JP6843687B2 - 車両用クッションパッド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、特許文献3のように、表層パッドで芯パッドの側面を裏面外周縁まで覆う構成にすると、表層パッドの発泡成形で、発泡原料が芯パッド裏面へ回り込んで裏面中央へ向けて浸入し易かった。芯パッド2のビーズ発泡成形体はクッション性,シール性に乏しく、さらにその発泡成形で収縮する傾向があり、芯パッド裏面2bへの発泡原料の浸入が一層起こり易くなっている(図11)。浸入した発泡原料は芯パッドの裏面2bにポリウレタンの膜kを形成し、これがクッションパッド1の車両搭載後に擦れ音を発する不具合を招く。そのため、発泡成形後の後工程で、擦れ音対策用に不織布等を芯パッド裏面2bの軟質ポリウレタン膜kを覆うように貼着しなければならず、労力負担増の問題になっている。
請求項5に記載の発明の要旨は、少なくとも乗員が当接する側の受け面部分を軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッドで形成した車両用クッションパッドにおいて、ビーズ発泡成形体であって、裏面の外周縁寄りで外周縁側低所部から一段盛り上がった高所部に至る裏面外周縁側の壁面に対し、隙間をとって裏面外周縁側に、該壁面との対向面を有する薄板部が起立形成された芯パッドと、該芯パッドをその裏面が露出するインサート品にして、側部で芯パッドの側面を裏面外周縁まで覆って埋設一体化している表層パッドと、を具備することを特徴とする車両用クッションパッドにある。請求項6の発明たる車両用クッションパッドは、請求項5で、薄板部が、前記低所部につながる基端部位から先端部位に向けて、その板厚が小さくなり、且つ前記立面が先端部分に向けて前記高所部の前記壁面側へ傾倒していることを特徴とする。請求項7の発明たる車両用クッションパッドは、請求項5又は6で、壁面と薄板部における立面との双方が、前記芯パッドの裏面外周縁に沿って設けられ、且つ該立面の方が該壁面よりも裏面外周縁に沿った長さが長く設定されたことを特徴とする。
(1)クッションパッドの製造方法
図1〜図10は本発明のクッションパッド及びその製造方法の一形態で、車両後部座席のクッションパッドに適用する。図1はクッションパッドを裏面側から見た斜視図で、図2はそれを表面側から見た斜視図である。図3は型開状態の上型に芯パッドをセットした断面図、図4は上型に芯パッドをセットする直前の部分拡大図、図5は図4の状態から上型への芯パッドのセットを終えた部分拡大図、図6は型開状態で発泡原料を下型に注入する断面図、図7は図6の状態から型閉じした断面図、図8は芯パッドと一体の表層パッドを発泡成形した断面図、図9,図10は図1に代わる他態様のクッションパッドの斜視図である。クッションパッドの裏面側を表す図1は紙面左上方がクッションパッドの車両前方になり、図2は車両設置の姿態にしたクッションパッドで、紙面右上方が車両前方になる。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。
車両用クッションパッドの製造方法は、少なくとも乗員が当接する側の受け面部分31を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成し、該軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド3の発泡成形で、その内面3b側を軽量の芯パッド2に接合一体化させる製法である(図8)。クッションパッド1は乗員が当接する側が意匠面となる。ここでは、図2に示す車両後部座席の三人掛け座部用クッションパッド1に適用する。表層パッド3の発泡成形に先立ち、芯パッド2,発泡成形型7が用意される。
芯パッド2の裏面2b側には三人掛け座部に合わせて、メイン部3Aの座部裏面側に小高い隆起部28が形成され、車両進行方向に対し両隆起部28の車幅方向外側それぞれに薄板部26が設けられる。また車両後方側中央で、裏面外周縁21から車両前方側に向けて低所部24を設けて、該低所部24から段差壁271を登って一段高い段部27になり、該段部27の車幅方向中央が車両後方に向かって張り出す。張り出した該段部27を高所部25にして、その裏面外周縁21側の壁面251に対し、隙間εを介在させて、裏面外周縁21側の低所部24に係る低所面24a上に薄板部26が設けられる。
本実施形態の芯パッド2は、発泡ポリプロピレン(EPP)のビーズ発泡成形体で、その見掛け密度が軟質ポリウレタン発泡成形体からなる表層パッド3の見掛け密度よりも小さい。符号22は裏面外周縁21寄りで、該裏面外周縁21に沿って所定間隔で複数設けられた表皮端部の係止用溝を示す。
図1のVIII-VIII線矢視図に対応する上型9のキャビティ面91でいえば、図4,図8のごとく上型9へ芯パッド2のセットで、低所部24が当接するキャビティ面911から窪み93の側壁931を経て、高所部25が当接する窪み93の底面935に至る。VIII-VIII線矢視図に現れる図4の窪み93は底面935が同図の紙面右方にそのまま上型キャビティ面91として延在する。側壁931は窪み93の入口930から底面935に向けて該窪み93の中央側へ近づく傾斜面に形成し、芯パッド2の上型9へのセットで、薄板部26に係る裏面外周縁21側の立面261を該傾斜面に押し当てシールし易くする。図3〜図8で示す本側壁931は、図示のごとく車両後方側窪み93の入り口930からこれよりも車両前方側で一段深くなる窪み93の底面935へと向かう傾斜面とする。上型9への芯パッド2のセットで、その直前状態にある図4の薄板部26が、傾斜側壁931に当たった後、図5のように変形して、該側壁931に裏面外周縁21側の立面261を押し当てる構成にしている。
符号912は表層パッド3の側部裏面323を形成するキャビティ面で、芯パッド2を上型9にセットした後、型閉じで芯パッド2の裏面外周縁21よりも外側に位置する。符号86は吊溝用隆起部、符号89,符号99は型合せ面を示す。
尚、図3〜図6の発泡成形型7は、車両設置状態に在る図2のクッションパッド1と上下が逆の姿態で、該クッションパッドたる芯パッド2と一体の表層パッド3を造る型構造になっている。
まず、製造に先立ち、係止用溝22の溝口をテープで塞いで、発泡成形型7の型開状態下、芯パッド2を上型9にセットする(図3)。芯パッド2を上型9に取付け,セットしようとすると、先に薄板部26の先端部分26aが窪み93の傾斜面に形成された側壁931に当たる(図4)。その状態のまま、芯パッド2を上型9の在る上方へ向けて押し付ける。すると、該薄板部26が、側壁931の傾斜面を滑るようにして、該傾斜面に寄り添う変形を受けながら、窪み93に高所部25と共に嵌入して上型9への芯パッド2のセットが完了する(図5,図6)。ここでの薄板部26の立面261は、図4のごとく先端部分26aに向け高所部25の壁面251側へ傾倒しているので、側壁931の傾斜面に寄り添い変形を起こし易くなっている。薄板部26は、図5のごとく押し当てられた変形状態で側壁931に少なくとも立面261の一部が密着する。ビーズ発泡成形体からなる芯パッド2であっても、スライス状の薄板部26とすることで、図4の変形可能な可撓性を有し、さらに薄板部26は基端部位から先端部位に向けて厚みを小さくすることにより、図4の変形に円滑対応できる薄板部26になっている。
尚、図3〜図6は図1のVIII-VIII線矢視図で示す車両後方側中央に設けた薄板部26と隙間εを介した高所部25の窪み93へのセットの模様を示すが、車両進行方向に対し隆起部28の車幅方向左右外側に形成された薄板部26においても、同様である。隆起部28の車幅方向左右外側に在る薄板部26も、側壁931の傾斜面を滑るようにして弓状に変形し、裏面外周縁21側の立面261を図示しない窪み93の傾斜側壁931に押し当て、車両後方側中央に設けた薄板部26,高所部25と略同時進行で、該窪み93に高所部25と共に該薄板部26を嵌入させて、芯パッド2が上型9にセットされる。
椀状にへこむ下型キャビティ面81上に、注入ノズルNL等を使用して発泡原料gを所定量注入する(図6)。続いて、上型9を作動させ、型閉じする(図7)。上型9と下型8との型閉じで、芯パッド2がインサートセットされたクッションパッド1用キャビティCができる。この型閉じで、吊溝用隆起部86を芯パッド2の表面2aに当て、該芯パッド2を下から支えてキャビティC内で保持させてもよい。尚、上型9への芯パッド2のセット後、発泡原料gを注入し、その後、型閉じしたが、上型9に芯パッド2をセットした後、型閉じし、その後、発泡原料gを注入することもできる。
発泡成形の初期段階は発泡原料gの発泡が進む。受け面部分31のキャビティCを埋めた後、発泡原料gが上昇し上型キャビティ面91に達する。この発泡原料gの上昇途中で、発泡原料gが芯パッド裏面2bに回り込み浸入しようとするが、既述のごとく、窪み93の側壁931に薄板部26の立面261を押し当てシールしているので、発泡原料gの進行がそこで止まる。薄板部26より先の芯パッド裏面2bへの発泡原料gの進入が遮られた状態で、図8のごとく側部32の裏面323まで埋め尽くす表層パッド3を発泡成形する。芯パッド2を埋設一体化した表層パッド3を発泡成形する。
芯パッド2は、その製品製造時に時に収縮することがあるが、収縮しても、芯パッド2の上型9へのセット時に、薄板部26の先端部分26aが当たる側壁931が傾斜面になっているので、図4でいえばその紙面横方向に芯パッド2が収縮しても、薄板部先端部分26aを受け入れる傾斜側壁931の許容域が存在する。したがって、芯パッド2の収縮で寸法に多少のズレが生じても、該側壁931に薄板部26の立面261を難なく押し当て、薄板部26を側壁931に変形密着させてシールすることができる。側壁931への薄板部26の押し当ては、既述の吊溝用隆起部86の支えによって支援させてもよい。
発泡成形を終え、脱型すると、受け面部分31を形成すると共に、発泡成形時に薄板部26で発泡原料gの芯パッド裏面2b中央側への浸入が遮られたことによって、そこに発泡原料gのバリが存在しない所望のクッションパッド1を得る。係止用溝22を塞いだテープは脱型後に取り除く。
また、係止用溝22を車両後方側の高所部25に設け、該係止用溝をカバーする車幅方向長さの薄板部26を低所部24に起立形成した図10のような芯パッド2を用いることもできる。該芯パッド2を埋設一体化する表層パッド3の発泡成形で、薄板部26が、芯パッド裏面2b側への発泡原料gの浸入阻止に加え、係止用溝22への発泡原料gの浸入を阻止するので、発泡成形に先立って薄板部26がカバーしている係止用溝22の溝口はテープで塞ぐのを省略できる。芯パッド2を上型9にセットした図面を省くが、図5でいうと、係止用溝22は壁面251寄りの高所部天面25aに溝口を有して形成される。図10は薄板部26が側壁931の傾斜面を滑るようにして、裏面外周縁21側の立面261を該側壁931に押し当て易くするため、薄板部26を三分割しているが、一枚物にしてもよい。
尚、図9,図10で、他の構成は図1〜図8の前述内容と同様でその説明を省く。図1〜図8と同一符号は同一又は相当部分を示す。符号3Bはサイド部、符号3Dは斜面、符号3Eはバックレストとの合わせ部、符号391,392は吊溝39の縦溝、横溝を示す。
図1〜図8の上記製造方法等で得られるクッションパッド1は、芯パッド2の表面2a側を、軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド3が覆う車両用クッションパッド1である。少なくとも乗員が当接する側の受け面部分31を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成して、芯パッド2と表層パッド3とを具備するクッションパッド1になっている。
他の構成は(1)車両用クッションパッドの製造方法で述べたものと同様で、説明を省略する。(1)中の符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
このように構成した車両用クッションパッド及びその製造方法は、保形性を有して極めて軽いビーズ発泡成形体の芯パッド2を軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド3が埋設一体化しているので、クッションパッド1の軽量化が可能である。それでいて、少なくとも乗員が当接する側の受け面部分31を軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド3で形成するので、乗員着座時の快適なクッション性が維持される。
表層パッド3で芯パッド2の側面23を裏面外周縁21まで覆う構成にして、乗員が触れる芯パッド側面23側にも表層パッド3の側部32で覆って、クッション性,感触良好なクッションパッド1にすることが可能になる。
また、薄板部26が、低所部24につながる基端部位から先端部位に向けて、その板厚が小さくなっていると、薄板部26により一層の可撓性が備わり変形対応できるようになるので、薄板部26の立面261を側壁931に押し当ててシールするのがより確実となる。
加えて、薄板部26の先端部分26aに向けて立面261が高所部25の壁面251側へ傾倒していると、変形対応がよりスムーズになり、側壁931の傾斜面を薄板部26が滑るようにして、裏面外周縁21側の立面261を該側壁931に押し当てる動作が円滑に進む。上型9への芯パッド2のセットが楽になる。
さらにいえば、図9のごとく、薄板部26の立面261の方が高所部25の壁面251よりも裏面外周縁21に沿った長さが長く設定されると、表層パッド3の発泡成形で、発泡原料gの高所部25への回り込みを、長く設定した薄板部26でより広い範囲で防御できる。
このように、表層パッド3の側部32で芯パッド側面23を表面2a側から裏面外周縁21まで覆っても、表層パッド3の発泡成形で発泡原料gが芯パッド裏面2bへ回り込むことがなくなる。よって、クッションパッド1の車両搭載後に擦れ音を発する不具合や、該擦れ音対策用に芯パッド裏面2bに不織布等を貼着するといった作業負担もなくなり、且つ品質も安定するなど、労力負担解消,品質安定,生産性向上等に優れた効果を発揮する。
2 芯パッド
21 裏面外周縁
23 側面
24 低所部
25 高所部
251 壁面
26 薄板部
26a 立面
3 表層パッド
31 受け面部分
32 側部
81 下型キャビティ面
9 上型
93 窪み
931 側壁
g 発泡原料
Claims (7)
- 少なくとも乗員が当接する側の受け面部分を軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッドで形成した車両用クッションパッドの製造方法において、
ビーズ発泡成形体であって、裏面の外周縁寄りで外周縁側低所部から一段盛り上がった高所部に至る裏面外周縁側の壁面に対し、隙間を介在させた裏面外周縁側の低所部に、薄板部が起立形成された芯パッドをインサート品として用い、これをセットする上型に、該薄板部を含めた前記高所部の対応部位に窪みを設け、且つ該窪みは入口から底面に向けて該窪みの中央側へ近づく傾斜面の側壁を備えて、
該傾斜面を前記薄板部が滑るようにして、該薄板部における裏面外周縁側の立面を該側壁に押し当て、該窪みに前記高所部と共に該薄板部を嵌入させて前記芯パッドを上型にセットし、次いで、下型キャビティ面に軟質ポリウレタン発泡原料を注入すると共に型閉じし、その後、側部で前記芯パッドの側面を裏面外周縁まで覆って埋設一体化した表層パッドを発泡成形することを特徴とする車両用クッションパッドの製造方法。 - 前記薄板部が、前記低所部につながる基端部位から先端部位に向けて、その板厚が小さくなり且つ前記立面が先端部分に向けて前記高所部の前記壁面側へ傾倒している請求項1記載の車両用クッションパッドの製造方法。
- 前記壁面と前記薄板部における立面との双方が、前記芯パッドの裏面外周縁に沿って設けられ、且つ該立面の方が該壁面よりも裏面外周縁に沿った長さが長く設定された請求項1又は2に記載の車両用クッションパッドの製造方法。
- 前記薄板部が、車幅方向に走る前記隙間によって前記高所部から分かれ、車両後方側裏面の車幅方向外周縁に沿って設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用クッションパッドの製造方法。
- 少なくとも乗員が当接する側の受け面部分を軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッドで形成した車両用クッションパッドにおいて、
ビーズ発泡成形体であって、裏面の外周縁寄りで外周縁側低所部から一段盛り上がった高所部に至る裏面外周縁側の壁面に対し、隙間をとって裏面外周縁側に、該壁面との対向面を有する薄板部が起立形成された芯パッドと、
該芯パッドをその裏面が露出するインサート品にして、側部で芯パッドの側面を裏面外周縁まで覆って埋設一体化している表層パッドと、を具備することを特徴とする車両用クッションパッド。 - 前記薄板部が、前記低所部につながる基端部位から先端部位に向けて、その板厚が小さくなり、且つ前記立面が先端部分に向けて前記高所部の前記壁面側へ傾倒している請求項5記載の車両用クッションパッド。
- 前記壁面と前記薄板部における立面との双方が、前記芯パッドの裏面外周縁に沿って設けられ、且つ該立面の方が該壁面よりも裏面外周縁に沿った長さが長く設定された請求項5又は6に記載の車両用クッションパッド。
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