JP2020203963A - 難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ハロゲン系難燃剤と、(C)アンチモン化合物とを含む難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、粒径0.2μm以上2.0μm以下の(C)アンチモン化合物と、(D)熱可塑性樹脂とを溶融混練してマスターバッチを得る工程と、前記マスターバッチを、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ハロゲン系難燃剤と溶融混練する工程とを含む、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(2)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂である、(1)に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(3)(B)ハロゲン系難燃剤が、ハロゲン化エポキシ樹脂である、(1)または(2)に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(4)(C)アンチモン化合物が、三酸化アンチモンである、(1)から(3)のいずれか一項に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(5)(C)アンチモン化合物の粒径が、0.4μm以上1.5μm以下である、(1)から(4)のいずれか一項に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(6)(1)から(5)のいずれか一項に記載の製造方法により得られた難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形品の製造方法。
(7)難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の成形が、射出成形によるものである、(6)に記載の成形品の製造方法。
以下、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)の一例として、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の各成分の詳細を説明する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、少なくともテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)またはそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。本実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上含有する共重合体であってもよい。
(B)ハロゲン系難燃剤としては、特に限定されず、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化ポリカーボネート樹脂、ハロゲン化ポリスチレン樹脂、ハロゲン化ベンジルアクリレート樹脂、ハロゲン化フタルイミド樹脂等を好ましく用いることができる。これらのうち、ハロゲン化エポキシ樹脂であることがより好ましく、臭素化エポキシ樹脂であることが更に好ましい。臭素化エポキシ樹脂の例として、下記式(I)および(II)で表されるものを挙げることができる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、粒径0.2μm以上2.0μm以下の(C)アンチモン化合物を含有する。(C)アンチモン化合物は、三酸化アンチモンや五酸化アンチモンなどの酸化アンチモンであることが好ましく、三酸化アンチモンであることがより好ましい。またその粒径は、0.2μm以上1.8μm以下であることが好ましく、0.2μm以上1.6μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましく、0.4μm以上1.4μm以下であることが特に好ましい。なお、本発明において、(C)アンチモン化合物の粒径は、本発明の製造方法により得られた難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の電子顕微鏡写真から任意の100個の(C)アンチモン化合物を選択し、それぞれの最小の外接円の直径を平均した値である。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、上記の(C)アンチモン化合物を、後述する方法でマスターバッチ化したものを添加するが、そのマスターバッチのベースには、各種の(D)熱可塑性樹脂を用いる。(D)熱可塑性樹脂としては、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良く、例えばポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂などを挙げることができるが、樹脂組成物中における分散性の観点では、(D)熱可塑性樹脂の融点が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の加工温度と同等かそれ以下であることが好ましい。また、(D)熱可塑性樹脂の熱分解温度が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の加工温度と同等かそれ以上であることが好ましい。なお、ここでいう加工温度とは、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得るために、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とマスターバッチを溶融混練する際の樹脂温度を指す。
本発明の組成物には必要に応じて充填剤が使用される。このような充填剤は、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質等の性能に優れた性質を得るためには配合することが好ましく、特に剛性を高める目的で有効である。これは目的に応じて繊維状、粉粒状または板状の充填剤が用いられる。
さらに本発明の組成物には、その目的に応じ、難燃性以外の所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の物質を添加併用することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、滴下防止剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤等いずれも配合することが可能である。特に耐熱性を向上させるための酸化防止剤の添加は効果的である。
としては、特に限定されずマスターバッチの調製方法としては、特に限定されず、例えば、(D)熱可塑性樹脂と(C)アンチモン化合物とを、一軸または二軸の押出機またはその他の溶融混練装置を使用して溶融混練し、ペレットとして調製する方法が挙げられる。その際、押出機またはその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。なお、マスターバッチには(C)アンチモン化合物以外に充填剤や添加剤などの他の成分を添加してもよく、その場合はマスターバッチに添加する全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
熱可塑性樹脂組成物の混練方法としては、特に限定されず、例えば、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)ハロゲン系難燃剤と上記マスターバッチおよび必要に応じ充填剤や添加剤などの他の成分を、一軸または二軸の押出機またはその他の溶融混練装置を使用して溶融混練し、ペレットとして調製する方法が挙げられる。その際、押出機またはその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。なお、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とマスターバッチを溶融混練した上で(B)ハロゲン系難燃剤を溶融混練してもよく、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)ハロゲン系難燃剤を溶融混練した上でマスターバッチを溶融混練してもよい。また、マスターバッチは他の成分とは別に設けた専用のフィード口から供給してもよい。なお、充填剤や添加剤などの他の成分を添加するタイミングも特に限定されず、(B)ハロゲン系難燃剤やマスターバッチと同時に(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と溶融混練してもよいし、(B)ハロゲン系難燃剤と同時に(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と溶融混練した上でマスターバッチと溶融混練してもよいし、マスターバッチと同時に(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と溶融混練した上で(B)ハロゲン系難燃剤と溶融混練してもよいし、先述の通りあらかじめマスターバッチ中に(C)アンチモン化合物とともに添加しておいてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を材料にして、例えば射出成形法により成形して成形品を得ることができる。なお、使用する成形装置は従来公知の一般的な射出成形装置を使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂
・ポリプラスチックス株式会社製、固有粘度0.87dL/g、末端カルボキシル基量20meq/kgのポリブチレンテレフタレート樹脂
(B)ハロゲン系難燃剤
・ICL−IP社製、臭素化エポキシ樹脂、「F3100」、末端封止品
(C)アンチモン化合物
・アンチモン化合物1:粒径0.1μmの三酸化アンチモン
・アンチモン化合物2:粒径0.5μmの三酸化アンチモン
・アンチモン化合物3:粒径0.8μmの三酸化アンチモン
・アンチモン化合物4:粒径1.5μmの三酸化アンチモン
(D)熱可塑性樹脂
・ポリプラスチックス株式会社製、固有粘度0.87dL/g、末端カルボキシル基量20meq/kgのポリブチレンテレフタレート樹脂(「(A)熱可塑性ポリエステル樹脂」に同じ)
(充填剤)
・ガラス繊維:日本電気硝子社製、「ECS03T−187」、平均繊維径13μm、平均長3mm
・タルク:日本タルク社製、「タルク3A」、平均粒径13.8μm
(添加剤)
・ハイドロタルサイト:協和化学工業製、「DHT−4A−2」
・滴下防止剤:旭硝子社製、ポリテトラフルオロエチレン、「フルオンCD097E」
・離型剤:三洋化成工業株式会社製、低分子量ポリエチレン、「サンワックス161−P」
・酸化防止剤:BASFジャパン社製、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、「イルガノックス1010」
(D)熱可塑性樹脂を20質量%とアンチモン化合物1を80質量%用いて、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30C、スクリュー径30mmφ)にてシリンダー温度250℃で溶融混練し、マスターバッチ1を得た。また、(D)熱可塑性樹脂を10質量%とアンチモン化合物2を90質量%、(D)熱可塑性樹脂を20質量%とアンチモン化合物3を80質量%、および(D)熱可塑性樹脂を20質量%とアンチモン化合物4を80質量%、それぞれ用いて、同様にマスターバッチ2、マスターバッチ3、およびマスターバッチ4を得た。なお、(D)熱可塑性樹脂としては、上記(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と同じポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた。
表1に示す各成分を秤量し混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30C、スクリュー径30mmφ)のホッパから投入して、シリンダー温度250℃、吐出量15kg/hで溶融混練して難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。ただし、ガラス繊維はサイドフィード口から供給した。なお、表1中にカッコ書きで記載した「マスターバッチ中の(C)アンチモン化合物の量」および「マスターバッチ中の(D)熱可塑性樹脂(PBT)の量」は、各実施例、比較例で添加したマスターバッチ中の(C)アンチモン化合物と(D)熱可塑性樹脂の内訳をそれぞれ示すものであり、マスターバッチとは別途追加でこれらを添加したという意味ではない。
上記のようにして得た各組成物を用いて、下記特性の評価を行った。
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、ISO3167に準拠した1Aタイプの引張試験片を作製した。得られた試験片について、ISO527−1,2に準拠し、引張強さの測定を行い、140MPa以上のものを〇、140MPa未満のものを×として判定した。結果を表1に示す。
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、シャルピー衝撃試験片を作製し、ISO179/1eAに準拠して、23℃でシャルピー衝撃強さを測定し、7以上のものを〇、7未満のものを×として判定した。結果を表1に示す。
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を用いて、アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片(長さ125mm、幅13mm、厚さ0.4mm)を用いて燃焼性を試験し、UL94に記載の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を用いて、東洋精機製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度260℃、滞留時間9分にて、せん断速度1000sec−1での溶融粘度を測定し、200Pa・s未満のものを〇、200Pa・s以上のものを×として判定した。結果を表1に示す。
Claims (7)
- (A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、
(B)ハロゲン系難燃剤と、
(C)アンチモン化合物とを含む難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
粒径0.2μm以上2.0μm以下の(C)アンチモン化合物と、(D)熱可塑性樹脂とを溶融混練してマスターバッチを得る工程と、前記マスターバッチを、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ハロゲン系難燃剤と溶融混練する工程とを含む、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。 - (A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂である、請求項1に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
- ハロゲン系難燃剤が、ハロゲン化エポキシ樹脂である、請求項1または2に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
- (C)アンチモン化合物が、三酸化アンチモンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
- (C)アンチモン化合物の粒径が、0.4μm以上1.5μm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法により得られた難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形品の製造方法。
- 難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の成形が、射出成形によるものである、請求項6に記載の成形品の製造方法。
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