以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る立体造形装置の一例の概要について図1ないし図3を参照して説明する。図1は同立体造形装置の概略平面説明図、図2は同じく概略側面説明図、図3は同じく造形部の断面説明図である。なお、図3は造形時の状態で示している。
この立体造形物を造形する装置(立体造形装置という。)は、粉体積層造形装置であり、粉体(粉末)が結合された層状造形物である造形層30が形成される造形部1と、造形部1の層状に敷き詰められた粉体層31に対して造形液10を吐出付与して造形層30を造形する造形ユニット5とを備えている。
造形部1は、粉体槽11と、平坦化部材(リコータ)である回転体としての平坦化ローラ12などを備えている。なお、平坦化部材は、回転体に代えて、例えば板状部材(ブレード)とすることもできる。
粉体槽11は、造形槽22に供給する粉体20を保持する供給槽21と、造形層30が積層されて立体造形物が造形される造形槽22と、粉体層31を形成するときに平坦化ローラ12によって移送供給される粉体20のうち、粉体層31を形成しないで落下する余剰の粉体20を溜める余剰粉体受け槽29を有している。
供給槽21の底部は供給ステージ23として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。同様に、造形槽22の底部も造形ステージ24として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。造形ステージ24上に造形層30が積層された立体造形物が造形される。余剰粉体受け槽29は、底面に粉体20を吸引する機構を備えた構成や、造形槽22から簡単に取り外せるような構成としてもよい。
供給ステージ23は、後述するモータ27によって矢印Z方向(高さ方向)に昇降され、造形ステージ24は、同じく、モータ28によって矢印Z方向に昇降される。
平坦化ローラ12は、供給槽21の供給ステージ23上に供給された粉体20を造形槽22に移送して供給するとともに、平坦化手段である平坦化ローラ12によって供給した粉体の層の表面を均して平坦化して、粉体層31を形成する。
この平坦化ローラ12は、造形ステージ24のステージ面(粉体20が積載される面)に沿って矢印Y方向に、ステージ面に対して相対的に往復移動可能に配置され、後述する往復移動機構25によって移動される。また、平坦化ローラ12は、後述するモータ26によって回転駆動される。
一方、造形ユニット5は、造形ステージ24上の粉体層31に造形液10を吐出する液体吐出ユニット50を備えている。
液体吐出ユニット50は、キャリッジ51と、キャリッジ51に搭載された造形液付与手段である2つ(1又は3つ以上でもよい。)の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)52a、52bを備えている。
キャリッジ51は、ガイド部材54及び55に移動可能に保持されている。ガイド部材54及び55は、両側の側板70、70に昇降可能に保持されている。
このキャリッジ51は、後述するX方向走査機構550を構成するX方向走査モータによってプーリ及びベルトを介して主走査方向である矢印X方向(以下、単に「X方向」という。他のY、Zについても同様とする。)に往復移動される。
2つのヘッド52a、52b(以下、区別しないときは「ヘッド52」という。)は、造形液を吐出する複数のノズルを配列したノズル列がそれぞれ2列配置されている。一方のヘッド52aの2つのノズル列は、シアン造形液及びマゼンタ造形液を吐出する。他方のヘッド52bの2つのノズル列は、イエロー造形液及びブラック造形液をそれぞれ吐出する。なお、ヘッド構成はこれに限るものではなく、色材を含まない無色の造形液を用いてもよい。
これらのシアン造形液、マゼンタ造形液、イエロー造形液、ブラック造形液の各々を収容した複数のタンク60がタンク装着部56に装着され、供給チューブなどを介してヘッド52a、52bに供給される。
また、X方向の一方側には、液体吐出ユニット50のヘッド52の維持回復を行うメンテナンス機構61が配置されている。
メンテナンス機構61は、主にキャップ62とワイパ63で構成される。キャップ62をヘッド52のノズル面(ノズルが形成された面)に密着させ、ノズルから造形液を吸引する。ノズルに詰まった粉体の排出や高粘度化した造形液を排出するためである。その後、ノズルのメニスカス形成(ノズル内は負圧状態である)のため、ノズル面をワイパ63でワイピング(払拭)する。また、メンテナンス機構61は、造形液の吐出が行われない場合に、ヘッドのノズル面をキャップ62で覆い、粉体20がノズルに混入することや造形液10が乾燥することを防止する。
造形ユニット5は、ベース部材7上に配置されたガイド部材71に移動可能に保持されたスライダ部72を有し、造形ユニット5全体がX方向と直交するY方向(副走査方向)に往復移動可能である。この造形ユニット5は、後述するY方向走査機構552によって全体がY方向に往復移動される。
液体吐出ユニット50は、ガイド部材54、55とともに矢印Z方向に昇降可能に配置され、後述するZ方向昇降機構551によってZ方向に昇降される。
ここで、造形部1の詳細について説明する。
粉体槽11は、箱型形状をなし、供給槽21と造形槽22と、余剰粉体受け槽29の3つの上面が開放された槽を備えている。供給槽21内部には供給ステージ23が、造形槽22内部には造形ステージ24がそれぞれ昇降可能に配置される。
供給ステージ23の側面は供給槽21の内側面に接するように配置されている。造形ステージ24の側面は造形槽22の内側面に接するように配置されている。これらの供給ステージ23及び造形ステージ24の上面は水平に保たれている。
造形槽22の隣りには、造形槽22外に排出される余剰な粉体を受ける余剰粉体受け部29が配置されている。余剰粉体受け槽29は、ロート形状をなし、底部に粉体20を排出可能な排出口29aを有している。
余剰粉体受け槽29には、粉体層31を形成するときに平坦化ローラ12によって移送供給される粉体20のうちの余剰の粉体20が落下する。余剰粉体受け槽29に落下した余剰の粉体20は、例えば粉体回収再生装置を経由して、供給槽21に粉体を供給する後述する粉体供給装置554に戻される。
粉体供給装置554は供給槽21上に配置される。造形の初期動作時や供給槽21の粉体量が減少した場合に、粉体供給装置554を構成するタンク内の粉体を供給槽21に供給する。粉体供給のための粉体搬送方法としては、スクリューを利用したスクリューコンベア方式や、エアーを利用した空気輸送方式などが挙げられる。
平坦化ローラ12は、供給槽21から粉体20を造形槽22へと移送供給して、表面を均すことで平坦化して所定の厚みの層状の粉体である粉体層31を形成する。
この平坦化ローラ12は、造形槽22及び供給槽21の内寸(即ち、粉体が供される部分又は仕込まれている部分の幅)よりも長い棒状部材であり、往復移動機構によってステージ面に沿ってY方向(副走査方向)に往復移動される。
この平坦化ローラ12は、往復移動機構のモータによって回転されながら、供給槽21の外側から供給槽21及び造形槽22の上方を通過するようにして水平移動する。これにより、粉体20が造形槽22上へと移送供給され、平坦化ローラ12が造形槽22上を通過しながら粉体20を平坦化することで粉体層31が形成される。
また、図2にも示すように、平坦化ローラ12の周面に接触して、平坦化ローラ12に付着した粉体20を除去するための粉体除去部材である粉体除去板13が配置されている。
粉体除去板13は、平坦化ローラ12の周面に接触した状態で、平坦化ローラ12とともに移動する。また、粉体除去板13は、平坦化ローラ12が平坦化を行うときの回転方向に対してカウンタ方向でも、順方向でも配置が可能である。
次に、上記立体造形装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。図4は同制御部のブロック図である。
制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明に係わる制御を含む立体造形動作の制御を実行させるための本発明に係るプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、造形データ等を一時格納するRAM503とを含む主制御部500Aを備えている。
制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)504を備えている。また、制御部500は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505を備えている。
制御部500は、外部の造形データ作成装置600から造形データを受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/F506を備えている。
なお、造形データ作成装置600は、最終形態の造形物(立体造形物)を各造形層毎にスライスしたスライスデータである造形データを作成する本発明に係る立体造形物を造形するデータを作成する装置であり、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成されている。
制御部500は、各種センサの検知信号を取り込むためのI/O507を備えている。
制御部500は、液体吐出ユニット50のヘッド52を駆動制御するヘッド駆動制御部508を備えている。
制御部500は、液体吐出ユニット50のキャリッジ51をX方向(主走査方向)に移動させるX方向走査機構550を構成するモータを駆動するモータ駆動部510と、造形ユニット5をY方向(副走査方向)に移動させるY方向走査機構552を構成するモータを駆動するモータ駆動部512を備えている。
制御部500は、液体吐出ユニット50のキャリッジ51をZ方向に移動(昇降)させるZ方向昇降機構551を構成するモータを駆動するモータ駆動部511を備えている。なお、矢印Z方向への昇降は造形ユニット5全体を昇降させる構成とすることもできる。
制御部500は、供給ステージ23を昇降させるモータ27を駆動するモータ駆動部513と、造形ステージ24を昇降させるモータ28を駆動するモータ駆動部514を備えている。
制御部500は、平坦化ローラ12を移動させる往復移動機構25のモータ553を駆動するモータ駆動部515と、平坦化ローラ12を回転駆動するモータ26を駆動する516を備えている。
制御部500は、供給槽21に粉体20を供給する粉体供給装置554を駆動する供給系駆動部517と、液体吐出ユニット50のメンテナンス機構61を駆動するメンテナンス駆動部518を備えている。
制御部500は、粉体後供給部80から粉体20の供給を行わせる後供給駆動部519を備えている。
制御部500のI/O507には、装置の環境条件としての温度及び湿度を検出する温湿度センサ560などの検知信号やその他のセンサ類の検知信号が入力される。
制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル522が接続されている。
制御部500は、上述したように、造形データ作成装置600から造形データを受領する。造形データは、目的とする立体造形物の形状をスライスしたスライスデータとしての各造形層30の形状データ(造形データ)を含む。
そして、主制御部500Aは、造形層30の造形データに基づいてヘッド52からの造形液の吐出を行わせる制御をする。
なお、造形データ作成装置600と立体造形装置(粉体積層造形装置)601によって造形装置が構成される。
次に、造形の流れについて図5も参照して説明する。図5は造形の流れの説明に供する模式的説明図である。
ここでは、造形槽22の造形ステージ24上に、1層目の造形層30が形成されている状態から説明する。
この1層目の造形層30上に次の造形層30を形成するときには、図5(a)に示すように、供給槽21の供給ステージ23をZ1方向に上昇させ、造形槽22の造形ステージ24をZ2方向に下降させる。
このとき、造形槽22の粉体層31の表面(粉体面)の上面と平坦化ローラ12の下部(下方接線部)との間隔がΔt1となるように造形ステージ24の下降距離を設定する。の間隔Δt1が次に形成する粉体層31の厚さ(積層ピッチ)に相当する。間隔Δt1は、数十〜100μm程度であることが好ましい。
この場合、平坦化ローラ12は供給槽21及び造形槽22の上端面に対してギャップを置いて配置している。したがって、造形槽22に粉体20を移送供給して平坦化するとき、粉体層31の表面(粉体面)は供給槽21及び造形槽22の上端面よりも高い位置になる。
これにより、平坦化ローラ12が供給槽21及び造形槽22の上端面に接触することを確実に防止できて、平坦化ローラ12の損傷が低減する。平坦化ローラ12の表面が損傷すると粉体層31の表面にスジが発生して平坦性が低下する。
次いで、図5(b)に示すように、供給槽21の上面レベルよりも上方に位置する粉体20を、平坦化ローラ12を逆方向(矢印方向)に回転しながらY2方向(造形槽22側)に移動することで、粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。
さらに、図5(c)に示すように、平坦化ローラ12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させ、造形ステージ24の造形層30上で所定の厚さΔt1になる粉体層31を形成する(平坦化)。このとき、粉体層31の形成に使用されなかった余剰の粉体20は余剰粉体受け槽29に落下する。
粉体層31を形成後、平坦化ローラ12は、図5(d)に示すように、Y1方向に移動されて初期位置(原点位置)に戻される(復帰される)。
ここで、平坦化ローラ12は、造形槽22及び供給槽21の上面レベルとの距離を一定に保って移動できるようになっている。一定に保って移動できることで、平坦化ローラ12で粉体20を造形槽22の上へと搬送させつつ、造形槽22上又は既に形成された造形層30の上に均一厚さΔt1の粉体層31を形成できる。
その後、図5(e)に示すように、液体吐出ユニット50のヘッド52から造形液10の液滴を吐出して、次の粉体層31に所要形状の造形層30を積層形成する(造形)。
なお、造形層30は、例えば、ヘッド52から吐出された造形液10が粉体20と混合されることで、粉体20に含まれる接着剤が溶解し、溶解した接着剤同士が結合して粉体20が結合されることで形成される。
次いで、上述した粉体供給・平坦化よる粉体層31を形成する工程、ヘッド52による造形液吐出工程を繰り返して新たな造形層30を形成する。このとき、新たな造形層30とその下層の造形層30とは一体化して三次元形状造形物(立体造形物)の一部を構成する。
以後、粉体の供給・平坦化よる粉体層31を形成する工程、ヘッド52による造形液吐出工程を必要な回数繰り返すことによって、三次元形状造形物(立体造形物)を完成させる。
次に、本実施形態で使用している粉体(立体造形用粉末材料)及び造形液について説明する。
立体造形用粉末材料は、基材と、この基材を平均厚み5nm〜500nmで被覆し、造形液としての架橋剤含有水の作用により溶解し架橋可能な水溶性有機材料(バインダー)とを有してなる。
この立体造形用粉末材料においては、基材を被覆する水溶性有機材料が、架橋剤含有水の作用により溶解し架橋可能であるため、水溶性有機材料に架橋剤含有水が付与されると、水溶性有機材料は、溶解すると共に、架橋剤含有水に含まれる架橋剤の作用により架橋する。
これにより、上記立体造形用粉末材料を用いて薄層(粉体層31)を形成し、粉体層に架橋剤含有水を造形液として吐出することで、粉体層31においては、溶解した水溶性有機材料が架橋する結果、粉体層31が結合硬化して造形層30が形成される。
基材としては、粉末、粒子の形態を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高強度な立体造形物を得る観点からは、最終的に焼結処理が可能な金属、セラミックスなどが好ましい。
金属としては、Ni、Ni基合金、Cu、Cu基合金、Fe、Fe基合金、Ti、Ti基合金、Al、Al基合金、ステンレスなどが挙げられる。セラミックスとしては、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカ、炭化珪素、窒化ケイ素等が挙げられる。
水溶性有機材料としては、水に溶解し、架橋剤の作用により架橋可能な性質を有するものであれば、換言すれば、水溶性であって架橋剤によって架橋可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここでは、水溶性有機材料の水溶性は、例えば、30℃の水100gに水溶性有機材料を1g混合して撹拌したとき、その90質量%以上が溶解するものを意味する。
また、水溶性有機材料としては、その4質量%(w/w%)水溶液の20℃における粘度が、40mPa・s以下であるものが好ましく、1〜35Pa・sであるものがより好ましく、5〜30Pa・sであるものが特に好ましい。
水溶性有機材料の粘度は、例えば、JISK7117に準拠して測定することができる。
造形液である架橋剤含有水としては、水性媒体中に架橋剤を含有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、架橋剤含有水は、水性媒体、架橋剤のほか、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、架橋剤含有水を付与する手段の種類、使用頻度や量などの諸条件を考慮して適宜選択することができる。例えば、液体吐出法によって架橋剤含有水を付与する場合には、液体吐出ヘッドのノズルへの目詰り等の影響を考慮して選択することができる。
水性媒体としては、例えば、水、エタノール等のアルコール、エーテル、ケトン、などが挙げられるが、水が好ましい。なお、水性媒体は、水がアルコール等の水以外の成分を若干量含有するものであってもよい。
上述した立体造形物用粉末材料及び造形液としての架橋剤含有水を使用することで、粉体(基材)を接着させるためのバインダを液体吐出ヘッドから吐出する構成に比べて、ノズルの目詰まりが少なく、ヘッドの耐久性が向上する。
次に,粉体層に造形液の滴を吐出付与したときの様子について図6を参照して説明する。図6は同説明に供する説明図である。
図6は、300×300dpi(約85μm相当)のピッチで造形データを作成し,当該造形データに基づいて粉体層31に造形液10の滴100を吐出して着弾させたときの浸透状態を示している。
ここで,造形液10の滴100の滴量は、一層の粉体層31の厚さ、例えば100μmの深さにちょうど浸透する量(これを、「所定量」又は「通常の滴量」若しくは「通常の液体量」という。)としている。
なお、この通常の滴量は、実験的に求めることが可能である。すなわち、ガラス基板上に粉体20を100μmの厚さで敷き詰めておき、滴100を滴下する。このとき、滴下された面とは反対側の面から、カメラで観察することで、造形液10が100μmの厚さを浸透したか否かを判断することができる。滴量を変化させてこの実験を繰り返すことで、100μmの厚さを浸透する滴量を求めることができる。本実施形態で使用した造形液及び粉体については、実験の結果、一層の粉体層31の厚さを浸透する通常の滴量は約200pl/滴であった。
次に、造形する立体造形物の形状とパス数の関係について図7及び図8を参照して説明する。図7は最終造形物(目的とする立体造形物)の説明図、図8はパス数と粉体層の状態の説明に供する撮影結果を示す図である。
例えば、図7に示す立体造形物300を、第1層から第5層の造形層300A〜300Eを積層して造形するものとする。
この場合、第1層目の造形層300Aを造形するときには、下層に造形層がなく粉体20である領域(これを「新規造形領域30B」という。)のみである。なお、新規造形領域30Bを造形物で表現する場合には、「新規造形部分30b」又は「張り出し部30b」という。
第2層目の造形層300B、第3層目の造形層300Cを造形するときには、下層に第1層目の造形層300A、あるいは、第2層目の造形層300Bが造形されている。
第4層目の造形層300Dを造形するときには、下層に第3層目の造形層300Cが存在している領域(これを「既存造形領域30A」という。)と、下層に第3層目の造形層300Cがなく粉体20である新規造形領域30Bとがある。なお、既存造形領域30Aを造形物で表現する場合には、「既存造形部分30a」という。
第5層目の造形層300Eを造形するときには、下層に第4層目の造形層30Dが造形されている。
ここで、下層に造形層30がない状態、すなわち、上記の例では第1層目300Aを造形するとき、キャリッジ51の1回の走査(1パス)で、粉体層30上に所定量の造形液10を付与(吐出)した場合、粉体層31の表面(粉体面)の状態は図8(a)に示すようになる。
一方、同様に、下層に造形層30がない状態、すなわち、上記の例では第1層目300Aを造形するとき、キャリッジ51の4回の走査(4パス)で、粉体層30上に所定量の造形液10を付与(吐出)した場合、粉体層31の表面(粉体面)の状態は図8(b)に示すようになる。
なお、図8の領域Aが造形液10を付与した領域である。
つまり、1パスで所定量の造形液を付与した場合には、造形領域全体にほぼ同時に造形液が付与されるために、造形領域全体にわたってほぼ同時に液架橋力が働き、全体的に粉体20の粗密が発生し、造形精度が低下する。
これに対して、4パスで所定量の造形液を付与した場合には、各パス内においては液架橋力による粉体20の凝集が発生するが、隣り合うドット(この例では300×300dpi、すなわち、約84.65μmピッチで造形液を付与している)には同時に造形液が付与されないので、液架橋力の影響範囲は、各ドット内に限定される。その結果、全体として精度の高い造形物を得ることができる。
次に、4パスで所定量の造形液を付与する場合、つまり、所定量の造形液を4回に分けて付与する場合の付与順の一例について図9及び図10を参照して説明する。
図9に示すように、所定量の1滴で造形する領域を4つのブロック1〜4に分割する。このとき、1つのブロックは300×300dpiで造形するときには約84.65μmの升目となる。そして、ブロック1〜4に造形液を付与するとき、例えばブロック1→2→3→4の順に造形液を付与する。
上記の順で造形液を光沢紙上に着弾させた場合の様子の撮影結果を図10に示している。
このとき、各パスにおいて、隣り合うブロックには同時には造形液が付与されないので、液架橋力の影響範囲はそのブロック(升目)内に限定される。なお、液架橋力による粉体粒子の移動が発生する時間は、パス間の時間以内になるように、パス間隔時間を設定すればよい。
なお、ここでは、4パスの例で説明しているが、パス数はこれに限るものではない。粉体と造形液の物性で決まる液架橋力による粉体粒子の移動の度合いに応じたパス数を設定すればよい。
このように、第n層(nは1以上の整数、以下、同じである。)目の造形層を造形するとき、第(n−1)層目に造形層がない新規造形領域には造形液を複数回に分けて付与して造形する。言い換えれば、第n層(nは1以上の整数、以下、同じである。)目の造形層を造形するとき、第(n−1)層目に造形層がない新規造形部分(張り出し部)は造形液を複数回付与して造形する。
一方、パス数を増加することは造形時間が長くなることとなる。
そこで、第n層目の造形層を造形するとき、第(n−1)層目に造形層がある既存造形領域では、新規造形領域に造形液を付与する回数よりも少ない回数で造形液を付与する。言い換えれば、第n層目の造形層を造形するとき、第(n−1)層目に造形層がある既存造形部分は、新規造形領域に造形液を付与する回数よりも少ない回数で造形液を付与して造形する。なお、少ない回数は、少なくなるほど造形時間の増加を抑制できるので、本実施形態では1回(1パス)で造形液を付与する。
つまり、第(n−1)層目の造形物がある場合には、当該第(n−1)層目の領域に付与された造形液が第n層の粉体20を保持する効果を発現するため、第n層目の造形液の液架橋力による粉体粒子の移動が抑制される。これにより、新規造形領域に造形液を付与する回数よりも少ない回数、例えば、1パスで造形液を付与しても、精度低下が抑制される。
この場合、第n層目の既存造形領域については、新規造形領域に造形液を付与する複数回の内のいずれの回(パス)で造形液を付与してもよいが、本実施形態では、新規造形領域に造形液を付与する最後の回で造形液を付与するようにしている。
次に、本実施形態における立体造形動作の制御について図11のフロー図を参照して説明する。
造形データ作成装置600側から造形データを受領して造形動作を開始する。造形動作では、造形槽22に粉体層31を形成する。そして、当該第n層目の造形データを読み出し、下層の第(n−1)層の造形データと比較し、第n層目で造形する造形層30のうちの下層の第(n−1)層目の造形層30がない新規造形領域30Bを抽出する。
ここで、第n層目に造形する造形層30に新規造形領域30Bがあるか否を判別する。
このとき、第n層目に造形する造形層30に新規造形領域30Bがないとき、すなわち、すべての領域が既存造形領域30Aであるときには、第n層目の粉体層31に対して1パスで造形液10(滴100)を付与して造形層30を造形する。
これに対し、第n層目に造形する造形層30に新規造形領域30Bがあるときには、第n層目に造形する造形層30に既存造形領域30Aがあるか否かを判別する。
このとき、第n層目に造形する造形層30に既存造形領域30Aがないとき、すなわち、第n層目に造形する造形層30がすべて新規造形領域30であるとき(第1層目であるとき)には、第n層目の粉体層31に対して予め定めたNパス(N=2以上の整数)で、所定量の造形液10をN回に分けて付与して造形層30を造形する。なお、上記の説明ではN=4としている。
一方、第n層目に造形する造形層30に既存造形領域30Aがあるとき、すなわち、第n層目に造形する造形層30が新規造形領域30Bと既存造形領域30Aとを含むときには、まず、第n層目の粉体層31の新規造形領域30Bに対して(N−1)回のパスで、所定量の造形液10のうちの最後のN回目の量を除く造形液10付与する。
そして、N回目のパスで、新規造形領域30Bに対して残りの量の造形液10を付与し、既存造形領域30Aに対しては1回のパスで所定量の造形液10を付与して、第n層目の造形層30を完成する。
その後、次の層の造形データがあるか否かを判別し、次の層の造形データがあれば上記の処理を繰り返し、次の層の造形データがなくなれば、造形動作を終了する。
この立体造形動作の一例について図12を参照して具体的に説明する。図12は同説明に供する説明図である。
図12(a)に示すような形状の立体造形物701を造形するものとする。なお、便宜上、この立体造形物701の形状を特定するため、脚部701a、701aが架橋部701bで架橋されている形状とする。
まず、脚部701aの最初に造形する第1層目はすべて新規造形領域30Bであるので、図12(b)に示すように、4パス(4回に分けて)で所定量の造形液10を付与して造形する。
そして、脚部701aを構成する第2層目以降、架橋部701bの最初の層である第m層の下層である第(m−1)層までは、いずれも、すべて既存造形領域30Aであるので、図12(c)に示すように、1パスで所定量の造形液10を付与して造形する。
次いで、架橋部701bの最初の層である第m層は既存造形領域30A(脚部701aに積層する領域)と新規造形領域30B(脚部701aに積層する領域以外の領域)とが混在する。
そこで、図12(d)に示すように、新規造形領域30Bについて3パスに分けて造形液10を付与した後、4パス目で既存造形領域30Aを併せて、造形液10を付与して造形する。
そして、第m層より上の第(m+1)層以降は、いずれも、すべて既存造形領域30Aであるので、図12(e)に示すように、1パスで所定量の造形液10を付与して造形する。
つまり、第m層目では下層の第(m−1)層に造形層30が存在する領域は4パス目で所定量の造形液を付与する。つまり、1パスで描画(造形)しても精度の悪化を招かない領域については、1パスで描画をする。
これにより、複数回のパスで描画することで,各パス間で描画される領域の境界に生じることがある微細な空隙の発生を回避でき、造形密度を向上させる効果を得ることができる。
このようにして、造形精度を向上しつつ、生産性(造形速度)の低下を抑制することができる。
なお、本実施形態では第m層の既存造形領域30Aと新規造形領域30Bとで造形液付与の制御を異ならせているが、層ごとに造形液付与の制御を異ならせてもよい。具体的には、第(m−1)層目に前記層状造形物がない新規造形領域と前記層状造形物がある既存造形領域が混在する場合には、既存造形領域30Aと新規造形領域30Bの両方を含めて、第(m−1)層目に新規造形領域がない場合に前記造形液を付与する回数より多い回数で前記造形液を付与して造形する制御を行う。これにより同一層の中で異なる制御を行う必要がなく、制御を容易にすることができる。
次に、本発明の第2実施形態における立体造形動作の制御について図13及び図14を参照して説明する。図13は立体造形物の説明図、図14は同立体造形動作の制御の説明に供する説明図である。
図13(a)に示すような三角形状の立体造形物702のように斜めになる部分を有する造形物を造形する場合、図13(b)に示すように、斜めの部分に含まれる各造形層30には、常に新規造形領域30Bが発生する。
したがって、立体造形物702の造形を行うには、造形物全体にわたってN(N=4とする。)パスでの造形液付与によって造形することになるために,造形に時間がかかることになる。
そこで、本実施形態では、新規造形領域30Bの面積に応じてパス数を変化させる。例えば、新規造形領域30Bの面積が予め定めた閾値以上であるときには、Nパス(N≧2)で造形液を付与し、閾値未満であるときには、1パスで造形液を付与する。
具体的には、図14(a)に示すように、Y方向の長さが長く面積が広い場合には4パスで造形液を付与し、図14(b)に示すように、Y方向の長さが短く面積が狭い場合には1パスで造形液を付与する。
すなわち、新規造形領域の面積が小さい場合には、液架橋力による粉体粒子の移動が造形物全体の精度に与える影響が限定的であるため,1パスでの描画も可能となる。
そこで、新規造形領域の面積に応じてパス数を変化させることで、造形精度を向上しつつ、造形速度の低下を抑制する。
なお、上記各実施形態では、造形動作を行うときに第n層と第(n−1)層の造形データを比較して新規造形領域の抽出及び有無の判断などを行っているが、造形データ作成装置600側で造形データを作成するとき、第n層の造形データに新規造形領域を示すデータを付加した造形データを作成して転送するようにすることもできる。
次に、本発明の第3実施形態について図15を参照して説明する。図15は同実施形態における造形工程の説明に供する説明図である。
本実施形態では、第(n−1)層目の造形層30を造形しない非造形領域のうち、第n層目の造形物30の張り出し部30b(後述する図16(b)も参照)に対応する領域に間引きパターン(以下、「フレームパターン」とする。)35を造形する。なお、以下の実施形態では、主として、新規造形領域30Bに対応する張り出し部30bを使用して説明を行う。
つまり、前述した図7に示すような立体造形物300を造形するとき、図15(a)に示すように、第1層目の造形層300A、第2層目の造形層300Bを順次造形する。
その後、第(n−1)層である第3層目の造形層300Cを造形するとき、第n層目となる第4層目の造形層300Dには、第3層目の造形層300Cが存在しない張り出し部30bが存在する。
そこで、第3層目の造形層300Cを造形するとき、造形層300Cを造形しない非造形領域のうち、第4層目の造形層300Dの張り出し部30bが造形される領域に、予め定めたフレームパターン35を併せて造形する。フレームパターン35の造形は、網目状、ストライプ状(ライン状)、格子状などの一部を間引いたパターンでの造形や、通常の造形よりも吐出量を少なくして浸透を抑制したパターンでの造形が用いられる。
その後、図15(b)に示すように、第4層目の造形層300D用の粉体層を形成し、図15(c)に示すように、第4層目の造形層300Dを造形する。
なお、上記では説明を省略したが、第1層目はすべて張り出し部30bであるので、第1層の前に、第0層(n=1の場合)として、造形層300Aと同じ領域にフレームパターンを造形することが好ましい。
次に、第n層目の造形について図16を参照して説明する。図16は同説明に供する平面説明図である。
図16(a)に示すように、第(n−1)層目の造形層30を造形するとき、所定量の造形液10を付与して造形層30を造形するとともに、第(n−1)層目の造形層30を造形しない非造形領域のうち、第n層目で張り出し部30bが造形される領域にも造形液10を付与してフレームパターン35を造形する。フレームパターン35を造形するときには、造形層30を造形するときの滴量よりも少ない滴量で造形液10を付与することができる。
次いで、図16(b)に示すように、第n層目の造形層30を造形する。このとき、フレームパターン35が造形されている張り出し部30bについては、張り出し部30b以外の既存造形部分30aを造形するときよりも造形液10の滴量を多くしている。
その後、図16(c)に示すように、第(n+1)層目以降の造形層30を造形する。
次に、本実施形態における造形液の浸透メカニズムについて図17を参照して説明する。図17は同説明に供する断面説明図である。また、比較例について図18に示している。
まず、比較例は、図18(a)に示すように、第n層目の張り出し部30bに相当する第(n−1)層の非造形領域にフレームパターンを造形していない。
この状態で、図18(b)に示すように、第n層目の造形層30を造形するために張り出し部30bに対応する領域(新規造形領域)に造形液10を付与した場合、積層されている粉体20が造形液10の付与により著しく凝集し、また、浸透を阻害するものがないためz方向(積層方向)への浸透が進み、第(n−1)層まで到達することがある。
そのため、第n層目の造形層30のうちの張り出し部30bの表面の平坦性が損なわれ、内部には空隙800が生じて密度が低下する。
これに対し、本実施形態においては、図17(a)に示すように、第n層目の張り出し部30bが造形される新規造形領域に対応する第(n−1)層目の非造形領域にフレームパターン35を造形し、フレームパターン35の形状に粉体20を凝集、固化させる。
この状態で、図17(b)に示すように、第n層目の造形層30を造形するために張り出し部30bの新規造形領域に造形液10を付与した場合、フレームパターン35によって第n層目に積層される粉体20を動きづらくするだけでなく、造形液10の浸透を抑制する。
これにより、第n層目の造形層30の張り出し部30bの表面の平坦性を確保することができる。
ここで、第n層目の張り出し部30bを造形するときに付与する造形液10の滴量を、張り出し部30b以外の既存造形部分30bを造形するときに付与する造形液10の液量よりも多くすることで、第n層目の粉体面に造形液10がわずかに残る状態を形成する。
これにより、早期に濡れ部を形成することができ、次の第(n+1)層目以降には造形液10が付着した部分に粉体20が供給されるようになり、下部からも粉体20の空隙に造形液10が浸透することで、密度を確保することができる。
次に、本実施形態における造形データの作成処理について図19のフロー図を参照して説明する。
この造形データの作成処理は造形データ作成装置600側で行っている。
第n層目のスライスデータを取得し、第(n−1)層目のスライスデータを取得して第n層目のスライスデータと比較し、第n層目に張り出し部30bがあるか否かを判別する。
そして、第n層目に張り出し部30bがあるときには、第(n−1)層目の造形データに、第n層目の張り出し部30bを造形する新規造形領域に対応する領域にフレームパターン35のデータを追加する。
これに対し、第n層目に張り出し部30bがないときには、第(n−1)層目の造形データはそのままとして修正を行わない。
そして、第n層が最終層か否かを判別して、最終層でなければ「n」をインクリメントして上記の処理を繰り返し、最終層であれば、すべてのスライスデータを再統合して、粉体積層造形装置601側に転送する。
次に、本実施形態における立体造形動作の制御について図20のフロー図を参照して説明する。
まず、第n層目の造形層30の造形データを読み込み、第n層目に張り出し部30bがあるか否かを判別する。
そして、張り出し部30bがあるときには、張り出し部30b以外の領域(既存造形領域)30aでは所定量の造形液10を付与し、張り出し部30bには所定量より多い造形液10を付与して、造形層30を造形する。
これに対し、張り出し部30bがないときには、所定量の造形液10を付与して造形層30を造形する。
第n層が最終層になるまで造形層30の造形を繰り返し、すべての造形層を造形したときに立体造形動作を終了する。
なお、ここでは、処理を省略したが、造形データを読み込んだ第n層目に張り出し部30bがあるときの第(n−1)層目の造形処理においては、当該第(n−1)層目の造形データにはフレームパターン30の造形データが含まれていることになるので、所定量の造形液10を付与してフレームパターン30を造形する。
次に、本発明の第4実施形態について図21を参照して説明する。図21は同実施形態における造形工程の説明に供するフロー図である。
本実施形態では、第n層目で造形する造形層30に張り出し部30bがあるとき、ヘッド52の往路移動で、張り出し部30bを造形する新規造形領域30Bにフレームパターン35を造形して、それ以外の既存造形領域30Aには所定量の造形液10を付与し、既存造形部分30aを造形する。
そして、ヘッド52の復路移動で、フレームパターン35を造形した新規造形領域30Bのみに所要量以上の造形液10を付与して張り出し部30bを造形して、造形層30を完成する。
つまり、前述した図7に示すような立体造形物300を造形するとき、図21(a)に示すように、第1層目の造形層300A、第2層目の造形層300B、第3層目の造形層300Cを順次造形し、第n層となる第4層目の造形層30用の粉体層31を形成する。
第n層となる第4層目の造形層300Dには下層の第(n−1)層目である第3層目の造形層300Cが存在しない張り出し部30bが存在する。
そこで、図21(b)に示すように、ヘッド52の往路では、張り出し部30bを造形する領域にはフレームパターン35を造形し、それ以外の領域には所定量の造形液10を付与して造形層300Dの既存造形部分30aを造形する。
その後、図21(c)に示すように、ヘッド52の復路で、フレームパターン35を造形した領域に所定量又は所定量より多い量の造形液10を付与し、張り出し部30bを造形し、造形層300Dを完成する。
次に、第n層の造形について図22を参照して説明する。図22は同説明に供する平面説明図である。
第n層目の造形層30を造形するとき、ヘッド52の往路で、図22(a)に示すように、造形層30のうちの張り出し部30bとなる領域にはフレームパターン35を造形し、その他の既存造形領域には所定量の造形液10を付与して既存造形部分30aを造形する。
次いで、ヘッド52の復路で、図22(b)に示すように、造形層30のうちの張り出し部30bを造形した領域に所定量あるいは所定量より多い量の造形液10を付与して、張り出し部30bを造形し、第n層目の造形層30を完成する。
その後、図22(c)に示すように、第(n+1)層目の造形層30を造形する。
次に、本実施形態における造形液の浸透メカニズムについて図23を参照して説明する。図23は同説明に供する断面説明図である。なお、比較例は前記第3実施形態で説明したとおりである。
本実施形態においては、図23(a)に示すように、第n層目の造形層30を造形するときに、往路で張り出し部30bの領域にフレームパターン35を造形し、フレームパターン35の形状に粉体20を凝集、固化させる。
この状態で、図23(b)に示すように、復路でフレームパターン35上に所要量以上の造形液10を付与した場合、フレームパターン35によって第n層目の粉体20を動きづらくするだけでなく、造形液10の浸透を抑制する。
これにより、第n層目の造形層30の張り出し部30bの表面の平坦性を確保することができる。
ここで、第n層目の張り出し部30bに付与する造形液10の滴量を張り出し部30b以外の既存造形部分30aを造形するときよりも多くすることで、第n層目の粉体面に造形液10がわずかに残る状態を形成する。
これにより、早期に濡れ部を形成することができ、次の第(n+1)層目以降には造形液10が付着した部分に粉体20が供給されるようになり、下部からも粉体20の空隙に造形液10が浸透することで、密度を確保することができる。
次に、本実施形態における立体造形動作の制御について図24のフロー図を参照して説明する。
まず、第n層目の造形層30の造形データを読み込み、第n層目に張り出し部30bがあるか否かを判別する。
そして、第n層の造形層30に張り出し部35bがあるときには、ヘッド52を往路移動するときに、張り出し部30bに対応する領域にフレームパターン35を造形し、それ以外の既存造形領域には所定量の造形液10を付与して既存造形部分30aを造形する。
その後、ヘッド52を復路移動して、フレームパターン35上に造形液10を付与して、張り出し部30bを造形し、造形層30を完成する。
また、第n層の造形層30に張り出し部30bがないときには、ヘッド52の往路移動で所定量の造形液10を付与して造形層30を造形する。
すべての造形層を造形したときに立体造形動作を終了する。
次に、本発明の第5実施形態について図25を参照して説明する。図25は同実施形態における造形工程の説明に供する説明図である。
本実施形態では、第n層目で造形する造形層30に張り出し部30bがあるとき、ヘッド52の往路移動で、張り出し部30b(後述する図26(b)も参照)を造形する新規造形領域30Bにフレームパターン35を造形する。
そして、ヘッド52の復路移動で、フレームパターン35の領域も含めて造形液10を付与して造形層30を造形する。
つまり、前述した図7に示すような立体造形物300を造形するとき、図25(a)に示すように、第1層目の造形層300A、第2層目の造形層300B、第3層目の造形層300Cを順次造形し、第n層となる第4層目の造形層300D用の粉体層31を形成する。
第n層となる第4層目の造形層300Dには下層の第(n−1)層目である第3層目の造形層300Cが存在しない張り出し部30bが存在する。
そこで、図25(b)に示すように、ヘッド52の往路では、張り出し部30bの領域にフレームパターン35を造形する。それ以外の既存造形領域には造形液10を付与しない。
その後、図25(c)に示すように、ヘッド52の復路で、フレームパターン35の領域を含めて全体に所定量又は所定量より多い量の造形液10を付与し、造形層300Dを完成する。
次に、第n層の造形について図26を参照して説明する。図26は同説明に供する平面説明図である。
第n層目の造形層30を造形するとき、ヘッド52の往路で、図26(a)に示すように、造形層30のうちの張り出し部30bとなる領域にフレームパターン35を造形し、その他の既存造形領域には造形液10を付与しない。
次いで、ヘッド52の復路で、図26(b)に示すように、造形層30に対応するすべての領域に所定量の造形液10を付与して造形層30を完成する。
その後、図26(c)に示すように、第(n+1)層目を造形する。
次に、本実施形態における立体造形動作の制御について図27のフロー図を参照して説明する。
まず、第n層目の造形層30の造形データを読み込み、第n層目に張り出し部30bがあるか否かを判別する。
そして、第n層の造形層30に張り出し部30bがあるときには、ヘッド52を往路移動するときに、張り出し部30bを造形する領域にフレームパターン35を造形し、それ以外の既存造形部分30aを造形する領域には造形液10を付与しない。
その後、ヘッド52を復路移動して、フレームパターン35の領域を含めて造形層30のすべての領域に造形液10を付与して、造形層30を完成する。
また、第n層の造形層30に張り出し部30bがないときには、ヘッド52の往路移動で所定量の造形液10を付与して造形層30を造形する。
すべての造形層を造形したときに立体造形動作を終了する。
上記第4実施形態及び第5実施形態では、造形データ作成装置600は、連続する第n層(nは1以上の整数)目の層状造形物のスライスデータと第(n−1)層目の層状造形物のスライスデータとを比較し、比較結果に基づいて、第n層目の層状造形物の造形データとともに、第n層目の造形データとして新規造形領域にフレームパターンを造形する造形データを作成することもできる。
この場合、粉体積層造形装置601側で、第n層目の層状造形物の造形データと、第n層目のフレームパターンの造形データを使用して、前述したように、往路及び復路での造形を行えばよい。
なお、上記実施形態では、供給槽と造形槽の2層構造の立体造形装置で説明したが、造形槽の1層構造とし、造形槽に直接粉体を供給してブレードやローラなどの平坦化手段で平坦化する構成の立体造形装置にも本発明を適用することができる。