JP6841220B2 - 液晶性ポリエステル樹脂組成物、成形品および成形品の製造方法 - Google Patents

液晶性ポリエステル樹脂組成物、成形品および成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた成形品に関するものである。
液晶性ポリエステルは、耐熱性、流動性、寸法安定性に優れている。このため、それらの特性が要求される電気・電子部品用途を中心に需要が拡大している。ところで、電気・電子部品用途においては、製品の軽薄短小化に伴い電気・電子部品の小型化、薄肉化が進んでおり、さらなる省スペース化、軽量化のため樹脂部品に電子回路基板を組み込む立体回路基板形成技術の発展が求められている。樹脂成形品表面に立体的に電子回路パターンが形成されることで、回路基板設計の自由化、モジュールの小型化、部品点数の削減、組み立て工数の削減が可能となる。樹脂成形品に回路を形成する手法として、例えば、2回成形により回路形成箇所以外へマスキングを施すマスク形成手法や、レーザー照射による回路パターン描画手法などとめっき等の金属化技術との組み合わせが挙げられ、拡大を続けている。
なかでも、レーザー照射によって樹脂組成物中の金属添加剤を活性化させてめっき等による金属化を行い、レーザー照射で描画した部分に金属パターンを形成する手法であるレーザーダイレクトストラクチャリング工法は、パターン描画や金属化工程が容易であることから拡大を続けており、レーザー照射によるめっき形成性を付与するため種々の添加剤を配合した樹脂組成物の検討が進められている。例えば、銅クロム酸化物やアンチモンドープ酸化スズを配合し、衝撃強度に優れるポリアミド樹脂組成物(例えば特許文献1、2参考)やポリカーボネート樹脂組成物(例えば特許文献3参考)、銅クロム酸化物を配合し、引張強度、曲げ強度などの機械強度や誘電特性に優れる液晶ポリマー樹脂組成物(例えば特許文献4、5参考)、金属酸化物を樹脂等でコーティングしたコアシェル構造の添加剤を配合し、ベースポリマーへの悪影響を抑制した基板材料(例えば特許文献6参考)の提案がなされている。
特開2015−120909号公報 特開2013−144767号公報 特開2015−108124号公報 特表2015−502418号公報 国際公開第2016/003588号 特表2016−507650号公報
しかしながら、かかる従来技術においては、液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品と金属との密着性が低かったり、ポリアミド樹脂などを主成分とする樹脂組成物からなる成形品では樹脂組成物の線膨張率が成形品表面の金属の線膨張率に比べ大きかったりすることにより、製品の組み立て時や寒冷地での使用の際などの温度変化により成形品表面の金属部の密着強度が低下し金属部の脱離、剥離が生じたり、成形品の変形が生じたりする課題があった。また、表面に金属部を形成した成形品の製品への組み付けの際に、成形品の摺動性が不十分であることで、製品を構成する金属部品などと接触、擦れ合いにより、成形品表面が変形、欠損するなどの不具合が生じることがあった。したがって、従来の立体回路基板の形成技術に対応した樹脂組成物は、上記課題に対し十分満足できる物ではなく、更なる改良が求められている。
本発明は、成形品表面の温度変化時に、成形品表面に形成された金属部の脱離や成形品の変形を抑制するため、冷熱処理時の成形品表面の金属部密着性、熱処理時の成形品形状保持性に優れ、製品組み立て時や使用時の成形品の欠損抑制のため、成形品の摺動性に優れる液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、全芳香族液晶性ポリエステルにレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、特定の硬度を有する板状充填材を配合してなる液晶性ポリエステル樹脂組成物により、特異的に成形品表面に形成された金属部の冷熱処理時の密着性に優れ、熱処理時の成形品の形状保持性、および成形品の摺動性に優れるといった特性を有し、電気・電子部品への使用に適した成形品、特に表面に金属部を有する成形品を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、本発明の実施形態は、以下に挙げる構成の少なくとも一部を含み得る。
(1)全芳香族液晶性ポリエステル(A)100重量部に対して、平均粒子径が1μm以上350μm以下であるレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)を3〜25重量部、モース硬度が2.0〜7.0の板状充填材(C)を5〜150重量部含むことを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物。
(2)前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)が、1種の金属種からなることを特徴とする(1)に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
(3)前記板状充填材(C)の平均粒子径が、前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の平均粒子径の0.1〜20倍であることを特徴とする(1)または(2)に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
)前記全芳香族液晶性ポリエステル(A)が、全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対する、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が60〜77モル%であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
)(1)〜()のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
)表面に金属部を有することを特徴とする()に記載の成形品。
)()に記載の成形品へのレーザー照射によるパターン描画工程とめっき処理による金属化工程とを含む、表面に金属部を有する成形品の製造方法。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物により、成形品表面に形成された金属部の冷熱処理時の密着性に優れ、熱処理時の成形品の形状保持性、および成形品の摺動性に優れる成形品を得ることができる。これら成形品は、特に、表面に金属部を有する電気・電子部品用途に好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[全芳香族液晶性ポリエステル]
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)は、溶融時に光学的異方性を示すサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位などから選ばれた構造単位からなる。その構造単位はエチレングリコールなどの脂肪族化合物から生成した構造単位を含まないことを特徴とし、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルである。
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)を構成する各構造単位は、芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などに由来する構造単位が挙げられ、p−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどに由来する構造単位が挙げられ、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンが好ましい。芳香族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などに由来する構造単位が挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位および芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる全芳香族液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる全芳香族液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる全芳香族液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる全芳香族液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位からなる全芳香族液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
特に好ましいのは、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる全芳香族液晶性ポリエステルである。
上記の各構造単位を構成する原料モノマーは、各構造単位を形成しうる構造であれば特に限定されないが、各構造単位の水酸基のアシル化物、各構造単位のカルボキシル基のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物などのカルボン酸誘導体などが使用されてもよい。
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)は、上記の構造単位から構成されることで、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の耐熱性に優れる。したがって、その液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いた成形品は、金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性に優れる。
全芳香族液晶性ポリエステル(A)を構成する芳香族ジオキシ単位の合計と、芳香族ジカルボニル単位の合計とは実質的に等モルである。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位が等モルであることを示す。このため、末端を構成する構造単位まで含めた場合には必ずしも等モルとはならない態様も、「実質的に等モル」の要件を満たしうる。
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)は、前記全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対する、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が60〜77モル%であることが好ましい。全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位に対するヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位およびテレフタル酸に由来する構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、全芳香族液晶性ポリエステルの結晶性が制御され、熱処理時の成形品の形状保持性に優れ、さらに成形品の摺動性が優れるため好ましい。また、全芳香族液晶性ポリエステルが上記範囲の構造単位で構成されることで、全芳香族液晶性ポリエステルの融点が制御され、その結果耐熱性および成形加工性に優れた成形品を得ることができるため好ましい。また、成形加工時の温度が過度に高くならずに成形品を成形することが可能となり、成形時における液晶性ポリエステル樹脂組成物の劣化が抑制された結果、機械強度に優れる成形品を得ることができるため好ましい。
ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位の合計が、全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対して60モル%以上であると、全芳香族液晶性ポリエステルの耐熱性が向上するため、その液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いた成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性に優れるため好ましい。一方、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位の合計が、全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対して77モル%以下であえると、全芳香族液晶性ポリエステルの結晶性の増加が抑制されるため、成形品表面の金属部の熱処理時の密着性に優れ、また成形品の摺動性に優れるため好ましい。
全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対する、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計は、65モル%以上がより好ましく、69モル%以上がさらに好ましい。一方、76モル%以下が好ましい。また、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位は、いずれか一方の構造単位を有し、もう一方の構造単位が0モル%であってもよいが、それぞれが0モル%を超えることが好ましい。
本発明の全芳香族液晶性ポリエステル(A)について、各構造単位の含有量の算出法を以下に示す。まず、全芳香族液晶性ポリエステル(A)をNMR(核磁気共鳴)試験管に量りとり、全芳香族液晶性ポリエステルが可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン−d混合溶媒)に溶解する。次に、得られた溶液について、H−NMRスペクトル測定を行い、各構造単位由来のピーク面積比から算出することができる。
本発明の全芳香族液晶性ポリエステル(A)の融点(Tm)は、耐熱性の観点から220℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。一方、加工性の観点から全芳香族液晶性ポリエステルの融点(Tm)は、350℃以下が好ましく、345℃以下がより好ましく、340℃以下がさらに好ましい。
融点(Tm)の測定は、示差走査熱量測定により行う。具体的には、まず、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm)を観測する。吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、吸熱ピーク温度(Tm)+20℃の温度でポリマーを5分間保持する。その後、20℃/分の降温条件で室温までポリマーを冷却する。そして、20℃/分の昇温条件でポリマーを加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm)を観測する。融点(Tm)とは、該吸熱ピーク温度(Tm)を指す。
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)の溶融粘度は、機械強度の観点から1Pa・s以上が好ましく、5Pa・s以上がより好ましく、15Pa・s以上がさらに好ましい。一方、流動性の観点から、全芳香族液晶性ポリエステルの溶融粘度は、200Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、50Pa・s以下がさらに好ましい。
なお、この溶融粘度は、全芳香族液晶性ポリエステルの融点(Tm)+20℃の温度で、かつ、せん断速度1000/秒の条件下で、高化式フローテスターによって測定した値である。
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)を製造する方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。公知のポリエステルの重縮合法としては、全芳香族液晶性ポリエステルがp−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位、およびイソフタル酸に由来する構造単位からなる全芳香族液晶性ポリエステルを例に、以下が挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸縮重合反応によって全芳香族液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重合することによって全芳香族液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸フェニルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルから脱フェノール重縮合反応により全芳香族液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により全芳香族液晶性ポリエステルを製造する方法。
なかでも(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重縮合反応によって全芳香族液晶性ポリエステルを製造する方法が、全芳香族液晶性ポリエステルの末端構造の制御および重合度の制御に工業的に優れる点から、好ましく用いられる。
本発明で使用する全芳香族液晶性ポリエステル(A)の製造方法として、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。固相重合法による処理としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、全芳香族液晶性ポリエステル(A)のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕する。粉砕したポリマーまたはオリゴマーを、窒素気流下、または、減圧下において加熱し、所望の重合度まで重縮合することで、反応を完了させる。上記加熱は、全芳香族液晶性ポリエステルの融点−50℃〜融点−5℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間行うことができる。
全芳香族液晶性ポリエステル(A)の重縮合反応は、無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどを触媒として使用することもできる。
[レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤]
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)を含むことを特徴とする。本発明で使用するレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)は、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物中に配合することで液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品へのレーザー照射時にレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)が成形品表面に露出、変質し、それを起点として無電解めっきなどの方法で、レーザー照射部に金属部を形成することができる性質を付与する添加剤を指す。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)は、金属単体や、金属を含む化合物や錯体などが好ましく用いられる。
本発明で使用するレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)は、1種の金属種からなることが好ましい。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)を構成する金属種として、例えば銅、スズ、コバルト、ニッケルまたは銀などが挙げられる。それらは、金属単体での使用であっても、金属を含む化合物としての使用であってもよい。金属を含む化合物としては、酸化物、硫化物、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、有機金属化合物、錯体などを用いることができる。なかでもスズ、ニッケル、酸化銅、リン酸銅、ピロリン酸銅が好ましく、リン酸銅、ピロリン酸銅が特に好ましい。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)が上記金属のいずれか1種の金属種から構成されることで、液晶性ポリエステル樹脂組成物中に適度に分散し、成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性に優れるため好ましい。また液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形加工時におけるレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の反応、分解が抑制され、熱処理時の成形品の形状保持性に優れるため好ましい。さらに、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が上記の特に好ましい化合物を用いることで、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の熱安定性に優れる特性により、これらを配合した液晶性ポリエステル樹脂組成物の加工時の熱劣化が抑制される。そのため、成形品表面の金属部の密着性のばらつきが抑制され、成形品表面の金属部が安定して形成されるため好ましい。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)を全芳香族液晶性ポリエステル(A)100重量部に対して、3〜25重量部含むことを特徴とする。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の配合量を3重量部以上とすることにより、液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の金属部の形成が容易に進行するため、成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性に優れる。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の配合量は3.5重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。一方、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の配合量を25重量部以下とすることにより液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の機械強度に優れ、熱処理時の成形品形状保持性に優れる。また成形品の表面荒れが抑制され成形品の摺動性に優れる。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の配合量は、21重量部以下が好ましく、19重量部以下がより好ましい。
レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の配合量が3重量部より少ない、またはレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を配合しないと、成形品の金属部が形成されない、または形成量が不十分で金属部の導通性が得られず、成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性も低下する。一方、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の配合量が25重量部よりも多いと、液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の機械強度が低下し、熱処理時の成形品形状保持性が低下する。また、成形品の表面荒れが生じ成形品の摺動性が低下する。また、液晶性ポリエステル樹脂組成物の押出製造時に、ストランド切れが生じるなど悪影響を及ぼす。
本発明で使用するレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)は、平均粒子径が1μm以上であることが好ましい。ここでいう平均粒子径は体積平均粒子径であり、次の方法により求めることができる。液晶性ポリエステル樹脂組成物50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)と板状充填材(C)の混合物を取り出す。混合物中の板状充填材は比重差により分離することができる。例えば樹脂成分が除去されたレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と板状充填材の混合物を取り出し、これをヨウ化メチレン(比重3.33)や1,1,2,2−テトラブロモエタン(比重2.970)、エタノール(比重0.789)などを用いてレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と板状充填材との間の比重となるよう適宜混合した混合液中に分散させ、回転数10000rpmで5分間遠心分離した後、浮遊した板状充填材をデカンテーションで取り除き、沈降したレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤をろ過により取り出す。得られたレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定する。
レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の平均粒子径が1μm以上であると、液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造時、成形加工時においてレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)と板状充填材(C)との混練が促進されるため、それぞれの凝集が抑制され、得られる成形品中で、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)と板状充填材(C)がそれぞれ分散性に優れる。それにより、成形品表面の金属部冷熱処理時の密着性が向上するので好ましい。1.5μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。一方、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の液晶性ポリエステル樹脂組成物中での分布むら抑制の観点から、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の平均粒子形の上限は、350μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
[板状充填材]
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、板状充填材(C)を含むことを特徴とする。
板状充填材を用いることで、補強効果に優れ、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)との混練時の分散性に優れるため、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性、および成形品の摺動性に優れる。板状充填材として、例えばマイカ、ガラスフレークなどが挙げられ、中でも補強効果が高く、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性、成形品の摺動性に優れることからマイカが好ましい。
本発明に使用する充填材が板状でない場合、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の補強効果が不十分であり、また液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造、成形加工時にレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)との混練が不十分でレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の分散性が低下することがあるため、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性が低下したり、熱処理時の成形品の形状保持性が低下したり、成形品の摺動性が低下したりする。
本発明に使用する板状充填材(C)は、モース硬度が2.0〜7.0の範囲であることを特徴とする。モース硬度は、モース硬度1〜10の標準物質との擦り合わせによる傷の有無で判別することができる。板状充填材のモース硬度が上記範囲であることで、液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造、成形加工時において、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)と混練されることで、それぞれの分散性が向上し、得られる樹脂組成物の成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性に優れ、熱処理時の成形品の形状保持性に優れ、成形品の摺動性に優れる。板状充填材のモース硬度は、補強効果の向上による熱処理時の成形品の形状保持性の観点から2.5以上が好ましい。一方、成形品の摺動性の観点から6.5以下が好ましい。
板状充填材のモース硬度が2.0より小さい場合、液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造、成形加工時において、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)と混練されることで、板状充填材の折損、割れが生じやすく、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の分散性の低下や、板状充填材による補強効果の低下が生じるため、得られる樹脂組成物の成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性、および成形品の摺動性が低下する。一方、モース硬度が7.0より大きい場合、成形加工時に、射出成形機のシリンダー、スクリューの摩耗が大きくなり生産性が低下する。
本発明に使用する上記の板状充填材(C)は、2種以上を併用してもよい。また、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、さらにモース硬度が2.0〜7.0の板状充填材(C)以外の充填材を併用してもよい。本発明で併用することができる充填材は、特に限定されるものではないが、例えば、繊維状、ウィスカー状、粉末状、粒状などの充填材、モース硬度が2.0〜7.0の範囲外の板状充填材を挙げることができる。具体的には、繊維状、ウィスカー状充填材としては、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、および針状酸化チタンなどが挙げられる。粉状、粒状の充填材としては、シリカ、ガラスビーズ、酸化チタン、酸化亜鉛、およびポリリン酸カルシウムなどが挙げられる。モース硬度が2.0〜7.0の範囲外の板状充填材としては、タルク、カオリン、クレー、黒鉛、および二硫化モリブデンなどが挙げられる。
本発明に使用することができる上記の充填材は、その表面が公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。
板状充填材(C)の配合量は、全芳香族液晶性ポリエステル(A)100重量部に対して、5〜150重量部であることを特徴とする。板状充填材の配合量を5重量部以上とすることにより、耐熱性および機械強度をより向上させることができるため、成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性が向上し、熱処理時の成形品の形状保持性、成形品の摺動性に優れる。板状充填材の配合量は、15重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。また、板状充填材の配合量を150重量部以下とすることにより、流動性、柔軟性を向上させることができるため、成形品の熱処理時の形状保持性、成形品の摺動性に優れる。板状充填材の配合量は、150重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
本発明で使用する板状充填材(C)は、平均粒子径が10〜1000μmであることが好ましい。ここでいう平均粒子径は体積平均粒子径であり、前述の方法により求めることができる。板状充填材(C)の平均粒子径が10μm以上であると、補強効果に優れるため、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性が向上し、熱処理時の成形品の形状保持性が向上するため好ましい。15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。一方、板状充填材(C)の平均粒子系が1000μm以下であると、液晶性ポリエステル樹脂組成物中の分散性が向上するため、得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形品の摺動性が向上するため好ましい。900μm以下がより好ましく、700μm以下がさらに好ましい。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、板状充填材(C)の平均粒子径が、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の平均粒子径の0.1〜20倍であることが好ましい。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と板状充填材の平均粒子径の関係が上記範囲である場合、液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造時、成形加工時にレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と板状充填材とが混練されることで、それぞれの凝集が抑制され、得られる成形品中でレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と板状充填材がそれぞれ分散性に優れるため好ましい。レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と板状充填材の分散性向上の観点から、板状充填材(C)の平均粒子径は、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の平均粒子径の0.15倍以上が好ましく、0.3倍以上がより好ましい。一方、板状充填材の補強効果の向上の観点から、15倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましい。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに酸化防止剤、熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸等の長鎖脂肪酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、シリコーン、高級アルコール、高級脂肪酸アマイド、およびポリエチレンワックスなど。)、染料または顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤から選択される通常の添加剤を配合することが出来る。あるいは、全芳香族液晶性ポリエステル(A)以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。全芳香族液晶性ポリエステル(A)以外の重合体を配合する場合、液晶性ポリエステル樹脂組成物中の樹脂種の中で、全芳香族液晶性ポリエステル(A)の割合が最も多いことが好ましい。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物に、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、板状充填材、および他の添加剤等を配合する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、全芳香族液晶性ポリエステルにレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、板状充填材、およびその他の固体状の添加剤等を配合するドライブレンド法や、全芳香族液晶性ポリエステル、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、および板状充填材にその他の液体状の添加剤等を配合する溶液配合法、また、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、板状充填材、およびその他の添加剤を全芳香族液晶性ポリエステルの重合時に添加する方法や、全芳香族液晶性ポリエステルとレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、板状充填材、およびその他の添加剤を溶融混練する方法などを用いることができ、なかでも溶融混練する方法が好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、全芳香族液晶性ポリエステルの融点+50℃以下で溶融混練して液晶性ポリエステル樹脂組成物とすることができる。なかでも二軸押出機が好ましい。
二軸押出機については、全芳香族液晶性ポリエステルとレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、および板状充填材の分散性を向上させるため、ニーディング部を1箇所以上設けていることが好ましく、2箇所以上設けていることがより好ましい。ニーディング部の設置箇所は、例えば、板状充填材をサイドフィーダーから添加する場合、全芳香族液晶性ポリエステルの可塑化を促進させるために、板状充填材のサイドフィーダーより上流側に1箇所以上、全芳香族液晶性ポリエステルと板状充填材との分散性を向上させるため、サイドフィーダーよりも下流側に1箇所以上の計2箇所以上設置することが好ましい。
また、二軸押出機中の水分や混練中に生じた分解物を除去するため、ベント部を設けていることが好ましく、2箇所以上設けていることがより好ましい。ベント部の設置箇所は、例えば、板状充填材をサイドフィーダーから添加する場合、全芳香族液晶性ポリエステルの付着水分を除去するために、板状充填材を投入するサイドフィーダーより上流側に1箇所以上、溶融混練時の分解ガス成分、板状充填材供給時の持ち込み空気を除去するため、サイドフィーダーよりも下流側に1箇所以上の計2箇所以上設置することが好ましい。ベント部は、常圧下としてもよく、減圧下としてもよい。また、溶融混練時の最大せん断応力は5000〜20000Paとすることが好ましい。好ましくは、7500〜18000Pa、更に好ましくは、8000〜16000Paである。最大せん断応力は押出機中の樹脂温度、および押出機シリンダー径、スクリュー回転数、ニーディング部のクリアランスから算出した混練時の最大せん断速度において高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用いて測定することができる。溶融混練時の最大せん断応力を上記範囲とすることで、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、板状充填材の分散性を向上させつつ樹脂組成物の劣化が抑制されるため、成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性、成形品の摺動性に優れるため好ましい。
混練方法としては、1)全芳香族液晶性ポリエステル(A)、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)、板状充填材(C)およびその他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、2)全芳香族液晶性ポリエステル(A)、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)およびその他の添加剤を元込めフィーダーから投入して混練した後、板状充填材(C)およびその他添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、3)全芳香族液晶性ポリエステル(A)とレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)およびその他の添加剤を高濃度に含むマスターペレットを作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットを全芳香族液晶性ポリエステル(A)および板状充填材(C)と混練する方法(マスターペレット法)など、どの方法を用いてもかまわない。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの公知の溶融成形を行うことによって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する成形品に加工することが可能である。ここでいう成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品、シート、パイプ、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどの各種フィルム、未延伸糸、超延伸糸などの各種繊維などが挙げられる。特に加工性の観点から射出成形であることが好ましい。
このようにして得られる液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、リレーベース、リレー用スプール、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、基板間関節部品、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレイ部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、サーマルプロテクター、携帯電話内臓アンテナ、ウェアラブル端末部材、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、レンズホルダ、ベース、バレル、カバー、センサーカバー、アクチュエーターなどに代表されるカメラモジュール関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計、医療用器具などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、パワーウインド等の車載用モーターインシュレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ハンドル、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプベゼル、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、センサーなどに代表される自動車・車両関連部品などに用いることができる。
本発明の成形品は、上記各種用途の中でも、成形品表面の金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性に優れる点、および成形品の摺動性に優れる点を生かして、成形品表面に金属部を有する小型の電気・電子部品に有用であり、例えば、センサー、LEDランプ基板、カメラモジュール、携帯電話内蔵アンテナ、ウェアラブル端末部材などに用いられる。
本発明の成形品は、表面に金属部を有していることが好ましい。表面に金属部を形成させる方法としては特に限定されず、成形品への触媒付与を含む各種めっき処理による方法、2回成形により回路形成箇所以外へマスキングを施すマスク形成方法、レーザー照射による成形品表面の変性、部分除去による方法、およびそれらの組み合わせによるものが挙げられる。特にレーザーダイレクトストラクチャリング工法などに代表される、成形品へのレーザー照射によるパターン描画工程とめっき処理による金属化工程とを含む、レーザー照射部への選択的な金属部形成方法が、1回成形で成形品を作成可能なこと、回路の狭ピッチ化が容易なこと、回路パターンの変更時に金型変更が不要でレーザー照射パターンを変えるだけでよいことなどの利点があり好ましい。
金属部形成箇所に照射するレーザーについては、特に制限はなく、YVOレーザー、COレーザー、Arレーザー、およびエキシマレーザーなどが挙げられる。特に、基本波長1064nmまたは第2高波長532nmの波長で作動するNd;YAGレーザー、YVOレーザー、FAYbレーザーが、金属部の形成性に優れるため好ましい。また、レーザー光線の発振方式は連続発振レーザーであってもパルスレーザーであってもよい。金属部形成箇所に照射するレーザーは、成形品表面の熱劣化、溶融樹脂によるレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の埋没を抑制する点から、強いレーザー出力を短時間照射するパルスレーザーが好ましい。
上記方法により形成される金属部の金属種は、金、銀、銅、白金、亜鉛、スズ、ニッケル、カドミウム、クロム、およびそれらを含む合金などが挙げられ、特に金、銅、ニッケルが金属部の形成性、密着性の点から好ましい。また、金属部の安定性、導通性の向上の観点から、成形品の金属部上にめっき等の手法によりさらに異なる種類の金属種からなる金属層を形成してもよい。
上記の方法により得られた表面に金属部を有する成形品は、従来技術である回路を形成する基板とそれを保持する成形品からなる回路部材に比べ、省スペースであり、製造工程の簡略化が図れることから、小型の電気・電子部品としての使用に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。
各実施例および比較例に用いた全芳香族液晶性ポリエステル(A)を次に示す。
全芳香族液晶性ポリエステルの組成分析および特性評価は以下の方法により行った。
(1)全芳香族液晶性ポリエステルの組成分析
全芳香族液晶性ポリエステルの組成分析は、H−核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定により実施した。全芳香族液晶性ポリエステルをNMR試料管に50mg秤量し、溶媒(ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン−d=65/35(重量比)混合溶媒)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃でH−NMR測定を実施し、7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位に由来するピーク面積比から組成を分析した。
(2)全芳香族液晶性ポリエステルの融点(Tm)測定
示差走査熱量計DSC−7(パーキンエルマー製)により、全芳香族液晶性ポリエステルを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)を融点(Tm)とした。以下の製造例においては、融点をTmと記載する。
(3)全芳香族液晶性ポリエステルの溶融粘度測定
高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用い、全芳香族液晶性ポリエステルの融点+20℃に設定された高化式フローテスター炉内で、全芳香族液晶性ポリエステルを溶融させるため全芳香族液晶性ポリエステルを装填してから5分間保持した後に、せん断速度1000/秒で溶融粘度を測定した。
製造例1 全芳香族液晶性ポリエステル樹脂(A−1)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸932重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ハイドロキノン99重量部、テレフタル酸284重量部、イソフタル酸90重量部および無水酢酸1252重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして全芳香族液晶性ポリエステル(A−1)を得た。
この全芳香族液晶性ポリエステル(A−1)について組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が60.0モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が12.0モル%、ハイドロキノン由来の構造単位の割合が8.0モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が15.2モル%、イソフタル酸由来の構造単位の割合が4.8モル%であった。ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位とテレフタル酸由来の構造単位の合計は全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対して、75.2モル%であった。また、Tmは330℃、溶融粘度は28Pa・sであった。
製造例2 全芳香族液晶性ポリエステル(A−2)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル302重量部、ハイドロキノン119重量部、テレフタル酸247重量部、イソフタル酸202重量部および無水酢酸1302重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から330℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして全芳香族液晶性ポリエステル(A−2)を得た。
この全芳香族液晶性ポリエステル(A−2)について組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が53.8モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が13.8モル%、ハイドロキノン由来の構造単位の割合が9.2モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が12.7モル%、イソフタル酸由来の構造単位の割合が10.4モル%であった。ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位とテレフタル酸由来の構造単位の合計は全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対して、66.5モル%であった。また、Tmは310℃、溶融粘度は30Pa・sであった。
製造例3 全芳香族液晶性ポリエステル(A−3)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸1057重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル151重量部、ハイドロキノン59重量部、テレフタル酸202重量部、イソフタル酸22重量部および無水酢酸1152重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から365℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を365℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして全芳香族液晶性ポリエステル(A−3)を得た。
この全芳香族液晶性ポリエステル(A−3)について組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が73.9モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が7.8モル%、ハイドロキノン由来の構造単位の割合が5.2モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が11.7モル%、イソフタル酸由来の構造単位の割合が1.3モル%であった。ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位とテレフタル酸由来の構造単位の合計は全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対して、85.7モル%であった。また、Tmは351℃、溶融粘度は31Pa・sであった。
製造例4 液晶性ポリエステル(A−4)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸960重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、145℃から320℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶性ポリエステル(A−4)を得た。
この液晶性ポリエステル(A−4)について組成分析を行ったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が66.7モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が6.3モル%、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレンジオキシ単位の割合が10.4モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が16.7モル%であった。また、Tmは313℃、溶融粘度は13Pa・sであった。
各実施例および比較例において用いたレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)を次に示す。
(B−1):酸化銅(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−2):スズ(和光純薬製、平均粒子径75μm)
(B−3):ニッケル(和光純薬製、平均粒子径150μm)
(B−4):銅クロム酸化物 Black3702(アサヒ化成工業製、平均粒子径0.8μm)
(B−5):四酸化三鉄(関東化学製、平均粒子径3μm)
(B−6):リン酸銅(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−7):ピロリン酸銅(II)(関東化学製、平均粒子径1μm)
各実施例および比較例において用いた充填材(C)を次に示す。
(C−1):マイカ AB−25S(ヤマグチマイカ製、平均粒子径24μm、モース硬度2.8)
(C−2):マイカ AB−41(ヤマグチマイカ製、平均粒子径47μm、モース硬度2.8)
(C−3):ガラスフレーク REFG−112(日本板硝子製、平均粒子径600μm、モース硬度6.5)
(C−4):タルク NK64(富士タルク工業製、平均粒子径19μm、モース硬度1)
(C−5):ガラスミルドファイバー EPDE−40M−10A(日本電気硝子製、平均繊維長40μm、平均繊維径9μm、モース硬度6.5)
実施例1〜5、7〜9、11〜15、比較例1〜11
サイドフィーダーを備えた東芝機械製TEM35B型2軸押出機で、各製造例で得られた全芳香族液晶性ポリエステル(A−1)〜(A−4)と、全芳香族液晶性ポリエステル100重量部に対し、表1に示す配合量で、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B−1)〜(B−7)を元込めフィーダーから投入し、全芳香族液晶性ポリエステル100重量部に対し、表1に示す配合量で、充填材(C−1)〜(C−5)をサイドフィーダーから投入し、シリンダー温度を全芳香族液晶性ポリエステル(A)の融点+10℃に設定し、溶融混練してペレットとした。得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物のペレットを熱風乾燥後を用いて150℃で3時間乾燥した後、以下(1)〜(5)の評価を行った。結果は表1に示す。
(1)レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、板状充填材の平均粒子径測定
各実施例および比較例により得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物のペレット50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去し、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤および板状充填材の混合物を取り出した。得られた混合物を、ヨウ化メチレン(比重3.33)中に分散させ、回転数10000rpmで5分間遠心分離した後、浮遊した板状充填材をデカンテーションで取り出し、沈降したレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤をろ過により取り出す。得られたレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、板状充填材を100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定し、体積平均粒径を算出した。
(2)冷熱処理時の成形品表面の金属部密着性の評価
各実施例および比較例により得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を全芳香族液晶性ポリエステルの融点+20℃、金型温度を90℃として、70mm×70mm×1mm厚の角形成形品を成形した。得られた成形品表面に、パナソニック製LP−V10U FAYbレーザー装置を用い、波長1064nm、周波数50Hz、レーザー出力5.0W、走査速度3000mm/sの条件でレーザー照射を行った。その成形品に6μm厚の無電解銅めっき処理を実施し、その後、冷熱衝撃装置(ESPEC社製TSA−70L)にて、室温から5分で−40℃まで降温させ30分保持、その後5分で150℃まで昇温し30分保持を1サイクルとして10回繰り返す試験条件で冷熱処理を行った。その冷熱処理成形品のめっき表面を、市販のNTカッター(幅9mm、35°傾斜の刃)を用いて、1mm間隔のマス目が100個出来るよう、樹脂成形品に達する深さで切り傷を入れた。マス目にテープ(粘着力3.4〜3.9N/cmのニチバン製セロテープ(登録商標)、幅18mm)を十分に密着させ、テープの両端を持ち垂直方向に瞬間的に引き剥がし、めっき処理面が剥離せずに残ったマス目の数を測定した。また成形品表面にめっきが形成されなかったものは「×」とした。めっき処理面が剥離せずに残ったマス目の数(めっき処理面残存数)が多いほど、ヒートショック時の金属部の密着性に優れると評価した。
(3)摺動性の評価
各実施例および比較例により得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を全芳香族液晶性ポリエステルの融点+20℃、金型温度を90℃として、30mm×30mm×3.2mm厚の角形成形品を成形した。得られた成形品をスラスト摩耗試験機(鈴木式摩耗試験機)を用いて、相手材としてアルミニウム合金(5056)を用い、荷重P=5kgf/cm、速度V=20m/minの条件で角板の摩耗量を測定した。試験n数は5であり、値はその平均値であるとして測定した。摩耗量が少ないほど摺動性に優れていると評価した。
(4)熱処理時の形状保持性の評価
各実施例および比較例により得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を全芳香族液晶性ポリエステルの融点+20℃、金型温度を90℃として、70mm×70mm×1mm厚の角形成形品を成形した。得られた試験片を200℃で1時間熱処理した後に変形量を測定した。なお変形量は、水平な定盤の上に静置して、万能投影機(V−16A(Nikon製))を用いて、角板の四辺のいずれか1カ所を押さえた状態での、対角の水平定盤に対する浮き上がり量として測定した。浮き上がり量小さく測定できない場合は0.5mm以下とした。変形量が小さいほど、熱処理時の形状保持性に優れると評価した。
(5)金属部密着性のばらつきの評価
各実施例および比較例により得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いて(2)の評価を10個の成形品で実施した。10個の成形品のめっき処理面残存数の標準偏差を算出した。標準偏差の値が小さいほど金属部密着性のばらつきが少なく、成形品表面の金属部が安定して形成できると評価した。
Figure 0006841220
表1の結果から、本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、成形品表面に形成された金属部の冷熱処理時の密着性、熱処理時の成形品の形状保持性に優れ、また成形品の摺動性に優れていることがわかる。さらに特定のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の使用により、金属部密着性のばらつきが抑制され成形品表面の金属部の形成の安定性に優れていることがわかる。そのため、特に表面に金属部を有する電気・電子部品用途への使用に適しているといえる。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、成形品表面に形成された金属部の冷熱処理時の密着性に優れ、また熱処理時の成形品の形状保持性、成形品の摺動性に優れているため、電気・電子部品などに有用である。

Claims (7)

  1. 全芳香族液晶性ポリエステル(A)100重量部に対して、平均粒子径が1μm以上350μm以下であるレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)を3〜25重量部、モース硬度が2.0〜7.0の板状充填材(C)を5〜150重量部含むことを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  2. 前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)が、1種の金属種からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶性ポリステル樹脂組成物。
  3. 前記板状充填材(C)の平均粒子径が、前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(B)の平均粒子径の0.1〜20倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  4. 前記全芳香族液晶性ポリエステル(A)が、全芳香族液晶性ポリエステルの全構造単位100モル%に対する、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が60〜77モル%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶性ポリステル樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
  6. 表面に金属部を有することを特徴とする請求項に記載の成形品。
  7. 請求項に記載の成形品へのレーザー照射によるパターン描画工程とめっき処理による金属化工程とを含む、表面に金属部を有する成形品の製造方法。
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