JP2007169712A - 塑性加工用アルミニウム合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、変形困難な脆性的第二層(金属間化合物)が複数種形成されるAl−Si−Fe系合金であって、このAl−Si−Fe系合金に冷間加工を施しても破砕・分断された金属間化合物の内部や周辺に空孔を生じない優れた機械的性質を有する塑性加工用アルミニウム合金を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の塑性加工用アルミニウム合金は、質量比で、Si:5〜30%、Fe:0.1〜10%、Cu:0.1〜5%、Mn:0.1〜5%、Mg:0.1〜3%、Ni:0.1〜3%、Cr:0.1〜3%、Ti:0.1〜3%、Zr:0.1〜3%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【選択図】図6
【解決手段】本発明の塑性加工用アルミニウム合金は、質量比で、Si:5〜30%、Fe:0.1〜10%、Cu:0.1〜5%、Mn:0.1〜5%、Mg:0.1〜3%、Ni:0.1〜3%、Cr:0.1〜3%、Ti:0.1〜3%、Zr:0.1〜3%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【選択図】図6
Description
本発明は塑性加工用アルミニウム合金に関する。さらに詳しくは、変形困難な脆性的第二相が複数種形成される主に塑性加工用Al−Si−Fe系合金に関する。
アルミニウム−シリコン系合金の鋳造材料の組織改善および高強度化を図るために、Fe、Cu、Mgなどの元素を添加した鋳塊を冷間加工してアルミ素地中に金属間化合物などを微細に分散させる方法が知られている(特許文献1、2など)。
しかし、このようなアルミニウム合金材料は、鋳造後に大きな金属間化合物が針状に晶出するため、冷間加工時に金属間化合物が粉砕されて金属間化合物の周辺部や内部に微細な空孔が発生する。このため冷間加工後の材料は引張強さや伸びなどの材料特性が低下するという不都合を生じる。
特許文献1には、粗大針状結晶を呈する金属間化合物をもつAl−Si−Fe系合金を多パス冷間加工と熱処理とを繰り返すことによって、これらの金属間化合物を破砕・分断して、アルミニウム素地中に微細分散させ、強度と延性のバランスを有するAl−Si−Fe系合金材料に作り替える製造方法を開示している。しかし、この製造方法では、金属間化合物の周辺部や内部に微細な空孔が発生するという問題は解消されるものの、冷間加工と熱処理とを何度も繰り返す必要があり高い生産性を要求される量産には適当ではない。
また、上記の製造方法では、冷間加工による塑性流動後にアルミニウム素地と金属間化合物との境界部分の密着力が弱くなり、冷間加工後の材料強度を低下させてしまうという問題がある。このため、加工温度を上げて割れや空孔発生を防止するとともに、アルミニウム素地と金属間化合物との密着力を上げる方法も考えられるが、加工温度を上げるとアルミニウム素地が軟化して金属間化合物が粉砕されにくくなり、金属間化合物がアルミニウム素地中に微細に分散されないので、材料の強度低下を招くおそれがある。
特許第3005673号公報
特開2001−131721号公報
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、変形困難な脆性的第二層が複数種形成されるAl−Si−Fe系合金であって、このAl−Si−Fe系合金に冷間加工を施しても破砕・分断された金属間化合物の内部や周辺に空孔を生じない優れた機械的性質を有する塑性加工用アルミニウム合金を提供することを課題とする。
Al−Si−Fe系合金において、鋳造によって晶出する変形困難な脆性的第二層(以後、金属間化合物という)は冷間加工により微細に粉砕されるが、この粉砕時に生じる空孔の大きさは、晶出する金属間化合物の大きさにほぼ比例する。そこで、本発明者は冷間加工前の鋳造組織を微細な金属間化合物が分散した状態とすれば冷間加工時の空孔の発生を抑制できることに着目した。具体的には、Al−Si−Fe系合金にMn、Zr、Ti、Crなどできるだけ多種の元素を少量ずつ添加することで晶出する金属間化合物の大きさを抑制して微細に分散させることのできる成分組成を見出した。
すなわち、本発明の塑性加工用アルミニウム合金は、質量比で、Si:5〜30%、Fe:0.1〜10%、Cu:0.1〜5%、Mn:0.1〜5%、Mg:0.1〜3%、Ni:0.1〜3%、Cr:0.1〜3%、Ti:0.1〜3%、Zr:0.1〜3%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
本発明の塑性加工用アルミニウム合金は、Si、Feを高濃度に含有しているが、鋳造時にMn、Crなどの遷移元素を微量添加しているので粗大な金属間化合物の晶出は抑制されている。また、ZrやTiを少量含有することで、アルミ素地の結晶粒が微細化されるので、結晶粒界に晶出する金属間化合物は微細に分散している。このため、冷間加工を加えて晶出した金属間化合物や初晶珪素などを粉砕しても、破砕されたそれらの内部や周辺に空孔を生じることがない。従って、優れた機械的特性を有する塑性加工部材を得ることができる。
まず、本発明の塑性加工用アルミニウム合金の成分限定理由を説明する。
(Si:5〜30%)
Siは湯流れ性や引け性を改善し、鋳造クラックを抑え、鋳造性を改善する。また、耐摩耗性を向上し、熱膨張係数が小さい。Si添加量の低い亜共晶合金では、共晶Si結晶の体積比が小さいとともに、Si晶は比較的微細であることから、鋳造棒や押出棒からの冷間塑性加工での成形が可能である。しかし、Siの含有量が30%を越えるとSi結晶の体積比が大きくなり冷間塑性加工による成形の良好な結果は期待できなくなる。そこで、冷間加工に適当な第二層組織を得るためにSi含有量を5〜30%とした。より好ましくは、8〜18%である。
Siは湯流れ性や引け性を改善し、鋳造クラックを抑え、鋳造性を改善する。また、耐摩耗性を向上し、熱膨張係数が小さい。Si添加量の低い亜共晶合金では、共晶Si結晶の体積比が小さいとともに、Si晶は比較的微細であることから、鋳造棒や押出棒からの冷間塑性加工での成形が可能である。しかし、Siの含有量が30%を越えるとSi結晶の体積比が大きくなり冷間塑性加工による成形の良好な結果は期待できなくなる。そこで、冷間加工に適当な第二層組織を得るためにSi含有量を5〜30%とした。より好ましくは、8〜18%である。
(Fe:0.1〜10%)
Al−Si系合金では、Feの許容限は低くFeの含有量を増加させていくと粗大なAl3FeやAl−Fe−Si系の金属間化合物が晶出し、延びや衝撃値が著しく低下する。しかし、本発明では、これらの金属間化合物を鍛造加工時に破砕・分断してアルミニウム素地中に微細に分散させることで強度の向上など機械的性質を改善するので、0.1〜10%のFeを含有させる。Feが0.1%未満では金属間化合物が微細であり、また、晶出量が少ないので上記の効果を得ることができない。また、10%を越えて多く含有すると、初晶Siとともに金属間化合物の体積比が大きくなり冷間塑性加工による成形の良好な結果は期待できなくなる。より好ましくは、3〜7%である。また、Al−Fe系合金では、Feの含有量が1%増加するごとにその熱膨張率は1.25%減少するので、例えば、鉄製のシリンダブロックとAl−Fe系合金のピストンのように熱膨張差のある組み合わせの場合には有利である。
Al−Si系合金では、Feの許容限は低くFeの含有量を増加させていくと粗大なAl3FeやAl−Fe−Si系の金属間化合物が晶出し、延びや衝撃値が著しく低下する。しかし、本発明では、これらの金属間化合物を鍛造加工時に破砕・分断してアルミニウム素地中に微細に分散させることで強度の向上など機械的性質を改善するので、0.1〜10%のFeを含有させる。Feが0.1%未満では金属間化合物が微細であり、また、晶出量が少ないので上記の効果を得ることができない。また、10%を越えて多く含有すると、初晶Siとともに金属間化合物の体積比が大きくなり冷間塑性加工による成形の良好な結果は期待できなくなる。より好ましくは、3〜7%である。また、Al−Fe系合金では、Feの含有量が1%増加するごとにその熱膨張率は1.25%減少するので、例えば、鉄製のシリンダブロックとAl−Fe系合金のピストンのように熱膨張差のある組み合わせの場合には有利である。
(Cu:0.1〜5%)
Cuは、アルミニウム素地を強化する元素である。Cuを0.1%以上含有することで固溶によるアルミニウム素地の常温強度を向上することができる。また、Al2Cuの中間層の析出により材料強度を向上させる。Cuを5%を越えて含有すると、安定性の低いα+CuAl2が粒界に析出して脆弱になることがあるので好ましくない。より好ましくは、2〜4%である。
Cuは、アルミニウム素地を強化する元素である。Cuを0.1%以上含有することで固溶によるアルミニウム素地の常温強度を向上することができる。また、Al2Cuの中間層の析出により材料強度を向上させる。Cuを5%を越えて含有すると、安定性の低いα+CuAl2が粒界に析出して脆弱になることがあるので好ましくない。より好ましくは、2〜4%である。
(Mn:0.1〜5%)
Mnは、アルミニウム素地中に主にAL6Mnなどの金属間化合物を晶出させる。また、加工硬化により強度を向上させる。0.1%未満では強度向上に寄与する加工硬化が得られない。また、5%を越えて含有すると金属間化合物が多量に晶出して塑性加工性を低下させるので適当ではない。より好ましくは、1〜3%である。
Mnは、アルミニウム素地中に主にAL6Mnなどの金属間化合物を晶出させる。また、加工硬化により強度を向上させる。0.1%未満では強度向上に寄与する加工硬化が得られない。また、5%を越えて含有すると金属間化合物が多量に晶出して塑性加工性を低下させるので適当ではない。より好ましくは、1〜3%である。
(Mg:0.1〜3%)
一般にMgは、Cuと同様にアルミニウム素地を固溶強化する成分として知られている。また、Al−Mg−Si系合金では熱処理を施すことによりMg2Siの中間層が析出して強度を向上することができる。含有量が0.1%未満ではこれらの効果が得られにくい。また、3%を越えて含有させると固溶強化量が多くなり塑性加工性が低下することがあるので好ましくない。より好ましくは、0.5〜2%である。
一般にMgは、Cuと同様にアルミニウム素地を固溶強化する成分として知られている。また、Al−Mg−Si系合金では熱処理を施すことによりMg2Siの中間層が析出して強度を向上することができる。含有量が0.1%未満ではこれらの効果が得られにくい。また、3%を越えて含有させると固溶強化量が多くなり塑性加工性が低下することがあるので好ましくない。より好ましくは、0.5〜2%である。
(Ni:0.1〜3%)
Niは、AlとともにAl3Niなどの安定な金属間化合物を晶出する。これらの金属間化合物は高温でも安定であり、合金の耐摩耗性と高温強度に寄与する。特に、Al3Ni金属間化合物は比較的硬さが低く靱性に富む。このためNiは高温強度を確保するアルミニウム素地の硬化剤として0.1以上含有することが必要である。また、Niが3%を越えると粗大な針状結晶が晶出して脆弱になるため好ましくない。より好ましくは、0.1〜1.5%である。
Niは、AlとともにAl3Niなどの安定な金属間化合物を晶出する。これらの金属間化合物は高温でも安定であり、合金の耐摩耗性と高温強度に寄与する。特に、Al3Ni金属間化合物は比較的硬さが低く靱性に富む。このためNiは高温強度を確保するアルミニウム素地の硬化剤として0.1以上含有することが必要である。また、Niが3%を越えると粗大な針状結晶が晶出して脆弱になるため好ましくない。より好ましくは、0.1〜1.5%である。
(Cr:0.1〜3%)
Crは、アルミニウム素地中にAl7Crなどの金属間化合物を晶出させる。また、固溶強化や結晶粒の微細化、あるいは再結晶温度を上昇させるなど強度改善に有効な元素である。0.1%未満ではこれらの効果が得られにくい。また、0.7%を超えて含有させるとAl7Crなどの金属間化合物を晶出して材料の硬さを向上させることができる。しかし、3%を越えて含有させると塑性加工性が低下するので適当ではない。より好ましくは、0.5〜1.5%である。
Crは、アルミニウム素地中にAl7Crなどの金属間化合物を晶出させる。また、固溶強化や結晶粒の微細化、あるいは再結晶温度を上昇させるなど強度改善に有効な元素である。0.1%未満ではこれらの効果が得られにくい。また、0.7%を超えて含有させるとAl7Crなどの金属間化合物を晶出して材料の硬さを向上させることができる。しかし、3%を越えて含有させると塑性加工性が低下するので適当ではない。より好ましくは、0.5〜1.5%である。
(Ti:0.1〜3%)
Tiは、Al3Tiなどの金属間化合物としてアルミニウム素地中に晶出する。この時、準安定なAl3Ti相が凝固核となってアルミニウム素地の結晶粒を微細化する。Tiの含有量が0.1%未満では十分な微細化効果が得られにくい。また、3%を越えて含有しても効果が飽和してしまうので好ましくない。より好ましくは、0.1〜1.5%である。
Tiは、Al3Tiなどの金属間化合物としてアルミニウム素地中に晶出する。この時、準安定なAl3Ti相が凝固核となってアルミニウム素地の結晶粒を微細化する。Tiの含有量が0.1%未満では十分な微細化効果が得られにくい。また、3%を越えて含有しても効果が飽和してしまうので好ましくない。より好ましくは、0.1〜1.5%である。
(Zr:0.1〜3%)
Zrは、Al3Zrの金属間化合物をアルミニウム素地中に晶出させる。この時、準安定なAl3Zr相が凝固核となってアルミニウム素地の結晶粒を微細化する。また、再結晶温度が上昇するため耐熱性を向上することができる。Zrが0.1%未満ではこれらの効果が得られにくく、また、3%を越えて含有しても効果が飽和してしまうので好ましくない。より好ましくは、0.5〜1.5%である。
Zrは、Al3Zrの金属間化合物をアルミニウム素地中に晶出させる。この時、準安定なAl3Zr相が凝固核となってアルミニウム素地の結晶粒を微細化する。また、再結晶温度が上昇するため耐熱性を向上することができる。Zrが0.1%未満ではこれらの効果が得られにくく、また、3%を越えて含有しても効果が飽和してしまうので好ましくない。より好ましくは、0.5〜1.5%である。
アルミニウム合金においては、一般に、含有する元素の種類を少なくして各元素の含有量を多くすると大きな金属間化合物が晶出する。従って、できるだけ多種の元素を少量ずつ含有するようにして、多種類の金属間化合物を微細に晶出させることが好ましい。本発明の塑性加工用アルミニウム合金では、できる限り多くの金属間化合物を微細に晶出させることを目的としており、Mn、Cr,Zr、Tiは、このような目的で含有されている。
しかし、湯流れや割れなどといった鋳造性やその後の塑性加工性などを考慮すると、15%<(Si+Fe+Mn+Ni)<25%、1%<(Cu+Mg)<5%、および1%<(Cr+Zr+Ti)<5%とすることが望ましい。このような組成を有することで、得られる部材の耐摩耗性、耐熱性、材料強度や伸び、あるいは衝撃値などの材料特性をより向上させるとともに熱膨張率を小さくすることができる。
本発明のAl−Si−Fe系合金においては、複数種の金属間化合物をできるだけ微細に分散して晶出させることが望ましい。従って、鋳造温度はできるだけ高い方が望ましく800〜850℃の範囲が好ましい。また、凝固時の冷却速度は20〜500℃/secとするとよい。冷却速度が20℃/sec未満では金属間化合物が粗大化するおそれがあり、500℃/secを越えて速いと鋳造割れを生じることがあるので好ましくない。より好ましくは50〜300℃/secである。
以上のようにして得られたAl−Si−Fe系合金鋳塊を100〜380℃で、鍛造など塑性加工することにより、加工組織中に空孔のない機械的性質に優れたAl−Si−Fe系合金塑性加工部材を得ることができる。加工温度が100℃未満では、割れなどを発生して加工できないことがあり、380℃を越えて高温で加工すると、アルミニウム素地が軟化して金属間化合物を粉砕することができないので加工材料の強度向上が望めない。より好ましい加工温度は、150〜300℃である。
以下、試験例を挙げて本発明の塑性加工用アルミニウム合金についてさらに詳しく説明する。
多種類の微量添加元素を含有する発明合金と、微量添加元素の種類が少ない比較合金とを調整し、後方押出による冷間加工を施して加工後の金属間化合物の内部および周辺部での空孔発生の有無を金属顕微鏡で観察した。
(1)試料調整
(鋳塊1:発明合金)
全体を100%とした質量比で、Si:15.0%、Fe:4.0%、Cu:3.0%、Mn:1.5%、Mg:1.5%、Ni:1.0%、Cr:1.0%、Ti:1.0%、Zr:1.0%を含有するアルミニウム合金を溶製し、溶湯温度850℃で420℃に保持された金型に注湯して、直径129mm×高さ85mmの鋳塊1を鋳造した。なお、このときの冷却速度は20℃/secであった。(鋳塊2:比較合金)
(鋳塊1:発明合金)
全体を100%とした質量比で、Si:15.0%、Fe:4.0%、Cu:3.0%、Mn:1.5%、Mg:1.5%、Ni:1.0%、Cr:1.0%、Ti:1.0%、Zr:1.0%を含有するアルミニウム合金を溶製し、溶湯温度850℃で420℃に保持された金型に注湯して、直径129mm×高さ85mmの鋳塊1を鋳造した。なお、このときの冷却速度は20℃/secであった。(鋳塊2:比較合金)
全体を100%とした質量比でSi:16.3%、Cu:2.9%、Mg:1.0%、Fe:3.8%、Ni:0.27%を含有するアルミニウム合金を溶製し、鋳塊1と同様の条件で鋳造して鋳塊2を得た。
(2)評価
上記のようにして得られた鋳塊から顕微鏡観察用試片を採取するとともに、切削加工によって直径38mm×高さ20mmの冷間加工用試料を作製した。得られた冷間加工用試料を図1に示す後方押出機10で有底円筒形状に成形して、円筒部16aから金属顕微鏡観察用の試片を切り出した。なお、後方押出の潤滑には二硫化モリブデンを用いた。試片の円筒断面を研磨して変形時に発生する空孔の有無を金属顕微鏡で観察した。
上記のようにして得られた鋳塊から顕微鏡観察用試片を採取するとともに、切削加工によって直径38mm×高さ20mmの冷間加工用試料を作製した。得られた冷間加工用試料を図1に示す後方押出機10で有底円筒形状に成形して、円筒部16aから金属顕微鏡観察用の試片を切り出した。なお、後方押出の潤滑には二硫化モリブデンを用いた。試片の円筒断面を研磨して変形時に発生する空孔の有無を金属顕微鏡で観察した。
図1は、後方押出機10の主要部を示す模式図である。後方押出機10は、内径(d1)38mm×深さ(h)50mmの凹部12aを有するダイス12と、頭部14aが外径(d2)34mm×高さ(h3)60mmで、軸部14bが外径(d3)32mm×長さ(h2)60mmのパンチ14とから構成されている。ダイス12の凹部12aに冷間加工用試料16を配置してパンチ14を矢印Y方向にパンチ速度1mm/secで下降させ、冷間加工用試料16に冷間加工を施した。なお、冷間加工時の冷間加工用試料16の温度は250℃であった。また、パンチ頭部14aの先端外周18には冷間加工用試料16の塑性変形を容易にするために2mmRの曲面を設けた。
発明合金(鋳塊1)の冷間加工前の組織(鋳造組織)を図2に、冷間加工後の組織を図3に示す。また、比較合金(鋳塊2)の冷間加工前の組織(鋳造組織)を図4に、冷間加工後の組織を図5に示す。なお、図2〜図7は金属顕微鏡写真をもとにスケッチした模式図である。
発明合金の鋳造組織では、図2に示すように、アルミニウム素地A中に板状の初晶珪素SとAl3Fe、Al−Fe−Si系、Al6Mn、Al3Ti、Al3Zr、Al2Cu、Mg2Siなどで表される金属間化合物Mが大量に晶出している。しかし、図3に示す冷間加工後の組織では、金属間化合物Mは微細に粉砕されているのが確認できる。
また、比較合金の鋳造組織では、図4に示すように、アルミニウム素地A中に板状の初晶珪素SとAl3Fe、Al−Fe−Si系、Al2Cu、Mg2Siなどで表される金属間化合物M’が晶出している。初晶珪素Sの大きさは発明合金と余り変わらないが、金属間化合物M’、中でもAl3Fe、Al−Fe−Si系の金属間化合物は、図2の発明合金に比べて巨大なものである。図5に示す比較合金の冷間加工後の組織では、金属間化合物M’は微細に粉砕されているが、粉砕された金属間化合物M’の内部や周辺部に空孔(黒塗り部)Vが多数認められる。
次に、図3の金属間化合物M周辺の拡大写真を図6に、また図5の金属間化合物M’周辺の拡大写真を図7に示す。なお、拡大率はいずれも一万倍である。図7では、金属間化合物M’の内部および周辺に1μm前後の空孔Vが確認できる。しかし、図6では、金属間化合物Mの内部にも周辺にも空孔は認められない。
すなわち、本発明の塑性加工用アルミニウム合金である発明合金では、冷間加工後も健全な組織を維持できているので、高い強度や伸びを有する鍛造などの冷間加工部材を得ることができる。
本発明の塑性加工用アルミニウム合金は、高温環境下での強度や伸び、および耐衝撃性を要求されるような、例えば自動車のエンジン部品などの鍛造部材に好適に用いることができる。
10:後方押出機 12:ダイス 14:パンチ 16:冷間加工試料
A:アルミニウム素地 S:初晶珪素 M、M’:金属間化合物 V:空孔
A:アルミニウム素地 S:初晶珪素 M、M’:金属間化合物 V:空孔
Claims (3)
- 質量比で、Si:5〜30%、Fe:0.1〜10%、Cu:0.1〜5%、Mn:0.1〜5%、Mg:0.1〜3%、Ni:0.1〜3%、Cr:0.1〜3%、Ti:0.1〜3%、Zr:0.1〜3%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする塑性加工用アルミニウム合金。
- 鋳造時の冷却速度が20〜500℃/secである請求項1に記載の塑性加工用アルミニウム合金。
- 鍛造用アルミ合金である請求項1又は2に記載の塑性加工用アルミニウム合金。
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