JP6896551B2 - 視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物および視認性タンク - Google Patents
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例えば、特許文献1には、ポリアミド樹脂(A)65〜97質量部、酸変性ポリオレフィン(B)1.5〜15質量部、未変性ポリオレフィン(C)1.5〜15質量部およびシランカップリング剤(D)0.1〜5質量部を(A)〜(D)の合計が100質量部となるように含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、酸変性ポリオレフィン(B)と未変性ポリオレフィン(C)の合計量が3〜20質量部であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物が開示されている。また、かかる樹脂組成物は、燃料タンク等の視認性タンクに好ましく用いられることが記載されている。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、長時間高温雰囲気下に置かれた後の透明性に優れた視認性タンクを成形可能なポリアミド樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いた視認性タンクを提供することを目的とする。
<1>ポリアミド樹脂100質量部に対し、無機充填材40〜100質量部およびリン系酸化防止剤0.5〜5.0質量部を含み、前記ポリアミド樹脂は、半芳香族ポリアミド樹脂と、脂肪族ポリアミド樹脂を質量比で95:5〜40:60の割合で含み、前記リン系酸化防止剤が分子中にリン原子を2つ以上含む、視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
<2>前記半芳香族ポリアミド樹脂がジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である、<1>に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
<3>前記リン系酸化防止剤が、下記式(1)で表される構造を含む、<1>または<2>に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物;
式(1)
<4>前記リン系酸化防止剤が、分子中にリン原子を2つ含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
<5>リン系酸化防止剤の含有量が、視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物の1.0〜3.0質量%である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
<6>他の酸化防止剤を含まないか、他の酸化防止剤の含有量が、リン系酸化防止剤の含有量の0.01質量%以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
<7>前記リン系酸化防止剤が、式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物の少なくとも1種を含む、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物;
式(2)
式(3)
<8>2mmの厚さに成形し、130℃の雰囲気下に100時間置いた後の波長480nmにおける透過率の保持率が60%以上である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
<9><1>〜<8>のいずれか1つに記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物から形成される視認性タンク。
酸化防止剤をポリアミド樹脂に配合することは、これまでも検討されている。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、フェノール系酸化防止剤や硫黄系酸化防止剤では視認性の達成が難しかった。また、リン系酸化防止剤でも、その種類によって、視認性、特に、長時間高温雰囲気下に置かれた後の可視領域の透過率、すなわち、エージング処理後の可視領域の透過率が異なることが分かった。そして、さらに種々の検討を重ねた結果、分子中にリン原子を2つ以上含むリン系酸化防止剤を用いることにより、可視領域におけるエージング処理後の透過率を特異的に高く保持できることを見出し、視認性に優れたタンクの提供が可能になった。
本発明の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂と、脂肪族ポリアミド樹脂を含む。半芳香族ポリアミド樹脂および脂肪族ポリアミド樹脂は、それぞれ、結晶性ポリアミド樹脂でも非晶性ポリアミド樹脂でもよいが、結晶性ポリアミド樹脂が好ましい。結晶性ポリアミド樹脂は、一般的に、非晶性ポリアミド樹脂よりも透明性が劣るため、本発明で用いる技術的価値が高い。
半芳香族ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の30〜70モル%が芳香環を含む構成単位であることをいい、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の40〜60モル%が芳香環を含む構成単位であることが好ましい。
また、ポリアミド樹脂中のXD系ポリアミドの比率は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
XD系ポリアミドの詳細は、WO2016/080185号公報の段落0013〜0025の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、本発明で用いるXD系ポリアミドには、合成に用いた添加剤等の微量成分が含まれる。本発明で用いるポリアミド樹脂は、通常、95質量%以上、好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が、ジカルボン酸由来の構成単位またはジアミン由来の構成単位である。
本発明の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂および脂肪族ポリアミド樹脂をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、無機充填材を含む。無機充填材は、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、カット長(数平均繊維長が)1〜10mmである「チョップドストランド」、粉砕長さ(数平均繊維長)10〜500μmである「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
本発明の樹脂組成物は、上記無機充填材を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、分子中にリン原子を2つ以上含むリン系酸化防止剤を含む。本発明で用いるリン系酸化防止剤は、公知のリン系酸化防止剤であって、分子中にリン原子を2つ以上含む化合物を広く用いることができる。例えば、特開2012−117037号公報に記載の式(1)〜式(5)で表される化合物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
上記リン系酸化防止剤は、分子中にリン原子を2〜7つ含むことが好ましく、2〜4つ含むことがより好ましく、2または3つ含むことがさらに好ましく、2つ含むことが一層好ましい。
本発明で用いるリン系酸化防止剤は、下記式(1)で表される構造を含むことが好ましい。
式(1)
式(1)中、**が水素原子の場合とは、式(1)において、ベンゼン環にt−ブチル基が置換している態様を意味する。以下、**について、同様に考える。
式(2)
R1は、環状構造を含む炭化水素基であることが好ましく、アリーレン基を含む炭化水素基であることがより好ましく、−アリーレン基−アリーレン基−であることがさらに好ましく、ビフェニレン基であることが一層好ましい。
R2〜R5はそれぞれ独立に、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭化水素基が例示され、アルキル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましい。特に、R2〜R5は、下記式で表されることが好ましい。
式(2)で表される化合物は、分子量が600〜1500であることが好ましく、800〜1200であることがより好ましい。
式(3)
R6およびR7は、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭化水素基が例示され、アルキル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましい。特に、R6およびR7は、下記式で表されることが好ましい。
式(3)で表される化合物は、分子量が400〜1500であることが好ましく、500〜1200であることがより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、上記リン系酸化防止剤の含有量が、視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物の1.0〜3.0質量%であることが好ましく、1.0〜2.5質量%であることがより好ましい。このような配合量とすることにより、透明性がより向上する傾向にある。
本発明の樹脂組成物は、上記リン系酸化防止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、分子中にリン原子を2つ以上含むリン系酸化防止剤以外のリン系酸化防止剤、および、他の酸化防止剤(硫黄系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤など)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
本発明の樹脂組成物の一実施形態として、他の酸化防止剤(硫黄系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤など)をポリアミド樹脂100質量部に対し、1〜10質量部の割合で含む樹脂組成物が例示される。
本発明の樹脂組成物の他の一実施形態として、他の酸化防止剤を含まないか、他の酸化防止剤の含有量が、リン系酸化防止剤の含有量の0.01質量%以下である樹脂組成物が例示される。このような構成とすることにより、波長480nmにおけるエージング処理後の透過率の保持率がより高い樹脂組成物が得られる。
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、ポリアミド樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物は、2mmの厚さに成形し、130℃の雰囲気下に100時間置いた後の波長480nmにおける透過率が15%以上(好ましくは16%以上、上限は特に定めるものではないが、例えば、50%以下、さらには45%以下)である樹脂組成物とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、2mmの厚さに成形し、130℃の雰囲気下に100時間置いた後の波長480nmにおける透過率の保持率が60%以上(好ましくは63%以上、より好ましくは67%以上、さらに好ましくは70%以上、上限は特に定めるものではないが、例えば、100%以下、さらには、95%以下)である樹脂組成物とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、自動車分野、造船分野、鉄道分野、電気電子分野、雑貨分野、土木建築分野、食品分野等の広範な用途での視認性タンクの形成に使用できる。すなわち、本発明では、本発明の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物から形成される視認性タンクも開示する。視認性タンクとしては、具体的には、燃料タンク、エクスパンションタンク、給水タンク、醸造用タンク、ポンプに内蔵されたタンク等が挙げられる。タンクの保存対象は特に定めるものではないが、特に、水およびLLC(ロングライフクーラント)、気体(空気や窒素ガスなど)を内容物とするタンクとして好ましく用いられる。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したセバシン酸12,135g(60mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)3,105g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50質量ppm)、酢酸ナトリウム1.61gを入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は、0.67とした。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの7:3の混合ジアミン8.172g(60mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。混合メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分間溶融重合反応を連続した。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化した。得られたポリアミド樹脂(MP10)の融点は215℃であった。
A−1:上記MP10、半芳香族ポリアミド樹脂
A−2:メタキシリレンアジパミド、MXD6、三菱ガス化学(株)製、6000、半芳香族ポリアミド樹脂
A−3:ナイロン66、ソルベイ社製、Stabamid26AE1K、脂肪族ポリアミド樹脂
B−1:T−756H、日本電気硝子株式会社製、ECS03T−756H、重量平均繊維径10.5μm、カット長3mm
B−2:T−289H、日本電気硝子株式会社製、ECS03T−289H、重量平均繊維径10μm、カット長3mm
D−1:Irganox1010、フェノール系酸化防止剤、BASF社製
D−2:SumilizerTP−D、硫黄系酸化防止剤、住友化学社製
<樹脂組成物のコンパウンド>
後述する表1に示す組成となるように(表中の各成分の量は質量部である)、各成分をそれぞれ秤量してブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根本から投入し、溶融し、樹脂組成物ペレットを得た。押出機の設定温度は、280℃にて実施した。
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、60mm×60mm、厚さ2mmのプレートを成形した。
得られたプレートについて、可視・紫外分光光度計(島津製作所社製、UV−3100PC)を用い、波長800nmおよび480nmにおける透過率(単位:%)をそれぞれ測定した。
また、得られたプレートを130℃の雰囲気下に100時間置いた(エージング処理)後、同様に透過率を測定した。
さらに、前記エージング処理後の透過率の保持率を算出した。
実施例1において、表1に示す様に、樹脂組成物の組成を変更し、他は同様に行った。
これに対し、波長が480nmの場合、本発明の樹脂組成物と、比較例の樹脂組成物では、エージング処理後の保持率では顕著な差異が認められた。視認性タンクは、可視領域での透過率が重要であるため、特に、可視領域でのエージング処理後の透過率の保持率が高い組成物が得られた点で価値が高い。
Claims (9)
- ポリアミド樹脂100質量部に対し、無機充填材40〜100質量部およびリン系酸化防止剤0.5〜5.0質量部を含み、
前記ポリアミド樹脂は、半芳香族ポリアミド樹脂と脂肪族ポリアミド樹脂を質量比で95:5〜40:60の割合で含み、
前記半芳香族ポリアミド樹脂がジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であり、
前記リン系酸化防止剤が分子中にリン原子を2つ以上含む、視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。 - 前記半芳香族ポリアミド樹脂におけるジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素原子数が4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
- 前記リン系酸化防止剤が、分子中にリン原子を2つ含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
- リン系酸化防止剤の含有量が、視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物の1.0〜3.0質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
- 他の酸化防止剤を含まないか、他の酸化防止剤の含有量が、リン系酸化防止剤の含有量の0.01質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
- 2mmの厚さに成形し、130℃の雰囲気下に100時間置いた後の波長480nmにおける透過率の保持率が60%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の視認性タンク用ポリアミド樹脂組成物から形成される視認性タンク。
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