JP6876893B2 - 酸化イットリウム膜の製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
[1] イットリウムを含む金属ハロゲン化物または有機金属錯体の原料溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリアガスで成膜室内に設置されている基体まで搬送し、ついで前記ミストまたは液滴を熱反応させて前記基体上に酸化イットリウム膜を成膜することを特徴とする酸化イットリウム膜の製造方法。
[2] 原料溶液が有機金属錯体を含む前記[1]記載の製造方法。
[3] 有機金属錯体がイットリウムアセチルアセトナート錯体である前記[2]に記載の製造方法。
[4] 原料溶液の溶媒がアルコールと水との混合溶媒である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] アルコールが低級アルコールである前記[4]記載の製造方法。
[6] アルコールが混合溶媒中に1〜10モル%含まれている前記[4]または[5]に記載の製造方法。
[7] キャリアガスが不活性ガスである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 熱反応を、400℃〜600℃の温度範囲内にて行う前記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 原料溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリアガスで成膜室内に設置されている基体まで搬送し、ついで前記ミストまたは液滴を熱反応させて前記基体上に酸化イットリウム膜を成膜するための前記原料溶液であって、イットリウムを含む金属ハロゲン化物または有機金属錯体からなることを特徴とする、原料溶液。
[10]有機金属錯体からなる前記[9]記載の原料溶液。
[11]有機金属錯体がイットリウムアセチルアセトナート錯体である前記[10]記載の原料溶液。
[12]溶媒がアルコールと水の混合溶媒である前記[9]〜[11]のいずれかに記載の原料溶液。
[13]アルコールが低級アルコールである前記[12]記載の原料溶液。
[14]アルコールが混合溶媒中に1〜10モル%含まれている前記[12]または[13]に記載の原料溶液。
原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒がアルコールを含むのが好ましく、水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましく、水と低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)との混合溶媒であるのが最も好ましい。このような好ましい溶媒を用いれば、他の溶媒を用いたときよりも、酸化イットリウム膜がより透明でかつより厚膜なものとすることができ、さらに、膜質もより優れたものとすることができる。前記混合溶媒におけるアルコールの含有量は特に限定されないが、混合溶媒中0.1〜30モル%であるのが好ましく、1〜10モル%であるのがより好ましい。
霧化・液滴化工程は、前記原料溶液を霧化または液滴化する。霧化手段または液滴化手段は、原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストが、衝突エネルギーによる損傷がないためにより好ましい。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1〜10μmである。
搬送工程では、キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を成膜室内に搬送する。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。本発明においては、前記キャリアガスが不活性ガスであるのが好ましい。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001〜2L/分であるのが好ましく、0.1〜1L/分であるのがより好ましい。
成膜工程では、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、前記基体上に前記酸化イットリウム膜を成膜する。熱反応は、熱でもって前記ミストまたは前記液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、400℃〜600℃が最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、1μm以上に設定することができる。
1.成膜装置
図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置1を説明する。ミストCVD装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排出する排気口11とを備えている。なお、ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
水とメタノールとの混合溶媒(水:メタノール=5:95(体積比))に、イットリウムアセチルアセトナートを0.05モル/Lの濃度となるように混合して原料溶液を調整した。
上記2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、サファイア基板、ガラス基板およびシリコン基板をそれぞれホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて成膜室7内の温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a、3bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2a、2bからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に導入され、大気圧下、500℃にて、成膜室7内でミストが熱反応して、基板10上に酸化イットリウム膜が形成された。なお、膜厚は1.1μmであり、成膜時間は30分間であった。
上記4.にて得られた酸化イットリウム膜は、透明な連続膜であり、単層膜であった。また、X線回折装置を用いて膜の同定を実施したところ、得られた膜はいずれもY2O3膜であった。また、機械的に基板から剥離しようとしても全く剥離せず、良好な密着性を有していた。また、得られた酸化イットリウム膜の光透過率を測定したところ、図2の通り、波長350nm〜800nmにおける光透過率が90%以上であった。また、原子間力顕微鏡(AFM)にて膜表面を観察したところ、図3の通り、サファイア基板上に形成された酸化イットリウム膜の10μm角における自乗平均粗さ(RMS)が27.38nmであった。また、図4の通り、ガラス基板上に形成された酸化イットリウム膜の1μm角における自乗平均粗さ(RMS)が46.02nmであった。また、図5の通り、シリコン基板上に形成された酸化イットリウム膜の10μm角における自乗平均粗さ(RMS)が34.83nmであった。
成膜時間を100分間としたこと以外は、実施例1と同様にして透明な酸化イットリウム膜を得た。得られた膜が酸化イットリウム膜であることは上記実施例1と同様にして確認した。得られた酸化イットリウム膜の膜厚は、4.6μmであった。
キャリアガスの流量を3.0L/分としたこと、及び成膜時間を140分間としたこと以外は、実施例1と同様にして透明な酸化イットリウム膜を得た。得られた膜が酸化イットリウム膜であることは上記実施例1と同様にして確認した。また、得られた酸化イットリウム膜の膜厚は、4.1μmであった。
成膜条件を500℃30分および400℃30分としたこと以外は、実施例1と同様にして透明な酸化イットリウム膜を得た。得られた膜が酸化イットリウム膜であることは上記実施例1と同様にして確認した。また、得られた酸化イットリウム膜の膜厚は、1.7μmであった。
成膜温度を400℃とし、成膜時間を60分としたこと以外は、実施例1と同様にして透明な酸化イットリウム膜を得た。得られた膜が酸化イットリウム膜であることは上記実施例1と同様にして確認した。また、得られた酸化イットリウム膜の膜厚は、1.7μmであった。
2a キャリアガス源
2b キャリアガス(希釈)源
3a 流量調節弁
3b 流量調節弁
4 ミスト発生源
4a 原料溶液
4b ミスト
5 容器
5a 水
6 超音波振動子
7 成膜室
8 ホットプレート
9 供給管
10 基板
11 排気口
Claims (7)
- イットリウムを含む金属ハロゲン化物または有機金属錯体の原料溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴を、不活性ガスであるキャリアガスで成膜室内に設置されている基体まで搬送し、ついで前記ミストまたは液滴を熱反応させて前記基体上に酸化イットリウム膜を膜厚が1μm以上になるまで成膜することを特徴とする酸化イットリウム膜の製造方法。
- 原料溶液が有機金属錯体を含む請求項1記載の製造方法。
- 有機金属錯体がイットリウムアセチルアセトナート錯体である請求項2に記載の製造方法。
- 原料溶液の溶媒がアルコールと水との混合溶媒である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- アルコールが低級アルコールである請求項4記載の製造方法。
- アルコールが混合溶媒中に1〜10モル%含まれている請求項4または5に記載の製造方法。
- 熱反応を、400℃〜600℃の温度範囲内にて行う請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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