JP6518479B2 - 絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形体に関するものであり、詳しくは、耐トラッキング性、靱性、ウエルド強度、耐熱変色性および低反り性を、高いレベルでバランス良く向上させた絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びそれを成形してなる成形体に関する。
ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、電気電子機器部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に広く用いられている。
電気電子機器分野では、電気的負荷による発火に対する安全性の確保のため、電気的特性の一つである耐トラッキング性に優れていることが必要である。
そして、近年、電気電子機器部品や電装部品は、機器自体の小型化高密度化が急速に進行しており、その結果、絶縁距離が小さくなり、これら部品(成形品)の耐トラッキング性等への要求スペックはますます厳しくなってきている。
絶縁材料は、通電中に装置から発生した熱により乾燥し帯電するため、絶縁材料の表面には埃が付着しやすい傾向がある。そのため、その絶縁材料から形成される部品は、装置停止中にその表面に埃が付着しやすく、その埃が空気中の水分を吸収し、吸収された水分により材料の表面抵抗が低下し、漏洩電流が増加する。一般に、電気部品は多かれ少なかれこのような状況にさらされており、絶縁材料の耐トラッキング特性が重視されている。
電気電子機器部品では、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社の比較トラッキング指数(CTI:Comparative Tracking Index)等の要求事項を満たさねばならず、CTIが450V以上を満足することが最近では要求される。
耐トラッキング性の改良を試みた材料としては、例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリエステル樹脂、α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルからなるオレフィン系共重合体を含む樹脂組成物が開示されており、必要に応じて、慣用の難燃剤、タルク、カオリン、シリカ等の充填剤、ガラス繊維等の繊維状充填剤を添加してもよいことが記載されており、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート、臭素系難燃剤、アンチモン系難燃助剤、フッ化エチレン系重合体、ポリオレフィン及びケイ酸金属塩系充填剤とガラス繊維からなる樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献3には、熱可塑性ポリエステル樹脂、圧縮微粉タルク、ハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤からなる樹脂組成物が開示されており、必要に応じて、繊維状強化剤を添加してもよいことが記載されている。
しかしながら、これらの樹脂組成物は、特に、電子電機機器部品に要求される高ウエルド強度、低反り性及び耐熱変色性の全てが満足できるものではなかった。さらに、耐トラッキング性向上のためにタルクを配合しているため、靱性が低下するといった問題もある。
さらに、特許文献4には、熱可塑性ポリエステル樹脂に、圧縮微粉タルク及び臭素化ポリスチレンを配合した樹脂組成物が記載されている。しかしながら、この樹脂組成物は、CTIはPLC2レベル(250V≦CTI<400V)を達成しているものの、耐光変色性、耐熱変色性が悪いという欠点を有している。さらには、タルクの配合により靱性が低下し、耐トラッキング性と靱性との両立も不可能であった。
また、電気電子機器部品等は、製品の着色や外観向上、耐候(光)性改良のためにカーボンブラック(特許文献5、6)等の着色剤が配合される。しかし、カーボンブラックは非絶縁性であるため、これを含有すると、耐トラッキング性の低下が生じるため、着色剤含有による耐トラッキング性低下を防止することも課題となっている。
これまで、有機染料(特許文献7)を配合して着色するような方法も見出されていたが、高温暴露時の退色、接触している他部品への色移り等、実使用には適さない場合も多く、かかる問題のない、更なる改良が望まれていた。
加えて、電気電子機器部品等は、射出成形により成形されることが多いが、射出成形で成形された成形品にはウエルドラインが発生する場合が多い。そして、このウエルド部では、他の部分よりも強度が低下する問題があり、ウエルド強度が高いことも製品の特性として大変重要である。
特開平07−196859号公報 特開平10−67925号公報 特開平10−158486号公報 特開2000−109657号公報 特開平09−143350号公報 特開平06−057110号公報 特開平09−194694号公報
本発明の目的(課題)は、上記事情に鑑み、耐トラッキング性、靱性、ウエルド強度、耐熱変色性および低反り性の全てにバランスよく優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂材料を提供することにある。
本発明者らは、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリエチレンテレフタレート樹脂、さらに、(1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂、または、(2)アクリル系コアシェル型エラストマー及びゴム成分を含有しないスチレン系樹脂を、それぞれ特定の量で含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下のとおりである。
[1](A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を5〜40質量部、さらに、
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂を10〜120質量部、または、(C2)アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)とゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)とを、(C2−1)及び(C2−2)の合計で30〜100質量部、含有することを特徴とする絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[2]アクリル系ゴム成分の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分の合計100質量%中4〜40質量%である、上記[1]に記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。。
[3](C1)成分中のアクリル系ゴム成分の含有量が20〜80質量%である、上記[1]又は[2]に記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[4](C2−1)アクリル系コアシェル型エラストマーの含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量%中4〜40質量%である、上記[1]に記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[5](B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量%中2〜30質量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[6]さらに、カーボンブラックを含み、カーボンブラックがポリオレフィン系樹脂とのマスターバッチとして配合される、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形体。
[8]成形体が、電気電子機器部品である上記[7]に記載の成形体。
[9]成形体が、コネクター、リレー、スイッチ及び電気電子機器部品の筐体からなる群より選ばれるものである上記[7]または[8]に記載の成形体。
[10]最小表面絶縁距離が0.63〜21mmである、上記[9]に記載のコネクター。
本発明の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、低反り性、靱性、高ウエルド強度、耐熱変色性および高CTIの全てを、高いレベルでバランス良く向上させた絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物である。このため、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、電気電子機器用の絶縁部品として、例えば、電子電気機器部品の筐体、コネクター、リレー、スイッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ等に特に好適に使用することができる。
本発明の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を5〜40質量部、さらに、(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂を10〜120質量部、または、(C2)アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)及びゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)とを、(C2−1)及び(C2−2)の合計で、30〜100質量部、含有することを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂]
本発明の樹脂組成物に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールも挙げられる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%、さらに好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることもできる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いる場合は、共重合体中のテトラメチレングリコール成分の割合は3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性と耐熱性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるダイマー酸成分の割合は、カルボン酸基として0.5〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、長期耐熱性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の割合は、カルボン酸基として1〜30モル%であることが好ましく、2〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、耐熱性、射出成形性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
そして、これら共重合体の好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の総量100質量%中に、5〜50質量%、更には10〜40質量%、特には15〜30質量%である。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量が50eq/t以下ことが好ましい。末端カルボキシル基量が50eq/t以下のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、得られる樹脂組成物の耐加水分解性を高めることができ、また、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しにくくなる。50eq/tを超える末端カルボキシル基が存在すると早期に加水分解が始まり、さらに生成したカルボキシル基が自己触媒となって連鎖的に加水分解が進行し、ポリブチレンテレフタレート樹脂の重合度が急速に低下する場合がある。しかし、末端カルボキシル基量が50eq/t以下であれば、高温、高湿の条件においても、早期の加水分解を抑制することができる。末端カルボキシル基量の上限値はより好ましくは40eq/t、さらに好ましくは30eq/tであり、下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tである。
なお、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求める値である。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
[(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂]
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する。(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を併せて含有することでウエルド強度、外観及び低反り性を向上させることができる。
(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、酸成分としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を用い、グリコール成分としてエチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体を用いて得られるポリエチレンテレフタレート樹脂を主たる対象とするが、そのテレフタル酸成分及び/又はエチレングリコール成分の一部を共重合成分で置き換えたものであってもよい。
かかる共重合成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸;テトラブロムフタル酸、テトラブロムテレフタル酸等の如きハロゲン置換フタル酸、メチルイソフタル酸等の如きアルキル置換フタル酸類;2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等の如きナフタレンジカルボン酸類;4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸等の如きジフェニルジカルボン酸類;4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の如き脂肪族または脂環族ジカルボン酸類;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ーキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の如き脂肪族または脂環族ジオール類;ハイドロキノン、レゾルシン等の如きジヒドロキシベンゼン類;2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン等の如きビスフェノール類;ビスフェノール類とエチレングリコールの如きグリコールとから得られるエーテルジオールなどの如き芳香族ジオール類;ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等の如きボリオキシテトラメチレングリコール等の如きポリオキシアルキレングリコール類;ε−オキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸類等が挙げられる。
これらの共重合成分は1種または2種以上用いることができ、またその割合は全ジカルボン酸(オキシカルボン酸はその半分量がカルボン酸として計算)当り20モル%以下、特に10モル%以下であることが好ましい
更に(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の如き三官能、もしくはピロメリット酸の如き四官能のエステル形性能を有する酸またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の如き三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコールを1.0モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下を共重合せしめたものであってもよい。
(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、好ましくは0.3〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.3〜1.2dl/g、特に好ましくは0.4〜0.8dl/gである。
なお、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
また、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基の濃度は、3〜50eq/t、中でも5〜40eq/t、更には10〜30eq/tであることが好ましい。末端カルボキシル基濃度を50eq/t以下とすることで、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しにくくなり、樹脂組成物の機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基濃度を3eq/t以上とすることで、樹脂組成物の耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、好ましい。
なお、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求める値である。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物における(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を5〜40質量部であり、好ましくは8〜35質量部、さらに好ましくは10〜30質量部、特に好ましくは12〜25質量部である。(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有が5質量部未満ではウエルド強度や外観が劣り、一方40質量部を超えると固化速度が低下することにより成形サイクル性が劣る。
[(C)(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂、(C2)アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)とゴム成分しないスチレン系樹脂(C2−2)]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂、または、(C2)アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)とゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)を含有する。
[(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂]
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂は、アクリル系ゴムを含有するスチレン系樹脂であればいずれであってもよいが、アクリル系ゴムの存在下少なくともスチレン系単量体を重合してなるグラフト共重合体を含むスチレン系樹脂、アクリル系ゴムの存在下少なくともスチレン系単量体及びスチレン系単量体と共重合可能な単量体を重合してなるグラフト共重合体などが好ましく挙げられる。スチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が好ましく挙げられる。シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
アクリル系ゴムとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルゴムが挙げられ、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8であり、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等が挙げられる。ゴム成分の具体例としては、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などを挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物の他に、その他のビニル系単量体を含有してよい。その他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等);等が挙げられる。
アクリル系ゴムには、架橋性のエチレン性不飽和単量体が用いられていてもよく、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート等のアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル類;ポリエステルジ(メタ)アクリレート;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等の不飽和カルボン酸アリルエステル;ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物;ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。アクリル系ゴムとしては、更に、コアとして架橋ジエン系ゴムを有するコア−シェル型重合体が挙げられる。
上記アクリル系ゴムに重合するスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレンが挙げられる。
アクリル系ゴムにはスチレン系単量体に加えて、スチレン系単量体と共重合可能な単量体を共重合することが好ましく、スチレン系単量体と共重合可能な単量体としてはシアン化ビニル単量体が好ましく、シアン化ビニル単量体としては、前記したように、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく挙げられ、アクリロニトリルを共重合したものが好ましい。
また、スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。スチレン系単量体およびシアン化ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂を製造する方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。例えば、常法に従って、アクリル系ゴムの存在下、スチレン系単量体、さらに好ましくはシアン化ビニル単量体を重合開始剤および乳化剤を添加してグラフト重合することにより製造できる。特に、本発明においては、乳化重合により製造された平均粒径1mm以下のパウダー状のものを用いることが、分散性の点から好ましい。
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂中のゴム成分含有量は20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%がより好ましく、35〜65質量%がさらに好ましい。ゴム成分含有量が20質量%未満であると、耐トラッキング性の向上効果、靱性が低下しやすい傾向にあり、80質量%を超えると耐熱性が低下する場合があり好ましくない。
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂は、後述のゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)を含有していてもよい。ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)を含有することによって、低反り性がより改善されやすい傾向となる。この改善効果は、(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂中のゴム成分含有量が比較的高い(例えば40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上)場合に、より効果的に発揮される。
本発明においては、(C1)成分由来のアクリル系ゴム成分の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分の合計100質量%中4〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることが好ましく、6〜25質量%であることが好ましい。(A)成分、(B)成分及び(C1)成分中のアクリル系ゴム成分の含有量が4質量%未満であると、耐トラッキング性、靱性が低下しやすい傾向となり、含有量が40質量%を超えると耐熱性が低下する場合があり好ましくない。なお、(C1)成分が後述の(C2−2)成分を含む場合は、(C2−2)成分の含有量も(C1)成分に含めるものとする。
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂の具体例としては、ASA樹脂アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)が特に好ましい。
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、10〜120質量部である。含有量が、10質量部より小さい場合は、耐トラッキング性、低反り性の改良効果が不十分であり、含有量が120質量部を超える場合は、機械物性が悪化する。なお、(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂が、ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)を含有する場合は、両者の合計が、上記含有量の範囲内とするように調整すればよい。
(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂の含有量は、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは110質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
[(C2)アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)及びゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)]
[アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)]
アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)は、アクリル系ゴムをコア層とし、その周囲にこれと共重合可能な単量体成分をグラフト共重合したグラフト共重合体をシェル層とするコアシェル型エラストマーである。
アクリル系ゴムとしては、(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂におけるアクリル系ゴムとして記載したものが同様に使用できる。
コアシェル型エラストマー(C2−1)のシェルは、好ましくはアクリル系成分から構成される。アクリル系成分のシェルとしては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などを重合することにより得られる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられるが、なかでもメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メチルメタクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル酸化合物としては、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
なお、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物および(メタ)アクリル酸化合物は1種または2種以上を使用することができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物および(メタ)アクリル酸化合物の他に、その他のビニル系単量体を含有してよい。その他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等);等が挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル類;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等の不飽和カルボン酸アリルエステル;ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジ及びトリアリル化合物等の架橋性単量体を併用することもできる。
アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)を製造する方法には、制限はないが、通常、アクリル系ゴム成分のラテックス中に、上記アルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤などの乳化剤および連鎖移動剤などを用いて、乳化グラフト重合等により製造する方法が好ましく挙げられる。
[ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)]
本発明の樹脂組成物において、(C2)成分として、上記のアクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)を含有する場合は、ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)を併せて含有する。
アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)及びゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)を含有する場合において、ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)としては、スチレン系単量体を重合してなる重合体、スチレン系単量体及びスチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。スチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリロニトリルとの共重合体、スチレンと(メタ)アクリロニトリルと他の共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレンが挙げられる。スチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、無水マレイン酸、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)の製造方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。
ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)の具体例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)が好ましく、AS樹脂がより好ましい。
ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系ゴム以外の他のゴム成分を含有していてもよい。他のゴム成分としては、3員環以上の環状オルガノシロキサン、好ましくは3〜6員環の環状オルガノシロキサン単量体を重合させて製造されるポリオルガノシロキサン系ゴムや、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等の共役ジエン化合物からなるジエン系ゴム等が挙げられる。中でも、ブタジエンゴム成分を含有するポリスチレンが好ましく、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)がより好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物において、アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)を含有する場合には、ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)を併せて含有することが必要であるが、その際の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(C2−1)及び(C2−2)の合計で30〜100質量部である。含有量が30質量部より少ない場合は、耐トラッキング性、低反り性の改良効果が不十分であり、含有量が100質量部を超える場合は、ウエルド強度が低下する。
(C2−1)成分及び(C2−2)成分の合計の含有量は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上であり、また、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
本発明においては、アクリル系コアシェルエラストマー(C2−1)の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量%中4〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることが好ましく、6〜25質量%であることが好ましい。(A)成分、(B)成分及び(C2)成分中のアクリル系コアシェルエラストマー(C2−1)の含有量が4質量%未満であると、耐トラッキング性、靱性が低下しやすい傾向となり、含有量が40質量%を超えると、ウエルド強度が低下する場合があり好ましくない。
また、(C2)アクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)とゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)のそれぞれの含有量は、両者の質量比(C2−1)/(C2−2)で、10〜40/90〜60であることが好ましく、15〜30/85〜70であることがより好ましい。上記比の範囲内であると、耐トラッキング性、ウエルド強度及び低反り性のバランスにより優れる傾向となり好ましい。
また、本発明においては、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量%中2〜30質量%であることが好ましく、4〜25質量%がより好ましく、6〜20質量%であることさらに好ましい。含有量が2質量%未満であると、ウエルド強度や外観が低下しやすくなり、30質量%を超えると、成形サイクルが長くなり、成形性が低下する場合があり好ましくない。
[無機充填材]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、無機充填材を含有することも好ましい。無機充填材としては常用のものをいずれも用いることができる。
無機充填材としては、具体的には例えば、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状又は無定形の充填材;タルク等の板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の充填材を用いることもできる。なかでも、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
無機充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもノボラック型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂を併用することが、耐湿熱性の点から好ましい。
表面処理剤脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
無機充填材の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対して、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは15〜55質量部であり、さらに好ましくは20〜50質量部である。無機充填材の含有量が10質量部より少ないと、機械的強度、耐熱性が低下しやすくなる傾向にあり、60質量部を上回ると、流動性、外観が低下する場合があるので好ましくない。
[難燃剤及び難燃助剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃剤を含有することも好ましい。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤を含有することができ、中でもハロゲン系難燃剤又はリン系難燃剤を含有することが好ましい。
ハロゲン系難燃剤の好ましい具体例としては、臭素化ポリカーボネート樹脂、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、臭素化イミド(臭素化フタルイミド等)等が挙げられ、中でも、臭素系難燃剤が好ましく、臭素化ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、耐衝撃性の低下を抑制しやすい傾向にあり、より好ましい。
リン系難燃剤としては、例えば、エチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等の、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミンに代表されるメラミンとリン酸との反応生成物、リン酸エステル、環状フェノキシホスファゼン、鎖状フェノキシホスファゼン、架橋フェノキシホスファゼン等のホスファゼン等が挙げられ、中でも、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン、ホスファゼンが熱安定性に優れる点から好ましい。
難燃剤の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対し、5〜40質量部であることが好ましい。難燃剤が5質量部未満では、十分な難燃性が得られにくく、40質量部を超えると耐トラッキング特性の向上が認められない場合がある。難燃剤のより好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、6〜35質量部、さらに好ましくは7〜30質量部である。
さらに本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃剤と共に、難燃助剤を含有することが好ましい。
難燃助剤としては、例えば、アンチモン化合物、硼酸亜鉛、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、2種以上併用してもよい。これらの中でも、難燃性がより優れる点からアンチモン化合物、硼酸亜鉛が好ましい。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、ハロゲン系難燃剤を用いる場合、難燃剤との相乗効果から、三酸化アンチモンを併用することが好ましい。
ハロゲン系難燃剤とアンチモン化合物を併用する場合は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中のハロゲン系難燃剤由来のハロゲン原子と、アンチモン化合物由来のアンチモン原子の質量濃度が、両者の合計で5〜16質量%であることが好ましく、6〜15質量%であることがより好ましい。5質量%未満であると難燃性が低下する傾向にあり、16質量%を超えると機械的強度や耐トラッキング特性が低下する場合がある。また、ハロゲン原子とアンチモン原子の質量比(ハロゲン原子/アンチモン原子)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。
難燃助剤の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは0.7〜18質量部、さらに好ましくは1〜15質量部である。
[滴下防止剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、滴下防止剤を含有させることも好ましい。滴下防止剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、フィブリル形成能を有し、樹脂組成物中に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものである。
滴下防止剤の含有割合は、好ましくは、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部である。滴下防止剤が0.1質量部未満では難燃性が不十分になりやすく、20質量部を超えると外観が悪くなりやすい。滴下防止剤の含有割合は、より好ましくは、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.3〜10質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。
[安定剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でもホスファイト、ホスホナイトが好ましい。
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
また、ホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
フェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1.5質量部以下、好ましくは1質量部以下である。0.01質量部未満では安定剤としての効果が不十分であり、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、また1.5質量部を越えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。
[離型剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、金属膜密着性を阻害しにくいという点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物などが挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂との相溶性などの点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイルなどが挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基などが挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を越えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.07〜1.5質量部、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、黒色の着色を付与すると共に、耐紫外線性等の耐候(光)性を高める目的で、カーボンブラックを含有することも好ましい。
カーボンブラックの製造方法や原料種等に制限はなく、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えば、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。中でも、以下の特性を有するカーボンブラックを用いることが、耐トラッキング性の低下を抑制しやすいため、好ましい。
カーボンブラックの比着色力は40%以下のものが好ましい。カーボンブラックの比着色力とは、JIS K6217−5:2010に規定されており、カーボンブラックを白色顔料(酸化亜鉛)とともにビヒクルで練り、ガラス板等に塗ったときの光の反射率を測定し、標準品の反射率と対比して指数で表したものであり、その値が大きいほど着色力が高い。市販されているカーボンブラックの場合、比着色力(Tint)は着色力の点から通常100%以上のものが多く、40%以下という低いものは稀であるが、市販品の中では、旭カーボン社製の商品名「旭#8」(比着色力:38%)、「旭#15」(比着色力:25%)等を挙げることができる。
比着色力は、好ましくは39%以下、より好ましくは38%以下、さらに好ましくは36%以下であり、また好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは23%以上である。
カーボンブラックの平均粒子径は、30〜300nmが好ましく、より好ましくは50nm以上、更には80nm以上、特には100nm以上が好ましく、また、200nm以下がより好ましく、170nm以下がさらに好ましく、150nm以下が特に好ましく、140nm以下であることが最も好ましい。平均粒子径をこのような範囲とすることで、カーボンブラックの凝集を適度に抑制し、安定した着色性を発現できる傾向にある。
なお、カーボンブラックの平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法−電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求める値である。
また、カーボンブラックのDBP吸油量は、100ml/100g未満であることが好ましく、より好ましくは70ml/100g未満、50ml/100g未満であることがさらに好ましい。DBP吸油量を100ml/100g未満にすることで、樹脂組成物の流動性が向上する傾向にあり好ましい。下限は通常5ml/100g、好ましくは10ml/100gである。なお、DBP吸油量はJIS K6217−4:2008に準拠して測定する値である。
また、カーボンブラックの単位質量当たりのヨウ素吸着量(mg/g)は、60mg/g未満であることが好ましく、40mg/g未満であることがより好ましい。下限は通常1mg/g、好ましくは3mg/gである。ヨウ素吸着量を60mg/g未満にすることで、樹脂組成物の流動性が向上する傾向にあり好ましい。なお、ヨウ素吸着量は、JIS
K6217−1:2008に準拠して測定される値である。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、通常100m/g未満が好ましく、なかでも80m/g以下、なかでも50m/g以下、特には30m/g以下であることが好ましい。窒素吸着比表面積を100m/g未満にすることで、樹脂組成物の流動性が向上する傾向にあり好ましい。下限は通常1m/g、好ましくは3m/gである。なお、窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001に準拠して測定する値である。
また、カーボンブラックは、そのpHについても特に制限はないが、通常、2〜10であり、3〜9であることが好ましく、4〜8であることがさらに好ましい。
カーボンブラックの含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対して0.05質量部以上であり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、1.5質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.8質量部以下である。カーボンブラックの含有量が0.05質量部未満であると耐候(光)性改善効果が低下する場合があり、1.5質量部を超えると耐トラッキング性、絶縁破壊電圧、靱性が低下しやすくなり、好ましくない。
カーボンブラックは、単独で又は二種以上併用して使用することができる。更にカーボンブラックは、バインダーを用いて顆粒化することも可能であり、樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチでの使用も可能である。溶融混練したマスターバッチを使用することによって、樹脂組成物溶融混練時のハンドリング性や樹脂組成物中への分散性が良好となる傾向にある。マスターバッチのベース樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、ポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂を使用することが好ましく、耐トラッキング性低下抑制効果が高い点から、ポリオレフィン系樹脂がより好ましく、ポリエチレン樹脂がさらに好ましい。
カーボンブラックマスターバッチのベース樹脂として好適なポリオレフィン系樹脂としては、炭素数2〜20のα−オレフィンの少なくとも1種からなる単独重合体若しくは共重合体またはそれらの変性物等が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂を形成する上記α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3,3−ジメチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルヘキセン−1、5−メチルヘキセン−1、アリルシクロペンタン、アリルシクロヘキサン、アリルベンゼン、3−シクロヘキシルブテン−1、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロヘキサン、2−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ヘプテン−1またはオクテン−1等が挙げられる。また、これらα−オレフィンの1種または2種以上を重合成分として用いることができる。
α−オレフィンの好ましい例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1を挙げることができ、特に好ましくは、エチレン、プロピレンである。また、その他の成分として、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4ヘキサジエン、7−メチル−1,6オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを重合成分の一部として用いてもよい。
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、エチレンの単独重合体またはエチレンを主成分とし、エチレン以外の上記のα−オレフィンおよび/またはその他の成分を1種以上含むランダム若しくはブロック共重合体であるポリエチレン樹脂、プロピレンの単独重合体またはプロピレンを主成分とし、プロピレン以外の上記のα−オレフィンおよび/またはその他の成分を1種以上含むランダム若しくはブロック共重合体であるポリプロピレン樹脂、さらに高級なα−オレフィンの単独重合体またはこれを主成分とする共重合体であるポリブテン樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリヘキセン樹脂等が挙げられ、好ましくはポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂が挙げられ、中でもポリエチレン樹脂が好ましい。
また、本発明の目的とする絶縁特性だけでなく、流動性や難燃性等の物性をも損なわない限りにおいて、ポリオレフィン系樹脂は、上記の各種のポリオレフィン系樹脂の変性物である、変性ポリオレフィン系樹脂であってもよい。実際には、変性の目的に応じてカルボン酸基、酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリニル基、酸イミド基、水酸基等の官能基を含有する変性ポリオレフィン系樹脂が用いられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、結晶性のものが選ばれ、X線回折による室温での結晶化度が10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。融点は、40℃以上のものが好ましい。分子量は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂の場合、JIS K7210に準拠して試験温度190℃、試験荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(以下、MFRという。)が0.01〜200g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分に相当する分子量であるものが好ましい。MFRがこの範囲外ではポリブチレンテレフタレート樹脂中へのポリオレフィン系樹脂の分散が悪く、良好な黒色外観が得られない場合がある。
マスターバッチ中のカーボンブラックの含有量は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%がより好ましく、15〜60質量%がさらに好ましく、20〜55質量%が特に好ましい。マスターバッチ中のカーボンブラックの含有量が5質量%未満では、十分な黒色度を得るためにはマスターバッチの添加量が多くなり、良好な黒色外観が得られない場合がある。また、80質量%を超えると、カーボンブラックの分散不良が発生する場合があり好ましくない。また、カーボンブラックマスターバッチの使用量は適宜選択して決定すればよいが、通常、(A)成分、(B)成分及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部に対して0.05〜2質量部であり、中でも0.1〜1.5質量部、特に0.3〜1質量部であることが好ましい。
[その他成分]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
また、本発明におけるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、上記した樹脂以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。
その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドエチレン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を製造する方法としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フイーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。さらには、ポリブチレンテレフタレート樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りのポリブチレンテレフタレート樹脂や他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、無機充填材としてガラス繊維等の繊維状のものを用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
[成形体]
本発明の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形体として用いる。この成形体の形状、模様、色、寸法等に制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
本発明の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、耐トラッキング性に優れ、靱性、ウエルド強度等の機械的特性、耐熱変色性及び低反り性の全てにバランスよく優れる樹脂材料であるので、様々な用途に広く採用することができ、電気機器、電子機器あるいはそれ等の絶縁性部品として特に好適である。
絶縁性部品としては、金属接点、銅版等と組み合わせることにより、リレー、スイッチ、コネクター、ターミナルスイッチ、センサー、アクチュエーター、マイクロスイッチ、マイクロセンサーおよびマイクロアクチュエーター等の有接点電気電子機器部品や電気電子機器の筐体として好ましく用いることができる。
特に、本発明の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、耐トラッキング性、ウエルド強度、耐熱変色性及び低反り性の全てにバランスよく優れ、特にCTIが400Vという高い耐トラッキング性を有するため、最小表面絶縁距離(沿面距離)が、0.63〜21mmといった絶縁性が必要とされるコネクター用途に幅広く適用可能である。特に、最小表面絶縁距離が10mm以下、さらには5mm以下、中でも3mm以下といった最小表面絶縁距離が小さいコネクターにも適用可能となるため、産業上の利用可能性が極めて高い。なお、最小表面絶縁距離(沿面距離)とは、二つの導電体の絶縁材料の表面に沿った最短距離をいい、IEC60664規格に定められており、本発明における表面絶縁距離もこの規格に準拠して定義される。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の説明において[部]とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく「質量部」を表す。また、離型剤、安定剤、無機充填材、カーボンブラック、タルクの含有量は、(A)、(B)及び(C1)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量部基準に対する含有量で示した。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
(参考例1〜8、実施例9〜11、比較例1〜8)
表1に記載の各成分を以下の表2、3に記載の配合割合(質量部)になるように配合し、2軸押出機(日本製鋼所社製「TEX−30α」、スクリュー径30mm)を用いて、バレル設定温度250℃、スクリュー回転数200rpmで押出して、樹脂組成物のペレットを製造した。なお、ガラス繊維はホッパーから7番目のサイドフィーダーより供給した。
得られたペレットの特性は、射出成形機(日本製鋼所社製、J−85AD)を用いて、シリンダー温度250℃で射出成形した以下の試験片について、評価した。
なお、成形に際して、樹脂組成物ペレットはその直前まで120℃にて6〜8時間乾燥した。
<評価方法>
評価方法は、以下のとおりである。
(1)曲げ強度:
ISO多目的試験片(4mm厚)をについて、ISO178に準拠して、23℃の温度で、曲げ強度(最大曲げ応力、単位:MPa)を測定した。
(2)ウエルド曲げ強度:
厚さ1.6mmのUL94燃焼試験片用の金型に、試験片の両側長手方向からの2点ゲートで樹脂を射出して、試験片中央部にウエルドラインが形成された厚さ1.6mmのUL94燃焼試験片を射出成形し、これを用いてスパン間40mm、試験速度2mm/minの条件で、ウエルド曲げ強度(最大曲げ応力、単位:MPa)を測定した。
(3)引張強度、引張強度:
ISO多目的試験片(4mm厚)をについて、ISO527に準拠して、23℃の温度で、引張強度(最大降伏応力、単位:MPa)及び引張伸度(最大降伏ひずみ、単位:%)を測定した。
(4)耐トラッキング性−比較トラッキング指数試験(略称:CTI試験):
試験片(厚さ3mm、大きさ60mm×60mmの平板)について、国際規格IEC60112に定める試験法によりCTIを決定した。CTIは固体電気絶縁材料の表面に電界が加わった状態で湿潤汚染されたとき、100Vから600Vの間の25V刻みの電圧におけるトラッキングに対する対抗性を示すものであり、数値が高いほど良好であることを意味する。400Vに不合格のものは「<400」と示した。CTIは400V以上であるのが好ましい。
(5)耐熱変色性(ΔE):
大きさ100mm×100mmで、厚みが3mmの平板試験片から大きさ50mm×50mm、厚み3mmの試験片を切り出し、150℃の熱風オーブンで100時間処理を行った。分光測色色差計(コニカミノルタ社製「CM−3600d」)を使用し、その試験片の試験前後の色差(ΔE)を次式で評価した。
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
ΔEが小さいほど変色性が小さく、耐熱変色性に優れているといえる。
(6)低反り性の評価(収縮率):
厚さ2mm、縦100mm×横100mmの平板をフィルムゲート金型で射出成形し、得られた平板の樹脂流れ方向(MD)と流れと直角方向(TD)の成形収縮率(単位:%)をそれぞれ測定し、MD/TDの比を求めた。MD/TD比が1に近いほど低反り性であることを示す。
以上の評価結果を以下の表2、3に示す。
上記表2〜3より、実施例のものは、耐トラッキング性、ウエルド強度、低反り性及び耐熱変色性の全てに優れていることがわかる。
これに対し、(C1)アクリル系ゴム成分を含有するスチレン系樹脂の含有量が少ない比較例1は、耐トラッキング性及び低反り性が劣ることがわかる。
また、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂及びアクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)を含有しない比較例3、4は、耐トラッキング性、ウエルド曲げ強度が低下し、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有しない比較例5〜8は、ウエルド曲げ強度が低下することがわかる。
耐トラッキング性改良のためにタルクを配合した比較例2は、耐トラッキング性は600Vと良好であるが、ウエルド曲げ強度、引張伸度等の靱性が低下することがわかる。
本発明の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、低反り性、ウエルド強度、耐熱変色性および耐トラッキング性を、高いレベルでバランス良く向上させた樹脂材料であるので、各種の電気電子機器部品、特にコネクターに好適に適用できる。

Claims (6)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を5〜40質量部、さらに
    C2)アクリル系ゴムをコアとし、(メタ)アクリル酸エステル化合物又は(メタ)アクリル酸化合物の重合体をシェルとするアクリル系コアシェル型エラストマー(C2−1)とゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(C2−2)とを、(C2−1)及び(C2−2)の合計で30〜100質量部、
    含有し、コネクター、リレー、スイッチまたは電気電子機器部品の筐体用であることを特徴とする絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  2. (C2−1)アクリル系コアシェル型エラストマーの含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量%中4〜40質量%である、請求項1に記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  3. (B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、(A)成分、(B)成分及び(C2)成分の合計100質量%中2〜30質量%である、請求項1又は2に記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  4. さらに、カーボンブラックを含み、カーボンブラックがポリオレフィン系樹脂とのマスターバッチとして配合される、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁性ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなるコネクター、リレー、スイッチ及び電気電子機器部品の筐体からなる群より選ばれる成形体。
  6. 最小表面絶縁距離が0.63〜21mmのコネクターである、請求項に記載の成形体。
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