JP6837050B2 - 塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法 - Google Patents

塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関する。詳細には、塩化ビニル系樹脂粉体に塩素ガスを接触させ、紫外線を照射することで塩素化反応を行う塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関する。
塩素化塩化ビニル系樹脂は塩素化されたことによって、塩化ビニル系樹脂よりも耐熱温度が高くなる。そのため、塩素化塩化ビニル系樹脂は、耐熱パイプ、耐熱工業板、耐熱フィルム及び耐熱シート等の種々の分野で使用されている。
塩素化塩化ビニル系樹脂の合成には、塩化ビニル系樹脂粉体を水性媒体中に懸濁させて得られた水性懸濁液に、塩素を供給しつつ、塩化ビニル系樹脂を塩素化する方法と、塩化ビニル系樹脂粉体と塩素を接触させて反応させる方法(例えば、特許文献1〜4)がある。
特開2002−275213号公報 特開2002−308930号公報 特開2002−317010号公報 特開2002−317011号公報
塩化ビニル系樹脂粉体と塩素を接触させて反応させる方法において、大規模に塩素化塩化ビニル系樹脂を生産するには、生産性を高めることが求められている。
本発明は、塩化ビニル系樹脂粉体に塩素ガスを接触させ、紫外線を照射することで塩素化反応を行う際の生産性を向上させた塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供する。
本発明は、塩化ビニル系樹脂粉体に塩素ガスを接触させるとともに、紫外線を照射することで塩素化反応を行う塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法において、前記塩化ビニル系樹脂粉体には、シリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーが混合されていることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関する。
前記無機フィラーは、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対して0.001〜1重量部混合されていることが好ましい。
前記無機フィラーは、平均粒子径が1〜500nmのシリカ及びカーボンブラックからなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。また、前記無機フィラーは、平均粒子径が500〜5000nmのタルクであることが好ましい。
前記塩化ビニル系樹脂粉体は、平均粒子径が25〜2500μmであることが好ましい。
前記塩素化反応は、流動層反応器を用いて行うことが好ましい。
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法によれば、高い生産性で塩素化塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
図1は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造装置の模式的側断面図である。 図2は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造装置の模式的側断面図である。 図3は、紫外線の照射強度の測定に用いた紫外線積算光量計(浜松フォトニクス株式会社製、コントローラー:C9536−02、センサー:H9958−02)におけるセンサーの相対分光応答度を示すグラフである。 図4は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造装置の模式的側断面図である。 図5は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造装置の模式的側断面図である。
本発明の発明者らは、粉体状の塩化ビニル系樹脂に塩素ガスを接触させつつ、紫外線を照射して塩素化反応を行うことで塩素化塩化ビニル系樹脂を製造する際の生産性を高めることについて鋭意検討した。その結果、驚くことに、塩化ビニル系樹脂粉体にシリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーを混合した状態で塩素ガスと接触させて塩素化反応を行うと、生産性が向上することを見出した。具体的には、塩化ビニル系樹脂粉体に、シリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーを混合した状態で塩素ガスと接触させて塩素化反応を行うことで、塩素化反応の他の条件が同じであれば、塩化ビニル系樹脂粉体に無機フィラーを混合していない場合と比較して、所定の塩素化反応率に至るまでの反応時間が短縮されることを見出した。生産性が高まるメカニズムは明らかではないが、塩素化反応を行った後に反応装置を観察したところ、塩化ビニル系樹脂粉体にシリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーを混合した場合の方が、塩化ビニル系樹脂粉体をそのまま用いた場合より、紫外線を照射する光源の表面や反応器内壁等の反応装置内部における樹脂付着量が大幅に低減されていた。この現象から、シリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーが光源の表面に塩化ビニル系樹脂粉体が付着することを抑制し、それゆえ、塩素化反応効率が高まり、反応時間が短縮されると推測される。また、反応装置内部における樹脂付着量が低減されることで、反応装置の洗浄頻度を少なくすることもできる。
本発明においては、塩素化反応時において、塩化ビニル系樹脂粉体にシリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーが混合されている必要がある。これらシリカ、カーボンブラック、タルク等の無機フィラーは、通常、樹脂組成物に対して、物性の向上や、増量剤、顔料などとして、成形加工時などに添加されるものである。本発明においては、驚くことに、上記無機フィラーの本来の使用用途とは異なり、塩化ビニル系樹脂粉体に、シリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーを混合した状態で塩素化反応を行うことで、塩化ビニル系樹脂粉体のみを用いた場合に比べて、塩素化反応の反応時間が短縮され、生産性が向上する。
前記無機フィラー、すなわちシリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーは、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対して0.001〜1重量部混合されていることが好ましい。前記無機フィラーがタルクの場合は、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対して0.005〜1重量部混合されていることがより好ましい。塩素化反応の反応時間を短縮しやすい観点から、シリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーは、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対して0.01重量部以上混合されていることがより好ましく、0.02重量部以上混合されていることがさらに好ましく、0.03重量部以上混合されていることがさらに好ましく、0.05重量部以上混合されていることがさらに好ましい。コストを低減する観点から、前記無機フィラーは、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対して0.75重量部以下混合されていることがより好ましく、0.5重量部以下混合されていることがさらに好ましい。
前記無機フィラーとして、シリカ及び/又はカーボンブラックを使用する場合は、ナノフィラーであることが好ましい。塩化ビニル系樹脂粉体と混合しやすく、反応時間を短縮しやすい観点から、前記シリカ及び/又はカーボンブラックは、平均粒子径が500nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、40nm以下であることが特に好ましい。また、前記シリカ及び/又はカーボンブラックは、混合時のハンドリング性の観点から、平均粒子径が1nm以上であることが好ましい。本発明の一実施形態において、シリカ又はカーボンブラックの平均粒子径は、シリカ又はカーボンブラックの粉体を水に分散した後、動的光散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した体積基準での粒子径分布における累積50%の粒子径を意味する。
前記無機フィラーとして、タルクを使用する場合は、塩化ビニル系樹脂粉体と混合しやすく、反応時間を短縮しやすい観点から、平均粒子径が5000nm以下であることが好ましく、2000nm以下であることがより好ましく、1500nm以下であることがさらに好ましく、1200nm以下であることが特に好ましい。また、前記タルクは、混合時のハンドリング性の観点から、平均粒子径が500nm以上であることが好ましい。本発明の一実施形態において、タルクの平均粒子径は、タルクの粉体を水に分散した後、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置を用い、屈折率を1.57に設定して測定した体積基準での粒子径分布における累積50%の粒子径を意味する。
前記シリカは、特に限定されないが、例えば、アドマテックス社製の「YC010C−SP3」、「YA050C−SP3」、「YC100C−SP3」及び「SC2500−SQ」等の市販品を用いてもよい。前記カーボンブラックは、特に限定されないが、例えば、三菱化学社製の「MA100」等の市販品を用いてもよい。前記タルクは、特に限定されないが、例えば、日本タルク社製の「D−800」、「FG−15」及び「P−3」、富士タルク社製の「FH105」及び「FG105」等の市販品を用いてもよい。
前記塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合方法は、特に限定されず、例えば、手動で混合してもよく、ボールミルや一般的に粉体の混合に用いられる装置を使用してもよい。混合装置は、具体的には、水平円筒型、V型、二重円錐型、揺動回転型等の容器回転型装置や、単軸リボン型、複軸パドル型、回転鋤形、二軸遊星攪拌型、円錐スクリュー型等の機械攪拌型の装置を使用するとよい。これらの装置の具体的な形状については、化学工学便覧(化学工学会編、改訂六版、876頁)に記載されている。
本発明において、塩化ビニル系樹脂粉体の粒子径は特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂粉体の流動性を高める観点及び塩素化反応を均一に進める観点から、例えば、平均粒子径が25〜2500μmであることが好ましく、35〜1500μmであることがより好ましい。また、前記塩化ビニル系樹脂粉体の粒子径分布も特に限定されないが、粉体の流動性を高める観点及び塩素化反応を均一に進める観点から、0.01〜3000μmであることが好ましく、10〜2000μmであることがより好ましい。本発明において、塩化ビニル系樹脂粉体の平均粒子径及び粒子径分布は、塩化ビニル系樹脂粉体を水に分散させた後、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製、LA―950)を用い、屈折率を1.54に設定して測定したものである。本明細書において、塩素化反応を行う反応器内に投入された塩化ビニル系樹脂粉体を粉体層ともいう。以下において、特に指摘がない場合、「反応器」とは、塩素化反応を行う反応器を意味する。
前記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単量体の単独重合体であってもよく、塩化ビニル単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。他の共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化アリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸エステル、ビニルエーテル等が挙げられる。
前記塩化ビニル系樹脂は、塩素化反応時において粉体であればよく、製造方法は特に限定されない。例えば、懸濁重合法、塊状重合法、気相重合法、乳化重合法等のいずれの方法で得られたものであってもよい。また、塩化ビニル系樹脂は、塩素化反応前に、上述した粒子径範囲になるように調整することが好ましい。
本発明で用いる塩素は、一般に工業的に用いられている塩素であれば、特に制限はない。また、塩素化反応の反応速度や反応温度を調節するために、塩素を塩素以外のガスで希釈しても良いが、窒素やアルゴン等の不活性ガスで希釈するのが好ましい。
本発明において、塩素化反応の反応器に供給する塩素の状態は、気体でもよく液体でもよい。一般に工業的に使用される塩素は、液体塩素を高圧ボンベに封入したものである。塩素を気体で供給する場合には、液体塩素ボンベから取り出した液体塩素を別の容器中で気化させた後に反応器に供給すればよい。液体塩素を反応器に供給する場合には、液体塩素ボンベから供給された液体塩素を、反応器内で気化させればよい。反応器内で塩素を気化させる方法は、気化熱が反応熱を奪い反応装置内の温度上昇を緩和する効果があり好ましい。塩化ビニル系樹脂の表面構造及び内部構造の変化を防ぐ観点から、液体塩素を反応器内で気化させた後に塩化ビニル系樹脂と接触させる必要がある。塩素化反応中に、塩素は連続的に供給されてもよく、断続的に供給されてもよい。
本発明において、原料として使用する塩素ガスは、塩素ガスボンベ等から供給される塩素ガス以外に、反応器から排出された塩化水素及び塩素を含む排出ガス中から塩化水素を除去した塩素を、循環回路によって反応器内に戻して使用することもできる。塩化水素を除去する方法としては、例えば、吸収液を入れた吸収瓶に通気して吸収液に塩化水素を吸収させる方法や、充填塔やスプレー塔のような一般的な排ガス洗浄塔に通気して吸収液に塩化水素を吸収させる方法等が挙げられる。吸収液は、塩化水素を選択的に吸収するものであればよく特に限定されないが、塩化水素が塩素と比較して水に極めて溶解し易い性質を利用して、水を吸収液として用いる方法が安価かつ簡便であり好ましい。
本発明において、塩化ビニル系樹脂粉体に塩素ガスを接触させる際、塩化ビニル系樹脂粉体は塩素化反応を行う反応器中で流動していることが好ましい。このように塩化ビニル系樹脂粉体が塩素化反応を行う反応器中で静止しているのではなく流動していることにより、気体の塩素と塩化ビニル系樹脂粉体粒子の接触が良好になる。塩化ビニル系樹脂粉体を流動させやすい観点から、塩化ビニル系樹脂粉体の粉体層中に気体を流通して粉体粒子を運動させる流動層を備えている流動層反応器を用いることが好ましい。流動層を用いる場合には、粉体を均一に流動させる観点から、流通する気体の流速は0.02m/s以上が好ましく、粉体粒子を飛散させない観点から、0.5m/s以下であることが好ましい。流動層以外に、従来用いられる粉体の反応装置に用いられる方法を使用してもよいし、混合装置、攪拌装置、燃焼装置、乾燥装置、粉砕装置、造粒装置等に利用される方法を応用してもよい。具体的には、水平円筒型、V型、二重円錐型、揺動回転型等の容器回転型装置や、単軸リボン型、複軸パドル型、回転鋤形、二軸遊星攪拌型、円錐スクリュー型等の機械攪拌型の装置を使用するとよい。これらの装置の具体的な形状については、化学工学便覧(化学工学会編、改訂六版、876頁)に記載されている。
本発明において、紫外線の役割は、塩素を励起して塩素ラジカルを発生させ、塩化ビニル系樹脂への塩素付加反応を促進させることにある。塩素は波長範囲が280〜420nmの紫外線に対して強い吸収帯を有することから、塩化ビニル系樹脂粉体と塩素ガスを接触させつつ、波長範囲が280〜420nmの紫外線を照射して塩素化反応を行うことが好ましい。照射する紫外線は280nm未満や420nmを超える波長の光を含んでいても良いが、エネルギー効率の観点からは、光源として、280〜420nmの波長範囲の紫外線を多く放出する光源を用いることが好ましい。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LED、有機EL、無機EL等が挙げられる。また、使用する光源の分光放射エネルギー分布において、波長範囲が280〜420nmの放射エネルギー(J)の合計が、150〜600nmの波長範囲の放射エネルギー(J)の合計の20%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、100%である、すなわち波長範囲が280〜420nmの紫外線のみを照射することが特に好ましい。特に、照射する波長範囲が狭く、単一波長に近い紫外線を照射できる観点から、光源は紫外線LED、有機EL及び無機ELからなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。光源の保護、冷却等の目的に応じて、光源を保護容器中に配置してもよい。光源の保護容器の材質は、光源からの紫外線の照射を妨げないものであればよい。例えば、光源の保護容器には、石英、パイレックス(登録商標)ガラス、硬質ガラス、軟質ガラス等の材料を使用することができるが、塩素化反応に効果的な紫外線領域の波長を有効に利用するためには、石英若しくはパイレックス(登録商標)ガラスを用いることが好ましい。本発明において、塩素化反応は、紫外線の照射の開始により開始し、紫外線の照射の終了により終了する。具体的には、紫外線を照射する光源の点灯により塩素化反応が開始し、紫外線を照射する光源の消灯により塩素化反応が終了する。本発明における塩素化反応の反応時間は、塩素化反応中紫外線が連続的に照射される場合には、紫外線の照射時間と同一になる。また、塩素化反応中紫外線が間欠的に照射される場合には、本発明における塩素化反応の反応時間は、紫外線が照射されている時間と消灯されている時間の総和になるが、塩素化反応そのものは、実際に紫外線が照射されている間でのみ進行する。
本発明において、紫外線を照射する光源は、塩化ビニル系樹脂粉体に紫外線を照射できればよく、その数も限定されず、1つでもよいが複数使用することもできる。また、その設置方法は特に限定されず、反応器の外側に配置してもよく、反応器の内部に配置してもよく、反応器の外側及び内部の両方に配置してもよい。光源を反応器の内部に設置する場合は、塩化ビニル系樹脂の粉体層に光源の全部又は一部を挿入してもよい。塩素による腐食を防止する観点から、光源は保護容器内に配置されている状態で反応器の内部に設置することが好ましい。例えば、塩素化反応を行う反応器の大きさが小さい場合には、粉体層の外部や反応器の外側から紫外線を照射すれば、塩化ビニル系樹脂の受光面積を大きく取りやすく効率的である。一方、商業規模で塩素化反応を行うために反応器が大型化する場合には、塩化ビニル系樹脂に紫外線を効率的に照射する観点からは、粉体層の内部に光源を挿入することが好ましく、さらに2つ以上の光源を粉体層内部に挿入して使用することがより好ましい。
本発明において、紫外線の照射強度は、塩素化反応を行うことができる範囲であれば、特に限定されない。例えば、得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の静的安定性等の品質を向上させる観点から、塩化ビニル系樹脂の塩素化反応中の波長範囲が280〜420nmの紫外線の照射強度は、塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりに対し0.0005〜7.0W(すなわち、0.0005〜7.0W/kg)であることが好ましい。本明細書において、特に指摘がない場合、「紫外線の照射強度」とは、波長範囲が280〜420nmの紫外線の照射強度を意味する。塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりに対する紫外線の照射強度は、0.0005W以上7.0W以下であることがより好ましく、0.0005W以上5.0W以下であることがさらに好ましく、0.0005W以上3W以下であることがさらに好ましく、0.0005W以上1.50W以下であることがさらにより好ましく、0.0005W以上1.0W以下であることがさらにより好ましい。
本発明の一実施形態において、「塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりに対する紫外線の照射強度」は、以下のように測定・算出するものである。なお、本発明でいう紫外線の照射強度とは、上述のとおり、波長範囲が280〜420nmの紫外線の照射強度である。本発明では、紫外線の照射強度の測定に、浜松フォトニクス株式会社製の紫外線積算光量計(コントローラー:C9536−02、センサー:H9958−02)を用いている。図3はそのセンサー(H9958−02)の相対分光応答特性を示す。本発明の一実施形態において、紫外線の照射強度の測定は、原則として上述した浜松フォトニクス株式会社製の紫外線積算光量計(コントローラー:C9536−02、センサー:H9958−02)を用いる。ただし、この紫外線積算光量計を入手できない場合には、その他の紫外線照射強度の測定器を用いて測定したデータを図3に示したセンサーの相対分光応答特性に基づいて補正する等により、同様に紫外線の照射強度を算出することもできる。
(1)紫外線の照射面積を測定する。光源が反応器の外側に配置されている場合は、反応器の内壁の位置において、光源からの紫外線があたる領域を確認し、その領域の面積を紫外線の照射面積(cm2)とする。例えば、図1に示す装置を用いる場合は、反応器の内壁の位置において、紫外線放射照度計(浜松フォトニクス株式会社製、コントローラー:C9536−02、センサー:H9958−02)を用い、紫外線LED光源からの紫外線があたる領域(10μW/cm2以上の紫外線強度が検出できる領域)を確認し、その領域の面積を測定する。光源が反応器の内部に配置されている場合は、光源の外表面の位置において、或いは、光源が保護容器内に配置されている場合は光源の保護容器の外表面の位置において、光源からの紫外線があたる領域を確認し、その領域の面積を紫外線の照射面積(cm2)とする。
(2)紫外線の照射面積を1cm角(1cm2)に分割して各分割領域の照射強度を測定する。なお、紫外線の照射面積を1cm角(1cm2)に分割した後に、1cm2未満の領域が残存する場合は、その分割領域の照射強度も測定する。具体的には、紫外線放射照度計(浜松フォトニクス株式会社製、コントローラー:C9536−02、センサー:H9958−02)を用いて、各分割領域の中心部とセンサーの中心部が重なるようにセンサーを当て、波長範囲が280〜420nmの紫外線の単位面積あたりの照射強度(W/cm2)を測定し、全ての分割領域の照射強度の算術平均値を本発明における単位面積あたりの照射強度とする。例えば、図1に示す装置を用いる場合は、反応器1の内壁の位置で、1cm2の領域ごとに、単位面積あたりの紫外線の照射強度(W/cm2)を測定し、それらの算出平均値を求める。なお、光源から照射される紫外線の単位面積あたりの照射強度の測定は、空気雰囲気下、かつ反応器内が空の状態で行う。
(3)反応器内に原料として仕込む塩化ビニル系樹脂粉体及び無機フィラーの混合物の総重量(kg)から、無機フィラーの添加重量を差し引いた値(塩化ビニル系樹脂粉体の重量)で、前記紫外線の照射面積を除した値を塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりの紫外線の照射面積(cm2)とする。
(4)上記より得られた単位面積あたりの紫外線の照射強度(W/cm2)と塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりの紫外線の照射面積(cm2)を乗じた値を塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりに対する紫外線の照射強度(W)とする。
塩化ビニル系樹脂の塩素化反応を行う反応器内の温度は、特に制限されないが、塩化ビニル系樹脂の流動を容易にしつつ、塩化ビニル系樹脂の劣化及び塩素化塩化ビニル系樹脂の着色を防止する観点から、10〜100℃であることが好ましく、25〜85℃であることがより好ましい。また、塩化ビニル系樹脂の塩素化反応は発熱反応なので、粉体層の除熱を行い、反応器内の温度を上述した範囲に保つことが好ましい。粉体層の加熱又は除熱は、例えば、反応器内に配置した伝熱管に熱水又は冷却水を通過させることで行うことができる。
上述した塩素化反応で得られた塩素化塩化ビニル系樹脂は、粒子内部及び/又は粒子表面に未反応の塩素や副生成物である塩化水素が含まれている場合が多く、反応後にそれら塩素や塩化水素を除去することが好ましい。塩素や塩化水素を除去する方法としては、窒素、空気、アルゴン、二酸化炭素等のガスを流通させた容器内で塩素化塩化ビニル系樹脂を撹拌したり流動層を形成させる気流洗浄法や、塩素化塩化ビニル系樹脂が入った容器を真空脱気して塩素や塩化水素を除去する真空脱気法等が挙げられる。
以下、図面を用いて説明する。本発明においては、例えば図1に示した反応装置を用いて、塩化ビニル系樹脂粉体に塩素ガスを接触させ、紫外線の照射下で塩素化反応を行い、塩素化塩化ビニル系樹脂を製造することができる。該反応装置100は、まず、パイレックス(登録商標)ガラス製の流動層反応器1(φ80mmの円筒型)に塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合物11を充填する。次に、循環ポンプ2を起動して、塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合物11を流動化させる。好ましい循環流量の範囲は、6.0〜150.7L/minである。循環流量は循環流量計10で測定することができる。その後、反応器1の内部に配置した伝熱管3で反応器1内の温度を、例えば40〜60℃になるように調整する。次いで、窒素供給弁4と排気弁5を開き、反応器1の内圧が例えば−30〜50kPa、好ましくは0〜30kPaとなるように調整しながら、反応器1の内部を100vol%の窒素で置換する。その後、窒素供給弁4を閉め、塩素供給弁6を開き、反応器1の内圧が例えば−30〜50kPa、好ましくは0〜30kPaとなるように調整しながら、反応器1の内部を100vol%の塩素ガスで置換する。塩素は圧力調整器31を備えた塩素ガスボンベ30から供給され、流量計32で塩素の流量を測定する。窒素は圧力調整器41を備えた窒素ガスボンベ40から供給され、流量計42で窒素の流量を測定する。なお、排気弁5を介して排出されるガスは塩素除害設備(図示なし)で処理される。次いで、反応器1の外部の所定の位置に設置した光源7を点灯して、塩化ビニル系樹脂粉体に紫外線を照射し、塩素化反応を行う。塩化ビニル系樹脂1kgあたりに対する紫外線の照射強度は、紫外線が塩化ビニル系樹脂を照射する領域の面積、紫外線の単位面積あたりの照射強度、原料として用いる塩化ビニル系樹脂粉体の総重量により調整することができる。塩素化反応の開始とともに、反応器1内の温度が上昇するが、熱電対8にて、反応器1内の温度を連続的に測定して調整する。温度調整にあたっては、例えば、冷却水を伝熱管3に流すことで、反応器1内の温度を調整してもよい。反応器1の出口から排出された塩化水素と塩素を含む排出ガス23は、水22を仕込んだ塩化水素吸収容器20に通気され、塩化水素は水22に吸収され塩素ガスは循環回路により循環されて反応器1に戻される。塩素化反応で消費された塩素ガスは、内圧調整弁9で反応器1の内圧を所定の値となるように調整しながら塩素供給弁6から自動的に追加することができる。塩素化反応率が所定の値になったところで、光源7を消灯し塩素化反応を終了する。塩素化反応終了後は、塩素ガスの流通を停止し、窒素供給弁4と排気弁5を開いて、反応器1の内部を窒素で置換し、塩素化塩化ビニル系樹脂を取り出す。
本発明においては、図2に示す反応装置を用いてもよい。図2に示す反応装置200は、反応器から排出されたガス中の塩素ガスを反応器に戻す循環回路を有せず、流動層反応器ではなく、ロータリーエバポレーターで回転させる反応器を備えている以外は、図1に示す反応装置100と同様の構成を有する。また、本発明においては、図4に示す反応装置を用いてもよい。図4に示す反応装置110は、反応器から排出されたガス中の塩素ガスを反応器に戻す循環回路を有しない以外は、図1に示す反応装置100と同様の構成を有する。具体的には、図4に示す反応装置110は、循環ポンプ2、排気弁5、内圧調整弁9、循環流量計10を備えていない以外は、図1に示す反応装置100と同様の構成を有する。また、本発明においては、図5に示す反応装置を用いても良い。図5に示す反応装置300は、反応器が異なる以外は、図2に示す反応装置200と同様の構成を有する。
本明細書において、塩素化反応率とは、塩化ビニル系樹脂1モル(62.5g)と、塩素1モル(71g)が反応して、塩素化塩化ビニル系樹脂1モル(97g)と塩化水素1モル(36.5g)が生成する場合を100%と考えるものである。塩素化反応率53%とは、塩化ビニル系樹脂62.5g(1モル)に対し、塩素37.63g(0.53モル)が反応し、塩素化塩化ビニル系樹脂80.785gと塩化水素19.345gが生成することを意味する。塩素化反応率は、塩素化反応中に発生した塩化水素の重量を測定し、塩化水素の重量と塩素化反応に用いた塩化ビニル系樹脂の重量に基づいて算出する。塩素化反応中に生成される塩化水素を所定量の水に吸収させ、該水溶液中の塩化水素濃度を電気伝導率計で測定し、塩化水素濃度及び水の重量に基づいて塩素化反応中に発生した塩化水素の重量を算出することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示した反応装置100を用いた。塩化ビニル系樹脂粉体0.5kg(100重量部)に対して無機フィラーであるシリカ(アドマテックス社製、品名「YC010C−SP3」、平均粒子径10nm)を25mg(0.005重量部)混合し、図1に示したパイレックス(登録商標)ガラス製の流動層反応器1(φ80mmの円筒型)に充填した。塩化ビニル系樹脂粉体は懸濁重合法で得た重合度1000の塩化ビニル単量体の単独重合体であり、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製、LA―950)で測定した粒子径分布は25〜600μmであり、平均粒子径は140μmであった。循環ポンプ2を起動して、循環流量90.4L/minで循環し、塩化ビニル系樹脂と無機フィラーの混合物11を流動化させた。循環流量は循環流量計10で測定した。その後、反応器1の内部に配置した伝熱管3で塩化ビニル系樹脂と無機フィラーの混合物11の温度を50℃に調整した。次いで、窒素供給弁4と排気弁5を開き、反応器1の内圧が10kPaとなるように調整しながら、1L/minの流量で30分間、反応器1の内部を100vol%の窒素で置換した。その後、窒素供給弁4を閉め、塩素供給弁6を開き、反応器1の内圧が10kPaとなるように調整しながら、1L/minの流量で30分間、反応器1の内部を100vol%の塩素ガスで置換した。塩素は圧力調整器31を備えた塩素ガスボンベ30から供給され、流量計32で塩素の流量を測定した。窒素は圧力調整器41を備えた窒素ガスボンベ40から供給され、流量計42で窒素の流量を測定した。なお、排気弁5を介して排出されるガスは塩素除害設備(図示なし)で処理された。次いで、反応器1の側面に設置した紫外線LED光源7(日亜化学工業株式会社製UV−LED素子NVSU233A、ピーク波長365nm、20個保有を使用)を点灯して、塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合物11に紫外線を照射し、塩素化反応を開始した。塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりに対する紫外線の照射強度は0.01Wになるようにした。具体的には、反応器1の内壁において、紫外線の照射面積は塩化ビニル系樹脂1kgあたりに対して10cm2であり、紫外線の単位面積あたりの照射強度は1mW/cm2であった。なお、紫外線の照射面積は、予め紫外線を透過しないビニールテープを反応器1の外壁に部分的に張ることで調整した。塩素化反応開始後塩化ビニル系樹脂と無機フィラーの混合物中に設置した熱電対8にて、反応器1内の温度を連続的に測定しながら反応を行った。反応器1内の温度は冷却水を伝熱管3に流し70℃となるように調整した。反応器1の出口から排出された塩化水素と塩素を含む排出ガス23を、5Lの水22を仕込んだ塩化水素吸収容器20に通気し、塩化水素を水22に吸収させ、電気伝導率計21(東亜DKK株式会社製、ME−112T型)にて塩化水素濃度を連続的に測定することで、塩素化反応中に発生した塩化水素の重量を計算した。塩素化反応中に発生した塩化水素の重量と反応器1内に仕込んだ塩化ビニル系樹脂粉体の重量から塩素化反応率を計算して、塩素化反応率を連続的に把握した。塩素化反応で消費された塩素ガスは、内圧調整弁9で反応器1の内圧が10kPaとなるように調整しながら塩素供給弁6から自動的に追加した。塩素化反応率が53.0%となったところで、紫外線LED光源7を消灯し塩素化反応を終了した。塩素化反応終了後は、塩素ガスの流通を停止し、窒素供給弁4と排気弁5を開いて、1L/minの流量で、30分間反応器1の内部を窒素で置換して、反応器1内部に残留する塩素ガスと、樹脂に吸着している塩素と塩化水素を洗浄除去し、塩素化塩化ビニル系樹脂を取り出した。なお、本実験で使用した紫外線LED(日亜化学工業株式会社製UV−LED素子NVSU233A)の波長範囲は350〜400nmであり、280〜420nmの紫外線の放射エネルギーの合計は、150〜600nmの波長範囲の光線の放射エネルギーの合計のほぼ100%となる。
(実施例2〜6)
塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するシリカの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例7〜8)
無機フィラーとしてアドマテックス社製の平均粒子径が50nmのシリカ(品名「YA050C−SP3」)を用い、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するシリカの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例9)
無機フィラーとしてアドマテックス社製の平均粒子径が100nmのシリカ(品名「YC100C−SP3」)を用いた以外は、実施例6と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例10)
無機フィラーとしてアドマテックス社製の平均粒子径が500nmのシリカ(品名「SC2500−SQ」)を用いた以外は、実施例6と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例11〜13)
無機フィラーとしてカーボンブラック(三菱化学社製、品名「MA100」、平均粒子径24nm)を用い、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するカーボンブラックの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例14〜15)
無機フィラーとしてタルク(日本タルク社製、品名「D−800」、平均粒子径800nm)を用い、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するタルクの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例16〜18)
無機フィラーとしてタルク(日本タルク社製、品名「FG−15」、平均粒子径1500nm)を用い、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するタルクの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例19)
無機フィラーとしてタルク(日本タルク社製、品名「P−3」、平均粒子径5000nm)を用い、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するタルクの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例20)
無機フィラーとしてタルク(富士タルク社製、品名「FH105」、平均粒子径5000nm)を用い、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するタルクの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例21)
無機フィラーとしてタルク(富士タルク社製、品名「FG105」、平均粒子径5000nm)を用い、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対するタルクの添加量を下記表1に示す量にした以外は、実施例1と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(比較例1)
無機フィラーを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(比較例2)
無機フィラーとして白石工業社製の平均粒子径が80nmの炭酸カルシウム(品名「白艶華CCR)を用いた以外は、実施例6と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(比較例3)
無機フィラーとして白石工業社製の平均粒子径が100nmの炭酸カルシウム(品名「vigot−10)を用いた以外は、実施例6と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(比較例4)
無機フィラーとして関東化学社製の平均粒子径が200nmの酸化チタン(IV)ルチル型(特級)を用いた以外は、実施例6と同様の条件で塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
(実施例22)
図2に示した反応装置200を用いた。反応器201(1Lのパイレックス(登録商標)ガラス製ナス型フラスコ)に塩化ビニル系樹脂粉体187.5g(100重量部)に対して無機フィラーであるシリカ(アドマテックス社製、品名「YC010C−SP3」、平均粒子径10nm)を937.5mg(0.5重量部)混合し充填した。塩化ビニル系樹脂粉体としては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。スターラー204で攪拌しながら60℃に保った恒温槽203中の温水に浸した反応器201をロータリーエバポレーター(図示無し)で矢印の方向に回転させた。窒素供給弁4を開き、反応器201の空間部分に200mL/minの流量で、窒素を60分間流通した。その後、窒素供給弁4を閉め、塩素供給弁6を開き、100vol%の塩素ガスを200mL/minの流量で30分間流通させた。30分後、塩素ガス流量を600mL/minに増加し、反応器201の表面から35cm離した位置に設置した400Wの高圧水銀灯205(セン特殊光源株式会社製、品名「ハンディキュアラブ400」、型番HLR400T−1)を点灯し、塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合物202に紫外線を照射し、塩素化反応を開始した。塩素化反応中、塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合物202中に設置した熱電対206にて、塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合物202の温度を連続的に測定しながら反応を行った。反応器201の内壁における紫外線の照射面積は、塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりに対して502cm2であり、紫外線の単位面積あたりの照射強度は16.7mW/cm2であったことから、塩化ビニル系樹脂粉体1kgあたりに対する紫外線の照射強度は8.4Wであった。なお、高圧水銀灯は、波長範囲が280〜420nmの紫外線に加えて、波長が420nmを超える光線も照射するが、上述したとおり、波長範囲が280〜420nmの紫外線の単位面積あたりの照射強度を紫外線の単位面積あたりの照射強度として算出した結果、本実験において塩化ビニル系樹脂1kgあたりに対する紫外線の照射強度は8.40Wであった。反応器201から排出された塩化水素と塩素を含む排出ガス23を、5Lの水22を仕込んだ塩化水素吸収容器20に通気し、塩化水素を水22に吸収させ、電気伝導率計21(東亜DKK株式会社製、ME−112T型)にて塩化水素濃度を連続的に測定することで、塩素化反応中に発生した塩化水素の重量を計算した。塩素化反応中に発生した塩化水素の重量と反応器内に仕込んだ塩化ビニル系樹脂の重量から塩素化反応率を計算して、塩素化反応率を連続的に把握した。なお、塩化水素を水に吸収させた後の排出ガス50は塩素除害設備(図示なし)で除害される。塩素化反応率が53.0%となったところで、高圧水銀灯205を消灯して反応を終了した。反応終了後は、塩素ガスの流通を停止し、窒素ガスを600mL/minの流量で、100分間流通して塩素を置換してから、塩素化塩化ビニル系樹脂を取り出した。なお、400Wの高圧水銀灯(セン特殊光源株式会社製、品名「ハンディキュアラブ400」、型番HLR400T−1)の分光放射エネルギー分布において、波長範囲が280〜420nmの紫外線の放射エネルギーの合計は、150〜600nmの波長範囲の光線の放射エネルギーの合計の51%である。
(比較例5)
無機フィラーを添加しなかった以外は、実施例22と同様にして塩素化塩化ビニル系樹脂を作製した。
実施例1〜13、22及び比較例2〜4において、無機フィラーの平均粒子径とは、無機フィラー(シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム又は酸化チタン)の粉体を水に分散した後、動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、UPA−150)を用いて測定した体積基準での粒子径分布における累積50%の粒子径である。実施例14〜21において、無機フィラーの平均粒子径とは、無機フィラー(タルク)の粉体を水に分散した後、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製、LA−950)を用いて測定した体積基準での粒子径分布における累積50%の粒子径である。
実施例1〜22及び比較例1〜5において、塩素化反応率が53%になるまでの反応時間を下記表1に示した。
Figure 0006837050
上記表1の実施例1〜21と比較例1の対比、及び実施例22と比較例5の対比から、同じ塩素化反応の条件下で、所定の塩素化反応率になるまでに必要な反応時間が、塩化ビニル系樹脂粉体にシリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーを混合した実施例の方が短く、生産性が向上していることが分かった。
一方、無機フィラーとして炭酸カルシウム又は酸化チタンを用いた比較例2〜4と、無機フィラーを用いていない比較例1は反応時間が同じであった。塩素化反応の反応時間を短縮する効果は、塩化ビニル系樹脂粉体にシリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーを混合した状態で塩素化反応を行ったことによる特有の効果であった。
シリカは、通常、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物において、樹脂の増量や衝撃強度を向上する目的で添加されるものであり、カーボンブラックは、通常、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物において、顔料として用いるものであり、タルクは、通常、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物において、衝撃強度や耐熱性を向上させる目的で添加されるものである。従って、本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法で得られた塩素化塩化ビニル系樹脂は、特段無機フィラーを分離除去することなく、そのまま更なる加工や成形等に用いることもできる。その場合、塩素化反応時に使用する無機フィラーの種類や混合量は、当該加工や成形の目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対して前記無機フィラーを0.001〜1重量部の範囲で混合して塩素化反応を行うのが好ましい。
1 流動層反応器
2 循環ポンプ
3 伝熱管
4 窒素供給弁
5 排気弁
6 塩素供給弁
7 紫外線LED光源
8、206、305 熱電対
9 内圧調整弁
10、32、42 流量計
11、202、302 塩化ビニル系樹脂粉体と無機フィラーの混合物
20 塩化水素吸収容器
21 電気伝導率計
22 水
23、50 排出ガス
30 塩素ガスボンベ
31、41 圧力調整器
40 窒素ガスボンベ
100、110、200、300 反応装置
201 反応器(ナス型フラスコ)
203 恒温槽
204 スターラー
205、304 高圧水銀灯
301 反応器(ハステロイC22製)
303 温度調節ジャケット

Claims (6)

  1. 塩化ビニル系樹脂粉体に塩素ガスを接触させるとともに、紫外線を照射することで塩素化反応を行う塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法において、
    前記塩化ビニル系樹脂粉体には、シリカ、カーボンブラック及びタルクからなる群から選ばれる一種以上の無機フィラーが混合されていることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  2. 前記無機フィラーは、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部に対して0.001〜1重量部混合されている請求項1に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  3. 前記無機フィラーは、平均粒子径が1〜500nmのシリカ及びカーボンブラックからなる群から選ばれる一種以上である請求項1又は2に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  4. 前記無機フィラーは、平均粒子径が500〜5000nmのタルクである請求項1又は2に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  5. 前記塩化ビニル系樹脂粉体は、平均粒子径が25〜2500μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  6. 前記塩素化反応は、流動層反応器を用いて行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
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