリアクレート系難燃剤、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネートが好ましい。
特に、ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート等の臭素化ポリアクレート系難燃剤を含む臭素系難燃剤は、流動性は良くはないにも拘わらず、上記したポリエステルエラストマー(B)と組み合わせて使用することで、より高い耐ヒートショック性と、より高い接合強度を有する金属樹脂複合体が可能となるので、好ましい。
臭素化ポリアクレート系難燃剤を含む場合、臭素系難燃剤(C)中の臭素化ポリアクレート系難燃剤の含有割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、臭素系難燃剤(C)の全てが臭素化ポリアクレート系難燃剤であることが最も好ましい。
臭素化ポリアクレート系難燃剤としては、ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられ、これは臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、又は2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1〜5個、中でも4〜5個付加したものであることが好ましい。
臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、又はそれらの混合物等が挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には例えば、アクリル酸や、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸や、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
これらは通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下で用いることが好ましい。
また、ビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロムキシレンジアクリレート、テトラブロムキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン等を使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、高臭素含有量であって難燃性が良好で、流動性は良くはないにも拘わらず、上記したポリエステルエラストマー(B)と組み合わせて使用することで、より高い耐ヒートショック性と、より高い接合強度を有する金属樹脂複合体が可能となるので、好ましい。
臭素化エポキシ化合物としては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型臭素化エポキシ化合物が挙げられる。
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、質量平均分子量(Mw)で3000〜100000であり、中でも分子量が高い方が好ましく、具体的にはMwとして10000〜80000、中でも13000〜78000、更には15000〜75000、特に18000〜70000であることが好ましく、この範囲内においても分子量の高いものが好ましい。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が3000〜40000g/eqであることが好ましく、中でも4000〜35000g/eqが好ましく、特に10000〜30000g/eqであることが好ましい。
また、臭素化エポキシ化合物系難燃剤として臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5000以下のオリゴマーを0〜50質量%程度用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤としては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時にポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし、成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1000〜20000、中でも2000〜10000であることが好ましい。
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、例えば、臭素化ビスフェノールAとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
臭素化ポリスチレンとしては、好ましくは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含有する臭素化ポリスチレンが挙げられる。
Figure 0006902841
(式(1)中、tは1〜5の整数であり、nは繰り返し単位の数である。)
臭素化ポリスチレンとしては、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。
なお、前記一般式(1)において、臭素化ベンゼンが結合したCH基はメチル基で置換されていてもよい。また、臭素化ポリスチレンは、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレンは単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2−ブロモスチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモスチレン)、ポリ(2,6−ジブロモスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモスチレン)、ポリ(3,5−ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5−トリブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモ−α−メチルスチレン)およびポリ(2,4,5−トリブロモ−α−メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)および平均2〜3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
臭素化ポリスチレンは、上記一般式(1)における繰り返し単位の数n(平均重合度)が30〜1500であることが好ましく、より好ましくは150〜1000、特に300〜800のものが好適である。平均重合度が30未満ではブルーミングが発生しやすく、一方1500を超えると、分散不良を生じやすく、機械的性質が低下しやすい。また、臭素化ポリスチレンの質量平均分子量(Mw)としては、5000〜500000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましく、10000〜300000であることがさらに好ましく、10000〜70000であることが特に好ましい。
特に、上記したポリスチレンの臭素化物の場合、質量平均分子量(Mw)は50000〜70000であることが好ましく、重合法による臭素化ポリスチレンの場合、質量平均分子量(Mw)は10000〜30000程度であることが好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
臭素化ポリスチレンは、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜70質量%であることがより好ましく、57〜67質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度をこのような範囲とすることにより、難燃性を良好に保つことが容易である。
臭素化イミド化合物としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
Figure 0006902841
(一般式(2)中、Dはアルキレン基、アルキルエーテル基、ジフェニルスルフォン基、ジフェニルケトン基あるいはジフェニルエーテル基を示す。iは1〜4の整数である。)
上記一般式(2)で示される臭素化フタルイミド化合物としては、例えばN,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)エタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)プロパン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ブタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジエチルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジプロピルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジブチルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルスルフォン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルケトン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
臭素化イミド化合物としては、上記一般式(2)において、Dがアルキレン基であるものが好ましく、特に好ましくは、下記一般式(3)で示される臭素化フタルイミド化合物である。
Figure 0006902841
(一般式(3)中、iは1〜4の整数である。)
中でも、上記式(3)におけるiが4である、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)が好ましい。
臭素化イミド化合物は、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜73質量%であることがより好ましく、57〜70質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度をこのような範囲とすることにより、レーザーマーキング性及び難燃性を良好に保つことが容易である。
臭素系難燃剤(C)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、5〜50質量部であり、好ましくは7質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは35質量部以下である。臭素系難燃剤(C)の含有量が少なすぎると樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
[安定剤]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが好ましい。
安定剤としては、リン系安定剤、フェノール系安定剤、硫黄系安定剤等、種々の安定剤が挙げられる。特に好ましいのはヒンダードフェノール系安定剤やリン系安定剤であり、耐久性の観点からヒンダードフェノール系安定剤がより好ましい。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製、商品名(以下同じ)「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系安定剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下である。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましく、特には有機ホスフェート化合物が好ましい。
有機ホスフェート化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
O=P(OH)(OR3−n …(4)
(一般式(1)中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。nは0〜2の整数を表す。なお、nが0のとき、2つのRは同一でも異なっていてもよく、nが1のとき、2つのRは同一でも異なっていてもよい。)
上記一般式(4)において、Rはアルキル基又はアリール基を表す。Rは、炭素数が1以上、好ましくは2以上であり、通常30以下、好ましくは25以下のアルキル基、又は、炭素数が6以上、通常30以下のアリール基であることがより好ましいが、Rは、アリール基よりもアルキル基が好ましい。なお、Rが2以上存在する場合、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
一般式(4)で示されるリン系安定剤として、より好ましくは、Rが炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社製の商品名「アデカスタブAX−71」として、市販されている。
上記一般式(4)で表されるリン系安定剤の含有量は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜1質量部である。含有量が0.001質量部未満であると、熱安定性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。より好ましい含有量は、0.01〜0.6質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.4質量部である。
[離型剤]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10000、更には900〜8000のものが好ましい。また、側鎖に水酸基、カルボキシル基、無水酸基、エポキシ基などを導入した変性ポリオレフィン系化合物も特に好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素原子数11〜28、好ましくは炭素原子数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.07〜1.5質量部、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
[強化充填材]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、さらに、強化充填材を含有することも好ましい。
強化充填材としては、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維などの繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズなどの粒状または無定形の充填材;タルクなどの板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイトなどの鱗片状の充填材を用いることもできる。
中でも、金属樹脂複合体の接合性、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
強化充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
ガラス繊維は、金属樹脂複合体の接合性の点から、断面における長径と短径の比が1.5〜10である異方断面形状を有するガラス繊維であることも好ましい。
断面形状は、断面が長円形、楕円形、まゆ型形状のものが好ましく、特に長円形断面が好ましい。また、長径/短径比が2.5〜8、更には3〜6の範囲にあるものが好ましい。さらに、成形品中のガラス繊維断面の長径をD2、短径をD1、平均繊維長をLとするとき、アスペクト比((L×2)/(D2+D1))が10以上であることが好ましい。このような扁平状のガラス繊維を使用すると、反りが抑制され、特に箱型の金属樹脂複合体を製造する場合に効果的である。
強化充填材の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、0〜100質量部である。強化充填材の含有量が100質量部を上回ると、流動性や金属樹脂複合体の接合性が低下するので好ましくない。強化充填材のより好ましい含有量は、5〜90質量部であり、より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは30〜70質量部、特には35〜60質量部である。
[その他成分]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、上記した以外の他の添加剤あるいは他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、上記した以外の他の難燃剤、上記した以外のエラストマー、難燃助剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)に対する他の熱可塑性樹脂の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法としては、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、結晶化温度(Tc)は200℃以下であることが好ましい。前述したように、結晶化温度(Tc)を低めにコントロールすることにより、インサート成形による金属部材との接合性が向上する傾向にある。結晶化温度(Tc)はより好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。また、その下限は、通常160℃、好ましくは165℃以上である。
また、前述の通り、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の差ΔT、即ち、Tm−Tcは大きい方が好ましく、ΔTは20℃以上であることが好ましく、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。
[金属樹脂複合体]
本発明の金属樹脂複合体は、上記したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を、凹凸表面を有する金属部材上に接合し、一体化したことを特徴とする。
金属部材の金属としては、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム、錫、ニッケル、亜鉛等の各種金属、及びこれらの金属を含む合金が挙げられる。この中でもアルミニウム、鉄、銅、マグネシウムが好ましく、アルミニウムがより好ましい。アルミニウムとしては、純Al及び各種のAl合金が挙げられる。鉄としては、鉄、鋼、ステンレス等の鉄及び各種の鉄合金が挙げられる。マグネシウムとしては、純マグネシウム及びマグネシウム合金が挙げられる。
また、金属部材としては、これらの金属表面を金属、例えばニッケル、クロム、亜鉛、金等によりメッキされた部材であってもよい。
金属部材の形状としては、特に制限はないが、平板、曲板、板状、棒状、筒状、塊状、シート状、フィルム状等、あるいは所望する特定の形状に製作されたものが好ましく挙げられる。金属部材とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が接触する面の形状は特に制限はなく、単一の平面や曲面に限定されず、段状部や凹部、凸部等、各種の形状を有していてもよい。
金属部材の厚さとしては、特に制限はないが、平板状の場合、0.05〜100mmの範囲であることが好ましく、0.1〜50mmがより好ましく、0.12〜10mmがさらに好ましい。アルミニウム板、鉄板の場合の厚みは、0.1〜20mmがよく、0.2〜10mmの範囲が好ましい。
金属部材は、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂組成物と接触する表面には、凹凸化処理(粗面化処理ともいう)が施されており、微細な凹凸形状の表面を有する。
金属部材の表面に微細な凹凸を形成する凹凸化処理(粗面化処理ともいう)としては、特に限定されず、各種の公知の方法が採用可能であるが、例えば、化成処理や化学エッチング、レーザーエッチング、ブラストエッチング等による加工が挙げられる。
かかる処理を施すことにより、金属部材の表面には微細な凹凸が形成され、この微細な凹凸構造の凹部に上記したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が侵入し、その凹部壁の奥まで侵入して、そのまま固化し凹部から抜けなくなって固定されることにより、強固な接合強度を発現させることができると考えられる。
また凹凸化処理は、エッチング法だけでなく、金属表面状に金属酸化物やセラミックス等の微粒子、例えば酸化チタン、酸化シリコン微粒子を粉体または、各種溶媒に粉体を分散したものを固定化し、物理的に凸部を形成することにより凹凸化しても良い。微粒子の平均粒子径は10nm〜1mmが好ましく、20nm〜500μmが特に好ましく、30nm〜200μmがさらに好ましい。
化成処理や化学エッチングは、金属の種類に応じて種々の方法が知られており、公知の方法を用いることができる。
金属部材がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合、酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液によるエッチング、あるいは、表面に酸化皮膜を形成した後、酸化皮膜を除去し、次いでアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物等により処理する方法等が好ましく挙げられる。また、アルミニウムに対して施す一般的な表面処理法であるアルマイト処理によれば、酸を用いてアルミニウムを陽極で電気分解させることにより、凹凸構造を形成することが可能である。
レーザーエッチングは、金属部材表面に対して、レーザー光を照射して、金属表面を溝掘加工及び溶融させ再凝固させる条件にて加工することにより形成される。例えば、ある走査方向についてレーザースキャニング加工した後、同じ走査方向あるいはクロスする方向にレーザースキャニングすることを複数回繰り返すことにより形成される。
レーザースキャニングの条件には、出力、スキャン速度、スキャン周波数、スキャン回数、ハッチング幅(処理ピッチ)、パターニング形状等があり、これらの組み合わせで、所望する凹部と凸部から微細な凹凸表面を形成することができる。
また加工に使用するレーザーの種類は、固体レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、気体レーザー、液体レーザーの各種波長のものを適宜選択すれば良く、発振形態も連続波、パルス波を期待する凹凸形状に合わせて選択することができる。また連続波を用いた場合には、より複雑な凹凸構造とすることが可能である。
ブラストエッチングとしては、インペラー(羽根車)の遠心力を利用してブラスト材を投射するショットブラスト処理、エアーコンプレッサーを用いて圧縮空気によりブラスト材を投射するエアーブラスト処理があり、どちらも金属部材の表面に凹凸形状を付与することが可能である。ブラスト材として、珪砂、アルミナ、アルミカットワイヤー、スチールグリッド、スチールショットなどの材料が挙げられる。
また、樹脂粒や金属粒などの砥粒を混入した水を金属表面に向けて加工エアーとともに数十m/sec〜約300m/sec程度の速度で高圧噴射せしめ、エッチング処理するウェットブラストエッチング法等でも可能である。
また、他の方法として、例えば亜鉛メッキした上で、メッキ金属である亜鉛の融点よりも高い温度まで加熱し、メッキ層の亜鉛の一部又は殆どを蒸発させることにより、表面が粗面化された金属部材を得ることも可能である。
上記で例示した凹凸化処理(粗面化処理)は、これを単独又はこれら或いはその他の方法を複数組み合わせて用いることも可能である。組み合わせ方法によっては、凹凸構造の最適化やコスト低減などの効果を見出せる場合もある。
金属部材表面の凹凸は、十点平均粗さRzとして10nm〜300μmであることがましく、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上、特に好ましくは50nm以上であり、また、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは180μm以下である。
上記した凹凸処理が施された金属部材には、シランカップリング剤により表面処理することも有用である。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えばメトキシ基、エトキシ基、シラノール基等を有する化合物が挙げられ、シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ウレイドアミノプロピルエトキシシランなどが好ましく挙げられる。特に、アルミニウム基体、鉄基体とシランカップリング剤は、Al−O−SiやFe−O−Siの結合を形成して強固に結合し、また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とシランカップリング剤の有機官能基が反応して強固に結合し、より強固な結合が達成できる。
また、トリアジンチオール誘導体を含む溶液を用いた湿式法により、凹凸化処理した金属表面にトリアジンチオール誘導体の被膜を形成しておくことで、化学結合による一層の接合強度向上を達成できる。
金属と樹脂の接合において、凹凸によるアンカー効果だけでなく、極性基を有効に作用させて化学結合を形成することも好ましい。例えば、酸性及び塩基性官能基としてCO、COO、NH基などを付与するため、凹凸化処理した金属表面に対して、オゾン処理、プラズマ処理、火炎処理、コロナ放電処理、化学薬液処理などを施すことも有用である。
さらに、金属部材上には、接着剤層(プライマー層)を設けることが好ましい。
接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等を用いることが好ましい。中でも、アルミニウム基体、鉄基体との場合は、熱硬化型ポリエステル系接着剤を用いることが特に好ましい。
[金属樹脂複合体の製造]
上記した金属部材を金型に載置した後、成形機により金属部材の少なくとも凹凸表面に、前記したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を供給し充填することにより、本発明の金属樹脂複合体が製造される。使用する成形機としては、金属部材とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との金属樹脂複合体が形成できれば特に限定されず、例えば、射出成形機、押出成形機、加熱プレス成形機、圧縮成形機、トランスファーモールド成形機、注型成形機、反応射出成形機等の種々の成形機を使用できるが、これらの中でも射出成形機が特に好ましい。
射出成形法の場合、具体的には、金属部材を射出成形金型のキャビティ部にインサートし、樹脂組成物を金型に射出するインサート成形法により製造するのが好ましい。具体的には、成形用の金型を用意し、その金型を開いてその一部に金属部材を設置(インサート)し、その後、金型を閉じ、樹脂組成物の少なくとも一部が金属部材の凹凸形状を形成した面に接するように、金型内にポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出して固化させる。その後、金型を開き、離型することにより、金属樹脂複合体を得ることができる。
インサートされる金属部材の大きさは、目的の金属樹脂複合体の大きさ、構造等によって、適宜決めればよい。インサートされる金属部材は、得られる金属樹脂複合体の全体にわたる必要はなく、金属樹脂複合体の一部分であってもよい。
インサート成形時に、溶融したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の温度と金属部材の温度を可能な限り近くすることが接合強度を向上させる上で好ましい。特に方法は限定されないが、金属部材を予め加熱しておくことが望ましい。また加熱方法は特に限定されないが、例えば金属部材をインサート成形する前に誘導加熱や、IHヒーター、ホットプレート、加熱炉、レーザー等で加熱したものをインサートする方法、金属部材を金型にインサート後に金属部材におけるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との接合領域付近をハロゲンランプ、ドライヤー等で外部から加熱する方法、金型内部に配置したカートリッジヒーター等で加熱する方法等が挙げられる。特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との接合領域のみを局所的に加熱することが最も有用である。なお、「局所的に加熱」とは、加熱手段によっては、接合領域を含んだ周辺まで加熱されるが金属部材の接合領域より遠い部分は加熱しないことを含む。
加熱温度は高いほど良いが、通常100℃以上、350℃以下、好ましくは120℃以上、250℃以下、さらに好ましくは130℃以上、200℃以下である。
加熱温度は低すぎる場合、金型温度と差異が小さく加熱の効果が出ず、高すぎる場合には昇温に時間を有するため、成形サイクルの悪化や、樹脂の過度な滞留が発生する傾向にあり成形上好ましくない。
金属樹脂複合体を得る方法として、上記以外に、レーザー溶着法や、振動溶着法、超音波溶着法など、金属もしくは樹脂、またはそのいずれも加熱することで複合化する方法を選択することも可能である。複合体の形状やコスト等により最適な方法を選択すれば良い。特にレーザー溶着法は、局所領域の溶着が可能であり、かつ局所加熱も兼ねることができるため好ましい。
このようにして得られる、本発明の金属樹脂複合体の大きさ、形状、厚み等は特に限定されるものではなく、板状(円板、多角形など)、柱状、箱形状、椀形状、トレイ状などいずれでもよい。また複合体の全ての部分の厚みが均一である必要はなく、また、複合体には補強リブ等が設けられていてもよい。
本発明の金属樹脂複合体は、難燃性に優れ、強固な接合強度を有し、耐ヒートショック性に優れるため、一般家電製品を始め、OA機器(複写機、プリンター、ファクシミリ等)や各種携帯端末(携帯電話等)やパソコン等の電気電子部品(ハウジング、ケース、カバー等)、自動車等の車両用部品(車両用構造部品、あるいは例えばブレーキペダル等)、機械部品、自転車その他部品の材料として、好適に用いられる。
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
(アルミニウム板の凹凸化処理)
厚さが1.5mmのアルミニウム板(JIS A1050)に、脱脂後、数種類の混酸(塩酸及び硫酸その他成分)からなる水溶液により化学エッチングし、洗浄工程を経て凹凸表面を有するアルミニウム板を得た。得られたアルミニウム板の表面をレーザー顕微鏡(KEYENCE VK−X100)の対物レンズ20倍で観察し、表面粗さを計測したところ、十点平均粗さRzは27.96μmであった。
(ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造)
使用したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の原料成分としては、以下の表1記載の成分を用いた。
Figure 0006902841
上記表1に記載した各成分の中、以下の表2に記載した量(いずれも質量部)でブレンドし、これを30mmのベントタイプ2軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機TEX30α)を使用して、バレル温度270℃にて溶融混練してストランド状に押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
[燃焼性(UL94)]
UL94の方法に準じ、5本の試験片(厚さ0.75mm)を用いて難燃性テストを行い、UL94記載の評価方法に従い、V−0、V−1、V−2、HBに分類した(V−0が最も難燃性が高いことを示す)。
[引張伸び(単位:%)]
得られたペレットを、120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO試験片(厚さ1mm)を射出成形した。
得られたISO試験片を用い、ISO527に従い、引張伸びを測定した。
[MVR(単位:cm/10min)]
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットのMVR(メルトボリュームレート)を、JIS K7210に準拠し、温度300℃、荷重11.8Nで測定した。
(結晶化温度(Tc)及び融点(Tm))
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の結晶化温度(Tc)及び融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)機(パーキンエルマー社製「Pyris Diamond」)を用い、30〜300℃まで昇温速度20℃/minで昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度20℃/minにて降温した際に観測される発熱ピークのピーク温度を測定して、Tc及びTmを求めた。
(実施例1〜2、参考例3、比較例1)
ISO19095に準拠し、上記で得られたアルミニウム板を長さ45mm×幅12mm×厚み1.5mmの大きさに切断し、金型キャビティ内に装着した。
装着したアルミニウム板の凹凸表面側へ、上記で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを120℃で5時間乾燥したものを用い、アルミニウム板と樹脂組成物の接合面積が長さ5mm×幅10mmとなるようにインサート成形(長さ45mm×幅10mm×厚3mm)し、図1に示すようなアルミニウム板1とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物部分2が結合した金属樹脂複合体を成形した。
成形には、射出成形機としてファナック社製「ファナックα−100」を用い、シリンダー温度270℃、金型温度100℃、射出速度30mm/秒、充填時間0.58秒、保圧80MPa、保圧時間6秒、冷却時間20秒の条件で行った。
(接合性評価)
得られた金属樹脂複合体を用い、ISO19095に準拠し、接合性の評価を行った。測定は、引張試験機(インストロン社製「5544型」)を使用し、接着して一体化されたアルミニウム板1と樹脂組成物部分2とを、その長軸方向の両端をクランプで挟み、引張速度5mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張って、接合強度(単位:kgf)を測定した。
さらに、耐ヒートショック性の評価として、得られた金属樹脂複合体を−40℃雰囲気下で30分処理した後、80℃雰囲気下で30分処理し、これを15回繰り返す耐久処理を行った後の接合強度(単位:kgf)を測定した。
Figure 0006902841
本発明の金属樹脂複合体は、難燃性に優れ、強固な接合強度を有し、耐ヒートショック性に優れるため、一般家電製品、OA機器、電気電子製品、自動車等の車両用部品、機械部品等の部品の材料として、好適に用いられる。
1:アルミニウム部材
2:ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物

Claims (6)

  1. 金属部材と樹脂からなる金属樹脂複合体であって、金属部材の表面は表面凹凸化処理による凹凸が施されており、前記樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエステルエラストマー(B)を15〜50質量部及び臭素化ポリアクリレート系難燃剤(C)を5〜40質量部含有し、融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm−Tc)が20℃以上であるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であることを特徴とする金属樹脂複合体。
  2. 金属部材表面の凹凸は、十点平均粗さRzが10nm〜300μmである請求項1に記載の金属樹脂複合体。
  3. ポリエステルエラストマー(B)が、ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートである請求項1に記載の金属樹脂複合体。
  4. 前記金属部材がアルミニウム、鉄、銅、錫、ニッケル、亜鉛、マグネシウム及びそれらを含む合金からなる群から選択される金属からなる請求項1に記載の金属樹脂複合体。
  5. 表面に表面凹凸化処理による凹凸が施された金属部材上に、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエステルエラストマー(B)を15〜50質量部及び臭素化ポリアクリレート系難燃剤(C)を5〜40質量部含有し、融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の差(Tm−Tc)が20℃以上であるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形することを特徴とする金属樹脂複合体の製造方法。
  6. 金属部材表面の凹凸は、十点平均粗さRzが10nm〜300μmである請求項5に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
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