以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る立体造形装置の一例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は同装置の要部斜視説明図、図2は同じく造形部の断面説明図、図3は吐出ヘッドユニットによる造形時の平面説明図である。なお、図2は1層の造形層が形成された上に1層の粉体層が形成された状態で示している。
この立体造形装置は、粉体積層造形装置であり、粉体が結合された造形層が形成される造形部1と、造形部1に造形液の液滴を吐出して立体造形物を造形する造形手段としての造形ユニット5とを備えている。
造形部1は、粉体槽11と、平坦化手段としての回転体である平坦化ローラ(リコータローラとも称される)12などを備えている。
粉体槽11は、粉体20が供給されて、造形物が造形される造形槽22を有している。造形槽22の底部は造形ステージ24として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。造形ステージ24上に造形物が造形される。
なお、粉体槽11は、造形槽22とともに、造形層に粉体20を供給する供給槽を有する二槽構成とすることもできる。この場合には粉体供給装置から供給槽に粉体が供給され、平坦化ローラ12が供給槽から造形槽22にまで回転しながら移動することで、粉体の造形槽22への移送と平坦化を行う。
平坦化ローラ12は、造形ステージ24のステージ面(粉体20が積載される面)に沿う方向にステージ面に対して相対的に往復移動可能であり、造形槽22に供給された粉体20を平坦化して粉体層31を形成する。
造形ユニット5は、造形ステージ24上の粉体層に造形液を吐出する1又は複数の液体吐出ヘッド(以下「ヘッド」という。)50を有する吐出ヘッドユニット51を備えている。
吐出ヘッドユニット51には、例えばシアン造形液を吐出するヘッド、マゼンタ造形液を吐出するヘッド、イエロー造形液を吐出するヘッド、ブラック造形液を吐出するヘッド、及びクリア造形液を吐出するヘッドを備える。
なお、造形ユニット5には、吐出ヘッドユニット51をクリーニングするヘッドクリーニング機構なども備えている。
ヘッドクリーニング機構(装置)は、主にキャップとワイパで構成される。キャップをヘッド下方のノズル面に密着させ、ノズルから造形液を吸引する。ノズルに詰まった粉体の排出や高粘度化した造形液を排出するためである。その後、ノズルのメニスカス形成(ノズル内は負圧状態である)のため、ノズル面をワイピング(払拭)する。また、ヘッドクリーニング機構は、造形液の吐出が行われない場合に、ヘッドのノズル面を覆い、粉体がノズルに混入することや造形液が乾燥することを防止する。
ここで、吐出ヘッドユニット51は、ガイド部材54、55で第1の方向である矢印X方向(これを「主走査方向」とする。)に往復移動可能に支持される。
造形ユニット5は、第1の方向と直交する第2の方向である矢印Y方向(これを「副走査方向」とする。)に往復移動可能である。
吐出ヘッドユニット51は、高さ方向である矢印Z方向に昇降可能に設けられている。吐出ヘッドユニット51を昇降させることで、ヘッド50の吐出面50nと造形槽22の粉体面20aとの間隔(ギャップ)を変化させることができる。
吐出ヘッドユニット51の高さ(ヘッド50の高さ)を調整する高さ調整機構60は、吐出ヘッドユニット51を支持するガイド部材54、55の各軸部が偏心して取り付けられる調整板61、62と、調整板61、62を連動させるリンク機構63とを有する。
そして、調整板61に連結された操作部材64を、Z方向昇降モータ552によって伝達機構552Aを介して駆動することで、調整板61が回転してガイド部材54、55の高さが変化し、吐出ヘッドユニット51の高さが変化する。これにより、ヘッド50の吐出面50nと造形槽22の粉体面20aとの間隔(ギャップ)を調整できる。
次に、立体造形装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。図4は同制御部を示すブロック図である。
制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ(印刷データ)等を一時格納するRAM503とを含む主制御部500Aを備えている。
制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)504を備えている。また、制御部500は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505を備えている。
制御部500は、造形データ作成装置600から造形データを受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/F506を備えている。なお、造形データ作成装置600は、最終形態の造形物を各造形層にスライスした造形データを作成する装置であり、本発明に係るプログラムを含むパーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成されている。
制御部500は、各種センサの検知信号を取り込むためのI/O507を備えている。
制御部500は、吐出ヘッドユニット51の各ヘッドを駆動制御するヘッド駆動制御部508を備えている。
制御部500は、吐出ヘッドユニット51を矢印X方向に移動させるX方向走査モータ550を駆動するモータ駆動部510と、造形ユニット5を矢印Y方向に移動させるY方向走査モータ551を駆動するモータ駆動部511を備えている。
制御部500は、吐出ヘッドユニット51を矢印Z方向に移動(昇降)させるZ方向昇降モータ552を駆動するモータ駆動部512を備えている。なお、矢印Z方向への昇降は造形ユニット5全体を昇降させる構成とすることもでき、造形ユニット5全体を昇降させることで吐出ヘッドユニット51のヘッド50の高さを変化できる。
制御部500は、造形ステージ24を昇降させるモータ553を駆動するモータ駆動部514を備えている。
制御部500は、平坦化ローラ12を移動させるモータ554を駆動するモータ駆動部515と、平坦化ローラ12を回転駆動するモータ555を駆動する516を備えている。
制御部500は、造形槽22に粉体20を供給する粉体供給装置556を駆動する供給系駆動部517と、吐出ヘッドユニット51をクリーニング(メンテナンス、維持回復)するクリーニング装置557を駆動するクリーニング駆動部518を備えている。
制御部500のI/O507には、環境条件としての温度及び湿度を検出する温湿度センサ560からの検知信号などが入力される。
制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル522が接続されている。
主制御部500Aは、退避制御手段を兼ねており、ROM502に格納されたプログラムに従って、吐出ヘッドユニット51のヘッド50を上昇させて、ヘッド50と造形槽22の粉体面(粉体層31の表面)との間隔を、液滴を吐出させるときよりも広くする退避動作を制御する。
次に、造形の流れについて図5も参照して説明する。図5は造形の流れの説明に供する造形部の模式的断面説明図である。
図5(a)に示すように、造形槽22の造形ステージ24上に供給された粉体20に吐出ヘッドユニット51のヘッド50から造形液10の液滴を吐出して造形層30を形成する。
このとき、吐出ヘッドユニット51を主走査方向に移動させて1スキャン分(1走査領域分)の造形を行い、その後、造形ユニット5を副走査方向(Y1方向)に1スキャン分移動させ、次の1走査領域分の造形を行うことを繰り返して、1層分造形層30を造形する。なお、1層分造形層30を造形後に造形ユニット5は図5(b)に示すように副走査方向上流側まで戻される。
その後、図5(b)に示すように、造形層30上に次の造形層30を形成するために造形槽22の造形ステージ24を1層分の厚み分だけ矢印Z1方向に下降させる。
そして、造形槽22に粉体供給装置556から粉体20を供給する。
次いで、平坦化ローラ12を回転しながら造形槽22の造形ステージ24のステージ面に沿ってY2方向に移動させ、造形ステージ24の造形層30上で所定の厚さになる粉体層31を形成する(平坦化)。
そして、吐出ヘッドユニット51のヘッド50から造形液10の液滴を吐出して次の造形層30を形成する。
このように、粉体層31の形成と造形液10の吐出による粉体20の固化とを繰り返して造形層30を順次積層して立体造形物を造形する。
次に、本発明で使用している立体造形用粉末材料(粉体)及び造形液について説明する。
立体造形用粉末材料は、基材と、この基材を平均厚み5nm〜500nmで被覆し、造形液としての架橋剤含有水の作用により溶解し架橋可能な水溶性有機材料とを有してなる。
この立体造形用粉末材料においては、基材を被覆する水溶性有機材料が、架橋剤含有水の作用により溶解し架橋可能であるため、水溶性有機材料に架橋剤含有水が付与されると、水溶性有機材料は、溶解すると共に、架橋剤含有水に含まれる架橋剤の作用により架橋する。
これにより、上記立体造形用粉末材料を用いて薄層(粉体層)を形成し、粉体層に架橋剤含有水を造形液10として吐出することで、粉体層においては、溶解した水溶性有機材料が架橋する結果、粉体層が結合硬化して造形層30が形成される。
このとき、基材を被覆する水溶性有機材料の被覆量が平均厚みで5nm〜500nmであるため、水溶性有機材料が溶解したときに基材の周囲に必要最小量だけ存在し、これが架橋して三次元ネットワークを形成するため、粉体層の硬化は寸法精度良く、かつ、良好な強度をもって行われる。
この操作を繰り返すことにより、簡便かつ効率的に、焼結等の前に型崩れが生ずることなく、寸法精度良く複雑な立体造形物を形成することができる。
このようにして得られた立体造形物は、良好な硬度を有するため、手で持ったり、エアーブロー処理をして余分な立体造形用粉末材料の除去等を行っても、型崩れが生ずることがなく、その後に焼結等を簡便に行うことができる。
そして、上記のようにして形成された立体造形物においては、基材が密に(高充填率で)存在し、水溶性有機材料は基材どうしの周囲に極僅かだけ存在するため、その後に焼結等して成形体(立体造形物)を得たとき、得られた成形体に不要な空隙等は存在せず、外観の美麗な成形体(立体造形物)が得られる。
−基材−
基材としては、粉末ないし粒子の形態を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。その材質としては、例えば、金属、セラミックス、カーボン、ポリマー、木材、生体親和材料、などが挙げられるが、高強度な立体造形物を得る観点からは、最終的に焼結処理が可能な金属、セラミックスなどが好ましい。
金属としては、例えば、ステンレス(SUS)鋼、鉄、銅、チタン、銀などが好適に挙げられ、該ステンレス(SUS)鋼としては、例えば、SUS316Lなどが挙げられる。
セラミックスとしては、例えば、金属酸化物などが挙げられ、具体的には、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)などが挙げられる。
カーボンとしては、例えば、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレンなどが挙げられる。
ポリマーとしては、例えば、水に不溶な公知の樹脂などが挙げられる。
木材としては、例えば、ウッドチップ、セルロースなどが挙げられる。
生体親和材料としては、例えば、ポリ乳酸、リン酸カルシウムなどが挙げられる。
これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明においては、基材として、これらの材料で形成された市販品の粒子ないし粉末を使用することができる。市販品としては、例えば、SUS316L(山陽特殊鋼製、PSS316L)、SiO2(トクヤマ製、エクセリカSE−15)、AlO2(大明化学工業製、タイミクロンTM−5D)、ZrO2(東ソー製、TZ−B53)などが挙げられる。
また、基材としては、水溶性有機材料との親和性を高める目的等で、公知の表面(改質)処理がされていてもよい。
−水溶性有機材料−
水溶性有機材料としては、水に溶解し、架橋剤の作用により架橋可能な性質を有するものであれば、換言すれば、水溶性であって架橋剤によって架橋可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここでは、水溶性有機材料の水溶性は、例えば、30℃の水100gに水溶性有機材料を1g混合して撹拌したとき、その90質量%以上が溶解するものを意味する。
また、水溶性有機材料としては、その4質量%(w/w%)水溶液の20℃における粘度が、40mPa・s以下であるものが好ましく、1〜35Pa・sであるものがより好ましく、5〜30mPa・sであるものが特に好ましい。
水溶性有機材料の粘度が、40mPa・sを超えると、立体造形用粉末材料に架橋剤含有水を付与して形成した立体造形物用粉末材料(粉体層)による硬化物(立体造形物、焼結用硬化物)の強度が充分でないことがあり、その後の焼結等の処理ないし取扱い時に型崩れ等の問題が生ずることがある。また、立体造形用粉末材料に架橋剤含有水を付与して形成した立体造形物用粉末材料(粉体層)による硬化物(立体造形物、焼結用硬化物)の寸法精度が充分でないことがある。
水溶性有機材料の粘度は、例えば、JISK7117に準拠して測定することができる。
−架橋剤含有水−
造形液である架橋剤含有水としては、水性媒体中に架橋剤を含有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、架橋剤含有水は、水性媒体、架橋剤のほか、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、架橋剤含有水を付与する手段の種類、使用頻度や量などの諸条件を考慮して適宜選択することができる。例えば、液体吐出法によって架橋剤含有水を付与する場合には、液体吐出ヘッドのノズルへの目詰り等の影響を考慮して選択することができる。
水性媒体としては、例えば、水、エタノール等のアルコール、エーテル、ケトン、などが挙げられるが、水が好ましい。なお、水性媒体は、水がアルコール等の水以外の成分を若干量含有するものであってもよい。
上述した立体造形物用粉末材料及び造形液としての架橋剤含有水を使用することで、粉体(基材)を接着させるためのバインダーを液体吐出ヘッドから吐出する構成に比べて、ノズルの目詰まりが少なく、ヘッドの耐久性が向上する。
ただし、上述したように架橋剤含有水を使用することで、立体造形物が所要の強度を持つまでには造形後の水分蒸発が必要になることで、本発明を適用しなければ、造形後取り出し可能状態になるまで待機する必要がある。
次に、本発明の第1実施形態について図6ないし図8を参照して説明する。図6は同実施形態における主制御部による造形制御(印字制御)を示すフロー図、図7は同じく吐出ヘッドユニットの動きの説明に供する説明図、図8はギャップの説明に供する説明図である。
本実施形態は、吐出ヘッドユニットの双方向(往路及び復路)で造形液の液滴を吐出して造形層を形成する動作(双方向印字)を行う。
まず、造形ユニット5を移動して造形槽22に対向する位置まで移動し、吐出ヘッドユニット51をスタート位置(図7の位置S1)に移動する。
このとき、ヘッド50は、図8(a)に示すように、ヘッド50の吐出面50nと造形槽22の粉体面20aとの間隔が粉体20に液滴を吐出して造形を行うときの印字ギャップG1になる高さ(印字時高さ)に設定する。
そして、吐出ヘッドユニット51を主走査方向に移動させながら、ヘッド50から所要の造形液10の液滴を吐出させて造形層30を形成し、吐出ヘッドユニット51を図7の位置S2まで移動する。なお、往路を図7のX1方向、復路を図7のX2方向とする。
その後、ヘッド50を上昇させて、図8(b)に示すように、ヘッド50の吐出面50nと造形槽22の粉体面20aとの間隔が印字ギャップG1よりも広い退避ギャップG2(G2>G1)になる高さ(退避時高さ)にする退避動作を行う。
その後、ヘッド50を退避時高さにした状態で、造形ユニット5を副走査方向(図7のY1方向)に移動させ、ヘッド50を次の走査位置(図7の位置S3)まで移動させる。
そして、当該造形層の造形が終了したか否かを判別する。
このとき、当該造形層の造形が終了していなければ、ヘッド50を下降させて、ヘッド50を印字ギャップG1となる印字高さにし、吐出ヘッドユニット51を主走査方向に移動させながら、ヘッド50から所要の造形液10の液滴を吐出させて造形層30を形成する。
以後、上記の動作を当該造形層の造形が終了するまで繰り返す。
そして、当該造形層の造形が終了すれば、すべての造形が終了したか否かを判別する。
このとき、すべての造形が終了していなければ、次の造形層の造形を行うために、ヘッドをスタート位置に移動する。そして、すべての造形が終了したときには、この処理を終了する。
このように、ヘッド50から滴吐出を行わないで、吐出ヘッドユニット51を造形槽22の粉体20に対向して移動させるとき、すなわち吐出ヘッドユニット51を副走査方向に移動させるときには、印字ギャップG1よりも広い退避ギャップG2になる高さまでヘッド50を退避させる。
これにより、吐出ヘッドユニット51の移動によって造形槽22の粉体20の舞い上がりが生じても、ヘッド50の吐出面50nに到達して付着する粉体量が低減する。したがって、ヘッド50の吐出面50nへの粉体20の付着による吐出不良(吐出曲り、吐出不能)が低減する。
次に、本発明の第2実施形態について図9及び図10を参照して説明する。図9は同実施形態における主制御部による造形制御(印字制御)を示すフロー図、図10は同じく吐出ヘッドユニットの動きの説明に供する説明図である。
本実施形態は、吐出ヘッドユニットの片方向(往路又は復路の一方)で造形液の液滴を吐出して造形層を形成する動作(片方向印字)を行う。
まず、造形ユニット5を移動して造形槽22に対向する位置まで移動し、吐出ヘッドユニット51をスタート位置(図10の位置S1)に移動する。
このとき、ヘッド50の高さを、前記第1実施形態と同様に、印字ギャップG1になる印字時高さにする。
そして、吐出ヘッドユニット51を主走査方向(往路方向:図10のX1方向)に移動させながら、ヘッド50から所要の造形液10の液滴を吐出させて造形層30を形成する。なお、X1方向が、第1の方向の一方の方向である。
その後、ヘッド50を上昇させて、印字ギャップG1よりも広い退避ギャップG2になる退避時高さに設定する。
その後、ヘッド50を退避時高さにした状態で、吐出ヘッドユニット51を主走査方向(復路方向:図10のX2方向)に移動させて位置S1側まで戻す。なお、X2方向が、第1の方向の他方の方向である。
次いで、造形ユニット5を副走査方向(Y1方向)に移動させ、吐出ヘッドユニット51を次の走査位置(図10の位置S2)まで移動させる。
そして、当該造形層の造形が終了したか否かを判別する。
このとき、当該造形層の造形が終了していなければ、ヘッド50を下降させて、ヘッド50を印字ギャップG1となる印字高さにし、吐出ヘッドユニット51を主走査方向に移動させながら、ヘッド50から所要の造形液10の液滴を吐出させて造形層30を形成する。
以後、上記の動作を当該造形層の造形が終了するまで繰り返す。
そして、当該造形層の造形が終了すれば、すべての造形が終了したか否かを判別する。
このとき、すべての造形が終了していなければ、次の造形層の造形を行うために、ヘッドをスタート位置に移動する。そして、すべての造形が終了したときには、この処理を終了する。
このように、ヘッド50から滴吐出を行わないで、吐出ヘッドユニット51を造形槽22の粉体面20aに対向して移動させるとき、すなわち吐出ヘッドユニット51を主走査方向で戻すとき、及び副走査方向に移動させるときには、印字ギャップG1よりも広い退避ギャップG2になる高さまでヘッド50を退避させる。
これにより、吐出ヘッドユニット51の移動によって造形槽22の粉体20の舞い上がりが生じても、ヘッド50の吐出面50nに到達して付着する粉体量が低減する。したがって、ヘッド50の吐出面50nへの粉体20の付着による吐出不良(吐出曲り、吐出不能)が低減する。
また、片方向印字を行うときには、ヘッド50を退避ギャップG2となり高さまで退避させているので、吐出ヘッドユニット51をX1方向に移動させるときの速度(造形時速度)よりもX2方向に移動させるときの速度(復帰時速度)を速くすることできる。このようにしても、ヘッド50の吐出面50nへの粉体20の付着を低減ないしなくすることができる。
次に、本発明の第3実施形態について図11及び図12を参照して説明する。図11は同実施形態における主制御部による造形制御(印字制御)を示すフロー図、図12は同実施形態の説明に供する粉体粒径と退避ギャップとの関係の説明に供する説明図である。
図12に示すように、粉体20の粒径が大きくなるほど、吐出ヘッドユニット51の移動に伴う粉体20の舞い上がりが少なくなる。したがって、退避ギャップG2を小さく(狭く)しても、ヘッド50の吐出面50nに到達して付着する粉体量が低減し、又は付着しなくなる。
そこで、図11に示すように、ヘッド50を退避時高さにするときの退避ギャップG2のギャップ量を粉体20n粒径に応じて変化させるようにしている。なお、粒径と退避ギャップとの関係はテーブル化してROMなどに記憶しておけばよい。
次に、本発明の第4実施形態について図13を参照して説明する。図13は同実施形態における主制御部による造形制御(印字制御)を示すフロー図である。
本実施形態では、粉体20の粒径が予め定めた粒径(閾値)以下であるときに、ヘッド50を退避ギャップG2の高さまで退避させ、粉体20の粒径が閾値を超えるときには印字ギャップG1のままで吐出ヘッドユニット51を移動させる。
このようにすれば、粉体の付着の影響が少ないような場合にはヘッド50の退避動作を行う必要がなくなる。
次に、本発明の第5実施形態について図14を参照して説明する。図14は同実施形態の説明に供する環境温度と退避ギャップとの関係の説明に供する説明図である。
環境湿度が一定であるとすると、環境温度が低くなるほど、吐出ヘッドユニット51の移動に伴う粉体20の舞い上がりが少なくなる。したがって、退避ギャップG2を小さく(狭く)しても、ヘッド50の吐出面に50n到達して付着する粉体量が低減し、又は付着しなくなる。
そこで、前記第3実施形態における粉体20の粒径に代えて環境温度を使用する。そして、ヘッド50を退避時高さにするときの退避ギャップG2のギャップ量を温湿度センサ560で検出した環境温度に応じて変化させる。
あるいは、前記第4実施形態における粉体20の粒径に代えて環境温度を使用する。そして、温湿度センサ560で検出した環境温度が予め定めた温度(閾値)以上であるときに、ヘッド50を退避ギャップG2の高さまで退避させ、環境温度が閾値未満であるときには印字ギャップG1のままで吐出ヘッドユニット51を移動させる。
次に、本発明の第6実施形態について図15を参照して説明する。図15は同実施形態の説明に供する環境温度と退避ギャップとの関係の説明に供する説明図である。
環境温度が一定であるとすると、環境湿度が高くなるほど、吐出ヘッドユニット51の移動に伴う粉体20の舞い上がりが少なくなる。したがって、退避ギャップG2を小さく(狭く)しても、ヘッド50の吐出面50nに到達して付着する粉体量が低減し、又は付着しなくなる。
そこで、前記第3実施形態における粉体20の粒径に代えて環境湿度を使用する。そして、ヘッド50を退避時高さにするときの退避ギャップG2のギャップ量を温湿度センサ560で検出した環境湿度に応じて変化させる。
あるいは、前記第4実施形態における粉体20の粒径に代えて環境湿度を使用する。そして、温湿度センサ560で検出した環境温度が予め定めた湿度(閾値)以下であるときに、吐出ヘッドユニット51を退避ギャップG2の高さまで退避させ、環境湿度が閾値を超えるときには印字ギャップG1のままで吐出ヘッドユニット51を移動させる。
なお、粉体の粒径、環境温度、環境湿度を組み合わせて、退避時高さへの移動の有無、あるいは、退避ギャップのギャップ量を変化させる制御を行うようにすることもできる。また、上記第3ないし第5実施形態では、第1実施形態の双方向印字で説明しているが、第2実施形態の片方向印字にも適用できる。
次に、立体造形装置の他の例について図16ないし図18を参照して説明する。図16は同立体造形装置の要部斜視説明図、図17は同じく概略側面説明図、図18は造形部の断面説明図である。なお、図18は造形時の状態で示している。
この立体造形装置は、粉体造形装置(粉末造形装置ともいう。)であり、粉体が結合された造形層30が形成される造形部1と、造形部1に造形液10を吐出して立体造形物を造形する造形ユニット5とを備えている。
この装置では、粉体槽11は、粉体20を供給する供給槽21と、造形物が造形される造形槽22とを有している。供給槽21の底部は供給ステージ23として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。同様に、造形槽22の底部は造形ステージ24として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。造形ステージ24上に立体造形物が造形される。
供給ステージ23はモータ27によって昇降され、造形ステージ24はモータ28によって昇降される。
平坦化ローラ12は、供給槽21の供給ステージ23上に供給された粉体20を造形槽22に供給し、平坦化して粉体層31を形成する。この平坦化ローラ12は、往復移動機構25によって、造形ステージ24のステージ面(粉体20が積載される面)に沿う方向である矢印Y方向に、ステージ面に対して相対的に往復移動可能であり、モータ26によって回転駆動される。
この平坦化ローラ12の周面に接触して、平坦化ローラ12に付着した粉体20を除去するための粉体除去部材である粉体除去板13が配置されている。
造形ユニット5は、造形ステージ24上の粉体層31に造形液10を吐出する1又は複数のヘッド50を有する吐出ヘッドユニット51を備えている。この吐出ヘッドユニット51の各ヘッド50に与えるシアン造形液、マゼンタ造形液、イエロー造形液、ブラック造形液及びクリア造形液の各々を収容した複数のタンクがタンク装着部56に装着される。
造形ユニット5は、ガイド部材52に移動可能に保持されたスライダ部53を有し、造形ユニット5全体が矢印Y方向(副走査方向)に往復移動可能である。
吐出ヘッドユニット51は、ガイド部材54、55で矢印X方向(主走査方向)に往復移動可能に支持される。
吐出ヘッドユニット51は、ガイド部材54、55とともに矢印Z方向に昇降可能に支持される。
このように紛体槽が2槽構成の立体造形装置による造形を行うときにも本発明を適用することができる。
ここで、2層構成の立体造形装置における造形の流れについて図19も参照して説明する。図19は造形の流れの説明に供する造形部の模式的断面説明図である。
造形槽22の造形ステージ24上に、1層目の造形層30が形成されている。
この造形層30上に次の造形層30を形成するときには、図19(a)に示すように、供給槽21の供給ステージ23を矢印Z1方向に上昇させ、造形槽22の造形ステージ24を矢印Z2方向に下降させる。
このとき、造形槽22の粉体層表面と平坦化ローラ12の下部(下方接線部)との間隔がΔt1となるように造形ステージ24の下降距離を設定する。この間隔Δt1が次に形成する粉体層31の厚さに相当する。間隔Δt1は、数十〜100μm程度であることが好ましい。
次いで、図19(b)に示すように、供給槽21の上面レベルよりも上方に位置する粉体20を、平坦化ローラ12を順方向(矢印方向)に回転しながらY2方向(造形槽22側)に移動することで、粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。
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さらに、図19(c)に示すように、平坦化ローラ12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させ、図19(d)に示すように、造形ステージ24の造形層30上で所定の厚さΔt1になる粉体層31を形成する(平坦化)。粉体層31を形成後、平坦化ローラ12は矢印y1方向に移動されて初期位置に戻される。
ここで、平坦化ローラ12は、造形槽22及び供給槽21の上面レベルとの距離を一定に保って移動できるようになっている。一定に保って移動できることで、平坦化ローラ12で粉体20を造形槽22の上へと搬送させつつ、造形槽22上又は既に形成された造形層30の上に均一厚さΔt1の粉体層31を形成できる。
その後、図19(e)に示すように、吐出ヘッドユニット51のヘッド50から造形液10の液滴を吐出して、次の造形層30を積層形成する(造形)。
なお、造形層30は、例えば、ヘッド50から吐出された造形液10が粉体20と混合されることで、粉体20に含まれる接着剤が溶解し、溶解した接着剤同士が結合して粉体20が結合されることで形成される。
次いで、上述した粉体供給・平坦化工程、ヘッドによる造形液吐出工程を繰り返して新たな造形層を形成する。このとき、新たな造形層とその下層の造形層とは一体化して三次元形状造形物の一部を構成する。
以後、粉体の供給・平坦化工程、ヘッドによる造形液吐出工程を必要な回数繰り返すことによって、三次元形状造形物(立体造形物)を完成させる。
上記各実施形態においては、造形手段である造形ユニットが造形槽に対して移動する構成、ヘッドが造形槽に対して昇降する構成で説明したが、これに限るものではない。例えば、造形手段である造形ユニットに対して造形槽が移動する構成、造形槽がヘッドに対して昇降する構成とすることもできる。
次に、吐出ヘッドユニットの第1例について図20及び図21を参照して説明する。図20は同吐出ヘッドユニットの平面説明図、図21は同じく側面説明図である。なお、吐出ヘッドユニットはヘッド部分については透過状態で示している。
ここでも、吐出ヘッドユニット51は、前述したガイド部材54、55に保持されている部分(キャリッジ)51Aにてヘッド50を搭載している。
そして、吐出ヘッドユニット51のキャリッジ51Aには、吐出ヘッドユニット51が移動するときの移動方向前方となる側(ここでは、両側)の面51a、51bに空気の流れ700を誘導する誘導手段58を有している。
誘導手段57の外形状は、平面視では、図20に示すように、移動方向と直交する方向の両側に向かう方向に空気の流れを誘導する形状としている。
また、誘導手段57の外形状は、側面視では、図21に示すように、造形槽22と反対側に向かう方向、すなわち、鉛直方向下方から上方に向かう方向に空気の流れ700を誘導する形状としている。
このように構成したので、吐出ヘッドユニット51がX1方向に移動するとき、液体吐出ヘッドユニット51の前面となる面51a側に当たる空気の流れ700は、平面視では、図20に示すように、移動方向と直交する方向の両側に向かう方向になる。また、空気の流れ700は、側面視では、図21に示すように、造形槽22と反対側に向かう方向、すなわち、鉛直方向下方から上方に向かう方向になる。
これにより、吐出ヘッドユニット51が移動するときに空気の流れ700が造形槽22の粉体20側に向かうことが低減され、粉体20の舞い上がりが抑制され、安定した滴吐出を行うことができる。
すなわち、吐出ヘッドユニット51を移動させるときに生じる気流によって造形槽22の粉体20が舞い上がると、粉体20がヘッド50の吐出面50nに付着して安定した吐出を行うことができなくなる。
そこで、上記のように、吐出ヘッドユニット51を移動させるときに、吐出ヘッドユニット51のノズル面50n側に向かう気流を低減することにより、粉体20の舞い上がりを抑えて吐出面50nへの粉体20の付着を低減できる。
次に、吐出ヘッドユニットの第2例について図22及び図23を参照して説明する。図22は同吐出ヘッドユニットの平面説明図、図23は同じく側面説明図である。なお、吐出ヘッドユニットはヘッド部分については透過状態で示している。
吐出ヘッドユニット51には、吐出ヘッドユニット51が移動するときの移動方向前方となる側(ここでは、両側)の面51a、51bに空気の流れを誘導する誘導手段58を有している。
ここで、誘導手段58は、外形状は第1例と同様であるが、吐出ヘッドユニット51の面51a、51bとの間に隙間59を形成する中空形状としている。
このように構成したので、吐出ヘッドユニット51が移動するとき、隙間59(中空部分)にも空気が流れ込むようになり、より空気の流れ700が上方に向かうようになり、ヘッド50の吐出面50nに向かう流れを低減できる。
また、誘導手段を中空にすることで、部品自体を軽量化でき、吐出ヘッドユニット自体の重量増加を抑えることができる。
なお、上記第1例及び第2例では、吐出ヘッドユニット51がX1方向に移動する状態における空気の流れで説明及び図示をしているが、両側に誘導手段を有しているので、吐出ヘッドユニット51がX1方向と反対のX2方向に移動するときも同様の作用効果を得ることができる。
上記各実施形態においては、造形手段である造形ユニットが造形槽に対して移動する構成、ヘッドが造形槽に対して昇降する構成で説明したが、これに限るものではない。例えば、造形手段である造形ユニットに対して造形槽が移動する構成、造形槽がヘッドに対して昇降する構成とすることもできる。