以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100の概略図である。本例のガスセンサ100は、対象ガスを検出する。対象ガスは、可燃性ガスであってよい。対象ガスは、メタンを主成分とする都市ガスであってよく、あるいは、プロパンおよびブタンを主成分とするLPガスであってもよい。また、対象ガスは、CO(一酸化炭素)であってよく、VOC(揮発性有機化合物)であってもよい。
ガスセンサ100は、検出部10と制御装置200とを備える。検出部10は、ガス検知部12およびヒータ14を備える。本例の検出部10は、ヒータ14の温度を測定する温度測定部16を備える。本例と異なり、検出部10は、温度測定部16を備えていなくてもよい。
ガス検知部12の電気信号は、存在するガスの種類および濃度によって異なる。例えば、ガス検知部12は、ガスの種類および濃度によって抵抗値が変化するセンサ抵抗を備える。ヒータ14は、ガス検知部12を加熱する。ガスセンサ100は、ヒータ14により目的温度に加熱されたガス検知部12の電気信号に基づいて対象ガスを検出する。ヒータ14に設定電圧が印加されてヒータ温度が安定したときのヒータの温度が目的温度である。目的温度は、ガス検出処理温度であってよい。目的温度は、350°C以上450°C以下であってよく、特に、400°C程度であってよい。
制御装置200は、ガスセンサ100を制御する。本例では、検出部10および制御装置200が共にガスセンサ100に内蔵されている。但し、制御装置200は、ガスセンサ100に外付けされる制御装置であってもよい。制御装置200は、測定部20、および加熱制御部30を備える。測定部20は、ガス検知部12の電気信号を取得する。例えば、測定部20は、ガス検知部12内のセンサ抵抗の抵抗値を測定する。具体的には、測定部20は、ガス検知部12内のセンサ抵抗に電流を流してセンサ抵抗の両端の電圧を測定してよい。このように、ガス検知部12の電気信号は、センサ抵抗の電気抵抗値に対応づけられた電圧または電流であってよい。
加熱制御部30は、ヒータ14に印加する電圧を制御する。特に、加熱制御部30は、目的温度に対応する設定電圧に比べて大きい初期駆動電圧をヒータ14に印加する。そして、初期駆動電圧が印加されることによってヒータ14の温度が上昇している状態で、加熱制御部30は、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。例えば、加熱制御部30は、予め定められた期間が経過すると、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。
ヒータ14に印加される電圧が初期駆動電圧から設定電圧に切り替わった後、ヒータ14の温度は、目的温度に収束する。加熱制御部30は、初めから設定電圧を印加する場合と比べて加熱期間を短縮する。これにより、省電力が実現される。加熱制御部30は、マイクロコンピュータによって構成してよい。
ガスセンサ100は、対象ガスを検出した場合に警報を発報するガス警報器であってもよい。ガスセンサ100がガス警報器である場合、制御装置200は、警報発生部を備えてよい。警報発生部は、検出部10による測定に基づいて対象ガスが検出された場合に警報を発する。警報発生部は、警報音等の音を発する警報音出力部を備えていてもよい。警報音出力部は、スピーカおよびブザー等で構成されてよい。警報発生部は、LED(発光ダイオード)等を点滅または点灯させて警報状態を表示する警報表示部を備えてもよい。但し、警報発生部は、必須の構成要素ではない。
本例の制御装置200は、設定部50、記憶部60、補正部70、および周辺温度測定部80を備える。設定部50は、加熱制御部30がヒータ14を制御するために必要な情報またはパラメータを設定する。例えば、設定部50は、加熱制御部30による加熱条件を設定する。本例の設定部50は、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に切り替えるタイミングを設定する。一例において、設定部50は、ヒータ14の昇温特性に基づいて、ヒータ14に初期駆動電圧を印加する期間を設定する期間設定部として機能する。ヒータ14の昇温特性は、ヒータ14に予め定められた試験用電圧を印加したときの温度測定部16による測定結果に応じて取得されてよい。
記憶部60は、加熱制御部30がヒータ14を制御するために必要な情報またはパラメータを記憶する。例えば、記憶部60は、ヒータ14に初期駆動電圧が印加される期間である初期駆動期間t1についての情報を記憶する。初期駆動期間t1についての情報は、工場出荷時等に予め記憶部60に格納されていてもよい。上述のとおり、設定部50が、初期駆動期間t1を自動的に設定する場合には、記憶部60は、設定部50によって設定された上記初期駆動期間t1についての情報を記憶してよい。
周辺温度測定部80は、ガスセンサ100の周辺温度を測定する。周辺温度は、ガスセンサ100が配置されている環境における温度であってよい。上述した温度測定部16が、周辺温度測定部80として兼用されてもよい。補正部70は、測定された周辺温度に基づいて、ヒータ14に印加する初期駆動電圧の期間および電圧値の少なくとも一方を補正してよい。補正部70は、周辺温度が低くなるほど、ヒータ14に印加する初期駆動電圧の期間を長くしてよく、初期駆動電圧の電圧値を大きくしてよい。
なお、本例の制御装置200が、設定部50、記憶部60、補正部70、および周辺温度測定部80を含む場合を説明したが、制御装置200は、この場合に限定されない。制御装置200は、本例と異なり、各部を必ずしも含んでいなくてよい。例えば、初期駆動電圧が印加される期間を自動的に設定しない場合には、設定部50は省略される。また、周辺温度に応じて初期駆動電圧の補正を実行しない場合には、補正部70および周辺温度測定部80は省略されてよい。また、上述したとおり、検出部による測定に基づいて対象ガスが検出された場合に警報を発するように警報発生部を備えてもよい。
図2は、検出部10の概略構成の一例を示す断面図である。本例の検出部10は、薄膜半導体式センサである。本例の検出部10は、シリコン基板2と、熱絶縁支持層3と、ヒータ14として機能するヒータ層と、電気絶縁層4と、ガス検知部12とを備える。シリコン基板2には、貫通孔6が設けられている。貫通孔6は、ダイアフラム構造を構成する。ガス検知部12は、接合層7と、ガス感知層電極8と、ガス感知層5と、触媒層9とを備えている。ガス感知層5は、センサ抵抗であってよい。ガス感知層5は、例えば、SnO2、In2O3、WO3、ZnO、およびTiO2等の金属酸化物を主成分とする感知層として形成される。
触媒層9は、例えば、Pd、PdO、およびPt等の少なくとも一種の触媒を担持した焼結体である。一例において、触媒層9は、触媒担持Al2O3焼結体であり、Cr2O3、Fe2O3、Ni2O3、ZrO2、SiO2、ゼオライト等の金属酸化物を主成分として形成されてもよい。シリコン基板2は、半導体基板の一例である。シリコン基板2は、シリコンウェハーから構成される。ヒータ14はガス検知部12を加熱する。検出部10は、ヒータ14によって、ガス検知部12を加熱したときのガス検知部12の電気信号に基づいて対象ガスを検出する。例えば、検出部10は、ガス感知層5の抵抗値によって対象ガスを検出する。
本例の検出部10においては、MEMS技術を用いたヒータ構造が採用されている。本例のヒータ構造は、開口部を有する空間が形成せれたシリコン基板2を有する。本例では、開口部を有する空間として貫通孔6がシリコン基板2に形成されている。開口部を有する空間上に熱絶縁支持層3が設けられる。本例では、熱絶縁支持層3は、シリコン基板2の貫通孔6の開口部の全体に張られて、ダイアフラム構造が形成されてよい。ヒータ層であるヒータ14は、熱絶縁支持層3によって支持される。
MEMS技術を用いたヒータ構造により、低消費電力を実現したヒータ14を用いたガスセンサ100が実現される。ヒータ14を小型化し熱容量を小さくすることによってヒータ14の熱応答性が向上する。また、シリコン基板2に貫通孔6を設けることによって、ヒータ14から周囲環境への熱伝達を小さくすることができる。しかしながら、検出部10の構造は、ダイアフラム構造を有するものに限られない。
図3は、検出部10の概略構成の他例を示す平面図である。図4は、図3の検出部10のA−A´線に沿った断面図である。図3および図4に示される検出部10においても、MEMS技術を用いたヒータ構造が採用されている。図3および図4に示されるヒータ構造では、開口部を有する空間としてキャビティ18がシリコン基板2に形成されている。キャビティ18は、シリコン基板2の上面において開口部を有するが、シリコン基板2の下面側は、開口していない。キャビティ18は、四角錐または四角錐台形状を有してよい。
キャビティ18上に熱絶縁支持層3が設けられている。熱絶縁支持層3は、キャビティ18上の中央に位置する中央部と、中央部と周辺部とを繋ぐ複数のブリッジ部とを備えてよい。熱絶縁支持層3には、部分的に孔17が設けられている。熱絶縁支持層3の中央部には、ヒータ14が設けられる。図3および図4に示される検出部10においても、ヒータ14から周囲環境への熱伝達を小さくすることができる。
また、検出部10は、必ずしも本例のような薄膜半導体式センサに限られない。検出部10は、熱線型半導体式センサであってもよく、接触燃焼式センサであってもよい。熱線型半導体式センサは、ヒータに電気的に並列に接続された金属酸化物半導体からなるガス検知部を備える。接触燃焼式センサは、ヒータ上に酸化活性を持つ触媒層を備えたガス検知素子と、ヒータ上にガスに不活性な触媒層をもつ補償素子からなるガス検知部とを備える。熱線型半導体式センサおよび接触燃焼式センサの場合は、ガス検知部の一部を構成するヒータが、ガス検知部を加熱するためのヒータとして兼用される。したがって、ガス検知部とヒータとが別々に設けられずに、兼用されてよい。
次に、加熱制御部30によるヒータ14の駆動について説明する。図5は、ヒータ14の間欠駆動の一例を示す図である。加熱制御部30は、周期的にヒータ14をパルス駆動している。すなわち、加熱制御部30は、ヒータ14に対してヒータ駆動電圧としてパルス状の電圧を周期的に印加する。加熱制御部30は、30秒以上60秒以下の周期Pでパルス状の電圧をヒータ14に印加してよい。ヒータ14は、室温と目的温度である400℃との間で間欠的に駆動される。周期Pは、隣接するパルス状の電圧の繰返し周期であってよい。
ヒータ14によってガス検知部12が目的温度に加熱される。加熱制御部30は、各パルス駆動において、ヒータ14に初期駆動電圧を印加してヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。
図6は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100におけるヒータ駆動電圧パターンを示す図である。図6は、図5に示される一つのパルス状の電圧部分を拡大した電圧波形を示している。縦軸は、設定電圧に対するヒータ駆動電圧の比を示している。ヒータ駆動電圧が設定電圧の値である場合に比が1である。ヒータ駆動電圧が設定電圧より大きい場合に比が1より大きい。横軸は時間を示している。
図6に示されるとおり、加熱制御部30は、目的温度に対応する設定電圧に比べて大きい初期駆動電圧をヒータ14に印加する。次いで、加熱制御部30は、初期駆動期間t1が経過すると、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。加熱制御部30は、期間t2にわたって設定電圧をヒータ14に印加する。期間t1と期間t2を合計した期間が加熱期間に対応する。第1実施形態のガスセンサ100において、目的温度が400℃であってよい。ヒータの消費電力が数十mWであってよい。ヒータ駆動電圧が数Vであってよい。
図7は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100におけるヒータ温度の変化を示す図である。図7は、図6に示されるヒータ駆動電圧パターンでヒータ14を駆動した場合におけるヒータ温度の推移を示す。図7の縦軸は、目的温度に対するヒータ温度の比を示している。図7の横軸は時間を示している。
図7に示されるように、加熱制御部30は、ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。具体的には、初期駆動電圧をヒータ14に印加したときにヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧が初期駆動電圧から設定電圧に変更されるように、初期駆動期間t1が設定されてよい。
加熱制御部30は、記憶部60に記憶されている初期駆動期間t1の情報を読み出してよい。加熱制御部30は、読み出された初期駆動期間t1の情報を参照して、ヒータ14に印加される電圧が初期駆動電圧から設定電圧に変更してよい。ヒータ14に印加される電圧が初期駆動電圧から設定電圧に変更されると、ヒータ14の温度は上昇を停止して、目的温度に収束してよい。その後、加熱期間が終了してヒータ14がオフされると、ヒータ14の温度は低下する。
図8は、比較例のガスセンサにおけるヒータ駆動電圧パターンを示す図である。縦軸は、設定電圧に対するヒータ駆動電圧の比を示している。ヒータ駆動電圧が設定電圧の値である場合に比が1である。図8に示されるとおり、比較例のガスセンサは、電圧を印加する最初から、目的温度に対応する設定電圧をヒータ駆動電圧としてヒータに印加する。比較例では、パルス幅が0.1秒の期間にわたって設定電圧がヒータ14に印加される。この点を除いて、比較例のガスセンサの構造は、図1および図2に示した第1実施形態のガスセンサ100の構造と同様であってよい。したがって、繰り返しの説明が省略される。
図9は、比較例のガスセンサにおけるヒータ温度の変化を示す図である。図9は、図8に示されるヒータ駆動電圧パターンでヒータを駆動した場合におけるヒータ温度の推移を示す。ヒータ駆動する場合にヒータに印加される最短のパルス幅は、所定の目的温度までの温度上昇に要する時間t1´と、目的温度に加熱されている状態でガス検知部12の電気信号を取得する等のデバイスの処理時間t2´との合計時間として定められてよい。比較例のガスセンサでは、例えば、時間t1´が、0.05秒であり、処理時間t2´が、0.05秒であり、時間t1´と時間t2´の合計時間が0.1秒である。
比較例のガスセンサにおいて、例えば、目的温度が400℃であり、ヒータの消費電力が数十mWであり、ヒータ駆動電圧が数Vである場合、比較例のガスセンサのヒータにおいては、目的温度までの温度上昇に要する時間t1´が0.05秒程度であってよい。なお、時間t1´は、加熱対象物であるガス検知部12が存在する状態での応答時間を示している。ガス検知部12が存在せずにヒータ14のみが存在する場合であれば、目的温度400℃までの温度上昇に要する時間は約1/10の0.005秒程度であってよい。
比較例のようなガスセンサは、時間t1´が0.05秒程度であり、熱応答性が良好である。したがって、一般的なPWM制御によってヒータの温度を一定に保つことが困難である。そのため、間欠駆動中にヒータに印加されるパルス状の電圧は図8に示されるように、パルス印加時間(加熱期間)の全体にわたって変動が抑えられる。すなわち、ヒータ温度を目的温度に保つための一定の設定電圧が0.1秒程度の期間にわたってヒータに印加されてよい。
比較例のガスセンサは、図2に示されるように、ダイアフラム構造を構成する貫通孔の径を大きくしたり、ダイアフラムを構成する熱絶縁支持層3を薄くしたりすることによって消費電力を低減することができる。しかし、消費電力を低減したヒータを用いたとしても、目的温度までの温度上昇に要するt1´が短縮されるわけではない。
例えば、時間t1´が0.05秒程度のガスセンサに、従来に比べて1/2の消費電力のヒータが適用されたとしても、ヒータおよび加熱対象物の熱容量が同じであれば、時間t1´は2倍程度となる。処理時間t2´は、消費電力に無関係のため変化しない。したがって、全体の加熱期間はt1+t2=0.15秒となる。これにより、ヒータ消費電力Phは1/2になっても、加熱期間が1.5倍に増えるためヒータの平均消費電力は1/2とはならず、3/4となる。
また、ヒータ以外の制御回路部分において消費される電力は、パルス出力している時間が短くなるほど少なくなる。したがって、ヒータに電圧を印加する時間を短くすることが省電力の観点から望ましい。第1実施形態のガスセンサ100によれば、図6に示されるとおり、初期駆動期間t1において、設定電圧より大きい初期駆動電圧をヒータ14に印加することで、目的温度までの温度上昇に要する時間を、比較例における温度上昇に要する時間t1´に比べて短くすることができる。
初期駆動期間t1が比較例における温度上昇に要する時間t1´より短くてよい。具体的な実験によれば、初期駆動電圧を設定電圧の1.44倍とし、初期駆動期間t1を0.01秒とすることで、0.01秒でヒータ14の温度が目的温度400℃に達することができた。ヒータ14の温度が目的温度に達した後は、ヒータ14の温度を目的温度に保つように設定電圧が期間t2にわたってヒータ14に印加された。
以上のように、本実施形態のガスセンサ100によれば、全体の加熱期間を、比較例における0.1秒から0.06秒に短縮することが可能となった。ヒータ14における消費電力がV2/R(但し、Vがヒータ駆動電圧であり、Rがヒータの抵抗)で与えられるとすると、比較例の場合には、パルス1回あたりの消費電力量(W・秒)は、(V1 2/R)・(0.05+0.05)=0.1(V1 2/R)である。
これに対し、本実施形態のガスセンサ100の場合には、パルス1回あたりの消費電力量(W・秒)は、((1.44・V1)2/R)・0.01+(V1 2/R)・(0.05)≒0.07(V1 2/R)となる。したがって、本例によれば、比較例の場合に比べて、30%程度の消費電力量が削減される。さらに、パルス出力している加熱期間が比較例における0.1秒から0.06秒と短くなる。したがって、ヒータ14以外の制御回路部分での消費電力量も低減される。
図6および図7に示される例では、ヒータ14の温度T1が目的温度T2となる時間、すなわち、図7の縦軸に示される比が1となる時間が、初期駆動期間t1と一致している。但し、本実施形態のガスセンサ100は、この場合に限られない。
図10は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100おけるヒータ駆動の他の例を説明する図である。図10においては、加熱制御部30は、ヒータ温度が目的温度より低いときに、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。ヒータ14および加熱対象物であるガス検知部12の熱容量によっては、ヒータ温度が目的温度に達するのを待って、ヒータ14に印加される電圧を変更すると、ヒータ温度が目的温度を超えてオーバーシュートする場合がある。
図10に示されるように、ヒータ温度が目的温度より低いときに、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更することにより、オーバーシュートを防止して、消費電力を抑えることができる。図10においては、ヒータ温度T1が、0.8T2または0.9T2(但し、T2は、目的温度)となったときに、加熱制御部30が、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更するように、初期駆動期間t1が設定されている。
図11は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100におけるヒータ駆動の他の例を説明する図である。図11においては、加熱制御部30は、ヒータ温度T1が目的温度より高いときに、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。ヒータ14に印加される電圧が設定電圧に変更されて、ヒータ14の温度が安定すると、ヒータ14の温度は目的温度に収束する。
以上のように、加熱制御部30は、ヒータ14の温度T1(℃)が、下記数式1を満足する範囲となった状態で、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更してよい。
[数式1]
0.8T2≦ T1 ≦ 1.2T2 但し、T2は、目的温度(℃)である。
ヒータ14の温度T1(℃)が、0.8T2より低い状態で、ヒータ14に印加される電圧を設定電圧に切り替えると、目的温度に達するまでの時間が長くなる。一方、ヒータ14の温度T1(℃)が1.2T2より高い状態で、ヒータ14に印加される電圧を設定電圧に切り替えると、ヒータ温度がオーバーシュートして消費電力が大きくなる。したがって、ヒータ14の温度T1(℃)が、下記数式1を満足する範囲となった状態で、ヒータ14に印加される電圧を設定電圧に切り替えることが望ましい。
図12は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100による処理内容の一例を示すフローチャートである。図12は、ガスセンサ100の制御方法を示す。加熱制御部30は、ヒータ14に設定電圧より大きい初期駆動電圧を印加する(ステップS101)。初期駆動期間t1が経過するのを待って(ステップS102:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する(ステップS103)。
ステップS103において、ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータに印加する電圧が初期駆動電圧から設定電圧に変更されるように、電圧変更のタイミングが設定されている。具体的には、初期駆動期間t1によって電圧変更のタイミングが事前に設定されてよい。ステップS103は、ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する電圧変更段階に相当する。
ヒータ14に設定電圧が印加されてヒータ14の温度が安定すると、ヒータ14の温度が目的温度となる。ヒータ14によって加熱されるガス検知部12も少し遅れて目的温度に達する。測定部20は、ガス検知部12の電気信号を取得する(ステップS104)。例えば、測定部20は、ガス検知部12内のガス感知層5に電流を流してガス感知層5の両端の電圧を測定する。これにより、測定部20は、ガス感知層5の電気抵抗値または電気抵抗値に対応する電圧等をガス検知部12の電気信号として取得してよい。
ガスセンサ100は、ガス検知部12の電気信号に基づいて対象ガスを検出する(ステップS105)。具体的には、存在する対象ガスの濃度が高くなるにつれて、ガス検知部12におけるガス感知層5の電気抵抗値が低下する。したがって、ガスセンサ100は、ガス感知層5の電気抵抗値が予め定められた閾値未満であれば、対象ガスが存在すると判定してよい。判定は、測定部20が実行してもよく、他の構成が実行してもよい。
対象ガスが検出された場合には(ステップS105:YES)、制御装置200は、対象ガスの検出を示す信号を生成する(ステップS106)。例えば、制御装置200の警報発生部は、ガス漏れ警報を発報する。ガス感知層5の電気抵抗値が閾値以上でれば、対象ガスが検出されていないとして(ステップS105:NO)、ステップS107の処理に進む。
期間t1と期間t2を合計した全体の加熱期間が経過すると(ステップS107:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14への通電を停止する(ステップS108)。加熱制御部30は、周期的にヒータ14をパルス駆動してよい。したがって、加熱制御部30は、30秒以上60秒以下のヒータ駆動の周期Pが経過するのを待って(ステップS109:YES)、再びヒータ14に対して初期駆動電圧を印加する(ステップS101)。
図13は、初期駆動期間の設定処理の一例を示すフローチャートである。加熱制御部30は、予め定められた電圧をヒータ14に印加する(ステップS201)。ヒータ14に電圧が印加された状態で、温度測定部16は、複数の時点におけるヒータ温度を測定する(ステップS202)。温度測定部16による測定結果に応じたヒータ14の昇温特性が取得される。取得された昇温特性は、記憶部60等に格納されてよい。取得された昇温特性は、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量を反映している。同じ電圧をヒータ14に印加した場合に、熱容量が小さいほど、所定温度まで昇温する時間が短くなる。
設定部50は、ヒータ14の昇温特性に基づいて、ヒータ14に初期駆動電圧を印加する期間、すなわち、初期駆動期間t1を設定する(ステップS203)。具体的には、設定部50は、取得された昇温特性によって算出されるヒータ14およびガス検知部12の熱容量が大きいほど、初期駆動期間t1が長くなるように設定してよい。これは、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量が大きいほど、目的温度に達するまで時間が長くかかるからである。設定された初期駆動期間t1の情報は記憶部60に記憶される(ステップS204)。
図13に示される初期駆動期間の設定処理は、ガスセンサ100の製品を出荷するときに実行されてもよい。また、設定部50は、初期駆動期間の設定処理を定期的に実行してよい。設定部50は、一例において、1日に1回の回数で所定時刻において、初期駆動期間の設定処理を実行してもよい。但し、初期駆動期間の設定処理を実行する頻度は、この場合に限られない。初期駆動期間の設定処理によって、初期駆動期間t1を適切に設定することができる。したがって、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量等がばらつく場合であっても、加熱制御部30は、適切なタイミングで初期駆動電圧から設定電圧に変更することができる。
本実施形態のガスセンサ100の処理は、図13に示される場合に限られない。設定部50は、初期駆動期間t1を一定の期間として、ヒータ14の初期駆動電圧をヒータ14の昇温特性に基づいて設定してもよい。初期駆動電圧の初期値をヒータ14に印加したときに、ヒータ温度が目的温度に達するまでの時間が、想定されている時間より短い場合は、設定部50は、初期駆動電圧を初期値より小さする。ヒータ温度が目的温度に達するまでの時間が、想定されている時間より長い場合は、設定部50は、初期駆動電圧を初期値より大きくしてよい。想定されている時間は、初期駆動期間t1であってもよい。
これにより、設定部50は、想定している時間において、ヒータ温度が目的温度に達するように、初期駆動電圧の大きさを設定してよい。設定された初期駆動電圧の情報は、記憶部60が記憶されてよい。あるいは、設定部50は、ヒータ抵抗値を計測することによって、温度を算出しながら初期駆動電圧の大きさと初期駆動期間t1を定めてもよい。
以上のように、第1実施形態のガスセンサ100によれば、ヒータ14に、目的温度に対応する設定電圧に比べて大きい初期駆動電圧が印加される。そして、加熱制御部30は、ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。したがって、ヒータ14の温度が目的温度に達するまでの時間を短くすることができる。加熱時間が短縮されることにより、ヒータ14における消費電力量を削減することができる。また、ヒータ14にパルス状の電圧を出力する時間が短縮されるため、ヒータ14以外の制御回路部分において消費される消費電力量も低減される。
第1実施形態のガスセンサ100によれば、初期駆動期間t1の情報が記憶部60に記憶される。加熱制御部30は、初期駆動期間t1が経過すると、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。したがって、ヒータ14に印加される電圧を期間の経過に応じて切り替えることができるので、温度測定部16の熱応答性に依存することなく迅速にヒータ14に印加される電圧を切り替えることができる。
図14は、本発明の第2実施形態のガスセンサ100による処理内容の一例を示すフローチャートである。第2実施形態のガスセンサ100は、ヒータ14の温度を測定する温度測定部16を備える。そして、加熱制御部30は、温度測定部16によって測定されたヒータ14の温度が予め定められた値になった場合に、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。加熱制御部30は、ヒータ温度の測定結果によって電圧を制御する。したがって、設定部50は、初期駆動期間t1を設定しなくてよい。ヒータ14に印加される電圧をヒータ温度に応じて切り替えることを除いて、第2実施形態のガスセンサ100における構造は、第1実施形態のガスセンサ100における構造と同様であるので、繰返しの説明は省略される。
本実施形態のガスセンサ100においても、加熱制御部30は、ヒータ14に設定電圧より大きい初期駆動電圧を印加する(ステップS301)。温度測定部16は、ヒータ温度を測定する(ステップS302)。ヒータ温度が所定値に達するのを待って(ステップS302:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する(ステップS304)。ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータに印加する電圧が初期駆動電圧から設定電圧に変更される。一例において、所定値は、0.8T2以上1.2T2以下の範囲内で予め設定されてよい。但し、T2は、目的温度(℃)である。
以下のステップS305からステップS310の処理は、図12におけるステップS104からステップS309の処理と同様である。したがって、繰り返しの説明が省略される。第2実施形態のガスセンサ100においても、加熱制御部30は、ヒータ14に、目的温度に対応する設定電圧に比べて大きい初期駆動電圧を印加する。そして、ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧を初期駆動電圧から設定電圧に変更する。したがって、ヒータ14の温度が目的温度に達するまでの時間を短くすることができ、加熱期間を短縮できる。
図15は、本発明の第3実施形態のガスセンサ100におけるヒータ駆動電圧パターンを示す図である。縦軸は、設定電圧に対するヒータ駆動電圧の比を示している。ヒータ駆動電圧が設定電圧の値である場合に比が1である。ヒータ駆動電圧が設定電圧より大きい場合に比が1より大きい。横軸は時間を示す。
第3実施形態のガスセンサ100において、加熱制御部30は、ヒータ14に、第1初期駆動電圧を印加した後に、第1初期駆動電圧より大きく設定電圧より大きい第2初期駆動電圧を印加する。そして、加熱制御部30は、ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧を第2初期駆動電圧から設定電圧に変更する。特に、第1初期駆動電圧が設定電圧より大きくてよい。これらの点に除いて、第3実施形態のガスセンサ100の構造は、第1および第2実施形態のガスセンサ100の構造と同様である。したがって、繰り返しの説明が省略される。
本例のガスセンサ100において、第1初期駆動期間(第1期間)t11と、第2初期駆動期間(第2期間)t12との合計時間t1は、比較例において目的温度までの温度上昇に要する時間t1´より短くてよい。第1初期駆動期間t11は、ヒータ14に第1初期駆動電圧を印加する期間である。第2初期駆動期間t12は、ヒータ14に第2初期駆動電圧を印加する期間である。
本例では、第1初期駆動期間t11と第2初期駆動期間t12とは共に、0.005秒である。本例では第1初期駆動電圧を設定電圧の1.25倍とし、第2初期駆動電圧を設定電圧の1.55倍とすることで、0.01秒でヒータ14の温度が目的温度400℃に達することができた。加熱期間全体は、0.01秒である期間t1と、0.05秒である期間t2とを合計した0.06秒となる。本実施形態においても、図8および図9に示した比較例に比べて、加熱期間を0.1秒から0.06秒に短縮することができる。但し、加熱条件は、これらの場合に限定されない。
本実施形態のガスセンサ100によれば、第1初期駆動電圧を第2初期駆動電圧より小さくしているので、ヒータ14の突入電流を制限することができる。突入電流は、ヒータ14に電圧を印加したときに一時的に流れる大電流を意味する。ヒータに電圧を印加した直後はヒータ14が、まだ目的温度に比べて低い温度であるためヒータ14の電気抵抗が小さく、それゆえ大電流が流れる。ヒータ14が発熱して温まるとヒータ14の電気抵抗が大きくなるため流れる電流が小さくなる。本例のガスセンサ100によれば、ヒータ14に対して最初に印加する第1初期駆動電圧を第2初期駆動電圧より低くすることで、突入電流を制限することができ、ヒータ14を保護することができる。
本実施形態のガスセンサ100では、第1初期駆動電圧と第2初期駆動電圧という2段階の初期駆動電圧を印加する場合を説明したが、異なるレベルの駆動電圧を印加する段階の数は3段階以上であってもよい。突入電流を制限するためには、第1初期駆動電圧が設定電圧より低くてもよい。但し、突入電流をある程度制限しつつ、加熱期間を短縮化する観点からは、加熱制御部30が、設定電圧より大きい第1初期駆動電圧をヒータに印加することが望ましい。
図16は、本発明の第3実施形態のガスセンサ100におけるヒータ温度の変化を示す図である。図16は、図15に示されるヒータ駆動電圧パターンでヒータ14を駆動した場合におけるヒータ温度の推移を示す。図16の縦軸は、目的温度に対するヒータ温度の比を示している。図16の横軸は時間を示している。図16に示されるとおり、ヒータ14の温度T1が目的温度T2となる時間、すなわち、図16の縦軸に示される比が1となる時間が、合計時間t1と一致している。但し、本実施形態のガスセンサ100は、この場合に限られない。
加熱制御部30は、ヒータ温度が目的温度より低いときに、ヒータ14に印加される電圧を第2初期駆動電圧から設定電圧に変更してもよい。あるいは、加熱制御部30は、ヒータ温度が目的温度より高いときに、ヒータ14に印加される電圧を第2初期駆動電圧から設定電圧に変更してもよい。
加熱制御部30は、ヒータ14の温度T1(℃)が、下記数式1を満足する範囲となった状態で、ヒータ14に印加される電圧を第2初期駆動電圧から設定電圧に変更してよい。
[数式1]
0.8T2≦ T1 ≦ 1.2T2 但し、T2は、目的温度(℃)である。
図17は、本発明の第3実施形態のガスセンサ100による処理内容の一例を示すフローチャートである。加熱制御部30は、ヒータ14に設定電圧より大きい第1初期駆動電圧を印加する(ステップS401)。但し、本例と異なり、第1初期駆動電圧は、必ずしも設定電圧より大きくなくてもよい。次いで、第1初期駆動期間t11が経過するのを待って(ステップS402:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14に第1初期駆動電圧より大きい第2初期駆動電圧を印加する(ステップS403)。第2初期駆動電圧は、設定電圧より大きい。
次いで、第2初期駆動期間t12が経過するのを待って(ステップS404:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14に印加される電圧を第2初期駆動電圧から設定電圧に変更する(ステップS405)。ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータに印加する電圧が第2初期駆動電圧から設定電圧に変更されるように、電圧変更のタイミングが設定されている。具体的には、第1初期駆動時間t11および第2初期駆動期間t12によって電圧変更のタイミングが事前に設定されてよい。ヒータ14に設定電圧が印加されて、ヒータ14の温度が安定すると、ヒータ14の温度が目的温度となる。
ステップS406からステップS411の処理は、図12におけるステップS104からステップS109の処理と同様である。したがって、繰り返しの説明が省略される。第3実施形態のガスセンサ100によれば、ヒータ14の温度が目的温度に達するまでの時間を短くすることができ、加熱期間を短縮できる。また、突入電流を制限することによって、ヒータ14を保護することができる。
図18は、本発明の第4実施形態のガスセンサ100におけるヒータ駆動電圧パターンを示す図である。縦軸は、設定電圧に対するヒータ駆動電圧の比を示している。ヒータ駆動電圧が設定電圧の値である場合に比が1である。ヒータ駆動電圧が設定電圧より大きい場合に比が1より大きい。横軸は時間を示している。
第4実施形態のガスセンサ100において、加熱制御部30は、ヒータ14に、設定電圧より大きい第1初期駆動電圧を印加した後に、第1初期駆動電圧より小さく設定電圧より大きい第2初期駆動電圧を印加する。そして、加熱制御部30は、ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加される電圧を第2初期駆動電圧から設定電圧に変更する。
設定部50は、ヒータ14の昇温特性に基づいて、第1初期駆動電圧を印加している第1初期駆動期間(第1期間)t11、および第2初期駆動電圧の大きさを設定する加熱条件設定部として機能してよい。また、補正部70は、第1初期駆動期間t11および第2初期駆動期間(第2期間)t12の少なくとも一方を、周辺温度に基づいて補正してよい。また、補正部70は、第1初期駆動電圧値および第2初期駆動電圧値の少なくとも一方を、周辺温度に基づいて補正してよい。以上のような加熱制御部30および設定部50の構成を除いて、第4実施形態のガスセンサ100の構造は、第1から第3実施形態のガスセンサ100の構造と同様である。したがって、繰り返しの説明が省略される。第3実施形態の場合においても、設定部50は、ヒータ14の昇温特性に基づいて、第1初期駆動電圧を印加している第1初期駆動期間(第1期間)t11、および第2初期駆動電圧の大きさを設定してもよい。
ヒータ14およびガス検知部12の熱容量によっては、ヒータ14に印加される初期駆動電圧を高くしすぎたり、初期駆動期間が長すぎたりすると、ヒータ温度が目的温度を超えてオーバーシュートしてしまい、消費電力量の削減ができない場合がある。一方、初期駆動電圧が低すぎると、ヒータ温度が目的温度に達するまでに要する時間が長くなる。
本例によれば、設定電圧より高い第1初期駆動電圧をヒータ14に印加した後に、加熱制御部30が第1初期駆動電圧より小さく設定電圧より大きい第2初期駆動電圧を印加させる処理を実行することで、ヒータ温度が目的温度を超えてオーバーシュートすることを防ぎつつ、加熱期間が必要以上に長くなることを防止することができる。また、ヒータ温度が目的温度以下に落ち込むことを防止することができる。本実施形態のガスセンサ100では、第1初期駆動電圧と第2初期駆動電圧という2段階の初期駆動電圧を印加する場合を説明したが、異なる駆動電圧を印加する段階の数は3段階以上であってもよい。
図19は、本発明の第4実施形態のガスセンサ100におけるガスセンサ100による処理内容の一例を示すフローチャートである。加熱制御部30は、ヒータ14に設定電圧より大きい第1初期駆動電圧を印加する(ステップS501)。次いで、第1初期駆動期間t11が経過するのを待って(ステップS502:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14に第1初期駆動電圧より小さく設定電圧より大きい第2初期駆動電圧を印加する(ステップS503)。
次いで、第2初期駆動期間t12が経過するのを待って(ステップS504:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14に印加される電圧を第2初期駆動電圧から設定電圧に変更する(ステップS505)。ヒータ14の温度が上昇している状態で、ヒータ14に印加する電圧が第2初期駆動電圧から設定電圧に変更されるように、電圧変更のタイミングが設定されている。具体的には、第1初期駆動時間t11および第2初期駆動期間t12によって電圧変更のタイミングが事前に設定されてよい。ヒータ14に設定電圧が印加されて安定すると、ヒータ14の温度が目的温度となる。
ステップS506からステップS511の処理は、図12におけるステップS104からステップS109の処理と同様である。したがって、繰り返しの説明が省略される。
図20は、加熱条件の設定処理の一例を示すフローチャートである。加熱制御部30は、予め定められた電圧をヒータ14に印加する(ステップS601)。ヒータ14に電圧が印加された状態で、温度測定部16は、複数の時点におけるヒータ温度を測定する(ステップS602)。温度測定部16による測定結果に応じたヒータ14の昇温特性が取得される。取得された昇温特性は、記憶部60等に格納されてよい。取得された昇温特性は、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量を反映している。同じ電圧をヒータ14に印加した場合に、所定温度まで昇温する時間が短いほど熱容量が小さいと判断できる。
設定部50は、ヒータ14の昇温特性に基づいて、第1初期駆動電圧を印加している第1期間t11、および第2初期駆動電圧の大きさを設定する(ステップS603)。具体的には、設定部50は、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量が大きいほど、第1初期駆動期間t11を長く設定してよい。これは、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量が大きいほど、目的温度に達するまで時間が長くかかるためである。熱容量は、取得された昇温特性によって算出されてよい。
また、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量が大きいほど、加熱されたヒータ14の温度が低下しにくい。したがって、設定部50は、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量が大きいほど、第2初期駆動電圧の大きさを小さくしてよい。設定された初期駆動期間t1の情報および第2初期駆動電圧の大きさの情報は、記憶部60に記憶される(ステップS604)。
図20に示される加熱条件の設定処理は、ガスセンサ100の製品を出荷するときに実行されてもよい。また、設定部50は、初期駆動期間の設定処理を定期的に実行してよい。設定部50は、一例において、1日に1回の回数で所定時刻において、初期駆動期間の設定処理を実行してもよい。但し、初期駆動期間の設定処理を実行する頻度は、この場合に限られない。
加熱条件の設定処理によって、第1初期駆動期間t11および第2初期駆動電圧を適切に設定することができる。したがって、ヒータ14およびガス検知部12の熱容量等がばらつく場合であっても、加熱制御部30は、適切なヒータ温度特性を実現することができる。
以上のように、第4実施形態のガスセンサ100によれば、第1初期駆動電圧を印加する状態と設定電圧を印加する状態との間の期間において、第1初期駆動電圧より小さく設定電圧より大きい中間の電圧である第2初期駆動電圧がヒータ14に印加される。したがって、ガスセンサ100は、第1初期駆動電圧を長期間にわたって印加する場合に比べて、ヒータ温度が目的温度を超える状況の発生を防止することができる。また、ヒータ温度が目的温度以下に低下してしまうことを防止することができる。
以上の第1から第4実施形態においては、ガスセンサ100のヒータを駆動する場合について説明した。但し、第1から第4実施形態において説明したヒータ駆動方法は、ガスセンサ100以外のヒータに適用することができる。図2、図3、および図4において説明したとおり、ヒータ駆動方法が適用されるヒータ構造は、開口部を有する空間が形成されたシリコン基板2と、開口部を有する空間上に設けられた熱絶縁支持層3と、熱絶縁支持層3によって支持されるヒータ層とを備えてよい。このようなヒータ構造を備えるヒータは、MEMSヒータと称される。ヒータ構造において、シリコン基板2の代わりに他の半導体基板が用いられてもよい。熱絶縁支持層3は、各種の材料で形成されてよい。例えば、熱絶縁支持層3は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、またはシリコン酸窒化膜である。また、熱絶縁支持層3は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層された積層膜であってよい。
このように構成されるMEMSヒータは、ガスセンサのみならず、湿度センサ、フローセンサ、および熱分布検知式の加速度センサ等の各種装置に利用可能である。湿度センサでは、水分子が吸着される感湿膜が加熱対象物であってよい。フローセンサおよび熱式加速度センサは、ヒータによって加熱された気体等などの流体の動きを温度センサで検知する。したがって、フローセンサおよび熱式加速度センサでは、空間内の流体(気体)が加熱対象物であってよい。これら各種装置は、加熱対象物が図2、図3、および図4に示される構成と違うことを除いて、第1から第4実施形態において説明した構成と同様である。したがって、各種装置に対しても、第1から第4実施形態において説明したヒータ駆動技術を利用できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本明細書における各実施形態は、適宜組み合わせることができる。本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。