以下、添付図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す略斜視図であって、実装状態に対して上下反転させた状態を示している。
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品10は、略直方体形状である表面実装型のコモンモードフィルタであり、磁性基板11と、磁性基板11上に設けられた積層構造体20と、積層構造体20上に設けられた第1〜第6の端子電極E1〜E6及び磁性樹脂層12とを備えている。積層構造体20の具体的な構成としては、第1の実施形態による積層構造体20Aおよび第2の実施形態による積層構造体20Bが挙げられるが、これらの詳細については後述する。実装時においては、図1に示す状態から上下反転され、第1〜第6の端子電極E1〜E6が設けられたxy面がプリント基板と向かい合うようにして実装される。本実施形態によるコイル部品10は、磁性基板11上に積層構造体20が積層されてなる積層型の薄膜コイル部品であり、磁性コア又はボビンにワイヤを巻回してなるいわゆる巻線型のコイル部品とはタイプが異なるものである。
磁性基板11は積層構造体20を積層する際の基板であるとともに、積層構造体20を物理的に保護し、且つ、コイル部品10の磁路を構成するものである。磁性基板11の材料としては、焼結フェライト、複合フェライト(フェライト粉含有樹脂)等を用いることができるが、機械的強度が高く磁気特性に優れた焼結フェライトを用いることが特に好ましい。
6つの端子電極E1〜E6のうち、第1、第3及び第5の端子電極E1,E3,E5はx方向に延在する一方の長辺に沿って設けられ、第2、第4及び第6の端子電極E2,E4,E6はx方向に延在する他方の長辺に沿って設けられている。特に限定されるものではないが、端子電極E1,E2,E5,E6はコイル部品10の角部に配置されている。このため、これら端子電極E1,E2,E5,E6については、コイル部品10の3つの側面(xy面、xz面、yz面)に露出している。これに対し、残りの端子電極E3,E4については、コイル部品10の2つの側面(xy面、xz面)に露出している。特に限定されるものではないが、端子電極E1〜E6は厚膜めっき法によって形成され、その厚さはスパッタリング法やスクリーン印刷により形成される電極パターンよりも十分に厚い。
磁性樹脂層12は、積層構造体20を物理的に保護するとともに、第1〜第6の端子電極E1〜E6を固定・支持するものであり、第1〜第6の端子電極E1〜E6の周囲を埋め込むように設けられている。磁性樹脂層12の上面(xy面)は、第1〜第6の端子電極E1〜E6の上面(xy面)とほぼ同一平面を構成している。磁性樹脂層12の材料としては、複合フェライトを用いることが好ましい。磁性樹脂層12は高い磁気特性を有しており、磁性基板11と共に磁路を構成する。
<第1の実施形態>
図2はコイル部品10の略分解斜視図であり、特に、第1の実施形態による積層構造体20Aの構造を説明するための図である。また、図3は、積層構造体20Aを平面視で見た場合の透視平面図である。
図2に示す積層構造体20Aは、磁性基板11側から磁性樹脂層12側に向かって順に積層された絶縁層31〜34を備えており、これら絶縁層31〜34間に3つの導体層M11〜M13が形成されている。絶縁層31〜34は例えば樹脂からなり、第1〜第3の導体層M11〜M13を互いに分離する役割を果たす。
絶縁層31の表面に形成される第1の導体層M11は、第1、第2及び第4のスパイラルコイルC11,C12,C14を含む。これら3つのスパイラルコイルはx方向に並べて配置されており、これらのサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースは互いに等しく設計される。第1のスパイラルコイルC11は、外周端が導体パターン41に接続され、内周端が導体パターン42に接続される。また、第2のスパイラルコイルC12は、外周端が導体パターン41に接続され、内周端が導体パターン43に接続される。さらに、第4のスパイラルコイルC14は、外周端が導体パターン44に接続され、内周端が導体パターン45に接続される。ここで、第1及び第4のスパイラルコイルC11,C14は外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)に巻回されているのに対し、平面視でこれらに挟まれた第2のスパイラルコイルC12は、外周端から内周端に向かって反時計回り(左回り)に巻回されている。
絶縁層32の表面に形成される第2の導体層M12は、第3、第5及び第6のスパイラルコイルC13,C15,C16を含む。これら3つのスパイラルコイルはx方向に並べて配置されており、それぞれ平面視で第1、第2及び第4のスパイラルコイルC11,C12,C14と重なる位置に配置されている。このため、第1及び第3のスパイラルコイルC11とC13は互いに磁気結合し、第2及び第5のスパイラルコイルC12とC15は互いに磁気結合し、第4及び第6のスパイラルコイルC14とC16は互いに磁気結合する。
第3、第5及び第6のスパイラルコイルC13,C15,C16のサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースは互いに等しく設計される。特に、6つのスパイラルコイルC11〜C16のサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースを互いにすべて等しく設計することが好ましい。第3のスパイラルコイルC13は、外周端が導体パターン51に接続され、内周端が導体パターン52に接続される。また、第5のスパイラルコイルC15は、外周端が導体パターン53に接続され、内周端が導体パターン54に接続される。さらに、第6のスパイラルコイルC16は、外周端が導体パターン53に接続され、内周端が導体パターン55に接続される。ここで、第3及び第6のスパイラルコイルC13,C16は外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)に巻回されているのに対し、平面視でこれらに挟まれた第5のスパイラルコイルC15は、外周端から内周端に向かって反時計回り(左回り)に巻回されている。
導体層M12には、導体パターン56〜59がさらに設けられている。導体パターン56,51,53は、絶縁層32に設けられたスルーホールを介して、第1の導体層M11に含まれる導体パターン41,44,46にそれぞれ接続される。また、導体パターン57〜59は、絶縁層32に設けられたスルーホールを介して、第1の導体層M11に含まれる導体パターン42,43,45にそれぞれ接続される。
絶縁層33の表面に形成される第3の導体層M13は、導体パターン62,64,66及び導体パターン71〜76を含む。図3に示すように、導体パターン62は、導体パターン72に接続されるとともに、絶縁層33に設けられたスルーホールを介して、第2の導体層M12に含まれる導体パターン57,58にそれぞれ接続される。また、導体パターン64は、導体パターン74に接続されるとともに、絶縁層33に設けられたスルーホールを介して、第2の導体層M12に含まれる導体パターン52,59にそれぞれ接続される。さらに、導体パターン66は、導体パターン76に接続されるとともに、絶縁層33に設けられたスルーホールを介して、第2の導体層M12に含まれる導体パターン54,55にそれぞれ接続される。一方、導体パターン71,73,75は、絶縁層33に設けられたスルーホールを介して、第2の導体層M12に含まれる導体パターン56,51,53にそれぞれ接続される。
そして、端子電極E1〜E6は、絶縁層34に設けられたスルーホールを介して、第3の導体層M13に含まれる導体パターン71〜76にそれぞれ接続される。かかる構成により、第1の端子電極E1と第2の端子電極E2の間には2つのスパイラルコイルC11,C12が並列に接続され、第3の端子電極E3と第4の端子電極E4の間には2つのスパイラルコイルC13,C14が並列に接続され、第5の端子電極E5と第6の端子電極E6の間には2つのスパイラルコイルC15,C16が並列に接続されることになる。
ここで、第1のスパイラルコイルC11と第3のスパイラルコイルC13は、平面視で重なり合うことから、両者は互いに磁気結合する。同様に、第2のスパイラルコイルC12と第5のスパイラルコイルC15は、平面視で重なり合うことから、両者は互いに磁気結合する。さらに、第4のスパイラルコイルC14と第6のスパイラルコイルC16は、平面視で重なり合うことから、両者は互いに磁気結合する。
図4は、積層構造体20Aの等価回路図である。
図4に示すように、第1の端子電極E1と第2の端子電極E2の間には、第1及び第2のスパイラルコイルC11,C12が並列に接続される。また、第3の端子電極E3と第4の端子電極E4の間には、第3及び第4のスパイラルコイルC13,C14が並列に接続される。さらに、第5の端子電極E5と第6の端子電極E6の間には、第5及び第6のスパイラルコイルC15,C16が並列に接続される。
そして、上述の通り、このうち第1及び第3のスパイラルコイルC11,C13が磁気結合し、第2及び第5のスパイラルコイルC12,C15が磁気結合し、第4及び第6のスパイラルコイルC14,C16が磁気結合する。これにより、本実施形態によるコイル部品10は、3ライン構成のコモンモードフィルタとして用いることができる。
図5は、コイル部品10が搭載される回路基板2のパターン形状を説明するための模式的な平面図である。
図5に示す回路基板2は、コイル部品10が搭載される搭載領域10Aを有している。搭載領域10Aには、それぞれ第1〜第6の端子電極E1〜E6に対応する第1〜第6のランドパターンP1〜P6が設けられており、搭載領域10Aにコイル部品10が搭載されると、半田を介して、第1〜第6の端子電極E1〜E6と第1〜第6のランドパターンP1〜P6がそれぞれ電気的に接続される。
回路基板2には、それぞれ第1〜第6のランドパターンP1〜P6に接続された第1〜第6の信号配線S1〜S6が設けられている。このうち、3ラインの信号配線S1〜S3は1セットの配線群INを構成し、3ラインの信号配線S4〜S6も1セットの配線群OUTを構成する。配線群INは例えば入力側の配線群であり、配線群OUTは例えば出力側の配線群である。各配線群IN,OUTによって伝送される3信号は、2つの信号の電位差によってデータが表現される。例えば、配線群INにおいては、信号配線S1のレベルと信号配線S2のレベルの大小関係、信号配線S1のレベルと信号配線S3のレベルの大小関係、並びに、信号配線S2のレベルと信号配線S3のレベルの大小関係によってデータが表現される。配線群OUTにおいても同様である。したがって、この例では一度に3ビットのデータを伝送することができる。
そして、このような配線群INと配線群OUTとの間に本実施形態によるコイル部品10を挿入することにより、3信号に重畳したコモンモードノイズを除去することができる。ここで、高い信号品質を得るためには、3つの信号ラインL1〜L3の伝送特性をできる限り一致させる必要がある。そのためには、2つの信号ライン間における結合特性が各信号ライン間においてほぼ一致していることが好ましい。つまり、信号ラインL1とL2との間の結合特性と、信号ラインL1とL3との間の結合特性と、信号ラインL2とL3との間の結合特性とがほぼ一致していることが望まれる。
図6は、本実施形態において磁気結合する信号ラインの組み合わせを説明するための模式図である。
図6に示すように、本実施形態においては3つの結合領域A1,B1,C1が形成される。このうち、結合領域A1は、信号ラインL1,L2が結合する領域であり、平面視で重なる第1及び第3のスパイラルコイルC11,C13によって構成される。また、結合領域B1は、信号ラインL1,L3が結合する領域であり、平面視で重なる第2及び第5のスパイラルコイルC12,C15によって構成される。さらに、結合領域C1は、信号ラインL2,L3が結合する領域であり、平面視で重なる第4及び第6のスパイラルコイルC14,C16によって構成される。
このように、本実施形態においては、各信号ラインL1〜L3をそれぞれ2つに分割し、分割した各ラインにそれぞれスパイラルコイルC11〜C16を接続するとともに、3つの信号ラインL1〜L3の中から互いに組み合わせの異なる3つのペアを作成し、これらのペアをそれぞれ磁気結合させている。そして、これらスパイラルコイルC11〜C16のサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースを互いに一致させれば、各スパイラルコイルC11〜C16のインダクタンスはほぼ一致する。しかも、上下のスパイラルコイルは単一の絶縁層32によって分離されていることから、平面視で重なる2つのスパイラルコイル間の容量成分は、3つのペアにおいて互いに一致する。これらにより、信号ラインL1〜L3間の結合バランスがほぼ均等となることから、信号ラインL1〜L3の伝送特性をほぼ一致させることが可能となる。
そして、設計段階において絶縁層32の膜厚を変化させれば、平面視で重なる2つのスパイラルコイル間の容量成分が変化することから、伝送特性を調整することができる。この場合、絶縁層32の膜厚を変化させると、3つのペアに与えられる変化は必ず均等となることから、信号ラインL1〜L3間における伝送特性のバランスが崩れることがない。
次に、図2に示した積層構造体20Aの形成方法について説明する。
図7〜図13は、図2に示した積層構造体20Aの形成方法を説明するための工程図である。
まず、所定の厚さを持った焼結フェライトなどからなる磁性基板11を用意し、その上面に絶縁層31を形成する。次に、図7に示すように、絶縁層31の上面に第1、第2及び第4のスパイラルコイルC11,C12,C14と、導体パターン41〜46からなる導体層M11を形成する。これら導体の形成方法としては、スパッタリング法などの薄膜プロセスを用いて下地金属膜を形成した後、電解めっき法を用いて所望の膜厚までめっき成長させることが好ましい。以降に形成する他の導体の形成方法についても同様である。
次に、図8に示すように、導体層M11を覆うように絶縁層31の上面に絶縁層32を形成した後、絶縁層32にスルーホール32a〜32fを形成する。具体的には、スピンコート法によって樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィー法によって所定のパターンを形成することにより、スルーホール32a〜32fを有する絶縁層32を形成することができる。以降に形成する絶縁層の形成方法についても同様である。図8に示すスルーホール32a〜32fは、導体パターン41〜46をそれぞれ露出させる位置に形成される。
次に、図9に示すように、絶縁層32の上面に第3、第5及び第6のスパイラルコイルC13,C15,C16と、導体パターン51〜59からなる導体層M12を形成する。既に説明したとおり、第3、第5及び第6のスパイラルコイルC13,C15,C16は、それぞれ平面視で第1、第2及び第4のスパイラルコイルC11,C12,C14と重なるようアライメントされる。導体パターン56,57,58,51,59,53は、それぞれスルーホール32a〜32fに対応する位置に形成される。これにより、導体パターン56,57,58,51,59,53は、それぞれ第1の導体層M11に設けられた導体パターン41〜46にそれぞれ接続される。
次に、図10に示すように、導体層M12を覆うように絶縁層32の上面に絶縁層33を形成した後、絶縁層33にスルーホール33a〜33iを形成する。図10に示すスルーホール33a〜33iは、それぞれ導体パターン51〜59を露出する位置に形成される。
次に、図11に示すように、絶縁層33の上面に導体パターン62,64,66,71〜76からなる導体層M13を形成する。導体パターン62の接続領域62a,62bはそれぞれスルーホール33g,33hに対応する位置に形成され、導体パターン64の接続領域64a,64bはそれぞれスルーホール33b,33iに対応する位置に形成され、導体パターン66の接続領域66a,66bはそれぞれスルーホール33d,33eに対応する位置に形成される。これにより、第1及び第2のスパイラルコイルC11,C12の内周端はいずれも導体パターン72に接続され、第3及び第4のスパイラルコイルC13,C14の内周端はいずれも導体パターン74に接続され、第5及び第6のスパイラルコイルC15,C16の内周端はいずれも導体パターン76に接続される。
一方、導体パターン71,73,75は、それぞれスルーホール33f,33a,33cに対応する位置に形成される。これにより、第1及び第2のスパイラルコイルC11,C12の外周端はいずれも導体パターン71に接続され、第3及び第4のスパイラルコイルC13,C14の外周端はいずれも導体パターン73に接続され、第5及び第6のスパイラルコイルC15,C16の外周端はいずれも導体パターン75に接続される。
次に、図12に示すように、導体層M13を覆うように絶縁層33の上面に絶縁層34を形成した後、絶縁層34にスルーホール34a〜34fを形成する。図12に示すスルーホール34a〜34fは、それぞれ導体パターン71〜76を露出させる位置に形成される。
次に、図13に示すように、絶縁層34の表面に第1〜第6の端子電極E1〜E6を形成する。第1〜第6の端子電極E1〜E6の形成方法は、次の通りである。まず、導体パターン71〜76が露出した絶縁層34の全面に、下地となるCu膜を無電解めっきにより形成する。その後、シートレジストを貼り付け、露光及び現像することにより、第1〜第6の端子電極E1〜E6を形成すべき領域にあるシートレジストを選択的に除去し、当該領域のCu膜を露出させる。そして、この状態で肉厚な第1〜第6の端子電極E1〜E6を電気めっきにより形成する。その後、シートレジストを除去し、全面をエッチングすることにより不要なCu膜を除去すれば、柱状である第1〜第6の端子電極E1〜E6が形成される。
そして、複合フェライトのペーストを全面に形成し、硬化させれば、第1〜第6の端子電極E1〜E6の周囲を埋める磁性樹脂層12が形成される。その後は、第1〜第6の端子電極E1〜E6上の不要な複合フェライトを除去すれば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品10は、各信号ラインL1〜L3をそれぞれ2つに分割するとともに、3つの信号ラインの中から互いに組み合わせの異なる3つのペアを作成し、これらのペアをそれぞれ磁気結合させていることから、信号ラインL1〜L3間における伝送特性をほぼ一致させることが可能となる。しかも、平面視で重なる2つのスパイラルコイル間には共通の絶縁層32が介在していることから、容量成分にばらつきが生じることもない。
しかも、第1、第3、第4及び第6のスパイラルコイルC11,C13,C14,C16の巻回方向と、第2及び第5のスパイラルコイルC12,C15の巻回方向が互いに逆であることから、各スパイラルコイルにおいて発生する磁束が互いに強め合うことになる。これにより、全てのスパイラルコイルの巻回方向と同じとした場合と比べて、高いインダクタンスを得ることが可能となる。
また、上述した積層構造体20Aは3つの導体層M11〜M13によって構成されていることから、製造工程数が少なく低コスト化に有利であるとともに、z方向における厚みを低くすることも可能である。
但し、積層構造体20Aを3つの導体層M11〜M13によって構成することは必須でなく、図14に示す変形例のように4つの導体層を用い、導体パターン81〜83と導体パターン91〜93を別の導体層に形成しても構わない。ここで、図14に示す例では、導体パターン81は導体パターン57,72間を接続し、導体パターン82は導体パターン58,72間を接続し、導体パターン83は導体パターン55,74間を接続するものである。また、導体パターン91は導体パターン52,74間を接続し、導体パターン92は導体パターン54,76間を接続し、導体パターン93は導体パターン59,76間を接続するものである。このような導体パターン81〜83,91〜93を用いれば、導体パターン72,74,76と導体パターン52,54,55,57,58,59の配線距離の差が低減されることから、より高い信号品質を得ることが可能となる。
<第2の実施形態>
図15はコイル部品10の別の略分解斜視図であり、特に、第2の実施形態による積層構造体20Bの構造を説明するための図である。図15において、図2と同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
図15に示す積層構造体20Bは、磁性基板11側から磁性樹脂層12側に向かって順に積層された絶縁層31,32,33,104,105を備えており、これら絶縁層間に4つの導体層M11,M12,M23,M24が形成されている。絶縁層31,32,33,104,105は例えば樹脂からなり、第1〜第4の導体層M11,M12,M23,M24を互いに分離する役割を果たす。
絶縁層31〜33及び導体層M11,M12の構成は、図2に示した第1の実施形態と同じであることから、重複する説明は省略する。
一方、絶縁層33の表面に形成される第3の導体層M23は、第7、第8及び第10のスパイラルコイルC21,C22,C24を含む。これら3つのスパイラルコイルはx方向に並べて配置されており、これらのサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースは互いに等しく設計される。第7のスパイラルコイルC21は、外周端が導体パターン112に接続され、内周端が導体パターン121に接続される。また、第8のスパイラルコイルC22は、外周端が導体パターン112に接続され、内周端が導体パターン122に接続される。さらに、第10のスパイラルコイルC24は、外周端が導体パターン114に接続され、内周端が導体パターン123に接続される。ここで、第7及び第10のスパイラルコイルC21,C24は内周端から外周端に向かって時計回り(右回り)に巻回されているのに対し、平面視でこれらに挟まれた第8のスパイラルコイルC22は、内周端から外周端に向かって反時計回り(左回り)に巻回されている。
導体パターン121〜123は、絶縁層33に設けられたスルーホールを介して、第2の導体層M12に含まれる導体パターン57〜59にそれぞれ接続される。また、第3の導体層M23には導体パターン111,113,115,124〜126も設けられており、これらは絶縁層33に設けられたスルーホールを介して、第2の導体層M12に含まれる導体パターン56,51,53,52,54,55にそれぞれ接続される。
絶縁層104の表面に形成される第4の導体層M24は、第9、第11及び第12のスパイラルコイルC23,C25,C26を含む。これら3つのスパイラルコイルはx方向に並べて配置されており、それぞれ平面視で第7、第8及び第10のスパイラルコイルC21,C22,C24と重なる位置に配置されている。このため、第7及び第9のスパイラルコイルC21とC23は互いに磁気結合し、第8及び第11のスパイラルコイルC22とC25は互いに磁気結合し、第10及び第12のスパイラルコイルC24とC26は互いに磁気結合する。
第9、第11及び第12のスパイラルコイルC23,C25,C26のサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースは互いに等しく設計される。特に、6つのスパイラルコイルC21〜C26のサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースを互いにすべて等しく設計することが好ましく、12個のスパイラルコイルC11〜C16,C21〜C26のサイズ、巻回数、平面視でコイルに囲まれた内径領域の面積、導体間のスペースを互いにすべて等しく設計することがより好ましい。
第9のスパイラルコイルC23は、外周端が導体パターン134に接続され、内周端が導体パターン141に接続される。また、第11のスパイラルコイルC25は、外周端が導体パターン136に接続され、内周端が導体パターン142に接続される。さらに、第12のスパイラルコイルC26は、外周端が導体パターン136に接続され、内周端が導体パターン143に接続される。ここで、第9及び第12のスパイラルコイルC23,C26は内周端から外周端に向かって時計回り(右回り)に巻回されているのに対し、平面視でこれらに挟まれた第11のスパイラルコイルC25は、内周端から外周端に向かって反時計回り(左回り)に巻回されている。
第4の導体層M24に含まれる導体パターン131〜136,141〜143は、絶縁層104に設けられたスルーホールを介して、第3の導体層M23に含まれる導体パターン111〜116,124〜126にそれぞれ接続される。
そして、端子電極E1〜E6は、絶縁層105に設けられたスルーホールを介して、第4の導体層M24に含まれる導体パターン131〜136にそれぞれ接続される。かかる構成により、第1の端子電極E1と第2の端子電極E2の間には4つのスパイラルコイルC11,C12,C21,C22が接続され、第3の端子電極E3と第4の端子電極E4の間には4つのスパイラルコイルC13,C14,C23,C24が接続され、第5の端子電極E5と第6の端子電極E6の間には4つのスパイラルコイルC15,C16,C25,C26が接続されることになる。
そして、第1、第3、第7及び第9のスパイラルコイルC11,C13,C21,C23は、平面視で重なり合うことから、これらは互いに磁気結合する。同様に、第2、第5、第8及び第11のスパイラルコイルC12,C15,C22,C25は、平面視で重なり合うことから、これらは互いに磁気結合する。さらに、第4、第6、第10及び第12のスパイラルコイルC14,C16,C24,C26は、平面視で重なり合うことから、これらは互いに磁気結合する。
このような構成を有する積層構造体20Bは、上述した積層構造体20Aと同様の方法を用いて作製することが可能である。
図16は、積層構造体20Bの等価回路図である。
図16に示すように、第1の端子電極E1と第2の端子電極E2の間には、第1及び第7のスパイラルコイルC11,C21が直列に接続されるとともに、第2及び第8のスパイラルコイルC12,C22が直列に接続される。スパイラルコイルC11,C21の直列体とスパイラルコイルC12,C22の直列体は、互いに並列に接続される。また、第3の端子電極E3と第4の端子電極E4の間には、第3及び第9のスパイラルコイルC13,C23が直列に接続されるとともに、第4及び第10のスパイラルコイルC14,C24が直列に接続される。スパイラルコイルC13,C23の直列体とスパイラルコイルC14,C24の直列体は、互いに並列に接続される。さらに、第5の端子電極E5と第6の端子電極E6の間には、第5及び第11のスパイラルコイルC15,C25が直列に接続されるとともに、第6及び第12のスパイラルコイルC16,C26が直列に接続される。スパイラルコイルC15,C25の直列体とスパイラルコイルC16,C26の直列体は、互いに並列に接続される。
ここで、第7〜第12のスパイラルコイルC21〜C26の構成は、第1〜第6のスパイラルコイルC11〜C16と同じ構成を有していることから、第1の実施形態において説明した回路が直列に2個接続された構成となる。これにより、第1の実施形態よりも高いインダクタンスを得ることが可能となる。しかも、本実施形態においては、第1及び第2の導体層M11,M12に形成されたスパイラルコイルC11〜C16の内周端と、第3及び第4の導体層M23,M24に形成されたスパイラルコイルC21〜C26の内周端が接続されていることから、内周端と端子電極を接続するための導体パターンが不要である。このため、導体層の層数の増加を最小限に抑えつつ、高いインダクタンスを得ることが可能となる。
図17は、本実施形態において磁気結合する信号ラインの組み合わせを説明するための模式図である。
図17に示すように、本実施形態においては3つの結合領域A2,B2,C2が形成される。このうち、結合領域A2は、信号ラインL1,L2が結合する領域であり、平面視で重なる第1、第3、第7及び第9のスパイラルコイルC11,C13,C21,C23によって構成される。また、結合領域B2は、信号ラインL1,L3が結合する領域であり、平面視で重なる第2、第5、第8及び第11のスパイラルコイルC12,C15,C22,C25によって構成される。さらに、結合領域C2は、信号ラインL2,L3が結合する領域であり、平面視で重なる第4、第6、第10及び第12のスパイラルコイルC14,C16,C24,C26によって構成される。
但し、結合領域A2,B2,C2の構成がこれに限定されるものではなく、図18に示す構成や図19に示す構成であっても構わない。図18及び図19に示す構成は、同じ信号ラインを構成する2つのスパイラルコイル(例えばC11とC21)が隣接する導体層に配置されている点において、図17に示した構成と相違する。このような構成とする場合、第2の導体層M12と第3の導体層M23との間に位置する絶縁層33の膜厚を調整することによって、異なる信号ライン間における容量成分を調整することができる。
<第3の実施形態>
図20は、第3の実施形態によるコイル部品10Cの等価回路図である。
第3の実施形態によるコイル部品10Cは8端子構成であり、4つの信号ラインL1〜L4を互いに磁気結合させるものである。具体的には、6端子構成である上述したコイル部品10に2つの端子電極E7,E8を追加した構成を有している。
図20に示すように、第1の端子電極E1と第2の端子電極E2の間には3つのスパイラルコイルC31〜C33が並列に接続され、第3の端子電極E3と第4の端子電極E4の間には3つのスパイラルコイルC41〜C43が並列に接続され、第5の端子電極E5と第6の端子電極E6の間には3つのスパイラルコイルC51〜C53が並列に接続され、第7の端子電極E7と第8の端子電極E8の間には3つのスパイラルコイルC61〜C63が並列に接続される。そして、4つの信号ラインL1〜L4の中から互いに組み合わせの異なる6つのペアを作成し、これらのペアをそれぞれ磁気結合させる。
つまり、スパイラルコイルC31,C41を磁気結合させ、スパイラルコイルC32,C51を磁気結合させ、スパイラルコイルC33,C61を磁気結合させ、スパイラルコイルC42,C52を磁気結合させ、スパイラルコイルC43,C62を磁気結合させ、スパイラルコイルC53,C63を磁気結合させる。これにより、信号ラインL1〜L4間の結合バランスがほぼ均等となることから、信号ラインL1〜L4間における伝送特性をほぼ一致させることが可能となる。
実際には2つの導体層M11,M12を用い、図21に示すように、第1の導体層M11にスパイラルコイルC31,C32,C33,C42,C43,C53を形成し、第2の導体層M12にスパイラルコイルC41,C51,C61,C52,C62,C63を形成するとともに、6つの結合領域A3〜F3においてそれぞれ対応する2つのスパイラルコイルを磁気結合させればよい。或いは、図22に示すように、第1の導体層M11にスパイラルコイルC31,C32,C42,C33,C43,C53を形成し、第2の導体層M12にスパイラルコイルC41,C51,C52,C61,C62,C63を形成するとともに、6つの結合領域A3〜F3においてそれぞれ対応する2つのスパイラルコイルを磁気結合させればよい。
本実施形態が例示するように、本発明によるコイル部品は、信号ラインが4つ以上であってもこれらを均等に磁気結合させることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上述した第1及び第2の実施形態では、端子電極E1〜E6が磁性樹脂層12に埋め込まれたバンプ形状を有しているが、本発明において端子電極の形状や構造がこれに限定されるものではない。したがって、基体の表面に銀ペーストなどを焼き付けてなる端子電極を用いても構わないし、基体に端子金具を接着してなる端子電極を用いても構わない。
また、上述した第1及び第2の実施形態では、各スパイラルコイルの内径領域に磁性体が設けられていないが、各スパイラルコイルの内径領域に貫通孔を設けることにより、貫通孔の内部に磁性樹脂層12と同じ材料を埋め込んでも構わない。これによれば、より高い磁気特性を得ることが可能となる。