JP7260855B2 - 透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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本発明は、透明強化ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法に関し、より詳しくは、ポリアミドとシリカ系フィラーとを含有する透明強化ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法に関する。
ポリアミド樹脂は、その成形体が優れた機械的特性、耐薬品性、耐久性を有することから、自動車分野、電気・電子分野、機械分野、事務機器分野、航空・宇宙分野等の各種分野において、部品用材料として広く利用されている。また、このようなポリアミド樹脂は、ガラス繊維等の繊維状強化材料を添加することによって、強度や剛性等の機械的特性の向上が図られている。
例えば、特表2011-503307号公報(特許文献1)には、(A)(A1)PA6、PA66、PA610、PA11等の脂肪族ポリアミド55~85質量%;及び(A2)MXD6、PA6I、PA6T等の半芳香族ポリアミド15~45質量%又はMXD6、PA6I、PA6T等の半芳香族ポリアミド単位とPA6、PA66、PA610等の脂肪族ポリアミド単位とを含むコポリアミド15~45質量%からなるポリアミドマトリクスを形成するポリマー混合物30~80質量%;並びに(B)特定の形状を有するガラス長繊維20~70質量%を含有するポリアミド成形化合物が記載されており、また、(A)(A1)PA11、PA12等の脂肪族ポリアミド55~100質量%;及び(A2)MXD6、PA6I、PA6T等の半芳香族ポリアミド0~45質量%又はMXD6、PA6I、PA6T等の半芳香族ポリアミド単位とPA6、PA66、PA610等の脂肪族ポリアミド単位とを含むコポリアミド0~45質量%からなるポリアミドマトリクスを形成するポリマー混合物30~80質量%;並びに(B)特定の形状を有するガラス長繊維20~70質量%を含有するポリアミド成形化合物が記載されている。特許文献1には、これらのポリアミド成形化合物が、歪み、ノッチ付き衝撃強さ、横方向の剛性及び強度、並びに表面品質及び熱安定性に関して同時に可能な限り優れた特性を有するように意図される成形品を形成することができるものであることが記載されているものの、透明性に関しては十分なものではなかった。
特表2011-503307号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、機械的特性(弾性率、強度等)及び透明性に優れたポリアミド樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、半芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミドからなる樹脂成分とシリカ系フィラーとを含有するポリアミド樹脂組成物を製造する際に、少なくとも、前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドを特定の割合で含有する前記樹脂成分を、前記樹脂成分の一部が前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドのうちの2種以上のポリアミドのコポリマーとなるように、溶融混練することによって、機械的特性(弾性率、強度等)及び透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、40~70質量%の半芳香族ポリアミド及び30~60質量%の脂肪族ポリアミドからなる樹脂成分と該樹脂成分100質量部に対して1~100質量部のシリカ系フィラーとの混合物を溶融混練する工程と
得られるポリアミド樹脂組成物についてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS、マトリックス:4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリル)を行う工程と、
を含み、
前記溶融混練する工程において、前記質量分析により得られるマススペクトルにおいて、2種類以上のポリアミドが結合した成分に由来するピークAの強度の総和と前記マトリックス由来のピークB(m/z値:407.0)の強度との比(ピークAの強度の総和/ピークBの強度)により定義される交換反応率が0.15以上になるまで、前記混合物を溶融混練することを特徴とする方法である。
本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、溶融混練温度が250~340℃であり、溶融混練時間が5~60分間であることが好ましい。
なお、本発明によって、機械的特性(弾性率、強度等)及び透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミドからなる樹脂成分とシリカ系フィラーとを含有するものである。このようなポリアミド樹脂組成物は、前記シリカ系フィラーに起因する補強効果によって、優れた機械的特性(弾性率、強度等)を有している。
また、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、少なくとも、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドとが所定の割合にある前記樹脂成分を、所定の条件で溶融混練することによって得られるものであり、前記樹脂成分の一部が、前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドのうちの2種以上のポリアミドのコポリマーとなる。前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドとが所定の割合にある前記樹脂成分を溶融混練することによって、前記樹脂成分の屈折率と前記シリカ系フィラーの屈折率とが整合し、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの間の光散乱による白濁が抑制されると推察される。また、前記コポリマーが前記2種以上のポリアミドが入り組んだ分子鎖構造であるため、前記樹脂成分からなる相は均一な相となり、相分離による白濁が抑制されると推察される。さらに、前記コポリマーが乱雑な分子鎖構造であるため、前記樹脂成分の結晶性が低下して結晶化による白濁が抑制され、さらに、生成する結晶も微結晶化して粗大な結晶生成による白濁が抑制されると推察される。このように、本発明においては、種々の要因による白濁が抑制されることによって、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られると推察される。
本発明によれば、機械的特性(弾性率、強度等)及び透明性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
〔透明強化ポリアミド樹脂組成物〕
先ず、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物について説明する。本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、40~70質量%の半芳香族ポリアミド及び30~60質量%の脂肪族ポリアミドからなる樹脂成分と、この樹脂成分100質量部に対して1~900質量部のシリカ系フィラーとを含有し、0.15以上の交換反応率を有するものである。なお、前記交換反応率は、2種類以上のポリアミドによるコポリマー化の程度を表す指標であり、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS、マトリックス:4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリル)により得られるマススペクトルにおいて、2種類以上のポリアミドが結合した成分に由来するピークAの強度の総和と前記マトリックス由来のピークB(m/z値:407.0)の強度との比(ピークAの強度の総和/ピークBの強度)により定義されるものである。
(半芳香族ポリアミド)
本発明に用いられる半芳香族ポリアミドは、全構成単位の一部が芳香族ジカルボン酸単位及び芳香族ジアミン単位のうちの少なくとも一方の芳香族構成単位からなるものであり、例えば、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合物、芳香族ジカルボン酸と脂環式ジアミンとの重縮合物、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとの重縮合物、脂環式ジカルボン酸と芳香族ジアミンとの重縮合物が挙げられる。このような半芳香族ポリアミドにおいて、前記芳香族構成単位の割合としては、半芳香族ポリアミドの全構成単位に対して、20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%が更に好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸(オルト体)、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられ、前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノぺンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1、19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンが挙げられ、前記脂環式ジアミンとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロペンタンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサンが挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンは、それぞれ1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、前記芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが挙げられ、前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸、ジメチルマロン酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸が挙げられ、前記脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸が挙げられる。これらの芳香族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸は、それぞれ1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられる半芳香族ポリアミドとしては特に制限はないが、例えば、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド10I、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ポリアミドBACT、ポリアミドBACIが挙げられる。なお、BACはビス(アミノメチル)シクロヘキサンを表す。これらの半芳香族ポリアミドは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの半芳香族ポリアミドのうち、溶融混練のしやすさという観点から、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド10I、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10が好ましく、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10がより好ましく、ポリアミドMXD6が特に好ましい。
(脂肪族ポリアミド)
本発明に用いられる脂肪族ポリアミドは、全構成単位が、脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族ジアミン単位とからなるもの、ラクタム単位からなるもの、アミノカルボン酸単位からなるものであり、例えば、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合物、ラクタムの重縮合物、アミノカルボン酸の重縮合物が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸、ジメチルマロン酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸が挙げられ、前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノぺンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1、19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンが挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジアミンは、それぞれ1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、前記ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε-カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ラウロラクタムが挙げられる。これらのラクタムは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
さらに、前記アミノカルボン酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。これらのアミノカルボン酸は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられる脂肪族ポリアミドとしては特に制限はないが、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド116、ポリアミド1010、ポリアミド1012が挙げられる。これらの脂肪族ポリアミドは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの脂肪族ポリアミドのうち、溶融混練のしやすさという観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12が好ましく、さらに、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、ポリアミド6、ポリアミド66がより好ましい。
(シリカ系フィラー)
本発明に用いられるシリカ系フィラーは、ポリアミド樹脂に配合することによって補強効果を付与するものであり、機械的特性(弾性率、強度等)に優れたポリアミド樹脂組成物を形成することができる。
このようなシリカ系フィラーとしては特に制限はないが、機械的特性(弾性率、強度等)と透明性が更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、ガラスフィラーが好ましい。また、前記シリカ系フィラーの形状としては特に制限はないが、粒子状(例えば、ガラスビーズ)、薄片状(例えば、ガラスフレーク)、繊維状(例えば、ガラス繊維)等が挙げられる。これらのシリカ系フィラーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのシリカ系フィラーのうち、樹脂に付与される補強効果が高いという観点から、ガラス繊維が特に好ましい。
また、前記繊維状シリカ系フィラー(例えば、ガラス繊維)の形態としては特に制限はなく、シリカ系繊維粉末(例えば、チョップドファイバー、ミルドファイバー)、シリカ系繊維糸(例えば、ロービング)、シリカ系繊維シート(例えば、織物、不織布)等が挙げられ、中でも、樹脂に付与される補強効果が高いという観点から、ガラス繊維粉末(例えば、チョップドガラスファイバー、ミルドガラスファイバー)、ガラス繊維糸(例えば、ガラスロービング)、ガラス繊維シート(例えば、ガラス繊維織物、ガラス繊維不織布)が好ましい。
さらに、前記ガラスフィラーはEガラス(無アルカリガラス)であることが好ましい。シリカ系フィラーとしてEガラスからなるフィラーを用いることによって、機械的特性(弾性率、強度等)と透明性とが更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
このようなシリカ系フィラーの大きさとしては特に制限はないが、例えば、粒子状シリカ系フィラーの場合、平均粒子径としては1μm~10mmが好ましく、10μm~1mmがより好ましい。また、薄片状シリカ系フィラーの場合、平均厚さとしては1μm~5mmが好ましく、5μm~1mmがより好ましく、平均粒径としては1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。なお、薄片状シリカ系フィラーの平均粒径の上限としては特に制限はないが、後述するように、樹脂成分と薄片状シリカ系粉末とを溶融混練する場合には、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。さらに。繊維状シリカ系フィラーの場合、平均繊維径としては5~100μmが好ましく、7~50μmがより好ましく、平均繊維長としては0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。なお、繊維状シリカ系フィラーの平均繊維長の上限としては特に制限はないが、後述するように、樹脂成分とシリカ系繊維粉末とを溶融混練する場合には、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
(樹脂成分)
本発明にかかる樹脂成分は、40~70質量%の前記半芳香族ポリアミド及び30~60質量%の前記脂肪族ポリアミドからなるものである。前記半芳香族ポリアミドの含有量が前記下限未満になり、前記脂肪族ポリアミドの含有量が前記上限を超えたり、或いは、前記半芳香族ポリアミドの含有量が前記上限を超え、前記脂肪族ポリアミドの含有量が前記下限未満になったりすると、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの屈折率差が大きくなり、得られるポリアミド樹脂組成物は透明性に劣る。また、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの屈折率差が小さくなり、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、本発明にかかる樹脂成分においては、前記半芳香族ポリアミドの含有量が45~65質量%であり、前記脂肪族ポリアミドの含有量が35~55質量%であることが好ましく、前記半芳香族ポリアミドの含有量が50~60質量%であり、前記脂肪族ポリアミドの含有量が40~50質量%であることがより好ましい。
また、本発明にかかる樹脂成分は、その一部が、この樹脂成分に含まれる前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドからなる群から選択される2種以上のポリアミドのコポリマーであることが好ましい。前記樹脂成分の一部が前記2種以上のポリアミドのコポリマーであることによって、前記交換反応率が所定の範囲内となり、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。一方、前記樹脂成分に前記2種以上のポリアミドのコポリマーが含まれない場合には、前記交換反応率が所定の範囲の下限未満となる傾向にあり、得られるポリアミド樹脂組成物は透明性に劣る傾向にある。
さらに、本発明にかかる樹脂成分は、ポリアミド6及びポリアミド66からなる群から選択される少なくとも1種を少なくとも含有する脂肪族ポリアミドを含むものであることが好ましい。前記樹脂成分が、ポリアミド6及びポリアミド66からなる群から選択される少なくとも1種を少なくとも含有する脂肪族ポリアミドを含むことによって、前記交換反応率が所定の範囲内となり、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。また、透明性に特に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記樹脂成分は、ポリアミド6及びポリアミド66からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ポリアミドを含むものであることがより好ましい。
また、本発明にかかる樹脂成分は、脂肪族ポリアミドとして、2種以上の脂肪族ポリアミド及び/又は2種以上の脂肪族ポリアミドのコポリマーを含むものであることも好ましい。前記樹脂成分が、脂肪族ポリアミドとして、2種以上の脂肪族ポリアミド及び/又は2種以上の脂肪族ポリアミドのコポリマーを含むことによって、前記交換反応率が所定の範囲内となり、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。また、このような2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せとしては特に制限はなく、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド116、ポリアミド1010、ポリアミド1012のうちの2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せが挙げられるが、中でも、溶融混練のしやすさという観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12のうちの2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せが好ましく、さらに、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、ポリアミド6及びポリアミド66のうちの少なくとも一方を含む2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せがより好ましく、ポリアミド6とポリアミド66との組合せが特に好ましい。
また、前記樹脂成分が、脂肪族ポリアミドとして、2種以上の脂肪族ポリアミド及び/又は2種以上の脂肪族ポリアミドのコポリマーを含むものである場合、各脂肪族ポリアミドの含有量としては、それぞれ、前記樹脂成分全体に対して、5~50質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましく、15~40質量%が更に好ましい。各脂肪族ポリアミドの含有量が前記下限未満になったり、前記上限を超えたりすると、得られるポリアミド樹脂組成物は透明性に劣る傾向にある。
一方、前記樹脂成分が前記脂肪族ポリアミドを含まない場合又はポリアミド6及びポリアミド66以外の脂肪族ポリアミドを1種類のみ含む場合には、前記交換反応率が所定の範囲の下限未満となる傾向にあり、得られるポリアミド樹脂組成物は透明性に劣る傾向にある。
(透明強化ポリアミド樹脂組成物)
本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとを含有するものであり、前記シリカ系フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対して1~900質量部である。前記シリカ系フィラーの含有量が前記下限未満になると、シリカ系フィラーに起因する補強効果が十分に得られず、得られるポリアミド樹脂組成物は機械的特性(弾性率、強度等)に劣る。他方、前記シリカ系フィラーの含有量が前記上限を超えると、前記シリカ系フィラー間に前記樹脂成分が十分に行き渡らず、得られるポリアミド樹脂組成物は柔軟性と透明性に劣る。また、シリカ系フィラーに起因する補強効果が十分に得られ、機械的特性(弾性率、強度等)に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られ、さらに、柔軟性と透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記シリカ系フィラーの含有量としては、前記樹脂成分100質量部に対して、5~800質量部が好ましく、10~700質量部がより好ましく、20~600質量部が更に好ましい。
また、後述するように、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの混合物を溶融混練することによって製造される本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物においては、前記シリカ系フィラーの含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して1~100質量部であり、5~90質量部であることが好ましく、10~80質量部であることがより好ましく、20~70質量部であることが更に好ましい。前記シリカ系フィラーの含有量が前記上限を超えると、溶融混練時に前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの混合物の粘度が高くなるため、混練性が低下する傾向にある。
他方、後述するように、前記樹脂成分を溶融混練した後、前記シリカ系フィラーに含浸させることによって製造される本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物においては、前記シリカ系フィラーの含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して10~900質量部であり、20~800質量部であることが好ましく、30~700質量部であることがより好ましく、40~600質量部であることが更に好ましい。前記シリカ系フィラーの含有量が前記下限未満になると、相対的に前記樹脂成分の含有量が多くなるが、溶融混練した多量の前記樹脂成分を前記シリカ系フィラーに含浸させることが困難な場合がある。
また、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、0.15以上の交換反応率を有するものである。前記交換反応率が前記下限未満になると、前記2種類以上のポリアミドのコポリマーが十分に形成されておらず、得られるポリアミド樹脂組成物は透明性に劣る。また、前記2種類以上のポリアミドのコポリマーが十分に形成されており、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記交換反応率としては0.17以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましく、0.40以上が特に好ましく、0.45以上が最も好ましい。さらに、前記交換反応率の上限としては特に制限はないが、結晶生成による機械的特性や耐水性の向上という観点から、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。このような交換反応率を有するポリアミド樹脂組成物は、後述するように、少なくとも前記樹脂成分を溶融混練することによって得ることができる。
なお、前記交換反応率は、以下の方法により求めることができる。すなわち、先ず、ポリアミド樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して試料溶液(ポリアミド樹脂組成物濃度:0.5mg/100μl)を調製する。また、マトリックスである4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解してマトリックス溶液(4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリル濃度:9.6mg/ml)を調製する。さらに、トリフルオロ酢酸ナトリウムをテトラヒドロフランに溶解してカチオン化剤溶液(トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度:3.0mg/ml)を調製する。次に、前記マトリックス溶液と前記試料溶液と前記カチオン化剤溶液とを前記マトリックス溶液:前記試料溶液:前記カチオン化剤溶液=10:4:4の体積比で混合し、得られた混合溶液について、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(例えば、ブルカージャパン株式会社製「autoflex maX」)により波長355nmのYAGレーザーを用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)を行う。得られたマススペクトルにおいて、2種類以上のポリアミドが結合した成分に由来するピークAの強度の総和と前記マトリックス由来のピークB(m/z値:407.0)の強度との比(ピークAの強度の総和/ピークBの強度)を求め、このピーク強度比をポリアミド樹脂組成物の交換反応率とする。
また、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミド以外の他の熱可塑性樹脂、難燃剤、難燃助剤、着色剤、抗酸化剤、充填剤、強化剤、抗紫外線剤、熱安定化剤、抗菌剤、帯電防止剤等の他の成分が含まれていてもよい。
〔透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
次に、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、40~70質量%の前記半芳香族ポリアミド及び30~60質量%の前記脂肪族ポリアミドからなる樹脂成分と、この樹脂成分100質量部に対して1~100質量部の前記シリカ系フィラーとの混合物を、得られるポリアミド樹脂組成物についての交換反応率が0.15以上になるまで溶融混練することによって製造することができる(以下、この方法を「第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法」という)。また、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、40~70質量%の前記半芳香族ポリアミド及び30~60質量%の前記脂肪族ポリアミドからなる樹脂成分を、得られるポリアミド樹脂組成物についての交換反応率が0.15以上になるまで溶融混練した後、得られるポリアミド樹脂組成物において前記シリカ系フィラーの含有量が前記樹脂成分100質量部に対して10~900質量部となるように前記シリカ系フィラーに含浸させることによって製造することも可能である(以下、この方法を「第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法」という)。これらの方法によって製造されるポリアミド樹脂組成物は、機械的特性(弾性率、強度等)及び透明性に優れている。なお、前記交換反応率は、前述のとおり、MALDI-TOF-MSにより得られるマススペクトルにおいて、2種類以上のポリアミドが結合した成分に由来するピークAの強度の総和とマトリックス由来のピークB(m/z値:407.0)の強度との比(ピークAの強度の総和/ピークBの強度)により定義されるものであり、前記方法によって求めることができる。
〔第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本発明の第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドとを所定の配合量で混合する。前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドは、溶融混練時に混合してもよい(すなわち、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドと前記シリカ系フィラーとを溶融混練時に混合してもよい)し、溶融混練の前にドライブレンド等によって予備的に混合してもよい。
本発明の第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドの配合量は、前記樹脂成分全体に対して、前記半芳香族ポリアミドが40~70質量%、前記脂肪族ポリアミドが30~60質量%である。前記半芳香族ポリアミドの配合量が前記下限未満になり、前記脂肪族ポリアミドの配合量が前記上限を超えたり、或いは、前記半芳香族ポリアミドの含有量が前記上限を超え、前記脂肪族ポリアミドの含有量が前記下限未満になったりすると、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの屈折率差が大きくなり、得られるポリアミド樹脂組成物の透明性が低下する。また、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの屈折率差が小さくなり、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記樹脂成分全体に対して、前記半芳香族ポリアミドの配合量が45~65質量%であり、前記脂肪族ポリアミドの配合量が35~55質量%であることが好ましく、前記半芳香族ポリアミドの配合量が50~60質量%であり、前記脂肪族ポリアミドの配合量が40~50質量%であることがより好ましい。
また、本発明の第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドとからなる樹脂成分と前記シリカ系フィラーとを所定の配合量で配合した混合物を溶融混練する。前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーは、溶融混練時に混合してもよい(すなわち、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドと前記シリカ系フィラーとを溶融混練時に混合したり、或いは、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドとをドライブレンド等によって予備的に混合した後、得られた樹脂成分と前記シリカ系フィラーとを溶融混練時に混合したりしてもよい)し、溶融混練の前にドライブレンド等によって予備的に混合してもよい(すなわち、溶融混練の前に、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドと前記シリカ系フィラーとをドライブレンド等によって同時かつ予備的に混合してもよいし、或いは、溶融混練の前に、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドとをドライブレンド等によって予備的に混合し、さらに、得られた樹脂成分と前記シリカ系フィラーとをドライブレンド等によって予備的に混合してもよい)。
本発明の第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いられる前記シリカ系フィラーとしては、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの混合物を溶融混練するという観点から、粒子状シリカ系フィラー(例えば、ガラスビーズ)、薄片状シリカ系粉末(例えば、ガラスフレーク)、シリカ系繊維粉末(例えば、チョップドファイバー、ミルドファイバー)が好ましく、中でも、樹脂に付与される補強効果が高いという観点から、ガラス繊維粉末(例えば、チョップドガラスファイバー、ミルドガラスファイバー)がより好ましい。
また、本発明の第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、前記シリカ系フィラーの配合量は、前記樹脂成分100質量部に対して1~100質量部である。前記シリカ系フィラーの配合量が前記下限未満になると、シリカ系フィラーに起因する補強効果が十分に得られず、得られるポリアミド樹脂組成物の機械的特性(弾性率、強度等)が低下する。他方、前記シリカ系フィラーの配合量が前記上限を超えると、溶融混練時に前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの混合物の粘度が高くなるため、混練性が低下する傾向にある。また、シリカ系フィラーに起因する補強効果が十分に得られ、機械的特性(弾性率、強度等)に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られ、さらに、前記溶融混練によって前記シリカ系フィラー間に前記樹脂成分が十分に行き渡って柔軟性と透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記シリカ系フィラーの配合量としては、前記樹脂成分100質量部に対して、5~90質量部が好ましく、10~80質量部がより好ましく、20~70質量部が更に好ましい。
さらに、本発明の第一の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとを、得られるポリアミド樹脂組成物についての交換反応率が0.15以上になるまで溶融混練する。これにより、前記樹脂成分の一部として、この樹脂成分に含まれる前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドからなる群から選択される2種以上のポリアミドのコポリマーが形成され、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。一方、得られるポリアミド樹脂組成物についての交換反応率が所定の範囲内に達する前に溶融混練を停止すると、前記2種以上のポリアミドのコポリマーが十分に形成されず、得られるポリアミド樹脂組成物の透明性が低下する。また、前記2種以上のポリアミドのコポリマーが十分に形成され、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとを、前記交換反応率が0.17以上になるまで溶融混練することが好ましく、0.25以上になるまで溶融混練することがより好ましく、0.35以上になるまで溶融混練することが更に好ましく、0.40以上になるまで溶融混練することが特に好ましく、0.45以上になるまで溶融混練することが最も好ましい。さらに、前記交換反応率の上限としては特に制限はないが、結晶生成による機械的特性や耐水性の向上という観点から、前記交換反応率が3.0以下となるように溶融混練することが好ましく、2.0以下となるように溶融混練することがより好ましい。
〔第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本発明の第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドとを所定の配合量で配合した樹脂成分を溶融混練する。前記半芳香族ポリアミドと前記脂肪族ポリアミドは、溶融混練時に混合してもよいし、溶融混練の前にドライブレンド等によって予備的に混合してもよい。
本発明の第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドの配合量は、前記樹脂成分全体に対して、前記半芳香族ポリアミドが40~70質量%、前記脂肪族ポリアミドが30~60質量%である。前記半芳香族ポリアミドの配合量が前記下限未満になり、前記脂肪族ポリアミドの配合量が前記上限を超えたり、或いは、前記半芳香族ポリアミドの含有量が前記上限を超え、前記脂肪族ポリアミドの含有量が前記下限未満になったりすると、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの屈折率差が大きくなり、得られるポリアミド樹脂組成物の透明性が低下する。また、前記樹脂成分と前記シリカ系フィラーとの屈折率差が小さくなり、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記樹脂成分全体に対して、前記半芳香族ポリアミドの配合量が45~65質量%であり、前記脂肪族ポリアミドの配合量が35~55質量%であることが好ましく、前記半芳香族ポリアミドの配合量が50~60質量%であり、前記脂肪族ポリアミドの配合量が40~50質量%であることがより好ましい。
また、本発明の第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、前記樹脂成分を、得られるポリアミド樹脂組成物についての交換反応率が0.15以上になるように溶融混練する。これにより、前記樹脂成分の一部として、この樹脂成分に含まれる前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミドからなる群から選択される2種以上のポリアミドのコポリマーが形成され、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。一方、得られるポリアミド樹脂組成物についての交換反応率が所定の範囲内に達する前に溶融混練を停止すると、前記2種以上のポリアミドのコポリマーが十分に形成されず、得られるポリアミド樹脂組成物の透明性が低下する。また、前記2種以上のポリアミドのコポリマーが十分に形成され、透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記樹脂成分を、前記交換反応率が0.17以上になるまで溶融混練することが好ましく、0.25以上になるように溶融混練することがより好ましく、0.35以上になるように溶融混練することが更に好ましく、0.40以上になるように溶融混練することが特に好ましく、0.45以上になるように溶融混練することが最も好ましい。さらに、前記交換反応率の上限としては特に制限はないが、結晶生成による機械的特性や耐水性の向上という観点から、前記交換反応率が3.0以下となるように溶融混練することが好ましく、2.0以下となるように溶融混練することがより好ましい。
本発明の第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、このように溶融混練して調製した樹脂成分を所定の含有量となるように前記シリカ系フィラーに含浸させる。本発明の第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法に用いられる前記シリカ系フィラーとしては、前記樹脂成分を前記シリカ系フィラーに含浸させるという観点から、シリカ系薄片及びその集合体、シリカ系繊維糸(例えば、ロービング)及びその集合体、シリカ系繊維シート(例えば、織物、不織布)が好ましく、中でも、樹脂に付与される補強効果が高いという観点から、ガラス繊維糸(例えば、ガラスロービング)、ガラス繊維シート(例えば、ガラス繊維織物、ガラス繊維不織布)がより好ましい。
本発明の第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、前記樹脂成分は、得られるポリアミド樹脂組成物において前記シリカ系フィラーの含有量が前記樹脂成分100質量部に対して10~900質量部となるように前記シリカ系フィラーに含浸させる。前記シリカ系フィラーの含有量が前記下限未満になると、相対的に前記樹脂成分の含有量が多くなるが、溶融混練した多量の前記樹脂成分を前記シリカ系フィラーに含浸させることが困難な場合がある。他方、前記シリカ系フィラーの含有量が前記上限を超えると、前記シリカ系フィラー間に前記樹脂成分が十分に行き渡らず、得られるポリアミド樹脂組成物の柔軟性と透明性が低下する。また、シリカ系フィラーに起因する補強効果が十分に得られ、機械的特性(弾性率、強度等)に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られ、さらに、前記溶融混練によって前記シリカ系フィラー間に前記樹脂成分が十分に行き渡って柔軟性と透明性に更に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、前記樹脂成分を、前記シリカ系フィラーの含有量が前記樹脂成分100質量部に対して20~800質量部となるように含浸させることが好ましく、30~700質量部となるように含浸させることがより好ましく、40~600質量部となるように含浸させることが更に好ましい。
また、本発明の第一及び第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、ポリアミド6及びポリアミド66からなる群から選択される少なくとも1種を少なくとも含有する脂肪族ポリアミドを含む前記樹脂成分を溶融混練することが好ましい。これにより、前記交換反応率が所定の範囲内に達しやすく、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物を容易に得ることができる。また、透明性に特に優れたポリアミド樹脂組成物を容易に得ることができるという観点から、前記樹脂成分は、ポリアミド6及びポリアミド66からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ポリアミドを含むものであることがより好ましい。
さらに、本発明の第一及び第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、脂肪族ポリアミドとして、2種以上の脂肪族ポリアミド及び/又は2種以上の脂肪族ポリアミドのコポリマーを含む前記樹脂成分を溶融混練することも好ましい。これにより、前記交換反応率が所定の範囲内に達しやすく、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物を容易に得ることができる。また、このような2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せとしては特に制限はなく、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド116、ポリアミド1010、ポリアミド1012のうちの2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せが挙げられるが、中でも、溶融混練のしやすさという観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12のうちの2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せが好ましく、さらに、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるという観点から、ポリアミド6及びポリアミド66のうちの少なくとも一方を含む2種以上の脂肪族ポリアミドの組合せがより好ましく、ポリアミド6とポリアミド66との組合せが特に好ましい。
また、脂肪族ポリアミドとして、2種以上の脂肪族ポリアミド及び/又は2種以上の脂肪族ポリアミドのコポリマーを含む前記樹脂成分を溶融混練する場合、各脂肪族ポリアミドの配合量としては、それぞれ、前記樹脂成分全体に対して、5~50質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましく、15~40質量%が更に好ましい。各脂肪族ポリアミドの配合量が前記下限未満になったり、前記上限を超えたりすると、得られるポリアミド樹脂組成物は透明性に劣る傾向にある。
一方、前記脂肪族ポリアミドを含まない前記樹脂成分又はポリアミド6及びポリアミド66以外の脂肪族ポリアミドを1種類のみ含む前記樹脂成分を溶融混練すると、前記交換反応率が所定の範囲内まで向上せず、得られるポリアミド樹脂組成物の透明性が低下する傾向にある。
さらに、本発明の第一及び第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記半芳香族ポリアミド及び前記脂肪族ポリアミド以外の他の熱可塑性樹脂、難燃剤、難燃助剤、着色剤、抗酸化剤、充填剤、強化剤、抗紫外線剤、熱安定化剤、抗菌剤、帯電防止剤等の他の成分を配合してもよい。
本発明の第一及び第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、溶融混練の方法としては特に制限はなく、例えば、押出機(一軸スクリュー押出機、二軸混練押出機等)、ニーダ、又はミキサ(高速流動式ミキサ、バドルミキサ、リボンミキサ等)等の混練装置を用いる方法が挙げられる。これらの装置は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、2種以上を併用する場合には連続的に運転してもよく、回分的に(バッチ式で)運転してもよい。
また、本発明の第一及び第二の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、溶融混練条件としては、得られるポリアミド樹脂組成物についての交換反応率が所定の範囲内に達する条件であれば特に制限はないが、例えば、溶融混練温度としては250~340℃が好ましく、260~330℃がより好ましく、270~320℃が更に好ましい。また、溶融混練時間としては5~60分間が好ましく、7~50分間がより好ましく、9~45分間が更に好ましい。溶融混練温度や溶融混練時間が前記下限未満になると、前記交換反応率が所定の範囲内まで向上せず、得られるポリアミド樹脂組成物の透明性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリアミドの分解によって機械的特性や透明性が低下する傾向にある。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、ポリアミド6(PA6、ユニチカ株式会社製「A1030BRL」)9質量部、ポリアミド66(PA66、東レ株式会社製「CM3001-N」)9質量部、ポリアミド610(PA610、東レ株式会社製「CM2001」)9質量部、ポリアミド11(PA11、アルケマ社製「BMNO」)13.5質量部、ポリアミドMXD6(MXD6、三菱ガス化学株式会社製「S6001」)49.5質量部、及びガラス繊維(日東紡績株式会社製「チョップドグラスファイバー CS 3J-256LS」)10質量部を、小型混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製「HAAKE MiniLab」)を用いて、溶融混練温度270℃、スクリュー回転数200rpm、溶融混練時間27分間の条件で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を以下に示す方法により測定したところ、0.75であった。
<交換反応率>
得られたポリアミド樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して試料溶液(ポリアミド樹脂組成物濃度:0.5mg/100μl)を調製した。また、マトリックスである4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解してマトリックス溶液(4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリル濃度:9.6mg/ml)を調製した。さらに、トリフルオロ酢酸ナトリウムをテトラヒドロフランに溶解してカチオン化剤溶液(トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度:3.0mg/ml)を調製した。前記マトリックス溶液と前記試料溶液と前記カチオン化剤溶液とを前記マトリックス溶液:前記試料溶液:前記カチオン化剤溶液=10:4:4の体積比で混合し、得られた混合溶液について、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(ブルカージャパン株式会社製「autoflex maX」)により波長355nmのYAGレーザーを用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)を行い、得られたマススペクトルにおいて、2種類以上のポリアミドが結合した成分に由来するピークAの強度の総和と前記マトリックス由来のピークB(m/z値:407.0)の強度との比(ピークAの強度の総和/ピークBの強度)を求め、これをポリアミド樹脂組成物の交換反応率とした。
次に、前記ポリアミド樹脂組成物を、230℃に設定した小型プレス機を用いて圧力6MPaで1分間加圧して平板状に成形し、得られた平板を、水冷したプレス機を用いて圧力6MPaで1分間加圧して樹脂成分を完全に固化させて50mm×50mm×0.5mmの平板を作製した。
得られた平板のヘイズ値(厚さ0.5mm)をヘイズメーター(スガ試験機株式会社製「HGM-3DP」)により測定した。また、得られた平板の波長590nmの透過率を紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製「V-530」)により測定した。これらの結果を表1に示す。
さらに、得られた平板から長さ50mm、幅10mmの試験片を切出し、この試験片を用いて、インストロン社製万能試験機により温度23℃、チャック間距離20mm、引張速度1mm/分の条件で引張試験を行い、引張弾性率及び最大強度(破断時の引張強度)を求めた。これらの結果を表1に示す。
(実施例2)
PA6の量を8質量部に、PA66の量を8質量部に、PA610の量を8質量部に、PA11の量を12質量部に、MXD6の量を44質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.52であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(実施例3)
PA6の量を7質量部に、PA66の量を7質量部に、PA610の量を7質量部に、PA11の量を10.5質量部に、MXD6の量を38.5質量部に、ガラス繊維の量を30質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.54であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(実施例4)
PA6の量を20質量部に、PA11の量を16質量部に、MXD6の量を44質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に変更し、PA66及びPA610を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、1.47であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(実施例5)
PA6の量を10質量部に、PA66の量を10質量部に、PA11の量を16質量部に、MXD6の量を44質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に変更し、PA610を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.86であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(実施例6)
PA6の量を32質量部に、MXD6の量を48質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に変更し、PA66、PA610、PA11を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.18であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(実施例7)
PA66の量を32質量部に、MXD6の量を48質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に変更し、PA6、PA610、PA11を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.16であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(比較例1)
PA6の量を16質量部に、PA66の量を16質量部に、PA610の量を16質量部に、PA11の量を16質量部に、MXD6の量を16質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.70であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(比較例2)
溶融混練時間を3分間に変更した以外は実施例2と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.10であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
(比較例3)
PA6の量を10質量部に、PA66の量を10質量部に、PA610の量を10質量部に、PA11の量を15質量部に、MXD6の量を55質量部に変更し、ガラス繊維を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.68であった。
前記ポリアミド樹脂組成物を、230℃に設定した小型プレス機を用いて圧力6MPaで1分間加圧して平板状に成形し、得られた平板を150℃に設定したプレス機を用いて徐冷した後、水冷したプレス機を用いて圧力6MPaで1分間加圧して樹脂成分を完全に固化させて50mm×50mm×0.5mmの平板を作製した。この平板のヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を実施例1と同様にして求めた。これらの結果を表1に示す。
(比較例4)
PA610の量を32質量部に、MXD6の量を48質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に変更し、PA6、PA66、PA11を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物の交換反応率を実施例1と同様にして測定したところ、0.03であった。
また、このポリアミド樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして平板を作製し、ヘイズ値(厚さ0.5mm)、波長590nmの透過率、引張弾性率及び最大強度を求めた。これらの結果を表1に示す。
Figure 0007260855000001
表1に示したように、所定の割合の半芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドとからなる樹脂成分及びこの樹脂成分に対して所定の割合のガラス繊維を含有し、前記交換反応率が所定の範囲内にあるポリアミド樹脂組成物(実施例1~7)は、ヘイズ値が低く、波長590nmの透過率が高いことから、透明性の優れたものであることがわかった。また、実施例1~7で得られたポリアミド樹脂組成物は高い引張弾性率及び高い最大強度を有するものであることがわかった。これは、ガラス繊維による補強効果に起因するものと考えられる。
具体的には、実施例1~7と比較例1とを対比すると明らかなように、半芳香族ポリアミドが所定の割合より少ないポリアミド樹脂組成物(比較例1)は、前記交換反応率が所定の範囲内にあるにもかかわらず、半芳香族ポリアミドが所定の割合のポリアミド樹脂組成物(実施例1~7)に比べて、ヘイズ値が高く、波長590nmの透過率が低くなり、透明性に劣るものであることがわかった。これは、樹脂成分とガラス繊維との屈折率差が大きいことによるものと考えられる。
また、実施例1~7と比較例2とを対比すると明らかなように、溶融混練時間が3分間の場合(比較例2)には、27分間(実施例1~7)の場合に比べて、交換反応率が低いため、ヘイズ値が高く、波長590nmの透過率が低くなり、透明性に劣ることがわかった。
さらに、実施例1~7と比較例3とを対比すると明らかなように、ガラス繊維を含まないポリアミド樹脂組成物(比較例3)は、弾性率を高めるためにプレス成形時に徐冷したにもかかわらず、ガラス繊維を含むポリアミド樹脂組成物(実施例1~7)に比べて、引張弾性率及び最大強度が低くなることがわかった。
また、実施例1~5と比較例4とを対比すると明らかなように、所定の割合の半芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドとからなる樹脂成分を含有するポリアミド樹脂組成物であっても、脂肪族ポリアミドがPA610のみの場合(比較例4)には、脂肪族ポリアミドが2種以上の場合(実施例1~5)に比べて、交換反応率が低くなり、ヘイズ値が高く、波長590nmの透過率が低くなり、透明性に劣ることがわかった。
さらに、実施例6、7と比較例4とを対比すると明らかなように、所定の割合の半芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドとからなる樹脂成分を含有するポリアミド樹脂組成物であっても、脂肪族ポリアミドがPA610のみの場合(比較例4)には、脂肪族ポリアミドがPA6のみの場合(実施例6)又はPA66のみの場合(実施例7)に比べて、交換反応率が低くなり、ヘイズ値が高く、波長590nmの透過率が低くなり、透明性に劣ることがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、機械的特性(弾性率、強度等)及び透明性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。したがって、本発明の透明強化ポリアミド樹脂組成物は、自動車のウィンドウ、ルーフ、ピラー等の自動車用透明樹脂部品;建築物用透明樹脂部品;電子機器用透明樹脂部品等に用いられる透明樹脂材料として有用である。

Claims (2)

  1. ポリアミドMXD6及びポリアミドMXD10からなる群から選択される少なくとも1種の半芳香族ポリアミド40~70質量%及びポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、及びポリアミド12からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ポリアミド30~60質量%からなる樹脂成分と該樹脂成分100質量部に対して1~100質量部のシリカ系フィラーとの混合物を溶融混練する工程と
    得られるポリアミド樹脂組成物についてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS、マトリックス:4-ヒドロキシベンジリデンマロノニトリル)を行う工程と、
    を含み、
    前記溶融混練する工程において、前記質量分析により得られるマススペクトルにおいて、2種類以上のポリアミドが結合した成分に由来するピークAの強度の総和と前記マトリックス由来のピークB(m/z値:407.0)の強度との比(ピークAの強度の総和/ピークBの強度)により定義される交換反応率が0.15以上になるまで、前記混合物を溶融混練することを特徴とする透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  2. 溶融混練温度が250~340℃であり、溶融混練時間が5~60分間であることを特徴とする請求項に記載の透明強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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