JP6449038B2 - ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形体に関するものであり、詳しくは、寸法安定性、難燃性および耐トラッキング特性を高いレベルでバランスさせ、さらに耐金型腐食性、レーザー印字性と樹脂組成物製造時のフィード性にも優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びそれを成形してなる成形体に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、電気電子機器部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に広く用いられている。
電気電子機器分野では、電気的負荷による発火に対する安全性の確保のため、電気的特性の一つである耐トラッキング性に優れていることが必要である。
そして、近年、電気電子機器部品や電装部品は、機器自体の小型化高密度化が急速に進行しており、その結果、絶縁距離が小さくなり、これら部品(成形品)の耐トラッキング性等への要求スペックはますます厳しくなってきている。
絶縁材料は、通電中に装置から発生した熱により乾燥し帯電するため、絶縁材料の表面には埃が付着しやすい傾向がある。そのため、その絶縁材料から形成される部品は、装置停止中にその表面に埃が付着しやすく、その埃が空気中の水分を吸収し、吸収された水分により材料の表面抵抗が低下し、漏洩電流が増加する。一般に、電気部品は多かれ少なかれこのような状況にさらされており、絶縁材料の耐トラッキング特性が重視されている。
電気電子機器部品では、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社の比較トラッキング指数(CTI:Comparative Tracking Index)等の要求事項を満たさねばならず、CTIがPLC2レベル(250V≦CTI<400V)を満足することが最近では要求される。
耐トラッキング性の改良を試みた材料としては、例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリエステル樹脂、α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルからなるオレフィン系共重合体を含む樹脂組成物が開示されており、必要に応じて、慣用の難燃剤、タルク、カオリン、シリカ等の充填剤、ガラス繊維等の繊維状充填剤を添加してもよいことが記載されており、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート樹脂、臭素系難燃剤、アンチモン系難燃助剤、フッ化エチレン系重合体、ポリオレフィン及びケイ酸金属塩系充填剤とガラス繊維からなる樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献3には、熱可塑性ポリエステル樹脂、圧縮微粉タルク、ハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤からなる樹脂組成物が開示されており、必要に応じて、繊維状強化剤を添加してもよいことが記載されている。
しかしながら、これらの樹脂組成物は、いずれも、耐トラッキング性は十分ではなく、また、反りも大きく、機械的強度の点でも必ずしも満足できるものではなかった。
また、電気電子機器部品等は、近年の著しい部品の小型化薄肉化の進展に伴い、薄肉での高度の難燃性が求められており、UL−94で規定する垂直燃焼ランクV−0を達成することが要望されている。ポリブチレンテレフタレート樹脂を難燃化するには、通常、臭素系難燃剤や酸化アンチモン化合物等が配合されるが、これらは熱可塑性ポリエステル樹脂の耐トラッキング性等の電気特性を低下させる傾向にある。また難燃剤にはポリテトラフルオロエチレン等の滴下防止剤を併用することがよく行われるが、滴下防止剤は成形品の寸法安定性を悪化させ、反りを生じさせやすい。
難燃剤として臭素系難燃剤を含む樹脂材料を用いた場合の問題点として、腐食性ガスの発生がある。特に、コネクター用部品、リレー用部品等の金属接点・端子を有する電気電子機器部品を製造した場合は、通電時等の熱により金属腐食性ガスが発生し、金属接点や端子が腐食し、導通不良等が発生するといった問題があり、近年これらの部品には、より高い耐金属腐食性も求められつつある。
さらに、機器部品には、通常、製造会社名や銘柄名、品番、製造ロットナンバー等を明示するための印字が施され、最近では印字速度の速いレーザーマーキングが多用されている。特に部品の小型化などから、より鮮明な印字特性が要求され、且つ印字速度の向上による生産性向上の観点から、レーザー印字性に優れた樹脂組成物が求められている。
このように電気電子機器部品等においては、寸法安定性、難燃性、耐トラッキング特性、耐金属腐食性及びレーザー印字性に優れることが必要とされてきているが、上述したとおり、ポリブチレンテレフタレート樹脂に何らかの添加剤を添加して何らかの性能を向上させようとすると、他の性能に問題が起きる場合が多い。そのため、上記性能を全て満たすようなポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は未だ得られていないのが実情である。
特開平7−196859号公報 特開平10−67925号公報 特開平10−158486号公報
本発明の目的(課題)は、上記事情に鑑み、寸法安定性、難燃性、耐トラッキング性を高いレベルでバランス良く有し、さらに耐金型腐食性、レーザー印字性及び樹脂組成物製造時のフィード性にも優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂材料を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、臭素系難燃剤、三酸化アンチモンおよび硼酸金属塩を特定の量で、しかも三酸化アンチモンと硼酸金属塩の質量比が特定の量比で含有することにより、寸法安定性、難燃性、耐トラッキング性、耐金型腐食性、樹脂組成物製造時のフィード性、さらにレーザー印字性を高いレベルでバランス良く達成できることを見出し、本発明を完成するに到達した。
本発明は、以下のとおりである。
[1](A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)臭素系難燃剤5〜50質量部、(C)三酸化アンチモン3〜15質量部および(D)硼酸金属塩0.3〜10質量部を含有し、(C)三酸化アンチモンと(D)硼酸金属塩の質量比(C/D)が1〜20の範囲にあることを特徴とするポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[2](C)三酸化アンチモンがマスターバッチとして配合される上記[1]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[3](D)硼酸金属塩中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が2,000質量ppm以下である上記[1]または[2]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[4](D)硼酸金属塩の平均粒子径が4μm以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[5](D)硼酸金属塩が硼酸亜鉛である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[6]さらに、含フッ素樹脂を含有する場合、その含有量が1質量%を超えない上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形体。
[8]成形体のコア部において、(C)三酸化アンチモンが、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂マトリックス中に分散して存在する(B)臭素系難燃剤相中に存在するモルフォロジーを有する上記[7]に記載の成形体。
[9](D)硼酸金属塩の少なくとも一部が(B)臭素系難燃剤相に接しているモルフォロジーを有する上記[7]または[8]に記載の成形体。
[10](B)臭素系難燃剤がポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤を含む上記[7]〜[9]のいずれかに記載の成形体。
[11]成形体が、金属接点・端子を有する電気電子機器部品である上記[7]〜[10]のいずれかに記載の成形体。
[12]成形体が、コネクター用部品、リレー用部品、スイッチ用部品、ブレーカー用部品、電磁開閉器用部品及び端子台用部品からなる群より選ばれるものである上記[7]〜[11]のいずれかに記載の成形体。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、寸法安定性、難燃性および耐トラッキング特性を高いレベルでバランスさせ、さらに耐金型腐食性、レーザー印字性と樹脂組成物製造時のフィード性にも優れる。
このため、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、電気電子機器用の絶縁部品として、例えば、電子電気機器部品の筐体、コネクター、リレー、スイッチ、ブレーカー、電磁開閉器、端子台、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ等に特に好適に使用することができる。
実施例2で得た成形品のコア部の走査型電子顕微鏡写真である。 図1の拡大写真である。 実施例における反り性の評価のために使用した箱型成形体の斜視図である。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)臭素系難燃剤5〜50質量部、(C)三酸化アンチモン3〜15質量部および(D)硼酸金属塩0.3〜10質量部を含有し、(C)三酸化アンチモンと(D)硼酸金属塩の質量比(C/D)が1〜20の範囲にあることを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂]
本発明の樹脂組成物に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールも挙げられる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることもできる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として共重合体を用いる場合は、中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。共重合中のテトラメチレングリコール成分の割合は3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性、耐トラッキング性が向上しやすい傾向にあり好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
[(B)臭素系難燃剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は(B)臭素系難燃剤を含有する。(B)臭素系難燃剤としては各種のものが使用出来る。この様な臭素系難燃性としては、芳香族系化合物が挙げられ、具体的には例えば、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート、ポリブロモフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(EBTPI)等の臭素化イミド化合物、臭素化ポリカーボネート等が挙げられる。
中でも熱安定性の良好な点より、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネートが好ましく、後述の好ましいモルフォロジーの観点から、ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートを含む臭素系難燃剤を使用することがより好ましい。
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤含む場合、(B)臭素系難燃剤中のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤の含有割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、(B)臭素系難燃剤の全てがポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤であることが最も好ましい。
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、又は2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、該臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1〜5個、中でも4〜5個付加したものであることが好ましい。
該臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、又はそれらの混合物等が挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には例えば、アクリル酸や、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸や、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
これらは通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下で用いることが好ましい。
また、ビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロムキシレンジアクリレート、テトラブロムキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン等を使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、高臭素含有量であること、電気絶縁特性(耐トラッキング特性)が高い観点で好ましい。
臭素化エポキシ化合物としては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型臭素化エポキシ化合物が挙げられる。
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、質量平均分子量(Mw)で3,000〜100,000であり、中でも分子量が高い方が好ましく、具体的にはMwとして10,000〜80,000、中でも13,000〜78,000、更には15,000〜75,000、特に18,000〜70,000であることが好ましく、この範囲内に於いても分子量の高いものが好ましい。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が3,000〜40,000g/eqであることが好ましく、中でも4,000〜35,000g/eqが好ましく、特に10,000〜30,000g/eqであることが好ましい。
また、臭素化エポキシ化合物系難燃剤として臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5,000以下のオリゴマーを0〜50質量%程度用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤としては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時に(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし、成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1,000〜20,000、中でも2,000〜10,000であることが好ましい。
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、例えば、臭素化ビスフェノールAとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
臭素化ポリスチレンとしては、好ましくは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含有する臭素化ポリスチレンが挙げられる。
(式(1)中、tは1〜5の整数であり、nは繰り返し単位の数である。)
臭素化ポリスチレンとしては、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。
なお、前記一般式(1)において、臭素化ベンゼンが結合したCH基はメチル基で置換されていてもよい。また、臭素化ポリスチレンは、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレンは単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2−ブロモスチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモスチレン)、ポリ(2,6−ジブロモスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモスチレン)、ポリ(3,5−ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5−トリブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモ−α−メチルスチレン)およびポリ(2,4,5−トリブロモ−α−メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)および平均2〜3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
臭素化ポリスチレンは、上記一般式(1)における繰り返し単位の数n(平均重合度)が30〜1,500であることが好ましく、より好ましくは150〜1,000、特に300〜800のものが好適である。平均重合度が30未満ではブルーミングが発生しやすく、一方1,500を超えると、分散不良を生じやすく、機械的性質が低下しやすい。また、臭素化ポリスチレンの質量平均分子量(Mw)としては、5,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜300,000であることがさらに好ましく、10,000〜70,000であることが特に好ましい。
特に、上記したポリスチレンの臭素化物の場合、質量平均分子量(Mw)は50,000〜70,000であることが好ましく、重合法による臭素化ポリスチレンの場合、質量平均分子量(Mw)は10,000〜30,000程度であることが好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
臭素化ポリスチレンは、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜70質量%であることがより好ましく、57〜67質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度をこのような範囲とすることにより、難燃性を良好に保つことが容易である。
臭素化イミド化合物としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
(一般式(2)中、Dはアルキレン基、アルキルエーテル基、ジフェニルスルフォン基、ジフェニルケトン基あるいはジフェニルエーテル基を示す。iは1〜4の整数である。)
上記一般式(2)で示される臭素化フタルイミド化合物としては、例えばN,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)エタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)プロパン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ブタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジエチルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジプロピルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジブチルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルスルフォン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルケトン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
臭素化イミド化合物としては、上記一般式(2)において、Dがアルキレン基であるものが好ましく、特に好ましくは、下記一般式(3)で示される臭素化フタルイミド化合物である。
(一般式(3)中、iは1〜4の整数である。)
中でも、上記式(3)におけるiが4である、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)が好ましい。
臭素化イミド化合物は、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜73質量%であることがより好ましく、57〜70質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度をこのような範囲とすることにより、レーザーマーキング性及び難燃性を良好に保つことが容易である。
(B)臭素系難燃剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5〜50質量部であり、好ましくは7質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは35質量部以下である。(B)臭素系難燃剤の含有量が少なすぎると樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
[(C)三酸化アンチモン]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(C)三酸化アンチモンを含有する。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)およびアンチモン酸ナトリウム等が挙げられるが、本発明ではこれらの中でも三酸化アンチモンを含有する。
(C)三酸化アンチモンは、樹脂組成物中の(B)臭素系難燃剤由来の臭素原子と、(C)三酸化アンチモン中のアンチモン原子の質量割合が、両者の合計で3〜25質量%となるように配合することが好ましく、4〜22質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。3質量%未満であると難燃性が低下する傾向にあり、25質量%を超えると機械的強度が低下する傾向にある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、難燃性が発現しやすい傾向にあり好ましい。
本発明においては、(C)三酸化アンチモンは、熱可塑性樹脂、好ましくは(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とのマスターバッチとして配合することが好ましい。これにより、(C)三酸化アンチモンが、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相に存在しやすくなり、溶融混練、成形加工時の熱安定性が良好となり、耐衝撃性の低下が抑えられ、さらに、難燃性、耐衝撃性のばらつきが少なくなる傾向となる。
マスターバッチ中の(C)三酸化アンチモンの含有量は20〜90質量%であることが好ましい。(C)三酸化アンチモンが20質量%未満の場合は、難燃剤マスターバッチ中のアンチモン化合物の割合が少なく、これを配合する(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂への難燃性向上効果が小さくなりやすい。一方、(C)三酸化アンチモンが90質量%を超える場合は、(C)三酸化アンチモンの分散性が低下しやすく、これを(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に配合すると樹脂組成物の難燃性が不安定になり、またマスターバッチ製造時の作業性が低下しやすく、例えば、押出機を使用して製造する際に、ストランドが安定せず、切れやすい等の問題が発生しやすいため好ましくない。
マスターバッチ中の(C)三酸化アンチモンの含有量は、好ましくは20〜85質量%であり、より好ましくは25〜80質量%である。
(C)三酸化アンチモンの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、3〜15質量部であり、好ましくは4質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、好ましくは13質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記下限値を下回ると難燃性が低下する。また、上記上限値を上回ると、結晶化温度が低下し離型性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的物性が低下する。
(D)硼酸金属塩
本発明の樹脂組成物は(D)硼酸金属塩を、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.3〜10質量部含有し、かつ(C)三酸化アンチモンと(D)硼酸金属塩の含有量の質量比(C/D)が1〜20の範囲にあることを特徴とする。(D)硼酸金属塩をこのような量と質量比で含有することで、難燃性、反り性、耐トラッキング性(CTI)の全てを高いレベルでバランスさせることが可能となり、また、レーザー印字性にも優れる。C/D比は好ましくは2〜18、より好ましくは4〜16である。
(D)硼酸金属塩を形成する硼酸としては、オルト硼酸、メタ硼酸等の非縮合硼酸;ピロ硼酸、四硼酸、五硼酸及び八硼酸等の縮合硼酸;並びに塩基性硼酸等が好ましい。これらと塩を形成する金属はアルカリ金属でもよいが、中でもアルカリ土類金属、遷移金属、周期律表2B族金属等の多価金属が好ましい。また、(D)硼酸金属塩は水和物であることが好ましい。
(D)硼酸金属塩としては、非縮合硼酸金属塩、縮合硼酸金属塩があり、非縮合硼酸金属塩としては、オルト硼酸カルシウム、メタ硼酸カルシウム等のアルカリ土類金属硼酸塩;オルト硼酸マンガン、メタ硼酸銅等の遷移金属硼酸塩;メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸カドミウム等の周期律表2B族金属の硼酸塩などが挙げられる。これらのなかではメタ硼酸塩が好ましい。
縮合硼酸塩としては、四硼酸三マグネシウム、ピロ硼酸カルシウム等のアルカリ土類金属硼酸塩;四硼酸マンガン、二硼酸ニッケル等の遷移金属硼酸塩;四硼酸亜鉛、四硼酸カドミウム等の周期律表2B族金属の硼酸塩等が挙げられる。塩基性硼酸塩としては塩基性硼酸亜鉛、塩基性硼酸カドミウム等の周期律表2B族金属の塩基性硼酸塩等が挙げられる。またこれらの硼酸塩に対応する硼酸水素塩(例えばオルト硼酸水素マンガン等)も使用できる。
本発明に用いる(D)硼酸金属塩としては、アルカリ土類金属または周期律表2B族金属の塩、例えば硼酸亜鉛類や硼酸カルシウム類を用いるのが好ましい。硼酸亜鉛類には、硼酸亜鉛(2ZnO・3B)や硼酸亜鉛・3.5水和物(2ZnO・3B・3.5HO)等が含まれ、硼酸カルシウム類には硼酸カルシウム無水物(2CaO・3B)等が含まれる。硼酸カルシウム類としては、コレマナイト(主に硼酸カルシウムからなる無機化合物であり、通常、化学式2CaO・3B・5HOで表される水和物)を用いてもよい。
これら硼酸亜鉛類や硼酸カルシウム類の中でも特に水和物が好ましい。
上記の中でも、(D)硼酸金属塩は、硼酸金属塩中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が2,000質量ppm以下であるものが、滞留熱安定性の点から好ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、K、Na、Ca、Mg等がその例として挙げられるが、これらの中でもK及び/又はCaの含有量が2,000質量ppm以下であるものが好ましく、より好ましくは1,500質量ppm以下、さらに好ましくは1,000質量ppm以下、中でも800質量ppm以下のものが好ましい。
硼酸金属塩中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量は、蛍光X線分析により測定することができる。
また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造に用いる(D)硼酸金属塩は、平均粒子径が4μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることがさらに好ましい。平均粒子径の上限は、好ましくは30μm、より好ましくは20μm、さらに好ましくは15μmである。(D)硼酸金属塩の平均粒子径が4μm未満であると、燃焼時間が長くなり難燃性が低下したり、耐トラッキング性、耐加水分解性が低下する傾向となる等好ましくない。一方、平均粒子径が30μmを超えると、機械的物性が低下したり、表面外観が著しく損なう場合があり好ましくない。なお、(D)硼酸金属塩の平均粒子径は、レーザー回折法により測定されるメジアン径(D50)をいう。
さらに、(D)硼酸金属塩は、シランカップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いてもよい。表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えばシランカップリング剤としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等の表面処理剤が挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましい。アミノシラン系カップリング剤としては、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが、好ましい例として挙げられる。
(D)硼酸金属塩の表面処理剤としては、本発明の効果を損ねない範囲であれば、上記シランカップリング剤等の表面処理剤に、他の成分、具体的には例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、帯電防止剤、潤滑剤及び撥水剤等を含んでいてもよい。
この様な表面処理剤による表面処理方法としては、表面処理剤により予め表面処理してもよく、又は本発明のポリエステル樹脂組成物を調製の際に、未処理の硼酸金属塩とは別に、表面処理剤を添加して表面処理することもできる。
(D)硼酸金属塩の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.3〜10質量部であるが、0.5質量部以上が好ましく、7質量部以下が好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
[含フッ素樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、燃焼性改良のため滴下防止剤を含有させることも好ましく、滴下防止剤としては、含フッ素樹脂、代表的にはポリテトラフルオロエチレン系樹脂(PTFE)が挙げられる。
しかし、難燃性を向上させるために、難燃助剤として含フッ素樹脂を含有すると、特に薄肉の成形体においては、反りが発生する等、寸法安定性に劣る傾向にあることが判明した。そして、この寸法安定性の問題は、含フッ素樹脂の含有量が多くなると顕著になる傾向にあるため、本発明においては、含フッ素樹脂を多く含まないことが好ましく、含フッ素樹脂を含有する場合は、その含有量が1質量%を超えないことが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、中でも0.3質量%以上、とりわけ0.1質量%以上、特には0.05質量%以上の量で含有しないことが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、硼酸金属塩を特定の量で、かつ、三酸化アンチモンと特定の割合で含有することにより、含フッ素樹脂を実質的に含有することなしで、薄肉でもV−0レベルの高い難燃性を有し、かつ寸法安定性および耐トラッキング性を高いレベルで達成することができるという特徴を有する。
なお、本発明において、含フッ素樹脂を実質的に含有しないとは、具体的にはポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物が含フッ素樹脂を1質量%を超える量で含有しないことを意味し、より好ましくは0.5質量%以上、中でも0.3質量%以上、とりわけ0.1質量%以上、特には0.05質量%以上の量で含有しないことをいう。
[安定剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でもホスファイト、ホスホナイトが好ましい。
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
また、ホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
フェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1.5質量部以下、好ましくは1質量部以下である。0.001質量部未満では安定剤としての効果が不十分であり、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、また1.5質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。
[離型剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、離型性に優れるという点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物などが挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂との相溶性などの点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイルなどが挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基などが挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.07〜1.5質量部、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
[強化充填材]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、更に、強化充填材を含有することも好ましい。
強化充填材としては、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維などの繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズなどの粒状または無定形の充填材;タルクなどの板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイトなどの鱗片状の充填材を用いることもできる。
なかでも、レーザー光透過性、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
強化充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
ガラス繊維は、寸法安定性、レーザー光透過性の点から、断面における長径と短径の比が1.5〜10である異方断面形状を有するガラス繊維であることも好ましい。
断面形状は、断面が長方形又は長円形のものであり、また長径/短径比が2.5〜8、更には3〜6の範囲にあるものが好ましい。長径をD2、短径をD1、平均繊維長をLとするとき、アスペクト比((L×2)/(D2+D1))が10以上であることが好ましい。このようにこのような扁平状のガラス繊維を使用すると、成形品の反りが抑制され、特に箱型の溶着体を製造する場合に効果的である。
強化充填材の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0〜100質量部であることが好ましい。強化充填材の含有量が100質量部を上回ると、流動性やレーザー透過性が低下するので好ましくない。強化充填材のより好ましい含有量は、5〜90質量部であり、より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは30〜80質量部、特には40〜70質量部である。
[カーボンブラック]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、成形品を黒色等の所望の色調にする目的で、カーボンブラックを含有することも好ましい。
カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒径には特に制限はないが、5〜60nm程度であることが好ましい。
カーボンブラックの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜2.0質量部、より好ましくは0.3〜1.0質量部である。
なお、カーボンブラックは、予めカーボンブラックを高濃度で含有するマスターバッチとして配合することが、樹脂組成物製造時のハンドリング性、樹脂組成物における均一分散性を高める上で好ましい。この場合、カーボンブラックのマスターバッチに用いる樹脂としては、(A)成分であるポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよく、(A)成分以外の樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレン樹脂等であってもよい。高濃度のカーボンブラックを分散させ易く、マスターバッチ化が容易な点からは、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることが好ましい。
カーボンブラックマスターバッチのカーボンブラック濃度は、通常10〜50質量%程度である。
[エラストマー]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、更に、エラストマーを含有することも好ましい。
本発明で用いるエラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いる。エラストマーのガラス転移温度は0℃以下、特に−20℃以下であるのが好ましい。
エラストマーの具体例としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
尚、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
またエラストマーの他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
エラストマーは、アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーが好ましく、ブタジエン系及び/又はアクリル系ゴム性重合体にこれと反応する単量体化合物を共重合させたものが好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤の具体例としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム、また、これらゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーは、耐衝撃性改良の点から、コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましく、ブタジエン成分含有ゴム及び/又はアクリル成分含有ゴム性重合体をコア層とし、その周囲にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる単量体を共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
コア/シェル型グラフト共重合体の例としては、ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン−メチルメタクリレート・スチレン共重合体、シリコーン・アクリル−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体等が挙げられる。これらのゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コア、シェルともにアクリル酸エステルであるアクリル系コア/シェル型のエラストマーが、耐衝撃性、耐熱老化性、耐光性の点から好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマー中のアクリル及び/又はブタジエン成分の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%ある。アクリル及び/又はブタジエン成分の含有量が50質量%未満であると、耐衝撃性に劣る傾向となり、90質量%を超えると、難燃性や耐候性が悪化する傾向となるため好ましくない。
エラストマーの平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下が特に好ましく、500nm以下が最も好ましい。また、下限は通常100nmであり、好ましくは150nm、より好ましくは200nm、さらに好ましくは250nmである。このような平均粒子径のエラストーを使用することにより、耐衝撃性、耐湿熱性、離型性等の成形性が良好となる傾向にあり好ましい。なお、エラストマーの平均粒子径とは、モルフォロジー観察結果について、エラストマー分散相の200個以上の最大径を測定し、それらを算術平均して求められる値をいう。
エラストマーの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、2〜20質量部であることが好ましい。エラストマーの含有量が2質量部未満では、耐衝撃性の改良効果が小さくなる傾向にあり、20質量部を超えると耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性が低下する場合がある。エラストマーの含有量は4質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、16質量部以下がより好ましく、13質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
[その他成分]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
また、本発明におけるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、上記した樹脂以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。
その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドエチレン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
[樹脂組成物成形体のモルフォロジー]
本発明のポリエステル樹脂組成物の成形体は、好ましくは、成形体のコア部において、(C)三酸化アンチモンが、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂マトリックス中に分散して存在する(B)臭素系難燃剤相中に存在するモルフォロジーを有する。また、さらに、(D)硼酸金属塩の少なくとも一部が(B)臭素系難燃剤相に接しているモルフォロジーを有することが好ましい。
成形体のモルフォロジーの観察は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)などにより成形体断面を観察することで測定でき、好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される。
具体的には、SEM/EDS分析装置を用い、成形体断面のコア部(深さ20μm未満の表層部を除く部分で、断面の中心部、樹脂組成物流動方向に垂直な断面。)を、1.5〜5kVの加速電圧下で、倍率1,500〜30,000倍の反射電子像により観察される。
図1は、そのモルフォロジーの一例を示すものであって、本発明の実施例2で得られた成形体のコア部のSEM/EDS分析による反射電子像の写真(倍率3,000倍)である。図2は、図1の拡大写真(倍率10,000倍)である。
図1中、連続相(マトリックス相)を構成しているのは(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂であり、その中に薄い色で島状に存在しているのが(B)臭素系難燃剤(図1ではペンタブロモベンジルポリアクリレート)の分散相であり、その分散相の中に、やや白くなった部分が見えるが、これが(C)三酸化アンチモンであり、(B)臭素系難燃剤の分散相中に存在していることが確認される。
また、図1、2において、上記した(B)臭素系難燃剤相に接して存在しているやや黒いものは(D)硼酸金属塩(図1、2においては硼酸亜鉛)である。このように、好ましくは(D)硼酸金属塩は、その少なくとも一部が(B)臭素系難燃剤相に接している状態で存在するモルフォロジーを有することが好ましい。そして、より好ましくは(D)硼酸金属塩粒子数の60%以上が、さらに好ましくは70%以上が、特に好ましくは80%以上が、中でも90%以上の硼酸金属塩粒子が(B)臭素系難燃剤相に接していることが、難燃性、耐トラッキング性向上の点から好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が燃焼する際には、(B)臭素系難燃剤は(C)三酸化アンチモンと反応し、その反応生成物が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に発生した活性ラジカルを捕捉したり、気相中の酸素を遮断する効果を発揮するため、難燃性が向上すると考えられる。また、(D)硼酸金属塩も(C)三酸化アンチモンと同様の機構で、難燃助剤効果を発揮すると考えられる。このような理由から、(C)三酸化アンチモンと(D)硼酸金属塩は、(B)臭素系難燃剤の近傍に存在し、より反応しやすい状態となっていることがよいと考えられ、本発明の成形体が上記のようなモルフォロジーを有することによって、樹脂組成物の難燃性をより高めることが可能となったと推定される。
このような(B)臭素系難燃剤のコア部における分散相の平均径は、10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましく、7μm以下であることが特に好ましい。下限は好ましくは0.3μm、より好ましくは0.5μm、さらに好ましくは1μmである。
また、コア部における(B)臭素系難燃剤分散相中に存在している(C)三酸化アンチモンの分散平均径は、4μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下、特には2μm以下である。下限は好ましくは0.1μm、より好ましくは0.3μm、さらに好ましくは0.5μmである。
さらに(D)硼酸金属塩のコア部における分散平均径は、4μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることがさらに好ましい。上限は通常30μm、好ましくは20μm、より好ましくは15μmである。
このような分散平均径とすることにより、難燃性、耐トラッキング性、機械的物性が良好となりやすい傾向となり好ましい。
(B)臭素系難燃剤分散相の径や(C)三酸化アンチモンの粒径等は、反射電子像で得られた像に対し、コントラストを強調あるいは、明暗の調整または両方の調整を像に施すことにより読み取ることができる。
(B)臭素系難燃剤分散相の分散径や(C)三酸化アンチモンの粒子径は、50個以上の分散径や粒子径を測定し、算術平均して算出される。分散相、粒子が円状でない場合は、最長径と最短径を測定し、平均値をその分散相、粒子の平均径とする。
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤、特にペンタブロモベンジルポリアクリレートは、ペンダント型構造の難燃剤であり、ベンゼン環に臭素原子が集中して結合しており、さらに1つのベンゼン環に5つの臭素原子が存在しているので、他の臭素系難燃剤に比べて電子吸引性が強いと考えられる。そのために、活性の高い(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤分散相に取り込まれやすく、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に存在しやすくなる。また、ペンタブロモベンジルポリアクリレートのSP値は26.0であり、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂のSP値23.4よりも大きい。そのために、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に取り込まれやすくなるとも考えられる。
さらに、上記したポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤の強い電子吸引性のために、(D)硼酸金属塩(硼酸亜鉛)をも吸引し、(D)硼酸金属塩が(B)臭素系難燃剤相に接しやすいくなると考えられる。
なお、SP値は、実験によって求めることもできるが、計算によって求めることもできる。計算によってSP値を求める方法は幾つか提案されているが、本明細書においては、、フェドアーズの「R.F.Fedors,Poymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14,No.2,147−154)」に記載に基づき、分子構造からSP値を算出することとする。フェドアーズの方法では、下記式(I)に従ってSP値が算出される。
SP値(δ)=(ΣΔE/ΣΔV)1/2[(cal/cm1/2]・・(I)
但し、ΔEは、物質に含まれる原子又は原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)を示し、ΔVは、該原子又は原子団のモル容積(cm/mol)を示す。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を製造する方法としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。さらには、ポリブチレンテレフタレート樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りのポリブチレンテレフタレート樹脂や他の成分を配合して溶融混練してもよい。なお、強化充填材としてガラス繊維等の繊維状のものを用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
また、前述したように、(C)三酸化アンチモンはあらかじめマスターバッチ化したものを用いることが、溶融混練、成形加工時等の熱安定性や、難燃性、耐衝撃性のばらつきの点において、好ましい。マスターバッチ化する方法は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂と三酸化アンチモンを、二軸押出機等の混練機で溶融混練する方法が挙げられる。さらに、マスターバッチ化の際には、必要に応じて安定剤等の各種の添加剤を配合することもできる。
(C)三酸化アンチモンをマスターバッチとして配合する場合、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)臭素系難燃剤および(D)硼酸金属塩と(C)三酸化アンチモンのマスターバッチ、必要により他の添加剤は、それぞれ所望の割合で押出機等の混練機にフィードされる。押出機としてはダイノズルが設けられた単軸又は二軸の押出機が使用される。
この際、三酸化アンチモンマスターバッチは、他の原料とは別に設けた専用のフィーダーから押出機に供給することが好ましい。三酸化アンチモンマスターバッチは、他の難燃剤や添加剤と混合して同じフィーダーから供給するのではなく、独立した専用のフィーダーから供給することが、分級が抑制され、難燃性、耐衝撃性が良好となり、ばらつきも少ない点から好ましい。
三酸化アンチモンマスターバッチを専用のフィーダーから供給する場合は、押出機のホッパーに、専用のフィーダーから他の原料と同時にフィードしてもよいし、押出機の途中にフィードしてもよい。押出機の途中にフィードする場合は、ニーディングゾーンよりもホッパー側にフィードすることが好ましい。
また、本発明においては、(D)硼酸金属塩を含有することにより、溶融混練の際のフィード性が良好となる。特に、(D)硼酸金属塩は、粉状の成分、例えば、粉状の(B)臭素系難燃剤や(C)三酸化アンチモン等の粉状の添加剤成分と、予めブレンドして用いることが好ましい。ブレンドする方法はいずれの方法でもよく、各種のブレンダーやミキサー等を使用して各成分をブレンドすればよい。このように予備ブレンドして用いることにより、溶融混練時のフィード性をより向上させることができる。
押出機に上記の各成分をフィードする際は、粉状の成分と、ペレット状等の粉状ではない成分とを、別々のフィーダーからフィードすることが好ましい。粗目状の場合は、粉状用のフィーダー、ペレット状用のフィーダーとは別のフィーダーから独立してフィードすることも好ましいが、粉状成分とプリブレンドして粉状用のフィーダーからフィードしてもよい。また、(C)三酸化アンチモンをマスターバッチとして用いる場合は、ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットと、比重の大きい三酸化アンチモンマスターバッチペレットとを、別々のフィーダーからフィードすることが分級抑制の観点から好ましい。
より具体的には、(i)ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット、(ii)三酸化アンチモンマスターバッチペレット、(iii)(D)硼酸金属塩、粉状の(B)臭素系難燃剤及び必要に応じて配合されるその他の粉状の添加剤成分の予備ブレンド物を、それぞれ別々のフィーダーからフィードすることがより好ましい。また、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材は、押出機の途中からサイドフィードすることが好ましい。本発明においては、(iii)粉状の予備ブレンド物中に(D)硼酸金属塩が存在することにより、粉状成分の流動性が向上し、フィード性がより向上する傾向となる。
押出機に供給後は、溶融混錬し、ダイノズルから樹脂組成物を押出してストランド状とした後に、冷却、切断して熱可塑性樹脂組成物の成形体(ペレット)が製造される。
この際、溶融混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。中でも、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、10<(L/D)<150の関係を満足することが好ましく、15<(L/D)<100を満足することがより好ましい。かかる比が10以下では、ポリブチレンテレフタレート樹脂と三酸化アンチモンや臭素系難燃剤が微分散しにくく、逆に150以上でも臭素系難燃剤の熱劣化が著しくなり、遊離化合物によるガスの問題が発生したり、熱劣化することにより樹脂組成物の機械的強度が低下する傾向があり好ましくない。
また、溶融混練時の樹脂組成物の溶融温度は180〜350℃であることが好ましく、190〜320℃であることがより好ましい。溶融温度が180℃未満では、溶融不十分となり、未溶融ゲルが多発しやすく、逆に350℃を超えると、樹脂組成物が熱劣化し、着色しやすくなる等好ましくない。
溶融混練時のスクリュー回転数は、100〜1,500rpmであることが好ましく、120〜1,000rpmがより好ましい。スクリュー回転数が100rpm未満であると、アンチモン化合物が微分散しにくい傾向にあり、逆に1,500rpmを超えても、三酸化アンチモンが凝集し、微分散しない傾向となり好ましくない。また、吐出量は5〜5,000kg/hrであることが好ましく、10〜3,000kg/hrがより好ましい。吐出量が5kg/hr未満であると、三酸化アンチモンの分散性が低下する傾向にあり5,000kg/hrを超えても、三酸化アンチモンの再凝集により、分散性が低下する傾向となり好ましくない。
[成形体モルフォロジーの好ましい制御法]
本発明の成形体は、前記したような特異なモルフォロジー構造を有することによって、難燃性、耐トラッキング性、機械的物性により優れた成形体となる。
本発明の樹脂組成物成形体の製造に用いるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、押出機等の溶融混練機を用いた溶融混練法により製造することが好ましいが、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の原料各成分を混合して、単に混練するだけでは、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成することは難しく、特別の方法により混練することが推奨される。
以下に、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成するための好ましい製造方法について、説明する。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)臭素系難燃剤、(C)三酸化アンチモン及び(D)硼酸金属塩を所定の割合で混合後、ダイノズルが設けられた単軸又は二軸の押出機に供給後、溶融混錬し、ダイノズルから樹脂組成物を押出してストランド状とした後に、切断してペレットを製造する。
この際、溶融混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。中でも、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、15<(L/D)<100の関係を満足することが好ましく、20<(L/D)<80を満足することがより好ましい。かかる比が15以下では、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に取り込まれにくくなり、逆に100以上でも、(B)臭素系難燃剤の熱劣化が著しく、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に取り込まれにくくなる傾向がある等好ましくない。
ダイノズルの形状も特に限定されないが、ペレット形状の点で、直径1〜11mmの円形ノズルが好ましく、直径2〜8mmの円形ノズルがより好ましい。
また、押出機等の溶融混練機に原材料を供給する際には、溶融混練前に(B)臭素系難燃剤、(C)三酸化アンチモン及び(D)硼酸亜鉛を予めブレンドし、この予備ブレンド物を、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは別に設けたフィーダーから押出機等の溶融混練機へ供給することが好ましい。このような供給方法を採用することにより、(B)臭素系難燃剤の分散相に(C)三酸化アンチモンが取り込まれやすく、さらにその近傍に(D)硼酸金属塩が存在するモルフォロジーを形成しやすく、難燃性、耐トラッキング性、機械的物性により優れた樹脂組成物が得られやすく好ましい。
また、溶融混練時の樹脂組成物の溶融温度は200〜330℃であることが好ましく、220〜315℃であることがより好ましい。溶融温度が220℃未満では、溶融不十分となり、未溶融ゲルが多発しやすく、逆に330℃を超えると、樹脂組成物が熱劣化し、着色しやすくなる等好ましくない。
溶融混練時のスクリュー回転数は、50〜1,200rpmであることが好ましく、80〜1,000rpmがより好ましい。スクリュー回転数が50rpm未満であると、(C)三酸化アンチモンが臭素系難燃剤相中に分散されにくくなる傾向にあり、1,200rpmを超えると(C)三酸化アンチモンが凝集し、それを内部に含む(B)臭素系難燃剤の分散相が肥大化する場合があり好ましくない。また、吐出量は10〜2,000kg/hrであることが好ましく、15〜1,800kg/hrがより好ましい。吐出量が10kg/hr未満であると、(C)三酸化アンチモンが凝集し、それを内部に含む(B)臭素系難燃剤の分散相が肥大化する傾向にあり、2,000kg/hrを超えると、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に取り込まれにくい傾向となる等好ましくない。
ダイノズルにおける樹脂組成物のせん断速度は、50〜10,000sec−1であることが好ましく、70〜5,000sec−1であることがより好ましく、100〜1,000sec−1であることがさらに好ましい。せん断速度が10,000sec−1を超えると、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に存在しにくく、逆に50sec−1未満でも、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に存在しにくい傾向がある等好ましくない。かかるせん断速度は、一般的に樹脂組成物の吐出量とダイノズルの断面の形状より決定されるものであり、例えば、ダイノズルの断面が円形の時は、γ=4Q/πrにより算出することができる。ここで、γはせん断速度(sec−1)、Qはダイノズル1本当たりの樹脂組成物の吐出量(cc/sec)、rはダイノズル断面の半径(cm)をそれぞれ表す。
ダイノズルからストランド状に押し出された樹脂組成物は、ペレタイザー等により切断しペレット形状とするが、本発明においては、切断時のストランドの表面温度が好ましくは30〜150℃、より好ましくは35〜135℃、さらに好ましくは40〜110℃、特に好ましくは45〜100℃となるようにストランドを冷却することが好ましい。通常空冷、水冷等の方法により冷却されるが、冷却効率の点で、水冷することが好ましい。かかる水冷にあたっては、水を入れた水槽中にストランドを通して冷却すればよく、水温と冷却時間を調整することにより、所望のストランド表面温度とすることができる。このようにして製造されたペレットの形状は、円柱状の場合は径が好ましくは1〜9mm、より好ましくは2〜8mm、さらに好ましくは3〜6mm、長さが好ましくは1〜11mm、より好ましくは2〜8mm、さらに好ましくは3〜6mmである。
また、本発明においては、上記ダイノズルにおけるせん断速度γ(sec−1)と上記ストランド切断時のストランドの表面温度T(℃)との関係が、
1.5×10<(γ・T)<1.5×10
の関係を満足することにより、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相中に存在しやすく、電気絶縁性、靱性、難燃性が向上する傾向にあり好ましい。(γ・T)の値が1.5×10以下の場合は、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤に取り込まれにくく、また、樹脂組成物の各成分の分散不良により成形品表面が肌荒れ現象を起こしやすく、機械的特性、難燃性、絶縁特性等が安定しない傾向がある。また、逆に1.5×10以上となる場合は、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤に存在しにくくなったり、(C)三酸化アンチモンが凝集し、それを内部に含む(B)臭素系難燃剤の分散相が肥大化し、靱性が低下する場合があるので好ましくない。(γ・T)の下限は3.3×10であることがより好ましく、上限は9.5×10であることがより好ましい。
(γ・T)の値を上記の範囲に調整するためには、上記のせん断速度とストランドの表面温度を調整すればよい。
本発明においては、上記の好ましい条件を単独でも、また複数を組み合わせて適用することにより、本発明で規定するモルフォロジー構造を有するポリエステル樹脂組成物を製造することができるが、中でも、(γ・T)の値が上記式を満たすような製造条件を採用することが効果的である。
このようなポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造方法を採用することにより、上記したモルフォロジー構造を有するポリエステル組成物成形体を安定して製造することが容易となる。しかし、上記したモルフォロジー構造を有するポリエステル組成物成形体を製造する方法は、かかる方法に限られるものではなく、上記した好ましいモルフォロジー構造が得られる限り、他の方法を用いてもよい。
また、上記したモルフォロジー構造を有する成形体を安定して形成しやすくするには、以下の1)〜5)の方法・条件を適用したポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を用いて成形体を製造することも好ましい。
1)(B)臭素系難燃剤として、ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤を含む、特には、ペンタブロモベンジルポリアクリレートを含む難燃剤を使用する。前記したように、ベンゼン環に臭素原子が集中して結合しており、さらに1つのベンゼン環に5つの臭素原子が存在しているので、他の臭素系難燃剤に比べて電子吸引性が強いと考えられる。そのために、活性の高い(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤分散相に取り込まれやすく、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に存在しやすくなる。また、ペンタブロモベンジルポリアクリレートのSP値は26.0であり、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂のSP値23.4よりも大きい。そのために、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相に取り込まれやすくなるとも考えられる。
さらに、上記したポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤の強い電子吸引性のために、(D)硼酸金属塩(硼酸亜鉛)をも吸引し、(D)硼酸金属塩が(B)臭素系難燃剤相に接しやすいくなると考えられる。
(B)臭素系難燃剤としては、より好ましくは(B)臭素系難燃剤中の70質量%以上がポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤であり、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは(B)臭素系難燃剤の全てがポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤である。このようにすることで、(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相中に存在しやすくなり、さらに、(D)硼酸金属塩も(B)臭素系難燃剤相に接しやすくなる。
2)(D)硼酸金属塩として硼酸亜鉛を用いることにより、(B)臭素系難燃剤相により接しやすくなる。
また、(D)硼酸金属塩中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が2,000質量ppm以下であるものを用いることにより、硼酸金属塩が(B)臭素系難燃剤相により接しやすくなる。
(D)硼酸金属塩の平均粒子径が4μm以上であるもさらに好ましい。このような平均粒子径の硼酸金属塩を用いることにより、硼酸金属塩のより多くの部分が(B)臭素系難燃剤相と接しやすくなる。
3)(C)三酸化アンチモンを、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とのマスターバッチとして配合する。これにより、上記した好ましいモルフォロジー構造を安定して形成しやすくなる。
4)(B)臭素系難燃剤中の不純物である塩素化合物の含有量を、通常0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、さらには0.08質量%以下、特には0.03質量%以下とすることが好ましい。このように制御することにより、上記した好ましいモルフォロジー構造を安定して形成しやすくなる。
不純物である塩素化合物は、クロロベンゼン、塩素化スチレン、塩素化ビスフェノール化合物等であり、例えば(B)臭素系難燃剤がポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートの場合はクロロベンゼンであり、クロロベンゼンが上記量以上存在すると、本発明の好ましいモルフォロジー構造を安定して形成しにくくなる。なお、塩素化合物含有量は、270℃×10分間に加熱により発生したガスを、ガスクロマトグラフィー法により分析し、デカン換算の値として定量することができる。
5)ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中の遊離の臭素、塩素、硫黄の量を特定量以下にすることも、好ましいモルフォロジー構造を安定して形成しやすくする上で有効である。遊離の臭素の量は、800質量ppm以下とすることが好ましく、700質量ppm以下がより好ましく、650質量ppm以下がさらに好ましく、480質量ppm以下が特に好ましい。また、含有量を0質量ppmまでに除去することは、経済性を度外視するような精製を必要とするので、その下限量は、通常1質量ppmであり、好ましくは5質量ppmであり、より好ましくは10質量ppmである。
遊離の塩素の量は、500質量ppm以下とすることが好ましく、350質量ppm以下がより好ましく、200質量ppm以下がさらに好ましく、150質量ppm以下が特に好ましい。なお、樹脂組成物中の塩素含有量は、塩素がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在しているかは限定されない。塩素は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気、樹脂の冷却水等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、500質量ppm以下と制御することが好ましい。
また、遊離の硫黄の量は、250質量ppm以下とすることが好ましいく、200質量ppm以下がより好ましく、150質量ppm以下がさらに好ましく、100質量ppm以下が特に好ましい。なお、樹脂組成物中の硫黄含有量は、硫黄がどの様な状態・形態で樹脂組成物中に存在しているかは限定されない。硫黄は、使用する原料、添加剤、触媒、重合雰囲気等、種々の環境より混入するので、それらの混入量の総計を、250質量ppm以下と制御することが好ましい。
なお、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中の遊離臭素、塩素、硫黄の含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法により測定することができる。具体的には、三菱化学アナリテック社製「AQF−100型」の自動試料燃焼装置を用い、アルゴン雰囲気下、270℃、10分の条件で樹脂組成物を加熱し、発生した臭素、塩素、硫黄の量を、日本ダイオネクス社製「ICS−90」を用いて定量することにより求めることができる。
特に、上記したような理由で、上記1)〜3)の方法を採用することが、上記した好ましいモルフォロジーを形成しやすく、それにより、本発明の難燃性、耐トラッキング性、機械的物性といった効果が顕著となると考えられる。
上記した1)〜5)の方法・条件は、これを単独でも、また複数を組み合わせて適用することも好ましく、また前記したポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造条件と組み合わせて適用することでもより可能となる。
[成形体]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形体として用いる。この成形体の形状、模様、色、寸法等に制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
射出成形において、上記した好ましいモルフォロジー構造を有する成形体とするためには、例えば、射出成形機のスクリュー構成、スクリューやシリンダー内壁の加工、ノズル径、金型構造等の成形機条件の選択、可塑化、計量、射出時等の成形条件の調整、成形材料への他成分の添加等、種々の方法が挙げられる。特に、可塑化、計量、射出時の条件として、例えば、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数、射出速度等を調整することが好ましい。例えば、シリンダー温度を調整する場合は、好ましくは230〜280℃、より好ましくは240〜270℃に設定する。背圧を調整する場合は、好ましくは2〜15MPa、より好ましくは4〜10MPaに設定する。スクリュー回転数を調整する場合は、好ましくは20〜300rpm、より好ましくは20〜250rpmに設定する。射出速度を調整する場合は、好ましくは5〜1,000mm/sec、より好ましくは10〜900m/sec、さらに好ましくは20〜800mm/sec、30〜500mm/secに設定することが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、寸法安定性、難燃性および耐トラッキング特性の全てを高いレベル有し、さらに耐金型腐食性、レーザー印字性にも優れ、また樹脂組成物製造時のフィード性が良いので、各種の用途に広く採用することができ、電気機器、電子機器あるいはそれ等の絶縁性部品として特に好適である。
絶縁性部品としては、金属接点、銅版等と組み合わせることにより、リレー、スイッチ、コネクター、ターミナルスイッチ、センサー、アクチュエーター、マイクロスイッチ、マイクロセンサーおよびマイクロアクチュエーター等の有接点電気電子機器部品や電気電子機器の筐体等を好ましく挙げることができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の説明において[部]とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく「質量部」を表す。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
<三酸化アンチモンマスターバッチの製造>
なお、上記(C2)の三酸化アンチモンマスターバッチ(「MB1」)は、以下の方法で製造した。
予め120℃で3時間熱風乾燥した、ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名ノバデュラン(登録商標)5020、固有粘度1.20dl/gと、同ノバデュラン5008、固有粘度0.85dl/gの1:1混合物)30質量部と、三酸化アンチモン(鈴裕化学社製、商品名:AT3−CN)70質量部を、噛み合い型同方向2軸スクリュー式押出機(日本製鋼所社製「TEX44αII」、スクリュー径47mm、L/D=55.2)に300kg/hrにて供給した。
押出機のバレル設定温度を、C1〜C15を260℃、ダイを250℃、スクリュー回転数を230rpmとし、ノズル数10穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)1012sec−1の条件下で溶融混練した。なお、押出した直後のストランド温度は290℃であった。
溶融混練後、ダイノズルから樹脂組成物を押出してストランド状とした後に冷却し、切断して、ポリブチレンテレフタレート樹脂と三酸化アンチモンとが混練された、三酸化アンチモンを70質量%含有するマスターバッチ(以下、「MB1」という。)を得た。
(実施例1〜4、比較例1〜5)
表1に記載の各成分の中、(B1)、(C1)、(D1)または(D2)、(DX1)〜(DX3)、(E)及び(F)成分を、表2、表4に記載の割合(全て質量部)で予めブレンダーでブレンドした(ブレンド物1)。また(A1)、(A2)及び(H)成分についても、表2、表4に記載の割合(全て質量部)で予めブレンダーでブレンドした(ブレンド物2)。
得られたブレンド物1とブレンド物2とを、それぞれ独立した2つ専用のフィーダーから、表2、表4に示される割合(全て質量部)となるようにホッパーへ供給し、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機「TEX30α」)を使用し、(G)ガラス繊維はホッパーから7番目のサイドフィーダーより供給し、押出機のバレル設定温度C1〜C15を270℃、ダイを260℃、吐出80kg/hr、スクリュー回転数280rpm、ノズル数5穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)664sec−1の条件にて溶融混練し、ストランドに押し出した。押出した直後のストランド温度は281℃であった。
押出されたストランドを、温度を40〜80℃の範囲に調整した水槽に導入して冷却した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で110℃まで冷却され(γ・T=7.3×10)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
(実施例5〜10)
表1に記載の各成分の中、(B1)〜(B5)、(D1)、(E)及び(F)成分を表2に記載の割合(全て質量部)で予めブレンダーでブレンドした(ブレンド物1)。また、(A1)、(A2)及び(H)成分についても、表2に記載の割合(全て質量部)で予めブレンダーでブレンドした(ブレンド物2)。得られたブレンド物1、ブレンド物2、(C2)三酸化アンチモンマスターバッチ(MB1)を、それぞれ独立した3つの専用のフィーダーから、表2に示される割合(全て質量部)となるようにホッパーへ供給し、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機「TEX30α」)を使用し、ガラス繊維はホッパーから7番目のサイドフィーダーより供給し、押出機バレル設定温度C1〜C15を270℃、ダイを250℃、吐出80kg/hr、スクリュー回転数280rpm、ノズル数5穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)664sec−1の条件にて溶融混練し、ストランドに押し出した。押出した直後のストランド温度は274℃であった。
押出されたストランドを、温度を40〜80℃の範囲に調整した水槽に導入して冷却した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で95℃まで冷却され(γ・T=6.3×10)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
(実施例11〜18)
表1に記載の各成分の中、(B1)または(B2)、(C1)、(D2)または(D3)、(E)及び(F)成分を表3に記載の割合(全て質量部)で予めブレンダーでブレンドした(ブレンド物1)。また、(A1)、(A2)成分についても、表3に記載の割合(全て質量部)で予めブレンダーでブレンドした(ブレンド物2)。得られたブレンド物1とブレンド物2とを、それぞれ独立した2つの専用のフィーダーから、表3に示される割合(全て質量部)となるようにホッパーへ供給し、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機「TEX30α」)を使用し、ガラス繊維はホッパーから7番目のサイドフィーダーより供給し、バレル設定温度C1〜C15を270℃、ダイを280℃、吐出80kg/hr、スクリュー回転数280rpm、ノズル数5穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)、せん断速度(γ)664sec−1の条件にて溶融混練し、ストランドに押し出した。押出した直後のストランド温度は290℃であった。
押出されたストランドを、温度を40〜80℃の範囲に調整した水槽に導入して冷却した。ストランド表面温度(T)は、赤外線温度計で測定される温度で120℃まで冷却され(γ・T=8.0×10)、ペレタイザーに挿入してカッティングして、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットの特性は、特記したもの以外は、射出成形機(日本製鋼所社製、J−85AD)を用いて、シリンダー温度255℃、金型温度80℃、射出圧力150MPa、射出保圧時間15sec、冷却時間15sec、射出速度65mm/sec、背圧5MPa、スクリュー回転数100rpmの条件で射出成形した以下の試験片について、評価した。なお、成形に際して、樹脂組成物ペレットはその直前まで120℃にて6〜8時間乾燥した。
<評価方法>
評価方法は、以下のとおりである。
・燃焼性(UL94)試験:
厚み0.38mm及び1.5mmの垂直燃焼試験片を射出成形して得られた燃焼試験片を用い、UL94規格に準じ難燃性の評価を行った。1.5mm厚の試験片での評価では、合計の燃焼時間(単位:秒)も測定した。
・シャルピー衝撃強度のばらつき:
ISO試験片(厚さ4.0mm)を射出成形し、試験片から厚さ4.0mmのノッチ付試験片を作製し、10本の試験片に対して、ISO179規格に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定し、その際のシャルピー衝撃強度のばらつきを標準偏差値で評価した。
・比較トラッキング指数試験(CTI)PLC2:
試験片(厚さ3mm、大きさ60mm×60mmの平板)について、国際規格IEC60112に定める試験法によりCTIを決定した。CTIは固体電気絶縁材料の表面に電界が加わった状態で湿潤汚染されたとき、100Vから600Vの間の25V刻みの電圧におけるトラッキングに対する対抗性を示すものであり、数値が高いほど良好であることを意味する。
CTIが、PLC2レベル(250V≦CTI<400V)を満足するものを「○」、満足しないものを「×」と判定した。
・成形収縮率:
縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板をフィルムゲート金型により成形し、流れの直角方向の成形収縮率(TD、単位:%)及び流れ方向の成形収縮率(MD、単位:%)をそれぞれ測定し、TD方向収縮率をTD方向収縮率とMD方向収縮率の和で割った収縮率比[TD/(TD+MD)]を求めた。収縮率比が小さいほど寸法安定性が良好であることを示す。
・フィード性:
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレット製造終了後の押出機ホッパー内壁について、付着物の有無を目視で観察した。ホッパー内壁に原料の粉状物の付着がない場合を「○」、ブレンド物1のフィード性があまり良くなく、ホッパー内壁に粉状物の付着が確認され分級しているおそれがあるものを「△」、ブレンド物1のフィード性が悪く、ホッパー内壁に粉状物の付着が多く確認され分級しているおそれがあるものを「×」として、押出生産性の評価を行った。
・反り量:
得られたペレットを、120℃で6〜8時間乾燥した後、住友重機械工業社製「型式SE−50D」射出成形機を使用し、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、図3に示す直方体状の箱型成形体を成形した。
図3は、反り性の評価のために使用した箱型成形体の斜視図であり、底面を下にした状態を示す。箱型成形体は、横25mm、縦30mm、高さ25mm、肉厚は底面が1mm、その他の側面は0.5mmである。ゲートは長径2.0mm、短径1.5mmの略楕円形の1点ゲートで、図3の手前側の側面の中央のサブマリンゲート(図3中、GATE)である。
成形後の成形品を箱底面が下になるよう置き、図3中の奥側の側面が箱の内側方向に内反りした際の奥側側面の頂部の内反り長さLを測定(単位:mm)した。
この値が小さい程、成形品の内反り量が小さいため寸法精度が良いことを示す。
・レーザー印字性:
評価用試験片としては、100mm×100mm×2mm厚みの平板状成形品を用いた。SUNX社製「レーザーマーカー LP−Z130」を用い、レーザー発振方式はファイバー方式にて、レーザーパワー:100、印字パルス周期:50μs、線幅:0.07mm、塗り潰し間隔:0.035mm、重ね印字回数:1回の条件で、上記平板状成形品に20mm×20mmの正方形を塗りつぶすようにレーザーマーキングを施した。レーザーマーキングに際し、そのスキャンスピードは5,000mm/secにて行った。
レーザー印字性の判定は、レーザー印字処理を施した試験片を目視にて観察し、次の判断基準に基づき◎、○、△、×のランクに分けた。
◎:極めて、鮮明な印字が成されており、良好。
○:鮮明な印字が成されており、容易に認識が可能。
△:印字の認識は可能。
×:全く印字が成されてない、若しくは印字の認識が困難である。
・耐金型腐食性
得られたペレットを、窒素雰囲下で265℃の溶融状態とし、大きさ3×10×10mmの鋼材(SKD11)を溶融状態の樹脂組成物に18時間浸漬させて、鋼材の腐食具合を目視で観察した。
鋼材の腐食がそれほど進行しておらず、鋼材表面に光沢が残っているものを「○」、鋼材の腐食が著しく、光沢が確認されないものを「×」として評価した。
・モルフォロジー観察
前記燃焼性試験の垂直燃焼試験片と同様の成形条件で燃焼試験用試験片(厚さ0.75mm)を成形し、そのコア部(試験片断面の中心部の、樹脂組成物流動方向に平行な断面)から、Leica社製「UC7」を用い、ダイヤモンドナイフで厚さ200nmの超薄切片を切り出した。得られた超薄切片を、四酸化ルテニウムで120分染色後、日立ハイテク社製走査型電子顕微鏡「SU8020」を用い、加速電圧1.5〜5kVの条件で、SEM観察した。なお、各成分の同定のために、必要に応じてEDS分析(堀場製作所社製「EMAX80mm」、10kV、エミッション電流20μA)も行った。
得られたSEM写真とEDS分析結果をもとに、以下の評価を行った。
i)(C)三酸化アンチモンが(B)臭素系難燃剤相中に存在しているか否かを確認した。
(B1)FR1025相中に存在している場合は「B1」、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂マトリックス中に存在している場合は「A」
と記載した。
ii)(D)硼酸金属塩が(B)臭素系難燃剤相に接しているか否かを確認した。
(B)臭素系難燃剤相に接している場合を「○」、
(B)臭素系難燃剤相に接していない場合を「×」
と表に記載した。
以上の評価結果を、以下の表2〜4に示す。
上記表2〜4の結果から明らかなとおり、実施例の樹脂組成物は、寸法安定性、難燃性および耐トラッキング特性の全てを高いレベル有し、さらに耐金型腐食性、レーザー印字性にも優れ、また樹脂組成物製造時のフィード性が良いことが分かる。特に、三酸化アンチモンをマスターバッチとして配合した実施例5〜10は、シャルピー衝撃強度のばらつきが他の実施例よりも小さく、より優れた樹脂組成物であることがわかる。
また、臭素系難燃剤としてポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤を使用した場合は、他の臭素系難燃剤を使用した場合に比べて、1.5mm厚の合計燃焼時間が短く難燃性により優れることがわかる。
さらに、硼酸金属塩として平均粒子径4μm以上のものを用いることにより、1.5mm厚の合計燃焼時間が短く難燃性により優れ、また、レーザー印字性もより優れることがわかる。
一方、表4の比較例においては、上記の全ての点に優れるものではないことが分かる。
硼酸金属塩を含有しない比較例1は難燃性がV−2と悪く、フィード性、耐金属腐食性も悪く、レーザー印字性も劣る。臭素系難燃剤を増量した比較例2は、難燃性はV−0達成可能であるが、硼酸金属塩を含有しないため、耐トラッキング性がPLC2ランクに未達であり、フィード性、耐金属腐食性も悪く、レーザー印字性も劣る。
さらに、硼酸金属塩のかわりに、その他の難燃助剤を配合(比較例3〜5)しても、難燃性V−0、耐トラッキング性PLC2ランクに未達であり、耐金属腐食性が悪く、フィード性、レーザー印字性も劣る結果となった。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、寸法安定性、難燃性および耐トラッキング特性の全てを高いレベル有し、さらに耐金型腐食性、レーザー印字性にも優れ、また樹脂組成物製造時のフィード性が良いので、各種の用途に広く採用することができ、電気機器、電子機器あるいはそれ等の絶縁性部品として特に好適に利用できる。

Claims (12)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)臭素系難燃剤5〜50質量部、(C)三酸化アンチモン3〜15質量部および(D)硼酸金属塩0.3〜4.0質量部を含有し、(C)三酸化アンチモンと(D)硼酸金属塩の質量比(C/D)が2.2〜20の範囲にあることを特徴とするポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  2. (C)三酸化アンチモンがマスターバッチとして配合される請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  3. (D)硼酸金属塩中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が2,000質量ppm以下である請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  4. (D)硼酸金属塩の平均粒子径が4μm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  5. (D)硼酸金属塩が硼酸亜鉛である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  6. さらに、含フッ素樹脂を含有する場合、その含有量が1質量%を超えない請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形体。
  8. 成形体のコア部において、(C)三酸化アンチモンが、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂マトリックス中に分散して存在する(B)臭素系難燃剤相中に存在するモルフォロジーを有する請求項7に記載の成形体。
  9. (D)硼酸金属塩の少なくとも一部が(B)臭素系難燃剤相に接しているモルフォロジーを有する請求項7または8に記載の成形体。
  10. (B)臭素系難燃剤がポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート系難燃剤を含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の成形体。
  11. 成形体が、金属接点・端子を有する電気電子機器部品である請求項7〜10のいずれか1項に記載の成形体。
  12. 成形体が、コネクター用部品、リレー用部品、スイッチ用部品、ブレーカー用部品、電磁開閉器用部品及び端子台用部品からなる群より選ばれるものである請求項7〜11のいずれか1項に記載の成形体。
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