JP2015004049A - ポリ乳酸系樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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成明 石井
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Kazue Ueda
一恵 上田
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Abstract

【課題】ポリ乳酸樹脂を用いる樹脂組成物でありながら、耐熱性、透明性及び長期使用時の耐加水分解性と耐久性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物の提供。
【解決手段】D体含有量が2.0モル%以下か、又は98.0モル%以上であるポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)、酸化スズ(C)を含有してなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の質量比が20/80〜80/20であり、酸化スズ(C)を、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.005〜10質量部含有してなることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。更に、耐衝性改良剤(G)を、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)との合計100質量部に対して、0.5〜10質量部含有してなるポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、D体含有量が特定の範囲を満足するポリ乳酸樹脂と(メタ)アクリル系樹脂を主成分とし、かつ酸化スズを含有するポリ乳酸系樹脂組成物および該樹脂組成物からなる成形体に関するものである。
近年、環境負荷低減の観点から、生分解性や植物由来という特長を有する脂肪族ポリエステルが注目されている。脂肪族ポリエステルの中でもポリ乳酸樹脂は機械的特性が優れていることに加え、デンプンやトウモロコシを原料としており大量生産可能であるため、コストが低く特に注目されている。さらに、発泡剤により発泡させたポリ乳酸系樹脂発泡体は、その軽量性、緩衝性、消音性、断熱性などを活かして、従来の石油原料由来の発泡成形体と同様に緩衝材、包装材、消音材、建材などにも使用できる。
しかし、ポリ乳酸樹脂は、長期使用時の耐加水分解性及び耐久性が低いという欠点がある。特に高温高湿度下においてはこの傾向が非常に顕著である。ポリ乳酸樹脂の加水分解反応は、分子鎖末端のカルボキシル基を触媒として進行し、特に高温高湿度下ではそれが加速度的に進行する。そのため、ポリ乳酸樹脂単体で作製した成形体は、長期間使用すると、加水分解による劣化や強度低下、分子量低下などが生じ、実用上の使用に耐えられないという問題があった。
また、ポリ乳酸樹脂は、他の脂肪族ポリエステルと比較して融点(Tm)が高いという長所を有しているが、一方で、ガラス転移温度(Tg)が低いため、Tg以上の温度域において耐熱性が不足する傾向にある。
このような問題を解決する方法として、高いTgを有する(メタ)アクリル系樹脂等をポリ乳酸樹脂にブレンドすることが考えられており、たとえば、特許文献1〜2には、ポリ乳酸樹脂に対してアクリル系樹脂をブレンドした樹脂組成物が開示されている。
特許文献1には、ポリ乳酸樹脂と特定の分子量を有するポリメチルメタクリレート樹脂からなる樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物は両樹脂の相溶性が高まることにより、示差走査熱量測定において、ポリ乳酸樹脂のTgよりも高いTgが1つ観測されており、耐熱性は向上している。しかしながら、実質的には末端封鎖剤が含まれておらず、耐加水分解性に劣るものであり、この樹脂組成物から得られる成形体は長期間使用することが不可能なものであった。
また、特許文献2においては、ポリ乳酸樹脂、メタクリル系樹脂および反応性化合物を配合してなる樹脂組成物が記載されており、反応性化合物として、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、オキサゾリン基およびアミノ基などの官能基を含有する化合物を配合することにより、透明性、耐熱性、流動性および耐加水分解性に優れる樹脂組成物が得られることが記載されている。これらの反応性化合物は末端封鎖剤として効果があると記載されているが、得られる樹脂組成物の耐加水分解性としては、60℃、95%RH の条件にて500時間程度のものであり、実用的には不十分なレベルのものであった。
特開2005−171204号公報 特開2008−013639号公報
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、ポリ乳酸樹脂を用いる樹脂組成物でありながら、耐熱性、透明性及び長期使用時の耐加水分解性と耐久性(以下、湿熱耐久性と称することがある)に優れたポリ乳酸系樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。 すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)D体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であるポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)、酸化スズ(C)を含有してなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の質量比が20/80〜80/20であり、酸化スズ(C)を、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.005〜10質量部含有してなることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)さらに、耐衝撃性改良剤(G)を含有し、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)との合計100質量部に対して、耐衝撃性改良剤(G)を0.5〜10質量部含有している(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(3)ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が0.1〜0.6モル%であるか、または99.4〜99.9モル%である(1)又は(2)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含有しているため、耐熱性と透明性に優れている。
そして、D体含有量が特定範囲のポリ乳酸樹脂(A)を用いているため、立体規則性が向上することで結晶性能が向上し、耐熱性、成形性が格段に向上した樹脂組成物とすることができる。さらに、本発明の樹脂組成物は、酸化スズ(C)を含有することにより、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶性能をより向上させることができるとともに、湿熱耐久性も向上させることができる。
このようにポリ乳酸樹脂(A)の結晶性能と湿熱耐久性をより向上させることによって、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の結晶性能と湿熱耐久性もより向上したものとなり、耐熱性、成形性、湿熱耐久性がより向上したものとなる。
さらには、耐衝撃改良剤(G)を含有することによって、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることができるが、酸化スズ(C)とともに用いることで、耐衝撃性をより顕著に向上させることができる。
よって、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、電気電子機器部品や雑貨用成形品等の各種の成形品用途に好適に用いられる。そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、天然物由来の樹脂を利用しているので、石油等の枯渇資源の節約に貢献できるなど、産業上の利用価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物はポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)、酸化スズ(C)を含有してなるものである。 まず、ポリ乳酸樹脂(A)について説明する。
ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が2.0モル%以下であるか、または、D体含有量が98.0モル%以上であることが必要である。中でも、1.5モル%以下であるか、または、98.5モル%以上であることが好ましく、さらには、1.0モル%以下であるか、または、99.0モル%以上であることが好ましく、0.6モル%以下であるか、または99.4モル%以上であることが最も好ましい。
D体含有量がこの範囲内であることにより、結晶性に優れる。つまり、結晶化速度が速く成形性に優れるだけでなく、結晶化が十分に進行しやすいものであるため、耐熱性に優れた成形体を得ることが可能となるものである。
また、後述する酸化スズ(C)を含有することによりさらに結晶性に優れるものとなる。そして、湿熱耐久性については、主には後述する酸化スズ(C)を含有することにより、向上する効果であるが、D体含有量がこの範囲のポリ乳酸樹脂(A)を用いることによって、湿熱耐久性がより向上する。D体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸樹脂であると、酸化スズ(C)を含有させても、結晶性、湿熱耐久性ともに十分に向上させることが困難となる。
このように、酸化スズ(C)はポリ乳酸樹脂(A)の性能を向上させる効果が高いものであるため、樹脂組成物の中でも主にポリ乳酸樹脂(A)中に含有されていることが好ましいものである。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、実施例にて後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
ポリ乳酸樹脂(A)は、重量平均分子量が3万〜50万であることが好ましく、5万〜30万であることがより好ましく、7万〜20万のものがさらに好ましい。
重量平均分子量が50万以上であると、(メタ)アクリル系樹脂と相溶性が低下するだけでなく、粘度が高すぎるために押出が困難となる。一方、重量平均分子量が3万未満であると、実用に耐えうる物性を示す樹脂組成物を得ることができない。
また、本発明の樹脂組成物の成形加工性を考慮すると、ポリ乳酸樹脂(A)のメルトフローレート(190℃、荷重2.16kgで測定)は、0.1〜50g/10分のものが好ましく、中でも0.2〜40g/10分であることが好ましく、1〜30g/10分のものが最も好ましい。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形体の機械的特性や耐熱性が劣るものとなりやすい。メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなりすぎて操業性が低下する場合がある。
本発明に用いるポリ乳酸樹脂(A)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸樹脂を用いることができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL-ラクチド、または、L体含有量が十分に低いD-ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いることができる。
また、本発明のポリ乳酸樹脂(A)は架橋構造が導入されていてもよい。架橋構造を導入する方法としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物と過酸化物を配合する手法を採用することが好ましい。
次に、(メタ)アクリル系樹脂(B)について説明する。(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル系モノマーを単独で重合したもの、または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを共重合したもの、あるいは(メタ)アクリル系モノマーを主たる単量体として含む共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル等のアルキル基(シクロアルキル基を含む)の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー、メタクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル系モノマー、メタクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリメタクリル酸メチルやメタクリル酸メチルを主たる単量体として含む共重合体であるポリメタクリル酸メチル系樹脂が、汎用性(価格)、耐熱性などの点からこのましい。
(メタ)アクリル系樹脂(B)としては、上記したような樹脂を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のような(メタ)アクリル系樹脂(B)のうち、市販されているものとしては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットシリーズや住友化学社製スミペックスシリーズおよび、クラレ社製パラペットHRシリーズが挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、重量平均分子量が3万〜100万であることが好ましく、3万〜50万であることがより好ましく、5万〜30万のものがさらに好ましい。
重量平均分子量が100万以上であると、ポリ乳酸樹脂と分子レベルで相溶することが困難となる。一方、重量平均分子量が3万未満であると、(メタ)アクリル系樹脂の有する耐熱性に乏しいものとなり、耐熱性に優れた樹脂組成物を得ることができない。
また、(メタ)アクリル系樹脂(B)とポリ乳酸樹脂(A)の質量比は後述するものであるが、上記した分子量を有することで、工業的に有用な溶融混練方法においてもポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)が分子レベルで相溶した樹脂組成物を得ることができる。
ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の質量比は、20/80〜80/20であり、中でも30/70〜70/30であることが好ましく、40/60〜60/40であることがより好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の割合がこの範囲よりも少なくなると、石油由来樹脂の割合が少なくなりすぎて、環境に配慮した樹脂組成物とすることができなくなる。一方、ポリ乳酸樹脂(A)の割合がこの範囲より多くなると、(メタ)アクリル系樹脂(B)の割合が少なくなることから、耐熱性に乏しい樹脂組成物となる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、樹脂成分として、ポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)が含有されているが、効果を損なわない範囲であれば、これら以外の他の樹脂を含有していてもよい。例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
なお、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計含有量としては、60質量%以上であることが好ましく、中でも70質量%以上、さらには80質量%以上であることが好ましい。
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、さらに酸化スズ(C)を含有する。本発明で用いる酸化スズ(C)としては、SnO(酸化第一スズ)、SnO(酸化第二スズ)、SnO等が挙げられる。中でも比較的に入手が容易であることから、SnOを用いることが好ましい。また、酸化スズ(C)は結晶状態、非晶状態いずれのものでもよい。酸化スズ(C)は、上記したようにD体含有量が特定範囲のポリ乳酸樹脂(A)中に特定量含有させることによって、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶性と湿熱耐久性を向上させることができる。
酸化スズ(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.005〜10質量部であることが必要であり、中でも0.01〜5質量部であることが好ましく、さらには0.02〜3質量部であることが好ましい。酸化スズ(C)の含有量が0.005質量部未満であると、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶性と湿熱耐久性を向上させることが困難となる。一方、10質量部を超えると、樹脂組成物の透明性が低下し、また比重が高くなり、用途が制限されるとともに、得られる成形体表面にぎらつき感が生じるなど品位に劣るものとなる。
酸化スズ(C)の平均粒子径は、1μm〜10μmが好ましく、より好ましくは2μm〜5μmである。平均粒子径が1μm未満であると、吸湿しやすくなるためポリ乳酸樹脂が分解しやすくなったり、また、凝集しやすくなることから分散性が悪くなり、好ましくない。また、平均粒子径が10μmを超えると、表面積が小さくなるため、上記のような結晶性と湿熱耐久性の向上効果に乏しいものとなるため好ましくない。
酸化スズ(C)は、酸化スズのみで形成されている粒子を用いることが好ましいが、酸化スズ以外の金属酸化物や、金属や高分子からなる粒子の表面を酸化スズで被覆したものも用いることができる。また、酸化スズ(C)からなる粒子にインジウムやアンチモンといった元素をドーピングしたものを用いてもよい。なお、このような酸化スズ(C)を用いた場合においても、酸化スズのみの含有量が上記範囲を満足するものとする。
なお、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中の酸化スズ(C)の含有量を測定する方法としては、誘導結合プラズマ(ICP)測定によって樹脂組成物中のスズ量を測定する方法、樹脂組成物を溶媒などに溶解させて樹脂を除去し、残った無機成分をX線解析する方法やオージェマイクロプローブで測定する方法が挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、さらに耐衝撃性改良剤(G)を含むことが好ましい。本発明において、耐衝撃性改良剤(G)を酸化スズ(C)とともに用いることで、耐衝撃性が顕著に向上する。また、D体含有量が本発明の範囲内であるポリ乳酸樹脂(A)を用いることにより、耐衝撃改良剤(G)の効果がより顕著に発現する。このような耐衝撃性の向上効果をより顕著に発現させるには、ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または、99.0モル%以上であることが好ましく、0.6モル%以下であるか、または99.4モル%以上であることが最も好ましい。
耐衝撃性改良剤(G)は、コアシェル型グラフト共重合体(G1)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(G2)の少なくとも一方であることが好ましい。
まず、コアシェル型グラフト共重合体(G1)について説明する。コアシェル型グラフト共重合体(G1)は、コア層とそれを覆うシェル層から構成され、隣接し合う層は異種の重合体から構成される。コア層とシェル層は、それぞれ複数の層を有してもよい。コアシェル型グラフト共重合体(G1)は、コア層成分の存在下に、シェル層成分がグラフト重合されることにより得られるものであることが好ましい。
本発明において、コアシェル型グラフト共重合体(G1)は、耐衝撃性向上の面から、コア層は、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムのいずれかであることが好ましく、中でも透明性の面からアクリル系ゴムが特に好ましい。
コア成分を形成するアクリル系ゴムは、主構成単位のアクリル酸エステルを50〜100質量%含有することが好ましく、中でも70〜100質量%含有することがより好ましい。アクリル系ゴムにおける、アクリル酸エステル以外の他の成分は、アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体であることが好ましい。
アクリル系ゴムを構成するアクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
コア成分を形成するシリコーン系ゴムとは、オルガノシロキサン結合の単位が数千以上の線状重合体であるポリオルガノシロキサンを含有するゴムであり、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとを含有するシリコーン・アクリル系ゴムも含む。
上記ゴムはどのような方法で製造されてもよいが、乳化重合法が最適である。
またポリオルガノシロキサンの構造には特に制限はないが、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンであることが好ましい。ポリオルガノシロキサンの製造に用いられるジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
本発明においてコアシェル型グラフト共重合体(G1)を構成するシェル成分は、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位および/またはその他のビニル系単位などを含有する重合体により形成されていることが好ましい。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位および/または不飽和ジカルボン酸無水物系単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位を含有する重合体がより好ましい。
シェル成分の重合体を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、樹脂への分散性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
シェル成分の重合体を構成するグリシジル基含有ビニル系単位としては、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテル、4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
シェル成分の重合体を構成する脂肪族ビニル系単位としては、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどが挙げられる。芳香族ビニル系単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレンなどが挙げられる。シアン化ビニル系単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられる。マレイミド系単位としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミドなどが挙げられる。不飽和ジカルボン酸系単位として、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸などが挙げられる。
シェル成分の重合体を構成するその他のビニル系単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられる。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記したようなコア層とシェル層を組み合わせたコアシェル型グラフト共重合体(G1)の中でも、以下の2種のコアシェル型グラフト共重合体(G1−1)、(G1−2)は、耐衝撃性の向上効果が優れるため好ましく、特に後述する(G1−2)が好ましい。
コアシェル型グラフト共重合体(G1−1)は、コア層が、アクリル成分とシリコーン成分とからなる複合重合体であり、シェル層が、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位もしくはビニル系単位を有する重合体であり、中でも(メタ)アクリル酸メチルやグリシジル基含有ビニル系単位を含有する重合体が好ましい。
コアシェル型グラフト共重合体(G1−1)の市販品として、三菱レイヨン社製メタブレンS−2001、メタブレンS−2006、メタブレンS−2200が挙げられる。
コアシェル型グラフト共重合体(G1−2)は、コア層がアクリル系ゴム、シェル層が不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位を含有する重合体からなるものである。中でも、シェル層が、コア層のアクリル系ゴムの存在下に、1種または2種以上の不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、中でも(メタ)アクリル酸メチルを、コア層のアクリル系ゴムにグラフト重合させることにより得られるものであることが好ましい。
コアシェル型耐衝撃改良剤(G1−2)の市販品として、ロームアンドハース社製パラロイドBPM−500、パラロイドBPM−515、三菱レイヨン社製メタブレンW−450A、メタブレンW−600Aなどが挙げられる。
次に、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(G2)について説明する。(メタ)アクリル酸エステル系重合体を構成する単量体としては、例えば、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステルが挙げられる。これらの単量体を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。共重合体としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
(メタ)アクリル酸およびそのエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルおよび(メタ)アクリル酸トリシクロデシニル等が挙げられる。また、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレンのような置換スチレン等の単量体を共重合させてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は公知の手法を用いて作製すればよい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(G2)の第1の好ましい態様としては、重量平均分子量が50万以上1000万未満である超高分子量の(メタ)アクリル酸エステル系重合体が挙げられる。上記範囲の重量平均分子量を有する超高分子量の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を用いることによって、耐衝撃性が顕著に向上し、かつ柔軟性が向上する。重量平均分子量が50万未満であると、耐衝撃性や柔軟性の向上効果が十分に得られない。一方、重量平均分子量が1000万を超えると、得られる樹脂組成物の相溶性が損なわれたり、溶融粘度が高くなりすぎて取り扱い難くなったりするという問題が生じる。このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量は、より好ましくは80万〜800万、さらに好ましくは100万〜500万である。
第1の好ましい態様の(メタ)アクリル酸エステル系重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製のメタブレンPシリーズ、ローム・アンド・ハース社製のPARALOID Kシリーズ、カネカ社製のカネエースPAシリーズが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の第2の好ましい態様としては、メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとのブロック共重合体(以下、ブロック共重合体Pと表す)が挙げられる。このブロック共重合体Pを用いることにより、耐衝撃性が顕著に向上し、かつ柔軟性と落球衝撃や落錘衝撃に対する耐衝撃性も向上する。
柔軟性や耐衝撃性の向上効果が十分に得られるため、ブロック共重合体Pを構成する単量体のうちアクリル酸n−ブチルの単量体が占める割合は、60質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。
ブロック共重合体Pは、1〜5個のメタクリル酸メチル単位からなる硬質ブロックと、1〜5個のアクリル酸n−ブチル単位からなる軟質ブロックとで構成される分子鎖を有するものであることが好ましい。
ブロック共重合体Pの分子鎖中におけるメタクリル酸メチル単位からなる硬質ブロックは、ポリ乳酸樹脂(A)やゴム強化スチレン系樹脂(B)との良好な相溶性に寄与する。ブロック共重合体Pの分子鎖中におけるアクリル酸n−ブチル単位からなる軟質ブロックは、柔軟性や耐衝撃性の向上に寄与する。
第2の好ましい態様のブロック共重合体Pの市販品としては、例えば、クラレ社製の商品名「クラリティLA2140e」(アクリル酸n−ブチルの含有量が77質量%)、クラレ社製の商品名「クラリティLA2250」(アクリル酸n−ブチルの含有量が67質量%)が挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中における耐衝撃性改良剤(G)の含有量は、樹脂組成物に耐衝撃性を付与する効果を考慮すると、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)との合計100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜9質量部がより好ましく、3〜8質量部が特に好ましい。
耐衝撃性改良剤(G)の含有量が0.5質量部未満であると、樹脂組成物に十分な耐衝撃性を付与することができない。一方、耐衝撃性改良剤(G)の含有量が10質量部を超えると、耐衝撃性の向上効果が飽和状態となり、また樹脂組成物の結晶性が低下する。
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、カルボジイミド化合物が含有されていることが好ましい。カルボジイミド化合物をポリ乳酸樹脂に添加すると、ポリ乳酸樹脂の湿熱耐久性が向上することは知られているが、本発明においては、D体含有量が特定範囲のポリ乳酸樹脂(A)、酸化スズ(C)とともに用いることによって、湿熱耐久性が格段に向上する。
カルボジイミド化合物としては、種々のものを用いることができる。具体的な化合物として、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミドなどが挙げられる
そして、これらの化合物のうち市販されているものとしては、例えば、松本油脂社製EN-160、ラインケミー社製スタバックゾールIなどの同一分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミドや、松本油脂社製EN-180、ラインケミー社製スタバックゾールP、日清紡績株式会社製カルボジライトLA−1などの同一分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドが挙げられる。
中でも、モノカルボジイミドは、酸化第二スズと併用するとポリ乳酸樹脂の耐湿熱性の向上効果が高く、特にN,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドを用いることが好ましい。このようなモノカルボジイミドで市販されているものとしては、松本油脂社製EN160やラインケミー社製スタバックゾールIなどが挙げられる。
カルボジイミド化合物の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。中でも0.3〜8.0質量部であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。カルボジイミド化合物の含有量が0.1質量部未満では、前記のような湿熱耐久性の向上効果を得ることが困難となる。一方、カルボジイミド化合物の含有量が10質量部を超えると、効果が飽和するだけでなく、強度低下などの他の物性に悪影響を及ぼす。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)としてD体含有量が特定の範囲のものを用いているため、結晶核剤を添加しなくても十分に結晶性が向上したものである。しかしながら、さらに結晶性(主に結晶化速度)を向上させる目的で結晶核剤が含有されていてもよい。
結晶核剤として用いることができる具体的な化合物としては、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。これらの中でも結晶化速度の観点から、有機スルホン酸塩、有機アミド化合物、有機ホスホン酸塩が好ましい。
有機スルホン酸塩としては、スルホイソフタル酸塩など、種々のものを用いることができるが、中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。さらに、バリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩などが好ましい。市販されているものとしては、例えば、竹本油脂社製のLAK403などが挙げられる。
有機アミド系化合物としては、種々の物を用いることができるが、中でも樹脂中への分散性および耐熱性の面から、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドが好ましい。市販されているものとしては、例えば、伊藤製油社製のA−S−AT−530SFなどが挙げられる。
有機ホスホン酸塩としてはフェニルホスホン酸塩が結晶化促進効果の点から好ましい。フェニルホスホン酸の金属塩としては、置換基を有しても良いフェニル基とホスホン基(−PO(OH))を有するフェニルホスホン酸の金属塩であり、フェニル基の置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1〜10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。フェニルホスホン酸の具体例としては、無置換のフェニルホスホン酸、メチルフェニルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸等が挙げられ、無置換のフェニルホスホン酸が好ましい。中でも、特にフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。
フェニルホスホン酸の金属塩としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル等の塩が挙げられ、これらの金属塩の中でも亜鉛塩を選択することが好ましい。市販されているものとしては、例えば、日産化学社製のエコプロモート(フェニルホスホン酸亜鉛)などが挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物において、上記のような結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計100質量部に対して0.03〜5質量部であることが好ましく、中でも0.1〜4質量部であることがより好ましく、0.5〜3質量部であることが最も好ましい。結晶核剤の含有量が0.03質量部未満であると、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶性を向上させる効果に乏しいものとなる。一方、含有量が5質量部を超えると、結晶核剤としての効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、生分解後の残渣分が増大するため、環境面でも好ましくない。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、充填材、顔料、耐候剤、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
可塑剤としては、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤等を用いることができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、ビタミンEが挙げられる。
充填材としては、無機充填材と有機充填材が挙げられる。無機充填材としては、タルク、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品などが挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が使用できるが、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、N含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物)が挙げられる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができ、中でも、各種脂肪酸金属塩、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物、中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドなどが、好適に用いられる。
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、押出機中に樹脂組成物を構成するそれぞれの成分を供給し、溶融混練することにより得ることができる。ただし、酸化スズ(C)や必要に応じて用いる添加剤(耐衝撃改良剤(G)、カルボジイミド化合物や結晶核剤)は、ポリ乳酸樹脂(A)中に含有されていることが好ましいため、ポリ乳酸樹脂(A)の重合時に添加する方法、酸化スズ(C)や必要に応じて用いる添加剤をポリ乳酸樹脂(A)に添加して溶融混練する方法等を採用することが好ましい。
なお、ポリ乳酸樹脂(A)の重合時に添加する方法の場合は、溶融開環重合をおこなう反応容器として、ヘリカルリボン翼、高粘度用攪拌翼等を備えた縦型反応器、横型反応器を、単独または並列して用いることができる。また、反応容器は、連続式、回分式、半回分式いずれでもよく、これらの組み合わせであってもよい。
ポリ乳酸樹脂(A)中に溶融混練で添加する方法の場合には、ポリ乳酸樹脂(A)と酸化スズ(C)や必要に応じて用いる添加剤とを予めドライブレンドしておいてから、一般的な混練機や成形機に供給する方法や、複数のフィーダーを用いて混練機トップから供給する方法、サイドフィーダーを用いて溶融混練の途中から添加する方法などが挙げられる。
溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができる。混合均一性や分散性を高める観点からは二軸押出機を使用することが好ましい。
溶融混練に際しては、上記のようにポリ乳酸樹脂(A)と酸化スズ(C)等を予め溶融混練する場合、ポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)及び酸化スズ(C)等を同時に添加する場合ともに、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができる。混合均一性や分散性を高める観点からは二軸押出機を使用することが好ましい。
次に、本発明の成形体は、上記したような本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて成形されたものである。中でも、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物のみを用いて成形された成形体であることが好ましい。
本発明の成形体としては、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用い、射出成形、ブロー成形、押出成形など公知の成形方法により、各種成形体としたものが挙げられる。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、結晶化速度が早いものであるため、成形体を得る際の成形サイクルを短くすることが可能であり、成形加工性に優れるものである。
射出成形法としては、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等を採用できる。本発明において、好適な射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度はポリ乳酸樹脂の融点(Tm)または流動開始温度以上であり、好ましくは180〜230℃、最適には190〜220℃の範囲である。シリンダ温度が低すぎると、樹脂の流動性の低下により成形不良や装置の過負荷に陥りやすい。逆にシリンダ温度が高すぎるとポリ乳酸樹脂が分解し、成形体の強度低下、着色等の問題が発生するため好ましくない。
また、本発明において、射出成形の際の金型温度については、樹脂組成物のTg(ガラス転移温度)以下とする場合には、好ましくは(Tg−10)℃以下である。また、樹脂組成物の剛性、耐熱性向上を目的として結晶化を促進するためには、Tg以上、(Tm−30)℃以下とすることもできる。
ブロー成形法としては、例えば、原料チップから直接成形を行うダイレクトブロー法や、まず射出成形で予備成形体(有底パリソン)を成形後にブロー成形を行う射出ブロー成形法、さらには延伸ブロー成形法等が挙げられる。また、予備成形体を成形後に連続してブロー成形を行うホットパリソン法、いったん予備成形体を冷却し取り出してから再度加熱してブロー成形を行うコールドパリソン法のいずれの方法も採用できる。
押出成形法としては、Tダイ法、丸ダイ法等を適用することができる。押出成形温度は原料のポリ乳酸樹脂の融点または流動開始温度以上であることが必要であり、好ましくは180〜230℃、さらに好ましくは190〜220℃の範囲である。成形温度が低すぎると操業が不安定になるという問題や、過負荷に陥りやすいという問題がある。逆に成形温度が高すぎるとポリ乳酸樹脂が分解し、押出成形体の強度低下や着色等の問題が発生するため好ましくない。
そして、押出成形によりシートやパイプ等を作製することができる。押出成形法により得られたシートまたはパイプの具体的用途としては、深絞り成形用原反シート、バッチ式発泡用原反シート、クレジットカード等のカード類、下敷き、クリアファイル、ストロー、農業・園芸用硬質パイプ等が挙げられる。また、シートは、さらに、真空成形、圧空成形及び真空圧空成形等の深絞り成形を行うことで、食品用容器、農業・園芸用容器、ブリスターパック容器及びプレススルーパック容器などを製造することができる。
上記のような成形法により得られる本発明の成形体は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物が有する優れた耐熱性、成形性、耐衝撃性、湿熱耐久性等の性能を有することから、自動車用部品に好適に用いることができる。自動車用部品の具体例としては、バンパー部材、インストルメントパネル、トリム、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、コンソールボックス、トランクカバー、スペアタイヤカバー、天井材、床材、内板、シート材、ドアパネル、ドアボード、ステアリングホイール、バックミラーハウジング、エアーダクトパネル、ウィンドモールファスナー、スピードケーブルライナー、サンバイザーブラケット、ヘッドレストロッドホルダー、各種モーターハウジング、各種プレート、各種パネルなどが挙げられる。
また、他にもこれらの性能を必要とする事務機器、家電製品などの筐体、各種部品などの用途に好適に用いることができる。事務機器の具体例としては、プリンター、複写機、ファックスなどのケーシングにおけるフロントカバー、リアカバー、給紙トレイ、排紙トレイ、プラテン、内装カバー、トナーカートリッジなどが挙げられる。他にも、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、OA機器、建材関係部品、家具用部品など湿熱耐久性を必要とする各種用途に好適に用いることができる。
本発明の成形体としては、上記以外のものとして、皿、椀、鉢、箸、スプーン、フォーク、ナイフ等の食器;流動体用容器;容器用キャップ;定規、筆記具、クリアケース、CDケース等の事務用品;台所用三角コーナー、ゴミ箱、洗面器、歯ブラシ、櫛、ハンガー等の日用品;植木鉢、育苗ポット等の農業・園芸用資材;プラモデル等の各種玩具類等が挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例中の各種の特性値の測定及び評価は以下のとおりに行った。
(1)ポリ乳酸樹脂のD体含有量
得られた樹脂組成物を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。
このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量(モル%)とした。
(2)ポリ乳酸樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS K−7210に従い、190℃、21.2Nの荷重において測定した。
(3)熱変形温度(耐熱性)
得られた試験片を用い、ISO 75−1、2に従って、荷重1.80MPaで熱変形温度(DTUL)を測定した。
(4)成形サイクル(結晶化速度)
試験片を得る際の射出成形時において、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)され、冷却された後、成形体が金型に固着せずに取り出せるようになるまでの時間(射出時からカウントした時間:秒)、または成形体が金型から抵抗なく取り出せるようになるまでの時間(射出時からカウントした時間:秒)を成形サイクルとした。その際の上限成形サイクルを180秒とした。
(5)曲げ破断強度保持率(湿熱耐久性)
得られた試験片を用い、ISO178に従い、変形速度2mm/分で荷重をかけて、曲げ破断強度を測定した(湿熱処理前の曲げ破断強度とする)。カルボジイミド化合物が添加されていない樹脂組成物の試験片は、60℃95%RHの高温高湿環境下に300時間曝した後、該試験片の曲げ破断強度を上記と同様にして測定した(湿熱処理後の曲げ破断強度とする)。一方、カルボジイミド化合物を添加した樹脂組成物の成形片は、60℃95%RHの高温高湿環境下に3000時間曝した後、該試験片の曲げ破断強度を上記と同様にして測定した(湿熱処理後の曲げ破断強度とする)。そして、以下の式に基づいて、曲げ破断強度保持率を算出した。
曲げ破断強度保持率(%)=〔(湿熱処理後の曲げ破断強度)/(湿熱処理前の曲げ破断強度)〕×100
(6)射出成形体の透明性
得られたポリ乳酸系樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂社製、NEX−110型)を用い、シリンダ温度160〜200℃、金型温度100℃に設定して、縦×横×厚みがそれぞれ50mm×90mm×2mmのカラープレートを作製した。そして、JIS−K7105に従って、得られたプレートをサンプルとし、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を用いて、ヘイズを測定した。
(7)射出成形体の耐衝撃性
得られたポリ乳酸系樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂社製、NEX−110型)を用い、シリンダ温度160〜200℃、金型温度100℃に設定して、V字型切込み付き試験片を得た。そして、ISO 179−1に従って、得られた試験片を用いてシャルピー衝撃強さを測定した。
実施例、比較例に用いた各種原料は次の通りである。
〔ポリ乳酸樹脂〕
A−1:D体含有量=0.1モル%、重量平均分子量13万、MFR=8(トヨタ自動車社製;S−12)
A−2:D体含有量=1.4モル%、重量平均分子量13万、MFR=10(ユニチカ社製;TE−4000)
A−3:D体含有量=0.3モル%、重量平均分子量14万、MFR=10(ユニチカ社製;製造例1で得たもの)
X−1:D体含有量=4.0モル%、重量平均分子量16万、MFR=4(ネイチャーワークス社製;4042D)
〔(メタ)アクリル系樹脂〕
B−1:ポリメタクリル酸メチル系樹脂〔メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル共重合体;重量平均分子量10万(三菱レイヨン社製;アクリペットVH−001)
〔スズ化合物〕
C−1:酸化第二スズ(IV)(昭和化工社製)
Y−1:スズ粉末(キシダ化学社製)
Y−2:塩化第一スズ(石津製薬製)
〔カルボジイミド化合物〕
D−1:モノカルボジイミド化合物(松本油脂社製;EN160)
〔耐衝撃性改良剤〕
G−1:コアシェル型グラフト共重合体(コア成分:アクリル系ゴム、シェル成分:(メタ)アクリル酸メチル重合体)(ロームアンドハース社製;パラロイドBPM−515)
G−2:超高分子の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(三菱レイヨン社製;メタブレンP−531、重量平均分子量450万)
G−3:メタクリル酸メチル・アクリル酸n−ブチル共重合体(クラレ社製;クラリティLA2140e、アクリル酸n−ブチルの含有量77質量%)
G−4:メタクリル酸メチル・アクリル酸n−ブチル共重合体(クラレ社製;クラリティLA2250、アクリル酸n−ブチルの含有量67質量%)
〔ポリ乳酸樹脂(A−3)の製造例〕
製造例1
ガラス管に、L−ラクチドを仕込み、系内を窒素置換した。次いで、重合触媒としてオクチル酸スズ0.01質量部を投入後、窒素雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が融解した時点で、攪拌を開始し、内温をさらに190℃に昇温して、2時間重合反応させた後、重合反応物を取り出した。得られた重合反応物を、130℃、30時間真空乾燥処理することで、重合反応物に残存するラクチド除去し、ポリ乳酸樹脂(A−3)を得た。
実施例1
ポリ乳酸樹脂(A−1)、(メタ)アクリル系樹脂(B−1)、酸化スズ(C−1)を表1に示す量用い、これらをドライブレンドして二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS型)の根元供給口から供給し、バレル温度190℃、スクリュー回転数150rpm、吐出15kg/hの条件で溶融混練した。溶融混練の後0.4mm径×3孔のダイスよりストランドを押出して、ペレット状にカッティングし、真空乾燥機(ヤマト科学社製、商品名「真空乾燥機DP83」)にて、温度60℃で48時間乾燥処理し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
得られたポリ乳酸系樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂社製、NEX−110型)を用い、シリンダ温度160〜200℃、金型温度100℃に設定してISO準拠の一般物性測定用試験片(サイズ;長さ×幅×厚み:80mm×10mm×4mm)を作製した。
実施例2〜14、比較例1〜11
ポリ乳酸樹脂の種類、(メタ)アクリル系樹脂、スズ化合物、カルボジイミド化合物の種類や割合を表1〜3に示すように種々変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
得られたポリ乳酸系樹脂組成物を、実施例1と同様にして射出成形し、ISO準拠の一般物性測定用試験片(サイズ;長さ×幅×厚み:80mm×10mm×4mm)を作製し、各種測定に供した。
実施例15
ガラス管に、L−ラクチドと酸化スズ(C−1)とを仕込み、窒素雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が融解した時点で、攪拌を開始し、内温をさらに190℃に昇温して、2時間重合(溶融重合)させた後、重合反応物を取り出した。得られた重合反応物を、130℃、30時間真空乾燥処理することで、重合反応物に残存するラクチド除去し、ポリ乳酸樹脂中に酸化スズ(C−1)を含有するポリ乳酸樹脂組成物を得た。ポリ乳酸樹脂のD体含有量は、0.2モル%、重量下平均分子量11.5万、MFRは15であった。
そして、このポリ乳酸樹脂組成物に、(メタ)アクリル系樹脂(B−1)を添加し、実施例1と同様にして、二軸押出機で溶融混練し、表1に示す組成のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
得られたポリ乳酸系樹脂組成物を、実施例1と同様にして射出成形し、ISO準拠の一般物性測定用試験片(サイズ;長さ×幅×厚み:80mm×10mm×4mm)を作製し、各種測定に供した。
実施例16〜24、比較例12〜16
ポリ乳酸樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スズ化合物、耐衝撃改良剤の種類と添加量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして一般物性測定用試験片を作製した。
実施例1〜24および比較例1〜16で得られたポリ乳酸系樹脂組成物の組成について表1〜表4に示す。
表1、3から明らかなように、実施例1〜15で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いた成形体は、透明性に優れ、耐熱性に優れたものであった。また、得られた成形体は、曲げ強度保持率が高く、湿熱耐久性にも優れたものであった。そして、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が少ないものほど、成形サイクルが短く、耐熱性に優れた成形体を得ることができた。また、実施例11〜14のポリ乳酸系樹脂組成物は、酸化スズ(C)とカルボジイミド化合物を併用したものであったため、両者の相乗効果により湿熱耐久性が極めて向上し、得られた成形体は3000時間高温高湿処理後の曲げ破断強度保持率が高いものであった。
表4から明らかなように、中でも、実施例16〜24のポリ乳酸系樹脂組成物は、酸化スズと耐衝撃改良剤を併用したものであったため、酸化スズとの相乗効果により耐衝撃性が極めて向上した。
一方、比較例1のポリ乳酸系樹脂組成物は、酸化スズ(C)が含有されていなかったため、ポリ乳酸樹脂の結晶性能を向上させることができず、成形サイクルが長く、得られた成形体は耐熱性、湿熱耐久性に劣るものであった。比較例2のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂のD体含有量が本発明の範囲内であったが、スズ化合物に酸化スズ(C)ではなく、スズ粉末を添加したため、ポリ乳酸樹脂の結晶性能を向上させることができず、得られた成形体は、耐熱性、湿熱耐久性及び透明性に劣るものであった。比較例3のポリ乳酸系樹脂組成物は、スズ化合物に塩化第一スズを用いたため、混錬・成形中に樹脂が大きく分解し、成形体を得ることができなかった。比較例4のポリ乳酸系樹脂組成物は、酸化スズの含有量が多すぎたために、分散性が悪くなり、得られた成形体は透明性に劣るだけではなく、表面がざらつくなど外観が悪いものとなった。比較例5のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂の含有量が多すぎたため、得られた成形体は耐熱性や湿熱耐久性に劣るものであった。比較例6のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂としてD体含有量が所定範囲外ものを用いたため、結晶性能に劣るものであり、成形サイクルが長く、得られた成形体は耐熱性、湿熱耐久性に劣るものであった。
比較例7〜10のポリ乳酸系樹脂組成物は、カルボジイミド化合物を含有するものであったが、酸化スズ(C)が含有されていなかったため、ポリ乳酸樹脂の結晶性能を向上させることができず、成形サイクルが長く、得られた成形体は耐熱性、湿熱耐久性に劣るものであった。比較例11のポリ乳酸系樹脂組成物は、カルボジイミド化合物を含有するものであったが、ポリ乳酸樹脂としてD体含有量が所定範囲外ものを用いたため、結晶性能に劣るものであり、成形サイクルが長く、得られた成形体は耐熱性、湿熱耐久性に劣るものであった。
比較例12〜16のポリ乳酸系樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を適量含有するものであったが、酸化スズを含有しないものであったため、耐衝撃性の向上効果が十分ではなく、かつ結晶化速度が遅く、成形サイクルが長く、耐熱性に劣るものであった。

Claims (4)

  1. D体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であるポリ乳酸樹脂(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)、酸化スズ(C)を含有してなる樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の質量比が20/80〜80/20であり、酸化スズ(C)を、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.005〜10質量部含有してなることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. さらに、耐衝撃性改良剤(G)を含有し、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)との合計100質量部に対して、耐衝撃性改良剤(G)を0.5〜10質量部含有している請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が0.1〜0.6モル%であるか、または99.4〜99.9モル%である請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
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