JP6326332B2 - 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性に優れ、かつ、アルカリ性環境下で優れた耐性(以下、「耐アルカリ性」と略称する。)と優れた耐ヒートショック性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂に代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、加工の容易さ、機械的物性、耐熱性その他物理的、化学的特性に優れているため、自動車用部品、電気電子機器用部品、建築資材部品、その他精密機器用部品等の分野に幅広く使用されている。しかしながら、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂は、アルカリ性環境下において環境応力割れすることが問題となっている。
従来、自動車分野においてコネクター、ディストリビューター部品、イグニッションコイル部品等エンジン周りの部品、各種コントロールユニット、各種センサー、電気電子機器部品としてはコネクター類、スイッチ部品、リレー部品、コイル部品、建築資材部品としてはサニタリー部品、コンクリート埋め込みボルト等の広範な分野において、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂が使用されている。
このような分野、特に自動車用の車載部品向けにおいては、耐湿熱性(耐加水分解性)が要求されていた。この要求に対しては、カルボキシル末端基量の少ないポリブチレンテレフタレート樹脂を用いたり、カルボキシル末端基と特定の化合物とを反応させてカルボキシル末端基をキャップしたりすることにより、耐加水分解性を向上させることができる。
しかし、上記のような耐加水分解性を向上したポリエステル樹脂あるいは樹脂組成物においても、アルカリ溶液に対する長期耐久性が不十分であり、使用環境や使用用途が限られている。例えば、樹脂成形品の用途によっては、融雪剤、トイレ用洗浄剤、浴室用洗浄剤、漂白剤、セメント等の薬剤との接触下で使用される場合がある。特にガラス繊維強化品ではアルカリによる強度低下が著しく、アルカリ性環境下における劣化が問題視されている。ポリブチレンテレフタレート樹脂製の部品にあってはアルカリ性の物質の作用によって、特に薄肉部分や歪みが残っている部位はクラックが発生したり、最終的には破壊したりする恐れがある。
そこで、耐アルカリ性が改善されたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物も検討されている。特許文献1には、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)耐衝撃性付与剤1〜25質量%、(C)シリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物0.1〜15質量%、(D)無機充填材1〜50質量%及び(E)エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びカルボン酸二無水物等の多官能性化合物0.1〜10質量%を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が、耐アルカリ性に優れていることが開示されている。しかし、このような樹脂組成物では、アルカリ環境下でのウエルド部のクラックや割れはある程度改善されるものの、シリコーン系化合物やフッ素系化合物の染み出しに伴う成形性や外観特性、さらには耐アルカリ性が低下する怖れがある。
また、特許文献2には、少なくともポリブチレンテレフタレート系共重合体を含むポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリオレフィン変性ポリシロキサン(B)と、充填材(C)とで構成されたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物が、耐アルカリ性に優れていることが開示されている。実施例において開示されているものは、ポリブチレンテレフタレート系共重合体が50%〜100%であり、さらにポリオレフィン変性ポリシロキサンの融点が85℃であるため耐熱性ならびに成形性がやや劣る等の問題を有している。
さらに、特許文献3及び4には、熱可塑性ポリエステル樹脂(A成分)95〜10質量%、ポリアミド樹脂(B成分)4〜50質量%、及び、α−オレフィンとα,β−不飽和グリシジルエステルとからなるオレフィン系共重合体(C成分)1〜40質量%とからなる樹脂組成物100質量部に対し、強化充填材(D成分)0〜150質量部が配合されてなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物が耐アルカリ性の改善されることが示されている。しかし、まだ耐アルカリ性が不十分であり、また耐ヒートショック性が不十分であった。
最近の、製品の軽量化及び高性能化の流れの中で、樹脂製部品も一層の薄肉化、小型化が図られている。これら樹脂製部品は薄肉化、小型化されても、長期間に亘って十分な特性を発揮することが必要である。このため、薄肉部分や歪みが残っている部位でもクラックが発生しない、耐アルカリ性、耐ヒートショック性に優れるポリエステル樹脂組成物及び成形品が希求されているのが現状である。
国際公開WO00/078867号 特開2006−291100号公報 特開2002−128999号公報 特開2006−206921号公報
本発明者の検討によれば、上記特許文献3及び4に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、耐アルカリ性が不十分であり、また耐ヒートショック性も不十分であることが分かった。特に近年は、耐アルカリ性や耐ヒートショック性へのスペックは非常に高いレベルのものが要求されるようになってきている。例えば、耐アルカリ性試験では、その詳細は後述するが、インサート成形品を10質量%濃度NaOH水溶液に浸漬させた際の、クラック発生までの時間が300時間以上、また、耐ヒートショック試験(−40℃×30分〜130℃×30分のヒートサイクルによるウエルドラインでの割れ発生のサイクル数)では250サイクル以上というような、極めて厳しい基準をクリアすることも求められつつある。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、上記のような高度の耐アルカリ性と耐ヒートショック性を同時に改良した優れた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねてきた結果、熱可塑性ポリエステル樹脂に、ポリアミド樹脂、そしてカルボジイミド化合物を含有することにより上記課題が解決し、耐アルカリ性が高まり、また同時に耐ヒートショック性も大きく改善されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の通りである。
[1](A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、(B)ポリアミド樹脂10〜80質量部及び(C)カルボジイミド化合物0.1〜2質量部を含有することを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[2]さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(D)臭素系難燃剤を10〜35質量部、(E)三酸化アンチモン3〜15質量部を含有する上記[1]に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[3]さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(F)可塑剤を3〜15質量部含有する上記[1]又は[2]に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[4]さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(G)エラストマーを1〜30質量部含有する上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[5]さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(H)エポキシ化合物を1〜10質量部含有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[6](G)エラストマーが、(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体、(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー及び(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[4]又は[5]に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[7](G)エラストマーが、(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体、(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー及び(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーを含むものであり、その含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(G−1)が1〜15質量部、(G−2)が1〜20質量部、(G−3)が1〜10質量部である上記[4]又は[5]に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、耐アルカリ性と耐ヒートショック性の両者が著しく改善され、極めて高度の耐アルカリ性と耐ヒートショック性を達成することができる。また、耐衝撃性にも優れている。
したがって、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、車両用分野(特に、自動車分野)、電気電子分野、建築資材分野等の広範囲の分野に適用が可能になる。特にコネクター、ディストリビューター部品、イグニッションコイル部品、コントロールユニット部品、センサー部品等の車載用部品の成形品として優れた耐アルカリ性、耐ヒートショック性、耐衝撃性を有している。
実施例における耐ヒートショック性評価のために用いた直方体形状の鉄製インサート物の模式図である。 インサート物が支持ピンで支えられた金型キャビティーの断面説明図である。 支持ピン跡に2つのウエルドラインが発生しているインサート成形品の模式図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[発明の概要]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、(B)ポリアミド樹脂10〜80質量部及び(C)カルボジイミド化合物0.1〜2質量部を含有することを特徴とする。
[(A)熱可塑性ポリエステル樹脂]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の主成分である(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1、5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等のエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール等、及びそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
なかでも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものが好ましい。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、その主成分がポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
また、イソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が共重合されているものも好ましい。なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであることが好ましく、成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物の成形体が機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。なお、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基含有量は適宜選択して決定すればよいが、50eq/ton以下であることが好ましく、40eq/ton以下であることがより好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/ton以下とすることにより、本発明における樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しにくくなる。末端カルボキシル基含有量の下限値は特に定めるものではないが、熱可塑性ポリエステル樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、5eq/ton、好ましくは10eq/tonである。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基含有量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定して得られる値をいう。末端カルボキシル基含有量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調節する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
[(B)ポリアミド樹脂]
本発明における(B)ポリアミド樹脂とは、ラクタム類の開環重合体、ジアミノカルボン酸の重縮合によって得られる重合体、アミン類と二塩基酸類又はこれらと同等な化合物との重縮合によって得られる重合体類を意味する。
ラクタム類としては、プロピオラクタム、α−ピロリドン、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム、シクロドデカラクタム等が挙げられ、ジアミノカルボン酸としては、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸等が挙げられる。アミン類としては、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられ、二塩基酸類としてはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸等が挙げられる。
より具体的には、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・6、ポリアミド6・9、ポリアミド6・10、ポリアミド6・11、ポリアミド6・12、ポリアミド6T、ポリアミド6/6・6、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6I/6T、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合物(ポリアミドMXD6)、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンからなる混合ジアミンとアジピン酸との重縮合物(ポリアミドMP6)等が挙げられる。上記ポリアミド樹脂は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。この中では、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の融点と(B)ポリアミド樹脂との融点にあまり差がないものが好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂の場合には、ポリアミド6、ポリアミド6/6・6共重合あるいはポリアミド66、ポリアミドMXD6が好ましく、さらにはポリアミド6やポリアミド6・6等の脂肪族ポリアミドが好ましく、最も好ましくはポリアミド6である。
(B)ポリアミド樹脂は、特定範囲の重合度、すなわち特定範囲の粘度を有するものが好ましい。すなわち、ISO307規格に準拠して、温度23℃、96質量%硫酸中、ポリアミド樹脂濃度1質量%で測定した粘度数が70〜200ml/gのものが好ましい。粘度数を70ml/g以上とすることにより、機械的性質が向上し、逆に200ml/g以下とすることにより、成形性が向上する傾向にあり好ましい。粘度数のより好ましい範囲は90〜150ml/gであり、特に好ましい範囲は、100〜130ml/gである。
(B)ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基含有量は適宜選択して決定すればよいが、好ましくは35μeq/g以上、より好ましくは40μeq/g以上、さらに好ましくは45μeq/g以上、特に好ましくは50μeq/g以上である。上限は、通常140μeq/g、好ましくは130μeq/g、より好ましくは120μeq/gである。また、末端アミノ基含有量は、好ましくは10μeq/g以上、より好ましくは15μeq/g以上、さらに好ましくは20μeq/g以上であり、その上限は、通常100μeq/g、好ましくは80μeq/g、より好ましくは70μeq/gである。このような末端基含有量とすることにより、耐アルカリ性、耐ヒートショック性が向上しやすい傾向となり、好ましい。
(B)ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基含有量は、は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解して0.01N苛性ソーダで滴定することにより測定できる。また、末端アミノ基は、ポリアミド樹脂をフェノールに溶解して0.01N塩酸で滴定することにより測定可能である。末端カルボキシル基含有量、末端アミノ基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調節する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
(B)ポリアミド樹脂は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して、10〜80質量部の範囲で、好ましくは14〜65質量部、より好ましくは18〜60質量部、さらに好ましくは20〜50質量部の範囲で含有する。10質量部未満であると本発明の目的とする耐アルカリ性の改良効果が得られず、80質量部を超えると、(B)ポリアミド樹脂が十分分散しないので、耐熱性の低下を生じたり、且つ機械的性質が低下しやすくなるため好ましくない。
[(C)カルボジイミド化合物]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は(C)カルボジイミド化合物を含有する。
カルボジイミド化合物とは、1分子中にカルボジイミド基(−N=C=N−)を有する化合物である。
(C)カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基に結合する基は特に制限されず、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、又はこれらの有機基が結合した基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1,4−キシリレン基等)等が挙げられる。本発明において好適に使用されるカルボジイミド化合物の例としては、カルボジイミド基に脂肪族基が連結した脂肪族カルボジイミド化合物、カルボジイミド基に脂環族基が連結した脂環族カルボジイミド化合物及びカルボジイミド基に芳香族基又は芳香族基を含む基が連結した芳香族カルボジイミド化合物等が挙げられるが、これらの中で、耐アルカリ性効果、耐ヒートショック性の発現度合いの観点から、芳香族カルボジイミド化合物を用いることがより好ましい。
脂肪族カルボジイミド化合物としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物やポリカルボジイミド化合物を例示できる。
脂環族カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のジカルボジイミドや、ポリ(4,4‘−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等のポリカルボジイミドを例示できる。
芳香族カルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボジイミド、ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ−p−クロロフェニルカルボジイミド、ジ−p−メトキシフェニルカルボジイミド、ジ−3,4−ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ−2,5−クロロフェニルカルボジイミド、ジ−o−クロロフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−クロロフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物、及び、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3−ジイソプロピルフェにレンカルボジイミド)、ポリ(1−メチル−3,5−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。
本発明において、(C)カルボジイミド化合物としては、分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物を用いることがより好ましく、芳香族ポリカルボジイミド化合物を用いることさらに好ましい。2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物は、例えば、分子中にイソシアネート基を少なくとも2個有する多価イソシアネート化合物を、カルボジイミド化触媒の存在下、脱二酸化炭素縮合反応(カルボジイミド化反応)を行わせることによって製造することが出来る。カルボジイミド化反応は、公知の方法により行うことが出来、具体的には、イソシアネートを不活性な溶媒に溶解するか、或いは無溶剤で窒素等の不活性気体の気流下又はバブリング下でフォスフォレンオキシド類に代表される有機リン系化合物等のカルボジイミド化触媒を加え、150〜200℃の温度範囲で加熱及び攪拌することにより、脱二酸化炭素を伴う縮合反応(カルボジイミド化反応)を進めることが出来る。
好ましい多価イソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を2個有する2官能イソシアネートが特に好適であるが、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物をジイソシアネートと併用して用いることも出来る。又、多価イソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート及び芳香族イソシアネートの何れであっても構わない。
多価イソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ジイソシアネートドデカン、ノルボルナンジイソシアネート2,4−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、水添トリレンジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(C)カルボジイミド化合物がポリカルボジイミド化合物である場合、その分子量は2,000g/mol以上であるのが好ましい。かかる分子量のポリカルボジイミド化合物を使用することにより、溶融混練時や成形時のガスや臭気の発生を抑制しやすい傾向にある。分子量より好ましくは3,000〜50,000g/mol、さらに好ましくは8,000〜40,000g/mol、特に好ましくは10,000〜30,000g/molである。
また、(C)カルボジイミド化合物は、カルボジイミド当量が200〜5,000g/molであるものが好ましく、500〜4,000g/molがより好ましく、1,000〜3,000g/molであるものがさらに好ましい。カルボジイミド当量をこのような範囲とすることにより、耐ヒートショック性と耐アルカリ性の両方を、効果的に向上させやすくなる。
(C)カルボジイミド化合物の中では、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)およびポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)などが好ましく挙げられ、特に、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)が好ましく挙げられる。
(C)カルボジイミド化合物の含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜2質量部である。(C)カルボジイミド化合物の含有量が上記範囲にあることで耐アルカリ性、耐ヒートショック性を向上させることができる。含有量が上限を超える場合は、溶融混練時や成形加工時のゲル化物、炭化物の生成が起こりやすく、引張強度や曲げ強度等の機械的性質が低下する。また、湿熱下での急激な強度低下が起こりやすくなる。(C)カルボジイミド化合物の含有量は0.2〜1.5質量部であることが好ましく、0.3〜1質量部であることが特に好ましい。
[(D)臭素系難燃剤]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は難燃剤を含有することも好ましく、難燃剤としては、特に(D)臭素系難燃剤が好ましい。
(D)臭素系難燃剤としては各種のものが使用出来る。この様な臭素系難燃剤としては、芳香族系化合物が挙げられ、具体的には例えば、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート、ポリブロモフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(EBTPI)等の臭素化イミド化合物、臭素化ポリカーボネート等が挙げられる。
中でも熱安定性の良好な点より、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネートが好ましい。
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、又は2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、該臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1〜5個、中でも4〜5個付加したものであることが好ましい。
該臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、又はそれらの混合物等が挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートがあげられる。
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニル、等が挙げられる。
これらは通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下が用いることが好ましい。
また、ビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロムキシレンジアクリレート、テトラブロムキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン等を使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
該ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、高臭素含有量であること、電気絶縁特性(耐トラッキング特性)が高い観点で好ましい。
臭素化エポキシ化合物としては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型ブロモ化エポキシ化合物が挙げられる。
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、質量平均分子量(Mw)で3,000〜100,000であり、中でも分子量が高い方が好ましく、具体的にはMwとして10,000〜80,000、中でも13,000〜78,000、更には15,000〜75,000、特に18,000〜70,000であることが好ましく、この範囲内に於いても分子量の高いものが好ましい。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が3,000〜40,000g/eqであることが好ましく、中でも4,000〜35,000g/eqが好ましく、特に10,000〜30,000g/eqであることが好ましい。
また、臭素化エポキシ化合物系難燃剤として臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5,000以下のオリゴマーを0〜50質量%程度用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤としては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時に(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし、成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1,000〜20,000、中でも2,000〜10,000であることが好ましい。
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、例えば、臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
臭素化ポリスチレンとしては、好ましくは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含有する臭素化ポリスチレンが挙げられる。
Figure 0006326332
(式(1)中、tは1〜5の整数であり、nは繰り返し単位の数である。)
臭素化ポリスチレンとしては、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。
なお、前記一般式(1)において、臭素化ベンゼンが結合したCH基はメチル基で置換されていてもよい。また、臭素化ポリスチレンは、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレンは単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2−ブロモスチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモスチレン)、ポリ(2,6−ジブロモスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモスチレン)、ポリ(3,5−ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5−トリブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモ−α−メチルスチレン)およびポリ(2,4,5−トリブロモ−α−メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)および平均2〜3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
臭素化ポリスチレンは、上記一般式(1)における繰り返し単位の数n(平均重合度)が30〜1,500であることが好ましく、より好ましくは150〜1,000、特に300〜800のものが好適である。平均重合度が30未満ではブルーミングが発生しやすく、一方1,500を超えると、分散不良を生じやすく、機械的性質が低下しやすい。また、臭素化ポリスチレンの質量平均分子量(Mw)としては、5,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜300,000、中でも10,000〜100,000であることがさらに好ましく、10,000〜70,000であることが特に好ましい。
特に、上記したポリスチレンの臭素化物の場合は、質量平均分子量(Mw)は50,000〜70,000であることが好ましく、重合法による臭素化ポリスチレンの場合は、質量平均分子量(Mw)は10,000〜30,000程度であることが好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
臭素化ポリスチレンは、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜70質量%であることがより好ましく、57〜67質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度をこのような範囲とすることにより、難燃性を良好に保つことが容易である。
臭素化イミド化合物としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
Figure 0006326332
(一般式(2)中、Dはアルキレン基、アルキルエーテル基、ジフェニルスルフォン基、ジフェニルケトン基あるいはジフェニルエーテル基を示す。iは1〜4の整数である。)
上記一般式(2)で示される臭素化フタルイミド化合物としては、例えばN,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)エタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)プロパン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ブタン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジエチルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジプロピルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジブチルエーテル、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルスルフォン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルケトン、N,N’−(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
臭素化イミド化合物としては、上記一般式(2)において、Dがアルキレン基であるものが好ましく、特に好ましくは、下記一般式(3)で示される臭素化フタルイミド化合物である。
Figure 0006326332
(一般式(3)中、iは1〜4の整数である。)
中でも、上記式(3)におけるiが4である、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)が好ましい。
臭素化イミド化合物は、臭素濃度が52〜75質量%であることが好ましく、56〜73質量%であることがより好ましく、57〜70質量%であることがさらに好ましい。臭素濃度をこのような範囲とすることにより、レーザーマーキング性及び難燃性を良好に保つことが容易である。
(D)臭素系難燃剤を含有する際の含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、好ましくは10〜35質量部であり、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは32質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、中でも好ましくは27質量部以下である。(D)臭素系難燃剤の含有量が少なすぎると樹脂組成物の難燃性が不十分となりやすく、逆に多すぎても機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生じやすい。
[(E)三酸化アンチモン]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、難燃助剤を含有することも好ましく、(D)臭素系難燃剤を含有する際には、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)およびアンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物を用いることが好ましく、これらの中でも(E)三酸化アンチモンが好ましい。
(E)三酸化アンチモンは、樹脂組成物中の(D)臭素系難燃剤由来の臭素原子と、アンチモン化合物由来のアンチモン原子の質量割合が、両者の合計で3〜25質量%であることが好ましく、4〜22質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。3質量%未満であると難燃性が低下する傾向にあり、25質量%を超えると機械的強度が低下する傾向にある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、難燃性が発現しやすい傾向にあり好ましい。
(E)三酸化アンチモンは、熱可塑性樹脂、好ましくは(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とのマスターバッチとして配合することが好ましい。これにより、(E)三酸化アンチモンが、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂相に存在しやすくなり、溶融混練、成形加工時の熱安定性が良好となり、耐衝撃性の低下が抑えられ、さらに、難燃性、耐衝撃性のばらつきが少なくなる傾向となる。
マスターバッチ中の(E)三酸化アンチモンの含有量は20〜90質量%であることが好ましい。(E)三酸化アンチモンが20質量%未満の場合は、難燃剤マスターバッチ中のアンチモン化合物の割合が少なく、これを配合する(A)熱可塑性ポリエステル樹脂への難燃性向上効果が小さくなりやすい。一方、(E)三酸化アンチモンが90質量%を超える場合は、(E)三酸化アンチモンの分散性が低下しやすく、これを(A)熱可塑性ポリエステル樹脂に配合すると樹脂組成物の難燃性が不安定になり、またマスターバッチ製造時の作業性が低下しやすく、例えば、押出機を使用して製造する際に、ストランドが安定せず、切れやすい等の問題が発生しやすいため好ましくない。
マスターバッチ中の(E)三酸化アンチモンの含有量は、好ましくは20〜85質量%であり、より好ましくは25〜80質量%である。
(E)三酸化アンチモンの含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、好ましくは3〜15質量部であり、より好ましくは5質量部以上、中でも7質量部以上であり、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下、中でも11質量部以下である。上記下限値を下回ると難燃性が低下しやすく、上記上限値を上回ると、結晶化温度が低下し離型性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的物性が低下する。
[(F)可塑剤]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(F)可塑剤を含有することも好ましい。
(F)可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコールブタン酸エステル、ポリエチレングリコールイソブタン酸エステル、ポリエチレングリコールジ(2−エチルブチル酸)エステル、ポリエチレングリコール(2−エチルヘキシル酸)エステル、ポリエチレングリコールデカン酸エステル、アジピン酸ジブトキシエタノール、アジピン酸ジ(ブチルジグリコール)、アジピン酸ジ(ブチルポリグリコール)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシロキシエタノール)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシルジグリコール)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシルポリグリコール)、アジピン酸ジオクトキシエタノール、アジピン酸ジ(オクチルジグリコール)、アジピン酸ジ(オクチルポリグリコール)、エチレングリコール安息香酸エステル、ジエチレングリコールジ安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル、プロピレングリコールジ安息香酸エステル、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステル、トリプロピレングリコールジ安息香酸エステル、1,3−ブタンジオールジ安息香酸エステル、1,4−ブタンジオール安息香酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジ安息香酸エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ安息香酸エステル、1,8−オクテンジオールジ安息香酸エステル、及び多塩基酸と多価アルコールの縮合体を基本構造とし、その両端が一価のアルコール又は一塩基酸で停止されたポリエステル系可塑剤など等が挙げられる。
上記多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものをいずれも使用することができる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化合物、及びそれらの無水化物等が挙げられる。多塩基酸は一種単独で、又は二種以上を併用できる。
上記多価アルコールとしては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、グリセリン等の炭素数2〜18の脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは一種単独で使用してもよく、又は二種以上を併用してもよい。
上記一価のアルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、2−メチルオクタノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等の炭素数8〜18の脂肪族アルコールや、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、1−フェニルエタノール、2−フェノキシエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−ヒドロキシエチルベンジルエーテル等の芳香族アルコール等が挙げられる。一価アルコールは、一種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
上記一塩基酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリル酸等のモノカルボン酸類、ジカルボン酸のモノエステル類、トリカルボン酸のジエステル類などが挙げられ、一塩基酸は、一種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
上記した以外の他の可塑剤としては、脂環式エステル系可塑剤が挙げられる。例えば、シクロヘキサンジカルボン酸エステル類、エポキシ基を有するシクロヘキサンジカルボン酸エステル類、又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物等のシクロヘキサンジカルボン酸無水物類等が挙げられる。
さらに他の可塑剤としては、例えば、エチルベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、イソブチルベンジルフタレート、ヘプチルベンジルフタレート、(2−エチルヘキシル)ベンジルフタレート、n−オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、イソノニルベンジルフタレート、イソデシルベンジルフタレート、ウンデシルベンジルフタレート、トリデシルベンジルフタレート、シクロヘキシルベンジルフタレート、ベンジル−3−(イソブチリルオキシ)−1−イソプロピル−2,2−ジメチルプロピルフタレート、ミリスチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレート等のイソフタル酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルテトラヒドロフタレート等のテトラヒドロフタル酸エステル類、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジブトキシエチルアジペート、ジイソノニルアジペート等のアジピン酸エステル類、ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類、ジ−n−ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類、ジ−n−ブチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエート等のマレイン酸エステル類、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート等のフマル酸エステル類、トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル類、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリチート、テトラ−n−オクチルピロメリテート等のピロメリット酸エステル類、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート等のクエン酸エステル類、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネート等のイタコン酸エステル類、グリセリンモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート等のリシノール酸誘導体、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート等のステアリン酸エステル類、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等のその他脂肪酸エステル類、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルデシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート等のリン酸エステル類が挙げられる。上記他の可塑剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
可塑剤はカルボキシル基や水酸基、アミノ基を含む場合が多いが、カルボジイミド基と反応する可能性があるため、なるべくこのような官能基を含まないものが好ましい。
(F)可塑剤の好ましい含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して、3〜15質量部であり、より好ましくは、4〜12質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。3質量部より少ないと撥水作用による耐アルカリ性向上効果が充分でない場合があり、15質量部を超えると可塑剤がブリードアウトし、成形品外観が低下する場合がある。
[(G)エラストマー]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(G)エラストマーを含有することも好ましい。
(G)エラストマーとしては、各種のものが使用でき、例えば、ポリオルガノシロキサン系ゴム及びアクリル系ゴム成分をコア層に含有するコア/シェル型エラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル−ブタジエンゴム等)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン−メタクリレ−ト共重合体、エチレン−ブチルアクリレ−ト共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレ−ト、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレ−ト)、ブチルアクリレ−ト−2−エチルヘキシルアクリレ−ト共重合体等)、シリコ−ン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレ−トゴムとからなるIPN型複合ゴム等)等が挙げられる。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物において、(G)エラストマーとしては、以下に詳記する、(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体、(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー、(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーが好ましい。
・(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体
(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体は、α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの三元共重合体のみならず、α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルと他の単量体とからなる四元系以上の多元共重合体であってもよい。
(G−1)共重合体におけるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンを例示できるが、特にエチレンが好ましい。
また、不飽和グリシジル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル又は不飽和グリシジルエーテル、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等が好ましく、特に(メタ)アクリル酸グリシジル、すなわちアクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルが好ましい。
また、上記四元系以上の多元共重合体の成分となり得る他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル類、アクリロニトリル、スチレン、一酸化炭素、無水マレイン酸等を例示することができる。
(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体において、各構成単位の好ましい含有量は、(G−1)成分全体の質量を100質量%としたときに、α−オレフィンが50〜94.5質量%、より好ましくは52〜85質量%、さらに好ましくは55〜75質量%であり、不飽和グリシジル化合物が0.5〜20質量%、より好ましくは1〜18質量%、さらに好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%であり、アクリル酸ブチルが5〜49.5質量%、より好ましくは7〜45質量%、さらに好ましくは10〜40質量%であり、特に好ましくは15〜35質量%であり、上記以外のその他の単量体が0〜49.5質量%、より好ましくは0.5〜40質量%、さらに好ましくは1〜35質量%の範囲で共重合されているものが好ましい。
不飽和グリシジル化合物の含有量が少なすぎると、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が損なわれる恐れがあり、一方、その量が多くなりすぎると、樹脂粘度が急激に上昇して成形が困難となったり、また組成物中にゲルが発生する等の問題を起こすことがある。また、アクリル酸ブチルを上記範囲で共重合させたものを使用することにより、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に良好な柔軟性を付与することが容易となる。
(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体は、ランダム共重合体であってもグラフト共重合体であってもよいが、ランダム共重合体を使用するのが好ましい。このようなランダム共重合体は、例えば、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体は、メルトフローレート(JIS K7210−1999に準拠、190℃、2.16kg荷重で測定)が、0.01〜1000g/10min、さらには0.1〜200g/10min、特に1〜70g/10minのものを使用するのが好ましい。
・(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー
(G−2)のコア/シェル型エラストマーは、ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に、芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型のエラストマーである。
(G−2)コア/シェル型エラストマーのゴム層は、少なくともポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有する。
ポリオルガノシロキサン系ゴム成分としては、オルガノシロキサン単量体を重合させて製造されるもので、オルガノシロキサンとしては、3員環以上の環状オルガノシロキサンが用いられ、3〜6員環のものが好ましく用いられる。例えばヘキサメチルトリシクロシロキサン、オクタメチルシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、トリメチルトリフェニルシロキサン、テトラメチルフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が用いられる。
また、ポリオルガノシロキサンゴムの調製に用いられる架橋剤としては、3官能性又は4官能性のもの、即ち、トリアルコキシアルキルあるいはアリ−ルシラン又はテトラアルコキシシランが用いられ、このような架橋剤の具体例としてトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を例示できる。架橋剤としては、テトラアルコキシシランが好ましく、テトラエトキシシランが特に好ましく用いられる。
アクリル系ゴム成分としては、ブチルアクリレートのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルと少量のブチレンジアクリレートのような架橋性モノマーを重合させて得られるものが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、ブチルアクリレートの他に、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等、メタアクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等のエステルが挙げられる。また、架橋性モノマーとしては、ブチレンジアクリレートの他に、ブチレンジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタアクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレートのようなビニル化合物、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタニレート、モノアリルマレート、モノアリルフマレート、トリアリルシアヌレートのようなアリル化合物が挙げられる。
上記ゴム成分は、共役ジエン化合物を含有することも可能であり、例えばブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物の共重合量は、10質量%以下程度の少量であることが好ましい。
コア層は、上記ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分の混合物であってもよく、又これらを共重合及び/又はグラフト重合させた複合系ゴムを用いることができ、共重合及び/又はグラフト重合等の化学結合によりポリオルガノシロキサン系ゴム成分とアクリル系ゴム成分とが一体になった複合ゴム、すなわちシリコーンアクリル複合ゴムであることも好ましい。
ポリオルガノシロキサン系ゴム成分とアクリル系ゴム成分の質量比率は、ポリオルガノシロキサン系ゴム成分/アクリル系ゴム成分で、99/1〜1/99であることが、耐アルカリ性、耐ヒートショック性及び耐衝撃性の向上効果の点から好ましい。アルカリ環境下では、アクリルゴム成分中のエステル基がアルカリにより加水分解を受ける場合があるので、アクリル系ゴム成分が多すぎると、ゴム成分としての機能が低下する。従って、ポリオルガノシロキサン系ゴム成分とアクリル系ゴム成分の質量比率は、95/5〜15/85であることがより好ましく、さらに好ましくは90/10〜30/70である。
(G−2)コア/シェル型エラストマーのシェル層は、少なくとも芳香族ビニル系重合体を含有する。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−ターシャリーブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。中でも、安価で重合における取り扱いが容易な点でスチレンが好ましい。
芳香族ビニル系重合体は、単独重合体でも共重合体であってもよい。
共重合体としては、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステル系単量体及びアクリル酸エステル単量体の中から選ばれた少なくとも1種の単量体を共重合させて得られるものが好ましい。シアン化ビニル単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等、メタクリル酸エステル系単量体としてはメタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸第三ブチル等、アクリル酸エステル単量体としてはメチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト等を好ましく例示できる。
また芳香族ビニル系重合体は、上記以外の他の共重合性単量体も共重合することも可能である。例えば、グリシジル基含有ビニル系単量体等も共重合することができ、その例としては、グリシジルメタクリレ−ト、グリシジルアクリレ−ト、ビニルグリシジルエ−テル、アリルグリシジルエ−テル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ−トのグリシジルエ−テル、ポリアルキレングリコ−ル(メタ)アクリレ−トのグリシジルエ−テル、グリシジルイタコネ−ト等を例示できる。グリシジル基含有ビニル系単量体の共重合量は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下程度の少量であることが特に好ましい。
(G−2)コア/シェル型エラストマーのシェル層としては、上記した中でも、スチレン系単量体にシアン化ビニル単量体を共重合した共重合体が好ましく、スチレン−アクリロニトリル系共重合体が特に好ましい。
(G−2)コア/シェル型エラストマーのコア層とシェル層は、通常グラフト結合によって結合されていることが好ましい。このグラフト共重合化は、必要な場合には、ゴム層の重合時にシェル層と反応するグラフト交差剤を添加し、ゴム層に反応基を与えた後、シェル層を形成させることによって得られる。グラフト交差剤は、ビニル結合を有した化合物であり、アクリル系ゴム成分においては、上述の架橋モノマーを兼用可能であるが、ポリオルガノシロキサン系ゴム成分では、ビニル結合を有したオルガノシロキサンあるいは、チオールを有したオルガノシロキサンが用いられ、好ましくはビニル結合を有したオルガノシロキサンである(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサン、ビニルシロキサンが使用される。
(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサンの中ではメタクリロイルオキシアルキルシロキサンが好ましく、この具体例としてβ−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。
ビニルシロキサンとしてはビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。チオールを有したオルガノシロキサンであるメルカプトシロキサンとしてはγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシエチルシラン等を挙げることができる。
また、(G−2)コア/シェル型エラストマー中のポリオルガノシロキサン系ゴム成分の含有量は、2〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン系ゴム成分の含有量を上記範囲とすることにより、耐アルカリ性、耐衝撃性が良好となる傾向にあり好ましい。
また、(G−2)コア/シェル型エラストマーは、その平均粒子径が50〜400nmであることが好ましい。平均粒子径を上記範囲とすることにより、耐衝撃性、耐アルカリ性、耐ヒートショック性、耐湿熱性、成形性が良好となる傾向にあり好ましい。さらに好ましい平均粒子径の範囲は80〜350nmであり、特に好ましくは100〜300nmである。この範囲で最も安定な耐衝撃性、耐アルカリ性、耐ヒートショック性の発現が期待できる。また、その平均二次粒子径は、600〜3000μmであることが好ましく、700〜2000μmがより好ましく、800〜1700μmがさらに好ましく、900〜1500μmが特に好ましい。このような平均二次粒子径とすることにより、溶融混練時に、フィード配管やホッパーにエラストマーの微粉が残存しにくく、安定的にフィードすることができ好ましい。
なお、(G−2)コア/シェル型エラストマーの平均粒子径とは、樹脂組成物のモルフォロジー観察結果について、エラストマー分散相の200個以上の最大径を測定し、それらを算術平均して求められる値をいう。また、平均二次粒子径とは、(G−2)コア/シェル型エラストマー原料を顕微鏡等で観察し、200個以上の二次粒子について最大径を測定し、それらを算術平均して求められる値をいう。
コア/シェル型エラストマーを製造する方法は、公知であり、例えば特開平5−5055号公報、特開平5−25377号公報、特開2000−290482号公報、特開2001−261945号公報等に開示されている。本発明においても、公知の方法が採用できる。重合プロセスとしては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合あるいは乳化重合のいずれの方法でも重合可能であるが、乳化重合で行うのが最も容易であり、好ましい方法である。
上記したような平均粒子径を有するコア/シェル型エラストマーは、上述したポリオルガノシロキサン系ゴム成分とアクリル系ゴム成分を含有する複合ゴムラテックス存在下で、芳香族ビニル単量体を含む単量体を一段又は多段で乳化グラフト重合することにより得ることができる。
・(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー
(G−3)のコア/シェル型エラストマーは、(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーである。
(G−3)コア/シェル型エラストマーのゴム層は、少なくともポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有していることが必要であり、上記した(G−2)コア/シェル型エラストマーのゴム層のポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分と同様のものが、この(G−3)コア/シェル型エラストマーのゴム層としても用いられる。
(G−3)コア/シェル型エラストマーのシェル層は、少なくともグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有する。
アクリル酸エステル系重合体としては、アクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルの単独重合体または共重合体である。
アクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等、メタアクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等のエステルが挙げられる。これらは単独で又は共重合される。
また、シアン化ビニル化合物または芳香族ビニル化合物等のビニル単量体を共重合させて得られるものも可能である。シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン等を好ましく例示できる。
また、少量の架橋性モノマーを重合させて得られるものも好ましい。架橋性モノマーとしては、ブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタアクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレートのようなビニル化合物、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタニレート、モノアリルマレート、モノアリルフマレート、トリアリルシアヌレートのようなアリル化合物が挙げられる。
そして、(G−3)コア/シェル型エラストマーのシェル層は、グリシジル変性していることが必要である。グリシジル変性はグリシジル基含有ビニル系単量体を共重合またはグラフト共重合して行う。グリシジル基含有ビニル系単量体としては、グリシジルメタクリレ−ト、グリシジルアクリレ−ト、ビニルグリシジルエ−テル、アリルグリシジルエ−テル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ−トのグリシジルエ−テル、ポリアルキレングリコ−ル(メタ)アクリレ−トのグリシジルエ−テル、グリシジルイタコネ−ト等を例示できる。
グリシジル基含有ビニル系単量体の共重合量は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下程度の少量であることが特に好ましい。
(G−3)コア/シェル型エラストマーのコア層とシェル層は、通常グラフト結合によって結合されていることが好ましい。コア/シェル型エラストマーを製造する方法は、前述のとおり公知であり、(G−3)コア/シェル型エラストマーも公知の方法で製造できる。
本発明においては、(G)エラストマーとして、上記した(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体、(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー及び(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーを含むものであることも、耐アルカリ性、耐ヒートショック性の両立の観点から好ましい。この場合、(G)エラストマー中の(G−1)〜(G−3)成分の含有割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
(G)エラストマーの含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、5〜27質量部がより好ましく、10〜25質量部がさらに好ましい。1質量部未満であると耐アルカリ性と耐ヒートショック性の改良効果が得られにくくなり、30質量部を超えると耐熱性の低下や剛性等の機械的特性を阻害する場合があるので好ましくない。
また、(G)エラストマーが、(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体、(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー及び(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーを含有する場合の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(G−1)が1〜15質量部であることが好ましく、2〜10質量部がより好ましく、3〜8質量部がさらに好ましい。(G−2)成分は、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜17質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。(G−3)成分は、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜9質量部、さらに好ましくは3〜8質量部である。
また、(G−1)成分、(G−2)成分、(G−3)成分の含有量は、(G−1)成分と(G−3)成分の含有量の質量比(G−1)/(G−3)が、3.5/1〜1/1であることが、耐アルカリ性と耐ヒートショック性のバランスの点で好ましい。より好ましくは、(G−1)/(G−3)が3/1〜1.2/1である。
また、(G−2)成分と(G−3)成分の含有量の質量比(G−2)/(G−3)が、5/1〜1/1であることが、耐アルカリ性と耐ヒートショック性のバランスの点で好ましい。より好ましくは、(G−2)/(G−3)が4/1〜2/1である。
このような含有割合とすることにより、耐アルカリ性と耐ヒートショック性の両方をバランスよく向上しやすい傾向にある。
[(H)エポキシ化合物]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は(H)エポキシ化合物を含有することが、耐アルカリ性と耐ヒートショック性を、一層向上させることができるので好ましい。
(H)エポキシ化合物としては、一分子中に一個以上のエポキシ基を有するものであればよく、通常はアルコール、フェノール類又はカルボン酸等とエピクロロヒドリンとの反応物であるグリシジル化合物や、オレフィン性二重結合をエポキシ化した化合物を用いればよい。
(H)エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、エポキシ化ブタジエン重合体等が挙げられる。
ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル等が、ビスフェノールF型エポキシ化合物としては、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル等、レゾルシン型エポキシ化合物としてはレゾルシンジグリシジルエーテル等が例示できる。
また、ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を例示できる。
脂環式エポキシ化合物の例としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジルエーテル類の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類が挙げられる。またグリシジルエステル類としては、安息香酸グリシジルエステル、ソルビン酸グリシジルエステル等のモノグリシジルエステル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類等が挙げられる。
エポキシ化ブタジエン重合体としては、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン系共重合体、エポキシ化水素化スチレン−ブタジエン系共重合体等を例示できる。
また(H)エポキシ化合物は、グリシジル基含有化合物を一方の成分とする共重合体であってもよい。例えばα,β−不飽和酸のグリシジルエステルと、α−オレフィン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルからなる群より選ばれる一種または二種以上のモノマーとの共重合体が挙げられる。
また、(H)エポキシ化合物としては、エポキシ当量100〜10000g/eq、質量平均分子量8000以下のエポキシ化合物が好ましい。エポキシ当量が100g/eq未満のものは、エポキシ基の量が多すぎるため樹脂組成物の粘度が高くなり、逆にエポキシ当量が10000g/eqを超えるものは、エポキシ基の量が少なくなるため、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の耐アルカリ性、耐ヒートショック性を向上させる効果が十分に発現しにくい傾向にある。エポキシ当量は、より好ましくは300〜7000g/eqであり、さらに好ましくは500〜6000g/eqである。また、質量平均分子量が8000を超えるものは、熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性が低下し、成形品の機械的強度が低下する傾向にある。質量平均分子量は、より好ましくは7000以下であり、さらに好ましくは6000以下である。
(H)エポキシ化合物としては、ビスフェノールAやノボラックとエピクロロヒドリンとの反応から得られる、ビスフェノールA型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物が好ましい。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物が、ポリアミド樹脂との反応性がよいためポリアミド樹脂が分散しやすく耐アルカリ性が向上しやすい傾向にあり好ましく、また、耐加水分解性の点からも特に好ましい。
(H)エポキシ化合物の含有量は(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し1〜15質量部であり、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。また、13質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、特には8質量部以下が好ましい。(H)エポキシ化合物の含有量が1質量部未満では、ポリアミド樹脂の分散不良による耐アルカリ性の低下や耐加水分解性の低下が発生し、15質量部より多いと架橋化が進行し成形時の流動性が悪くなる。
さらに、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の末端COOH基に対する(H)エポキシ化合物のエポキシ基の当量比(エポキシ基/COOH基)は、0.2〜2.7の範囲にあることが好ましい。当量比が0.2を下回ると耐加水分解性が悪くなりやすく、2.7を上回ると成形性が不安定となりやすい。エポキシ基/COOH基は、より好ましくは0.3以上であり、2.5以下である。
[(I)強化充填材]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(I)強化充填材を含有することも好ましく、その含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、30〜100質量部が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、また90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
本発明において、強化充填材とは、樹脂成分に含有させて強度及び剛性を向上させるものをいい、繊維状、板状、粒状、無定形等いずれの形態ものであってもよい。
(I)強化充填材の形態が繊維状である場合、無機質、有機質のいずれであってもよい。例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維、ワラストナイト等の無機繊維、フッ素樹脂繊維、アラミド繊維等の有機繊維が含まれる。(I)強化充填材が繊維状の場合、好ましいのは無機質の繊維であり、その中でも特に好ましいのはガラス繊維である。(I)強化充填材は1種でも2種類の混合物であってもよい。
(I)強化充填材の形態が繊維状である場合、その平均繊維径や平均繊維長並びに断面形状は特に制限されないが、平均繊維径は例えば1〜100μmの範囲で選ぶのが好ましく、平均繊維長は例えば0.1〜20mmの範囲で選ぶのが好ましい。平均繊維径はさらに好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μm程度である。また平均繊維長は、好ましくは0.12〜10mm程度である。また、繊維断面が長円形、楕円形、繭形等の扁平形状である場合は、扁平率(長径/短径の比)が1.4〜10が好ましく、2〜6がより好ましく、2.5〜5がさらに好ましい。このような異形断面のガラス繊維を用いることにより、成形品の反り、収縮率の異方性等の寸法安定性が改善されやすいので好ましい。
上記した繊維状強化充填材以外に、板状、粒状又は無定形の他の強化充填材を含有することもできる。板状無機充填材は、異方性及びソリを低減させる機能を発揮するものであり、ガラスフレーク、タルク、マイカ、雲母、カオリン、金属箔等が挙げられる。板状無機充填材の中で好ましいのは、ガラスフレークである。
粒状又は無定形の他の無機充填材としては、セラミックビーズ、アスベスト、クレー、ゼオライト、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
なお、(I)強化充填材と樹脂成分との界面の密着性を向上させるために、(I)強化充填材の表面を集束剤等の表面処理剤によって処理するのが好ましい。表面処理剤としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂や、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物が挙げられる。
本発明においては、表面処理のために、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂や、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂が好ましい。中でも、ノボラック型エポキシ樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂を併用することが好ましく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂を併用することが、耐アルカリ性、耐加水分解性及び機械的特性の点から好ましい。
官能性化合物としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシランカップリング剤が好ましく、中でも、アミノシラン系化合物が好ましい。
アミノシラン系化合物としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく、中でも、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
本発明においては、所謂集束剤としてノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂とを用い、加えてカップリング剤としてアミノシラン系化合物で表面処理された強化充填材を用いることが、耐アルカリ性及び耐加水分解性の点から、特に好ましい。表面処理剤をこのような構成とすることにより、アミノシラン系化合物の無機官能基は(I)強化充填材表面と、アミノシランの有機官能基はエポキシ樹脂のグリシジル基とそれぞれ反応性に富み、また、エポキシ樹脂のグリシジル基は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂や(B)ポリアミド樹脂とそれぞれ適度に反応することにより、(I)強化充填材とエポキシ樹脂との界面密着力が向上し、また、(B)ポリアミド樹脂の分散性も向上しやすくなる。この結果、本発明の樹脂組成物の耐アルカリ性、耐加水分解性、機械的特性が向上しやすい傾向になると考えられる。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、帯電防止剤、潤滑剤及び撥水剤等を表面処理剤中に含めることもでき、これらその他の成分を含める場合は、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
(I)強化充填材は、従来公知の方法により表面処理することができ、例えば、上記表面処理剤によって予め表面処理してもよく、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製する際に、未処理の(I)強化充填材とは別に表面処理剤を添加して表面処理してもよい。
(I)強化充填材に対する表面処理剤の付着量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜2質量%がさらに好ましい。0.01質量%以上とすることにより、機械的強度がより効果的に改善される傾向にあり、5質量%以下とすることにより、必要十分な効果が得られ、また、樹脂組成物の製造が容易になる傾向となり好ましい。
[(J)離型剤]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(J)離型剤を含有することが好ましく、その含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜3質量部の範囲である。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、耐アルカリ性が良好な点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましく、特に、ポリオレフィン系化合物が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、飽和又は不飽和の脂肪族1価又は2価のカルボン酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられる。中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸とアルコールで構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。
脂肪族カルボン酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。また、脂肪族カルボン酸は、脂環式のカルボン酸であってもよい。
アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪酸エステル系化合物の具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ぺンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート、ステアリルステアレート、エチレングリコールモンタン酸エステル等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、ポリエステル樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
(J)離型剤の含有量は、好ましくは(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜3質量部であるが、0.2〜2.5質量部であることがより好ましい。0.1質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、3質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形体表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、更に好ましくは0.5〜2質量部である。
[(K)安定剤]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(K)安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性や色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
(K)安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
(K)安定剤の含有量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、好ましくは0.001〜2質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、2質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.01〜1.5質量部であり、更に好ましくは、0.1〜1質量部である。
[その他成分]
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、従来から知られている各種樹脂添加剤を含有することもできる。各種樹脂添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、滑剤、染顔料等の着色剤、触媒失活剤、帯電防止剤、発泡剤、結晶核剤、結晶化促進剤等が挙げられる。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を含有することができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種でも2種類以上であってもよい。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造する方法は、特定の方法に限定されるものではないが、溶融・混練法によるのが好ましい。溶融・混練方法は、熱可塑性樹脂について通常採用されている方法によることができる。
溶融・混練方法としては、例えば、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)ポリアミド樹脂及び(C)カルボジイミド化合物、さらに必要に応じて配合するその他成分をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、タンブラー等により均一に混合した後、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー、ラボプラストミル(ブラベンダー)等で溶融・混練する方法が挙げられる。要すれば強化充填材を混錬押出機のサイドフィーダーより供給することにより、強化充填材の折損を抑制し、分散させることが可能になり好ましい。溶融・混練する際の温度と混練時間は、樹脂成分を構成する成分の種類、成分の割合、溶融・混練機の種類等により選ぶことができるが、溶融・混練する際の温度は200〜300℃の範囲が好ましい。300℃を超えると、樹脂成分の熱劣化が問題となり、成形品の物性が低下したり、外観が悪化したりすることがある。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物から、目的の成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について従来から採用されている成形法、すなわち射出成形法、インサート成形法、中空成形法、押出成形法、圧縮成形法等によることができる。製造できる成形品としては、例えば、各種保存容器、電気電子部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、建築資材部品、その他精密機器用部品、自動車機構部品、サニタリー部品等に適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両中空部品(各種タンク、インテークマニホールド部品等)、モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品等に好適に用いることができる。中でも、自動車エンジン周りの車載部品用成形品、例えば、各種センサー、コネクター、ディストリビューター部品、イグニッションコイル部品並びにそのケースや筺体等の車載部品用の樹脂材料として好適である。
特に、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の成形した成形品は、耐アルカリ性試験では、インサート成形品を10質量%NaOH水溶液浸漬させた際のクラック発生までの時間が500時間以上、より好ましくは550時間以上、さらに好ましくは600時間以上、また、耐ヒートショック試験(−40℃×30分〜130℃×30分のヒートサイクルによるウエルドラインでの割れ発生のサイクル数)では250サイクル以上、より好ましくは300時間以上、さらに好ましくは350時間以上というような、極めて高い耐アルカリ性と耐ヒートショック性を達成することができるので、特に車載用の部品に要求される特性に対して優れた特性を有する。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載例に限定して解釈されるものではない。
実施例及び比較例で使用した原料成分は、下記の表1のとおりである。
Figure 0006326332
〔実施例1〜12及び比較例1〜3〕
<熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造>
上記表1に記載のガラス繊維以外の各成分を、下記表2に示される割合(全て質量部)にて、ブレンドし、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機TEX30α)を使用して、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、バレル温度270℃にて溶融混練し、ストランドに押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
[測定評価方法]
実施例及び比較例における各種の物性・性能の測定評価は以下の方法により実施した。
(a)シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m):
得られたペレットを120℃で6時間乾燥後、日精樹脂工業社製射出成形機(型式NEX80−9E)を使用して、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、シャルピー衝撃強度測定用ISO試験片を成形し、ISO179に準拠して、ノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。
(b)耐ヒートショック試験:
得られたペレットを120℃で6時間乾燥後、日精樹脂工業社製TH60 R5VSE縦型射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で、図1に示す直方体形状の鉄(SUS)のインサート物1(縦16mm×横33mm×厚さ3mm)を、図2に示すように、支持ピン2にて金型キャビティー4内に仕込んでインサートした(インサート鉄片3)。インサート成形により、図3に示すインサート成形品(縦18mm×横35mm×厚さ5mm)を作製した。このインサート成形品の樹脂部の肉厚は1mmである。インサート成形品には支持ピン跡5に2つのウエルドライン6が発生する。このインサート成形品を用いて入江製作所社製DTS−30型ヒートショック試験を行った。
ヒートショック試験の条件は、−40℃で30分→130℃で30分のサイクルで、ヒートショック試験にかけ、5個の成形品の計10ヶ所のウエルドラインにおける割れが発生するサイクル数の平均値で表示した。
(c)耐アルカリ性評価:
上記(b)耐ヒートショック性試験と同様の方法で得られたインサート成形品を、室温で、10質量%濃度のNaOH水溶液に浸漬した。浸漬後、定期的に目視でクラック発生の有無を確認し、クラックが発生するまでの時間(hr)を測定した。この時間が長いほど、耐アルカリ性に優れている。
以上の評価結果を以下の表2に示す。
Figure 0006326332
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、極めて高度の耐アルカリ性と耐ヒートショック性を達成することができ、また、耐衝撃性にも優れるので、自動車分野、特に自動車電装部品、センサー部品、エンジン周りの自動車用部品製造用に極めて有用な材料である。さらに電気電子部品、建築資材部品、サニタリー部品、機械部品等の広範囲な分野に有用である。
1.インサート鉄片
2.支持ピン
3.金型内にインサートされたインサート鉄片
4.キャビティー
5.支持ピン跡
6.ウエルドライン

Claims (7)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)脂肪族ポリアミド樹脂10〜80質量部及び(C)カルボジイミド化合物0.1〜0.8質量部を含有することを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  2. さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(D)臭素系難燃剤を10〜35質量部、(E)三酸化アンチモン3〜15質量部を含有する請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  3. さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(F)可塑剤を3〜15質量部含有する請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  4. さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(G)エラストマーを1〜30質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  5. さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(H)エポキシ化合物を1〜10質量部含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  6. (G)エラストマーが、(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体、(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー及び(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項4又は5に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  7. (G)エラストマーが、(G−1)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物とアクリル酸ブチルの共重合体、(G−2)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上に芳香族ビニル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマー及び(G−3)ポリオルガノシロキサン系ゴム成分及びアクリル系ゴム成分を含有するコア層上にグリシジル変性したアクリル酸エステル系重合体を含有するコア/シェル型エラストマーを含むものであり、その含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(G−1)が1〜15質量部、(G−2)が1〜20質量部、(G−3)が1〜10質量部である請求項4又は5の記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
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