以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態におけるインプリント装置1の構成を示した図である。インプリント装置1は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
図1を用いてインプリント装置1の構成について説明する。ここでは、基板10が配置される面をXY面、それに直交する方向をZ方向として、図1に示したように各軸を決める。インプリント装置は、基板上に供給された光硬化性組成物としてのインプリント材を型(モールド)と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写されたインプリント材の硬化物のパターンを形成する装置である。図1のインプリント装置1は、物品としての半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用される。ここでは光(紫外線)の照射によってインプリント材が硬化する光硬化法を採用したインプリント装置1について説明する。
インプリント装置1は、光照射部2と、型保持部3と、基板ステージ4と、塗布部5と、予備露光手段6と、制御部7とを備える。
光照射部2は、基板上にパターンを形成するインプリント方法のうち、基板10上のインプリント材14を硬化させる際に、型8とインプリント材14が接触した状態で、インプリント材14に対して紫外線9を照射する(本露光工程)。ここでは、光照射部2から照射された紫外線9は、型8を透過してインプリント材14を照射する。光照射部2は、不図示の光源と、光源から照射された紫外線9を適切な光の状態(光の強度分布、照明領域など)に調整する光学素子(レンズやミラー、遮光板など)とから構成される。
型保持部3は、型8を保持する型チャック11と、型チャック11を保持し型8(型チャック11)を移動させる型駆動機構12とを有する。ここで、型チャック11は、型8を真空吸着力や静電力により型8を保持し得る。例えば、型チャック11が真空吸着力により型8を保持する場合には、型チャック11は、不図示の真空ポンプに接続され、この真空ポンプのON/OFFによりモールド8の脱着を切り替える。
型駆動機構12は、型8と基板10上のインプリント材14と接触させたり(押印工程)、間隔を広げたり(離型工程)するように型8をZ軸方向に移動させる。この型駆動機構12に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータまたはエアシリンダがある。また、型駆動機構12は、型8の高精度な位置決めに対応するために、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていてもよい。さらに、型駆動機構12は、Z軸方向だけでなく、X軸方向やY軸方向、またはZ軸を中心とした回転方向の位置調整機能や、型8の傾きを補正するためのチルト機能(X軸・Y軸を中心とした回転方向)を有してもよい。
基板ステージ4は、基板10を保持し、型8と基板10上に供給されたインプリント材14との接触に際して基板面内方向に移動することで、型8と基板10の位置合わせを実施する(位置合わせ工程)。基板ステージ4は、吸着力により基板10を保持する基板チャック16と、この基板チャック16を機械的手段により保持し、基板10(基板チャック16)を各軸方向に移動させる基板駆動機構17とを有する。この基板駆動機構17に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータや平面モータがある。基板駆動機構17は、X軸およびY軸の各方向に対して、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていてもよい。さらに、基板ステージ4は、Z軸方向の位置調整のための駆動系や、基板10の回転方向(Z軸を中心とした回転方向)の位置調整機能、または基板10の傾きを補正するためのチルト機能(X軸・Y軸を中心とした回転方向)が構成されていてもよい。
なお、インプリント装置1における接触および引き離し動作は、型保持部3(型8)をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、基板ステージ4をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、または、その双方を相対的に移動させてもよい。
インプリント装置1には、基板ステージ4の位置を測定するために位置測定手段19として複数のレーザー干渉計を備える。そのため、基板ステージ4はその側面に、複数のレーザー干渉計に対応してX軸、Y軸、Z軸の各方向に複数の参照ミラー(反射部18)を備える。さらに、X軸、Y軸、Z軸の各方向を中心とした回転方向に対応した複数の反射部18を有しても良い。位置測定手段19としてのレーザー干渉計は、それぞれの反射部18に対してビームを照射することで、基板ステージ4の位置を実時間で測定する。後述する制御部7は、位置測定手段19による基板ステージ4の位置の測定値に基づいて基板10(基板ステージ4)を位置決め制御する。
また、インプリント装置1には、型保持部3の位置を測定するための位置測定手段19を備えていてもよい。なお、基板ステージ4や型保持部3の位置を測定する位置測定手段19としてはレーザー干渉計でなくても、リニアスケールやリニアエンコーダなどの測長器を用いてもよい。この場合、基板ステージ4には参照ミラー(反射部18)の代わりにスケールが設けられていてもよい。
塗布部5(ディスペンサ)は、インプリント装置1内に設置され、基板10上に未硬化のインプリント材14を塗布(供給)する。また、塗布部5には未硬化のインプリント材が吐出される吐出口5a(吐出ノズル)を備えている。吐出口5aから吐出されるインプリント材14の量や塗布位置は、基板10上に形成されるインプリント材14の厚さや、基板10上に形成されるインプリント材14のパターンの密度などにより適宜決定される。
インプリント材14には、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。硬化性組成物は、半導体デバイス製造工程などの各種条件により適宜選択される。
インプリント材14は、スピンコーターやスリットコーターにより基板上に膜状に付与される。或いは液体噴射ヘッドにより、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上、100mPa・s以下である。
基板10は、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板10としては、具体的に、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどである。
型8は、外周形状が矩形であり、基板10に対する面には、例えば回路パターンなどのインプリント材に転写される凹凸パターンが3次元状に形成されたパターン部8aを含む。また、型8の材質は、光照射部2からの光(紫外線9)や型や基板に形成されたマークからの光を透過させることが可能な材質であり、本実施形態では一例として石英とする。また型8には、紫外線9が照射される面に、平面形状が円形で、かつ、ある程度の深さを有するキャビティ(凹部)が形成された形状としてもよい。
また、型チャック11および型駆動機構12は、光照射部2から照射された紫外線9が基板10に向かうように、中心部(内側)に開口部13が形成されている。この開口部13には、開口部13の一部と型8とで囲まれる空間を密閉空間とする光透過部材(例えばガラス板)が設置され、真空ポンプなどを含む不図示の圧力調整機構により密閉空間内の圧力が調整される。圧力調整機構は、例えば、型8のパターン部8aと基板10上のインプリント材14との接触に際して、密閉空間の圧力を外部よりも高くすることで、パターン部8aを基板10に向かって凸型に撓ませることができる。モールド8を凸型に撓ませることで、基板10上のインプリント材14に対して型8のパターン部8aの中心部から接触させることができる。これにより、パターン部8aとインプリント材14との間に気体(空気)が残留することを低減し、パターン部8aの凹部にインプリント材14を隅々まで充填させることができる。
本発明において、予備露光手段6は、基板10上に供給された未硬化のインプリント材14に対して、400nm以上の波長帯域の光を照射する(予備露光工程)手段である。本発明において、インプリント材14は、予備露光手段6からの400nm以上の波長帯域の光が照射されることで、半硬化する。ここで、インプリント材14の「半硬化」を、基板10と型8を基板面内方向に相対移動させる際に、基板と型との間に挟まれたインプリント材によって生じる基板と型の間のせん断力が0.1N以上10N以下となる硬化の程度として定義する。基板10上に供給されるインプリント材14の粘度は低い。そのため、硬化させる前のインプリント材14によって生じる基板と型の間のせん断力は0.1N未満である。
また、基板10上に供給されるインプリント材14の粘度は低いため、インプリント材14が型8のパターン部8aの凹部へ充填しやすい。そのため、インプリント材14の粘度を低くすることでパターン部8aの凹部に残留する気泡を低減することができる。しかし、インプリント材14の粘度が低いと外乱により型8と基板10の位置ずれが生じる恐れがあり、重ね合わせの精度が低下する恐れがあった。
図2は、インプリント装置1に設けられた予備露光手段6の構成及び配置を示す図である。図2において、図1と同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。第1実施形態において、予備露光手段6で用いる光源は、未硬化のインプリント材14を本硬化させるための光源とは異なるものを用いる。ここで、インプリント材14の「本硬化」を、型8をインプリント材から引き離した後も型のパターン部8aに対応する形状がインプリント材に形成されている状態の硬化の程度として定義する。
予備露光手段6によるインプリント材を半硬化させるための光照射は、基板10上に未硬化のインプリント材14を供給し、押印工程を開始した後、インプリント材14を本硬化させるために紫外線9の照射を開始するまでの間に行われる。紫外線9の波長は、インプリント材14が本硬化すれば特に限定されないが、波長帯域が300nm以上400nm未満の光を使用することができる。型8と基板10の位置合わせは、型8のパターン部8aに対応する箇所に形成されたアライメントマークと基板10のショット領域20に対応するアライメントマークを検出することで行われる。ショット領域20は、基板10上に予めパターンが形成されているショット領域が含まれる。つまり、モールド8とウエハ10の位置合わせとは、パターン部8aとショット領域を重ね合わせることである。モールド8とウエハ10の位置合わせに、モールド8(パターン部8a)の形状を変える工程が含まれていてもよい。
本発明における予備露光手段6によるインプリント材を半硬化させるための光は、光照射部2から照射された光に含まれる一部の波長の光を反射または吸収して遮光(分離)する光学フィルタ21(光学素子)を用いて生成される。または、予備露光手段6は、光照射部2からの光を遮光する光学フィルタや、光照射部2からの光を透過させる光学フィルタを組み合わせてもよい。この光学フィルタ21は、光照射部2から照射された紫外線9が基板10上に向かう光路上であり、光照射部2と型8との間に設置される。光学フィルタ21は、制御部7によって動作が制御される。光学フィルタ21は、駆動機構22により光照射部2から照射された紫外線9の光路(Z軸)に直交する平面方面(XY平面)に移動可能である。このように、本実施形態における予備露光手段6は、少なくとも光照射部2と制御部7、光学フィルタ21、駆動機構22が含まれているものとする。
例えば、予備露光時には、図2(a)に示すように光学フィルタ21は、紫外線9の光路に配置された状態となり、一部の波長の光を透過させたり、遮光したりする。一方で、インプリント材14の硬化露光時(本硬化時)には、図2(b)に示すように、光学フィルタ21は、紫外線9の光路から退避した状態となる。なお、第1実施形態の予備露光手段6では、光照射部2から照射された光のうち、特定の波長帯域の光が遮光される光学フィルタ21、または透過する光学フィルタ21であればよい。そのため、光学フィルタ21には、透過率(または反射率)に波長依存性を有する干渉フィルタやビームスプリッタ(ダイクロイックミラー)などを採用し得る。これら光学フィルタを透過または反射した光は所望の照度に調整しても良い。予備露光手段6の光は不図示のシャッター等によって所望の時間照射するよう調整することができる。
また、所望の光の波長を得るために適宜光源を選択し得る。上述の予備露光手段6は光照射部2を用いる場合について説明したが、光照射部2の代わりに予備露光を行うための光源を別途設けてもよい。
本発明において、予備露光手段6によりインプリント材14に照射される光の波長は400nm以上とする。図4に、光硬化性組成物(インプリント材)を硬化させるために添加する光重合開始剤の吸収スペクトルを示す。光重合開始剤は一般に、波長帯域が300nm以上400nm未満の光に対し高い光吸収を有するが、波長400nm以上500nm未満の帯域にも小さいながらも光吸収を有する。予備露光手段6より照射される光の波長が400nm未満である場合、光硬化反応の速度が速すぎるためにインプリント材14の硬化が急速に進んでしまい、インプリント材14が半硬化の状態以上に硬化する恐れがある。この場合、10Nより大きいせん断力が発生することで、型8と基板10の相対移動に大きな力を要するため、位置合わせが十分にできないことがある。そのため、波長が400nm以上の光をインプリント材に照射することで、光硬化反応の速度を速めることなくインプリント材14を半硬化の状態にすることができる。
本実施形態のインプリント材14は、波長帯域が400nm以上500nm未満の光における光吸収の平均値が、波長300nm以上400nm未満の帯域における光吸収の平均値よりも小さくなるように、組成を調整する。一方、予備露光手段6から照射される光に500nm以上の帯域の光が含まれていても特に問題はない。しかし、800nm以上の帯域の光を含む光源は、400nm以上500nm未満の波長帯域の光量が相対的に少なく、インプリント材14を半硬化の状態にするために長時間を必要とするため好ましくない。
本発明において、予備露光手段6から照射される光の波長は、より好ましくは、400nm以上490nm未満、さらに好ましくは400nm以上470nm未満の範囲であることが好ましい。予備露光手段6にこれらの波長帯域の光を使用することで、光硬化反応の速度を緩やかにし、インプリント材14の硬化を緩やかに進行させることで、インプリント材14の粘度を所望の値に調整しやすくすることができる。このように、予備露光を行い、インプリント材を半硬化させることによって、型と基板との相対的な振動を抑えることが可能になり、振動による位置合わせの誤差を低減することができる。
本実施形態に係るインプリント装置1は、型8もしくは基板10の少なくとも一方の振動を検出する振動検出手段を有し、その振動検出手段の出力(検出結果)が所定の値以下になるまで、予備露光を行うことができる。振動検出手段の出力(例えば、振動の振幅値)が10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは1nm以下になるまで、予備露光を行う。ここで、振動検出手段として、アライメント検出系26(アライメントスコープ)を用いても良い。アライメント検出系26が、基板10上のショット領域20と、型8に形成されたパターン部8aのそれぞれに形成されたアライメントマークを検出することで、型8と基板10の相対的な振動を求める。具体的には、アライメント検出系26が検出した型8に形成されたアライメントマークと基板10に形成されたアライメントマークの位置ずれ量から、型8と基板10の相対的な振動を検出することができる。また、振動検出手段として、基板ステージ4の位置を計測する位置測定手段19により、基板10の振動を検出しても良い。
振動検出手段により型8もしくは基板10の振動を検出して、振動検出手段の出力が所定の値以下にするため、型8のパターン部8aにインプリント材14が接触した後であって、ショット領域20とパターン部8aの位置合わせ中に、予備露光を行う。また、予備露光での露光量が多くなりすぎると、インプリント材14に起因する型8と基板10の間に生じるせん断力の増加に伴い、ショット領域20とパターン部8aの位置合わせ時に各パターン形状が崩れ、結果として位置合わせ精度が低下する恐れがある。そのため、予備露光を行うタイミングとして、ショット領域20とパターン部8aの位置ずれ量が100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは25nm以下になった時に予備露光を行うことが好ましい。予備露光を行った後、ショット領域20とパターン部8aの位置ずれ量が、目標位置ずれ量以下となった後に、インプリント材14を硬化(本硬化)させるために光照射部2を用いて紫外線9を照射(本露光)する。例えば、ショット領域20とパターン部8aの位置ずれ量が、10nm以下になったところで紫外線9を照射する。
制御部7は、インプリント装置1に含まれる各構成要素の動作及び調整などを制御し得る。制御部7は、例えばコンピュータなどの処理部やメモリなどの記憶部で構成され、インプリント装置1の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムなどにしたがって各構成要素の制御を実行し得る。第1実施形態の制御部7は、少なくとも予備露光手段6の動作を制御する。なお、制御部7は、インプリント装置1の内部に設けて(他の構成要素と一体で構成して)もよいし、インプリント装置1とは別の場所に設けて(他の構成要素と別体で構成して)もよい。
また、インプリント装置1は、インプリント方法に際し、基板10に形成されたショット領域20の形状又はサイズ(倍率)を計測するためのアライメント検出系26を備える。このアライメント検出系26は、予備露光の光や本露光の光が基板上に照射されても、検出精度が低下しないようにするために、光照射部2や予備露光手段6からの光や反射光、回折光がアライメント検出系26に入り込むのを抑制する構成にすることが好ましい。また、光照射部2や予備露光手段6からの光や反射光、回折光がアライメント検出系26に入ったとしても、検出精度が低下しないようにアライメント検出系26の光学系を構成してもよい。例えば、予備露光の光と本露光の光の波長と異なる波長の光をアライメント検出系26の光源に使用し、アライメント検出系26に予備露光の光や本露光の光を遮光する光学フィルタを組み込んでも良い。このような構成にすることで、予備露光中や本露光中であっても、アライメント検出系26の検出精度を低下せずにショット領域20とパターン部8aにそれぞれ形成されたアライメントマークを検出することができる。アライメント検出系26は型8を透過して基板10に形成されたアライメントマークからの光を検出できる構成にしてもよい。インプリント装置1は、ショット領域20とパターン部8aに形成されたアライメントマークの検出結果から型8と基板10の位置ずれを求め、両者の位置合わせを行うことができる。
また、インプリント装置1は、基板ステージ4を載置するベース定盤27と、型保持部3を固定するブリッジ定盤28と、ベース定盤27から延設され、除振器29を介してブリッジ定盤28を支持するための支柱30とを備える。除振器29は、床面からブリッジ定盤28へ伝わる振動を除去する。さらに、インプリント装置1は、共に不図示であるが、型8を装置外部から型保持部3へ搬送する型搬送機構や、基板10を装置外部から基板ステージ4へ搬送する基板搬送機構などを含み得る。また、型8の外周部(型8の側面)に、パターン部8aの形状を補正する不図示の形状補正機構を設けて、位置合わせ工程においてパターン部8aの形状を補正してもよい。
次に、図3を用いて、インプリント装置1を用いて基板10上にパターンを形成するインプリント方法について説明する。まず、制御部7は、基板搬送機構により基板10を搬入させ、基板ステージ4上の基板チャック16に基板10を載置および固定させる(S0:搬入工程)。次に、制御部7は、基板駆動機構17を駆動させ、基板10に形成されたショット領域20を、塗布部5による塗布位置へ移動させる。制御部7は、塗布部5にショット領域20上にインプリント材14を供給(塗布)させる(S1:供給工程)。次に、制御部7は、基板駆動機構17を駆動させ、インプリント材が供給されたショット領域20が型8に形成されたパターン部8aの直下に位置するように移動させる。そして、制御部7は、型駆動機構12を駆動させ、基板10上のインプリント材14と型8を接触させる(S2:押印工程)。インプリント材14と型8が接触することにより、インプリント材14は、パターン部8aの凹部に充填される。インプリント材14と型8を接触させた状態で、インプリント材14の粘度を高めるために予備露光手段6を使用して予備露光を行う(S3:予備露光工程)。予備露光を行いインプリント材14の粘度が高くなった状態で型8と基板10との位置合わせを行う(S4:位置合わせ工程)。S4の位置合わせ工程は、S3の予備露光工程と並行して実施してもよいし、それぞれの工程の一部が並行して実施してもよい。型8と基板10の位置合わせの後、インプリント材14と型8を接触させた状態で、制御部7は、光照射部2に紫外線9を照射させ、型8を透過した紫外線9によりインプリント材14を硬化させる(S5:本露光工程)。そして、制御部7は、型駆動機構12を駆動させることによって、硬化したインプリント材14から型8を引き離す(S6:離型工程)。これにより、ショット領域20上には、パターン部8aに形成された凹凸部(型のパターン)に倣った3次元形状のインプリント材14のパターン(パターン層)が形成(転写)される。S6の離型工程の後、基板に形成されたショット領域にインプリント材のパターン形成が終了したかを判定し、パターンが形成されていないショット領域20がある場合には、工程S1の供給工程に戻ってパターンを形成する。基板上のショット領域20にインプリント材のパターン形成が終了した場合には、基板10をインプリント装置1から搬出する工程へ進む(S7)。基板上のショット領域20にインプリント材のパターン形成が終了した場合、制御部7は、基板搬送機構により基板ステージ4上の基板チャック16から基板10を取り外させ、インプリント装置1から基板10を搬出させる(S8:搬出工程)。
このように、一連のインプリント方法(インプリント動作)を基板10に形成された複数のショット領域20の場所を変えながら実施することで、1枚の基板10に形成された複数のショット領域20にインプリント材14のパターンを形成することができる。本実施形態で、1回のインプリント動作(インプリント処理)とは、1つのショット領域20に工程S1の供給工程でインプリント材を供給してから、工程S6の離型工程で基板上にインプリント材のパターンを形成するまでを含むものとする。
また、予備露光手段6は、ショット領域20の表面に一様な強度分布で、光を照射することにより、ショット領域20内でのインプリント材の粘度が一様となり、型と基板の位置合わせを行う際に、インプリント材14に起因するせん断力を均一に出来る。結果として位置合わせに伴うパターン部8aの変形を抑制することができる。
また、位置合わせを行うタイミングは、型8とインプリント材14を接触させた後、予備露光を行った後に、ショット領域20とパターン部8aの位置合わせを行う。さらに、予備露光を行うタイミングは、型8とインプリント材14を接触させた後であって、ショット領域20とパターン部8aの位置合わせを行っているときに並行して行ってもよい。
また、予備露光を行うタイミングは、インプリント材14のパターン部8aへの充填性に影響のない範囲であれば、インプリント材14を基板10上に供給した後であって、型8とインプリント材14を接触させる前に予備露光を行ってもよい。さらに、型8とインプリント材14とを接触させる押印工程中に予備露光を行ってもよい。
以上のように、第1実施形態のインプリント方法では、インプリント材14を硬化させる前に予備露光を行ないインプリント材14の粘度を高めている。そのため、インプリント材を硬化させる際に、型8と基板10の位置ずれの発生を抑え、ショット領域20と、ショット領域上に形成されるインプリント材14のパターンとの重ね合わせの精度を向上させることができる。
第1実施形態に係るインプリント材としての光硬化性組成物(A)は、少なくとも重合性化合物である成分(a)を有する化合物である。第1実施形態に係る光硬化性組成物はさらに、光重合開始剤である成分(b)、非重合性化合物(c)、溶剤である成分(d)を含有してもよい。
また、以下の説明において硬化膜とは、基板上で硬化性組成物を重合させて硬化させた膜を意味する。なお、硬化膜の形状は特に限定されず、表面にパターンが形成されていてもよい。インプリント処理の場合は、型のパターンが硬化膜に転写される。
以下、インプリント材に含まれる各成分について、詳細に説明する。
(成分(a):重合性化合物について)
成分(a)は重合性化合物である。ここで重合性化合物とは、光重合開始剤(成分(b))から発生した重合因子(ラジカル等)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物からなる膜を形成する化合物である。
このような重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。成分(a)である重合性化合物は、一種類の重合性化合物のみから構成されていてもよく、複数種類の重合性化合物で構成されていてもよい。
ラジカル重合性化合物としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物、すなわち、(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。したがって、本実施形態に係る硬化性組成物は、成分(a)として(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、成分(a)の主成分が(メタ)アクリル化合物であることがより好ましく、(メタ)アクリル化合物であることが最も好ましい。なお、ここで記載する成分(a)の主成分が(メタ)アクリル化合物であるとは、成分(a)の90重量%以上が(メタ)アクリル化合物であることを示す。
ラジカル重合性化合物が、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合には、単官能(メタ)アクリルモノマーと多官能(メタ)アクリルモノマーを含むことが好ましい。これは、単官能(メタ)アクリルモノマーと多官能(メタ)アクリルモノマーを組み合わせることで、機械的強度が強い硬化膜が得られるからである。
アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、アロニックス(登録商標)M101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO−1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2−MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、DMP−A、THF−A、HOP−A、HOA−MPE、HOA−MPL、PO−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、エポキシエステルM−600A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標)TC110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業製)、FA−511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE−2、PHE−4、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、ユピマー(登録商標)UV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート#195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート4EG−A、9EG−A、NP−A、DCP−A、BP−4EA、BP−4PA、TMP−A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標)PET−30、TMPTA、R−604、DPHA、DPCA−20、−30、−60、−120、HX−620、D−310、D−330(以上、日本化薬製)、アロニックス(登録商標)M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシ(登録商標)VR−77、VR−60、VR−90(以上、昭和高分子製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、上述した化合物群において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。EOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性化合物Aとは、化合物Aの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がエチレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。また、POは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性化合物Bとは、化合物Bの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がプロピレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。
(成分(b):光重合開始剤について)
成分(b)は、光重合開始剤である。ここで光重合開始剤とは、所定の波長の光を感知して上記の重合因子(ラジカル)を発生させる化合物である。
このような光重合開始剤として、具体的には、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線等、放射線)によりラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)である。
成分(b)は、一種類の光重合開始剤で構成されていてもよく、複数種類の光重合開始剤で構成されていてもよい。
ラジカル発生剤としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−又はp−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の置換基を有してもよい。2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のα―アミノ芳香族ケトン誘導体;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル誘導体;キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記ラジカル発生剤の市販品として、Irgacure 184、Irgacure 369、Irgacure 651、Irgacure 500、Irgacure 819、Irgacure 907、Irgacure 784、Irgacure 2959、Irgacure OXE−01、Irgacure OXE 02、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur 1116、1173、Lucirin TPO、Lucirin TPO−L、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、成分(b)は、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤であることが好ましい。なお、上記の例のうち、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド化合物である。アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤の市販品としては、Lucirin TPO、Lucirin TPO−L、Irgacure 819等が挙げられる。
光重合開始剤である成分(b)の硬化性組成物(A)における配合割合は、成分(a)、成分(b)、後述する成分(c)の合計、すなわち溶剤成分(d)を除く全成分の合計重量に対して、0.1重量%以上50重量%以下であるとよい。また、好ましくは、0.1重量%以上20重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%より大きく20重量%以下である。
成分(b)の配合割合を成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計に対して0.1重量%以上とすることにより、硬化性組成物(A)の硬化速度が速くなり、反応効率を良くすることができる。また、成分(b)の配合割合を成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計に対して50重量%以下とすることにより、硬化膜をある程度の機械的強度を有する硬化膜とすることができる。
光重合開始剤である成分(b)の添加量を調整することによって、光照射による光硬化性組成物の硬化反応を調整してもよい。即ち、光重合開始剤の配合比率を変えることで、予備露光の光照射による硬化反応速度を調整し、予備露光後の光硬化性組成物の粘度調整をすることができる。
(成分(c):非重合性化合物について)
第1実施形態における硬化性組成物(A)は、上述した、成分(a)、成分(b)の他に、種々の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、更に成分(c)として非重合性化合物を含有することができる。このような成分(c)としては、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有さず、かつ、所定の波長の光を感知して上記重合因子(ラジカル)を発生させる能力を有さない化合物が挙げられる。例えば、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分、その他添加剤等が挙げられる。成分(c)としてこのような成分の化合物を複数種類含有してもよい。
増感剤は、重合反応促進や反応転化率の向上を目的として、適宜添加される化合物である。増感剤として、例えば、増感色素等が挙げられる。増感色素は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、成分(b)である光重合開始剤と相互作用する化合物である。なお、ここで記載する相互作用とは、励起状態の増感色素から成分(b)である光重合開始剤へのエネルギー移動や電子移動等である。
増感色素の具体例としては、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が挙げられるが、これらに限定されない。増感色素の好ましい具体例としては例えば、ベンゾフェノン誘導体であるN,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、チオキサントン誘導体である2−イソプロピルチオキサントン、ケトクマリン系色素である7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、等が挙げられる。
増感剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。増感剤の添加量を調整することによって、光照射による光硬化性組成物の硬化反応を調整しても良い。即ち、増感剤の配合比率を変えることで、予備露光の光照射による硬化反応速度を調整し、予備露光後の光硬化性組成物の粘度調整をすることができる。
水素供与体は、成分(b)である光重合開始剤から発生した開始ラジカルや、重合生長末端のラジカルと反応し、より反応性が高いラジカルを発生する化合物である。成分(b)である光重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に添加することが好ましい。
このような水素供与体の具体例としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N−フェニルグリシンなどのアミン化合物、2−メルカプト−N−フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプト化合物、等が挙げられるが、これらに限定されない。水素供与体は、一種類を単独で用いてもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。また、水素供与体は、増感剤としての機能を有してもよい。
硬化性組成物(A)は、型とインプリント材との間の界面結合力の低減、すなわち離型工程における離型力の低減を目的として、硬化性組成物に内添型離型剤を添加することができる。ここで内添型とは、硬化性組成物の配置工程の前に予め硬化性組成物に添加されていることを意味する。内添型離型剤としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤等を使用できる。なお、第1実施形態において内添型離型剤は、重合性を有さないものとする。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物等が含まれる。なお、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基等を有してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、メガファック(登録商標)F−444、TF−2066、TF−2067、TF−2068(以上、DIC製)、フロラード FC−430、FC−431(以上、住友スリーエム製)、サーフロン(登録商標)S−382(AGC製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100(以上、トーケムプロダクツ製)、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(以上、OMNOVA Solutions製)、ユニダイン(登録商標)DS−401、DS−403、DS−451(以上、ダイキン工業製)、フタージェント(登録商標)250、251、222F、208G(以上、ネオス製)等が挙げられる。
炭化水素系界面活性剤としては、炭素数1〜50のアルキルアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物等が含まれる。
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物としては、メチルアルコールエチレンオキサイド付加物、デシルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。なお、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の末端基は、単純にアルキルアルコールにポリアルキレンオキサイドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定されない。このヒドロキシル基が他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基等の極性官能基やアルキル基、アルコキシ基等の疎水性官能基に置換されていてもよい。
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON MP−400、MP−550、MP−1000)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキサイド付加物)(FINESURF D−1303、D−1305、D−1307、D−1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON EL−1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON CH−305、CH−310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON SR−705、SR−707、SR−715、SR−720、SR−730、SR−750)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNON SA−50/50 1000R、SA−30/70 2000R)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol(登録商標)A760E)、花王製のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲンシリーズ)等が挙げられる。
これらの炭化水素系界面活性剤の中でも内添型離型剤としては、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、長鎖アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物であることがより好ましい。内添型離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
非重合性化合物である成分(c)の硬化性組成物における配合割合は、成分(a)、成分(b)、後述する成分(c)の合計、すなわち溶剤を除く全成分の合計重量に対して、0重量%以上50重量%以下であるとよい。また、好ましくは、0.1重量%以上50重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%以上20重量%以下である。成分(c)の配合割合を成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計に対して50重量%以下とすることにより、硬化膜をある程度の機械的強度を有する硬化膜とすることができる。
(モル吸光係数について)
光重合開始剤である成分(b)と、非重合性化合物である成分(c)の各波長帯域における光吸収特性をモル吸光係数(l/(mol・cm))で表す。モル吸光係数は、各成分を所定量、イソプロパノールや酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解し、紫外可視分光光度計にて測定することができる。
(インプリント材の粘度について)
インプリント材である光硬化性組成物(A)の粘度を100mPa・s以下とすることにより、光硬化性組成物(A)を型に接触する際に、型とインプリント材の接触面積の広がり及び型のパターンの凹部への充填が速やかに行われる。つまり、第1実施形態に係るインプリント材を用いることで、インプリント方法によるパターン形成を高いスループットで行うことができる。また、型のパターンの凹部にインプリント材が充填しやすくなるため、充填不良によるパターン欠陥(未充填欠陥)が生じにくい。
また、粘度を1mPa・s以上とすることにより、インプリント材を基板上に塗布する際に塗りムラが生じにくくなる。さらに、インプリント材を型に接触する際に、型の端部からインプリント材が流出しにくくなる。
(実施例1〜5)
次に、インプリント材の具体的な実施例について説明する。実施例及び比較例に使用する各成分の詳細及び発明の効果を表1に示す。表1中の数値は各成分の重量部を示す。インプリント材には400nm以上500nm未満の帯域に光吸収を有する光重合開始剤および光増感剤のうち、400nmにおけるモル吸光係数が50(l/(mol・cm))以上のものを用いて、光硬化性組成物を調整する。
(1)インプリント材の調製
上記の成分(a)、成分(b)、成分(c)を表1の各実施例に記した割合に基づいて配合し、これを0.2μmの超高分子量ポリエチレン製フィルタでろ過することによりインプリント材を調製する。
インプリント装置は、基板及び型の振動検出手段による出力が所定値以下になるまでショット領域20の表面に一様な強度分布で波長帯域が430nmから490nmである光を照射することで予備露光をする。予備露光手段6を用いて予備露光を行なうことで、何れの実施例のインプリント材でも良好な振動の抑制効果を得ることができる。
(比較例1、2)
比較例として、インプリント材に400nm以上500nm未満の波長帯域の光吸収を有する光重合開始剤及び光増感剤のうち、400nmにおけるモル吸光係数が50(l/(mol・cm))未満のものを用いた場合について説明する。比較例のインプリント材は、光重合開始剤である成分(b)以外の成分は、実施例1〜5と同様の成分で調整している。予備露光手段6として波長帯域が430nmから490nmである光を用い、型及び基板の振動検出手段による出力が所定値以下になるまでショット領域20の表面に一様な強度分布で光を照射しても、十分な振動抑制効果を得ることができなかった。
上述した表1の実施例1〜5及び比較例1、2のインプリント材に含まれる、成分(a)、成分(b)、成分(c)の詳細は下記の通りである。
<成分(a):重合性化合物>
(а―1)イソボルニルアクリレート(共栄社化学製、商品名:IB−XA)
(а―2)ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160)
(а―3)ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製、商品名:NP−A)
<成分(b):光重合開始剤>
(b―1)2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF製:商品名:IRGACURE TPO)
(b―2)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製:商品名:IRGACURE 819)
(b―3)2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF製:商品名:IRGACURE 369)
(b―4)1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASF製:商品名:IRGACURE OXE 01)
(b―5)2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネート(BASF製:商品名:IRGACURE TPO−L)
(b―6)N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(東京化成工業製)
(b―7)2−イソプロピルチオキサントン(東京化成工業製)
(b−8)2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF製:商品名:IRGACURE 907)
(b−9)エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾ−ル−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(BASF製:商品名:IRGACURE OXE02)
<成分(c):非重合性化合物>
(c−1)ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO15モル付加物)(青木油脂工業製、商品名:BLAUNON SR−715)
(c−2)7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン(東京化成工業製)
(第2実施形態)
次に、図1及び図5に基づいて第2実施形態の予備露光の方法について説明する。図5は第2実施形態の予備露光手段6で使用される光調整器の一例を示した図である。第1実施形態の予備露光ではショット領域20に一様に予備露光のための光照射を行ったが、第2実施形態では、ショット領域20に形成されたパターンの配置に応じて予備露光のための光照射の強度に分布を与える場合について説明する。
型8のパターン部8aには、図6に示すようにデバイス回路のための微細パターンが形成された微細パターン領域601と、型と基板の位置合わせのために用いられるアライメントマークが形成されたマーク領域602が存在する。例えば、微細パターン領域601には数nm〜数百nm幅、高さ数nm〜数μmの微細パターンが形成されており、マーク領域602には数百nm〜数百μm幅、高さ数nm〜数μmのアライメントマークが形成されている。
インプリント技術において、インプリント材の型のパターンへの充填時間は、微細パターンよりも、型と基板の位置合わせのために用いられるアライメントマークのようなラフなパターンの方が長いことが知られている。また、インプリント材の粘度が高いほど充填時間が長いことも知られている。
そこで第2実施形態において、型に形成されたパターンの凹部への充填時間を短く保つために、予備露光時に微細パターン領域601に選択的に光を照射し、マーク領域602には光を照射しない(予備露光を行なわない)場合について説明する。
第2実施形態におけるインプリント装置1は、予備露光時に図6に示す微細パターン領域601のみに光を照射することができる。第2実施形態のインプリント装置1で用いられる予備露光手段6には、予備露光時にショット領域20に照射される光の分布を調整する光調整器が含まれる。光調整器の一例として、図5に示すデジタル・ミラー・デバイス(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を使用する。ここでは、DMD501と表記する。
図5は、光調整器として採用可能なDMD501の表面構成を示す概略図である。図5(a)に示すように、光調整器としてのDMD501は、複数のミラー素子502が光を反射する光反射面に格子状に配置されている。DMD501はミラー素子502の設置角度を個別に変更することができ、予備露光時の光の照射(ON)および非照射(OFF)をショット領域20内で調整する(分布を設ける)ことができる。
第2実施形態のインプリント装置1は、このDMD501を予備露光手段6内に設け、予備露光手段6の光源から照射される光をDMD501により反射させてインプリント材14を予備露光する。DMD501のミラー素子502は、制御部7からの動作指令に基づいてそれぞれの面方向が変化する。すなわちDMD501はミラー素子502によって光の反射方向を変更可能であり、ショット領域20上の一部領域に対してのみ選択的に予備露光を実施する(光を照射する)ことができる。
第2実施形態のインプリント装置1は、図5(b)に示すように、型に形成されたパターンレイアウトに応じて予備露光時の各ミラー素子のON/OFFを調整する。図5(b)の503はON状態のミラー素子を示し、504はOFF状態のミラー素子を示している。具体的には、図6で示した微細パターン領域601には光を照射して予備露光を行い、マーク領域602には光を照射せずに予備露光を行なわない。
型8と基板10の位置合わせは、型8に形成されたパターン部8aに対応するアライメントマークと基板10に形成されたショット領域20に対応するアライメントマークを検出することで行われる。型8と基板10の位置合わせの時、型8のパターン部8aに形成されたマーク領域602の凹部にもインプリント材を充填させる必要がある。このアライメントマークの凹部は、微細パターン領域601の凹部に比べて幅が広いため、上述のように、インプリント材の充填に要する時間が相対的に長い。一方、微細パターン領域601の凹部は、マーク領域602の凹部と比較してインプリント材が充填しやすい。従って、型のパターン部8aの凹部へのインプリント材14の充填を早く完了させるためには、マーク部602の凹部への充填を阻害しないように、マーク部602に接触するインプリント材14に対しては予備露光を行なわない。先に充填が完了するパターン部8aの微細パターン部601に接触するインプリント材14に予備露光のための光を照射することが好ましい。第2実施形態のように、型8のパターン領域8a(基板10のショット領域20)の一部領域に対してのみ選択的に予備露光を実施することにより、充填時間を短く保ちながら、位置合わせ精度を向上させることができる。
基板10に形成されたショット領域20の形状と型8のパターン部8aの形状に差がある場合、型8または基板10に光照射(加熱光)により熱を加えて、形状を補正する(変形する)技術が知られている。インプリント装置1は、パターン部8aまたはショット領域20を変形させるため、加熱光として、インプリント材14が感度を有さない(硬化しない)波長の光を照射することができる。その場合、例えば455nm以上の波長の光を加熱光として用いることが好ましい。さらに、予備露光による型8のパターン領域8aや基板10のショット領域20の変形を考慮して加熱光の強度分布を調整してもよい。
第2実施形態のインプリント装置1において、3種類の光を用いてインプリントが行われる。例えば、光照射部2から照射される3種類の光には、インプリント材14に対する光吸収の平均値が大きい順にインプリント材を硬化させる光(第1波長)、予備露光を行なうための光(第2波長)、加熱変形を行うための光(第3波長)が含まれる。
例えば、インプリント材として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを含有するものを用いる場合について説明する。光照射部2から照射される光は、第1波長を200〜400nm、第2波長を400〜455nm、第3波長を455〜475nmの波長帯域の光を用いることができる。第2実施形態のインプリント装置1は、単独でこれらの光を含む光照射部2(光源)をそれぞれの照射光に使用しても良いし、これらの光を含む単一の光源を用い、これらの光を分離するような光学フィルタを使用してもよい。このときインプリント装置1は、予備露光に用いる光、及び加熱変形に用いる光を、DMD501を介して基板10に照射する。3種類の光は同一の光源から照射されなくてもよく、3種類の光ごとに異なる光源を備えていてもよい。
ここで、パターン部8aとショット領域20の位置合わせにおいて、型8と基板10の相対移動によって生じるせん断力の大きさを考える。予備露光を行なわない場合、パターン部8aとショット領域20の位置合わせ時に生じるせん断力の最小値が0.1N未満となり、床等からの外乱により、パターン部8aショット領域20の位置合わせ精度が低下する恐れがある。そのため、予備露光手段6を用いて予備露光を行なうことにより、パターン部8aとショット領域20の位置合わせ時に生じるせん断力の最小値が0.1N以上、好ましくは0.3N以上、より好ましくは0.5N以上にする。また、せん断力の最大値を10N以下、好ましくは5N以下、より好ましくは1N以下になるようにする。一方で、せん断力が10Nを超える場合には、パターン部8aとショット領域20の位置合わせ時に各パターン形状が崩れ、位置合わせ精度が低下する恐れがある。
そのため、予備露光を行なった際に、型8と基板10の相対移動によって生じるせん断力の大きさが所定の条件となるように予備露光手段6による露光量を予め求めておく必要がある。そこで、予備露光手段6による露光量を予め求めるために、型8とインプリント材14を接触させた状態で、基板ステージ4を駆動しながら予備露光を行ない、予備露光手段6による光の照射量に対するせん断力を測定する。予備露光手段6による光の照射量をパラメータとしてせん断力を測定することで、予備露光に必要な光の照射量を求めることができる。また、インプリント装置とは異なる外部装置で、予備露光を行なうための光の照射量とせん断力の関係を求めて、予備露光に必要な光の照射量を決定してもよい。
このように第2実施形態のインプリント装置1は、予備露光手段6に含まれる光調整器を用いることで、パターン領域8aの一部領域に対して予備露光することにより、充填時間を短く保ちながら、位置合わせ精度を向上させることができる。
(実施例6、7)
第2実施形態で用いられるインプリント材の実施例について説明する。上記の表1に記載の実施例6、7は、インプリント材に含まれる光重合開始剤や増感剤を、予備露光を行なうための光の波長帯域に合わせて選択することで、インプリント材の粘度調整を容易にすることが可能になる。
実施例6、7のインプリント材14は、400nm以上500nm未満の波長帯域の光を吸収する光重合開始剤である成分(b)及び増感剤である成分(c)が含まれる。この時のインプリント材14に含まれる成分(b)は、300nm以上400nm以下のモル吸光係数の平均値が、波長400nm以上500nm以下のモル吸光係数の平均値より大きくなるように光重合開始剤(b−2)を選択する(表1に示す実施例6)。その他の成分は、上述の実施例1〜5と同様にインプリント材を調整する。第3実施形態のインプリント材14で選択された光重合開始剤(b−2)の各波長帯域におけるモル吸光係数の平均値を表2に示す。
光照射部2から照射される光は、第1波長を200nm〜400nm、第2波長を400nm〜455nm、第3波長を455nm〜475nmの波長帯域の光を用いることができる。これらの波長に対する、選択された光重合開始剤(b−2)のモル吸光係数の相対値を表3に示す。表3に示すように、予備露光のための光の波長帯域(第2波長)におけるモル吸光係数の相対値は、本露光の波長帯域(第1波長)におけるモル吸光係数の相対値に対して十分に小さい。そのため、予備露光を行なうための光の照度、及び照射時間を調整することにより、インプリント材の粘度調整を精密に行うことができる。
また、予備露光手段6としてDMD501のミラー素子502を備えたものを用い、ショット領域20の微細パターン領域601のみに光を照射して予備露光を行った。予備露光のための光の照射(露光量)は、位置合わせ時のせん断力の最小値が0.1N以上10N以下になるように調整することで、良好な振動の抑制効果を得ることができる。
(第3実施形態)
図1及び図7に基づいて第3実施形態のインプリント方法について説明する。第3実施形態におけるインプリント装置1は、型8とインプリント材14の接触に応じて、中心部から外周部に向かって予備露光を行うことができる。第3実施形態のインプリント装置1で用いられる予備露光手段6には、予備露光時にショット領域20に照射される光の領域を調整する光調整器が含まれる。光調整器の一例として、図7に示すデジタル・ミラー・デバイス(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を使用する。デジタル・ミラー・デバイスを、ここではDMD701と表記する。
図7は、光調整器として採用可能なDMD701の表面構成を示す概略図である。図7(a)に示すように、DMD701は、複数のミラー素子702が光を反射する光反射面に格子状に配置されている。DMD701はミラー素子702の設置角度を個別に変更することができ、予備露光時の光の照射量や照射位置を変化させることができる。
第3実施形態のインプリント装置1は、このDMD701を予備露光手段6内に設け、予備露光手段6の光源から照射される光をDMD701により反射させてインプリント材14を予備露光する。DMD701のミラー素子702は、制御部7からの動作指令に基づいてそれぞれの面方向が変化する。すなわちDMD701は光の反射方向を変更可能であり、パターン20に対して任意の照射量分布を形成(選択的に光を照射)する。
第3実施形態では、複数のミラー素子702をモールド8とインプリント材14の接触している領域に応じて、図7(b)から図7(f)に示すようにミラー素子702の反射方向を変更する。図7(a)から図7(f)に示すDMD701は、白いミラー素子702がパターン20に向けて照射する状態を示している。照射領域の変更は、図7に示した方法に限られない。光変調器を用いて予備露光を行うことで、モールド8とインプリント材14が接触した任意の領域に対してインプリント材14の粘弾性を高めることができる。
さらに上述の加熱光を基板10上に照射する場合について、DMD701を使用することができる。この場合、予備露光と加熱光を時間的に切り替えて照射してもよい。また、予備露光用と加熱光用にDMDを設けて、予備露光と加熱光を同時に照射しても良い。インプリント材14の感度が低ければ、予備露光を先に行い、その後に加熱光を照射する。また、モールド8のパターン部8aと基板10のショット領域20の形状差が大きく、加熱光を多く照射する場合にはあらかじめ加熱光を照射した後に、予備露光を行っても良い。なお、予備露光と加熱光のいずれにも400nm以上470nm未満の同一の波長の光を用いて、半硬化と加熱光による形状の補正を同時に行うこともできる。
第2実施形態では予備露光時に微細パターン領域601にのみ光を照射して、マーク領域602に光を照射しない場合について説明したが、マーク領域602より微細パターン領域601に光が照射されるように光調整器で調整してもよい。例えば、マーク領域602よりも微細パターン領域601に光量を多く照射したり、照射時間が長くなるように照射したりするように光調整器を調整することができる。
(物品の製造方法)
インプリント装置を用いて形成したインプリント材の硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図8(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
図8(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図8(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
図8(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
図8(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。なお、当該エッチングとは異種のエッチングにより当該残存した部分を予め除去しておくのも好ましい。図8(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。