JP2007056124A - 樹脂の分解装置及び分解方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 流動化ガスと攪拌の両方で固体粒子を流動化させるに際して、流動化ガスの流量及び攪拌動力を低減でき、長期間にわたり安定した樹脂の分解方法を提供する。
【解決手段】
砂、セラミクス粒子、金属粒子等の固体粒子を充填した流動層に攪拌機及び窒素、水蒸気等の流動化ガス分散器を配設した樹脂の分解装置であって、攪拌装置と流動化ガスの両方を利用して固体粒子を流動化し、フィーダーで樹脂をこの流動層内に供給し、流動層の側面から、または伝熱管により流動層内部から加熱ことにより、或いは流動化ガスを予め加熱する等により、樹脂を加熱、分解し、分解生成物を冷却機にて冷却し、回収容器に回収する装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は樹脂の分解方法に関する。特に、固体粒子の存在下で樹脂を加熱することにより樹脂を分解する方法に関する。
固体粒子の存在下で樹脂を加熱することにより樹脂を分解する方法において、加熱の効率の向上、温度の均一化のために、固体粒子を流動化させることが一般的に行われている。
流動化ガスで固体粒子を流動化させる流動層を用いて樹脂を分解する方法を、非特許文献1、特許文献1が開示している。
流動層に樹脂を入れない場合、流動化ガスだけで固体粒子を安定的に流動化することは可能である。流動化ガス速度(流動化ガスの体積流量を流動化ガスが供給される場所、すなわちガス分散器の面積で割った値)が最小流動化ガス速度(固体粒子を流動化させるのに必要な最小の速度)の何倍であるかによって流動状態がおおよそ決まるが、一般に流動化ガス速度が大きいほど流動層内の固体粒子の流動は良好になることが知られている。しかしながら、流動層内で樹脂を分解しようとするとその流動状態は、樹脂が無い場合と異なってくる。その理由は、樹脂は溶融状態で粘度が大きく、また、粘着性を有するからである。そのため、樹脂の存在により、固体粒子の流動は阻害される。このような状況下、流動層内で樹脂を分解しようとする場合には、樹脂が無い場合と比べ流動化ガスを多く必要とするのが実情である。しかしながら、流動化ガス流量を多くすると、樹脂の分解生成物の冷却、及び回収が困難になる問題があった。すなわち流動化ガスが過多であるために、樹脂の分解生成物を十分に回収できず、回収できなかった分解生成物が系外に出て行く問題があった。このように流動化ガスだけで固体粒子を流動化させる流動層では、目的とする樹脂の分解生成物を効率的に得ることができない。
また、攪拌機だけで固体粒子を流動化させながら樹脂を分解する方法を、特許文献2が開示している。この公報には、撹拌の動力については記載されていないが、一般に固体粒子を撹拌するには過大の動力を必要とする。実験用の小規模の装置では実施することが可能な場合もあるが、それを工業的に行う大規模設備の場合には、撹拌に必要な動力が過多となる問題があり、コスト的な観点から実施できないのが実情である。
Journal of Analytical and Applied Pyrolysis、1991年、19号、311〜318頁、著者 W.Kaminsky、J.Franck、出版社 Elsevier Science。 米国特許第5663420号明細書 特開平7−89900号公報
固体粒子の存在下で樹脂を加熱することにより樹脂を分解する方法において、流動化ガスだけで固体粒子を流動させるには流動化ガスが過多となる問題があった。また撹拌だけで固体粒子を流動化させるには撹拌に必要な動力が過多である問題があった。本発明はこれらの問題を解決することを目標とする。
本発明の要旨は、固体粒子を充填した流動層内に攪拌機を配設し、流動層下部に流動化ガス分散器を配設した樹脂の分解装置にある。また流動化ガス及び撹拌機の両方で流動化させた固体粒子の存在下で樹脂を加熱することによる樹脂の分解方法にある。
本発明によれば、流動化ガスだけで固体粒子を流動化させる場合よりその流動化ガスの流量を低減でき、また、撹拌機だけで固体粒子を流動化させる場合よりも撹拌動力を低減できる。また、流動化ガスと撹拌の両方で固体粒子を流動化させることで、長期にわたり安定に樹脂の分解を連続的に実施でき、効率的に樹脂の分解生成物を得ることができる。
本発明を実施するための装置として、固体粒子を充填した流動層内に攪拌機を配設し、流動層下部に流動化ガス分散器を配設した樹脂の分解装置が挙げられる。本発明を実施するための装置は、樹脂を供給するためのフィーダー、樹脂の分解装置、流動化ガス供給部、流動層内或いは流動化ガスの加熱装置、樹脂の分解生成物を冷却するための冷却機、冷却したものを回収するための回収容器からなるものが好ましく、その概要を図1に示す。
樹脂の分解装置は、攪拌装置を有するものであり、その攪拌装置は、攪拌翼、シャフトからなる攪拌機と、モーター等の駆動部から構成される。固体粒子の流動化は、攪拌機と、流動化ガスの両方を利用して行う。
流動層の構造は、固体粒子の流動化に支障のないものであれば、特に制限はないが、円筒状のもの、或いは断面が正方形や長方形の筒状のものが挙げられる。またその材質は、耐熱性、耐摩耗性等の観点から、鉄、ステンレス等が好ましい。
流動層(1)には、その内部に撹拌機(2)、及び、その下部には流動化ガスを均一に分散させるための分散器(3)が設置されている。分解しようとする樹脂は、フィーダー(4)で供給する。分解生成物と流動化ガスの混合物は冷却機(5)に導かれ冷却される。冷却により液化したものは回収容器(6)に回収される。
流動化ガスの体積流量を流動化ガスが供給される場所、すなわちガス拡散器の面積で割った値である流動化ガス速度は、最小流動化ガス速度(Umf)の4倍以下とするのが、分解生成物の効率的な回収の観点から好ましい。また、流動化ガス速度は、Umfの0.1倍以上とするのが、固体粒子を攪拌機で流動化させるために必要な攪拌動力を低減する観点から好ましい。
ここで、最小流動化ガス速度(Umf)とは、撹拌機を使用せず流動化ガスだけで固体粒子を流動化する場合に、必要とされる最小のガス速度である。Umfは、以下のErgunの式で計算される(流動層ハンドブック、発行所:培風館、発行日:1999年3月25日、51〜53頁)。
Ergunの式
Umf=μ×Remf/(dp×ρf)
この式の中の、Remf(レイノルズ数)は以下の式で計算される。
Remf=〔(C+C×Ar〕0.5−C
この式の中の、Ar(アルキメデス数)は以下の式で計算される。
Ar=dp×ρf×(ρp−ρf)×g/μ
Umf:最小流動化ガス速度 (m/sec)
μ:流動化ガスの粘度(Pa・sec)
dp:固体粒子の直径(m)
ρp:固体粒子のみかけ密度(kg/m
ρf:流動化ガスの密度(kg/m
g:重力加速度9.8(m/sec
、Cは何れも定数で、Wen and Yu(流動層ハンドブック、発行所:培風館、発行日:1999年3月25日、52頁)によると、
:33.7
:0.0408
である。
流動化ガスの質量流量(kg/hr)は、分解生成物の効率的な回収の観点から、樹脂の供給速度(kg/hr)の1.8倍以下とするのが好ましい。また、流動化ガスの質量流量は、固体粒子を攪拌機で流動化させるために必要な攪拌動力を低減する観点から、樹脂の供給速度の0.02倍以上とするのが好ましい。
流動化ガスの種類は、分解しようとする樹脂の種類、得ようとする分解生成物によって異なるが、空気、酸素、窒素、水蒸気、などが挙げられる。特に、樹脂を分解して分解油や樹脂を構成するモノマーを得ようとする場合には、不活性ガスとするのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、水蒸気が特に好ましい。
流動化ガスの温度は特に限定されず、室温で供給しても良いし、加熱して供給しても良い。流動化ガスの加熱温度の上限は保とうとする流動層内の温度のプラス50℃とするのが好ましい。不活性ガスの雰囲気下で樹脂の分解を行う場合、樹脂の分解は一般に吸熱反応なので、流動化ガスを加熱して供給すると熱源として利用できるので好ましい。
流動化ガス分散器については、特に制限はないが、例えば、多孔板、スリット板、メッシュ板、焼結フィルター、ノズル、キャップ付ノズル等が挙げられる。
単位体積当たりの攪拌動力は、撹拌に必要な動力(W)を、流動化していない状態の固体粒子の充填容積で割った値で計算され、単位はW/mで記すものとする。単位体積当たりの攪拌動力は、エネルギー負荷の低減の観点から、流動化ガスを全く流さない時の80%以下とするのが好ましい。本発明の要点である流動化ガスと撹拌機の併用により、撹拌に要する動力が低減でき、エネルギー負荷を低減できる。
攪拌の単位体積当たりの動力を、流動化ガスを全く流さない時の80%以下とし、かつ、流動化ガス速度が最小流動化ガス速度(Umf)の4倍以下とすることで、攪拌に要するエネルギーの低減と分解生成物の効果的な回収の両立が可能となる。
また、攪拌の単位体積当たりの動力を、流動化ガスを全く流さない時の80%以下とし、かつ、流動化ガスの質量流量(kg/hr)を樹脂の供給速度(kg/hr)の1.8倍以下とすることで、攪拌に要するエネルギーの低減と分解生成物の効果的な回収の両立が可能となる。
撹拌翼の形状は特に限定されず、パドル翼、アンカー翼、リボン翼、ヘリカル翼、プロペラ翼、タービン翼、等が例示される。樹脂を上部から供給する場合には、装置内が下降流を形成する撹拌翼が好ましい。樹脂を下部ないし横から供給する場合には、装置内が上昇流を形成する撹拌翼が好ましい。
固体粒子として、砂、セラミクス粒子、金属粒子、金属酸化物粒子、金属水酸化物粒子、金属ハロゲン化物粒子、等が例示される。固体粒子は1種類であっても良いし、2種類以上の物を混合して使用してもよい。固体粒子は、樹脂の分解に不活性な物であってもよいし、樹脂の分解を促進するような物であってもよいし、樹脂から生成する有害な物質を吸収するような物であってもよい。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂などのように樹脂中に塩素を含む樹脂を加熱分解すると塩素、塩化水素、塩素含有物質が生成する。固体粒子として酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、等を中和剤或いは吸収剤として利用して、塩素、塩化水素、塩素含有物質を中和、或いは吸収するのが好ましい。
固体粒子の大きさは特に制限はないが、その取り扱い性の観点から、直径、或いは一辺の長さが0.01mm〜20mmが好ましく、0.05mm〜10mmが特に好ましい。樹脂の分解を行ううちに、固体粒子表面には残渣やコークスが堆積してくるので、攪拌機を備えた流動層からその固体粒子を連続的、または非連続的に取り出してもよい。また、取り出した量と同じ量の固体粒子をその分解装置へ追加するのが好ましい。取り出した固体粒子は、空気中で燃焼すると表面の残渣等を除去できるので、それを再利用することができる。また、塩素含有物の中和のために供給した中和剤は、中和反応により塩化物等になるので、その生成した塩化物等を取り出すのが好ましい。固体粒子や中和により生成した物を取り出す方法として、攪拌機を備えた流動層の側面に粒子排出装置を設置する方法が例示される。
樹脂の供給場所に限定はなく、装置の上部から供給してもよいし、或いは側面から供給してもよい。樹脂の供給装置としては、定量供給の観点から、フィーダーを用いるのが好ましい。
樹脂を固体で供給する場合には、その大きさは特に限定はないが、取り扱い性、供給安定性、分解装置内で分散性の観点から、一つの樹脂片の最長部が20mm以下とするのが好ましく、10mm以下とするのが特に好ましい。
固体状の樹脂を加熱して、溶融状態にして分解装置に供給してもよい。また、樹脂を有機溶媒等に溶解、或いは膨潤、或いは分散して供給してもよい。
本発明で適用できる樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、等が例示され、単一の樹脂であってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。尚、ここで(メタ)アクリルとは、アクリル或いはメタクリルのことをいう。
前記加熱分解による主生成物として、ポリエチレンやポリプロピレンからはパラフィンやワックスが、ポリエチレンテレフタレートからはテレフタル酸が、ポリカーボネートからはフェノール類が、ポリスチレンからはスチレンモノマーが、(メタ)アクリル樹脂からは(メタ)アクリルモノマーが得られる。
特に(メタ)アクリル樹脂は加熱分解によりそれを構成するモノマーが、他の樹脂と比較して高い比率で得られることから、本発明を適用する価値がある。
(メタ)アクリル樹脂を構成する主要なモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらのエステルである。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂は、上記以外の他のモノマーを共重合成分として含んでいてもよい。他のモノマーとしては、無水マレイン酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂には、モノマーを高収率で回収する観点から、(メタ)アクリル樹脂を構成する全モノマー100質量%中、メタクリル酸メチルを50質量%以上、構成単位として含んでいることが好ましく、メタクリル酸メチルを70質量%以上、構成単位として含んでいることが特に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、他のポリマーと混合されていてもよい。また、(メタ)アクリル樹脂は、充填剤を含む複合体であってもよい。充填剤としては、水酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、タルク、クレイ等が挙げられる。充填剤の配合量は、(メタ)アクリル樹脂と充填剤との合計100質量部のうち、物性、外観、費用等の観点から0.1〜75質量部が好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂は、充填剤以外の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、顔料、染料、補強剤、各種安定剤等が挙げられる。
装置の加熱方法は、側面から加熱する方法のほか、伝熱管を装置内に入れたり、流動化ガスを予め加熱する等の方法を利用できる。
樹脂の分解による分解生成物と流動化ガスの混合ガスは、冷却機に導かれ冷却される。冷却機としては、特に制限はないが、例えば、管式熱交換器、プレート式熱交換器、スクラバー、スプレー塔等が挙げられる。
冷却により液化した分解生成物の大部分は回収容器に回収され、液化しない分解生成物の一部は冷却機の上部より出て行き、廃ガス処理装置で処理される。流動化ガスが非凝縮性(例、窒素)の場合には、流動化ガスは冷却機の上部より系外に出て行く。流動化ガスが凝縮性(例、水蒸気)の場合には、大部分は分解生成物と一緒に回収液に回収され、一部は冷却機の上部より系外に出て行く。
このようにして得られた分解生成物は、燃料等として使用できる。(メタ)アクリル樹脂の場合のようにそれを構成するモノマーを得ることができる場合には、再度樹脂を製造するための原料としても使用できる。
分解生成物はそのまま利用してもよいし、蒸留等により精製してから利用してもよい。本発明を実施するための装置第二の例を図2に示す。この例には、分解装置の中に伝熱管が設置されている。樹脂の分解は一般に吸熱反応であるので、伝熱管を利用することで熱を効率よく供給できる。特に、分解装置を大きくする場合には、特に有効である。伝熱管は、熱風、加熱された媒体を流す構造である。
以下、実施例を示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
[最小流動化ガス速度(Umf)の算出]
まず450℃での窒素、550℃での窒素及び450℃での水蒸気の密度、粘度を推算した。
密度については、ボイル−シャルルの式を利用した。窒素は0℃、0.1MPa(絶対圧力)で22.4リットル/molで、450℃、0.1MPaでは22.4×(273+450)/273=59.3リットル/molである。窒素は1molが28gであることから、450℃での密度は0.47kg/mと計算された。
一方、550℃、0.1MPaでは22.4×(273+550)/273=67.5リットル/molである。窒素は1molが28gであることから、550℃での密度は0.41kg/mと計算された。
同様に、水蒸気は1molが18gであることから、450℃における水蒸気の密度は0.30kg/mと計算された。
粘度については、流動層ハンドブック(発行所:培風館、発行日:1999年3月25日、412頁)に記載の推算式を利用した。
窒素のT(絶対温度、K)における粘度μ(Pa・sec)は
μ=4.57×T0.65/10
水蒸気のT(絶対温度、K)における粘度μ(Pa・sec)は
μ=3.60×T0.65/10
となった。
この推算式から各粘度は以下のように算出された。
窒素の450℃における粘度μ=3.3×10−5(Pa・sec)
窒素の550℃における粘度μ=3.6×10−5(Pa・sec)
水蒸気の450℃における粘度μ=2.6×10−5(Pa・sec)
以上の密度、粘度の数値を前記Ergunの式に代入することにより、450℃又は550℃、0.1MPaにおける、流動化ガスとして窒素、或いは水蒸気を用いた時のUmfを算出した。尚、固体粒子として砂を使用し、砂の直径0.3mm、みかけ密度2500kg/mとした。
窒素450℃の場合には、Umf=0.040(m/sec)
窒素550℃の場合には、Umf=0.037(m/sec)
水蒸気450℃の場合には、Umf=0.051(m/sec)
[樹脂A]
樹脂はメタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略記する。)単位100%からなる樹脂で、質量平均分子量40万である。一辺が3mm以下のペレット状とし、室温で供給した。
[樹脂Aの分解の評価]
(1)流動化ガスが窒素の場合
液収率を以下の式で定義する。
液収率(%)=回収液の質量速度(kg/hr)/樹脂の供給速度(kg/hr)×100
回収液中のMMA濃度(質量%)は、ガスクロマトグラフィーで測定する。ガスクロマトグラフィーとして、(株)島津製作所製、GC−17Aを使用した。溶媒にはN,N−ジメチルホルムアミドを使用した。あらかじめ検量線を作成しておき、回収した液体のガスクロマトグラフィーの結果から、液中のMMA濃度を算出した。
MMA収率(%)は以下の式で定義する。
MMA収率(%)=液収率(%)×回収液中のMMA濃度(%)/100
(2)流動化ガスが水蒸気の場合
分解生成物と水蒸気の混合ガスを冷却すると容器に油相と水相の2相が得られた。MMAは、油相と水相の両方に存在するので、MMA収率(%)は油相のMMA収率(%)+水相のMMA収率(%)で計算された。油相のMMA収率は、流動化ガスが窒素の場合に記載したものと同じ方法で求めた。水相のMMA収率(%)は以下の式で定義する。
水相のMMA収率(%)=水相の生成速度(kg/hr)×水相中のMMA濃度(質量%)/樹脂の供給速度(kg/hr)
水相中のMMA濃度も、前項記載と同様にガスクロマトグラフィーで測定した。
[攪拌機の動力測定]
攪拌機に備えた動力計(Heidon社製、タイプRX)で測定した。
[実施例1]
図1に示す撹拌機を備えた流動層を用いて実施した。また、大気圧下で実施した。その装置の流動化ガスが流される部分は直径16cmの円筒状で、その下部に流動化ガスを分散させるために焼結金属フィルター(富士フィルター工業株式会社製)からなる分散器(直径18cmで、中心から直径16cmまでの部分がフィルターで、その外周部は取り付けのための縁であり、厚さ1.6mm、ステンレス製、フランジ取り付け)を設置した。流動層の側面(外側)には、電気ヒーター(マイクロヒーター、日本ヒーター株式会社製、容量5kW)を、分散器の取り付け位置から40cmまでの高さ全体に均等に設置し、その上に断熱材を覆った。使用した固体粒子は天然川砂(株式会社昌栄マテリアル、エバラロズナ)で、平均粒子径(直径)は0.3mm、みかけ密度は2500kg/mである。この砂を分散器から30cmの高さまで充填した。充填容積は、6リットルと計算された。
撹拌翼は二枚の傾斜パドル翼を4段にしたものを用いた。パドル二枚の直径は140mm、幅20mm、傾斜角度45度、パドル間のピッチは60mmとした。前後の段のパドル翼は直交するようにした。撹拌速度は毎分50回転(50rpm)とした。
窒素を全く流さない状態で、この条件で撹拌機を運転した場合には、動力は70Wで、その単位体積あたりの動力は、70/0.006/1000=11.7kW/mであった。
流動化ガスとして、450℃に加熱した窒素を8m/hrで供給した。一方、流動層の側面では電気ヒーターにより加熱し、分解装置内の温度が450℃になるようにした。流動化ガス速度は0.11m/secと計算された。これはUmf=0.040m/secの2.8倍であった。この状態で撹拌機を運転した時の動力は15Wであり、単位体積あたりの動力は2.5kW/mであった。
樹脂Aを、分散器から10cm上側の位置の側面から、3kg/hrで供給した。窒素の450℃における密度は0.47kg/mであるので、体積流量8m/hrは質量流量に換算すると、3.76kg/hrになった。したがって、流動化ガス質量流量/樹脂供給速度は、3.76/3=1.25と計算された。
分解装置から出てくる樹脂Aの分解生成物と窒素からなる混合ガスを冷却機で、その混合ガスの温度を0℃まで冷却し、分解生成物を液化させ回収し、一方、窒素は系外に排出した。冷却機には−20℃の冷媒を流した。24時間にわたり安定な運転が実施できた。平均して、冷却機の下に設置した容器に冷却した液を2.82kg/hrで回収した。液収率は2.82/3.0×100=94.0%と計算された。回収した液中のMMA濃度は97.7%であった。MMA収率は、94.0×97.7/100=91.8%と計算された。
[比較例1]
撹拌機を備えない流動層を用いて実施した以外は、実施例1と同様な操作を実施した。すなわち、流動化ガス(窒素)だけで砂の流動を行った。
樹脂Aの供給開始から約30分までは運転できたが、その後徐々に砂の流動が不十分になり、さらには砂の流動が停止し、その後の運転ができなかった。装置を停止後、装置内を観察すると樹脂Aに砂が混ざった1〜5cmの塊が観察された。
[比較例2]
窒素流量を12m/hrとした以外は比較例1と同様な操作を実施した。
回収液は2.59kg/hrの速度で回収し、液収率は86.3%と計算された。分解生成物の一部は容器に回収できず、窒素と一緒に系外に出て行った。使用した窒素の流量が実施例1と比べて多いため、同じ冷却機の条件であっても、液収率が低くなった。結果を表1に記した。
[実施例2]
窒素流量を4m/hrとした以外は実施例1と同様な操作を実施した。結果を表1に記した。
[実施例3]
窒素流量を2m/hrとした以外は実施例1と同様な操作を実施した。結果を表1に記した。
[実施例4〜6]
撹拌機を備えた流動層において、装置直径を10cm、撹拌翼を二枚の傾斜パドル翼を8段にし、パドル二枚の直径80mm、幅30mm、パドル間のピッチ80mmとし、砂の充填高さを77cmとした以外は実施例1と同様な操作を実施した。実施例4では窒素の体積流量を3m/hr、実施例5では窒素の体積流量を1.6m/hr、実施例6では窒素の体積流量を0.8m/hrとした。結果を表1に記した。
Figure 2007056124
[実施例7]
流動化ガスとして、窒素の替わりに水蒸気を使用し、冷却機に5℃の冷媒を流し、分解生成物と水蒸気の混合ガスを10℃まで冷却した以外は実施例1と同様な操作を実施した。室温の水を2.4kg/hrで供給し、加熱装置により450℃まで加熱した。450℃での水蒸気の密度は0.30kg/mなので、体積流量に換算すると8m/hrとなった。
冷却機の下の容器に溜まった物は、上層が油相、下相が水相であった。油相は2.79kg/hrの速度で、水相は2.20kg/hrの速度で溜まっていった。油相中のMMA濃度は96.6質量%、水相中のMMA濃度は1.1質量%であった。結果を表2に記した。
[実施例8]
水の流量を1.2kg/hrとした以外は実施例7と同様な操作を実施した。結果を表2に記した。
[実施例9]
水の流量を0.6kg/hrとした以外は実施例7と同様な操作を実施した。結果を表2に記した。
[実施例10〜12]
撹拌機を備えた流動層において、装置直径を10cm、撹拌翼を二枚の傾斜パドル翼を8段にし、パドル二枚の直径80mm、幅30mm、パドル間のピッチ80mmとし、砂の充填高さを77cmとした以外は実施例7と同様な操作を実施した。実施例10では水の供給速度を0.96kg/hr、実施例11では水の供給速度を0.48kg/hr、実施例12では水の供給速度を0.24kg/hrとした。結果を表2に記した。
Figure 2007056124
[実施例13]
図2に示す、内部に伝熱管が4本設置された撹拌機を備えた流動層を使用した。流動層の側面(外側)には、電気ヒーター(マイクロヒーター、日本ヒーター株式会社製、容量150kW)を、分散器の取り付け位置から2m20cmまでの高さ全体に均等に設置し、その上に断熱材を覆った。伝熱管はラジアントチューブ(東京ガス・エンジアリング株式会社製)からなり、その中に熱風発生装置で550℃に加熱した熱風(空気)を通した。ラジアントチューブは二重構造になっており、中心部に供給された熱風は外周部を通って戻ってきた。流動層の直径は50cmであり、実施例1と同じ材質の分散器を使用した(直径55cmで、中心から直径50cmまでの部分がフィルターで、その外周部は取り付けのための縁であり、厚さ1.6mm、フランジ取り付け)。砂の充填高さは2mで、砂の充填容積は393リットルと計算された。撹拌翼は二枚の傾斜パドル翼を5段にしたものを使用した。二枚のパドル翼の直径は45cm、幅7cm、傾斜角度45度、パドル間のピッチは30cmとした。前後の段のパドル翼は直交するようにした。撹拌速度は毎分30回転(30rpm)とした。
窒素を全く流さない状態で、この条件で撹拌機を運転した場合には、動力は5.2kWで、その単位体積あたりの動力13.2kW/mであった。
流動化ガスとして、550℃に加熱した窒素55m/hrで供給した。装置内の温度が550℃になるように、装置外部、及び内部に設置した伝熱管を加熱した。流動化ガス速度0.078m/secと計算された。これはUmf=0.037m/secの2.1倍である。この状態で撹拌機を運転した時の動力1.3kWであり、単位体積あたりの動力は3.3kW/mであった。この値は、流動化ガスを流さない場合の単位体積あたりの動力13.2kW/mの、25%である。
樹脂として、樹脂A94質量%、ポリスチレン(アルドリッチ社製、品番18242−7、質量平均分子量28万、長さ約3mmのペレット)2質量%、ポリエチレン(アルドリッチ社製、品番42803−5、長さ約3mmのペレット)2質量%、ポリプロピレン(アルドリッチ社製、品番42902−3、長さ約3mmのペレット)2質量%からなる混合物を使用した。混合樹脂を室温で、100kg/hrで供給した。
550℃での窒素の密度は0.41kg/mなので、体積流量55m/hrを質量流量に換算すると22.6kg/hrと計算される。したがって、流動化ガス質量流量/樹脂供給速度は、22.6/100=0.23と計算された。
樹脂分解装置から出てくる分解生成物と窒素からなる混合ガスを第一の冷却機、及び第二の冷却機で冷却した。第一の冷却機には100℃の熱媒体を流した。第二の冷却機には−20℃の冷媒を流し、その混合ガスの温度を0℃まで冷却した。第一の回収容器には、樹脂の分解生成物の一部分が回収され、第二の回収容器には、樹脂の分解生成物の大部分が回収され、回収しきれない分解生成物は系外に出て行った。
第二の回収容器に、液化した分解生成物を92.0kg/hrで回収した。液収率は92.0/100×100=92%と計算された。回収した液中のMMA濃度は89.3質量%であった。
本発明によれば、樹脂を分解して、その分解生成物を得ようとする場合において、広く適用できる。
樹脂の分解装置の第一例 樹脂の分解装置の第二例 撹拌翼の例(傾斜パドル翼)
符号の説明
1、 流動層
2、 撹拌機
3、 分散器
4、 フィーダー
5、 冷却機
6、 回収容器
11、伝熱管
12、第一の冷却機
13、第一の回収容器
14、第二の冷却機
15、第二の回収容器

Claims (7)

  1. 固体粒子を充填した流動層内に攪拌機を配設し、流動層下部に流動化ガス分散器を配設した樹脂の分解装置。
  2. 流動化ガス及び撹拌機の両方で流動化させた固体粒子の存在下で樹脂を加熱することによる樹脂の分解方法。
  3. 流動化ガス速度が最小流動化ガス速度の4倍以下である請求項2に記載の樹脂の分解方法。
  4. 流動化ガスの質量流量(kg/hr)/樹脂の供給速度(kg/hr)が1.8以下である請求項2に記載の樹脂の分解方法。
  5. 流動化ガスを流したときの攪拌機の動力を、流動化していない状態の固体粒子の充填容積で割った単位体積当たりの撹拌動力が、流動化ガスを流さないときの場合の80%以下である請求項2〜4のいずれかに記載の樹脂の分解方法。
  6. 樹脂が(メタ)アクリル樹脂である請求項2〜5のいずれかに記載の樹脂の分解方法。
  7. 流動化ガスが、窒素、又は水蒸気である請求項2〜5のいずれかに記載の樹脂の分解方法。
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