JP6889511B1 - 雪崩予防柵 - Google Patents
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Abstract
Description
そのなかでも、複数の三角ネットを組み合わせた防護ネットを具備する防護柵が知られている(特許文献1〜3)。
三角ネットは鋼製ロープで全体形状を三角形状に編成したネット状物であり、三角形と逆三角形のネットを交互に配置し、隣り合う三角ネットの側辺間をロープ材等で連結して帯状の防護ネットを現場で組み立てる。
防護ネットの組み立てにあたっては、防護ネットの上辺側を支柱で支持し、防護ネットの下辺側を斜面山側アンカーに固定することで、防護ネットを斜面山側で斜めに傾けて設置している。
従来の三角ネット製の防護ネットは、複数の三角ネットを連続して繋ぎ合わせることで形成される阻止面が、可撓性と連続性を併有することで、落石だけでなく積雪も捕捉可能である。
<1>従来の三角ネット製の防護ネットは、外形および寸法が一定の三角ネットの規格品の組み合わせであるため、三角ネットを現場に設置する際のレイアウトの自由度が低い。
<2>設置現場が平らで勾配が一定であれば、定形の三角ネットを使用できるが、設置現場の斜面に起伏や勾配変化があると、定形の三角ネットのみでは対応できない。
このような場合は、現場の地形に対応するように個別に製作した調整ネットを間に介装して三角ネットに連続性を持たせているが、調整ネットを個別製作するために長時間を要するだけでなく、調整ネットの製作コストが嵩む、といった問題点を内包している。
<3>例えば、現場の地形変化に合わせて隣り合う三角ネットの斜辺間の継目間隔を不等間隔に調整すれば、定形の三角ネットを使用できるが、三角ネットの継目間隔が過大に広くなると落石等が透過して防護柵の捕捉機能が喪失する。
<4>斜面の横断方向に沿って連続して防護ネットが設けてあると、防護ネットが登山者や野生動物等が移動する際の障害となる。
<1>三角ネットや支柱のレイアウトの自由度を高くすることと、積雪の捕捉効果を保持持することの両立が可能であること。
<2>定形の三角ネットを使用できて、防護柵のコストアップを回避できること。
<3>防護ネットが登山者や野生動物等が移動する際の障害にならないこと。
本発明の他の形態において、前記防護ネットを構成する正立三角ネットおよび倒立三角ネットが定形の三角ネットまたはパターン化した三角ネットの何れか一種でもよいし、これらの組み合わせでもよい。
本発明の他の形態において、防護ネットの長手方向に沿って、間欠調整部を一定のピッチまたは任意のピッチで形成する。
本発明の他の形態において、前記隣り合う左右一対の正立三角ネットの相対向する一対の斜辺で間欠調整部を画成している。
本発明の他の形態において、前記間欠調整部を間に挟んで隣り合う支柱の上部間を間隔保持材で連結する。
本発明の他の形態において、支柱本体の底部に設けた基板を地面に接地させて支柱を立設してもよいし、支柱本体の下部を地中またはコンクリート基礎に埋設してもよい。
本発明の他の形態において、防護ネットの阻止面と、間欠調整部の内側に張り出して形成された積雪の張出部による疑似阻止面との協働により防護ネットの長手方向に沿って連続して積雪を捕捉可能に構成する。
<1>防護ネットの一部に間隔調整機能を有する間欠調整部を形成することで、間欠調整部を人間や動物の通路空間として活用できるだけではなく、防護ネットによる積雪の捕捉作用を保持しつつ、施工時における三角ネットや支柱のレイアウトの自由度を高めることができる。
<2>特注品の三角ネットを使用せずに、定形またはパターン化した三角ネットを使用して三角ネット製の防護ネットを効率よく経済的に組み立てることができる。
<3>間欠調整部の形成数に比例して、防護ネットの資材コストを低減できるだけでなく、防護ネットの組立作業に要する時間と労力も軽減することができる。
<4>防護ネットを構成する一部の倒立三角ネットの取り付けを省略するだけで、防護ネットの任意の位置に間欠調整部を形成できる。
したがって本発明では、ネット本体の一部を切除せずに間欠調整部を簡単に形成できる。
<5>間欠調整部を間に挟んで隣り合う支柱の上部間に間隔保持材を横架することで、支柱の傾倒を阻止できるので、積雪荷重が作用しても間欠調整部の開放空間を維持することができる。
<6>防護ネットに堆積した雪が押し出されることで間欠調整部の内側に自立した張出部が形成される。
そのため、防護ネットの一部に間欠調整部を形成して阻止面の一部が欠損していても、間欠調整部の内側に張り出した雪の張出部が疑似阻止面機能を発揮するので、防護ネットの全長に亘って積雪を捕捉することができる。
図1〜4に例示した雪崩予防柵10について説明すると、雪崩予防柵10は間隔を隔てて斜面に立設した複数の支柱20と、支柱20の山側斜面側に配置し、複数の三角ネット35の集合体からなる防護ネット30とを具備する。
支柱20は、H鋼やコンクリートを充填した鋼管、PC鋼材を内挿しコンクリートを充填したコンクリート充填鋼管等の剛性部材である。
支柱20の下部は、支柱下部と斜面山側アンカー40の間に配設した上位位置決めロープ45と、支柱下部と斜面谷側アンカー41の間に配設した下位位置決めロープ46等により定位置に位置決めする。
端末の支柱20の上部と側方アンカー42の間には側方控えロープ48が配設してあり、側方控えロープ48が端末の支柱20の左右方向へ向けた傾倒を阻止する。
図2〜4を参照して説明すると、防護ネット30は帯状の阻止面を有するネット状物であり、複数の三角ネット35からなる。
防護ネット30は必要に応じて三角ネット35の片面に金網を重合させて追加配置する形態も含む。
本発明では防護ネット30の阻止面の一部に、扇形を呈する単数または複数の間欠調整部36を設けた。
三角ネット35は三角形を呈する枠ロープ31と、枠ロープ31の内方に一体に編成した内接ネット32とを有し、その素材はワイヤロープ、PC鋼線、PC鋼より線、炭素繊維等のロープ材からなる。
三角ネット35は枠ロープ31を介して支柱20の上部や斜面山側アンカー40に取り付け可能である。
本例では内接ネット32の網目が菱形の形態について示しているが、網目形状はその他に三角形やリング形等でもよい。内接ネット32の網目形状は特に制約がない。
以降の説明に際し、底辺を下位に位置させて取り付ける三角ネット35を正立三角ネット35A、底辺を上位に位置させて取り付ける三角ネット35を倒立三角ネット35Bと定義して説明する。
本例では、理解をし易くするため、両三角ネット35A,35Bの形状および寸法が同一である形態について説明する。
倒立三角ネット35Bは、その底部の左右の角部を隣り合う支柱20,20の上部間に取り付けて懸架すると共に、倒立三角ネット35Bの頂部を斜面山側アンカー40に取り付ける。
両三角ネット35A,35Bの各角部は、図外の連結ロープまたは連結具を介して支柱20の上部と斜面山側アンカー40に連結可能である。
間欠調整部36は阻止面の一部に開設した扇形(または逆三角形)を呈する開放空間であり、倒立三角ネット35Bの外形にほぼ等しい。
扇形とは、防護ネット30を山側斜面または谷側斜面から見たときの形状であり、地表から上方へ向けて開口幅が漸増するV字形またはU字形の開口を指す。
間欠調整部36の左右両側には一対の正立三角ネット35A,35Aが位置し、左右一対の正立三角ネット35A,35Aの相対向する斜辺が間欠調整部36を画成している。
防護ネット30の一部に間欠調整部36を形成する方法としては、防護ネット30を構成する一部のネット本体を切除する方法が考えられるが、切除方法ではネット本体の切除に多くの時間と労力を要する。
したがって本発明では、ネット本体の一部を切除せずに間欠調整部36を簡単に形成できる。
防護ネット30の一部に間欠調整部36を形成したのは、単に人間や動物の通路空間として活用するためだけではなく、防護ネット30による積雪の捕捉作用を保持しつつ、施工時における三角ネット35のレイアウトの自由度を高めるためである。
従来も、正立三角ネットと倒立三角ネットとを交互に配置していたが、現場斜面に起伏変化や勾配変化があると、三角ネットの取付位置の微調整を行っていた。
三角ネットの調整量が累積して大きくなると、定形の三角ネットの設置が難しくなることから、現場に合わせて幅狭または幅広に寸法調整を行った個別製作した調整ネットを間に介装して防護ネットに連続性を持たせていた。
換言すれば、間欠調整部36に隣接する左右両側の正立三角ネット35A,35Aの設置位置や支柱20の間隔を自由に変更できるので、防護ネットを構成する両三角ネット35A,35Bや支柱20のレイアウトの自由度が高くなる。。
したがって、現場の斜面に起伏変化や勾配変化等があっても、定形の三角ネット35A,35Bを使用して防護ネット30を延長することができる。
さらに間欠調整部36に面した左右一対の正立三角ネット35A,35Aの頂部を支える支柱20,20の間隔や立設方向も自由に選択することができる。
間欠調整部36を間に挟んで隣り合う支柱20,20の上部間には、間隔保持材43を横架して支柱20,20の傾倒を阻止する。
間隔保持材43には鋼製または繊維製のロープ材を使用でき、現場で個別に長さ調整をして取り付ける。
間欠調整部36は斜面の起伏等に関係なく、防護ネット30の長手方向に沿って一定間隔で形成してもよいし、任意の間隔で形成してもよい。
前者の場合には、倒立三角ネット35Bを1枚置きに抜いて間欠調整部36を千鳥状に形成する形態の他に、倒立三角ネット35Bを複数枚置きに抜いて間欠調整部36を形成してもよい。
後者の場合は、斜面の起伏状況や勾配変化等を考慮して、防護ネット30の長手方向に沿った任意の位置に間欠調整部36を形成する。
さらにこれら2つの間欠調整部36の形成方法を組み合わせてもよい。
間欠調整部36の最大開口幅には限界があり、間欠調整部36による積雪60の捕捉機能を発揮するにはネットの長手方向に沿った間欠調整部36の最大開口幅を約6m以下に設定することが必要である。
間欠調整部36の最大開口幅が6mを越えると、積雪60の捕捉機能を喪失する。
雪崩予防柵10の施工方法は、アンカー工、支柱20の立設工、防護ネットの組立工を順次行うか、或いはこれらの工程を並行して行うことで雪崩予防柵10を構築する。
以下に主要な工程について詳しく説明する。
隣り合う支柱20,20の間に正立三角ネット35Aと倒立三角ネット35Bを交互に配置して防護ネット30を組み立てる。
防護ネット30の組立途中で、防護ネット30の適宜の位置に扇形の間欠調整部36を形成する。
現場の地形に沢や尾根等の起伏や勾配変化があると、防護ネット30の組立途中で、定形の正立三角ネット35Aと倒立三角ネット35Bを連設できなくなる。
間欠調整部36は三角ネット35A,35Bを連設する際の間隔調整機能(扇形空間の開閉調整機能)を有している。
したがって、現場の地形に起伏や勾配変化があっても、地形に起伏や勾配変化に対応して隣り合う正立三角ネット35A,35Aの取付位置や取付角度、支柱20の立設間隔等を調整することで、定形の三角ネット35A,35Bを連設して防護ネット30を延長することができる。
間欠調整部36の形状は不定形であり、三角ネット35A,35Bや支柱20等の修正程度に応じて間欠調整部36の中心角度が変化する。
防護ネット30の一部に間欠調整部36を形成することで、施工時における三角ネット35のレイアウトの自由度が高くなる。
同図(A)は倒立三角ネット35Bを2枚置きに抜いて間欠調整部36を形成した形態を示し、B)は倒立三角ネット35Bの1枚置きと2枚置きを併用した形態を示し、(C)〜(E)は倒立三角ネット35Bをランダムに抜いた形態を示し、(F)はすべての倒立三角ネット35Bを抜いた形態を示している。
三角ネット35のレイアウトはこれら例示形態に限定されず、これらを組み合わせた形態や他の形態を適用することも可能である。
なお、便宜上、図8では三角ネット35,35Aや間欠調整部36についての符号表記を省略する。
図5,6を参照して間欠調整部36による積雪60の捕捉作用について説明する。
防護ネット30の連続した阻止面上に雪が積もって積雪60を形成する。
防護ネット30の間欠調整部36の形成箇所では、阻止面が欠損しているが、以下のメカニズムにより間欠調整部36で積雪60を捕捉することができる。
防護ネット30の阻止面に堆積した積雪60は崩れずに何層も積層を続ける。
間欠調整部36に隣接する正立三角ネット35A,35A上に堆積した積雪60は、間欠調整部36の内方へ向けて押し出されて自立した張出部61が形成される。
雪圧を受けて張出部61の内部に雪の硬質コアが形成されるため、支持部材がなくとも間欠調整部36の内方へ向けた張り出しが可能となる。
間欠調整部36の内方に左右から張出部61が延出することで、間欠調整部36の空間が縮小していく。
間欠調整部36の根元近くでは、間欠調整部36の内方へ向けて延出した左右の張出部61が結合して連続層で繋がる。
このように、防護ネット30の一部に間欠調整部36を形成して阻止面の一部が欠損していても、張出部61が疑似阻止面機能を発揮するので、防護ネット30の全長に亘って積雪60を捕捉することができる。
防護ネット30の阻止面と、間欠調整部36の内側に張り出して形成された積雪の張出部61による疑似阻止面との協働により防護ネット30の長手方向に沿って連続して積雪を捕捉することができる。
間欠調整部36の内方へ向けて延出し続ける張出部61が一定の延出量を超えると、間欠調整部36の内側に張出部61が自重で落下する。
張出部61が落下して間欠調整部36が当初の広さに戻っても、既述した積雪60の捕捉作用により間欠調整部36の内方に新たな張出部61が形成される。
<1>左右非対称の三角ネット
以上の実施例では、三角ネット35(正立三角ネット35A、倒立三角ネット35B)が左右対称の三角形(正三角形、二等辺三角形)であり、寸法と形状が同一の定形ネットを使用する形態について説明した。
定形の三角ネット35は左右対称の三角形状に限定されず、寸法と形状が同一の左右非対称の三角形を呈する定形ネットを使用してもよい。
<1>パターン化した三角ネット
さらに三角ネット35は、三辺の長さと角度(頂角と底角)が異なる複数種類のパターン化した三角ネット35を併用してもよい。
パターン化した三角ネット35は予め製作しておき、これら複数種類の三角ネット35を現場の地形状況等に応じて使い分けをする。
三角ネット35のパターン数が多すぎると、その管理が煩雑となるため、3〜5パターン程度が望ましい。
本例にあっては、現場の測量に合わせて個別製作する調整ネットを一切使用しないので、先の実施例と同様に、三角ネット35の製作時間を短縮できると共に、三角ネット35の製作コストも低減できる。
20・・・・・支柱
21・・・・・基板
30・・・・・防護ネット
31・・・・・枠ロープ
32・・・・・内接ネット
35・・・・・三角ネット
35A・・・・正立三角ネット
35B・・・・倒立三角ネット
36・・・・・間欠調整部
40・・・・・斜面山側アンカー
41・・・・・斜面谷側アンカー
42・・・・・側方アンカー
43・・・・・間隔保持材
47・・・・・谷側控えロープ
48・・・・・側方控えロープ
Claims (7)
- 所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱と、前記支柱上部に懸架して山側斜面との間に掛け渡した防護ネットとを有する雪崩予防柵であって、
前記防護ネットは三角ネットを正立させた複数の正立三角ネットと、三角ネットの上下を逆転させた複数の倒立三角ネットとを交互に連設してなり、
防護ネットの阻止面の一部に扇形を呈する単数または複数の間欠調整部を形成し、
間欠調整部の形成位置の三角ネットが欠落していることを特徴とする、
雪崩予防柵。 - 前記防護ネットを構成する正立三角ネットおよび倒立三角ネットが定形の三角ネットまたはパターン化した三角ネットの何れか一種またはこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の雪崩予防柵。
- 防護ネットの長手方向に沿って、間欠調整部を一定のピッチまたは任意のピッチで形成したことを特徴とする、請求項1または2に記載の雪崩予防柵。
- 前記隣り合う左右一対の正立三角ネットの相対向する一対の斜辺で間欠調整部を画成したことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の雪崩予防柵。
- 前記間欠調整部を間に挟んで隣り合う支柱の上部間を間隔保持材で連結したことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の雪崩予防柵。
- 支柱本体の底部に設けた基板を地面に接地させて支柱を立設したことを特徴とする、請求項1に記載の雪崩予防柵。
- 防護ネットの阻止面と、間欠調整部の内側に張り出して形成された積雪の張出部による疑似阻止面との協働により防護ネットの長手方向に沿って連続して積雪を捕捉可能に構成したことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の雪崩予防柵。
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