JP6835211B2 - Al−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材及びその製造方法 - Google Patents

Al−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Al−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材及びその製造方法に関する。
過共晶組成となるシリコン(Si)を含有するアルミニウム(Al)合金が知られている。Al−Si系アルミニウム合金において、Si系化合物(初晶Si)が晶出しており、高剛性や低線膨張性及び耐摩耗性が得られている(特許文献1参照)。
Al−Si系アルミニウム合金に、更にFeが添加されることで、Al−Fe−Si系晶出物を形成させることで、高剛性や低線膨張性も向上したAl−Si−Fe系アルミニウム合金も知られている(特許文献2参照)。
Al−Si−Fe系アルミニウム合金において、SiやFeの含有量が増えるとSi系晶出物の粗大化やAl−Fe−Si系晶出物の針状化がおこる可能性がある。そこで、Si系晶出物の粗大化やAl−Fe−Si系晶出物の針状化を抑制するために、Al−Si−Fe系アルミニウム合金には、リン(P)やマンガン(Mn)の添加が行われている。
特開平7−270209号公報 特開平9−324235号公報
近年、Al−Si−Fe系アルミニウム合金には、より高い剛性やより低い線膨張性が、求められるようになってきた。Al−Si−Fe系アルミニウム合金において、より高い剛性やより低い線膨張性を得るために、より多くの初晶SiやAl−Fe−Si系金属間化合物を晶出させる必要がある。それらの晶出物を多く晶出させるためには、Al−Si−Fe系アルミニウム合金中の、SiやFeの含有量を増やす必要がある。しかし、Siを増加させるとPの添加量を増加させても、Si系晶出物の粗大化を十分に抑制することができなくなる。その一方Pの添加量が多くなると溶湯の湯流れ性が低下し、鋳造性が悪化する。またAl−Fe−Si系晶出物の針状化を抑制するためMnの添加量を多くすると粗大なMn系化合物が晶出し、伸びの低下の原因となる。
そこで、本発明の態様においては、高い剛性あるいは低線膨張性という特性を、持ちながら伸びにも優れるAl−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、Al−Si―Fe系アルミニウム合金鋳造材は、 Si:12.0質量%〜25.0質量%、
Fe:0.48質量%〜4.0質量%、
Cr:0.17質量%〜5.0質量%を含み、
残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、
Si系晶出物が、Al−Cr−Si系化合物を囲繞している組織を含む。
望ましい態様として、Crの含有量と、Siの含有量とは、下記式(1)を満たしている。
Cr>0.018×Si―0.2 ・・・(1)
望ましい態様として、組織中にAl−Fe―Si系晶出物を更に含み、
前記Al−Fe―Si系晶出物の面積率が5%以上であり、Al−Fe―Si系晶出物の最大径が30μm以下であり、前記Si系晶出物の面積率が12%以上であり、前記Si系晶出物の最大径が100μm以下である。
望ましい態様として、Al−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材は、更に、下記のいずれか一種以上の元素を含む。
Cu:0.5質量%〜8.0質量%、
Ni:0.5質量%〜6.0質量%、
Mg:0.05質量%〜1.5質量%、
P:0.003質量%〜0.02質量%、
Mn:0.3質量%〜1.0質量%、
Ti:0.005質量%〜1.0質量%、
B:0.001質量%〜0.01質量%、
Zr:0.01質量%〜1.0質量%、
V:0.01質量%〜1.0質量%、
本発明の第2の態様としてAl−Si―Fe系アルミニウム合金鋳造材の製造方法は、Si:12.0質量%〜25.0質量%、Fe:0.5質量%〜4.0質量%、Cr:0.17質量%〜5.0質量%を含み、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するAl−Si−Fe系アルミニウム合金を冷却速度500℃/s以上で鋳造を行う。
望ましい態様として、Al−Si―Fe系アルミニウム合金鋳造材の製造方法において、液相線温度よりも30℃以上過冷却状態を起こして凝固させる。
本発明に係る態様によれば、高い剛性あるいは低線膨張性という特性を、持ちながら伸びにも優れるAl−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材及びその製造方法を提供することができる。
図1Aは、Al−Si系アルミニウム合金鋳造材において、Si含有量と、Siの面積率との関係を説明するための説明図である。 図1Bは、Al−Si系アルミニウム合金鋳造材において、Si面積率と、Siの線膨張係数との関係を説明するための説明図である。 図2は、本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材であって、実施例7の合金組織の写真を説明する説明図である。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、以下で説明する実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
本願発明者が鋭意研究を重ねたところ、Crを含有するAl−Si−Fe系アルミニウム合金を鋳造の際に急冷し、凝固させるとSi系晶出物よりもAl−Cr−Si系化合物が先に晶出し、Si系晶出物の晶出核となり、粗大化の抑制に作用することがわかった。また、この作用はSiの含有量が16%を超える高Siのアルミニウム合金でも作用することがわかった。
更に、急冷することにより、凝固時に過冷却がおこり、Si系化合物とAl−Fe−Si系化合物がほぼ同時に晶出し、その結果Al−Fe−Si系化合物が針状化しにくくなることがわかった。
そこで、本実施形態のアルミニウム合金鋳造材は、鋳造時に冷却速度500℃/s以上で冷却し、凝固させることにより、Si系晶出物が、Al−Cr−Si系化合物と接している組織を有する。以下、本実施形態のアルミニウム合金鋳造材を詳細に説明する。
(合金組成)
本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金は、12.0質量%以上25.0質量%以下のSiと、0.48質量%以上4.0質量%以下のFeと、0.17質量%以上5.0質量%以下のCrとを含み、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有している。
本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金において、Siは、鋳造性を向上させると共に、Si系化合物として晶出し、剛性や耐摩耗性を高める作用を有し、また線膨張性を低くする作用を有する。Siの含有量が12.0質量%よりも少ない場合、十分なSi系化合物の晶出が得られず、剛性や耐摩耗性を高める作用を十分に呈することができない。逆に、Siの含有量が25.0質量%を超えると鋳造性が低下する。好ましくは、Si含有量が14.0%以上、より好ましくはSi含有量が16.0%以上であると、鋳造性が良好で剛性や耐摩耗性を高めた鋳造材が得られる。
本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金において、Feは、鋳造の際の金型への焼き付きを抑制する作用を有すると共に、剛性等の機械的特性を高める作用を有する。この作用は、Feの含有量が0.48質量%以上で顕著となる。Feの含有量が4.0質量%を超えると、粗大で針状化したAl−Fe−Si系化合物として晶出しやすくなり、伸びが低下する要因となる。
Crは、鋳造時に急冷させるとAl−Cr−Si系化合物として晶出し、Si系化合物の晶出核となり、粗大化の抑制に作用する。この作用は、Crの含有量が0.3質量%以上となると顕著となる。Crの含有量が5.0質量%を超えると、粗大なAl−(Fe、Cr、Mn)−Si系化合物として晶出しやすくなり、伸びが低下する要因となる。
Cr含有量が、「0.018×Si―0.2」質量%以下であると、Al−Cr−Si系化合物の晶出温度がSi系化合物の晶出温度以下となるので、Al−Cr−Si系化合物がSi系化合物の晶出核となる作用が低下する。Crの含有量と、Siの含有量とは、下記式(1)を満たしていることで、凝固させるとSi系晶出物よりもAl−Cr−Si系化合物が先に晶出しやすくなる。
Cr>0.018×Si―0.2 ・・・(1)
本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金においては、機械的性質を高めるためにFe、Cr以外の元素、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、P、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、ボロン(B)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)のいずれか一種以上の元素を含んでもよい。
Cuは機械的特性を向上させる作用があるため、必要により添加する。またNiとともに添加されるとAl−Ni−Cu系化合物として晶出し、剛性及び高温強度も向上させるとともに、線膨張性を低減させる作用も呈する。この作用は、Cuの含有量が0.5質量%以上の添加で顕著となる。また、Cuの含有量が8.0質量%を超えると、粗大な化合物を形成し、伸びが低下する要因となる。Cuの含有量が8質量%を超えると、更に耐食性も低下する。このため、Cuの含有量は、0.5質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
Niは、機械的特性を向上させる作用があるため、必要により添加する。またCuとともに添加されるとAl−Ni−Cu系化合物として晶出し、剛性及び高温強度も向上させるとともに、線膨張性を低減させる作用も呈する。この作用は、Niの含有量が0.5質量%以上の添加で顕著となる。また、Niの含有量は、6.0質量%を超えると液相線温度が高くなるため、鋳造性が悪くなる。このため、Niの含有量は、0.5質量%以上6質量%以下が好ましい。
Mgは機械的特性を向上させる作用があるため、必要により添加する。この作用は、Mgの含有量が0.05質量%以上の添加で顕著となる。また、Mgの含有量が1.5質量%を超えて添加されるとAlの母相が硬くなり、伸びが低下する要因となる。このため、Mgの含有量は、0.05質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。
Pは、Al−P系化合物として、Si系化合物の晶出核となり、Si系化合物の微細化の作用を有する。この作用は、Pの含有量が0.003%の添加で顕著となる。また、Pの含有量が、0.02質量%を超えて添加されると溶湯の湯流れ性が低下し、鋳造性が低下する。このため、Pの含有量は、0.003質量%以上0.02質量%以下であることが好ましい。
Mnは、Al−Fe―Si系化合物を、塊状化させる作用を呈する。Al−Fe−Si系化合物が粗大針状であると破壊の起点となり、伸びの低下の要因となるが、Mnを添加し塊状化することにより、伸びの低下が抑制される。この作用は、Mnの含有量が0.3質量%以上の添加で顕著となる。Mnの含有量が、1.0質量%を超えて添加されると粗大なAl−(Fe,Mn,Cr)−Si系化合物を形成し、伸びが低下する要因となる。
Ti、B、Zr、Vのいずれか一種以上の元素を含むと、結晶粒の微細化材として作用し、鋳造性を向上させると共に、機械的作用を向上させる作用を有する。Mnは、0.3質量%以上1.0質量%以下の範囲で添加されることが好ましい。Tiは、0.005質量%以上1.0質量%以下の範囲で添加されることが好ましい。Bは、0.001質量%以上0.01質量%以下の範囲で添加されることが好ましい。Zrは、0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲で添加されることが好ましい。Vは、0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲で添加されることが好ましい。
Si系晶出物は、鋳造材の剛性、耐摩耗性、耐熱性等の向上に寄与すると共に、線膨張性の抑制に寄与する。Si系晶出物の面積率が12%以上で、この作用は顕著となる。
図1Aは、Al−Si系アルミニウム合金鋳造材において、Si含有量と、Siの面積率との関係を説明するための説明図である。図1Bは、Al−Si系アルミニウム合金鋳造材において、Si面積率と、Siの線膨張係数との関係を説明するための説明図である。図1Aに示すように、Si含有量が14.0%以上とすると、Si系化合物が晶出しやすくなり、Si系晶出物の面積率が12%以上になりやすくなる。図1Bに示すように、Si系晶出物の面積率が大きくなると、線膨張性が低くなる。Si系晶出物の面積率が8%程度であると、線膨張係数が21×10−6/℃であり、Si系晶出物の面積率が12%であれば、線膨張係数が21×10−6/℃よりも小さくすることができる。
しかしながら、Si含有量を増やすと、Si系化合物が粗大化しやすくなる。例えば、粒径(円相当径)が、100μmを超えるSi系晶出物が、組織中にあると鋳造材に力が加わった際に、破壊の起点となり鋳造材の伸びを低下させる。このため、Si系晶出物の粒径(円相当径)は、100μm以下であることが好ましい。
Al−Fe−Si系晶出物は、鋳造材の剛性や耐熱性等の向上に寄与すると共に、線膨張性の抑制に寄与する。Al−Fe−Si系晶出物の面積率が5%以上で、この作用は顕著となる。また粒径(円相当径)が、30μmを超えるAl−Fe−Si系晶出物が、組織中にあると、鋳造材自体に力が加わった際に、破壊の起点となり鋳造材の伸びを低下させる。本実施形態の合金組成の溶湯を30℃以上の過冷却状態で冷却させることにより、Si系化合物とAl−Fe−Si系化合物とが、ほぼ同時に晶出する。これにより、Al−Fe−Si系化合物の針状化が抑制され、粒状のAl−Fe−Si系化合物を得ることができる。
上述した合金組成の合金溶湯を、500℃/s以上で冷却し凝固させると微細なAl−Cr−Si系化合物が晶出する。Al−Cr−Si系化合物は、X線回折分析によれば、α−AlCrSiである。α−AlCrSiの異質核としての有効性を考察するため、下記表1のように、各相の結晶構造およびSiと各化合物の非整合度を比較した。ここで、aは、Siの格子定数であり、aは異質核としてのAl−P系化合物又はAl−Cr−Si系化合物の格子定数である。Al−P系化合物は、Siと同じ結晶系で格子定数が近い。α−AlCrSiは、Siと同じ結晶系であるが、格子定数aは、Siの格子定数aの2倍である。Al−Cr−Si系化合物の結晶構造が立方晶であり、Siも立方晶である。このため、格子定数aを2倍して整合度を算出し、本発明者らは、このAl−Cr−Si系化合物の結晶構造とSi系化合物との結晶構造の整合度が高い(非整合度が低い)ことを見いだした。
上述したAl−P系化合物もSi系化合物の晶出核となりえるが、Al−P系化合物よりもAl−Cr−Si系化合物の方がSi系化合物との結晶構造の整合度が高い。このため、Al−P系化合物よりもAl−Cr−Si系化合物の方が晶出核として適している。
Pが更に、上述した合金組成の合金溶湯に添加されていると、Al−Cr−Si系化合物に続き、Al−P系化合物が晶出核となり、更に、Crの単独添加に比べ、Si系晶出物の数が増え、Si系晶出物の面積率を大きくすることができる。
上述した合金組成の合金溶湯を、500℃/s以上で冷却し凝固させ、Al−Cr−Si系化合物がSi系化合物の晶出よりも晶出している状態として、Si系化合物の晶出の際に、Al−Cr−Si系化合物が晶出核として作用するようにする。その結果、晶出核となるAl−Cr−Si系化合物の周囲には、Si系化合物が多く存在するようになる。例えば、あるAl−Cr−Si系化合物は、晶出核となり、Si系晶出物に囲繞される。なお、Al−Cr−Si系化合物は、晶出核となり、Si系晶出物に完全に囲繞されていないものがあってもよい。
Al−Cr−Si系化合物が晶出核として作用すると、Si系晶出物の粗大化が抑制される。このため、Si含有量を増やしても、本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金においては、引張強度などが高く高剛性であり、伸びの低下を抑制できる。そして、本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金においては、Si系晶出物の面積率を大きくし、低線膨張性という特性を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金において、上述した合金組成の溶湯の冷却速度が500℃/s以上であることにより、Si系化合物の結晶構造と整合性の高い微細なAl−Cr−Si系化合物が晶出し、Si系化合物の晶出核となる。
溶湯の冷却速度を500℃/s以上とするには、鋳型の温度調整をすればよい。例えば、本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材は、ダイキャスト鋳造などで鋳造可能である。
本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金において、溶湯の冷却速度が500℃/s以上になると、上述した合金組成の溶湯の液相線温度よりも30℃以上過冷却状態が生じやすくなる。この過冷却状態を経て、Si系化合物とAl−Fe−Si系化合物が、ほぼ同時に晶出する。Si系化合物とAl−Fe−Si系化合物との晶出温度差が55℃程度と考えられ、合金組成の溶湯を液相線温度よりも30℃以上過冷却状態を起こして凝固させることで、Si系化合物とAl−Fe−Si系化合物との晶出温度差が小さくなる。このため、Si系化合物とAl−Fe−Si系化合物とが、同時晶出しやすくなる。例えば、液相線温度は、642℃である。これにより、相互に粗大化が抑制され、Al−Fe−Si系化合物の針状化が抑制される。
[実施例]
次に、本発明に係る実施例について説明する。実施例1から実施例7及び比較例1、2として、表2に示す合金元素量の合金組成を有し、残部がAlである合金組成の溶湯を溶製し、冷却速度が500℃/s以上であって、過冷却状態30℃以上となるようにダイキャスト鋳造し、鋳物が得られた。実施例1から実施例7及び比較例1、2の各鋳造温度は、780℃である。
実施例1から実施例7及び比較例1、2において、JIS Z2241に準拠した試験法により、実施例1から実施例7及び比較例1、2のAl−Si―Fe系アルミニウム合金鋳造材の引張強度、伸びが測定され、測定結果が表2に示されている。
実施例1から実施例7及び比較例1、2において、光学顕微鏡で合金組織を観察、撮影し、撮影した画像をカールツアイス社製の画像解析ソフトKS400を用いて、Si系晶出物及びAl−Fe−Si系化合物の円相当径を計測し、計測した粒径の最大径をそれぞれサイズとして、表2に示した。
実施例1から実施例7及び比較例1、2において、光学顕微鏡で合金組織を観察、撮影し、前記画像解析ソフトを用いて、Si系晶出物及びAl−Fe−Si系化合物の単位面積当たりの面積率を求め、表2に示した。
表2に示すように、比較例1は、実施例1から実施例7の合金組成を比較すると、Crの含有量が0.17質量%より少ない。このため、比較例1は、Si系晶出物の粒径が100μmを越え、粒径が粗大化していることがわかる。比較例1は、Al−Fe−Si系化合物の粒径が、30μmを越え、粒径が粗大化していることがわかる。そして、比較例1の引張強度及び伸びは、実施例1から実施例7のいずれも引張強度及び伸びよりも小さいことがわかる。
表2に示すように、比較例2は、実施例1から実施例7の合金組成を比較すると、Crの含有量が5.00質量%を超えている。このため、比較例2は、Al−Fe−Si系化合物の粒径が、30μmを越え、粒径が粗大化していることがわかる。そして、比較例2の引張強度及び伸びは、実施例1から実施例7のいずれも引張強度及び伸びよりも小さいことがわかる。
図2は、本実施形態のAl−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材であって、実施例7の合金組織の写真である。図2に示す合金組織において、粒状のAl−Fe−Si系化合物が観察される。Al−Cr−Si系化合物の周囲にはSi系化合物が多く存在する。図2に示す合金組織において、Al−Cr−Si系化合物がSi系晶出物に囲繞される状態が観察できる。また、図2においては、Al−Cr−Si系化合物がSi系晶出物に完全に囲繞されていないものの、Al−Cr−Si系化合物がSi系晶出物に接した状態で、存在している状態が観察できる。Al−Cr−Si系化合物について、組成をn数8で調査した結果、Al13−15CrSi4−5の範囲と推定され、Al−Cr−Si三元系状態図から判断すると、α−AlCrSi(Al13CrSi)と推定された。
以上、本願発明の種々の有用な実施例を示し、かつ、説明を施した。本願発明は、上述した種々の実施例や変形例に限定されること無く、この発明の要旨や添付する請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでも無い。

Claims (4)

  1. Si:12.0質量%〜25.0質量%、
    Fe:0.48質量%〜4.0質量%、
    Cr:0.17質量%〜5.0質量%を含み、
    残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、
    Al−Fe―Si系晶出物と、
    Si系晶出物が、Al−Cr−Si系化合物を囲繞している組織と、
    を含み、
    前記Al−Fe―Si系晶出物の面積率が5%以上であり、Al−Fe―Si系晶出物の最大径が30μm以下であり、前記Si系晶出物の面積率が12%以上であり、前記Si系晶出物の最大径が100μm以下であり、
    Crの含有量と、Siの含有量とは、下記式(1)を満たしていることを特徴とするAl−Si―Fe系アルミニウム合金鋳造材。
    Cr>0.018×Si―0.2 ・・・(1)
  2. 更に、
    Cu:0.5質量%〜8.0質量%、
    Ni:0.5質量%〜6.0質量%、
    Mg:0.05質量%〜1.5質量%、
    P:0.003質量%〜0.02質量%、
    Mn:0.3質量%〜1.0質量%、
    Ti:0.005質量%〜1.0質量%、
    B:0.001質量%〜0.01質量%、
    Zr:0.01質量%〜1.0質量%、
    V:0.01質量%〜1.0質量%、
    のいずれか一種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載のAl−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材。
  3. Si:12.0質量%〜25.0質量%、
    Fe:0.5質量%〜4.0質量%、
    Cr:0.17質量%〜5.0質量%を含み、
    残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、
    Al−Fe―Si系晶出物と、
    Si系晶出物が、Al−Cr−Si系化合物を囲繞している組織と、
    を含み、
    前記Al−Fe―Si系晶出物の面積率が5%以上であり、Al−Fe―Si系晶出物の最大径が30μm以下であり、前記Si系晶出物の面積率が12%以上であり、前記Si系晶出物の最大径が100μm以下であり、
    Crの含有量と、Siの含有量とは、下記式(1)を満たしているAl−Si―Fe系アルミニウム合金の製造方法であって、
    前記Al−Si―Fe系アルミニウム合金冷却速度500℃/s以上で鋳造されることを特徴とするAl−Si−Fe系アルミニウム合金鋳造材の製造方法。
    Cr>0.018×Si―0.2 ・・・(1)
  4. 請求項3に記載のAl−Si―Fe系アルミニウム合金鋳造材の製造方法において、
    前記Al−Si―Fe系アルミニウム合金が液相線温度よりも30℃以上過冷却状態を起こして凝固させられることを特徴とするAl−Fe−Si系アルミニウム合金鋳造材の製造方法。
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