JP6137668B2 - 酸化亜鉛結晶層の製造方法及びミスト化学気相成長装置 - Google Patents
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Description
現行のLEDは、発光層が窒化インジウムガリウム(InGaN)材料から成っているが、希少金属であるインジウムの枯渇が懸念されている。
そのため、代替材料の開発が急務となっており、その代替材料候補の一つとして酸化亜鉛(ZnO)が注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
酸化亜鉛の原料である亜鉛は、現在あらゆるLEDの母材材料となっているガリウムと比較して、資源として豊富に地球上に存在し、ガリウムより非常に安価な材料であり、低価格化に向けて足り得る材料である。
そのため、従来の極性面(c面)に加えて、a面やm面といった非極性面が最近注目されている。非極性面においては、極性面で問題となっていたピエゾ分極による量子井戸の発光効率の低下が、非極性面を用いることによって克服されるからである。
<1> 酸化亜鉛前駆体を含む原料溶液を霧化して発生したミストをキャリアガスによって基板上に搬送し、該基板上で熱化学反応させて酸化亜鉛層を形成するミスト化学気相成長法によって、表面の結晶面がm面であるサファイア基板上に酸化亜鉛をエピタキシー成長で結晶成長させ、前記サファイア基板上に表面結晶面が非極性面である酸化亜鉛結晶層を形成する酸化亜鉛結晶層の製造方法。
<2> 形成される酸化亜鉛結晶層が、単結晶である前記<1>に記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
<3> 前記サファイア基板温度が、600℃以上750℃以下である前記<1>または<2>に記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
<4> 前記原料溶液における溶媒が、水又は水を主体とする溶媒である前記<1>から<3>のいずれかに記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
<5> 前記酸化亜鉛前駆体が、塩化亜鉛である前記<1>から<4>のいずれかに記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法に用いるための装置であって、
熱分解性の酸化物前駆体を含む原料溶液を霧化して発生したミストをキャリアガスによって基板上に搬送し、該基板上で熱化学反応させて、薄膜状の酸化物結晶層を形成するためのミスト化学気相成長装置であって、
成長室と、
超音波振動子により前記原料溶液を霧化してミストを発生させるミスト発生器と、
前記ミスト発生器にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、
前記ミスト発生器で発生したミストをキャリアガスによって前記成長室下方から内部へ供給する供給管と、
を備え、
前記成長室は、成長室内の上部中央に設置され、軸線を中心に回転可能な回転ステージと、前記回転ステージに保持された基板と、前記基板を加熱するためのヒーターと、前記供給管と連結し前記基板に対してミストを下方から上方に垂直方向に供給するノズルと、
を有し、
前記基板が、m面サファイア基板であり、前記ノズルが、前記基板との距離を可変可能なノズルであるミスト化学気相成長装置。
また、本発明のミスト化学気相成長装置によれば、より広い基板に均一性高く、酸化亜鉛結晶層等の薄膜状の酸化物結晶層を形成することができる。
まず、酸化亜鉛前駆体を含む原料溶液と、基板を大気圧下のチャンバ(石英炉)内に載置する。次に、基板を所定の温度にまで加熱した上で、原料溶液に超音波を印加することにより、霧化して発生した酸化亜鉛前駆体を含むミストを形成する。同時にキャリアガスを供給し、ミストをガス流に乗せてチャンバ内の基板上に輸送する。その結果、ミストが基板表面と熱化学反応し、基板表面上に酸化亜鉛からなる結晶層が形成される。
ミストCVD法は、特殊な装置や真空を必要とせず、大気圧下で成膜することが可能であり、安全で安価なプロセス、省エネルギーで環境負荷が小さいという利点がある。
図2に示す本発明の垂直供給方式の成膜装置は、熱分解性の酸化物前駆体を含む原料溶液を霧化して発生したミストをキャリアガスによって基板上に搬送し、該基板上で熱化学反応させて、薄膜状の酸化物結晶層を形成するためのミスト化学気相成長装置であって、成長室と、超音波振動子により前記原料溶液を霧化してミストを発生させるミスト発生器と、前記ミスト発生器にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記ミスト発生器で発生したミストをキャリアガスによって前記成長室下方から内部へ供給する供給管と、を備え、前記成長室は、成長室内の上部中央に設置され、軸線を中心に回転可能な回転ステージと、前記回転ステージに保持された基板と、前記基板を加熱するためのヒーターと、前記供給管と連結し前記基板に対してミストを下方から上方に垂直方向に供給するノズルと、を有することを特徴とする。
一方、熱分解性の酸化物前駆体を含む原料溶液を使用して、酸化亜鉛以外の酸化物の薄膜状の酸化物結晶層の形成に用いることもできる。
対象となる酸化亜鉛以外の酸化物としては、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化チタン(TiO2)、酸化銅(CuO)や複合酸化物であるMgZnOなどが挙げられ、熱分解性の酸化物前駆体としては、それぞれの塩化物、硝酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
下方から基板中心に対してミストを垂直方向に流しながら基板回転を行うことにより、
基板の高速回転により、基板に接するミスト流体と基板表面との摩擦力を介して、基板表面付近のミスト流体が遠心力により基板外周方向へ移動する。これにより、基板下部のミスト流体が基板方向(上昇方向)に吸い込まれ、基板全面にミスト流体が均一に供給される。この結果、ミストを平行方向に流す方式に問題となる基板面内の位置による膜質、膜厚のむらが減少し、基板上に形成される薄膜の厚さが均一になる。特に原料溶液濃度やキャリアガス流量や、ミストを流入させるノズル位置を適宜調整することで、より高均一成膜(膜厚・膜質とも±10%以内)を実現することができる
これに対し、本発明の垂直供給方式の成膜装置は、ノズルにより基板に対してミストを下方から上方に垂直方向に供給するため、上記対流に起因してミスト供給が不安定になる問題や、ノズルから液だれを起こす問題を回避することができるという利点もある。
なお、基板とノズルの距離が小さいと形成される酸化物膜の成長速度は大きくなるが、基板内での膜厚分布が大きくなる傾向にあり、基板とノズルの距離が大きいと酸化物膜の成長速度は小さくなるが、基板内での膜厚分布が小さくなる傾向にある。そのため、酸化物膜の成長速度と、面内均一性のバランスを考慮して基板とノズルの距離が決定される。
本発明の成膜装置を、酸化亜鉛結晶層用成膜装置として使用する場合、使用する基板はサファイア基板が好適であり、その面はc面、a面又はm面のいずれでもよいが、本発明の酸化亜鉛結晶層の製造方法を採用する点で、表面の結晶面がa面又はm面であるサファイア基板が好適であり、特に表面の結晶面がm面であるサファイア基板であると、非極性面の単結晶酸化亜鉛層がエピタキシー成長するため好ましい。
原料溶液における溶媒としては、使用される酸化亜鉛前駆体に対する溶解度が大きな溶媒が選択される。すなわち、酸化亜鉛前駆体の種類によって、水、メタノール、エタノール等の極性溶媒、アセトン、トルエン等の非極性溶媒のうち好適な溶媒が適宜選択される
この中でも、装置内の汚染が起こりづらく、環境負荷を低減でき、低コストである点で、前記原料溶液における溶媒が、水又は水を主体とする溶媒であることが好ましく、特に水のみであることが好ましい。
原料溶液における溶媒として水又は水を主体とする溶媒を使用する場合には、酸化亜鉛前駆体は、水溶性亜鉛塩であることが好ましい。
本発明の製造方法において、特に塩化亜鉛は、結晶性が高い酸化亜鉛結晶層を形成できるため、好適な亜鉛前駆体の一つである。
例えば、酸化亜鉛前駆体が塩化亜鉛、溶媒が水の場合には、通常、0.01〜0.5mol/Lである。
好適な一例を挙げると、原料溶液に酸化亜鉛前駆体と共にマグネシウム(Mg)前駆体を含有させて同様にミストCVDを行うことでMgZnO層を形成することができる。より具体的には、ベースとなる塩化亜鉛水溶液に、酢酸マグネシウム水溶液を適量混ぜた原料溶液を用いて、ミストCVDを行えばよい。
また、n型MgZnOについても、III族であるガリウム(Ga)やアルミニウム(Al)を含む水溶液をベースとなる酸化亜鉛前駆体とMg前駆体を含む水溶液に混合することで、結晶中の亜鉛(Zn)サイトにこれらの原子が置換して入ることで、電子の放出が可能となり、ミストCVDにより形成される酸化亜鉛結晶層をn型化することが出来る。
さらに、p型化に関しても、V族である窒素(N)、燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)を含む水溶液をベースとなる酸化亜鉛前駆体とMg前駆体を含む水溶液に混合することで、結晶中の酸素(O)サイトにこれらの原子が置換して入ることで、正孔の放出が可能となりp型化することが出来る。
キャリアガスは、原料溶液を霧化して発生したミストをミストCVD装置の基板上に輸送するためのガスであり、酸化亜鉛前駆体及び溶媒の種類を勘案して適宜決定される。
キャリアガスとして具体的にはアルゴン等の不活性ガス、酸素、水蒸気等の酸化性ガス、窒素及びこれらのガスの混合ガスが用いられる。
原料溶液の霧化方法としては特に制限はないが、均一なミストが形成できるという点で超音波振動子によってミストを発生させる超音波法が好ましい。
基板として、表面の結晶面がa面((11-20)面)又はm面((10-10)面)になるように形成されたサファイア基板が用いられる。特に表面の結晶面が、m面サファイア基板であると、非極性面の酸化亜鉛結晶層が形成できるため好ましい。
酸化亜鉛は、通常半導体としてn型の性質を有しており、電気素子への応用が可能である。酸化亜鉛の結晶性は、光学特性・電気特性に関わる重要なパラメータであり、結晶性を改善することにより、電気特性において、格子・粒界・不純物散乱を低減でき、移動度を高めることができる。
本発明の成膜方法によれば、表面の結晶面がa面又はm面であるサファイア基板上に結晶性の高い酸化亜鉛結晶層の製造することができるので、当該酸化亜鉛結晶層は、例えば、LED、透明電極、光センサ、パワートランジスタ、薄膜トランジスタ等への応用が可能である。
紫外LEDは、n型MgZnO、i型ZnO(発光層)、p型MgZnO及び基板からなる。MgZnOはZnOにMgを添加したものであり、ZnOよりバンドギャップが大きい。このためZnOを用いたLEDではMgZnOをn型・p型半導体に利用することで、エネルギーバンドの井戸型構造を形成することができ、キャリアの閉じ込めによる発光効率の向上へと繋がる。
これらのn型MgZnO、i型ZnO(発光層)、p型MgZnOは、結晶性が高いことが望まれるが、ZnO結晶以外の基板を用いると結晶性の高い、MgZnOを形成することは困難である。
そこで、基板上に格子定数の違いを緩和させるための結晶性のZnOバッファ層を形成し、LEDの結晶性を向上させることが好適である。このZnOバッファ層は、酸化亜鉛単結晶であることに加え、無極性面配向単結晶酸化亜鉛であることが好ましい。発生する内部電界の影響を受けない非極性面を利用することにとってLEDの発光効率が上昇するためである。本発明の製造方法では、表面の結晶面がm面であるサファイア基板上にZnOバッファ層に好適な酸化亜鉛結晶層を形成することができる。
また、図3(b)に示すように、発光層にi型ZnCdOを用い、これをn型ZnO層とp型MgZnO層とで挟んだ構造の可視LEDも好適な応用例の一つである。
単結晶酸化亜鉛薄膜を形成するのに有用な酸化亜鉛前駆体と基板を選定するため、以下の実験を行った。
図1に示した構成を有するミストCVD装置を用いて、酸化亜鉛結晶層の製造を行った。同装置において、濃度0.1mol/Lの酢酸亜鉛水溶液、又は濃度0.1mol/Lの塩化亜鉛水溶液を超音波振動子によって霧化し、発生したミストを窒素ガス(流量20L/分)によって、a面サファイア基板(2インチ基板)、m面サファイア基板(2インチ基板)上に搬送し、熱化学反応させることによって成膜した。基板温度は、基板の中心位置で測定した。
なお、成膜時間は全て1時間であり、バッファ層は用いていない。成膜時の基板温度を700℃として、それぞれの酸化亜鉛前駆体と基板で酸化亜鉛結晶層を成膜した試料の表面形態を走査型電子顕微鏡(SEM)で評価した。結果を図4に示す。また、基板の中心位置でのX線回折測定(XRD)で結晶性を評価した。結果を図5に示す。
また、図5からa面サファイア基板を使用した場合、酸化亜鉛薄膜は(0002)面と(10-11)面の2方向に成長していることが分かる。一方、m面サファイア基板を使用した場合は(10-10)面が単一で成長していることが分かる。
また、基板面内回転によるφスキャン法を用いたX線回折測定の結果から、形成されたm面酸化亜鉛結晶層はm面サファイア基板に対し面内で結晶軸が一致していることが確認された。このことから、基板に対してエピタキシーしていることが判明した(図6(a),(b)参照)。すなわち、2インチm面サファイア基板内の少なくとも一部の領域で単結晶ZnO薄膜が形成されていることが示された。
ここで、結晶を[0002]方向に成長させLEDを形成すると、自発分極の効果からキャリアの波動関数がずれ、電子と正孔の再結合確率が低下、つまり量子効率が悪化してしまう可能性がある。[10-10]方向に成長させた酸化亜鉛は[0002]方向に対して垂直であり、自発分極の影響を回避できるため、量子効率の良いLEDの形成に向いている。
以上の結果から、本発明の製造方法では、a面、m面サファイア基板のいずれにも結晶性の酸化亜鉛層が成膜できるが、量子効率の良いLEDの形成にはm面サファイア基板がより適しているといえることが判明した。
図1に示した構成を有するミストCVD装置において、濃度0.1mol/Lの塩化亜鉛水溶液を超音波振動子によって霧化し、発生したミストを窒素ガス(流量20L/分)によって、m面サファイア基板(2インチ基板)上に搬送し、熱化学反応させることによって成膜した。基板温度は、基板の中心位置で測定した。
なお、成膜時間は全て1時間であり、バッファ層は用いていない。成膜時の基板温度を600℃〜850℃として、それぞれの温度で酸化亜鉛結晶層を成膜した試料の膜厚を段差計を用いて評価した。図7に図1に示すミストCVD装置(平行供給方式)における酸化亜鉛層の測定位置の説明図、図8に横軸を測定位置、縦軸を膜厚とし、温度依存性を測定した成膜温度及び測定位置と酸化亜鉛層の膜厚の関係を示す。また、試料の表面形態をSEMで評価した結果を図9に示す。
基板温度600℃〜750℃では基板位置が後方になるほど膜厚が厚くなっていた。
これはミストが基板後方になるほど加熱され温度が上昇し、反応しやすくなったためと思われる。しかし、基板温度800℃〜850℃では基板後方では膜厚が低下していた。これは、酸化亜鉛の再蒸発、又は供給原料の基板前方における消費によるものと考えられる。
代表例として、基板温度600℃及び650℃のX線回折測定結果(θ-2θ法、基板位置25mm)を図10に示す。また、図11に基板温度650℃の基板面内回転によるφスキャン法を用いたX線回折測定の結果を示す。m面酸化亜鉛を示す単一ピークが観測され、非極性面であるm面酸化亜鉛結晶層が形成されていることが分かった。
なお、面方位に関しては、c面酸化亜鉛上にLEDを製作すると、c軸方向に発生する内部電界が発光層内の電子と正孔を空間的に分離するため、発光効率が悪化する欠点がある。今回成膜されたm面酸化亜鉛を使用しLEDを製作すると、非極性のため内部電界が生じず発光効率の向上が期待できる。
実験1−2のSEMの結果から比較的平坦と思われる基板温度750℃(基板位置45mm)について、より詳細な評価を行った。
基板温度750℃のX線回折測定結果(基板位置45mm)のX線回折測定結果、図12、図13に示す。なお、図12は2θが10〜90°までの広い範囲を調べた結果であり、図13は30〜40°の範囲を詳しく調べた結果である。
原子間力顕微鏡(AFM)により、サンプル表面を評価した結果を図14に示す。図14の結果からサンプルの表面粗さ(rms)の平均は約11nmであった。この結果は、MOCODで報告されている成膜したサンプルの値(10nm)と比べても遜色ない結果である。
サンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)による評価を行った。
TEM観察用のサンプルの切り出しに加工は、集束イオンビーム(FIB、Focused Ion Beam)でガリウムイオンによるスパッタエッチングを行い、結晶の方位依存性を見るため、図15の線に示すように酸化亜鉛とサファイア基板をサファイア[0002](図中のA)と、サファイア[11-20](図中のB)の2通りで行った。このときの切り出したサンプルの厚さは約100nmとした。図16にサンプルAの明視野像とサファイア[11-20]方向からの電子線回折像、図17にサンプルBの明視野像とサファイア[0001]方向からの電子線回折像を示す。
図18に酸化亜鉛結晶層(成膜温度750℃)の基板位置と、(a)抵抗率、(b)キャリア密度、及び(c)移動度の関係を示す。
図18から、基板位置(基板温度)に電気的特性が影響を受けていることが分かる。それぞれ好適な位置の物性を示すと、抵抗率は低い所では10-1Ωcm程度、キャリア密度は2×1018cm-3程度、移動度は高い所で41cm2V-1s-1であることが分かった。
(1)酸化亜鉛結晶層の成膜
(1−1)実験例2−1
図2に示す本発明の垂直供給方式のミストCVD装置を使用して酸化亜鉛結晶層を製造した。
図2に示す装置において、濃度0.1mol/Lの塩化亜鉛水溶液を超音波振動子によって霧化し、発生したミストを窒素ガス(流量5L/分)によって、a面サファイア基板(2インチ基板)上に搬送し、基板回転数1000rpmで回転させながら、基板温度を700℃で、熱化学反応させることによって実験例2−1の酸化亜鉛結晶層を成膜した。なお、基板は図19に示す形状の基板を用いた、基板温度は、基板の中心位置で測定した。成膜時間は1時間であり、バッファ層は用いていない。表1に実験条件をまとめて示す。なお、表1において、「ノズル位置」は「長」が基板とノズル先端の距離が59mmであること、「短」は基板とノズル先端の距離が145mmであることを意味する。
表1に示すような条件で、基板、溶液、ガス流量、基板温度、回転数、ノズル位置を選択した以外は、実験例2−1と同様にして、実験例2−2〜2−6の酸化亜鉛結晶層を成膜した。なお、m面サファイア基板もa面サファイア基板と同様に図19に示す形状である。
実験例2−1〜実験例2−6についての基板内測定位置と膜厚の関係を図20に示す。
ノズル位置が「長」である実験例2−1では他の実施例と比較して、全体的に膜厚が大きかったが、膜厚の分布が大きかった。基板とノズル先端の距離が近すぎて、ミスト供給が基板面内で不均一になったためと考えられる。
ノズル位置が「短」である、実験例2−2〜実験例2−6では基板の回転数によって、膜厚の分布が異なることが確認された。すなわち、基板を回転数1000rpmで回転させて、ミストCVDを行った実験例2−2〜実験例2−4では平均値に対する膜厚の分布が±5%であり、膜厚の均一性が高かったのに対し、回転数100rpmの実験例2−5、回転させていない(回転数0rpm)は、膜厚が不均一であった。これは、基板の回転数が少ない場合は、基板表面付近のミスト流体が遠心力により基板外周方向へ移動する効果が少なくなり、基板下部のミスト流体を均一に基板方向(上昇方向)に吸い込む効果が減少したためと考えられる。よって、少なくとも100rpmを越える高速回転が必要と思われる。
また、膜厚の均一性の高い実施例2−2〜実施例2−4についてX線回折法による結晶性の評価を行ったところ、それぞれ結晶性の高い酸化亜鉛結晶層が形成され、m面サファイア基板を用いた実施例2−4では単結晶の酸化亜鉛結晶層が形成されていることが確認された。
図22に示すようにすべての測定位置において、波長380nm近傍にバンド端発光が確認された。また、バンド端発光以外の発光は観測されておらず、酸素欠陥や亜鉛欠陥の極めて少ない高品質の酸化亜鉛結晶層が形成されたことを示している。
図23は、上記の380nm近傍の発光ピーク強度を縦軸に、2インチ基板上の位置を横軸にしてプロットしたものである。これらピーク強度の平均値を点線で示している。平均値に対して、最大値は+3.3%、最小値は−6.7%となっており、発光ピーク強度の分布は10%以下となっている。この結果は、極めて均一で高品質な酸化亜鉛結晶層が形成されていることを示している。
Claims (6)
- 酸化亜鉛前駆体を含む原料溶液を霧化して発生したミストをキャリアガスによって基板上に搬送し、該基板上で熱化学反応させて酸化亜鉛からなる層を形成するミスト化学気相成長法によって、表面の結晶面がm面であるサファイア基板上に酸化亜鉛をエピタキシー成長で結晶成長させ、前記サファイア基板上に表面結晶面が非極性面である酸化亜鉛結晶層を形成することを特徴とする酸化亜鉛結晶層の製造方法。
- 形成される酸化亜鉛結晶層が、単結晶である請求項1に記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
- 前記サファイア基板温度が、600℃以上750℃以下である請求項1または2に記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
- 前記原料溶液における溶媒が、水又は水を主体とする溶媒である請求項1から3のいずれかに記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
- 前記酸化亜鉛前駆体が、塩化亜鉛である請求項1から4のいずれかに記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の酸化亜鉛結晶層の製造方法に用いるための装置であって、
熱分解性の酸化物前駆体を含む原料溶液を霧化して発生したミストをキャリアガスによって基板上に搬送し、該基板上で熱化学反応させて、薄膜状の酸化物結晶層を形成するためのミスト化学気相成長装置であって、
成長室と、
超音波振動子により前記原料溶液を霧化してミストを発生させるミスト発生器と、
前記ミスト発生器にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、
前記ミスト発生器で発生したミストをキャリアガスによって前記成長室下方から内部へ供給する供給管と、
を備え、
前記成長室は、成長室内の上部中央に設置され、軸線を中心に回転可能な回転ステージと、前記回転ステージに保持された基板と、前記基板を加熱するためのヒーターと、前記供給管と連結し前記基板に対してミストを下方から上方に垂直方向に供給するノズルと、
を有し、
前記基板が、m面サファイア基板であり、前記ノズルが、前記基板との距離を可変可能なノズルであることを特徴とするミスト化学気相成長装置。
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