JP5660939B2 - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、電気電子用部品、自動車用部品、シール材、パッキン、制振部材、チューブ等に用いられる熱可塑性エラストマー組成物及び該熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体に関する。
パワートランジスタ、ドライバーIC等の電気・電子部品等の発熱体について、CPU等の高密度化による発熱量の増大により、これら発熱体に対する放熱対策が重要視されている。そこで、発熱体から冷却部品への熱伝導効率を上げるために、放熱用部材がスペーサーとして使用されている。
放熱用部材をスペーサーとして使用する場合、発熱体と冷却部との密着性が重要であるため、柔軟性を有しているシリコンゴムが多く使用されている。しかし、シリコンゴムは低分子シロキサンを発生させるため電気回路の接点不良等を引き起こすという問題がある。そのためシロキサン対策が進められているが、効果は十分ではない。また、架橋ゴム組成物であるため、熱可塑性がなく、リサイクルが不可能であるという問題もある。従って、耐熱性や柔軟性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が求められている(特許文献1、2参照)。
一般的に樹脂材料は熱伝導性が低いことから、熱伝導性付与のため熱伝導性フィラーの添加が行われている。熱伝導性フィラーとしては、導電系と絶縁系があり、導電系ではタングステン、銅、ニッケル等の金属系フィラーやグラファイトが知られている(特許文献3参照)。絶縁系としては、酸化マグネシウム、アルミナ等の金属酸化物やシリカが知られている(特許文献4参照)。
さらに近年、自動車分野においてもコンピューター制御を行うECUやヘッドライト等の部品に対し熱対策が重要視されてきている。同部品の使用環境温度が120℃以上となることがあるため、耐熱性の良好なシリコンシート等が主に使用されている。
特開2000−239504号公報 特開2005−213499号公報 特許第4119840号公報 特開2001−106865号公報
特許文献1に記載されているようなポリエステル系エラストマーは、結晶性を有するハードセグメントの融点が高いため使用温度が高いが、柔軟性に劣る。
特許文献2に記載されているゴム組成物は、分散相を形成する架橋エラストマーが低硬度成分であっても、連続相を形成する反応性オリゴマーの重合物が高融点、高硬度の成分であるため、硬度については連続相の寄与が大きく、柔軟性が不足するものとなりやすい。また、柔軟性改善のために架橋エラストマーの割合を大きくすると溶融粘度が高くなるため成形性も不足しやすい。
特許文献3に記載されている高密度複合材料では、充填材としてタングステン粉末を使用しているが、タングステンは遷移金属であるため、電気伝導性が高い。電気・電子機器用部材では電気絶縁性が要求されるため、タングステン等の金属系充填材は使用できない。
特許文献4に記載されている熱伝導性樹脂組成物では、熱伝導性フィラーとして酸化マグネシウムを使用しているが、酸化マグネシウムは潮解性を有しており、高温、高湿度下に置いておいた場合、吸水し、電気絶縁性の低下、及び放熱用部材の劣化を引き起こすという問題がある。
本発明の課題は、高い融点を有する熱可塑性エラストマーを含み、耐熱性、柔軟性及び熱伝導性に優れ、さらに耐湿性及び射出成形性に優れ、シロキサンを含まない熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法、及び該熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体を提供することにある。
本発明は、
〔1〕 (メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとを、60/40〜90/10の重量比((メタ)アクリルエラストマー/環状ポリエステルオリゴマー)で含み、さらにポリエステル重合触媒を含む原料を、120〜300℃の温度で加熱混合して得られる、融点が200〜300℃の熱可塑性エラストマー(ただし、(メタ)アクリルエラストマーと反応する硬化剤は実質的に含んでいない)と、該熱可塑性エラストマー100体積部に対して40〜400体積部の熱伝導性フィラーとを含有してなる熱可塑性エラストマー組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体
に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、シロキサンを含んでおらず、高い融点を有する熱可塑性エラストマーを含み、耐熱性、柔軟性及び熱伝導性に優れ、さらに耐湿性及び射出成形性に優れるという効果を奏するものである。
図1は、実施例の熱可塑性エラストマーBを成形して得られたシートサンプルの断面の電子顕微鏡写真(10000倍)である。 図2は、実施例の熱可塑性エラストマーBを成形して得られたシートサンプルの断面の電子顕微鏡写真(48000倍)である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマーと熱伝導性フィラーとを含有するものであり、該熱可塑性エラストマーは、(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとを、特定の重量比で、かつ特定の温度で加熱混合して得られるものであり、耐熱性、柔軟性及び熱伝導性に優れ、さらに耐湿性及び射出成形性に優れたものである。
熱可塑性エラストマーの融点は、耐熱性及び成形性の観点から、200〜300℃であり、好ましくは220〜280℃である。融点が存在しない、即ち熱可塑性でない場合はもちろん、融点が300℃を超えると得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形性が悪くなり、熱可塑性が損なわれる。また、融点が200℃未満では、得られる熱可塑性エラストマー組成物の高耐熱性を要求される用途での使用が制限される。
熱可塑性エラストマーのデュロメータA硬さは、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性の観点から、好ましくは20〜90、より好ましくは25〜80、さらに好ましくは30〜70である。
(メタ)アクリルエラストマーは、1種又は2種以上の(メタ)アクリルビニルモノマー、及び必要に応じてその他共重合可能なビニルモノマーを構成成分とし、重合反応で高分子量化することにより得られる。
(メタ)アクリルビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。その他共重合可能なビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、無水マレイン酸等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルと示される場合、メタクリレート化合物及びアクリレート化合物の両者を意味する。
(メタ)アクリルビニルモノマーの量は、構成成分中、20モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。
その他共重合可能なビニルモノマーの好適例としては、スチレン、α−メチルスチレン及びエチレンが挙げられる。
(メタ)アクリルエラストマーを得るためのモノマーの重合方法として、例えば、ラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングラジカル重合法等が挙げられる。また、重合の形態として、例えば、溶液重合法、エマルジョン重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられる。
(メタ)アクリルエラストマーは、熱可塑性エラストマーに柔軟性を与える観点から、ガラス転移温度が、好ましくは0℃以下、より好ましくは-90〜-5℃であり、さらに好ましくは-80〜-10℃である。
代表的な(メタ)アクリルエラストマーの例としては、例えば、1個のポリアクリル酸n−ブチルを主体とするソフトセグメントの両側に各1個のポリメタクリル酸メチルを主体とするハードセグメントを備えるブロック共重合体が挙げられる。なかでもトリブロック共重合体が好ましい。また、ハードセグメントはポリスチレンであってもよい。(メタ)アクリルエラストマーがソフトセグメント及びハードセグメントを備える場合、ソフトセグメントのガラス転移温度は、0℃以下が好ましく、-90〜-5℃がより好ましく、-80〜-10℃がさらに好ましい。
市販されている(メタ)アクリルエラストマーの例としては、株式会社クラレ製のLAポリマー、株式会社カネカ製のNABSTAR(登録商標)、アルケマ株式会社製のNanostrength(登録商標)等が挙げられる。
環状ポリエステルオリゴマーは、芳香族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位からなるエステル単位を2〜10個、好ましくは2〜8個を有する環状の分子構造を有するポリエステル化合物であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等が挙げられ、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましい。
本発明に用いられ得る環状ポリエステルオリゴマーの市販品としては、スズ系ポリエステル重合触媒含有環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー「CBT-160」(サイクリックス(株)製、テトラメチレングリコール単位とテレフタル酸単位とからなるエステル単位2〜5個が環状に結合したポリエステルオリゴマーの混合物、スズ系ポリエステル重合触媒含有量:スズとして1000ppm)、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー「CBT-100」(サイクリックス(株)製、テトラメチレングリコール単位とテレフタル酸単位とからなるエステル単位2〜5個が環状に結合したポリエステルオリゴマーの混合物)等が挙げられる。
加熱混合に供する(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとの重量比((メタ)アクリルエラストマー/環状ポリエステルオリゴマー)は、60/40〜90/10であり、好ましくは65/35〜85/15、より好ましくは70/30〜80/20である。この重量比が60/40未満であると、即ち、環状ポリエステルオリゴマーが多すぎると、(メタ)アクリルエラストマーとポリエステルとの過度な反応による高分子量物が生成(架橋に至る場合もある)するため、得られるエラストマー前駆物(熱可塑性エラストマー類似物)の熱可塑性が損なわれ(熱硬化性、非熱可塑性となり)、成形性が悪化する。重量比が90/10を超えると、即ち、環状ポリエステルオリゴマーが少なすぎると、ポリエステル濃度が低いために得られる熱可塑性エラストマーの融点が低くなり、耐熱性が低下する。
加熱混合に供する原料は、ポリエステル重合触媒を含む。即ち、(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとの加熱混合は、環状ポリエステルオリゴマーの重合反応を促進するためのポリエステル重合触媒の存在下で行われる。かかる触媒としては、例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、ブチル錫、オクチル錫、スタノキサン等の錫系触媒、チタンアルコキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミテート)、チタンラクテートなどのチタンキレート、チタンアシレート等のチタン系触媒、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリプトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)などのジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレート等のジルコニウム系触媒等が挙げられる。
ポリエステル重合触媒の使用量は、環状ポリエステルオリゴマー100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.03〜8重量部がより好ましく、0.05〜6重量部がさらに好ましい。
熱可塑性エラストマーは、エステル重合反応抑制剤を含有していることが好ましい。エステル重合反応抑制剤は、環状ポリエステルオリゴマーの重合反応の停止作用を有しており、エステル重合反応抑制剤を用いて加熱混合時の反応が制御されていることが好ましい。そのため、過剰な反応(架橋反応)を抑制し、得られる熱可塑性エラストマーの熱可塑性及び熱可塑性エラストマー組成物の熱可塑性を維持する観点から、エステル重合反応抑制剤は、熱可塑性エラストマーの製造過程において、環状ポリエステルオリゴマーの重合反応が十分に進行した時点で、系内に添加することが好ましい。後述する熱伝導性フィラーと同時に添加するのも好ましい方法である。かかる観点から、エステル重合反応抑制剤は、環状ポリエステルオリゴマーの重合反応率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上となった後、エステル重合反応抑制剤を系内に添加することが望ましい。
また、エステル重合反応抑制剤は、熱可塑性エラストマー組成物を使用(加熱成形)する際の加熱状態での可使時間を長くする効果も発揮する。すなわち、エステル重合反応抑制剤が添加された熱可塑性エラストマー組成物は、比較的長い時間加熱されても熱可塑性を失わないため、使用条件の自由度がより大きい。
エステル重合反応抑制剤としては、トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリ-2-エチルへキシルホスファイト、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ10-ホスファフェナント-10-オキシド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファナントレン、O−シクロヘキシルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリオクタデシルホスファイト等のホスファイト系化合物、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、4,4’-イソブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル-ジトリデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト(ペンタエリスリトール骨格構造を有するホスファイト)等のポリホスファイト系化合物、トリメチルリン酸エステル、トリエチルリン酸エステル、ジブチルリン酸エステル、トリブチルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、トリオクチルリン酸エステル等のリン酸エステル系化合物、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
エステル重合反応抑制剤の配合量は、環状ポリエステルオリゴマー100重量部に対して、環状ポリエステルオリゴマーの重合反応の停止作用を発現し、かつ過度な高分子量化又は架橋結合の形成による熱可塑性の低下を防止する観点から、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜7重量部がより好ましい。
エステル重合反応抑制剤以外の重合反応抑制剤であっても、同様な効果を奏する重合反応抑制剤であれば使用することができ、エステル重合反応抑制剤と同様な効果を奏するエステル重合反応抑制剤以外の重合反応抑制剤を含有する熱可塑性エラストマーも好ましいものである。該重合反応抑制剤を選定する視点としては、エステル重合反応又は交換反応を停止又は抑制させる機能を有すること、あるいは、エステル重合反応又は交換反応の触媒の作用を失活又は低減させる機能を有することが挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマーは、組成物の硬度や強度を調整する観点から、環状ポリエステルオリゴマー以外の芳香族ポリエステルを含有していることが好ましい。芳香族ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。
芳香族ポリエステルは、加熱混合の前から原料に添加されていても、加熱混合の途中や加熱混合終了後に原料に添加されていてもよい。
芳香族ポリエステルの融点は、組成物の耐熱性(組成物の融点が高いこと)及び組成物の成形性のバランスを良好とするため、150〜280℃が好ましく、170〜250℃がより好ましい。
環状ポリエステルオリゴマー以外の芳香族ポリエステルの含有量は、(メタ)アクリルエラストマー及び環状ポリエステルオリゴマーの合計量100重量部に対して、5〜250重量部が好ましく、10〜200重量部がより好ましく、15〜150重量部がさらに好ましい。
(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとの加熱混合においては、主に以下の反応(1)〜(3)が生じるものと推定される。
(1) 環状ポリエステルオリゴマー同士の開環重合反応
(2) (メタ)アクリルエラストマーのエステル基の部分に、環状ポリエステルオリゴマーが反応してグラフトを形成する反応
(3) (メタ)アクリルエラストマーのエステル基の部分に、環状ポリエステルオリゴマー同士の開環重合体(反応(1))が結合してグラフトを形成する反応
従って、加熱混合には、環状ポリエステルオリゴマーが十分に溶融する温度を要する。加熱温度は、120〜300℃であり、好ましくは150〜290℃、より好ましくは170〜280℃である。加熱温度が120℃未満であると、環状ポリエステルオリゴマーが溶融しないため、ポリエステルの重合反応が十分に進行せず、得られる熱可塑性エラストマー及び熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性が向上しない。また、過剰な加熱混合が行われるとグラフト形成に止まらずに過度な高分子量化又は架橋構造の形成が生じるため、得られる組成物が熱可塑性を失う。加熱温度が300℃を超えると、(メタ)アクリルエラストマーが熱分解し、得られる熱可塑性エラストマー及び熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が低下する。
また、加熱混合は、環状ポリエステルオリゴマーの重合反応が十分に進行するまで行うことが好ましい。かかる観点から、加熱混合において、環状ポリエステルオリゴマーは、重合反応率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上となるように反応させることが好ましい。適切な加熱混合時間は加熱温度に依存する。適切な加熱混合時間は、得られる熱可塑性エラストマーの融点が200〜300℃となるように調整することが好ましい。その結果として、得られる熱可塑性エラストマー組成物の融点も概ね200〜300℃となる。所定温度における加熱混合時間が短すぎると得られる組成物は融点が低くなって耐熱性が不足し、長すぎると得られる組成物が過度な高分子量化又は架橋(融点が高すぎるか又は存在しない状態)に至り、熱可塑性を失うとともに柔軟性が不足する。
エステル重合反応抑制剤や芳香族ポリエステル等の添加剤を、重合反応の終盤や重合反応終了後に添加した場合は、組成物を均一とする観点から、添加後、適度(例えば10分間程度)な加熱混合を継続することが好ましい。
加熱混合に用いられる加熱混合装置は、加熱状態を維持できる槽を有した混合装置であれば任意の装置を用いることができる。例えば、ニーダー、押出機、加熱ジャケットを有する重合缶等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーの原料には、本発明の目的を損なわない範囲で任意の樹脂材料、添加剤等が加えられていてもよい。
樹脂材料として、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
添加剤としては、脂肪酸金属塩や脂肪酸エステル等の滑剤;フェノール系化合物、アミン系化合物や硫黄系化合物等の熱安定剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート化合物やヒンダードフェノール系化合物等の光安定剤;エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド化合物やオキサゾリン化合物等の加水分解防止剤;フタル酸エステル系化合物、ポリエステル化合物、(メタ)アクリルオリゴマー、プロセスオイル等の可塑剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤;ニトロ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド等の有機系発泡剤;カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維等の充填剤;テトラブロモフェノール、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃剤;シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤や酸変性ポリオレフィン樹脂等の相溶化剤;そのほか顔料や染料等が挙げられる。
かくして得られる本発明の熱可塑性エラストマーは、連続相と分散相とからなる相分離構造を有していることが好ましい。連続相は(メタ)アクリルエラストマーに由来する成分を含み、分散相は環状ポリエステルオリゴマーに由来する成分を含む。本発明の熱可塑性エラストマーは、分散相が連続相中に微細に分散しており、透過型電子顕微鏡により観察される熱可塑性エラストマー中の分散相の最大径は、1μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。なお、分散相の径は、真円状の場合は直径を、楕円状の場合は長径とする。
連続相を形成する(メタ)アクリルエラストマーは低硬度成分であるため、熱可塑性エラストマーは柔軟性及び成形性に優れたものになる。分散相を形成する環状ポリエステルオリゴマー由来の重合体は高融点の成分であるため、熱可塑性エラストマーに優れた耐熱性を付与する。環状ポリエステルオリゴマーの一部は(メタ)アクリルエラストマーとも反応してグラフトを形成するため、組成物の耐熱性向上が効果的になされるものと推察される。
なお、本発明における熱可塑性エラストマーは、できるだけ、(メタ)アクリルエラストマーの架橋をさけるという観点からは、(メタ)アクリルエラストマーと反応する硬化剤、例えば、イオウ、イオウ供与体、ペルオキシド、フェノール系硬化剤、ジアミン、ビスマレイミド等の硬化剤は実質的に含んでいないことが好ましく、全く含まないことがさらに好ましい。ここで、「実質的に」とは、多少含まれていたとしても硬化剤の作用が発揮される程度には含まれていないことを意味する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマーに加えて、特定量の熱伝導性フィラーを含有するものである。これにより、熱伝導率を高めるだけでなく、離型性が向上する。
熱伝導性フィラーとしては、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類や、これらの2種以上からなる金属合金類、グラファイト、カーボン等の炭素系材料等の導電系熱伝導性フィラー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、ダイヤモンド等の絶縁性炭素系材料、石英、石英ガラス等のシリカ粉類等の絶縁系熱伝導性フィラー等が挙げられる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、絶縁層を構成する部材として用いる場合は、熱可塑性エラストマー組成物の体積抵抗率の低下を防止する観点から、絶縁系熱伝導性フィラーが好ましい。また、導電部材として用いる場合は、熱伝導性及び導電性を有する観点から、導電系熱伝導性フィラーが好ましい。
熱伝導性フィラーは、靱性・硬度(熱膨張係数)の観点から、無機酸化物が好ましい。無機酸化物としては、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等が挙げられる。
無機酸化物は、熱可塑性エラストマー組成物の耐湿性及び熱伝導性フィラーの分散性の観点から、有機物又は無機物により表面被覆されたものが好ましい。
本発明のエラストマー組成物に配合する熱伝導性フィラーとしては、有機系カップリング剤で表面被覆された水酸化アルミニウム及び/又は1600℃以上で死焼することによって不活性化させたマグネシアクリンカーを無機物及び/又は有機物で表面被覆した酸化マグネシウムが好ましい。前記有機系カップリング剤からなる被覆層は水酸化アルミニウム粉体表面から剥落しにくく、また前記無機物及び/又は有機物からなる被覆層もまた酸化マグネシウム粉末表面から剥落しにくく、耐久性のある耐水被覆層となる。
前記水酸化アルミニウムとしては、ソーダ成分(Na2O)含有量がなるべく少ないもの(例えば含有量が0.4重量%未満のもの)が望ましい。ソーダ成分の含有量が少ない水酸化アルミニウムは分解温度が高く、吸湿性が小さく、かつ絶縁性が高くなる。前記水酸化アルミニウムを被覆するために使用される有機カップリング剤としては、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラ(2-エチルヘキシル)、チタン酸テトラステアリル等のチタン酸エステルや、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のSi(OR)3部分とビニル基、アミノ基、エポキシ基等の有機官能基との二つの基を有するケイ素化合物(シランカップリング剤)等が例示される。前記カップリング剤は前記有機官能基を一分子中に2個以上含んだものであってもよく、また前記カップリング剤は2種以上混合使用されていてもよい。
前記不活性マグネシアクリンカーは例えば下記の方法で製造することができる。
海水、苦汁等マグネシウム含有原料にカセイソーダ等のアルカリ物質を投入して水酸化マグネシウムスラリーを調製する。
前記マグネシウムスラリーをろ過し、例えば120℃×10時間の条件で乾燥する。
乾燥物(水酸化マグネシウム)を600〜1000℃で仮焼して軽焼マグネシアを得る。仮焼における焼成温度は、得られる酸化マグネシウムの活性の大幅な低下防止の観点から、1200℃以下が好ましい。
前記軽焼マグネシアをロータリーキルン等によって好ましくは1600℃以上、より好ましくは1800〜2100℃で死焼してマグネシアクリンカーを得る。死焼における焼成温度は、酸化マグネシウムが不活性化し、即ち酸や水蒸気との反応性がなくなり、かつ大結晶化する観点から、1600℃が好ましい。前記酸化マグネシウムを1600℃以上で焼成して表面不活性のマグネシアクリンカーを得ることを死焼という。ここにマグネシアクリンカーとは前記死焼によってマグネシア成分が溶融して塊状になったものをいう。
前記のように、死焼によって不活性化、大結晶化したマグネシアクリンカーは、優れた耐湿性と熱伝導性を有する。
前記マグネシアクリンカーの表面被覆に使用される無機物としては、例えばアルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物等が例示され、前記無機物は2種以上が混合使用されていてもよい。前記無機物には例えば、酸化物、窒化物、ホウ化物等のセラミック系化合物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の塩、水酸化物等がある。
前記マグネシアクリンカーの表面被覆に使用される有機物としては、前記水酸化アルミニウム被覆に使用した有機カップリング剤、シランカップリング材、有機合成樹脂等が例示される。前記有機物は2種以上が混合使用されていてもよい。
前記マグネシアクリンカーは前記無機物及び/又は有機物の表面被覆によって耐湿性、分散性が向上する。
本発明において使用される熱伝導性フィラーの吸湿試験による吸水率は、熱可塑性エラストマーの劣化を防止する観点から、1.5重量%未満であることが望ましい。
前記吸水率は下記の耐湿試験によって測定される。
熱伝導性フィラー10gをシャーレに入れ、90℃×90%RHの条件下の恒温槽内に静置、48時間後の重量変化を電子天秤によって測定し、下記の式で重量変化率(吸水率)を算出する。
重量変化率(重量%)=試験後の熱伝導性フィラーの重量/試験前の熱伝導性フィラーの重量×100
熱伝導性フィラーの含有量は、熱可塑性エラストマー100体積部に対して、熱伝導性の観点から、40体積部以上であり、ゴム弾性を維持する観点から、400体積部以下である。これらの観点から、熱伝導性フィラーの含有量は、熱可塑性エラストマー100体積部に対して、40〜400体積部であり、好ましくは80〜350体積部、より好ましくは100〜200体積部である。なお、熱伝導性フィラーの体積部は、真比重から算出することができる。
熱可塑性エラストマーと熱伝導性フィラーとの混合には、加熱状態を維持できる槽を有した混合装置であれば任意の装置を用いることができる。例えば、ニーダー、押出機、加熱ジャケットを有する混合機が挙げられる。
混合温度は、混合操作が可能な温度であればよく、例えば、200〜300℃の範囲で適宜調整することが好ましい。
生産性の観点からは、(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとの加熱混合の工程に引き続いて、該加熱混合に使用された混合装置中で熱伝導性フィラーを混合することが好ましい。
好ましい熱可塑性エラストマー組成物の製造工程の一例として、複数の原料投入口を備える押出機を使用する方法が挙げられる。押出機の上流側にある第一の原料投入口から(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーが供給され、これらの原料は加熱混合されながら、押出機の下流側へ送られる。押出機の下流側にある第二の原料投入口から熱伝導性フィラーが供給されて、上流から送られてくる(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとの加熱混合物と混合される。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で前記と同様の樹脂材料、添加剤等が加えられていてもよい。熱伝導性フィラーを除いた熱可塑性エラストマー組成物中の(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーの総含有量は、25重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、75重量%以上がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の融点は、成形性の観点から、200〜300℃が好ましく、220〜280℃がより好ましい。融点が200〜300℃の熱可塑性エラストマーと熱伝導性フィラーとを所定の割合で混合して得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物の融点は、結果として熱可塑性エラストマーの融点とあまり大差のないものとなる。
また、熱可塑性エラストマー組成物のデュロメータA硬さは、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性の観点から、好ましくは30〜99、より好ましくは40〜98、さらに好ましくは50〜97である。
熱可塑性エラストマー組成物の体積抵抗率は、熱可塑性エラストマー組成物を絶縁層を構成する部材として用いる場合は、108Ω・cm以上が好ましく、1010Ω・cm以上がより好ましい。
熱可塑性エラストマー組成物の体積抵抗率は、熱可塑性エラストマー組成物を導電部材として用いる場合は、105Ω・cm以下が好ましく、103Ω・cm以下がより好ましい。
また、熱可塑性エラストマー組成物の耐湿試験前後の体積抵抗率の比(耐湿試験後の体積抵抗率/耐湿試験前の体積抵抗率)は、水分による変形、劣化等の品質変化防止の観点から、0.1〜10であることが好ましく、0.25〜4がより好ましく、0.5〜2がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、成形体が得られる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られた成形体の用途は、特に限定されるものではなく一般的なスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーやポリエステル系エラストマー等が用いられる分野に用いることができるが、熱伝導性、耐熱性等に優れた本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、電気・電子機器に搭載される発熱体の冷却に使用される放熱用部材等にも好適に用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置は、成形材料を溶融混合できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーの製造例1〔エラストマーA、E、F〜I〕
表1に示す(メタ)アクリルエラストマー、環状ポリエステルオリゴマー、及びポリエステル重合触媒(エラストマーFのみ)を、240℃に加熱したニーダー(ブラベンダー(株)製のプラストグラフEC 50型ミキサー)に投入し、60r/minのブレード回転数で20分間混合した。得られた熱可塑性エラストマーを取り出した。
熱可塑性エラストマーの製造例2〔エラストマーB〕
表1に示す重量比で(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーを使用し、ニーダーによる混合時間を20分間から30分間に変更した以外は、エラストマーAと同様にして、熱可塑性エラストマーを得た。
熱可塑性エラストマーの製造例3〔エラストマーC、D、J〕
表1に示す(メタ)アクリルエラストマー及び環状ポリエステルオリゴマーを、240℃に加熱したニーダー(ブラベンダー(株)製のプラストグラフEC 50型ミキサー)に投入し、60r/minのブレード回転数で20分間混合した。混合後、エステル重合反応抑制剤(エラストマーC、Dのみ)、及び芳香族ポリエステル(エラストマーD、Jのみ)を添加して同じ条件(温度、回転数)で10分間混合した後、得られた熱可塑性エラストマーを取り出した。
熱可塑性エラストマーの製造例4〔エラストマーK〕
(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーの加熱温度を240℃から100℃に変更した以外は、エラストマーAと同様にして、熱可塑性エラストマーを得た。
なお、(メタ)アクリルエラストマーのガラス転移温度及び芳香族ポリエステルの融点は以下の方法により測定した。
〔(メタ)アクリルエラストマーのガラス転移温度〕
動的粘弾性測定装置(ティーエーインスツルメント(株)製のARES-RDS)を使用し、-80〜50℃の温度範囲、5℃/分の昇温速度、周波数10Hzの条件でtanδ(損失正接)のピーク温度を求め、ガラス転移温度とする。試験片としては、厚さ2mm、幅12.5mm、長さ30mmのものを使用する。
〔芳香族ポリエステルの融点〕
動的粘弾性測定装置(ティーエーインスツルメント(株)製のARES-RDS)を使用し、25〜310℃の温度範囲、5℃/分の昇温速度、周波数10Hzの条件で試験片を加熱し、試験片の溶融のために測定不能になった(貯蔵弾性率が104Pa以下になった)温度を融点とする。試験片としては、厚さ2mm、幅12.5mm、長さ30mmのものを使用する。
得られた熱可塑性エラストマーにおける環状ポリエステルオリゴマーの重合反応率を下記の方法により測定した。結果を表1に示す。
〔環状ポリエステルオリゴマーの重合反応率〕
示差走査熱量計(島津製作所(株)製のDSC-60)を用い、以下の2回の昇温過程での示差走査熱量を測定し、1回目測定と2回目測定の環状ポリエステルオリゴマーの開環重合体に由来する(この場合は200〜230℃の温度領域における)溶融熱量の比較を行う。
重合反応率(%)=(1回目測定の溶融熱量)/(2回目測定の溶融熱量)×100
1回目の測定は、40℃から280℃へ20℃/minの温度条件で行い、次いで-20℃/minで40℃まで冷却後、引き続き2回目の測定を1回目と同条件で行う。
熱可塑性エラストマーを230℃に加熱した熱プレス機(東邦(株)製の50t熱プレス機)にて、2mm厚×10cm×10cmの型枠を用いて5分間プレス成形した。その後、5分間冷却プレスを施し、2mm厚のシートサンプルを取り出した。
熱可塑性エラストマーBを成形して得られたシートサンプルの断面を電子顕微鏡写真を用いて以下の条件で撮影した。熱可塑性エラストマーBのシートサンプルの写真を図1(10000倍)、図2(48000倍)に示す。
<撮影条件>
装置:透過型電子顕微鏡(JEM-1200EX、日本電子社製)
加速電圧:80kV
試料調整:RuO4染色−凍結超薄切片法
写真倍率:10000倍、48000倍
検鏡部位:成形品シート中央部の厚み中央付近断面
上記撮影において、ベンゼン環はRuO4染色されるため、ベンゼン環を有する成分を多く含む相は黒色を呈し、ベンゼン環を有する成分をほとんど含まない相は白色を呈する。即ち、黒色を呈する分散相は、エラストマーBにおいては環状ポリエステルオリゴマー又はその反応物に由来する成分を多く含有する相であり、分散相の最大径は1μm以下であることが明らかである。
シートサンプルを使用して得られた熱可塑性エラストマーのデュロメータA硬さ及び融点を下記の方法により測定した。結果を表1に示す。
〔デュロメータA硬さ〕
JIS K6253に記載の方法に従い測定する。
〔融点〕
芳香族ポリエステルの融点と同じ方法により測定する。
エラストマーAとエラストマーCの結果から、エステル重合反応抑制剤の効果について考察する。
エラストマーA及びエラストマーCについて、(メタ)アクリル酸エラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとを240℃で20分間加熱混合して反応させる工程(工程A)は同じ条件であった。
エラストマーAでは、工程Aの後、直ちに反応器(ニーダー)から生成物が取り出され加熱混合が終了されて、熱可塑性エラストマーが得られた。得られた熱可塑性エラストマーにおける環状ポリエステルオリゴマーの重合反応率は91.2%であった。
エラストマーCでは、工程Aの後、エステル重合反応抑制剤が添加されて、240℃で10分間加熱混合する工程(工程B)の処理が行われた。工程Bの後、直ちに反応器(ニーダー)から生成物が取り出され加熱混合が終了されて、熱可塑性エラストマーが得られた。得られた熱可塑性エラストマーにおける環状ポリエステルオリゴマーの重合反応率は89.4%であった。
エラストマーCにおいては、240℃での加熱混合時間がエラストマーAよりも10分間長いにもかかわらず、重合反応率はほとんど同程度であったことから、エステル重合反応抑制剤が環状ポリエステルオリゴマーの反応を効果的に抑制していることが推察される。
なお、エラストマーAで得られた熱可塑性エラストマーにおける環状ポリエステルオリゴマーの重合反応率が、エラストマーCで得られた熱可塑性エラストマーよりもわずかに大きく(+1.8%)観測されたのは実験誤差と思われる。
実施例1〜11及び比較例1〜7
表2、3に示す熱可塑性エラストマーと熱伝導性フィラーとを240℃に加熱したニーダー(ブラベンダー(株)製のプラストグラフEC 50型ミキサー)に投入し、60r/minのブレード回転数で10分混合した。得られた熱可塑性エラストマー組成物を取り出した。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、熱可塑性エラストマーと同じ条件でデュロメータA硬さと融点を測定した結果を表2、3に示す。
さらに、実施例と比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の熱伝導率、スクリュー磨耗性及び耐湿性を下記の方法により、測定又は評価した。結果を表2、3に示す。
〔熱伝導率〕
熱可塑性エラストマー組成物をφ15mm、厚さ1.0mmの円盤に成形し、比熱と比重を測定し、下記式から、熱伝導率を算出する。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
熱拡散率は、ASTM E 1461に準拠した方法により測定した値であり、比熱は、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7123に準拠した方法により測定した値であり、比重は、JIS K 7112に準拠した水中置換法により測定した値である。
放熱効果の観点から、熱伝導率は、1.0W/m・K以上が好ましい。
〔耐湿性〕
(1) 射出成形機にて下記条件にてプレート(80.0mm×80.0mm×1.0mm)を作製する。
<射出成形条件>
プレス機:40トン電動油圧成型機
加熱温度:上型195℃、下型200℃
加熱時間:2min
プレス圧:5MPa
冷却時間:2min
(2) プレートを80℃×85RH%の恒温恒湿槽内に静置し、500時間後の体積抵抗率を測定し、静置前後での変形の有無を確認する。
〔離型性〕
熱可塑性エラストマー組成物の製造において、ニーダーから混合物を排出する際の混合物の離型性を、以下の評価基準に従って評価する。
<評価基準>
○:べたつきなく離型しやすい
△:若干べたつき離型しにくい
×:べたつきが激しく離型しない
以上の結果より、熱伝導性フィラーを配合した実施例1〜11の熱可塑性エラストマー組成物は、適度なデュロメータA硬さと高い融点を有し、熱伝導性、耐湿性、及び離型性のいずれにも優れていることが明らかである。熱可塑性エラストマーに環状ポリエステルオリゴマーを使用せず、(メタ)アクリルエラストマーのみを使用した比較例1及び(メタ)アクリルエラストマーの量が多すぎる比較例2は、融点が低く、耐熱性に欠けており、(メタ)アクリルエラストマーが少なすぎる比較例3は、融点を測定することができず、非熱可塑性である。熱可塑性エラストマーにおいて、環状ポリエステルオリゴマーの代わりに環状ポリエステルオリゴマーが開環重合した構造を有する芳香族ポリエステルを使用した比較例4は、融点が低く、耐熱性に欠ける。また、熱伝導性フィラーの含有量が少ない比較例5は、熱伝導性と離型性が不十分であり、熱伝導性フィラーの含有量が多い比較例6では、熱可塑性エラストマー組成物をシート成形することができない。熱可塑性エラストマーの製造時の加熱温度が低い比較例7では、融点が低く、離型性が不十分である。
実施例12
実施例2で得られた熱可塑性エラストマー組成物を下記の条件で射出成形し、長さ125mm、幅125mm、厚さ2mmのプレート状成形体を製造した。
<射出成形条件>
プレス機:40トン電動油圧成型機
加熱温度:上型195℃、下型200℃
加熱時間:2min
プレス圧:5MPa
冷却時間:2min
得られたプレート状成形体について、デュロメータA硬さ及び融点を前記と同様にして測定した。測定結果は下記のとおりであり、良好な柔軟性と融点を維持していた。
・デュロメータA硬さ:83
・融点:238℃
実施例13
230℃に設定された熱プレス機を使用して、実施例1及び実施例3で得られた熱可塑性エラストマー組成物からなる成形試験片を製造した。成形試験片は、操作手順は、熱可塑性エラストマーのデュロメータA硬さ及び融点の測定に用いたシートサンプルと同様にして作製した。得られた成形試験片を240℃で所定時間加熱した後の融点を測定した。
実施例1の試験片は、240℃加熱3分後の融点は275℃であり、240℃加熱10分後の融点は観測されなかった(310℃以上または非熱可塑性であった)。
実施例3の試験片は、240℃加熱3分後の融点は232℃であり、240℃加熱10分後の融点は234℃であり、240℃加熱20分後の融点は233℃であった。
以上の結果から、熱可塑性エラストマーがエステル重合反応抑制剤を含まない実施例1の組成物よりも、エステル重合反応抑制剤が添加された実施例3の組成物は、加熱溶融状態において長時間安定であり、加熱溶融して成形体を製造する条件の許容範囲がより広いものとなることがわかる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、電気電子用部品、自動車用部品、シール材、パッキン、制振部材、チューブ等に用いることができる。

Claims (15)

  1. (メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーとを、60/40〜90/10の重量比((メタ)アクリルエラストマー/環状ポリエステルオリゴマー)で含み、さらにポリエステル重合触媒を含む原料を、120〜300℃の温度で加熱混合して得られる、融点が200〜300℃の熱可塑性エラストマー(ただし、(メタ)アクリルエラストマーと反応する硬化剤は実質的に含んでいない)と、該熱可塑性エラストマー100体積部に対して40〜400体積部の熱伝導性フィラーとを含有してなる熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 熱可塑性エラストマー組成物の耐湿試験前後の体積抵抗率の比(耐湿試験後の体積抵抗率/耐湿試験前の体積抵抗率)が0.1〜10であり、前記耐湿試験が、射出成形したプレート(80.0mm×80.0mm×1.0mm)を、80℃、85RH%の恒温恒湿槽内に500時間静置する試験である、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上である、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 体積抵抗率が1.0×105Ω・cm以下である、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 熱伝導性フィラーが無機酸化物である、請求項1〜4いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 無機酸化物が有機物又は無機物により表面被覆されてなる、請求項5記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 熱可塑性エラストマー組成物のデュロメータA硬さが30〜99である、請求項1〜6いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. (メタ)アクリルエラストマーのガラス転移温度が0℃以下である、請求項1〜7いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. 環状ポリエステルオリゴマーが、芳香族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位からなるエステル単位を2〜10個有する、請求項1〜8いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  10. 熱可塑性エラストマーが、環状ポリエステルオリゴマー100重量部に対して、さらにエステル重合反応抑制剤0.1〜10重量部を含有してなる、請求項1〜9いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  11. 熱可塑性エラストマーが、(メタ)アクリルエラストマーと環状ポリエステルオリゴマーの合計量100重量部に対して、さらに環状ポリエステルオリゴマー以外の芳香族ポリエステル5〜250重量部を含有してなる、請求項1〜10いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  12. 熱可塑性エラストマーが、(メタ)アクリルエラストマーに由来する成分を含む連続相と、環状ポリエステルオリゴマーに由来する成分を含む分散相とからなる相分離構造を有する、請求項1〜11いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  13. 熱可塑性エラストマーが、連続相と分散相とからなる相分離構造を有し、透過型電子顕微鏡により観察される該熱可塑性エラストマー中の分散相の最大径が1μm以下であることを特徴とする、請求項1〜12いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  14. ポリエステル重合触媒の含有量が、原料中、環状ポリエステルオリゴマー100重量部に対して0.01〜10重量部である、請求項1〜13いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  15. 請求項1〜14いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体。
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