JP6858691B2 - リチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子製造方法関する。
リチウムイオン二次電池は携帯電子機器に広く搭載されており、ハイブリッド自動車や電気自動車への利用も始まっている。このような状況の中で、リチウムイオン二次電池には一層の高容量、高速充放電特性、サイクル特性が要求されている。
リチウムイオン二次電池は、負極、正極および非水電解質を主たる構成要素としており、リチウムイオンが放電過程および充電過程で負極と正極との間を移動することで二次電池として作用する。現在、上記負極材料には黒鉛が広く用いられている。黒鉛は天然黒鉛と人造黒鉛に大別される。天然黒鉛は結晶性が高く容量が高いという利点を有するが、鱗片状ゆえ電極内で粒子が一方向に配向してしまい、高速充放電特性やサイクル特性に劣るという欠点があった。
これを補うために、鱗片状の黒鉛を球状に加工し、さらに表面被覆処理を施した材料が多く提案されている。球状化された天然黒鉛の表面には電解液との反応性が高いエッジ面が少なからず露出しており、被覆の目的はそのエッジ面を封止し、副反応を抑制することである。近年、携帯機器の大型化などに伴い電池のさらなる高エネルギー密度化が求められており、それに伴い負極材に対してもさらなる高密度化が可能であることが求められている。しかしながら従来の被覆天然黒鉛においては被覆層の強度が十分ではなく、高密度化によって被覆層に割れや亀裂などが生じてしまい、結果として初回充放電効率やサイクル特性などが低下してしまうという問題があった。
これに対して、特許文献1には、天然黒鉛粉末をバインダ−を用いて略球状に造粒成形した黒鉛粒子にバインダ−ピッチを含浸および被覆した後、焼成してなるリチウムイオン二次電池用負極材、ならびに、天然黒鉛をバインダ−を用いて略球状に造粒成形して得た黒鉛粒子にバインダ−ピッチを添加し、加熱混熱した後、非酸化性雰囲気下で800℃〜1400℃で焼成することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、複数の鱗片状の黒鉛が集合して形成された黒鉛造粒物(A)と、黒鉛造粒物(A)の内部空隙および/または外表面に、黒鉛造粒物(A)よりも結晶性の低い炭素質層(B)が、充填および/または被覆されてなる複合黒鉛質粒子であって、上記炭素質層(B)が炭素質微粒子(C)を含むことを特徴とする複合黒鉛質粒子、ならびに、複数の鱗片状の黒鉛が集合して形成された球状または楕円体状の黒鉛造粒物(A)の内部空隙および/または外表面に、炭素質微粒子(C)を含有するメソフェーズ前駆体を充填および/または被覆する工程と、上記工程によって黒鉛造粒物(A)の内部空隙および/または外表面に形成された充填物および/または被覆物中のメソフェーズ前駆体の揮発分量が2質量%以上8質量%未満となるように焼成する工程と、上記工程で得られた焼成物を900℃〜3200℃で熱処理する工程とを有することを特徴とする複合黒鉛質粒子の製造方法が記載されている。
特開2004−031038号公報 特開2004−063321号公報
しかし、特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池用負極材(炭素質被覆黒鉛質粒子)は、エッジ面を封止しようとして炭素質被覆量を増加すると、粒子どうしが融着してしまうため、解砕処理が必要となるが、解砕処理によって電解液との反応性が高い解砕面が生じ、その結果として、解砕面充放電特性およびサイクル特性の低下が認められ、特許文献2に記載された複合黒鉛質粒子は、焼成条件によっては粒子どうしの融着を生じず、解砕処理を行う必要がないものの、PC(プロピレンカーボネート)を高濃度で含む反応性の高い電解液では充放電効率の改善が認められなかった。
すなわち、リチウムイオン二次電池負極材料に用いた場合に、優れた電池特性(高い放電容量および高い初回充放電効率)を達成することができる負極材料は提供されていなかった。
そこで、本発明は、優れた電池特性を得ることができるリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子およびその製造方法、リチウムイオン二次電池負極ならびにリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。なお、本発明において優れた電池特性とは、高い放電容量および高い初回充放電効率をいう。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、球状および/または楕円体状黒鉛粒子を加圧し、第一の炭素質材料と混合し、酸化性雰囲気で焼成し、第二の炭素質材料と混合し、非酸化性雰囲気で焼成する炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法によって製造された炭素質被覆黒鉛質粒子をリチウムイオン二次電池負極材料に用いたリチウムイオン二次電池では、高い放電容量を維持しつつ、PC(プロピレンカーボネート)を高濃度に含んだ電解液に対しても高い初回充放電効率を達成し、優れた電池特性が得られることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[]を提供する。
[1] 球状および/または楕円体状黒鉛粒子を加圧して加圧黒鉛質粒子を得る加圧処理工程と、
上記加圧黒鉛質粒子と第一の炭素質前駆体とを混合して上記加圧黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部が上記第一の炭素質前駆体によって被覆された第一の混合物を得る第一混合工程と、
上記第一の混合物を酸化性雰囲気で焼成して第一の焼成体を得る第一焼成工程と、
上記第一の焼成体と第二の炭素質前駆体とを混合して上記第一の焼成体の表面の少なくとも一部が上記第二の炭素質前駆体によって被覆された第二の混合物を得る第二混合工程と、
上記第二の混合物を非酸化性雰囲気で焼成して上記第一の炭素質前駆体および上記第二の炭素質前駆体を炭素質に変化させ、上記加圧黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部が上記炭素質で被覆された炭素質被覆黒鉛質粒子を得る第二焼成工程と、
を有するリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法。
[2] 上記第一焼成工程において、上記第一の混合物を300℃以上700℃未満の温度で焼成し、
上記第二焼成工程において、上記第二の混合物を700℃以上2000℃以下の温度で焼成する、
上記[1]に記載の製造方法。
[3] 上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部に対して、
上記第一の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質が0.5〜4質量部であり、
上記第二の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質が1〜7質量部であり、かつ
上記第一の炭素質前駆体および上記第二の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質の合計が3〜10質量部である、
上記[1]または[2]に記載の製造方法
本発明によれば、優れた電池特性を得ることができるリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子およびその製造方法、リチウムイオン二次電池負極ならびにリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子は、リチウムイオン二次電池負極材料に用いた場合に、優れた電池特性(高い放電容量および高い初回充放電効率)を得ることができる。そのため、本発明のリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子を負極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、近年の電池の高エネルギー密度化に対する要望を満たし、搭載する機器の小型化および高性能化に有用である。
図1は、本発明の負極の電池特性を評価するための評価電池の断面図である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本発明において、範囲を「〜」を用いて表現した場合には、その範囲には「〜」の両端を含むものとする。
[リチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法]
本発明のリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法(以下、単に「本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法」という場合がある。)は、加圧処理工程と、第一混合工程と、第一焼成工程と、第二混合工程と、第二焼成工程とを有する。
以下では各工程について詳細に説明する。
〈加圧処理工程〉
加圧処理工程は、球状および/または楕円体状黒鉛粒子を加圧して加圧黒鉛質粒子を得る工程である。
《球状および/または楕円体状黒鉛粒子》
球状および/または楕円体状黒鉛粒子は、球状黒鉛粒子、楕円体状黒鉛粒子およびこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1つであれば特に限定されない。
上記混合物の球状黒鉛粒子と楕円体状黒鉛粒子の混合比は特に限定されない。
上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1μm〜50μmであり、より好ましくは3μm〜30μmであり、さらに好ましくは5μm〜25μmである。なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(LMS2000e,株式会社セイシン企業製)により測定した粒度分布の累積度数が、体積百分率で50%となる粒子径である。
上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子のアスペクト比は、特に限定されないが、平均アスペクト比で、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3.5であり、さらに好ましくは1〜2である。なお、アスペクト比とは、黒鉛の一次粒子の長軸長の短軸長に対する比を意味する。ここで、長軸長は測定対象の一次粒子の最も長い径を意味し、短軸長は測定対象の一次粒子の長軸に直交する短い径を意味する。また、平均アスペクト比は、走査型電子顕微鏡(JSM−6390,日本電子株式会社製)によって100個の黒鉛一次粒子を観察して測定した各粒子のアスペクト比の単純平均値である。
上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の比表面積は、特に限定されないが、好ましくは10m/g以下であり、より好ましくは8m/g以下であり、さらに好ましくは6m/g以下である。なお、比表面積は、250℃で予備乾燥し、更に30分間窒素ガスを流したのち、窒素ガス吸着によるBET1点法により測定した(MONOSORB,カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)。詳細には、JIS Z 8830:2013 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法によって測定したBET比表面積である。
上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の学振法(JIS R 7651:2007 炭素材料の格子定数及び結晶子の大きさ測定方法)によって測定したLc(002)、La(110)およびd002は、特に限定されないが、結晶子径Lc(002)は、好ましくは40nm以上であり、結晶子径La(110)は、好ましくは40nm以上であり、平均面間隔d002は、好ましくは0.337nm以下である。なお、Lc(002)は、002回折線から求めたc軸方向の結晶子の大きさであり、La(110)は110回折線から求めたa軸方向の結晶子の大きさである。
また、上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子のアルゴンレーザーを用いたラマン分光法により測定した1360cm−1ピーク強度(I1360)と1580cm−1ピーク強度(I1580)の比I1360/I1580(R値)は、特に限定されないが、好ましくは0.06〜0.30であり、1580cm−1バンドの半値幅は、特に限定されないが、好ましくは10〜60である。
上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子は、天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子またはこれらの混合物であってもよいが、結晶性が高いなどの理由から、好ましくは天然黒鉛粒子である。
上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子としては、市販品の球状または楕円体状に加工された天然黒鉛粒子を用いてもよい。また、球状または楕円体状以外の形状の天然黒鉛を造粒球状化して用いてもよい。例えば、天然の鱗片状黒鉛を、機械的外力で造粒球状化して球状黒鉛粒子として用いることができる。球状または楕円体状に加工する方法は、例えば、接着剤や樹脂などの造粒助剤の共存下で複数の鱗片状黒鉛を混合する方法、複数の鱗片状の黒鉛に接着剤を用いずに機械的外力を加える方法、両者の併用などが挙げられる。しかし、造粒助剤を用いずに機械的外力を加えて球状に造粒する方法が最も好ましい。機械的外力とは、機械的に粉砕および造粒することであり、鱗片状黒鉛を造粒して球状化することができる。鱗片状黒鉛の粉砕装置としては、例えば、加圧ニーダー、二本ロールなどの混練機、回転ボールミル、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)カレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)などの粉砕装置が使用可能である。
上記粉砕品は、その表面が鋭角な部分を有しているが、粉砕品を造粒球状化して使用しても良い。粉砕品の造粒球状化装置としては、例えば、GRANUREX(フロイント産業株式会社製)、ニューグラマシン(株式会社セイシン企業製)、アグロマスター(ホソカワミクロン株式会社製)などの造粒機、ハイブリダイゼーション(株式会社奈良機械製作所製)、メカノマイクロス(株式会社奈良機械製作所製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン株式会社製)などのせん断圧縮加工装置が使用可能である。
《加圧黒鉛質粒子》
加圧黒鉛質粒子は、上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子に加圧処理を行って得られる。
加圧処理の際の圧力は、特に限定されないが、好ましくは10MPa〜500MPaであり、より好ましくは50MPa〜300MPaであり、さらに好ましくは100〜300MPaである。
加圧処理の際の方向性は、特に限定されず、異方的または等方的に行うことができる。
異方的な加圧処理とは、黒鉛粒子を所定の容器に入れるなどして、圧力を特定の方向に掛けることをいう。圧力を掛ける方向は、特に限定されないが、好ましくは一方向または二方向からの加圧である。異方的な加圧処理の方法は特に限定されず、例えば、金型プレス、ロールプレスなどが挙げられる。
等方的な加圧処理とは、例えば、ガス、液体などの加圧媒体を用いて等方的に圧力をかけることをいう。等方的な加圧処理の方法は特に限定されず、例えば、冷間等方圧プレス(CIP:Cold Isostatic Press)などが挙げられる。
加圧処理の際の温度は、特に限定されないが、好ましくは常温(15℃〜35℃)である。
上記加圧黒鉛質粒子の粒子内細孔分布は特に限定されないが、水銀圧入法で測定した500nm以下の大きさの細孔容積が0.1mL/g以下であること、または、水銀圧入法で測定した100nm〜200nmの大きさの細孔容積が0.02mL/g以下であること、が好ましい。さらに、水銀圧入法で測定した500nm以下の大きさの細孔容積が0.1mL/g以下であり、かつ、100nm〜200nmの大きさの細孔容積が0.02mL/g以下であることがより好ましい。この範囲を超えると負極を作製する際の結着材が細孔に浸透してしまい、電極剥離強度が低下するおそれがある。加圧処理で固着を生じた場合などは、必要に応じて、加圧処理のあとに解砕工程を導入してもよい。加圧処理の際、炭素質または黒鉛質の繊維、非晶質ハードカーボンなどの炭素質前駆体材料、有機材料、無機材料、金属材料を加えてもよいし加えなくてもよい。加えた場合は加圧方向と非加圧方向との組合せが複雑となりそのため加圧結果が等方的加圧により近くなる。加えない場合は加圧結果がより単純になり加圧方向と非加圧方向との配向性の差が加圧処理時に他の材料を加えた場合より大きくなる。
〈第一混合工程〉
第一混合工程は、上記加圧黒鉛質粒子と第一の炭素質前駆体とを混合して上記加圧黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部が上記第一の炭素質前駆体によって被覆された第一の混合物を得る工程である。
《第一の炭素質前駆体》
上記第一の炭素質前駆体としては、黒鉛に比べて結晶性が低く、黒鉛化するために必要とされる高温処理をしても黒鉛結晶とはなりえない炭素材であるタールピッチ類および/または樹脂類が例示される。具体的には、重質油、特にはタールピッチ類としては、コールタール、タール軽油、タール中油、タール重油、ナフタリン油、アントラセン油、コールタールピッチ、ピッチ油、メソフェーズピッチ、酸素架橋石油ピッチ、ヘビーオイルなどが挙げられる。樹脂類としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂が例示される。好ましくは樹脂類を含まず、タールピッチ類のみとするとコスト的に有利である。炭素前駆体は上記に例示したいかなるものを用いてもよいが、コールタールピッチが80質量%以上であるのが特に好ましい。炭素質前駆体は、複数種を混合してもかまわない。
上記第一の炭素質前駆体の混合量は、特に限定されないが、製造される炭素質被覆黒鉛質粒子中の、第一の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質の量が、上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部、すなわち、上記加圧黒鉛質粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部〜4質量部、より好ましくは1質量部〜4質量部、さらに好ましくは2質量部〜3質量部となるようにする。
上記加圧黒鉛質粒子と上記第一の炭素質材料を混合する際の温度は、特に限定されないが、好ましくは5℃〜300℃であり、より好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは150℃〜250℃である。
上記加圧黒鉛質粒子と上記第一の炭素質材料を混合する際の雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは空気中である。
混合の方法は特に限定されないが、例えば、ヒーターや熱媒などの加熱機構を有する二軸式のニーダーなどを用いて加熱混合する方法が挙げられる。混合処理の際、炭素質または黒鉛質の繊維、非晶質ハードカーボンなどの炭素質前駆体材料、有機材料、無機材料、金属材料を加えてもよい。
第一混合工程は、後述する第一焼成工程のための昇温とともに行ってもよいし、後述する第一焼成工程と同時に行ってもよいし、第一焼成工程の前に行ってもよい。
〈第一焼成工程〉
第一焼成工程は、第一の混合物を酸化性雰囲気で焼成して第一の焼成体を得る工程である。
酸化性雰囲気は、酸素を含む雰囲気であれば特に限定されないが、好ましくは0.5体積%〜50体積%の酸素を含む不活性ガス雰囲気である。この範囲の酸素を含む雰囲気を用いると、炭素質前駆体同士に結合が生成すると考えられる酸化反応を適切に行うことができる。ここで、不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素等を例示することができる。
酸化性雰囲気は、例えば、空気(酸素を約20体積%、窒素を約80体積%含む)を、好ましくは1L/分〜10L/分で、より好ましくは2L/分〜5L/分で流通させることにより達成することができる。
第一焼成工程の焼成処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは300℃以上700℃未満であり、より好ましくは300℃〜500℃であり、さらに好ましくは300℃〜450℃である。焼成温度がこの範囲内であると、第一の炭素質前駆体を加圧黒鉛質粒子の表面に均一に被覆することができる。
第一焼成工程の焼成処理の時間は、特に限定されないが、好ましくは5分間〜50時間であり、より好ましくは30分間〜10時間であり、さらに好ましくは1時間〜5時間である。
焼成処理の方法は、特に限定されないが、攪拌しながら焼成することが好ましく、均質な焼成ができることから、ロータリーキルンを使用することがより好ましい。
なお、焼成処理は、複数段階の加熱によって行ってもよい。
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法においては、第一焼成工程の焼成処理を、酸化性雰囲気下、300℃以上700℃未満の低温で行うことにより、第一の炭素質前駆体が加圧黒鉛質粒子に結着し、製造される炭素質被覆黒鉛質粒子に小さな細孔が増加し、負極材料に用いるとアンカー効果などにより負極材料同士の接着強度が高くなるという効果があると考えられる。
〈第二混合工程〉
第二混合工程は、上記第一の焼成体と第二の炭素質前駆体とを混合して上記第一の焼成体の表面の少なくとも一部が上記第二の炭素質前駆体によって被覆された第二の混合物を得る工程である。
《第二の炭素質前駆体》
第二の炭素質前駆体としては、上記第一の炭素質前駆体と同様の炭素質前駆体を使用することができる。第二の炭素質前駆体と第一の炭素質前駆体は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
上記第二の炭素質前駆体の混合量は、特に限定されないが、製造される炭素質被覆黒鉛質粒子中の、第二の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質の量が、上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部、すなわち、上記加圧黒鉛質粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部〜7質量部、より好ましくは2質量部〜6質量部、さらに好ましくは4質量部〜5質量部となるようにする。
上記加圧黒鉛質粒子と上記第二の炭素質材料を混合する際の温度は、特に限定されないが、好ましくは5℃〜300℃であり、より好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは150℃〜250℃である。
上記加圧黒鉛質粒子と上記第一の炭素質材料を混合する際の雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは空気中である。
混合の方法は特に限定されないが、例えば、ヒーターや熱媒などの加熱機構を有する二軸式のニーダーなどを用いて加熱混合する方法が挙げられる。混合処理の際、炭素質または黒鉛質の繊維、非晶質ハードカーボンなどの炭素質前駆体材料、有機材料、無機材料、金属材料を加えてもよい。
第二混合工程は、後述する第二焼成工程のための昇温とともに行ってもよいし、後述する第二焼成工程と同時に行ってもよいし、第二焼成工程の前に行ってもよい。
〈第二焼成工程〉
第二焼成工程は、上記第二の混合物を非酸化性雰囲気で焼成して上記第一の炭素質前駆体および上記第二の炭素質前駆体を炭素質に変化させ、上記加圧黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部が上記炭素質で被覆された炭素質被覆黒鉛質粒子を得る工程である。
非酸化性雰囲気は、実質的に酸素等の酸化性ガスを含まない雰囲気であれば特に限定されないが、アルゴン、ヘリウムまたは窒素等の不活性ガスのみからなる雰囲気を例示することができる。ここで、実質的に酸素等の酸化性ガスを含まないとは、酸素等の酸化性ガスを0.5体積%未満しか含まないこと、好ましくは検出しないことをいう。
非酸化性雰囲気は、例えば、窒素を、好ましくは1L/分〜10L/分で、より好ましくは1L/分〜6L/分で、さらに好ましくは1L/分〜3L/分で流通させることにより達成することができる。
第二焼成工程の焼成処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは700℃〜2000℃であり、より好ましくは900℃〜1500℃であり、さらに好ましくは1000℃〜1400℃である。焼成温度がこの範囲内であると、第一の炭素質前駆体および第二の炭素質前駆体を均一に炭素化することができる。
また、第二焼成工程の焼成処理の温度プロファイルとしては、直線的な昇温、一定間隔で温度をホールドする段階的な昇温などの様々な形態をとることが可能である。
第二焼成工程の焼成処理の時間は、特に限定されないが、好ましくは5分間〜50時間であり、より好ましくは30分間〜10時間であり、さらに好ましくは1時間〜5時間である。
焼成処理の方法は、特に限定されないが、攪拌しながら焼成することが好ましく、均質な焼成ができることから、ロータリーキルンを使用することがより好ましい。
なお、焼成処理は、複数段階で加熱によって行ってもよい。
〈その他の工程〉
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法は、第二焼成工程の後に粉砕工程を含まないことが好ましい。
また、本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法は、第一焼成工程または第二焼成工程の前に、異種の黒鉛材料同士を、付着、埋設、複合して用いてもよい。炭素質または黒鉛質の繊維、非晶質ハードカーボンなどの炭素質前駆体材料、有機材料、無機材料を芯材の黒鉛粒子に付着、埋設、複合してから用いてもよい。
第二焼成工程によって得られる本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の炭素質の量、すなわち、第一の炭素質前駆体および第二の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質の合計量は、特に限定されないが、球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部(加圧黒鉛質粒子100質量部)に対して、好ましくは3質量部〜10質量部であり、より好ましくは4質量部〜9質量部であり、さらに好ましくは5質量部〜8質量部であり、いっそう好ましくは5質量部〜7質量部である。
[リチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子]
本発明のリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子(以下、単に「本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子」という場合がある。)は、球状および/または楕円体状黒鉛粒子を加圧してなる加圧黒鉛粒子の表面の少なくとも一部が炭素質で被覆された炭素質被覆黒鉛質粒子であって、上記炭素質被覆黒鉛質粒子が下記(a)〜(d)を満足するリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子である。
(a)上記炭素質の被覆量が、上記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部に対して、3〜10質量部である。
(b)BET法によって測定した比表面積が2.0m/g以下である。
(c)水銀圧入法によって測定した細孔径1.1μm以下の細孔容積が0.04mL/g以下である。
(d)元素分析法によって測定した酸素濃度が50〜200ppmである。
〈球状および/または楕円体状黒鉛粒子、加圧黒鉛質粒子、炭素質〉
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法において説明したとおりである。
〈炭素質の被覆量〉
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の炭素質の被覆量、すなわち、第一の炭素質前駆体および第二の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質の合計は、特に限定されないが、球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部に対して、好ましくは3質量部〜10質量部であり、より好ましくは4質量部〜9質量部であり、さらに好ましくは5質量部〜8質量部であり、いっそう好ましくは5質量部〜7質量部である。
炭素質の割合が3質量部未満の場合は、活性な黒鉛エッヂ面を完全に被覆することが難しくなり、初回充放電効率が低下することがある。一方、10質量部を越える場合には、相対的に放電容量の低い炭素材の割合が多すぎて、炭素質被覆黒鉛質粒子の放電容量が低下する。また、炭素質を形成するための原料(熱硬化性樹脂類やタールピッチ類)の割合が多く、被覆工程やその後の熱処理工程において、粒子が融着しやすく、最終的に得られる炭素質被覆黒鉛質粒子の炭素質層の一部に割れや剥離を生じ、初回充放電効率の低下を生じることがある。なお、炭素質の含有量は炭素質被覆黒鉛質粒子全体の平均として上記範囲内にあればよい。個々の粒子全てが上記範囲内にある必要はなく、上記範囲以外の粒子を一部含んでいてもよい。
〈BET法によって測定した比表面積〉
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子のBET法(JIS Z 8830:2013 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)によって測定した窒素ガス吸着による比表面積は、2.0m/g以下であり、好ましくは1.8m/g以下であり、より好ましくは1.6m/g以下である。
BET比表面積が小さいほどロスを減少することができ、充放電容量および初回充放電効率を向上させることができる。本発明の製造方法によって製造した本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子では、従来の酸素処理後に焼成する製造方法に比べて、BET比表面積を小さくすることができる。
〈水銀圧入法によって測定した細孔径1.1μm以下の細孔容積〉
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の水銀圧入法によって測定した細孔径1.1μm以下の細孔容積は、0.04mL/g以下であり、好ましくは0.03mL/g以下であり、より好ましくは0.02mL/g以下である。
PC(プロピレンカーボネート)を電解液に含む場合、細孔容積が小さいほど、電解液との反応性が低下するため、初回充放電効率を改善することができる。
〈元素分析法によって測定した酸素濃度〉
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の元素分析法によって測定した酸素濃度は、50ppm〜200ppmであり、好ましくは50ppm〜150ppmであり、より好ましくは100ppm〜150ppmである。
PC(プロピレンカーボネート)を電解液に含む場合、ある程度の酸素濃度が必要である。これはPCと酸素の相互作用により、PCが黒鉛相間に侵入することを防ぎ、黒鉛分解反応を抑制できるためである。ただし、酸素濃度が大きすぎるとBET比表面積が大きくなるため、ロスが増加し、充放電容量および初回充放電効率を向上させることができなくなる。
〈その他の特性〉
《平均粒子径》
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmである。なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(LMS2000e,株式会社セイシン企業製)により測定した粒度分布の累積度数が、体積百分率で50%となる粒子径である。
《ラマンR値》
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子のアルゴンレーザーを用いたラマン分光法により測定した1360cm−1ピーク強度(I1360)と1580cm−1ピーク強度(I1580)の比I1360/I1580(R値)は、特に限定されないが、黒鉛のR値より大きく、好ましくは0.05〜0.80であり、より好ましくは0.45〜0.75である。
《炭素網面層の格子面間隔d002》
負極材料の炭素網面層の格子面間隔d002は、特に限定されるものではないが、高い放電容量を発現させる観点から、好ましくは0.3360nm以下であり、より好ましくは0.3358nm以下である。d002が0.3360nm以下であると、黒鉛構造の発達の程度が高いため、リチウムイオン二次電池負極材料として用いたときに、リチウムのドープ量が大きく、より高い放電容量を得ることができる。
なお、負極材料のd002は、CuKα線をX線源、高純度シリコンを標準物質に使用して、被覆黒鉛粒子に対し(002)面の回折ピークを測定し、そのピーク位置より算出する。算出方法は学振法に従うものであり、具体的な方法はJIS R 7651:2007 「炭素材料の格子定数及び結晶子の大きさ測定方法」に記載されている。
[リチウムイオン二次電池負極]
本発明のリチウムイオン二次電池負極は、上記リチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子(以下、単に「本発明の負極材料」という場合がある。)を含むリチウムイオン二次電池負極(以下、単に「本発明のリチウムイオン二次電池負極」という場合がある。)である。
本発明のリチウムイオン二次電池負極は、通常の負極の製造方法に準じて製造されるが、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる方法であれば何ら制限されない。負極の製造時には、本発明の負極材料に結合剤を加えて、予め調製した負極合剤を用いることが好ましい。結合剤としては、電解質に対して、化学的および電気化学的に安定性を示すものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂粉末、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの樹脂粉末、カルボキシメチルセルロースなどが用いられる。これらを併用することもできる。結合剤は、通常、負極合剤の全量中の1質量%〜20質量%程度の割合で用いられる。また、黒鉛化物、カーボンブラックなどの公知の導電剤を添加してもよい。
より具体的には、まず、本発明の負極材料を分級などにより所望の粒度に調整し、結合剤と混合して得た混合物を溶剤に分散させ、ペースト状にして負極合剤を調製する。すなわち、本発明の負極材料と、結合剤を、水、イソピロピルアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの溶剤と混合して得たスラリーを、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌混合して、ペーストを調製する。ペーストを、集電材の片面または両面に塗布し、乾燥すれば、負極合剤層が均一かつ強固に接着した負極が得られる。負極合剤層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは10μm〜200μmであり、より好ましくは20μm〜100μmである。
また、本発明のリチウムイオン二次電池負極は、本発明の負極材料と、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの樹脂粉末を乾式混合し、金型内でホットプレス成型して製造することもできる。
負極合剤層を形成した後、プレス加圧などの圧着を行うと、負極合剤層と集電体との接着強度をより高めることができる。
負極の作製に用いる集電体の形状としては、特に限定されることはないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタルなどの網状などである。集電体の材質としては、銅、ステンレス、ニッケルなどが好ましい。集電体の厚みは、箔状の場合で5μm〜20μm程度であるのが好ましい。
なお、本発明の負極は、本発明の目的を損なわない範囲で、異種の黒鉛質材料、非晶質ハードカーボンなどの炭素質材料、有機物、金属、金属化合物などを混合してもよい。
[リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記リチウムイオン二次電池負極を有するリチウムイオン二次電池である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極に加え、さらに、好ましくは、正極、非水電解質、セパレータなどを有してもよい。
〈正極〉
本発明のリチウムイオン二次電池に用いる正極は、例えば、正極材料、結合剤および導電剤よりなる正極合剤を集電体の表面に塗布することにより形成される。正極の材料(正極活物質)は、充分量のリチウムを吸蔵/離脱し得るものを選択するのが好ましく、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム化合物などのリチウム含有化合物、一般式MMo8−Y(式中Mは少なくとも一種の遷移金属元素であり、Xは0≦X≦4、Yは0≦Y≦1の範囲の数値である)で表されるシェブレル相化合物、活性炭、活性炭素繊維などである。バナジウム酸化物は、V、V13、V、Vで示されるものである。
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属との複合酸化物であり、リチウムと2種類以上の遷移金属を固溶したものであってもよい。複合酸化物は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。リチウム含有遷移金属酸化物は、具体的には、LiM 1−X (式中M、Mは少なくとも一種の遷移金属元素であり、Xは0≦X≦1の範囲の数値である)、またはLiM 1−Y (式中M、Mは少なくとも一種の遷移金属元素であり、Yは0≦Y≦1の範囲の数値である)で示される。
、Mで示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Ti、Cr、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどであり、好ましいのはCo、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Alなどである。好ましい具体例は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiNi0.9Co0.1、LiNi0.5Co0.5などである。
リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を所望の金属酸化物の組成に応じて混合し、酸素雰囲気下600℃〜1000℃の温度で焼成することにより得ることができる。
正極活物質は、上記化合物を単独で使用しても2種類以上併用してもよい。例えば、正極中に炭酸リチウム等の炭素塩を添加することができる。また、正極を形成するに際しては、従来公知の導電剤や結着剤などの各種添加剤を適宜に使用することができる。
《正極の製造方法》
正極は、上記正極材料、結合剤、および正極に導電性を付与するための導電剤よりなる正極合剤を、集電体の両面に塗布して正極合剤層を形成して作製される。結合剤としては、負極の作製に使用されるものと同じものが使用可能である。導電剤としては、黒鉛化物、カーボンブラックなど公知のものが使用される。
集電体の形状は特に限定されないが、箔状またはメッシュ、エキスパンドメタル等の網状等のものが用いられる。集電体の材質は、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等である。その厚さは8μm〜40μmのものが好適である。
正極も負極と同様に、正極合剤を溶剤中に分散させペースト状にし、このペースト状の正極合剤を集電体に塗布、乾燥して正極合剤層を形成してもよく、正極合剤層を形成した後、さらにプレス加圧等の圧着を行ってもよい。これにより正極合剤層が均一且つ強固に集電材に接着される。
〈非水電解質〉
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解質としては、通常の非水電解液に使用される電解質塩である、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C)、LiCl、LiBr、LiCFSO、LiCHSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiN(CFCHOSO、LiN(CFCFOSO、LiN(HCFCFCHOSO、LiN((CFCHOSO、Li[B{C(CF−3,5}]、LiAlCl、LiSiFなどのリチウム塩を用いることができる。酸化安定性の点からは、特に、LiPF、LiBFが好ましい。
上記非水電解液中の電解質塩濃度は0.1mol/L〜5.0mol/Lが好ましく、0.5mol/L〜3.0mol/Lがより好ましい。
非水電解質は液状の非水電解質としてもよく、固体電解質またはゲル電解質などの高分子電解質としてもよい。前者の場合、非水電解質電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池として構成され、後者の場合は、非水電解質電池は高分子固体電解質、高分子ゲル電解質電池などの高分子電解質電池として構成される。
非水電解質液を調製するための溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート、1、1−または1、2−ジメトキシエタン、1、2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1、3−ジオキソラン、4−メチル−1、3−ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテルなどのエーテル、スルホラン、メチルスルホランなどのチオエーテル、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3−メチル−2−オキサゾリドン、エチレングリコール、ジメチルサルファイトなどの非プロトン性有機溶媒などを用いることができる。
非水電解質を高分子固体電解質または高分子ゲル電解質などの高分子電解質とする場合には、マトリックスとして可塑剤(非水電解液)でゲル化された高分子を用いることが好ましい。上記マトリックスを構成する高分子としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレート系高分子化合物、ポリアクリレート系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物などを用いることが特に好ましい。
上記高分子固体電解質または高分子ゲル電解質には、可塑剤が配合されるが、可塑剤としては、上記の電解質塩や非水溶媒が使用可能である。高分子ゲル電解質の場合、可塑剤である非水電解液中の電解質塩濃度は0.1mol/L〜5.0mol/Lが好ましく、0.5mol/L〜2.0mol/Lがより好ましい。
高分子固体電解質の作製方法は特に限定されないが、例えば、マトリックスを構成する高分子化合物、リチウム塩および非水溶媒(可塑剤)を混合し、加熱して高分子化合物を溶融する方法、有機溶剤に高分子化合物、リチウム塩、および非水溶媒(可塑剤)を溶解させた後、混合用有機溶剤を蒸発させる方法、重合性モノマー、リチウム塩および非水溶媒(可塑剤)を混合し、混合物に紫外線、電子線または分子線などを照射して、重合性モノマーを重合させ、ポリマーを得る方法などを挙げることができる。
ここで、上記固体電解質中の非水溶媒(可塑剤)の割合は10質量%〜90質量%が好ましく、30質量%〜80質量%がより好ましい。10質量%未満であると導電率が低くなり、90質量%を超えると機械的強度が弱くなり、成膜しにくくなる。
〈セパレータ〉
本発明のリチウムイオン二次電池においては、セパレータを使用することもできる。
セパレータの材質は特に限定されるものではないが、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などを用いることができる。上記セパレータの材質としては、合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等が好適である。
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述した構成の負極、正極および非水電解質を、例えば、負極、非水電解質、正極の順で積層し、電池の外装材内に収容することで構成される。さらに、負極と正極の外側に非水電解質を配するようにしてもよい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池の構造は特に限定されず、その形状、形態についても特に限定されるものではなく、用途、搭載機器、要求される充放電容量などに応じて、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの中から任意に選択することができる。より安全性の高い密閉型非水電解液電池を得るためには、過充電などの異常時に電池内圧上昇を感知して電流を遮断させる手段を備えたものを用いることが好ましい。
リチウムイオン二次電池が高分子固体電解質電池や高分子ゲル電解質電池の場合には、ラミネートフィルムに封入した構造とすることもできる。
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また以下の実施例および比較例では、図1に示すように、少なくとも表面の一部に本発明の負極材料2が付着した集電体(負極)7bとリチウム箔よりなる対極(正極)4から構成される単極評価用のボタン型二次電池を作製して評価した。実電池は、本発明の概念に基づき、公知の方法に準じて作製することができる。
[粉体特性の測定方法]
実施例および比較例における粉体特性の測定方法は以下に記載するとおりである。
〈炭素質の量〉
炭素質前駆体の原料(複数種の場合を含む)単体に炭素質被覆黒鉛質粒子と同一の熱履歴を付与して、炭素質単体の炭化物を調製し、原料の残炭率を求めた。得られた残炭率から換算して炭素質被覆黒鉛質粒子中の、球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部(加圧黒鉛質粒子100質量部)に対する炭素質の割合(質量部)を算出した。
〈BET比表面積〉
窒素ガス吸着によるBET比表面積(m/g)を求めた(JIS Z 8830:2013 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)。具体的には、250℃で予備乾燥し、さらに30分間窒素ガスを流した後に、流動法BET1点法比表面積測定装置(MONOSORB,カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)を用いて、BET1点法により測定した。
〈細孔容積〉
細孔容積は水銀圧入法によって測定した。具体的には、水銀ポロシメーターを用いて横軸に細孔径、縦軸に細孔容積(累積体積)をプロットして求めた。
〈酸素濃度〉
酸素濃度は元素分析装置(Flash2000,サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)によって測定した。試料は100℃で2時間予備乾燥したものを使用し、装置内で約1060℃で加熱し、熱分解して生じるCO(一酸化炭素)の量を測定し、このい値から酸素濃度を計算して求めた。
〈炭素網面層の格子面間隔d002〉
d002は、CuKα線をX線源、高純度シリコンを標準物質に使用して、被覆黒鉛粒子に対し(002)面の回折ピークを測定し、そのピーク位置より、JIS R 7651:2007 「炭素材料の格子定数及び結晶子の大きさ測定方法」に従って、求めた。
〈ラマンR値〉
ラマンR値は、波長514.5nmのArレーザーを用いたラマン分光分析器(日本分光株式会社製、NR1100)で測定し、表層での結晶欠陥および積層構造の不整合等による結晶構造の乱れに帰属する1360cm−1近傍のスペクトルI1360を、炭素六角網面内の格子震動に相当するE2g型振動に帰属する1580cm−1近傍のスペクトルI1580で除し、ラマンスペクトル強度比R=I1360/I1580を求めた。
[負極特性の測定方法]
〈電極配向度〉
密度1.7g/cmに調整した電池評価用電極のXRD(X‐ray diffraction,X線回折)測定を実施し、その結晶子(004)と(110)の比を求めた。電極配向度が小さいほど充電性やサイクル特性が良好になる傾向がある。
[電池特性の測定方法]
〈放電容量〉
回路電圧が1mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、回路電圧が1mVに達した時点で定電圧充電に切替え、さらに電流値が20μAになるその間の通電量から充電容量(単位:mAh/g)を求めた。その後、10分間休止した。次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から放電容量(単位:mAh/g)を求めた。これを第1サイクルとした。
〈初回充放電効率〉
初回充放電効率は次式(1)から計算した。
初回充放電効率(%)=100×{(第1サイクルの充電容量―第1サイクルの放電容量)/第1サイクルの放電容量}・・・(1)
[実施例1]
〈リチウムイオン二次電池負極材料の製造〉
以下の手順によりリチウムイオン二次電池負極材料(以下単に「負極材料」という場合がある。)を製造した。
1.加圧処理
平均粒子径20μmの球状に加工された天然黒鉛粒子を、金型プレスを用いて異方的に加圧して、加圧黒鉛質粒子を得た。
2.混合処理(1回目)
加圧処理により得られた加圧黒鉛質粒子に対して、コールタールピッチ(融点10℃)のタール中油溶液(炭素質前駆体A)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Aを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して2質量部となるように添加し、二軸ニーダーを用いて150℃に加熱して60分間混合した。
3.焼成処理(1回目)
混合処理(1回目)により得られた混合物を、ロータリーキルン(以下「RK」という場合がある。ここで「RK」はロータリーキルンの英語表記である「Rotary kiln」の略称である。)を用いて、空気5L/min流通下(酸化性雰囲中)、400℃で5時間の焼成を行った。
4.混合処理(2回目)
焼成処理(1回目)により得られた焼成体に対して、コールタールピッチ(融点10℃)のタール中油溶液(炭素質前駆体B)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Bを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して5質量部となるように添加し、二軸ニーダーを用いて150℃に加熱して60分間混合した。
5.焼成処理(2回目)
混合処理処理(2回目)により得られた混合物を、管状炉(以下「管状」と略称する場合がある。)を用いて、窒素2L/min流通下(非酸化性雰囲気中)、1300℃で5時間の焼成(炭素化)を行い、負極材料である炭素質被覆黒鉛質粒子を製造した。
〈作用電極(負極)の作製〉
1.負極合剤ペーストの調製
製造した負極材料95質量部およびポリフッ化ビニリデン5質量部を、N−メチルピロリドン72質量部に添加し、ホモミキサーを用いて、2000rpmで、30分間撹拌混合して、負極合剤ペーストを調製した。
2.電極の製造
調製した負極合剤ペーストを銅箔に均一な厚さで塗布し、真空中、90℃で、負極合剤ペースト中の分散媒(N−メチルピロリドン)を蒸発させ、銅箔上に負極合剤層を形成した。
ハンドプレスによって、負極合剤層を銅箔ごと直径15.5mmの円形状に打ち抜いて、集電体(銅箔)およびこれに密着した負極合剤層からなる作用電極(負極)を製造した。
〈対極(正極)の製造〉
リチウム金属箔(厚み0.5mm)をニッケルネットに押し付けた。
ハンドプレスによって、リチウム金属箔をニッケルネットごと直径15.5mmの円形状に打ち抜いて、集電体(ニッケルネット)およびこれに密着したリチウム金属箔からなる対極(正極)を製造した。
〈電解液の調製〉
エチレンカーボネート50質量%−プロピレンカーボネート50質量%の混合溶剤に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を1mol/kgとなる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
〈セパレータの製造〉
得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚み20μm)に含浸させ、電解液が含浸したセパレータを製造した。
〈評価電池の製造〉
評価電池として図1に示すボタン型二次電池を作製した。以下、図1を参照しながら、評価電池の製造方法を説明する。
評価電池は、電解液を含浸させたセパレータ5を、集電体7bと、集電体7aに密着した対極4との間に挟んで積層した後、集電体7bを外装カップ1内に、対極4を外装缶3内に収容して、外装カップ1と外装缶3とを合わせ、さらに、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉して製造した。
製造した評価電池は、外装缶3の内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円筒状の対極(正極)4、電解液が含浸されたセパレータ5、負極材料2が付着した銅箔からなる集電体7bが積層された電池系である。
[実施例2]
実施例2では、表1に示すとおり、混合処理(2回目)において、焼成処理(1回目)により得られた焼成体に対して、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体B)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Bを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して3質量部となるように添加した点を除いて、実施例1と同様にして負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[実施例3]
実施例3では、表1に示すとおり、混合処理(1回目)において、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体A)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Aを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して3質量部となるように添加した点、および、混合処理(2回目)において、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体B)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Bを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して4質量部となるように添加した点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例4では、表1に示すとおり、加圧処理の際の圧力を150MPaに変更した点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[実施例5]
実施例5では、表1に示すとおり、加圧処理の際に、加圧装置としてCIP(Cold Isostatic Press:冷間等方圧プレス)を用いた点および加圧方向を等方的にした点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[実施例6]
実施例6では、表1に示すとおり、焼成処理(1回目)の温度を350℃とした点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[実施例7]
実施例7では、表1に示すとおり、焼成処理(1回目)の温度を450℃とした点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[実施例8]
実施例8では、表1に示すとおり、焼成処理(2回目)の温度を1200℃とした点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[実施例9]
実施例9では、表1に示すとおり、焼成処理(2回目)の温度を1100℃とした点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[比較例1]
比較例1では、表1に示すとおり、混合処理(1回目)において、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体A)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Aを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して7質量部となるように添加した点、および、混合処理(2回目)を行わなかった点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[比較例2]
比較例2では、表1に示すとおり、混合処理(1回目)において、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体A)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Aを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して5質量部となるように添加した点、および、混合処理(2回目)を行わなかった点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[比較例3]
比較例3では、表1に示すとおり、混合処理(1回目)において、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体A)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Aを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して7質量部となるように添加した点、焼成処理(1回目)において、約10Lの装置内にサンプルを投入し、30分間窒素ガス2L/minを流して内部を置換した後、窒素ガス2L/minを流しながら加熱させて、焼成(炭素化)を行った点、および、混合処理(2回目)を行わなかった点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[比較例4]
比較例4では、表1に示すとおり、混合処理(1回目)において、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体A)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Aを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して7質量部となるように添加した点、焼成処理(1回目)において、約10Lの装置内にサンプルを投入し、30分間窒素ガス2L/minを流して内部を置換した後、窒素ガス2L/minを流しながら加熱させて、1300℃で5時間の焼成(炭素化)を行った点、混合処理(2回目)を行わなかった点、および加熱処理(2回目)を行わなかった点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
[比較例5]
比較例5では、表1に示すとおり、混合処理(1回目)において、コールタールピッチのタール中油溶液(炭素質前駆体A)を、製造される負極材料中の、炭素質前駆体Aを炭素化して得られる炭素質の量が、加圧黒鉛質粒子100質量部に対して7質量部となるように添加した点、焼成処理(1回目)において、約10Lの装置内にサンプルを投入し、30分間窒素ガス2L/minを流して内部を置換した後、窒素ガス2L/minを流しながら加熱させて、1300℃で5時間の焼成(炭素化)を行った点、混合処理(2回目)を行わなかった点、および加熱処理(2回目)において、約5Lの装置内にサンプルを投入し、30分間アルゴンガス3L/minを流して内部を置換した後、アルゴンガス3L/minを流しながら加熱させて、3000℃で5時間の焼成(黒鉛化)を行った点を除いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極材料を製造した。
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、作用電極(負極)および評価電池を製造した。
実施例1と同様にして、粉体特性、負極特性、および電池特性を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 0006858691
Figure 0006858691
[結果の説明]
実施例1〜9の炭素質被覆黒鉛質粒子を負極材料として用いた評価電池は、360mAh/g以上の高い放電容量を示した。
また、実施例1〜9の炭素質被覆黒鉛質粒子を負極材料として用いた評価電池は、比較例1〜5の負極材料を用いた評価電池に比べ、初回充放電効率が優れていた。
比較例1、2の負極材料を用いた評価電池では、負極材料中の酸素濃度が大きく、BET比表面積が増加したため、充放電容量および初回充放電効率が劣っていたと考えられる。
比較例3、4の負極材料を用いた評価電池では、負極材料中の酸素濃度が小さく、電解液中のPC(プロピレンカーボネート)と酸素との相互作用が弱かったため、PCが黒鉛相間に侵入することを防ぎきれず、黒鉛分解反応が進行し、初回充放電効率が劣っていたと考えられる。
比較例5の負極材料を用いた評価電池では、負極材料のエッジ面が露出しており、電解液との反応性が高かったことから、初回充放電効率が劣っていたと考えられる。
本発明の炭素質被覆黒鉛質粒子からなる負極材料は、その特性を活かして、小型から大型までの高性能リチウムイオン二次電池の負極に使用することができる。
1 外装カップ
2 負極材料
3 外装缶
4 対極
5 電解質溶液含浸セパレータ
6 絶縁ガスケット
7a,7b 集電体

Claims (3)

  1. 球状および/または楕円体状黒鉛粒子を加圧して加圧黒鉛質粒子を得る加圧処理工程と、
    前記加圧黒鉛質粒子と第一の炭素質前駆体とを混合して前記加圧黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部が前記第一の炭素質前駆体によって被覆された第一の混合物を得る第一混合工程と、
    前記第一の混合物を酸化性雰囲気で焼成して第一の焼成体を得る第一焼成工程と、
    前記第一の焼成体と第二の炭素質前駆体とを混合して前記第一の焼成体の表面の少なくとも一部が前記第二の炭素質前駆体によって被覆された第二の混合物を得る第二混合工程と、
    前記第二の混合物を非酸化性雰囲気で焼成して前記第一の炭素質前駆体および前記第二の炭素質前駆体を炭素質に変化させ、前記加圧黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部が前記炭素質で被覆された炭素質被覆黒鉛質粒子を得る第二焼成工程と、
    を有するリチウムイオン二次電池負極材料用炭素質被覆黒鉛質粒子の製造方法。
  2. 前記第一焼成工程において、前記第一の混合物を300℃以上700℃未満の温度で焼成し、
    前記第二焼成工程において、前記第二の混合物を700℃以上2000℃以下の温度で焼成する、
    請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記球状および/または楕円体状黒鉛粒子の合計100質量部に対して、
    前記第一の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質が0.5〜4質量部であり、
    前記第二の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質が1〜7質量部であり、かつ
    前記第一の炭素質前駆体および前記第二の炭素質前駆体を炭素化して得られる炭素質の合計が3〜10質量部である、
    請求項1または2に記載の製造方法。
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