以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す略斜視図であって、実装状態に対して上下反転させた図である。
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品10は、略直方体形状である表面実装型のコモンモードフィルタであり、磁性基板11と、磁性基板11上に設けられた積層構造体20と、積層構造体20上に設けられた第1〜第8の端子電極E1〜E8及び磁性樹脂層12とを備えている。積層構造体20の具体的な構成としては、第1の実施形態による積層構造体20Aおよび第2の実施形態による積層構造体20Bが挙げられるが、これらの詳細については後述する。特に限定されるものではないが、コイル部品10のサイズは、x方向における長さが0.8mm、y方向における幅が0.6mm、z方向における高さが0.4mmである。実装時においては、図1に示す状態から上下反転され、第1〜第8の端子電極E1〜E8が設けられたxy面がプリント基板と向かい合うようにして実装される。本実施形態によるコイル部品10は、磁性基板11上に積層構造体20が積層されてなる積層型の薄膜コイル部品であり、磁性コア又はボビンにワイヤを巻回してなるいわゆる巻線型のコイル部品とはタイプが異なるものである。
磁性基板11は積層構造体20を積層する際の基板であるとともに、積層構造体20を物理的に保護し、且つ、コイル部品10の磁路を構成するものである。磁性基板11の材料としては、焼結フェライト、複合フェライト(フェライト粉含有樹脂)等を用いることができるが、機械的強度が高く磁気特性に優れた焼結フェライトを用いることが特に好ましい。
第1〜第3の端子電極E1〜E3はx方向に延在する一方の長辺に沿って設けられ、第4〜第6の端子電極E4〜E6はx方向に延在する他方の長辺に沿って設けられている。また、第7の端子電極E7は、y方向に延在する一方の短辺の略中央部に設けられ、第8の端子電極E8は、y方向に延在する他方の短辺の略中央部に設けられている。特に限定されるものではないが、端子電極E1,E3,E4,E6はコイル部品10の角部に配置されている。このため、これら端子電極E1,E3,E4,E6については、コイル部品10の3つの側面(xy面、xz面、yz面)に露出している。これに対し、端子電極E2,E5については、コイル部品10の2つの側面(xy面、xz面)に露出し、端子電極E7,E8については、コイル部品10の2つの側面(xy面、yz面)に露出している。特に限定されるものではないが、端子電極E1〜E8は厚膜めっき法によって形成され、その厚さはスパッタリング法やスクリーン印刷により形成される電極パターンよりも十分に厚い。
磁性樹脂層12は、積層構造体20を物理的に保護するとともに、第1〜第8の端子電極E1〜E8を固定・支持するものであり、第1〜第8の端子電極E1〜E8の周囲を埋め込むように設けられている。磁性樹脂層12の上面(xy面)は、第1〜第8の端子電極E1〜E8の上面(xy面)と同一平面を構成している。磁性樹脂層12の材料としては、複合フェライトを用いることが好ましい。磁性樹脂層12は高い磁気特性を有しており、磁性基板11と共に磁路を構成する。
図2はコイル部品10の略分解斜視図であり、特に、第1の実施形態による積層構造体20Aの構造を説明するための図である。
図2に示す積層構造体20Aは、磁性基板11側から磁性樹脂層12側に向かって順に積層された絶縁層31〜35を備えており、これら絶縁層31〜35間に4つの導体層M11〜M14が形成されている。絶縁層31〜35は例えば樹脂からなり、第1〜第4の導体層M11〜M14を互いに分離する役割を果たす。
絶縁層31の表面に形成される第1の導体層M11は、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43を含む。第1〜第3のスパイラルコイル41〜43は、第1のスパイラルコイル41が内周側、第3のスパイラルコイル43が外周側、第2のスパイラルコイル42がこれらの中間となるよう、互いに沿って同心円状に巻回されており、その巻回方向は、いずれも平面視で外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)である。第1のスパイラルコイル41の外周端41aは、接続導体51,61,71を介して第1の端子電極E1に接続される。第2のスパイラルコイル42の外周端42aは、接続導体52,62,72を介して第2の端子電極E2に接続される。第3のスパイラルコイル43の外周端43aは、接続導体53,63,73を介して第3の端子電極E3に接続される。
絶縁層32の表面に形成される第2の導体層M12は、第7のスパイラルコイル47と接続導体51〜53,81〜83を含む。第7のスパイラルコイル47は、平面視で、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の同一ターンを構成する導体と重なるスパイラル形状を有している。第7のスパイラルコイル47の巻回方向は、平面視で外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)である。詳細については後述するが、第7のスパイラルコイル47は、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の同一ターンを覆う導体幅を有しており、且つ、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43よりも導体厚が薄い。第7のスパイラルコイル47の外周端47aは、接続導体67,77を介して第7の端子電極E7に接続される。
絶縁層33の表面に形成される第3の導体層M13は、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46と、接続導体61〜63,67,68,84とを含む。第4〜第6のスパイラルコイル44〜46は、第4のスパイラルコイル44が内周側、第6のスパイラルコイル46が外周側、第5のスパイラルコイル45がこれらの中間となるよう、互いに沿って同心円状に巻回されており、その巻回方向は、いずれも平面視で外周端から内周端に向かって反時計回り(左回り)である。第4のスパイラルコイル44の外周端44aは、接続導体74を介して第4の端子電極E4に接続される。第5のスパイラルコイル45の外周端45aは、接続導体75を介して第5の端子電極E5に接続される。第6のスパイラルコイル46の外周端46aは、接続導体76を介して第6の端子電極E6に接続される。
絶縁層34の表面に形成される第4の導体層M14は、第8のスパイラルコイル48と接続導体71〜77を含む。第8のスパイラルコイル48は、平面視で、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46の同一ターンを構成する導体と重なるスパイラル形状を有している。第8のスパイラルコイル48の巻回方向は、平面視で外周端から内周端に向かって反時計回り(左回り)である。第8のスパイラルコイル48は、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46の同一ターンを覆う導体幅を有しており、且つ、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46よりも導体厚が薄い。第8のスパイラルコイル48の外周端48aは、第8の端子電極E8に接続される。
第1のスパイラルコイル41の内周端41bは、接続導体81を介して第4のスパイラルコイル44の内周端44bに接続される。これにより、第1のスパイラルコイル41と第4のスパイラルコイル44は、第1の端子電極E1と第4の端子電極E4との間に直列に接続された1つのインダクタ(L1)を構成する。
第2のスパイラルコイル42の内周端42bは、接続導体82を介して第5のスパイラルコイル45の内周端45bに接続される。これにより、第2のスパイラルコイル42と第5のスパイラルコイル45は、第2の端子電極E2と第5の端子電極E5との間に直列に接続された1つのインダクタ(L2)を構成する。
第3のスパイラルコイル43の内周端43bは、接続導体83を介して第6のスパイラルコイル46の内周端46bに接続される。これにより、第3のスパイラルコイル43と第6のスパイラルコイル46は、第3の端子電極E3と第6の端子電極E6との間に直列に接続された1つのインダクタ(L3)を構成する。
第7のスパイラルコイル47の内周端47bは、接続導体84を介して第8のスパイラルコイル48の内周端48bに接続される。これにより、第7のスパイラルコイル47と第8のスパイラルコイル48は、第7の端子電極E7と第8の端子電極E8との間に直列に接続された共通導体である1つのインダクタ(LG)を構成する。
図2に示すように、磁性樹脂層12は、第1〜第8の端子電極E1〜E8に対応する部分がくり抜かれた形状を有している。さらに、絶縁層31〜35にはそれぞれスルーホール31H〜35Hが設けられ、これらスルーホール31H〜35Hを埋めるよう、磁性樹脂層13が設けられている。磁性樹脂層13は磁性樹脂層12の一部であり、両者は一体的な構造を有している。
図2に示す例では、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43と第7のスパイラルコイル47が1セットの結合コイルを構成し、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46と第8のスパイラルコイル48が別の1セットの結合コイルを構成し、これら2つの結合コイルが直列に接続された構成を有している。しかしながら、結合コイルの数が2セットであることは必須でなく、1セットのみであっても構わないし、3セット以上であっても構わない。第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の巻回数は互いに等しく、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46の巻回数は互いに等しい必要があるが、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の巻回数と、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46の巻回数は互いに異なっていても構わない。
図3は、コイル部品10の等価回路図である。
図3に示すように、本実施形態によるコイル部品10は、3つのインダクタL1〜L3と1つのインダクタLGが磁気結合する回路を構成する。このうち、第1の端子電極E1と第4の端子電極E4との間に形成されるインダクタL1は、第1及び第4のスパイラルコイル41,44によって構成される。第2の端子電極E2と第5の端子電極E5との間に形成されるインダクタL2は、第2及び第5のスパイラルコイル42,45によって構成される。第3の端子電極E3と第6の端子電極E6との間に形成されるインダクタL3は、第3及び第6のスパイラルコイル43,46によって構成される。第7の端子電極E7と第8の端子電極E8との間に形成されるインダクタLGは、第7及び第8のスパイラルコイル47,48によって構成される。
かかる構成により、3つのインダクタL1〜L3は、インダクタLGを介して互いに磁気結合し、これにより3ラインのコモンモードフィルタ回路を構成する。
図4は、コイル部品10が搭載される回路基板2のパターン形状を説明するための模式的な平面図である。
図4に示す回路基板2は、コイル部品10が搭載される搭載領域10Aを有している。搭載領域10Aには、それぞれ第1〜第8の端子電極E1〜E8に対応する第1〜第8のランドパターンP1〜P8が設けられており、コイル部品10が搭載領域10Aに搭載されると、半田を介して、第1〜第8の端子電極E1〜E8と第1〜第8のランドパターンP1〜P8がそれぞれ電気的に接続される。
回路基板2には、それぞれ第1〜第6のランドパターンP1〜P6に接続された第1〜第6の信号配線D1〜D6と、第7及び第8のランドパターンP7,P8に接続されたグランド配線GNDとが設けられている。このうち、3ラインの信号配線D1〜D3は1セットの配線群S1を構成し、3ラインの信号配線D4〜D6も1セットの配線群S2を構成する。配線群S1は例えば入力側の配線群であり、配線群S2は例えば出力側の配線群である。各配線群S1,S2によって伝送される3信号は、2つの信号の電位差によってデータが表現される。例えば、配線群S1においては、信号配線D1のレベルと信号配線D2のレベルの大小関係、信号配線D1のレベルと信号配線D3のレベルの大小関係、並びに、信号配線D2のレベルと信号配線D3のレベルの大小関係によってデータが表現される。配線群S2においても同様である。したがって、この例では一度に3ビットのデータを伝送することができる。
そして、このような配線群S1と配線群S2との間に本実施形態によるコイル部品10を挿入することにより、3信号に重畳したコモンモードノイズを除去することができる。ここで、高い信号品質を得るためには、コイル部品10によって構成される3つのインダクタL1〜L3の伝送特性をできる限り一致させる必要がある。そのためには、3つのインダクタL1〜L3のそれぞれと、インダクタLGとの間における容量成分が互いに一致していることが好ましい。例えば、第1のスパイラルコイル41と第7のスパイラルコイル47の間の容量成分と、第2のスパイラルコイル42と第7のスパイラルコイル47の間の容量成分と、第3のスパイラルコイル43と第7のスパイラルコイル47の間の容量成分とがほぼ一致していることが望まれる。第4〜第6のスパイラルコイル44〜46と第8のスパイラルコイル48との間における容量成分についても同様である。
このような特性を実現すべく、本実施形態によるコイル部品10では、1セットの結合コイルを構成する4つのスパイラルコイルのうち、信号用である3つのスパイラルコイルを同じ配線層において同心円状に巻回するとともに、これら3つのスパイラルコイルの同一ターンを覆うように、グランド用のスパイラルコイルを別の配線層に形成している。
図5は、積層方向におけるスパイラルコイル41〜48の部分断面図である。
図5に示すように、第1層に位置する導体層M11においては、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43を構成する導体が互いに沿って同心円状に(3重に)巻回される。図5には各導体が何ターン目の導体であるかが示されており、例えばカッコ書きでiと表記されているのはiターン目の導体であることを意味し、カッコ書きでjと表記されているのはjターン目の導体であることを意味する。例えば、符号41(i)と表記されているのは、第1のスパイラルコイル41のiターン目を構成する導体であることを意味する。この点は、後述する図8〜図10、図12、図15〜図17においても同様である。尚、何ターン目であるかは例えば外周端からカウントすればよい。
第2層に位置する導体層M12においては、第7のスパイラルコイル47を構成する導体が平面視で、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の同一ターンを構成する導体を覆うように、積層方向に隣接して配置される。例えば、第7のスパイラルコイル47のiターンを構成する導体47(i)は、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43のiターンを構成する導体41(i)〜43(i)を覆う位置に配置される。
これにより、各ターンにおいて、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43のそれぞれと第7のスパイラルコイル47との関係が均一となる。このため、第1のスパイラルコイル41と第7のスパイラルコイル47との間の容量成分と、第2のスパイラルコイル42と第7のスパイラルコイル47と、第3のスパイラルコイル43と第7のスパイラルコイル47との間の容量成分がほぼ等しくなる。
第1〜第3のスパイラルコイル41〜43と第7のスパイラルコイル47との間における上記の関係は、iターン目だけでなく、各ターンにおいて成立する。全てのターンにおいて上記の関係が成立することが望ましいが、全てのターンにおいて上記の関係が成立することは必須でなく、所望の特性を満足する限り、一部のターンにおいて上記の関係が成立していなくても構わない。例えば、最外周の一部や最内周の一部など、導体の引き出し部分においては上記の関係を満足することがレイアウト上困難なケースがあるが、このような部分の存在は許容されるものと解釈すべきである。
第4〜第6のスパイラルコイル44〜46と第8のスパイラルコイル48との間における関係についても、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43と第7のスパイラルコイル47との間における上記関係と同じであることから、重複する説明は省略し、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43及び第7のスパイラルコイル47にのみ着目して説明する。
図5に示すように、第1のスパイラルコイル41の幅をW1とし、第2のスパイラルコイル42の幅をW2とし、第3のスパイラルコイル43の幅をW3とした場合、
W1=W2=W3
であることが好ましい。これによれば、信号用に用いられる第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の断面積が互いに一致することから、直流抵抗のばらつきを無くすことができる。
また、第1のスパイラルコイル41と第2のスパイラルコイル42との間隔をW01とし、第2のスパイラルコイル41と第3のスパイラルコイル43との間隔をW02とした場合、
W01=W02
であることが好ましい。図示しないが、第1のスパイラルコイル41のiターンと第3のスパイラルコイル43のi+1ターンとの間隔についても、間隔W01,W02と同じであることが好ましい。これによれば、第7のスパイラルコイル47を介さない、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43間における容量成分についても均一化することができる。
尚、本発明において、導体の「幅」とは、スパイラルコイルを構成する導体の積層方向における断面の辺であって、xy平面と平行な辺の長さを指す。また、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の厚み(高さ)はH1である。本発明において、導体の「厚み」又は「高さ」とは、スパイラルコイルを構成する導体の積層方向における断面の辺であって、z方向における辺の長さを指す。
また、第7のスパイラルコイル47を構成する導体の幅をW7とした場合、
W1+W2+W3<W7
であり、好ましくは、
W1+W2+W3+W01+W02≒W7
であって、第7のスパイラルコイル47の幅方向における中心は、第2のスパイラルコイル42の当該ターンの幅方向における中心と一致していることが好ましい。これによれば、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の同一ターンを構成する導体は、第7のスパイラルコイル47の当該ターンを構成する導体によってほぼ完全に覆われることになる。
さらに、第7のスパイラルコイル47の厚み(高さ)をH7とした場合、
H1>H7
であることが好ましい。これによれば、信号用に用いられる第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の直流抵抗を低減することができるとともに、積層構造体20Aの厚みを薄くすることができ、製品の低背化に寄与する。
次に、図2に示した積層構造体20Aの形成方法について説明する。
図6及び図7は、図2に示した積層構造体20Aの形成方法を説明するための工程図である。
まず、所定の厚さを持った焼結フェライトなどからなる磁性基板11を用意し、その上面に絶縁層31を形成する。次に、図6(a)に示すように、絶縁層31の上面に第1〜第3のスパイラルコイル41〜43及び接続導体40からなる導体層M11を形成する。これら導体の形成方法としては、スパッタリング法などの薄膜プロセスを用いて下地金属膜を形成した後、電解メッキ法を用いて所望の膜厚までメッキ成長させることが好ましい。以降に形成する他の導体の形成方法についても同様である。
次に、図6(b)に示すように、導体層M11を覆うように、絶縁層31の上面に絶縁層32を形成した後、絶縁層32にスルーホール32a〜32gを形成する。具体的には、スピンコート法によって樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィー法によって所定のパターンを形成することにより、スルーホール32a〜32gを有する絶縁層32を形成することができる。以降に形成する絶縁層の形成方法についても同様である。図6(b)に示すスルーホール32a〜32cは、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の外周端41a〜43aをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール32d〜32fは、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の内周端41b〜43bをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール32gは接続導体40を露出させる位置に形成される。
次に、図6(c)に示すように、絶縁層32の上面に第7のスパイラルコイル47及び接続導体51〜53,81〜83からなる導体層M12を形成する。図5を用いて説明したとおり、第7のスパイラルコイル47の各ターンを構成する導体は、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の同一ターンを構成する導体を覆う位置にアライメントされる。また、接続導体51〜53は、それぞれスルーホール32a〜32cに対応する位置に形成され、接続導体81〜83は、それぞれスルーホール32d〜32fに対応する位置に形成される。さらに、第7のスパイラルコイル47の外周端47aは、スルーホール32gに対応する位置に形成される。これにより、接続導体51は第1のスパイラルコイル41の外周端41aに接続され、接続導体52は第2のスパイラルコイル42の外周端42aに接続され、接続導体53は第3のスパイラルコイル43の外周端43aに接続される。また、接続導体81は第1のスパイラルコイル41の内周端41bに接続され、接続導体82は第2のスパイラルコイル42の内周端42bに接続され、接続導体83は第3のスパイラルコイル43の内周端43bに接続される。さらに、第7のスパイラルコイル47の外周端47aは、接続導体40に接続される。
次に、図6(d)に示すように、導体層M12を覆うように、絶縁層32の上面に絶縁層33を形成した後、絶縁層33にスルーホール33a〜33hを形成する。図6(d)に示すスルーホール33a〜33fは、それぞれ接続導体51〜53,81〜83を露出する位置に形成され、スルーホール33gは第7のスパイラルコイル47の外周端47aを露出させる位置に形成され、スルーホール33hは、第7のスパイラルコイル47の内周端47bを露出させる位置に形成される。
次に、図7(a)に示すように、絶縁層33の上面に第4〜第6のスパイラルコイル44〜46と、接続導体61〜63,67,68,84からなる導体層M13を形成する。第4〜第6のスパイラルコイル44〜46の内周端44b〜46bは、それぞれスルーホール33d〜33fに対応する位置に形成され、接続導体61〜63,67,84は、それぞれスルーホール33a,33b,33c,33g,33hに対応する位置に形成される。これにより、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46の内周端44b〜46bはそれぞれ接続導体81〜83に接続され、接続導体61〜63はそれぞれ接続導体51〜53に接続され、接続導体67は第7のスパイラルコイル47の外周端47aに接続され、接続導体84は第7のスパイラルコイル47の内周端47bに接続される。
次に、図7(b)に示すように、導体層M13を覆うように、絶縁層33の上面に絶縁層34を形成した後、絶縁層34にスルーホール34a〜34iを形成する。図7(b)に示すスルーホール34a,34b,34c,34g,34i,34hは、それぞれ接続導体61〜63,67,68,84を露出する位置に形成され、スルーホール34dは、第4のスパイラルコイル44の外周端44aを露出させる位置に形成され、スルーホール34eは、第5のスパイラルコイル45の外周端45aを露出させる位置に形成され、スルーホール34fは、第6のスパイラルコイル46の外周端46aを露出させる位置に形成される。
次に、図7(c)に示すように、絶縁層34の上面に第8のスパイラルコイル48及び接続導体71〜77からなる導体層M14を形成する。図5を用いて説明したとおり、第8のスパイラルコイル48の各ターンを構成する導体は、第4〜第6のスパイラルコイル44〜46の同一ターンを構成する導体を覆う位置にアライメントされる。また、第8のスパイラルコイル48の外周端48aはスルーホール34iに対応する位置に形成され、第8のスパイラルコイル48の内周端48bはスルーホール34hに対応する位置に形成され、接続導体71〜77は、それぞれスルーホール34a〜34gに対応する位置に形成される。これにより、第8のスパイラルコイル48の外周端48aは接続導体68に接続され、第8のスパイラルコイル48の内周端48bは接続導体84に接続され、接続導体74は第4のスパイラルコイル44の外周端44aに接続され、接続導体75は第5のスパイラルコイル45の外周端45aに接続され、接続導体76は第6のスパイラルコイル46の外周端46aに接続され、接続導体71〜73,77はそれぞれ接続導体61〜63,67に接続される。
次に、図7(d)に示すように、導体層M14を覆うように、絶縁層34の上面に絶縁層35を形成した後、絶縁層35にスルーホール35a〜35hを形成する。図7(d)に示す35a〜35gは、それぞれ接続導体71〜77を露出する位置に形成され、スルーホール35hは第8のスパイラルコイル48の外周端48aを露出させる位置に形成される。
次に、図7(e)に示すように、絶縁層35の表面に第1〜第8の端子電極E1〜E8を形成する。第1〜第8の端子電極E1〜E8の形成方法は、次の通りである。まず、接続導体71〜77及び第8のスパイラルコイル48の外周端48aが露出した絶縁層35の全面に、下地となるCu膜を無電解めっきにより形成する。その後、シートレジストを貼り付け、露光及び現像することにより、第1〜第8の端子電極E1〜E8を形成すべき領域にあるシートレジストを選択的に除去し、当該領域のCu膜を露出させる。そして、この状態で肉厚な第1〜第8の端子電極E1〜E8を電気めっきにより形成する。その後、シートレジストを除去し、全面をエッチングすることにより不要なCu膜を除去すれば、柱状である第1〜第8の端子電極E1〜E8が形成される。
次に、図7(f)に示すように、開口部36Hを有するイオンミリング用マスク36を形成し、この状態でイオンミリングを行う。これにより、絶縁層31〜35にスルーホール31H〜35Hが形成され、当該位置において磁性基板11が露出する。そして、複合フェライトのペーストを全面に形成し、硬化させれば、第1〜第8の端子電極E1〜E8の周囲を埋める磁性樹脂層12と、スルーホール31H〜35Hに埋め込まれた磁性樹脂層13が形成される。その後は、第1〜第8の端子電極E1〜E8上の不要な複合フェライトを除去すれば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品10は、3つのスパイラルコイル41〜43が1つのスパイラルコイル47を介して互いに結合し、3つのスパイラルコイル44〜46が1つのスパイラルコイル48を介して互いに結合している。そして、スパイラルコイル41〜43のそれぞれとスパイラルコイル47との関係がほぼ均一であり、且つ、スパイラルコイル44〜46のそれぞれとスパイラルコイル48との関係がほぼ均一であることから、信号用のインダクタL1〜L3がグランド用のインダクタLGを介して均一に磁気結合する。このため、3ラインを1セットとする伝送線路に本実施形態によるコイル部品10を挿入すれば、高い信号品質を確保しつつ、3信号に重畳するコモンモードノイズを除去することができる。
しかも、第1の実施形態による積層構造体20Aでは、1セットの結合コイルを構成する4つのスパイラルコイルのうち、3つのスパイラルコイル(例えばスパイラルコイル41〜43)を同じ導体層に形成し、1つのスパイラルコイル(例えばスパイラルコイル47)を別の導体層に形成していることから、導体層の数を少なくすることができる。これにより低背化を実現することが可能となるとともに、製造コストを低減することも可能となる。
尚、上述した第1の実施形態による積層構造体20Aでは、第7のスパイラルコイル47が平面視で第1〜第3のスパイラルコイル41〜43を覆う幅広形状を有しているが、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、所望の特性を満足する限り、第7のスパイラルコイル47の導体幅が第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の導体幅と同等であっても構わない。このような構造を有するいくつかの例を図8〜図10に示す。
図8に示す例では、第7のスパイラルコイル47が3つのスパイラルコイル47−1〜47−3に分割されている点において、上述した第1の実施形態による積層構造体20Aと相違する。第1の共通導体であるスパイラルコイル47−1の各ターンを構成する導体は、第1のスパイラルコイル41の同一ターンを構成する導体と平面視で重なり、第2の共通導体であるスパイラルコイル47−2の各ターンを構成する導体は、第2のスパイラルコイル42の同一ターンを構成する導体と平面視で重なり、第3の共通導体であるスパイラルコイル47−3の各ターンを構成する導体は、第3のスパイラルコイル43の同一ターンを構成する導体と平面視で重なる。このような構成によれば、並列接続された3つのインダクタによってインダクタLGが構成されるため、第1の実施形態による積層構造体20Aとは異なる特性が得られる。したがって、目的とする特性に応じて、このような構造を採用することも可能である。
図9に示す例では、第7のスパイラルコイル47が3つのスパイラルコイル47−1〜47−3に分割されているとともに、第2のスパイラルコイル42が第2の導体層M12に形成され、スパイラルコイル47−2が第1の配線層M11に形成されている点において、上述した第1の実施形態による積層構造体20Aと相違する。本例では、第2のスパイラルコイル42の膜厚をH2とした場合、
H1=H2
であることが好ましい。これによれば、信号用に用いられる第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の断面積が互いに一致することから、直流抵抗のばらつきを無くすことができる。
また、スパイラルコイル47−1の各ターンを構成する導体は、第1のスパイラルコイル41の同一ターンを構成する導体と平面視で重なり、スパイラルコイル47−2の各ターンを構成する導体は、第2のスパイラルコイル42の同一ターンを構成する導体と平面視で重なり、スパイラルコイル47−3の各ターンを構成する導体は、第3のスパイラルコイル43の同一ターンを構成する導体と平面視で重なる。このような構成によれば、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43の同一ターンが平面方向において直接隣接しないことから、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43間における容量成分の影響を低減することができる。
図10に示す例では、第2のスパイラルコイル42が第2の導体層M12に形成され、スパイラルコイル47が第2のスパイラルコイル42の同一ターンと重なるよう、第1の配線層M11に形成されている点において、上述した第1の実施形態による積層構造体20Aと相違する。換言すれば、図9に示す構成から、スパイラルコイル47−1,47−3を削除した構成を有している。このような構成であっても、第1〜第3のスパイラルコイル41〜43間における容量成分の影響を低減することができる。
尚、本実施形態においては、共通導体として第7及び第8のスパイラルコイル47,48を用いているが、共通導体がスパイラルコイル形状であることは必須でない。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11はコイル部品10の別の略分解斜視図であり、特に、第2の実施形態による積層構造体20Bの構造を説明するための図である。図11において、図2と同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
図11に示す積層構造体20Bにおいても、磁性基板11側から磁性樹脂層12側に向かって順に積層された絶縁層31〜35を備えており、これら絶縁層31〜35間に4つの導体層M21〜M24が形成されている。
絶縁層31の表面に形成される第1の導体層M21は、第1及び第4のスパイラルコイル91,94を含む。第1及び第4のスパイラルコイル91,94は、第1のスパイラルコイル91が外周側、第4のスパイラルコイル94が内周側となるよう、互いに沿って同心円状に巻回されており、その巻回方向は、いずれも平面視で外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)である。第1のスパイラルコイル91の外周端91aは、接続導体101,111,121を介して第1の端子電極E1に接続される。
絶縁層32の表面に形成される第2の導体層M22は、第2及び第5のスパイラルコイル92,95を含む。第2及び第5のスパイラルコイル92,95は、第2のスパイラルコイル92が外周側、第5のスパイラルコイル95が内周側となるよう、互いに沿って同心円状に巻回されており、その巻回方向は、いずれも平面視で外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)である。第2のスパイラルコイル92の外周端92aは、接続導体112,122を介して第2の端子電極E2に接続される。
絶縁層33の表面に形成される第3の導体層M23は、第3及び第6のスパイラルコイル93,96を含む。第3及び第6のスパイラルコイル93,96は、第3のスパイラルコイル93が外周側、第6のスパイラルコイル96が内周側となるよう、互いに沿って同心円状に巻回されており、その巻回方向は、いずれも平面視で外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)である。第3のスパイラルコイル93の外周端93aは、接続導体123を介して第3の端子電極E3に接続される。
第1のスパイラルコイル91の内周端91bは、接続導体134,144,154,164,124を介して第4の端子電極E4に接続される。これにより、第1のスパイラルコイル91は、第1の端子電極E1と第4の端子電極E4との間に接続されたインダクタ(L1)を構成する。
第2のスパイラルコイル92の内周端92bは、接続導体145,155,165,125を介して第5の端子電極E5に接続される。これにより、第2のスパイラルコイル92は、第2の端子電極E2と第5の端子電極E5との間に接続されたインダクタ(L2)を構成する。
第3のスパイラルコイル93の内周端93bは、接続導体156,166,126を介して第6の端子電極E6に接続される。これにより、第3のスパイラルコイル93は、第3の端子電極E3と第6の端子電極E6との間に接続されたインダクタ(L3)を構成する。
第4〜第6のスパイラルコイル94〜96の外周端94a〜96aは、接続導体127を介して第7の端子電極E7に共通に接続される。また、第4〜第6のスパイラルコイル94〜96の内周端94b〜96bは、接続導体158,168,128を介して第8の端子電極E8に共通に接続される。これにより、第4〜第6のスパイラルコイル94〜96は、第7の端子電極E7と第8の端子電極E8との間に並列に接続された共通導体である3つのインダクタ(LG)を構成する。
図11に示す例では、第1〜第6のスパイラルコイル91〜96が1セットの結合コイルを構成している。しかしながら、結合コイルの数が1セットであることは必須でなく、2セット以上であっても構わない。本実施形態においては、少なくとも第1〜第3のスパイラルコイル91〜93の巻回数は互いに等しい必要がある。
第2の実施形態による積層構造体20Bは、図2に示した第1の実施形態による積層構造体20Aとは異なり、1セットの結合コイルを構成する6つのスパイラルコイル91〜96のうち、信号用のスパイラルコイル91〜93がそれぞれ異なる導体層に形成されている。このため、コイル部品10の平面サイズを小型化することができる。或いは、1つの導体層に形成するスパイラルコイルの巻回数を多くするか、スパイラルコイルの導体幅を広くすることができる。
図12は、積層方向におけるスパイラルコイル91〜96の部分断面図である。
図12に示すように、第1層に位置する導体層M21においては、第1のスパイラルコイル91を構成する導体と、第1の共通導体である第4のスパイラルコイル94を構成する導体とが互いに沿って同心円状に(2重に)巻回され、その断面は交互に配置される。つまり、第1及び第4のスパイラルコイル91,94は平面方向に互いに隣接して配置される。第2層に位置する導体層M22においては、第2のスパイラルコイル92を構成する導体と、第2の共通導体である第5のスパイラルコイル95を構成する導体とが互いに沿って同心円状に(2重に)巻回され、その断面は交互に配置される。つまり、第2及び第5のスパイラルコイル92,95は平面方向に互いに隣接して配置される。第3層に位置する導体層M23においては、第3のスパイラルコイル93を構成する導体と、第3の共通導体である第6のスパイラルコイル96を構成する導体とが互いに沿って同心円状に(2重に)巻回され、その断面は交互に配置される。つまり、第3及び第6のスパイラルコイル93,96は平面方向に互いに隣接して配置される。
ここで、第1のスパイラルコイル91の導体幅をW11、導体厚をH11とし、第2のスパイラルコイル92の導体幅をW12、導体厚をH12とし、第3のスパイラルコイル93の導体幅をW13、導体厚をH13とした場合、
W11=W12=W13、且つ
H11=H12=H13
であることが好ましい。これによれば、第1〜第3のスパイラルコイル91〜93の直流抵抗を均一とすることができる。
また、第1のスパイラルコイル91と第4のスパイラルコイル94との間隔をW03とし、第2のスパイラルコイル92と第5のスパイラルコイル95との間隔をW04とし、第3のスパイラルコイル93と第6のスパイラルコイル96との間隔をW05とした場合、
W03=W04=W05
であることが好ましい。これによれば、信号用である第1〜第3のスパイラルコイル91〜93とグランド用である第4〜第6のスパイラルコイル94〜96との関係を均一化することができる。
さらに、第4のスパイラルコイル94の導体幅をW14とし、第5のスパイラルコイル95の導体幅をW15とし、第6のスパイラルコイル96の導体幅をW16とした場合、
W14=W15=W16
であることが好ましい。これによれば、
W03=W04=W05
という条件を満たすことが可能となる。
第1〜第3のスパイラルコイル91〜93の導体幅(W11,W12,W13)と、第4〜第6のスパイラルコイル94〜96の導体幅(W14,W15,W16)は互いに一致している必要はなく、第1〜第3のスパイラルコイル91〜93の導体幅(W11,W12,W13)をより太くしても構わない。
特に限定されるものではないが、本実施形態においては、第1〜第3のスパイラルコイル91〜93の同一ターンを構成する導体、例えば導体91(i),92(i),93(i)を平面視で互いに一致する位置に形成し、且つ、第4〜第6のスパイラルコイル94〜96の同一ターンを構成する導体、例えば導体94(i),95(i),96(i)を平面視で互いに一致する位置に形成している。
次に、図11に示した積層構造体20Bの形成方法について説明する。
図13及び図14は、図11に示した積層構造体20Bの形成方法を説明するための工程図である。
まず、所定の厚さを持った焼結フェライトなどからなる磁性基板11を用意し、その上面に絶縁層31を形成する。次に、図13(a)に示すように、絶縁層31の上面に第1及び第4のスパイラルコイル91,94と、接続導体171〜173からなる導体層M21を形成する。
次に、図13(b)に示すように、導体層M21を覆うように、絶縁層31の上面に絶縁層32を形成した後、絶縁層32にスルーホール32j〜32pを形成する。図13(b)に示すスルーホール32j,32kは、第1及び第4のスパイラルコイル91,94の外周端91a,94aをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール32l,32mは、第1及び第4のスパイラルコイル91,94の内周端91b,94bをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール32n〜32pは、接続導体171〜173をそれぞれ露出させる位置に形成される。
次に、図13(c)に示すように、絶縁層32の上面に第2及び第5のスパイラルコイル92,95と、接続導体101,103,133,134からなる導体層M22を形成する。第2のスパイラルコイル92の内周端92b、第5のスパイラルコイル95の外周端95a及び内周端95bは、それぞれスルーホール32n,32k,32mに対応する位置に形成され、接続導体101,103,133,134は、スルーホール32j,32p,32o,32lに対応する位置に形成される。これにより、第2のスパイラルコイル92の内周端92bは、接続導体171に接続される。また、第5のスパイラルコイル95の外周端95a及び内周端95bは、それぞれ第4のスパイラルコイル94の外周端94a及び内周端94bに接続される。さらに、接続導体101,134は、それぞれ第1のスパイラルコイル91の外周端91a及び内周端91bに接続され、接続導体103,133は、それぞれ接続導体173,172に接続される。
次に、図13(d)に示すように、導体層M22を覆うように、絶縁層32の上面に絶縁層33を形成した後、絶縁層33にスルーホール33j〜33qを形成する。図13(d)に示すスルーホール33q,33kは、第2及び第5のスパイラルコイル92,95の外周端92a,95aをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール33n,33mは、第2及び第5のスパイラルコイル92,95の内周端92b,95bをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール33j,33p,33o,33lは、接続導体101,103,133,134をそれぞれ露出させる位置に形成される。
次に、図14(a)に示すように、絶縁層33の上面に第3及び第6のスパイラルコイル93,96と、接続導体111,112,114,116,118,144,145からなる導体層M23を形成する。第3のスパイラルコイル93の外周端93a及び内周端93b、第6のスパイラルコイル96の外周端96a及び内周端96bは、それぞれスルーホール33p,33o,33k,33mに対応する位置に形成され、接続導体111,112,144,145は、スルーホール33j,33q,33l,33nに対応する位置に形成される。これにより、第3のスパイラルコイル93の外周端93a及び内周端93bは、それぞれ接続導体103,133に接続される。また、第6のスパイラルコイル96の外周端96a及び内周端96bは、それぞれ第5のスパイラルコイル95の外周端95a及び内周端95bに接続される。さらに、接続導体112,145は、それぞれ第2のスパイラルコイル92の外周端92a及び内周端92bに接続され、接続導体111,144は、それぞれ接続導体101,134に接続される。
次に、図14(b)に示すように、導体層M23を覆うように、絶縁層33の上面に絶縁層34を形成した後、絶縁層34にスルーホール34j〜34tを形成する。図14(b)に示すスルーホール34p,34kは、第3及び第6のスパイラルコイル93,96の外周端93a,96aをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール34o,34mは、第3及び第6のスパイラルコイル93,96の内周端93b,96bをそれぞれ露出させる位置に形成され、スルーホール34j,34q,34r,34s,34t,34l,34nは、接続導体111,112,114,116,118,144,145をそれぞれ露出させる位置に形成される。
次に、図14(c)に示すように、絶縁層34の上面に接続導体121〜128,154〜156,158,164〜166,168からなる導体層M24を形成する。ここで、接続導体164は、接続導体124,154間を接続するものであり、接続導体165は、接続導体125,155間を接続するものであり、接続導体166は、接続導体126,156間を接続するものであり、接続導体168は、接続導体128,158間を接続するものである。また、接続導体121〜124,126〜128,154〜156,158は、それぞれスルーホール34j,34q,34p,34r,34s,34k,34t,34l,34n,34o,34mに対応する位置に形成される。これにより、接続導体123,156は、それぞれ第3のスパイラルコイル93の外周端93a及び内周端93bに接続される。また、接続導体127,158は、それぞれ第6のスパイラルコイル96の外周端96a及び内周端96bに接続される。さらに、接続導体121,122,124,126,128,154,155は、それぞれ接続導体111,112,114,116,118,144,145に接続される。
その後の工程は、図7(d)〜(f)を用いて説明した工程と同じである。つまり、図14(d)に示すように、導体層M24を覆うように、絶縁層34の上面に絶縁層35を形成した後、絶縁層35にスルーホール35a〜35hを形成する。次に、図14(e)に示すように、絶縁層35の表面に第1〜第8の端子電極E1〜E8を形成する。さらに、図14(f)に示すように、開口部36Hを有するイオンミリング用マスク36を形成し、この状態でイオンミリングを行う。そして、複合フェライトのペーストを全面に形成し、硬化させれば、第1〜第8の端子電極E1〜E8の周囲を埋める磁性樹脂層12と、スルーホール31H〜35Hに埋め込まれた磁性樹脂層13が形成される。その後は、第1〜第8の端子電極E1〜E8上の不要な複合フェライトを除去すれば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品10は、3つのスパイラルコイル91〜93がそれぞれに対応する3つのスパイラルコイル94〜96を介して互いに結合している。そして、スパイラルコイル91〜93とスパイラルコイル94〜96との関係がほぼ均一であり、且つ、スパイラルコイル94〜96が短絡されていることから、3つのスパイラルコイル91〜93が互いにほぼ均一に結合する。このため、3ラインを1セットとする伝送線路に本実施形態によるコイル部品10を挿入すれば、高い信号品質を確保しつつ、3信号に重畳するコモンモードノイズを除去することができる。
しかも、第2の実施形態による積層構造体20Bでは、信号用のスパイラルコイル91〜93がそれぞれ異なる導体層M21〜M23に形成されていることから、各スパイラルコイルの巻回数を多くするか、或いは、導体幅を太くすることが可能となる。
以下、第2の実施形態による積層構造体20Bのいくつかの変形例を図15〜図17に示す。
図15に示す例では、第4〜第6のスパイラルコイル94〜96の同一ターンを構成する導体がスルーホール導体97,98を介して短絡されている。これにより、グランド用である3つのスパイラルコイル94〜96が1つのスパイラルコイルと等価になることから、第2の実施形態による積層構造体20Bとは異なる特性を得ることができる。したがって、目的とする特性に応じて、このような構造を採用することも可能である。
図16に示す例では、第1、第3及び第5のスパイラルコイル91,93,95の同一ターンを構成する導体が平面視で重なり、第2、第4及び第6のスパイラルコイル92,94,96の同一ターンを構成する導体が平面視で重なる。換言すれば、図12に示す構成から、第2のスパイラルコイル92と第5のスパイラルコイル95の位置を入れ替えた構成を有している。このような構成によれば、第1〜第3のスパイラルコイル91〜93が積層方向において直接隣接しないことから、第1〜第3のスパイラルコイル91〜93間における容量成分の影響を低減することができる。
図17に示す例は、図16に示す構成から、第4及び第6のスパイラルコイル94,96を削除した構成を有している。このような構成であっても、第1〜第3のスパイラルコイル91〜93間における容量成分の影響を低減することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、端子電極E1〜E8が磁性樹脂層12に埋め込まれたバンプ形状を有しているが、本発明において端子電極の形状や構造がこれに限定されるものではない。したがって、基体の表面に銀ペーストなどを焼き付けてなる端子電極を用いても構わないし、基体に端子金具を接着してなる端子電極を用いても構わない。
また、上述した実施形態では、グランド用に2つの端子電極E7,E8を用いているが、グランド用に2つの端子電極を用いることは必須でなく、1つの端子電極のみを用いても構わない。つまり、本発明によるコイル部品は7端子構成であっても構わない。
さらに、上述した実施形態では、グランド用の端子電極E7,E8をグランド配線に接続する例について説明したが、グランド配線の代わりに、所定の電位が供給される電源配線に端子電極E7,E8を接続しても構わない。