JP5525649B1 - 雪崩予防施設 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】斜面Gに横列に立設した複数の雪崩防止柵10と、隣り合う雪崩防止柵10の間に形成した開放空間15を封鎖するロープネット20とを具備し、ロープネット20がロープ材の両端を分離可能に接続した無端ループ構造であり、隣り合う端部の主柱11,11に複数の係留具30を設け、ロープネット20の一部に作用した積雪荷重をロープの全長に亘って分散伝達し得るように、複数の係留具30を介してロープネット20の一部を端部の主柱11に摺動自在に係留して開放空間15をネット状のロープネット20で封鎖する。
【選択図】図2
Description
雪崩予防柵10は固定柵と吊柵に大別される。
図7を参照して説明すると、固定柵は主柱11と、主柱11に横架した横材(横バー)12とにより形成した柵面13と、柵面13を斜面下流側で支える控柱14とを具備していて、主柱11および控柱14をコンクリート基礎にそれぞれ固定し、柵面13に負荷する積雪荷重を主柱11および控柱14で支持する構造体である(特許文献1)。
吊柵は、控柱14に替えて吊りワイヤーで柵面13を吊るもので、斜面山側に設けたアンカーと柵面13の間を吊りワイヤーで連結し、柵面13に負荷する積雪荷重を吊りワイヤーおよびアンカーで支持する構造体である(特許文献2)。
複数の雪崩予防柵10を横列配置する場合の水平間隔Lは、設計で標準化されている(1m〜2m)。
<1>雪崩予防柵10の水平間隔Lは積雪が自己崩壊しない間隔に設計してあり、隣り合う雪崩予防柵10の間の開放空間15を通じて雪が抜け落ちることは考えられていなかった。
地球の温暖化に伴い、近年では隣り合う雪崩予防柵10の開放空間15を通じた雪の抜け落ち現象を伴う雪崩の発生事例が増える傾向にあり、その対策工の開発が求められている。
<2>雪崩予防柵10の開放空間15を通じた雪の抜け落ちを防止する手段として、開放空間15の近傍の真上または真下に別途に雪崩予防柵10を追加設置したり、隣り合う雪崩予防柵10の間に複数の横材12を架け渡した高剛性の封鎖体で開放空間15を封鎖したりする方法が検討されている。
基礎コンクリートを含めて雪崩予防柵10を追加建設する前者の対策工は、基礎工や設置スペースの確保が必要であり、追加柵の建設に多大のコストと時間を必要とする。
開放空間15を高剛性の封鎖体で封鎖する後者の対策工は、前者と比べてコストおよび時間を多少は圧縮できるものの、開放空間15の封鎖に要するコストおよび時間は依然大きなものである。
<3>雪崩予防柵10の開放空間13を高剛性の封鎖体で封鎖した場合には、雪の抜け落ち防止効果が向上する反面、夏場等において登山者や野生動物の通行の妨げとなる。
必要に応じて開放空間13を封鎖する高剛性の封鎖体の撤去および再設置を行うことも可能であるが、開放空間13の開閉作業に多くの労力と時間を要する。
<4>斜面に堆積した積雪荷重の大きさは、積雪深さにより異なる。
雪崩予防柵10の開放空間13を高剛性の構造体で封鎖する場合、積雪深さに関係なく予想される最大の積雪荷重に基づいて高剛性の構造体を強度設計しなければならず、過剰設計となり易い。
<1>簡易な手法によって隣り合う雪崩予防柵の開放空間を通じた雪の抜け落ちを効果的に防止すること。
<2>封鎖体に作用する積雪荷重を雪崩予防柵に対して均一に伝達すること。
<3>隣り合う雪崩予防柵相互間における積雪荷重の伝達性能を高められること。
本発明の他の形態において、ロープネットの全面に亘り、ロープネットの開口より小さな開口を有する補助網を追加設置してもよい。
本発明の他の形態において、前記係留具は、主柱の側面を挟持可能な外挟持板と、該外挟持板の両端部を締め付け可能な螺着手段とを具備し、前記外挟持板の外方にロープネットを係留可能な係留体が設けてある。
本発明の他の形態において、前記係留具は、主柱の相対向する一対の側面を挟持可能な外挟持板および内挟持板と、これらの両挟持板の両端部間を締め付け可能な螺着手段とを具備し、前記外挟持板の外方にロープネットを係留可能な係留体が設けてある。
本発明の他の形態において、隣り合う主柱の間に、主柱の長手方向に沿って複数のロープネットを階層的に配置してもよい。
本発明の他の形態において、隣り合う主柱の間に、ロープネットが互いに交錯するように、複数のロープネットの係留位置を上下にずらして配置してもよい。
本発明が前提とする雪崩予防柵は、主柱と、主柱に横架した横材とにより形成した柵面を有する。
<1>隣り合う雪崩予防柵の間にネット状のロープネットを配置して封鎖するだけの簡易な手法によって隣り合う雪崩予防柵の開放空間を通じた雪の抜け落ちを効果的に防止することができる。
したがって、隣り合う雪崩予防柵の間の開放空間を通じた雪のすり抜けを防止するために、基礎コンクリートを含めて雪崩予防柵を追加建設する必要がなくなり、低コストで、かつ短い工期で対策工を施工することができる。
<2>ロープネットを構成するロープ材の両端を分離してロープネットを解体撤去するだけの簡単な作業で、雪崩予防柵の開放空間を開放することができる。
したがって、冬期以外の時期において雪崩予防柵の開放空間を開放すると、登山者や野生動物の通行を可能とするとともに、雪崩予防柵のメンテナンスがし易くなる。
<3>隣り合う雪崩予防柵の間に係留するロープネットが無端ループ構造であり、ロープネットの一部に作用した積雪荷重をロープの全長に亘って分散して伝達することができる。
そのため、斜面に堆積した積雪深さが変化してもロープネットにおける積雪荷重をロープの全長に亘って均一に負担できるだけでなく、ロープネットに作用する積雪荷重を雪崩予防柵に対して均一に伝達して支持することができる。
<4>隣り合う雪崩予防柵の間にロープネットを係留することで、隣り合う雪崩予防柵の間を連続化することができる。
したがって、雪崩予防施設を構成する一部の雪崩予防柵、またはロープネットに過大な積雪荷重が作用した場合には、過大な積雪荷重を雪崩予防施設全体に分散伝達して支持することができる。
図1,2を参照して説明すると、本発明に係る雪崩予防施設は、斜面Gに間隔を隔てて立設した複数の雪崩予防柵10と、隣り合う雪崩予防柵10の間に設置した封鎖体であるロープネット20と、隣り合う雪崩予防柵10,10の端部の主柱11,11に、該主柱11の長手方向に沿って形成した複数の係留具30とを具備し、前記複数の係留具30を介してロープネット20の一部を雪崩予防柵10の端部の主柱11に摺動自在に係留してある。
また必要に応じてロープネット20の全面に亘って補助網40を追加設置する場合もある。
雪崩予防柵10は公知の固定柵または吊柵を含む。
図1では雪崩予防柵10が、主柱11と、主柱11に横架した横材12とにより形成した柵面13と、柵面13を斜面下流側で支える控柱14とを具備した公知の固定柵である場合について示す。
雪崩予防柵10には斜面山側に設けたアンカーと、柵面13およびアンカー間を連結する吊りワイヤーで支持する公知の吊柵を含む。
本発明が前提とする雪崩予防柵10は、既設雪崩予防柵または新設雪崩予防柵を問わず、少なくとも柵面13を有していればよい。
柵面13の構成材である主柱11は、H型鋼、ボックス鋼、鋼管、コンクリート充填鋼管等の高強度部材からなり、斜面Gに対して埋設、または地表に接地する形態で立設されている。
柵面13の構成材である横材12は、帯板、角パイプ等のボックス材、管パイプ等の管体からなり、その素材は鋼または高強度樹脂等の公知の素材で形成されている。また横材12には可撓性を有するロープ材を含む。
横材12は雪のすり抜けを阻止できる間隔を隔てて横方向に向けて並設されていて、主柱11との交差部をボルトまたは溶接による一体に固定して柵面13を形成している。
雪崩予防柵10は所定の水平間隔を隔てて斜面Gに横列配置されていて、隣り合う雪崩予防柵10,10の間に開放空間15を形成している。
係留具30はロープネット20の一部を雪崩予防柵10の端部の主柱11に摺動自在に係留するための治具であり、雪崩予防柵10の端部の主柱11に対して、主柱11の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて取着する。
図3,4に例示した係留具30について説明すると、係留具30は、主柱11の相対向する一対の側面を挟持可能な外挟持板31および内挟持板32と、これらの両挟持板31,32の両端部間を締め付け可能な螺着手段である一対のボルト33、ナット34とを具備する。
外挟持板31の外方にはロープネット20を係留する手段としてドラム状の係留体35が設けてある。
係留体35は一対のブラケット36を介して外挟持板31に対して回転可能または回転不能に支持されている。
外挟持板31と係留体35の間にはロープネット20を挿通可能な空間が形成されている。
外挟持板31および内挟持板32の両端部にはボルト穴が開設してある。
係留具30の他の形態としては、ボルト33に主柱11を抱持して外装可能な寸法のU字形ボルトを使用して内挟持板32を省略することも可能である。
また図示を省略するが、ドラム状の係留体35に代えて、鋼棒をU字形に屈曲したフック状の係留体の両端部を外挟持板31に固着してもよい。
さらに、鋼棒をU字形に屈曲したフック状の係留体の両端部を主柱11に直接固着してもよい。
少なくとも係留体35は、ロープネット20を係留する接触部位が湾曲形状を呈している。
ロープネット20は隣り合う雪崩予防柵10,10間の開放空間15を封鎖可能なネット状の柵であり、雪の通り抜け防止機能と、ロープネット20の全長に亘って積雪荷重を分散伝達する機能と、隣り合う複数の雪崩予防柵10を連続化する機能とを有する。
ロープネット20は1本または複数本のロープ製のループからなり、ロープ材の両端を固定してループを形成している。
ロープネット20は隣り合う雪崩予防柵10,10に対して着脱可能である。
ロープネット20は引張強度に優れたロープ材からなり、例えば鋼製ロープ、高強度繊維製ロープ、樹脂製ロープ等を適用できる。
ロープネット20は隣り合う主柱11,11間の開放空間15を封鎖し得るように、相対向する端部の主柱11,11間に配置されている。
図2を参照してロープネット20の配置形態について説明する。
本例では一本のロープ材を使用し、隣り合う左右の主柱11,11間に一筆書きをしたようにロープ材を配索した形態を示す。
すなわち、係留具30を介して隣り合う左右の主柱11,11間にロープ材を左右交互に係留しながらジグザグ状に横架し、ロープ材の両端部を固定して最終的に無端のループ構造にする。
ロープネット20を構成する連続性を有するロープ材のうち、最上位と最下位のロープ材は水平に配索され、それ以外の部位はロープ材がクロスして配索される。
ロープネット20を無端のループ構造としたのは、ロープネット20に作用する積雪荷重をロープネット20の全長に亘って分散伝達するためである。
図5,6にロープネットの他の配置形態を示す。
図5は複数のロープネットを階層的に分割配置した形態であり、隣り合う主柱11,11間に複数(本例では3本)のロープネット20A,20B,20Cを階層的に配索し、これら複数のロープネット20A,20B,20Cで以て開放空間15を封鎖する形態を示す。
図6はロープネットが互いに交錯するように、複数のロープネットの係留位置を上下にずらして配置した形態であり、各ロープネット20D,20Eの係留ピッチを広げて隣り合う主柱11,11間に複数(本例では2本)ロープネット20D,20Eを配索して開放空間15を封鎖する形態を示す。
補助網40はロープネット20の開口より小さな開口を有する雪のすり抜けを防止する網体であり、例えばエキスパンドメタル、金網等を適用できる。
補助網40は必須ではなく省略する場合もある。
つぎに雪崩予防施設の施工方法について説明する。
つぎに雪崩防備施設の施工方法について説明する。
雪崩予防柵10は図7に示したように隣り合う雪崩予防柵10の間に開放空間を形成していて、積雪時に開放空間15を通じて雪が抜け落ちる恐れがある。
そこで、ロープ材と係留具30を現場に搬入して、以下の要領で隣り合う雪崩予防柵10の間にロープネット20を組み付けて開放空間15を封鎖する。
図2,3に示すように、主柱11の長手方向に沿って所定の間隔で係留具30を設置する。
係留具30を設置には、主柱11の内外両側面に外挟持板31と内挟持板32を配置し、両挟持板31,32の間をボルト33、ナット34で締結するだけでよく、係留具30の設置作業に溶接機等は不要である。
相対抗する主柱11に設置した係留具30にロープ材を挿通して、隣り合う主柱11,11間に無端ループ構造のロープネット20を張設する。
必要に応じてロープネット20の全面に亘って補助網40を追加設置する。
さらに本発明では、相対抗する主柱11,11に設置した係留具30にロープ材を架け渡すだけの簡単な作業で以て、ロープネット20の現場組み立てと、雪崩予防柵10との連結作業を同時に行うことができる。
つぎに雪崩防備施設の作用について説明する。
本発明に係る雪崩予防施設は、隣り合う各雪崩予防柵10の間に形成された開放空間15がロープネット20で封鎖してある。
したがって、雪崩予防柵10の上流に堆積した積雪は、雪崩予防柵10で直接支持され、ロープネット20の上流に堆積した積雪は、ネット状のロープネット20を介して雪崩予防柵10で支持される。
ロープネット20に支持された積雪は、ロープネット20単独、または補助網40との協働により、雪のすり抜けが規制される。
ネット状のロープネット20は無端のループ構造を呈している。
そのため、ロープネット20の一部に大きな積雪荷重が作用すると、その積雪荷重をロープネット20の全長に亘り分散して均一化するので、ロープネット20の一部に積雪荷重が局所的に作用することを回避できる。
殊に積雪の初期においては、積雪に直接触れていない上位のロープ材でも積雪荷重を均等に支持することになる。
したがって、ロープネット20に低強度のロープ材を使用しても積雪荷重に十分対抗することができる。
さらに、ロープネット20を支える主柱11側では、ロープネット20を経由した積雪荷重を主柱10全体で均一に支持できるので、雪崩予防柵10に偏荷重となって作用することがない。
隣り合う各雪崩予防柵10の間は、ロープネット20で一体に連結してあり、雪崩予防柵10互間における積雪荷重の伝達が可能である。
そのため、雪崩予防施設を構成する一部の雪崩予防柵10、またはロープネット20に過大な積雪荷重が作用した場合には、過大な積雪荷重を雪崩予防施設全体に分散伝達して支持することができる。
したがって、一部の雪崩予防柵10に積雪荷重が集中的に作用して雪崩予防柵10が転倒することを未然に防止できる。
つぎにロープネット20の撤去方法について説明する。
雪解け時期において、ロープネット20を解体撤去して、封鎖していた雪崩予防柵10の開放空間15を開放する。
ロープネット20の解体は、ロープ材の接続端を分離してループを解き、さらに主柱11に係留したロープ材を抜き取るだけの簡単な作業でロープネット20を解体撤去できる。
隣り合う雪崩予防柵10の間に開放空間15を確保することで、登山者や野生動物の通行を可能とする。
さらに、開放空間15を通じた補修資材の搬入が可能となるので、冬季に傷んだ雪崩予防柵10のメンテナンスがし易くなる。
10・・・・・雪崩予防柵
11・・・・・主柱
12・・・・・横材
13・・・・・柵面
14・・・・・控柱
20・・・・・ロープネット(封鎖体)
30・・・・・係留具
31・・・・・外挟持板
32・・・・・内挟持板
33・・・・・ボルト
34・・・・・ナット
35・・・・・係留体
40・・・・・補助網
Claims (7)
- 斜面に間隔を隔てて横列に立設した複数の雪崩予防柵と、隣り合う雪崩予防柵の間に形成した開放空間を封鎖する封鎖体とを具備する雪崩予防施設であって、
前記封鎖体がロープ材の両端を分離可能に接続した無端ループ構造のロープネットであり、
隣り合う雪崩予防柵の端部の主柱に、該主柱の長手方向に沿って複数の係留具を形成し、
前記ロープネットの一部に作用した積雪荷重をロープの全長に亘って分散伝達し得るように、前記複数の係留具を介してロープネットの一部を雪崩予防柵の端部の主柱に摺動自在に係留して前記開放空間をネット状のロープネットで封鎖したことを特徴とする、
雪崩予防施設。 - 前記ロープネットの全面に亘り、ロープネットの開口より小さな開口を有する補助網を追加設置したことを特徴とする、請求項1に記載の雪崩予防施設。
- 前記係留具は、主柱の側面を挟持可能な外挟持板と、該外挟持板の両端部を締め付け可能な螺着手段とを具備し、前記外挟持板の外方にロープネットを係留可能な係留体を設けたことを特徴とする、請求項1または2に記載の雪崩予防施設。
- 前記係留具は、主柱の相対向する一対の側面を挟持可能な外挟持板および内挟持板と、これらの両挟持板の両端部間を締め付け可能な螺着手段とを具備し、前記外挟持板の外方にロープネットを係留可能な係留体を設けたことを特徴とする、請求項1または2に記載の雪崩予防施設。
- 隣り合う主柱の間に、主柱の長手方向に沿って複数のロープネットを階層的に配置したことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の雪崩予防施設。
- 隣り合う主柱の間に、ロープネットが互いに交錯するように、複数のロープネットの係留位置を上下にずらして配置したことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の雪崩予防施設。
- 前記雪崩予防柵が、主柱と、主柱に横架した横材とにより形成した柵面を有することを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の雪崩予防施設。
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