JP6865442B2 - 遮音構造 - Google Patents
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Description
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、重量増加、コストの上昇を抑えつつ、遮音性を高めることのできる遮音構造を提供することを目的とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遮音構造において、前記マス部と前記バネ部とを含む遮音部材(例えば実施形態の遮音部材10)を形成し、前記遮音部材は、前記バネ部の前記区画部材に対向する側に設けられ、前記区画部材に接合可能な接合層部材(例えば実施形態の接合層部材13)をさらに備えることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の遮音構造において、前記マス部は、ポリプロピレンからなり、前記膜材は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなり、前記接合層部材は、ポリエチレンからなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の遮音構造において、前記マス部は、前記バネ部の前記膜材よりも、比重が大きい材料で形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の遮音構造において、前記バネ部の前記膜材は、前記マス部よりもヤング率が低い材料で形成されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の遮音構造において、複数の前記バネ部は、前記区画部材に対向する対向面に沿った方向において互いに間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の遮音構造において、前記ガスは、空気であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の遮音構造において、前記ガスは、二酸化炭素またはヘリウムであることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の遮音構造において、前記構造体は、自動車の車体(例えば実施形態の車体1)であり、前記区画部材が前記車体のアウターパネル(例えば実施形態のアウターパネル5)または前記車体の内装を形成するインナーパネル(例えば実施形態のインナーパネル6)であることを特徴とする。
さらに、遮音構造は、中空の膜材の内部にガスを封入した構成であるため、膜材を形成する材料の使用量が、ウレタン層に比較すれば大幅に少ない。したがって、マス部と区画部材とが対向する方向における遮音構造の厚さを大きくしても、重量増加、コストの上昇を抑えつつ、遮音性を高めることができる。
加えて、膜材に段付き部を有することにより、段付き部の断面積を小さく調整できる。よって、バネ部のバネ定数を下げることにより、遮音構造による共振周波数を下げることができる。したがって、遮音構造による重量増加、コストの上昇を抑えつつ、遮音性を一層高めることができる。
請求項2に記載した発明によれば、マス部とバネ部とにより遮音部材を構成し、この遮音部材において、バネ部の区画部材に対向する側に接合層部材を設けることにより、区画部材に対し、遮音構造を接合層部材によって接合し、区画部材に遮音構造を容易に設けることができる。
請求項3に記載した発明によれば、マス部をポリプロピレンで形成することで、高い成形性を得ることができる。また、膜材を、エチレン−ビニルアルコール共重合体で形成することで、高い気密性を得て、膜材の内部に封入したガスの漏出を抑えることができる。
さらに、接合層部材をポリエチレンから形成することで、区画部材に対して容易かつ確実に接合することができる。
請求項4に記載した発明によれば、マス部の比重を膜材の比重よりも大きくすることで、マス部の質量としての機能を有効に発揮することができる。
請求項5に記載した発明によれば、膜材のヤング率をマス部のヤング率よりも低くしたことにより、バネ部が弾性変形しやすくなり、騒音を効率良く抑えることができる。
請求項6に記載した発明によれば、複数のバネ部を、対向面に沿う方向で互いに間隔をあけて設けることにより、マス部が区画部材側に向かって接離するように変位するのにともなってバネ部が弾性変形するときに、互いに隣り合うバネ部同士が緩衝することを抑えることができる。これにより、バネ部の変形を他のバネ部が阻害することを抑え、騒音を効率良く抑えることができる。
請求項7に記載した発明によれば、膜材内に封入するガスとして空気を用いることで、低コスト化を図ることができる。
請求項8に記載した発明によれば、膜材内に封入するガスとして二酸化炭素を用いることにより、空気中よりも音速(音波の伝搬速度)が下がり、遮音性能を向上させることができる。また、膜材内に封入するガスとしてヘリウムを用いることにより、空気よりも密度が低くなり、遮音性能を向上させることができる。
請求項9に記載した発明によれば、上記したような遮音構造を、自動車の車体のアウターパネルまたはインナーパネルに設けることで、車体の内部空間における遮音性を高めることができる。
以下、実施形態においては、一例として、ルーフ部1Gに遮音構造を備えた例について説明するが、これに限定するものではない。その他の例として、例えば、遮音構造を左右のフロントサイドドア1B、左右のリヤサイドドア1C、ボンネット1D、テールゲート1E、左右のクオータパネル1F、ルーフ部1G等に備えることも可能である。
マス部11は、例えば板状で、車体1の内部空間3と外部4(図2参照)とを区画するアウターパネル5に対して間隔をあけて配置される。マス部11は、後述するバネ部12の膜材14よりも比重が大きく、高い成形性を有している材料で形成するのが好ましい。このようなマス部11を形成する材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)を用いるのが好ましい。なお、マス部11は板状に限らず、少なくとも一部に平面形状を有する部材であればよい。
各バネ部12は、中空の膜材14と、膜材14の内部に封入されたガス15(図6も参照)と、を有している。
また、膜材14は、マス部11よりも積極的に弾性変形するよう、マス部11を形成する材料よりもヤング率が低い材料で形成するのが好ましい。このような膜材14を形成する材料としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(例えば、株式会社クラレ製「エバール」(登録商標))を用いるのが好ましい。なお、膜材14が有する「気密性」については、完全に空気の出入りのない閉空間を形成するものに限らず、膜材14がバネ部として機能できるくらいに多少の空気の出入りを許容することもできる。
第1段付き部14bと第1円板部14gとにより第1段部14kが凹状に形成されている。
第2段付き部14cと第2円板部14hとにより第2段部14lが凹状に形成されている。
第2段付き部14cの端部(すなわち、マス部11側の端部)が第2端部閉塞部14eで閉塞されている。第2端部閉塞部14eは、マス部11に沿って平坦に形成されている。第2端部閉塞部14eは、例えば、マス部11に接着剤、溶着等により一体に接合されている。
すなわち、膜材14は、アウターパネル5とマス部11との配列方向に対して段つき形成された第1段付き部14bおよび第2段付き部14cを有している。膜材14に第1段付き部14b及び第2段付き部14cを備えた理由については後で詳しく説明する。
このようなガス15としては、例えば、空気を用いることができる。また、ガス15としては、二酸化炭素、ヘリウムを用いることもできる。
このような接合層部材13は、アウターパネル5に接合可能な材料により形成されている。この実施形態では、接合層部材13は、アウターパネル5に超音波や熱等を用いた溶着により接合される。このため、接合層部材13は、アウターパネル5に対する溶着性に優れる材料で形成するのが好ましい。このような接合層部材13を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)を用いることができる。なお、接合層部材13が粘着層や接着剤でアウターパネル5に接合されてもよい。
図2、図3に示すように、遮音部材10は、車体1のアウターパネル5に対し、アウターパネル5に設けられた補強フレーム(ルーフクロスメンバ)8を避けた位置に設けられている。この実施形態では、遮音部材10は、互いに隣り合う補強フレーム8の間において、補強フレーム8が延びる方向を長手方向とする帯状に形成されている。このように、遮音部材10は、アウターパネル5の形状や、アウターパネル5に設けられる補強フレーム8やその他の部材の配置に応じて形成され、四角形に限らず、三角形や台形、その他の各種形状に形成することができる。
このようにして、遮音部材10は、マス部11を質量mとし、バネ部12をバネ定数kのバネとした遮音構造を構成することができる。また、膜材14内に封入するガス15の圧力を調整することで、バネ部12のバネ定数kの調整を行うことができる。さらに、バネ部12は中空の膜材14の内部にガス15を封入した構成であるため、膜材14を形成する材料の使用量が、ウレタン層に比較すれば大幅に少ない。これにより、遮音性を高めるために、マス部11とアウターパネル5とが対向する方向におけるバネ部12の厚さ(すなわち、遮音部材10の厚さt1)を大きくしても、バネ部12の重量増加、コストの上昇を抑えることができる。
したがって、重量増加、コストの上昇を抑えつつ、遮音性を高めることができる。
これにより、アウターパネル5に対し、遮音部材10を接合層部材13によって接合して取り付けることができる。
また、マス部11をポリプロピレンで形成することで、高い成形性を得ることができる。また、膜材14を、エチレン−ビニルアルコール共重合体で形成することで、高い気密性を得て、膜材14の内部に封入したガス15の漏出を抑えることができる。さらに、接合層部材13をポリエチレンから形成することで、アウターパネル5に対して容易かつ確実に溶着することができる。
これにより、マス部11の質量としての機能を有効に発揮することができる。
また、膜材14のヤング率をマス部11のヤング率よりも低くした。
これにより、バネ部12が弾性変形しやすくなり、騒音を効率良く抑えることができる。
これにより、マス部11がアウターパネル5側に向かって接離するように変位するのにともなってバネ部12が弾性変形するときに、互いに隣り合うバネ部12同士が緩衝することを抑えることができる。これにより、バネ部12の変形を他のバネ部12が阻害することを抑え、騒音を効率良く抑えることができる。
これにより、遮音部材10の低コスト化を図ることができる。
また、膜材14内に封入するガス15として二酸化炭素を用いれば、空気中よりも音速(音波の伝搬速度)が下がる。これにより、遮音性能を向上させることができる。
また、膜材14内に封入するガス15としてヘリウムを用いれば、空気よりも密度が低くなる。これにより、遮音性能を向上させることができる。
膜材101は、マス部11とアウターパネル5とが対向する方向を軸線として延びる筒状をなしている。膜材101は、マス部11とアウターパネル5とが対向する方向から見た断面形状が例えば円形の筒状部101aと、筒状部101aの接合層部材13側の端部を閉塞する第1端部閉塞部101bと、筒状部14aのマス部11側の端部を閉塞する第2端部閉塞部101cとを一体に備えた密閉容器状をなしている。
すなわち、比較例の膜材101は、図6に示す実施形態の膜材14から第1段付き部14bと、第2段付き部14cとを除去した点で膜材14と異なるのみで、その他の構成は実施形態の膜材14と同様である。
遮音部材10の共振周波数H1が遮音部材100の共振周波数H2より下げられることにより、遮音部材10の透過損失を遮音部材100の透過損失より大きく確保することができる。すなわち、遮音部材10は、遮音部材100に対して領域Eの範囲において遮音性を高めることができる。
一方、図6に示す本実施形態の遮音部材10は、膜材14に第1段付き部14bと第2段付き部14cとを備えることにより、バネ部12のバネ定数k(図7参照)を下げて共振周波数H1(図9参照)を下げることができる。
これにより、遮音部材10による重量増加、コストの上昇を抑えつつ、遮音性を一層高めることができる。したがって、遮音部材10を、図2に示す自動車の車体1のアウターパネル5に取り付けることで、車体1の内部空間3における遮音性を高めることができる。
(実施形態の第一変形例)
まず、実施形態の第一変形例を図10、図11に基づいて説明する。
図10に示すように、遮音部材20は、実施形態の膜材14を膜材21に代えたもので、その他の構成は実施形態の遮音部材10と同様である。
膜材21は、実施形態の膜材14と同様に、マス部11とアウターパネル5とが対向する方向を軸線として延びる筒状をなしている。具体的には、膜材21は、筒状部21aと、第1段付き部14bと、第1端部閉塞部14dと、第2端部閉塞部21bとを一体に備えた密閉容器状をなしている。
第1円板部14gの内周に第1段付き部14bが形成されている。第1段付き部14bのうち、接合層部材13側の端部が第1端部閉塞部14dで閉塞されている。
すなわち、第一変形例の膜材21は、アウターパネル5とマス部11との配列方向に対して段つき形成された第1段付き部14bを有している。
グラフG1は実施形態の遮音部材10(図6参照)の透過損失を示し、グラフG2は比較例の遮音部材100(図8参照)の透過損失を示す。
遮音部材20の共振周波数H3が遮音部材100の共振周波数H2より下げられることにより、遮音部材20の透過損失を遮音部材100の透過損失より大きく確保することができる。これにより、遮音部材20は、遮音部材100に対して遮音性を高めることができる。
つぎに、実施形態の第二変形例を図12、図13に基づいて説明する。
上記実施形態では、各バネ部12(図6参照)を、断面円形としたが、これに限らない。例えば、図12、図13に示すように、バネ部12Bを、上記実施形態のバネ部12よりも断面積が大きな略矩形状に形成してもよい。これにより、バネ部12Bのガス15の封入面積を実施形態のバネ部12に比べて大きくできる。
この場合、互いに隣り合うバネ部12B同士の間隔を、上記実施形態におけるバネ部12同士の間隔よりも狭めるようにしてもよい。
つぎに、実施形態の第三変形例を図14に基づいて説明する。
図14に示すように、バネ部12Cを、断面六角形状とし、互いに隣り合うバネ部12Cを隙間無く配置し、いわゆるハニカム状に構成することもできる。バネ部12Cをハニカム状に構成することにより、バネ部12Cのガス15の封入面積を実施形態のバネ部12に比べて大きくできる。
つぎに、実施形態の第四変形例を図15、図16に基づいて説明する。
上記したような遮音部材10において、図15、図16に示すように、接合層部材13側に、硬質のボード材16を追加することもできる。この場合、ボード材16は、膜材14よりも硬質な樹脂材料等から形成することができる。このようなボード材16は、バネ部12と接合層部材13との間に挟み込むように設けることができる。
つぎに、実施形態の第五変形例を図17に基づいて説明する。
図17に示すように、例えば、遮音部材10は、アウターパネル5側ではなく、インナーパネル6側に装着することもできる。この場合、遮音部材10は、接合層部材13をインナーパネル6に接合し、マス部11は、アウターパネル5側に位置するように設けることができる。
例えば、マス部11と膜材14、21とを一体に成形するようにしてもよい。これにより、マス部11と膜材14、21とを別途接合する必要がなく、遮音部材10の製造を効率良く行うことができる。
例えば、上記実施形態及びその変形例では、遮音部材10を車体1のルーフ部1Gに設けるようにしたが、これに限らない。遮音部材10は、左右のフロントサイドドア1B、左右のリヤサイドドア1C、ボンネット1D、テールゲート1E、左右のクオータパネル1F、ルーフ部1G等、他の部位に設けるようにしてもよい。また、遮音部材10は、自動車に限らず、建物の天井、壁、床、各種装置のカバー等、他の構造体に設けるようにしてもよい。
遮音構造を車体1から独立した遮音部材10で構成することで製造や取り扱いが容易になるが、マス部11とバネ部12、12B、12Cとを備える遮音構造を区画部材に直接設ける構成としてもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
3 内部空間
4 外部
5 アウターパネル(区画部材)
6 インナーパネル(区画部材)
10、20 遮音部材
11 マス部
12、12B、12C バネ部
13 接合層部材
14、21 膜材
14a、21a 筒状部
14b 第1段付き部(段付き部)
14c 第2段付き部(段付き部)
14d 第1端部閉塞部
14e、21b 第2端部閉塞部
15 ガス
Claims (9)
- 構造体の内部空間と外部とを区画する区画部材に対して間隔をあけて配置され、少なくとも一部に平面形状を有するマス部と、
前記マス部において前記区画部材に対向する側に複数配置されたバネ部と、を備え、
前記バネ部は、
気密性及び可撓性を有した中空の膜材と、
前記膜材の内部に封入されたガスと、を有し、
前記膜材は、前記区画部材と前記マス部の配列方向に対して段つき形成された段付き部を有することを特徴とする遮音構造。 - 前記マス部と前記バネ部とを含む遮音部材を構成し、
前記遮音部材は、
前記バネ部の前記区画部材に対向する側に設けられ、前記区画部材に接合可能な接合層部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の遮音構造。 - 前記マス部は、ポリプロピレンからなり、
前記膜材は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなり、
前記接合層部材は、ポリエチレンからなる
ことを特徴とする請求項2に記載の遮音構造。 - 前記マス部は、前記バネ部の前記膜材よりも、比重が大きい材料で形成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の遮音構造。
- 前記バネ部の前記膜材は、前記マス部よりもヤング率が低い材料で形成されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の遮音構造。
- 複数の前記バネ部は、前記区画部材に対向する対向面に沿った方向において互いに間隔をあけて配置されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の遮音構造。 - 前記ガスは、空気である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の遮音構造。 - 前記ガスは、二酸化炭素またはヘリウムである
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の遮音構造。 - 前記構造体は、自動車の車体であり、前記区画部材が前記車体のアウターパネルまたは前記車体の内装を形成するインナーパネルである
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の遮音構造。
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